JP5149059B2 - 車体前部構造 - Google Patents

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Description

本発明は、乗用車等の車両の車体前部構造に関し、特に衝突時のフロアトンネル変形による乗員脚部の傷害を軽減する車体前部構造に関する。
乗用車等の自動車の車室前方下部には、エンジンルームとの隔壁及び前席足元の床面を構成するトーボードが設けられる。また、トーボード及びフロアパネルの下部には、トランスミッション、プロペラシャフト、エキゾーストパイプ等を収容するフロアトンネルが形成される。
フロアトンネルは、車体の構造部材として衝突の際の衝突エネルギを吸収するとともに、衝突による変形時に乗員の足元スペースを確保することが要求される。
例えば、特許文献1には、フロアトンネルの所定箇所に複数の前後方向ビード及び周方向ビードを形成することによって、衝撃吸収能力と乗員足元スペースの確保を図ることが記載されている。
特開2007−106264号公報
フロアトンネルは、例えばフルラップ衝突時には前後方向に圧縮変形することによって衝撃エネルギを吸収する。しかし、このときフロアトンネルの側面部が折れ曲がって乗員の足元側に張り出すと、乗員の足元スペースが侵食され、特に左ハンドル車の場合にはアクセルペダルに載せられた右足がフロアトンネルの側面部によって叩かれる懸念がある。
本発明の課題は、衝突時のフロアトンネル変形による乗員足部の傷害を軽減する車体前部構造を提供することである。
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1の発明は、車室前方下部に設けられ前席乗員足元における床面部を構成し、車幅方向中央部における下端部に切欠部が形成されたトーボードと、前記床面部に対して上方へ張り出しかつ車両前後方向に延びて形成され、前端部が前記トーボードの前記切欠部に接続されたフロアトンネルとを備える車体前部構造であって、前記フロアトンネルは、前端部近傍における上面部と側面部上方との少なくとも一方に配置され周方向にほぼ沿って延びた第1のビードと、前記第1のビードよりも後方側の側面部において前記上面部から離間しかつ前記第1のビードよりも下方に配置され前後方向にほぼ沿って延びた第2のビードとを有することを特徴とする車体前部構造である。
なお、ここでいう「周方向」とは、フロアトンネルの表面における車両前後方向とほぼ直交する面内に沿った方向を指すものとする。
また、「周方向又は前後方向にほぼ沿った」とは、各方向に完全に一致するものに限らず、若干の傾斜をつけられたものも含むものとする。
請求項2の発明は、前記第1のビードの一部と前記第2のビードの一部とを結んだ直線のうち最も下側にあるものが、車両側面視においてアクセルペダルに載せられる乗員足部よりも上方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造である。
なお、本明細書、特許請求の範囲等において足部とは、脚部のうち踝より下方の接地部を指すものとする。
本発明によれば、車両の衝突によってフロアトンネルが圧縮された際、第1のビードが変形の起点となって、ここを端部としてしわ状の折れ曲がりが発生する。このとき、第2のビードはフロアトンネルの変形をコントロールし、この折れ曲がりが第2のビードよりも下側へ伸展することを防止する。
このため、本発明によれば、フロアトンネル前端部近傍における側面下部の変形を抑制し、フロアトンネルの側面部の変形による乗員足部の傷害を軽減することができる。
本発明は、衝突時のフロアトンネル変形による乗員足部の傷害を軽減する車体前部構造を提供する課題を、トーボード近傍に設けられるフロアトンネルの前端部であるエクステンションの上面部から側面部の上部にかけて周方向に延びた第1のビードを形成し、これよりも後方側の側面部に、斜め前後方向に延びかつ上下方向に配列された第2のビードを形成することによって解決した。
以下、本発明を適用した車体前部構造の実施例について説明する。
本実施例の車体前部構造は、例えば2ボックス又は3ボックスのキャビン前方にエンジンルームを有するフロントエンジン乗用車に適用されるものである。なお、本実施例の乗用車は、左側にステアリング系を含む運転装置が設けられたLHD車である。
乗員の居住空間であるキャビンの前側下部には、トーボードが設けられている。
図1は、トーボードを車両後方側(車室内側)から見た図である。
