JP5147032B2 - シアニン色素 - Google Patents

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Description

【0001】
この発明は新規なシアニン色素に関するものであり、とりわけ、光吸収剤として有用な分子内にスクアリリウム構造を有するシアニン色素に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生物は、自然光をはじめとして、さまざまな光にさらされている。自然光は、紫外領域、可視領域及び赤外領域の光からなり、多くの生物にとって、生存していくうえで不可欠の要素ではあるけれども、個々の領域の光についてみると、生物にとって有用なものもあれば、そうでないものもある。例えば、紫外領域及び可視領域の光は、植物における光合成や動物におけるビタミンDの合成に不可欠の要素ではあるけれども、露光がすぎると、皮膚の細胞死を起こしたり、場合によっては、DNAを損傷し、皮膚癌を招来する。一方、赤外領域の光は、生物を温熱する作用はあるものの、露光がすぎると、火傷を起こしたり、近赤外領域の光のように、白内障を増悪させるものもある。さらに、ある種の免疫疾患やウイルス性疾患においては、自然光が直接又は間接の原因になって、疾患が発症したり、症状が増悪することがある。露光に伴う斯かる問題は、自然光のみならず、人工光を含めた環境光一般に内包されている。目覚しい進歩を遂げつつある近代科学は、生物における光の有用な作用とともに、露光に伴うさまざまな障害や不都合を明らかにしてきた。斯くして、従来より、諸分野において、多種多様の遮光手段が提案されてきた。
【0003】
遮光手段は、光を物体によって遮断する物理的手段と、光を光吸収剤により吸収することによって遮断する化学的手段に大別することができる。光吸収剤として有機色素化合物を用いる化学的手段についてみると、例えば、衣料の分野においては、特開平7−189018号公報及び特開平9−255890号公報にみられるように、従来、ベンゾトリアゾール誘導体やベンゾフェノン誘導体などの紫外線吸収能を有する有機色素化合物を繊維に練り込むことによって、衣料に紫外線遮断能を付与する方法と、アミニウム誘導体などの赤外線吸収能を有する有機色素化合物を用いて繊維を染色することによって、衣料に赤外線遮断能を付与する方法が知られていた。しかしながら、これらの方法のうち、前者の方法によるときには、紫外領域の光は遮断できるものの、それ以外の領域の光は全く遮断できないという難点があった。一方、後者の方法は、赤外領域以外の光を全く遮断できないうえに、光吸収剤自体が発色するので、衣料によっては、所期の色彩、色調、風合を整えるのが難しいという難点があった。
【0004】
昨今、自然光や人工光による障害が周知されるに伴い、衣料の分野のみならず、それ以外の諸分野においても、紫外領域から赤外領域にいたる広範な光の領域において、所望の領域の光を効率的に遮断し得る光吸収剤が希求されるようになった。従来技術における前述のごとき難点を解消するとともに、時代の要請によく対応し得る方法として、同じ出願人による特開2000−328039号公報においては、紫外領域、可視領域及び/又は赤外領域の光を吸収するカルコン構造、ベーススチリル構造、シアニン構造、メロシアニン構造、フェニルメタン構造、クマリン構造、ピリリウム構造又はニッケル錯体構造のいずれかを有する有機色素化合物を用途に応じて適宜組合せて用いることが提案されている。しかしながら、斯かる有機色素化合物を組合せて用いる場合であっても、組合せる個々の有機色素化合物の種類や配合割合は、やはり、用途に応じて試行錯誤的に一つ一つ決めていかざるを得ない。斯かる状況において、特開2000−328039号公報が具体的に開示する有機色素化合物、とりわけ、可視光を吸収する有機色素化合物の種類は、多種多様の用途に充分対応できるほど多いとは言えない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
斯かる状況に鑑み、この発明の課題は、可視光を吸収する有機色素化合物、とりわけ、シアニン構造を有する新規な有機色素化合物とその用途を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者が鋭意研究し、検索したところ、スクアリリウム構造を有するトリメチン鎖の両端に、インドール構造を有する、互いに同じか異なる環状基が結合してなるシアニン色素に到達した。斯かるシアニン色素は、黄色乃至赤色域の可視光を効率的に吸収し、耐光性も大きいことから、単独又は他の有機色素化合物と組合せることによって、可視領域の光を遮断するための光吸収剤として有利に用いることができる。この発明は、新規な有機色素化合物の創製と、その産業上有用な性質の発見に基づくものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
この発明は、スクアリリウム構造を有するトリメチン鎖の両端にインドール構造を有する、互いに同じか異なる環状基が結合してなるシアニン色素に関するものである。この発明は、斯かるシアニン色素全般に関するものであるが、光吸収剤として用いる場合には、一般式1で表されるものが好適である。
【0008】
【化4】
Figure 0005147032
【0009】
一般式1において、R及びRは互いに同じか異なる脂肪族炭化水素基を表し、それらの脂肪族炭化水素基は置換基を1又は複数有していてもよい。個々の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテニル基、2−ペンテン−4−イニル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ペンチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。
