JP5813561B2 - 色材、及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱性及び染着性に優れた新規な色材、及びその製造方法に関する。
今日、多数の染料が知られており、大きくは天然染料及び合成染料として区別がなされている。該合成染料としては、例えば、アニリンブルー、フクシンまたはメチルオレンジなどが挙げられるが、ほとんどの合成染料は、芳香族または複素環を有し、イオン性(例えば、すべての水溶性染料)または非イオン性化合物(例えば、分散染料)のいずれかである。また、イオン性染料の場合において、アニオン(陰イオン)性染料とカチオン(陽イオン)性染料との間で区別がされる。
上記カチオン性染料は、共役結合にわたり非局在化する正の電荷を有する有機カチオンと通常無機のアニオンからなる。またこれらは通常、置換されていてもよいアミノ基が共鳴に関与する染料である。よってカチオン性染料の選択は、対イオンであるアニオンの数や種類によることが多く、対アニオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、アルキルまたはアリール硫酸イオン、トシル酸イオン、酢酸またはシュウ酸イオン等が挙げられる。
カチオン性染料であるローダミン、サフラニンまたはビクトリアブルーは、通常、対イオンとして塩化物イオンまたはトシル酸を有する。しかし、これらの化合物は耐熱性が不十分であった。
トリアリールメタン系染料の熱への耐久性を向上させるためにトリアリールメタン染料の対アニオンに塩化物イオン又はアリール硫酸イオンを用いた例が知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献2では、色特性及び耐熱性、耐光性、耐溶剤性に優れる安定なカラーフィルタ用着色組成物を得る手段として、トリアリールメタン系塩基性染料と少なくとも2つのスルホン基を有する有機スルホン化物とからなる造塩化合物が記載されている。
また、特許文献3では、耐光性に優れ、耐光性をも満たす着色樹脂組成物を得る手段として、フタロシアニンやアントラキノンなどの色素骨格のスルホン化物を対アニオンとし、カチオンであるトリアリールメタン骨格と塩形成する手法が報告されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載の染料と対アニオンの造塩化合物は、いずれも耐熱性、及び繊維への染着性が不十分であり色落ちの問題があった。
特許文献4には、Si原子を少なくとも10個含むポリシロキサンにより高度に架橋されたポリシロキサン色素が記載されている。しかしながら、特許文献4に記載のポリシロキサン色素は、その合成方法から、色素骨格がひとつだけの未反応化合物や重合度の異なる色素が存在する混合物であるため、後述する比較例のように、溶剤に対して一部溶け残りが生じる一方、当該色素により染着された繊維は、洗浄により一部色落ちが生じるなど、物性が安定していなかった。また、特定の重合度の色素だけを分離することは困難であり、生産性が悪いという問題があった。
特開2008−304766号公報 特開2011−7847号公報 WO2009/107734号公報 特表2010−526897号公報
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、染着性に優れ、かつ耐熱性にも優れた色材、及び、当該色材を高純度、かつ高収率で得られる色材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る色材は、下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする。
(一般式(I)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する環状の脂肪族炭化水素基表し、炭素鎖中にO、S、Nが含まれていてもよい。Bは1価のアニオンを表し、複数あるBは同一であっても異なっていてもよい。R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、RとR、RとRが結合して環構造を形成してもよい。Arは置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。複数あるR〜R及びArはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
aは2以上の整数を表す。bは0又は1であり、bが0のとき結合は存在しない。複数あるbは同一であっても異なっていてもよい。)
本発明に係る色材においては、前記一般式(I)におけるアニオン(B)が、スルホナト基(−SO 基)を有する有機アニオンであることが、染着性及び耐熱性の点から好ましい。
本発明に係る色材においては、前記有機アニオンが、下記一般式(II)表されるアニオンであることが、染着性及び耐熱性の点から好ましい。
(一般式(II)中、Arは置換基を有していてもよい1価の芳香族基である。)
本発明に係る一般式(I)で表される色材の製造方法は、下記一般式(A)で表される化合物と、下記一般式(B)で表される化合物とを縮合反応させる工程を有することを特徴とする。