図2は、図1の側面視透視図(図1のII−II部矢視図)である。
トーボード10は、その主要部が例えば鋼板をプレス加工することによって一体に形成され、さらに、別部材であるエクステンション20が溶接等によって接合されている。
トーボード10の上部11は、車両の前後方向にほぼ直交するほぼ平板状に形成されている。この上部11は、エンジンルームとキャビンとを区画するバルクヘッド(隔壁)としても機能する。また、上部11には、ステアリングシャフトが通される開口のほか、各種部品が取り付けられる基部が形成されている。
トーボード10の下部12は、図2に示すように、上部11に接続された上端部よりも下端部のほうが車両後方側となるように傾斜して配置されている。また、下部12の下端部はほぼ水平面とされ、ここには図示しないフロアパネルの前端部が接続される。この下部12は、前席(運転席、助手席)の乗員の足元における床面部を構成する。
図2に示すように、運転者の右足によって操作されるアクセルペダルAは、トーボード10の下部12に対向して配置されている。
トーボード10の下部12の左右側端部には、前輪を収容するタイヤハウスの後側壁面を構成する張出部13がそれぞれ形成されている。張出部13は、キャビン内側へドーム状に張り出して形成されている。
トーボード10の下部12における車幅方向中央部には、切欠部14が形成されている。切欠部14は、下部12の下端部を上方へ凹ませて形成されている。切欠部14は、車両の図示しないトランスミッション、プロペラシャフト、エキゾーストパイプ等が収容されるフロアトンネルの前端部に設けられ、内周縁部に沿ってエクステンション20の前端部が接合される部分である。
エクステンション20は、キャビン床面における車幅方向中央部に設けられ、前後方向に延びたフロアトンネルの前端部を構成する部分である。
図3は、エクステンション20を運転席側の斜め後方側かつ斜め上方側から見た外観斜視図である。
エクステンション20は、上面部21及び側面部22を、例えば鋼板をプレス成型することによって一体に形成したものである。
また、エクステンション20には、フランジ部23、凸部24、前側周方向ビード25、後側周方向ビード26、上側前後方向ビード27、下側前後方向ビード28が形成されている。これらも上面部21及び側面部22とともに一体に形成されている。
上面部21は、エクステンション20の車幅方向中央部に設けられ、前後方向にほぼ沿って延びた帯状の領域である。上面部21は、図2に示すように、後端部側が前端部側よりも下がるように傾斜して配置されている。上面部21の前端部は、トーボード10の切欠部14の上端部に接続されている。
側面部22は、上面部21の側端部とトーボード10の下部12との間にわたして設けられた部分であり、フロアトンネル前端部における側壁を構成する。なお、図1から図3において、左右の側面部22には、それぞれ添え字L,Rを付して図示する。
また、上面部21と側面部22とが接する境界部は、円弧状の横断面形状を有する曲面として形成されている。
フランジ部23は、上面部21及び側面部22の前端縁部に沿って設けられ、トーボード10の切欠部14の内周縁部と溶接によって接合される溶接しろである。
凸部24は、上面部21の前端部付近の領域に設けられ、他部品との干渉を防止するために上方へ張り出して形成された部分である。
前側周方向ビード25は、凸部24を車幅方向に挟んだ両側にそれぞれ設けられている。前側周方向ビード25は、上面部21から側面部22の上部にかけて連続して設けられている。前側周方向ビード25は、上面部21においては車幅方向にほぼ沿って延び、また側面部22においては上下方向にほぼ沿って延び、上面部21と側面部22とが接する曲面部においては、その周方向にほぼ沿って延びている。
後側周方向ビード26は、凸部24の後端部に隣接して設けられ、上面部21から左右の側面部22にかけて連続して設けられている。前側周方向ビード25は、上面部21においては車幅方向にほぼ沿って延び、また側面部22においては上下方向にほぼ沿って延び、上面部21と側面部22とが接する曲面部においては、その周方向にほぼ沿って延びている。
後側周方向ビード26は、本発明にいう第1のビードとして機能する。
上側前後方向ビード27及び下側前後方向ビード28は、左側の側面22Lにおける後側周方向ビード26よりも後方側かつ下方の領域に配置されている。上側前後方向ビード27及び下側前後方向ビード28は、車両の前後方向にほぼ沿って延び、前端部が後端部よりもわずかに高くなるように微少な傾斜をつけて配置されている。上側前後方向ビード27と下側前後方向ビード28とは、上下方向に離間してほぼ平行に配置されている。