【0010】
斯かる脂肪族炭化水素基における水素原子は、この発明の目的を逸脱しない範囲で、その1又は複数が置換されていてもよい。個々の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などの脂肪族炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−シクロヘキセニル基、シクロヘプチル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基などの芳香族炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシ基などのエーテル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基が挙げられる。
【0011】
溶剤の種類にもよるけれども、この発明のシアニン色素は、一般に、R及びRにおける脂肪族炭化水素基の鎖長が短かくなるにつれて、溶剤における溶解度が低下する。例えば、R及びRの炭素数がともに1であるシアニン色素は、後述のとおり、テトラヒドロフラン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのエーテル系、ケトン系の有機溶剤に不溶であることから、取扱いが困難になり、用途が制限される。溶解度の観点だけからみれば、鎖長の上限については特に制限がないものの、鎖長が長すぎると、シアニン色素が結晶し難くなったり、精製が困難になることがある。したがって、用途にもよるけれども、R及びRにおける脂肪族炭化水素基の鎖長は、通常、炭素数2以上、望ましくは、4乃至18の範囲で加減する。この発明は、R及びRがともにメチル基であるシアニン色素を除外するものではないけれども、斯かるシアニン色素は溶剤における溶解度が小さいことから、用途にもよるけれども、R又はRのいずれかがメチル基である場合には、他方を炭素数2以上の脂肪族炭化水素基とし、R及びRにおける炭素数の和が2を上回るようにするのが望ましい。
【0012】
一般式1におけるR及びRは、互いに同じか異なる適宜の置換基を表す。個々の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基などの脂肪族炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基などの芳香族炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシ基などのエーテル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、さらには、カルボキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。
【0013】
一般式1におけるZ及びZは、インドール構造を完成するための互いに同じか異なる環状基を表し、それらの環状基は置換基を1又は複数有していてもよい。個々の環状基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環などの芳香環、さらには、ピリジン環、ピラジン環、キノリン環、キノキサリン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環などの複素環が挙げられ、斯かる環状基に結合する置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基などの脂肪族炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基などの芳香族炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、フェノキシ基などのエーテル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、さらには、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。
【0014】
この発明によるシアニン色素の具体例としては、例えば、化学式1乃至化学式26で表されるものが挙げられる。これらは、いずれも、黄色乃至赤色域、とりわけ、波長550乃至620nm付近の分子吸光係数(以下、分子吸光係数を「ε」と略記することがある。)が大きく、斯かる波長域の可視光を効率的に吸収するうえに、耐光性が大きく、汎用されるアルコール系、エーテル系、ケトン系及びハロゲン系の有機溶剤における溶解度も実用上支障がないほど大きい。
【0015】
【化5】
Figure 0005147032
【0016】
【化6】
Figure 0005147032
【0017】
【化7】
Figure 0005147032
【0018】
【化8】
Figure 0005147032
【0019】
【化9】
Figure 0005147032
【0020】
【化10】
Figure 0005147032
【0021】
【化11】
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【0022】
【化12】
Figure 0005147032
【0023】
【化13】
Figure 0005147032
【0024】
【化14】
Figure 0005147032
【0025】
【化15】
Figure 0005147032