(上記一般式(A)、上記一般式(B)及び上記一般式(I)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する環状の脂肪族炭化水素基表し、炭素鎖中にO、S、Nが含まれていてもよい。Bは1価のアニオンを表し、複数あるBは同一であっても異なっていてもよい。R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、RとR、RとRが結合して環構造を形成してもよい。Arは置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表し、Ar1’はArに水素が結合した1価の芳香族基である。複数あるR〜R、Ar及びAr1’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
aは2以上の整数を表す。bは0又は1であり、bが0のとき結合は存在しない。複数あるbは同一であっても異なっていてもよい。)
本発明によれば、染着性に優れ、かつ耐熱性にも優れた色材、及び、当該色材を高純度、かつ高収率で得られる色材の製造方法を提供することができる。
参考例1の色材A、実施例3の色材C、及びBasic Blue 7の吸光スペクトルである。
以下、本発明に係る色材及びその製造方法について詳しく説明する。
[色材]
本発明に係る色材は、下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする。
(一般式(I)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にO、S、Nが含まれていてもよい。Bは1価のアニオンを表し、複数あるBは同一であっても異なっていてもよい。R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、RとR、RとRが結合して環構造を形成してもよい。Arは置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。複数あるR〜R及びArはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
aは2以上の整数を表す。bは0又は1であり、bが0のとき結合は存在しない。複数あるbは同一であっても異なっていてもよい。)
本発明に係る色材は、染着性及び耐熱性に優れている。その理由は、未解明ではあるが、以下のように推定される。
従来、一般に、耐熱性が低いという問題があった。この問題を克服する手段として、染料を造塩化合物とする手法が用いられてきた。例えば、トリアリールメタン染料を造塩する手法として、対アニオンとして2価のアニオンを用いる手法がある(例えば、特許文献2)。この手法によれば、2価の対アニオンが、2つの染料カチオンとイオン結合を形成することができるため、染料のみと比べて耐熱性が向上する。しかしながら、このような手法によっても、十分な耐熱性を得ることができなかった。また、カチオンの構造は変わらないため、基本的に水への溶解性は低下しなかった。
本発明の色材は、発色性を有するカチオン部が、下記一般式(IV)で表される構造を有する、2価以上のカチオンである。一般式(IV)で表されるカチオン部は、従来のトリアリールメタン系塩基性染料やキサンテン系塩基性染料と異なり、その塩化物であっても水に実質的に溶解しない。
従来のトリアリールメタン骨格一つのみからなるモノカチオンとアニオンを構成する結合種がイオン結合のみであると考えた場合、本発明の2価以上のカチオンからなる塩形成物を構成する結合種はイオン結合に加え、モノカチオン同士を連結する共有結合を含む構造であると考えることができる。そのため、下記一般式(IV)で表される構造を有する2価以上のカチオンからなる塩形成物は、従来のトリアリールメタン骨格一つからなる塩形成物よりも構成要素全体により強い結合種が増えた結果、安定性が高くなり、水和しにくくなるとともに耐熱性も向上するものと推定される。更に、一般式(IV)で表される構造は、連結基Aの影響で分子量が大きくなり、且つ、疎水性がより高くなるため、結合の安定性と相俟って水に実質的に溶解しなくなると推定される。このため、水や洗剤を用いて洗浄した場合であっても色落ちがなく、染着性に優れるものと推定される。
なお、前記一般式(I)で表される色材は、カチオン性の発色部位に直接結合する連結基Aの炭化水素がπ結合を有していないため、カチオン性の発色部位が有する色調や透過率等の色特性は、連結基Aの導入前後でほとんど変化しない。
(式(IV)中、A、R〜R、Ar、a及びbは、式(I)と同様である。)
前記一般式(I)におけるbは、0又は1の整数である。bが0の場合、下記式(V)で表されるトリアリールメタン骨格を有する。
(式(V)中、A、R〜R、Ar、a及びbは、式(I)と同様である。)
また、bが1の場合、下記式(VI)で表されるキサンテン骨格を有する。
(式(VI)中、A、R〜R、Ar、a及びbは、式(I)と同様である。)
複数あるbは同一であっても異なっていてもよい。すなわち、例えば、トリアリールメタン骨格のみ、又は、キサンテン骨格のみを複数有するカチオン部であってもよく、1分子内に、トリアリールメタン骨格とキサンテン骨格の両方を含むカチオン部であってもよい。色純度の点からは、同一骨格のみを有するカチオン部であることが好ましい。一方、トリアリールメタン骨格とキサンテン骨格の両方を含むカチオン部とすることにより、また、後述する置換基の組み合わせにより、一般式(I)の色材は、所望の色に調整することができる。
前記一般式(I)におけるAは、N(窒素原子)と直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にO(酸素原子)、S(硫黄原子)、N(窒素原子)が含まれていてもよいものである。Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないため、カチオン性の発色部位が有する色調や透過率等の色特性は、連結基Aや他の発色部位の影響を受けず、単量体と同様の色を保持することができる。