上側前後方向ビード27及び下側前後方向ビード28は、本発明にいう第2のビードとして機能する。
ここで、後側周方向ビード26の一部と下側前後方向ビード28の一部とを結んだ直線のうち最も下側にあるもの(図2及び図3における「直線L」)が、車両側面視において、アクセルペダルAに載せられる乗員足部よりも上方に配置されるように、各ビードの位置関係が設定されている。
次に、本実施例の車体前部構造における車両の正面衝突時のエクステンション20の変形について説明する。
エクステンション20に対して、前後方向の圧縮荷重が作用すると、後側周方向ビード26を変形の起点とし、ここから後方側へ延びるしわ状の折れ曲がり変形が発生する。この折れ曲がり変形は、上側前後方向ビード27又は下側前後方向ビード28のいずれかに達して止まり、下側前後方向ビード28のさらに下側に回り込むことはない。
この変形によって、側面22Lの上部は車幅方向外側(キャビン内側)に山型に張り出す。図2及び図3に、この張り出しの稜線が形成される箇所の一例を破線Rによって図示する。
以上説明した本実施例によれば、車両の衝突によってフロアトンネルの前端部を構成するエクステンション20が前後方向に圧縮された際、後側周方向ビード26が変形の起点とするしわ状の折れ曲がりが発生するが、このとき、上下の前後方向ビード27,28はエクステンション20の側面部22Lの変形をコントロールし、この折れ曲がりが各前後方向ビード27,28よりも下側へ伸展することを防止する。
このため、本実施例によれば、エクステンション20における側面部22L下部の変形を抑制し、側面部22Lの変形による乗員足部の傷害を軽減することができる。
また、後側周方向ビード26の一部と下側前後方向ビード28の一部とを結んだ直線のうち最も下側にある直線Lが、車両側面視において、アクセルペダルAに載せられる乗員足部よりも上方に配置されることによって、折れ曲がり変形の稜線が確実に乗員足部よりも上方に形成され、乗員保護を図ることができる。
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)各部材の分割や形状、構造、製法等は上述した実施例に限定されず、適宜変更することができる。
(2)第1のビード及び第2のビードの形状や本数は、特に実施例の構成には限定されない。また、第1のビード及び第2のビードは、それぞれ周方向及び前後方向にほぼ沿っている限り、実施例に示す程度の軽微な傾斜を与えてもよい。
本発明の車体前部構造を適用した実施例の車両におけるトーボードの後方視図である。 図1のトーボードの側面視透視図である。 図1のトーボードに接合されるエクステンションの外観斜視図である。
符号の説明
10 トーボード 11 上部
12 下部 13 張出部
14 切欠部
20 エクステンション 21 上面部
22(22L,22R) 側面部 23 フランジ部
24 凸部 25 前側周方向ビード
26 後側周方向ビード(第1のビード)
27 上側前後方向ビード(第2のビード)
28 下側前後方向ビード(第2のビード)
A アクセルペダル
R 変形の稜線
L ビード26,28の一部を結んだ直線のうち最下部にある直線

Claims (2)

  1. 車室前方下部に設けられ前席乗員足元における床面部を構成し、車幅方向中央部における下端部に切欠部が形成されたトーボードと、
    前記床面部に対して上方へ張り出しかつ車両前後方向に延びて形成され、前端部が前記トーボードの前記切欠部に接続されたフロアトンネルと
    を備える車体前部構造であって、
    前記フロアトンネルは、前端部近傍における上面部と側面部上方との少なくとも一方に配置され周方向にほぼ沿って延びた第1のビードと、前記第1のビードよりも後方側の側面部において前記上面部から離間しかつ前記第1のビードよりも下方に配置され前後方向にほぼ沿って延びた第2のビードとを有すること
    を特徴とする車体前部構造。
  2. 前記第1のビードの一部と前記第2のビードの一部とを結んだ直線のうち最も下側にあるものが、車両側面視においてアクセルペダルに載せられる乗員足部よりも上方に配置されること
    を特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
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