【0026】
【化16】
Figure 0005147032
【0027】
【化17】
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【0028】
【化18】
Figure 0005147032
【0029】
【化19】
Figure 0005147032
【0030】
【化20】
Figure 0005147032
【0031】
【化21】
Figure 0005147032
【0032】
【化22】
Figure 0005147032
【0033】
【化23】
Figure 0005147032
【0034】
【化24】
Figure 0005147032
【0035】
【化25】
Figure 0005147032
【0036】
【化26】
Figure 0005147032
【0037】
【化27】
Figure 0005147032
【0038】
【化28】
Figure 0005147032
【0039】
【化29】
Figure 0005147032
【0040】
【化30】
Figure 0005147032
【0041】
この発明のシアニン色素は諸種の方法で調製できるが、経済性を重視するのであれば、一般式1に対応するR、R及びZを有する一般式2で表される化合物と、一般式1に対応するR、R及びZを有する一般式3で表される化合物と、スクエア酸(3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン、「四角酸」とも言う。)とを反応させる工程を経由する方法が好適である。
【0042】
【化31】
Figure 0005147032
【0043】
【化32】
Figure 0005147032
【0044】
すなわち、反応容器に適宜溶剤をとり、これに適量のスクエア酸とともに、一般式2及び一般式3で表される化合物をそれぞれ適量加え(通常等モル前後)、加熱還流などにより、攪拌しながら、周囲温度か周囲温度を上回る温度、通常、60乃至120℃で反応させる。
【0045】
溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、α−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化物、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、フェノール、ベンジルアルコール、クレゾール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類及びフェノール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、THF、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、アニソール、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどのエーテル類、酢酸、無水酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸、酢酸エチル、炭酸ブチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチル燐酸トリアミドなどの酸及び酸誘導体、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫化合物が挙げられ、必要に応じて、これらは適宜組合せて用いられる。
【0046】
溶剤を用いる場合、一般に、溶剤が多くなると反応の効率が低下し、反対に、少なくなると均一に加熱・攪拌するのが困難になったり、副反応が起こり易くなる。したがって、溶剤の量は、重量比で、原料化合物全体の100倍まで、通常、5乃至50倍にするのが望ましい。原料化合物の種類や反応条件にもよるけれども、反応は50時間以内、通常、0.5乃至20時間で完結する。反応の進行は、例えば、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどの汎用の方法によってモニターすることができる。化学式1乃至化学式26で表されるシアニン色素は、いずれも、この方法により所望量を製造することができる。なお、一般式2及び一般式3で表される化合物は、いずれも、インドールとハロゲン化アルキルとを反応させる汎用の方法により得ることができ、市販品がある場合には、それを用いればよい。なお、一般式1におけるR及びR並びにR及びRが、それぞれ、互いに同じであるシアニン色素は、調製に際して、R及びR並びにR及びRが、それぞれ、互いに異なるシアニン色素と比較して、精製し易く、収率も有意に高いという特徴がある。
【0047】
斯くして得られるこの発明のシアニン色素は、反応混合物のまま用いられることもあるけれども、通常、使用に先立って、例えば、溶解、抽出、分液、傾斜、濾過、濃縮、薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、蒸留、昇華、結晶化などの類縁化合物を精製するための汎用の方法により精製され、必要に応じて、これらの方法は適宜組合せて適用される。用途にもよるけれども、例えば、光学フィルター、有機電界発光、光化学的重合、レーザー記録などの光学又は光エレクトロニクスの分野において光吸収剤、発光剤又は増感剤として用いる場合には、使用に先立って、例えば、蒸留、結晶化及び/又は昇華などの方法により高度に精製しておくのが望ましい。
【0048】