Aにおいて、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基は、Nと直接結合する末端の炭素原子がπ結合を有しなければ、直鎖、分岐又は環状のいずれであってもよく、末端以外の炭素原子が不飽和結合を有していてもよく、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に、O、S、Nが含まれていてもよい。例えば、カルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、アミド基等が含まれていてもよく、水素原子が更にハロゲン原子等に置換されていてもよい。
また、Aにおいて上記脂肪族炭化水素基を有する芳香族基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基を有する、単環又は多環芳香族基が挙げられ、置換基を有していてもよく、O、S、Nが含まれる複素環であってもよい。
中でも、骨格の堅牢性の点から、Aは、環状の脂肪族炭化水素基又は芳香族基を含むことが好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基としては、中でも、有橋脂環式炭化水素基が、骨格の堅牢性の点から好ましい。有橋脂環式炭化水素基とは、脂肪族環内に橋かけ構造を有し、多環構造を有する多環状脂肪族炭化水素基をいい、例えば、ノルボルナン、ビシクロ[2,2,2]オクタン、アダマンタン等が挙げられる。有橋脂環式炭化水素基の中でも、ノルボルナンが好ましい。また、芳香族基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環を含む基が挙げられ、中でも、ベンゼン環を含む基が好ましい。
原料入手の容易さの観点からAは2価が好ましい。例えば、Aが2価の有機基の場合、炭素数1〜20の直鎖、分岐、又は環状のアルキレン基や、キシリレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基を2個置換した芳香族基等が挙げられる。
〜Rにおけるアルキル基は、特に限定されない。例えば、炭素数1〜20の直鎖又は分岐状アルキル基等が挙げられ、中でも、炭素数が1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基であることが、製造及び原料調達の容易さの点から、より好ましい。中でも、R〜Rにおけるアルキル基がエチル基又はメチル基であることが特に好ましい。アルキル基が有してもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アリール基、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられ、置換されたアルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。
〜Rにおけるアリール基は、特に限定されない。例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基が有してもよい置換基としては、例えばアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
とR、RとRが結合して環構造を形成しているとは、RとR、RとRが窒素原子を介して環構造を形成していることをいう。環構造は特に限定されないが、例えばピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環等が挙げられる。
中でも化学的安定性の点からR〜Rとしては、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、又は、RとR、RとRが結合してピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環を形成していることが好ましい。
〜Rはそれぞれ独立に上記構造をとることができるが、中でも、色純度の点からRが水素原子であることが好ましく、さらに製造および原料調達の容易さの点からR〜Rがすべて同一であることがより好ましい。
Arにおける2価の芳香族基は特に限定されない。芳香族基は、炭素環からなる芳香族炭化水素基の他、複素環基であってもよい。芳香族炭化水素基における芳香族炭化水素としては、ベンゼン環の他、ナフタレン環、テトラリン環、インデン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の縮合多環芳香族炭化水素;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環式炭化水素が挙げられる。当該鎖状多環式炭化水素においては、ジフェニルエーテル等のように鎖状骨格中にO、S、Nを有していてもよい。一方、複素環基における複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール等の5員複素環;ピラン、ピロン、ピリジン、ピロン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の6員複素環;ベンゾフラン、チオナフテン、インドール、カルバゾール、クマリン、ベンゾ−ピロン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等の縮合多環式複素環が挙げられる。これらの芳香族基は置換基を有していてもよい。
芳香族基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
Arは炭素数が6〜20の芳香族基であることが好ましく、炭素数が10〜14の縮合多環式炭素環からなる芳香族基がより好ましい。中でも、構造が単純で原料が安価である点からフェニレン基やナフチレン基であることがより好ましい。
1分子内に複数あるR〜R及びArは、同一であっても異なっていてもよい。複数あるR〜R及びArがそれぞれ同一である場合には、発色部位が同一の発色を示すため、発色部位の単体と同様の色が再現でき、色純度の点から好ましい。一方、R〜R及びArのうち少なくとも1つを異なる置換基とした場合には、複数種の単量体を混合した色を再現することができ、所望の色に調整することができる。
本発明に係る色材において、アニオン部は、(B)で表される構造を有する1価のアニオンである。本発明の色材は1価のアニオンを有することにより、アルコール系溶媒やケトン系溶媒への溶解度が高く、高濃度の色材溶液を調製することも可能であり、種々の基材の染着に用いることができる。
は1価のアニオンであれば、特に限定されず、有機アニオンであっても無機アニオンであってもよい。ここで有機アニオンとは、炭素原子を少なくとも1つ含有するアニオンを表す。また、無機アニオンとは、炭素原子を含有しないアニオンを表し、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンのようなハロゲン化物イオンや、硝酸イオン(NO)、過塩素酸イオン(ClO )等が挙げられる。
が有機アニオンである場合、その構造は特に限定されない。中でも、アニオン性
置換基を有する有機基であることが好ましい。
アニオン性置換基としては、例えば、−SOSOCH、−SOCOCH、−SOSOCF、−SOCOCF、−CFSOSOCH、−CFSOCOCH、−CFSOSOCF、−CFSOCOCF等のイミド酸基や、−SO 、−CFSO 、−COO、−CFCOO等の置換基が挙げられる。
中でも、原材料入手の容易さや製造コスト、高い酸性度によりカチオンを安定化し発色状態を維持する効果が高い点から、イミド酸基や、−SO 、−CFSO が好ましく、更に、−SO (スルホナト基)であることが好ましい。
アニオン性置換基が置換される有機基としては、特に限定されない。当該有機基としては、直鎖、分岐、又は環状の飽和又は不飽和炭化水素基、単環又は多環芳香族基及びこれらが組み合わされた基が挙げられ、これらは炭素鎖中に、O、S、N等の異種原子が含まれていてもよく、カルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、アミド基が含まれていてもよく、水素原子が置換されていてもよい。有機基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記アニオン性置換基が置換される有機基としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、ビシクロ[2,2,2]ヘキサン、ビシクロ[3,2,3]オクタン、アダマンタン等の炭化水素;ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、トリフェニレン、フルオレン、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、インドール、プリン、キノリン、イソキノリン、キサンテン、カルバゾール等の芳香族化合物が挙げられ、更にハロゲン原子、アルキル基等の置換基を有していてもよい。
アニオン性置換基が置換される有機基としては、中でも、アニオン性置換基の導入が容易な点から、単環又は多環芳香族炭化水素基及びこれらが組み合わされた基であることが好ましい。
アニオンにより色変化しないことを目的とする場合には、400nm以下の波長領域に吸収極大をもつ有機基を用いることが好ましい。400nm以下の波長領域に吸収極大をもつ有機基としては、例えば、ナフタレン、テトラリン、インデン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン等の縮合多環式炭素環からなる有機基;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環式炭化水素からななる有機基;フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール等の5員複素環からなる有機基、ピラン、ピロン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の6員複素環からなる芳香族化合物;ベンゾフラン、チオナフテン、インドール、カルバゾール、クマリン、ベンゾ−ピロン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等の縮合多環式複素環からなる有機基等が挙げられる。
また、アニオン性置換基が置換される有機基としては、有機化合物又は有機金属化合物である、アゾ染料、アントラキノン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料及びフタロシアニン染料、インジゴ染料に由来する骨格を用いてもよい。或いは、従来公知の酸性染料、直接染料、酸性媒染染料を用いてもよい。