この発明によるシアニン色素は、既述のとおり、黄色乃至赤色域の可視光、とりわけ、波長550乃至620nm付近の可視光を効率的に吸収するうえに、耐光性が大きいので、例えば、特開2000−328039号公報に記載された方法に準じて、単独又は用途に応じた紫外領域、可視領域又は赤外領域の光を吸収する他の有機色素化合物や、例えば、天然若しくは合成高分子による担持材、マイクロカプセル化剤、バインダー、モノマー、オリゴマー、多官能試薬、糊剤、接着剤、着色剤、難燃剤、しわ取り剤、消臭剤、撥水剤、撥油剤、制電剤、導電剤、吸水剤、防湿剤、芳香剤、酸化防止剤、防虫剤、防黴剤、抗菌剤、抗アレルギー剤、血行促進剤、界面活性剤、乳化安定剤及びキレート剤の1又は複数とともに、溶剤に溶解させるか溶解させることなく、混合、塗布、噴霧、浸漬、固着などの方法によって、例えば、衣料用品、建寝装用品、衛生用品、光学フィルターなどの物品に含有せしめることによって、物品の光透過率や光反射率を所望の波長や度合に調節したり、物品を透過したり反射する光を所望の色度、色彩、色調、風合に整えることができる実益がある。
【0049】
さらに、この発明のシアニン色素は、黄色乃至赤色域の可視光を吸収することから、例えば、光化学的重合やレーザー記録などの光エレクトロニクスの分野における光吸収剤や増感剤として有用であり、また、可視光を発光するものは、有機電界発光や色素レーザーにおける発光剤としても有利に用いることができる。
【0050】
以下、この発明の実施の形態につき、実施例に基づき説明する。
【0051】
【実施例1】
<シアニン色素>
反応容器にジメチルスルホキシドを適量とり、2−メチルインドール25gを加え、溶解した後、攪拌下、溶液の温度が60℃を越えないように、ナトリウムアミド8.6gと沃化オクチル55gをこの順序で逐次加えた後、同様にしてさらに1時間攪拌しながら反応させた。その後、反応混合物へ水を加え、酢酸エチルにより抽出した後、酢酸エチル層を分液し、減圧濃縮して化学式27で表されるインドール化合物の油状物47gを得た。
【0052】
【化33】
Figure 0005147032
【0053】
次に、反応容器に適量のベンゼン/ブタノール混液をとり、上記で得られた化学式27で表されるインドール化合物30gとスクエア酸7gを加え、加熱還流下で2時間反応させた。反応混合物をメタノール/アセトン混液により再結晶したところ、化学式3で表されるシアニン色素の輝緑色結晶が13.5g得られた。
【0054】
結晶の一部をとり、常法により測定したところ、本例のシアニン色素の融点は179乃至180℃であった。メタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長575nm付近に吸収極大(ε=1.67×10)が観察された。また、常法により、クロロホルム−d溶液における本例のシアニン色素のH−核磁気共鳴スペクトル(以下、「H−NMRスペクトル」と言う。)を測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が0.88(6H、t)、1.25乃至1.50(20H、m)、1.77乃至1.85(4H、m)、3.32(6H、s)、4.15(4H、t)、7.23乃至7.36(8H、m)及び9.21(2H、d)の位置にピークが観察された。
【0055】
【実施例2】
<シアニン色素>
沃化オクチルに代えて沃化ブチルを用いた以外は実施例1におけると同様に反応させて、化学式28で表されるインドール化合物を得た。次いで、化学式27で表されるインドール化合物に代えて、斯くして得られた化学式28で表されるインドール化合物を用いた以外は実施例1におけると同様に反応させて、化学式2で表されるシアニン色素の輝緑色結晶を得た。
【0056】
【化34】
Figure 0005147032
【0057】
結晶の一部をとり、常法により測定したところ、本例のシアニン色素の融点は234乃至236℃であった。メタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長576nm付近に吸収極大(ε=1.65×10)が観察された。また、常法により、クロロホルム−d溶液における本例のシアニン色素のH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.00(6H、t)、1.46(4H、m)、1.82(4H、m)、3.32(6H、s)、4.16(4H、t)、7.26乃至7.36(8H、m)及び9.21(2H、d)の位置にピークが観察された。
【0058】
【実施例3】
<シアニン色素>
沃化オクチルに代えて沃化オクタデシルを用いた以外は実施例1におけると同様に反応させて、化学式29で表されるインドール化合物を得た。次いで、化学式27で表されるインドール化合物に代えて、斯くして得られた化学式29で表されるインドール化合物を用いた以外は実施例1におけると同様に反応させて、化学式5で表されるシアニン色素の緑色結晶を得た。
【0059】
【化35】
Figure 0005147032
【0060】
結晶の一部をとり、常法により測定したところ、本例のシアニン色素の融点は146乃至147℃であった。メタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長581nm付近に吸収極大(ε=1.66×10)が観察された。さらに、常法により、クロロホルム−d溶液における本例のシアニン色素のH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.00(6H、t)、1.46(4H、m)、1.82(4H、m)、3.32(6H、s)、4.16(4H、t)、7.26乃至7.36(8H、m)及び9.21(2H、d)の位置にピークが観察された。
【0061】