染料由来の骨格や酸性染料、直接染料、酸性媒染染料等を用いた場合には、得られる色材の色調が変化し、前記一般式(I)で表される色材の色調を所望のものに調整することができる。
染料由来の骨格を有するアニオンの中でも、下記一般式(III)で表されるアニオンが、耐熱性を向上する点から好ましい。
本発明の色材のアニオン部として、一般式(III)のアニオンを用いた場合には、前記カチオン部との組み合わせにより、色材を所望の色に調整することができる。
(一般式(III)中、Mは2個の水素原子、若しくは、Cu、Mg、Al、Ni、Co、Fe、又はZnを表す。スルホナト基(−SO 基)は、芳香環に置換している。)
また、本発明に係る色材において、前記有機アニオンが、下記一般式(II)で表されるアニオンであることが、耐熱性を向上する点から好ましい。
(一般式(II)中、Arは置換基を有していてもよい1価の芳香族基である。)
本発明の色材のアニオン部として、上記一般式(II)のアニオンを用いた場合には、アニオンが無色ないし薄い黄色であるため、生じた色材が一般式(I)で表されるカチオンがもつ固有の色を保持しやすいという特徴を有する。
Arにおける芳香族基は特に限定されない。芳香族基には、炭素環からなる芳香族炭化水素基の他、複素環であってもよい。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環の他、ナフタレン環、テトラリン環、インデン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の縮合多環芳香族炭化水素基;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環式炭化水素基が挙げられる。当該鎖状多環式炭化水素基においては、ジフェニルエーテル等のように鎖状骨格中にO、S等のヘテロ原子を有していてもよい。一方、複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール等の5員複素環;ピラン、ピロン、ピリジン、ピロン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の6員複素環;ベンゾフラン、チオナフテン、インドール、カルバゾール、クマリン、ベンゾ−ピロン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等の縮合多環式複素環が挙げられる。これらの芳香族基は置換基を有していてもよい。
芳香族基が有する置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
Arは炭素数が6〜20の芳香族基であることが好ましく、炭素数が10〜14の縮合多環式炭素環からなる芳香族基がより好ましい。中でも、構造が単純で原料が安価である点からフェニレン基やナフタレン基であることがより好ましい。
本発明の色材において、複数あるアニオン(B)は、同一であっても異なっていてもよく、有機アニオンと無機アニオンを組み合わせて用いることもできる。
本発明に係る色材は、溶媒に溶解させて用いることができる。本発明に係る色材を溶解する溶媒としては、メタノール、N−メチルピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。
一方、本発明に係る色材は、23℃における前記色材の溶解度が、0.1(mg/10g溶媒)以下の溶媒、すなわち、実質的に溶解しない溶媒又は難溶性の溶媒に分散させて用いることができる。この場合、その凝集状態を保持したまま溶媒中に分散されるため溶媒に溶解させて用いた場合に比べ、耐熱性が高くなる。中でも、23℃における前記色材の溶解度が、0.01(mg/10g溶媒)以下である溶媒が好ましく、更に、前記色材を実質的に溶解しない溶媒がより好ましい。本発明に係る色材は正塩であるため、酸性塩を用いた場合のように、分散が好適に進行しない場合や、分散液が保存時にゲル化するといった問題が生じず、分散性及び分散安定性が高い。
なお、本発明において、一般式(I)で表される色材を23℃における前記色材の溶解度が、0.1(mg/10g溶媒)以下の溶媒は、以下の評価方法により簡易的に判定することができる。
20mLサンプル管瓶に評価する溶媒を10g投入し、更に前記色材0.1gを投入し、ふたをして20秒間よく振った後、23℃のウォーターバス内で10分間静置する。この上澄み液5gをろ過し不溶物を除く。得られたろ液を更に1000倍に希釈した溶液の吸光スペクトルを紫外可視分光光度計(例えば、島津製作所社製 UV−2500PC)で1cmセルを用いて測定し、最大吸収波長における吸光度を求める。このとき、最大吸収波長における吸光度が2未満であれば当該溶媒は、一般式(I)で表される色材を23℃における前記色材の溶解度が、0.1(mg/10g溶媒)以下の溶媒(難溶性の溶媒)であると評価できる。
また、上記の評価方法において、得られたろ液を希釈せずに、上記と同様に吸光スペクトルを測定し、最大吸光波長における吸光度を求める。このとき、最大吸収波長における吸光度が2未満であれば、当該溶媒は、一般式(I)で表される色材を実質的に溶解しない溶媒であると評価できる。
23℃における前記色材の溶解度が0.1(mg/10g溶媒)以下の溶媒としては、例えば、水のほか、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエステル系溶媒が挙げられる。
[色材の製造方法]
一般式(I)で表される色材の製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法でカチオン部を製造した後、必要に応じて対アニオンを導入することにより得ることができる。
一つの方法として、本発明に係る下記一般式(I)で表わされる色材の製造方法は、下記一般式(A)で表される化合物と、下記一般式(B)で表される化合物とを縮合反応させる工程を有することを特徴とする。
(上記一般式(A)、上記一般式(B)及び上記一般式(I)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にO、S、Nが含まれていてもよい。Bは1価のアニオンを表し、複数あるBは同一であっても異なっていてもよい。R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、RとR、RとRが結合して環構造を形成してもよい。Arは置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表し、Ar1’はArに水素が結合した1価の芳香族基である。複数あるR〜R、Ar及びAr1’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
aは2以上の整数を表す。bは0又は1であり、bが0のとき結合は存在しない。複数あるbは同一であっても異なっていてもよい。)
本発明に係る色材の製造方法は、一般式(A)のAr1’と、一般式(B)のカルボニル基との間で脱水縮合することにより、トリアリールメタン骨格乃至キサンテン骨格を形成すると同時に、連結基Aが導入されるものである。当該製造方法によれば、重合度の異なる色材が生じることはなく、また、未反応物は骨格が大きく異なるため分離が容易であり、本発明に係る色材を高純度、かつ高収率で得ることができる。
(下記一般式(A)で表される化合物)
まず、カチオン部の前駆化合物である、下記一般式(A)で表される化合物を合成する。また、一般式(A)で表される化合物は市販品を用いてもよい。
(式(A)中の、A、R及びaは、一般式(I)と同様である。Ar1’は、一般式(I)のArに水素が結合した構造である。)
一般式(A)で表される化合物の合成方法は特に限定されないが、例えば、所望の置換基Ar1’が導入されたハロゲン化芳香族化合物と、所望の置換基Aが導入されたa価のアミン化合物を、塩基存在下、酢酸パラジウム等を触媒として、溶媒中で反応させることにより得ることができる。
上記反応において用いられるハロゲン化芳香族化合物の使用量は、所望の価数(a)によって異なるが、例えばa=2とする場合には、アミン化合物に対して、1.5〜10モル当量であることが好ましく、1.5〜3.0モル当量であることがより好ましく、更に1.8〜2.2モル当量であることが、副生成物の生成を抑制し、反応収率を向上させる点から好ましい。
上記反応における反応温度は、特に制限はないが、通常100〜150℃程度であり、副反応を抑制する点から130〜145℃であることが好ましい。また、上記反応の反応圧力に特に制限はないが、常圧〜0.1MPaが望ましく、常圧がさらに望ましい。また上記反応における反応時間は、合成量や反応温度等により変動する場合があるので一概には言えないが、通常6〜72時間、好ましくは6〜48時間の範囲に設定される。
当該反応に用いられる塩基としては特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウムの他、金属アルコキシド、金属アミド等が挙げられる。中でも、求核性の低い強塩基を用いることが、副反応を抑え、塩基発生剤の収率を向上させる観点から好ましく、例えば、カリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、リチウム−t−ブトキシド、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムヘキサメチルジシラジド、リチウムテトラメチルピペリジド等が好適に用いられる。求核性の低い強塩基の中でも、カリウム−t−ブトキシドを用いることがより好ましい。
前記塩基の添加量は、特に限定されないが、通常、アミン化合物に対して2.0〜4.0モル当量であり、2.5〜3.5モル当量であることが反応収率を向上する点から好ましい。
(カチオン部の合成)
前記一般式(I)で表される色材のカチオン部は、前記一般式(A)で表される化合物と、下記一般式(B)で表される化合物を、縮合反応させることによりカチオン部を合成する。例えば、オキシ塩化リン等の塩素化剤を用いて溶媒中で反応させることにより、カチオン部の塩化物として得ることができる。下記一般式(B)で表される化合物は市販品を用いることができる。
(式(B)中の、R〜R及びeは、一般式(I)と同様である。)
上記反応において用いられる一般式(B)で表される化合物の使用量は、所望の価数(a)によって異なるが、例えばa=2とする場合には、前記一般式(A)に対して、1.5〜4.0モル当量であることが好ましく、1.5〜3.0モル当量であることがより好ましく、更に1.8〜2.2モル当量であることが、副生成物の生成を抑制し、反応収率を向上させる点から好ましい。
上記反応における反応温度は、特に制限はないが、通常110〜150℃程度であり、副反応を抑制する点から110〜120℃であることが好ましい。また、上記反応の反応圧力に特に制限はないが、常圧〜0.1MPaが望ましく、常圧がさらに望ましい。また上記反応における反応時間は、合成量や反応温度等により変動する場合があるので一概には言えないが、通常1〜10時間、好ましくは1〜5時間の範囲に設定される。