【実施例4】
<シアニン色素>
沃化オクチルに代えて2−エチルブロモヘキサンを用いた以外は実施例1におけると同様に反応させて、化学式30で表されるインドール化合物を得た。次いで、化学式27で表されるインドール化合物に代えて、斯くして得られた化学式30で表されるインドール化合物を用いた以外は実施例1におけると同様に反応させて、化学式4で表されるシアニン色素の緑色結晶を得た。
【0062】
【化36】
Figure 0005147032
【0063】
結晶の一部をとり、常法により測定したところ、本例のシアニン色素の融点は194乃至196℃であった。メタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長576nm付近に吸収極大(ε=1.65×10)が観察された。また、常法により、クロロホルム−d溶液における本例のシアニン色素のH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が0.86乃至0.96(12H、m)、1.25乃至1.50(16H、m)、1.99(4H、m)、3.31(6H、s)、4.06(4H、d)、7.22乃至7.36(8H、m)及び9.21(2H、d)の位置にピークが観察された。
【0064】
なお、シアニン色素の構造によって反応条件や収率が若干違うものの、この発明によるシアニン色素は、上記以外の化学式1乃至化学式26で表されるものも含めて、実施例1乃至実施例4に記載された方法によるか、それらの方法に準じて所望量を得ることができる。
【0065】
【実験例】
<シアニン色素の溶解性>
化学式2、化学式3及び化学式5で表される3種類のシアニン色素と、実施例1の方法に準じて調製した化学式31で表されるシアニン色素につき、常法にしたがって、テトラヒドロフラン(THF)、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、クロロホルム、エチルメチルケトン(EMK)、イソプロピルメチルケトン(IPMK)及びシクロヘキサノンにおける20℃の溶解性を調べた。結果は表1のとおりである。
【0066】
【化37】
Figure 0005147032
【0067】
【表1】
Figure 0005147032
【0068】
表1の結果は、一般式1におけるR及びRの鎖長が短かくなるにつれて、有機溶剤におけるシアニン色素の溶解牲が低下することを物語っている。すなわち、R及びRの鎖長がともに炭素数1である化学式31で表されるシアニン色素は、クロロホルムには溶解するものの、試験したそれ以外の溶剤には実質的に溶解せず、不溶であった。これに対して、R及びRの鎖長がともに炭素数4乃至18である化学式2、化学式3又は化学式5で表されるシアニン色素は、R及びRの鎖長が長くなるにつれて、クロロホルムにおける溶解性が高くなった(溶解度130mg/100ml以上)。しかも、化学式2、化学式3及び化学式5で表されるシアニン色素は化学式31で表されるシアニン色素が実質的に溶解しないテトラヒドロフラン(溶解度10mg/100ml以上)などのエーテル溶剤に実質的に溶解し、化学式2及び化学式3で表されるシアニン色素はエチルメチルケトン、イソプロピルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系の溶剤にも溶解した(溶解度3mg/100ml)。このことは、一般式1で表されるシアニン色素においては、R及びRの鎖長が比較的長いものが、溶剤による制限少なく、用途に応じた所望の濃度の溶液を比較的容易に調製し得るのに対して、R及びRの鎖長が比較的短かいものは、用途が溶剤によってある程度制限を受けることを示している。
【0069】
【発明の効果】
叙上のごとく、この発明は、スクアリリウム構造を有するトリメチン鎖の両端に、互いに同じか異なる、インドール構造を有する環状基が結合してなるシアニン色素の創製と、その産業上有用な性質の発見に基づくものである。この発明のシアニン色素は、黄色乃至赤色域の可視光を効率的に吸収するうえに、その多くが汎用の有機溶剤によく溶ける。然かして、この発明のシアニン色素は、単独又は他の有機色素化合物とともに、光吸収剤として、例えば、衣料用品、建寝装用品、衛生用品、光学フィルターなどへ適用することによって、それらの物品の光透過率又は光反射率を所望の波長や度合に調節したり、物品を透過したり反射する光を所望の色度、色調、色彩、風合に整えることができる実益がある。さらに、この発明のシアニン色素は、黄色乃至赤色域の可視光を吸収することから、例えば、光化学的重合やレーザー記録などの光エレクトロニクスの分野における光吸収剤や増感剤として有用であり、また、可視光を発光するものは、有機電界発光や色素レーザーにおける発光剤としても有利に用いることができる。
【0070】
斯くも有用なシアニン色素は、インドール化合物とスクエア酸とを反応させる工程を経由するこの発明の方法により所望量を製造することができる。
【0071】
斯くも顕著な効果を奏するこの発明は、斯界に貢献すること誠に多大な、意義のある発明であると言える。

Claims (2)

  1. 下記化学式6、7、8、9、14又は21で表されるシアニン色素
    Figure 0005147032
    Figure 0005147032
    Figure 0005147032
    Figure 0005147032
    Figure 0005147032
    Figure 0005147032
  2. 請求項に記載のシアニン色素を含んでなる光吸収剤。
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