前記オキシ塩化リンの添加量は、特に限定されないが、通常、前記化合物(A)に対して1.5〜3.0モル当量であり、1.8〜3.0モル当量であることが反応収率を向上する点から好ましい。
一般式(I)で表される色材は、前記反応によりカチオン部の塩化物として得られる。また、前記反応により得られたカチオン部の塩化物と、所望のアニオン部を、溶媒中で混合することにより所望のアニオン部を有する一般式(I)で表される色材が得られる。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
(合成例1:中間体1の合成)
和光純薬(株)製 1−ヨードナフタレン18.7g(73.4mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド9.88g(102.8mmol)、東京化成(株)製 p−キシレンジアミン5.0g(36.7mmol)、アルドリッチ製 2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル0.27g(0.57mmol)、和光純薬(株)製 酢酸パラジウム0.054g(0.28mmol)、キシレン36mLに分散し130−135℃で24時間反応させた。反応終了後、室温に冷却し析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄した。次いで水で洗浄して乾燥して下記化学式(1)で示される中間体1 9.79g(収率69%)を得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):389(+)、
・元素分析値:CHN実測値 (86.72%、6.54%、6.97%);理論値(86.56%、6.23%、7.21%)
参考例1:色材Aの合成)
中間体1 10.0g(25.7mmol)、トルエン100mL、和光純薬工業製オキシ塩化リン 7.89g(51.5mmol)を入れ、攪拌した。次いで、東京化成工業製 4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン16.2g(49.9mmol)を添加し5時間還流し冷却した。反応終了後、トルエンをデカントした。水100mLを加えて樹脂状の析出物を濾過した。該ケーキを希塩酸で分散し濾過、水洗を行った後、乾燥し、下記化学式(2)で示される色材Aを18.4g(収率66%)得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):501(+)、2価
・元素分析値:CHN実測値 (78.02%、7.13%、7.11%);理論値(78.26%、7.32%、7.82%)
参考例2:色材Bの合成)
東京化成工業製p−トルエンスルホン酸ナトリウム 1.15g(5.94mmol)、メタノール33mL、水33mLを入れ50−55℃で攪拌した。参考例1で得られた色材A 3.19g(2.97mmol)を添加し、50−55℃で1時間攪拌をおこなった。エバポレータで溶液中のメタノールを濃縮し、水を100mL加え沈殿物を濾取し、水で洗浄した。該ケーキを乾燥して下記化学式(3)で表される色材Bを3.33g(収率83%)得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):502(+)、2価、171(−)1価
・元素分析値:CHN実測値 (75.18%、7.11%、6.15%);理論値(74.97%、6.89%、6.24%)
(合成例2:中間体2の合成)
和光純薬(株)製 1−ヨードナフタレン15.2g(60mmol)、三井化学(株)製 ノルボルナンジアミン(NBDA)(CAS No.56602−77−8)4.63g(30mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド 8.07g(84mmol)、アルドリッチ製 2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’,−ジメトキシビフェニル 0.09g(0.2mmol)、和光純薬(株)製 酢酸パラジウム 0.021g(0.1mmol)、キシレン 30mLに分散し130−135℃で48時間反応させた。反応終了後、室温に冷却し水を加え抽出した。次いで硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮することにより下記化学式(4)で示される中間体2 8.5g(収率70%)を得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):407(M+H)、
・元素分析値:CHN実測値 (85.47%、8.02%、6.72%);理論値(85.26%、8.11%、6.63%)
(実施例3:色材Cの合成)
中間体2 8.46g(20.8mmol)、東京化成工業製 4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン13.5g(41.6mmol)トルエン60mLを入れ45−50℃で攪拌した。和光純薬工業製オキシ塩化リン 6.38g(51.5mmol)を滴下し、2時間還流し冷却した。反応終了後、トルエンをデカントした。樹脂状析出物をクロロホルム40mL、水40mL、濃塩酸を加えて溶解しクロロホルム層を分液した。クロロホルム層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。濃縮物に酢酸エチル65mLを加え還流した。冷却の後に析出物を濾過し下記化学式(5)で示される色材Cを15.9g(収率70%)得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):511(+)、2価
・元素分析値:CHN実測値 (78.13%、7.48%、7.78%);理論値(78.06%、7.75%、7.69%)
(比較例1:色材D)
下記化学式(6)で示される、東京化成工業(株)製 Basic Blue 7(CI−42595)(BB7)を比較例1の色材Dとして用いた。
(比較例2:色材Eの合成)
東京化成工業(株)製 p−トルエンスルホン酸ナトリウム0.97g(5.02mmol)を水50mL、メタノール50mLに溶解させた。次いで、東京化成工業(株)製 Basic Blue 7(CI−42595)5.0g(9.73mmol)を加え、常温で1時間攪拌した。該反応液を減圧下で濾取し、水で洗浄した。該ケーキを減圧乾燥して下記化学式(7)で示される色材E3.0g(収率92%)を得た。
(比較例3:色材Fの合成)
東京化成工業(株)製 ナフタレン−2,6−スルホネート2ナトリウム1.62g(5.02mmol)を水50mL、メタノール50mLに溶解させた。次いで、東京化成工業(株)製 Basic Blue 7(CI−42595)5.0g(9.73mmol)を加え、常温で1時間攪拌した。該反応液を減圧下で濾取し、水で洗浄した。該ケーキを減圧乾燥して下記化学式(8)で示される色材F5.2g(収率 86%)を得た。
(比較例4:色材Gの合成)
比較例3において、ナフタレン−2,6−スルホネート2ナトリウムの代わりに、東京化成工業製Direct Blue 86 3.92g(5.02mmol)を用いた以外は、比較例3と同様にして、下記化学式(9)で示される色材Gを得た。
(比較例5:色材Hの合成)
特許文献4に記載の手法に従い、ポリシロキサン色素の12モリブドリン酸塩を合成し、色材Hを得た。
51.52gの東京化成社製Basic Blue 7(BB7)を750mlのイオン交換水に溶解させ、次いで、撹拌下で、この色素の脱プロトン化した形体が完全に沈殿し、溶液中に青色の色がまったく残らず、数時間は元に戻らなくなるまで2N水酸化ナトリウム水溶液を加えた。この沈殿物を濾別し、イオン交換水で3回洗浄し、減圧(0.1kPa)下の60℃で乾燥させた。45.23g(94.7%)の脱プロトン化されたBB7をほぼ黒色の粉末として単離した。
これとは別に、シグマアルドリッチ社製3−ヨードプロピル−トリメトキシシランの50mlと、無水エタノール溶液2.0ml(2.95g;10.2mmol)を混合し、アルゴン下、室温で60時間撹拌し、続いて減圧下でその溶媒を留去し、3−ヨードプロピル−トリエトキシシランを得た。得られた3−ヨードプロピル−トリエトキシシランを50mlの無水アセトニトリルに溶解させ、上記脱プロトン化されたBB7を2.389g(5mmol)加え、この溶液をアルゴン下、還流しながら24時間加熱した。溶媒を留去して、この半固体残留物を、濾液がほぼ無色になるまで、アルゴン気流下、メチル−t−ブチルエ−テルで数回洗浄して、過剰のアルキル化剤及び未反応の脱プロトン化色素を除去し、固体残留物であるシラン化BB7を得た。当該シラン化BB7 1gを25mlの無水エタノールに溶解させシラン化BB7溶液を得た。
シラン化BB7溶液25mlを、エタノール(96%)150ml、水50ml及び25%アンモニア水溶液30gからなる混合溶媒に加え、室温にて24時間激しく撹拌した。シード粒子を形成させた後、この混合物を遠心分離した。この残留物をエタノール(80%)に分散させた後、洗浄と遠心分離を3回繰り返した後、溶媒を取り除き、残留物を得た。当該残留物をジメチルスルホキシド(DMSO)に分散させ、400mlの脱イオン水中に加えて攪拌し、更に、12モリブドリン酸・n水和物を加えることにより、比較例の色材Hを得た。
<色材の色変化評価>
参考例1及び実施例3で得られた色材A及びC、並びに、それぞれ10mgをメタノール100mLに溶解させ、20倍に希釈したものを測定溶液とした。1cm石英セルを用い、日立分光光度計U−3500にて吸光スペクトルを測定した。
また、対照品として、単量体であるBB7、10mgをメタノール100mLに溶解させ、20倍に希釈したものを測定溶液とし、上記と同様の方法で吸光スペクトルを測定した。結果を図1に示す。
図1の結果から、色材A及びCは、連結基を有しないBB7とほぼ同一のピーク形状を有し、色がほとんど変わらないことが明らかとなった。
このように、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しない連結基Aを有する一般式(I)で表わされる色材は、連結基を有しない単量体の色材と同様の色を有することが明らかとなった。
<メタノールへの溶解性評価>
参考例1〜2、実施例3及び比較例1〜5の色材A〜Hをそれぞれ0.05gをサンプル管瓶にいれ、サンプル管瓶を除く総重量が1.0gになるようにメタノール(関東化学製)を加えた。このものに磁気攪拌子をいれ、室温で1時間攪拌し、目視により色材が溶解したかを判別した。溶解していれば○、不溶物が確認できれば×とした。
<耐熱性評価>
(1)熱分解温度の評価
参考例1〜2、実施例3及び比較例1〜5の色材A〜Hをそれぞれ約5mgを石英製パンにいれ、株式会社リガク社製、差動型示差熱天秤(TG−DTA) TG8120を用い、リファレンスとして石英製パンにアルミナ、昇温速度5℃/分として800℃まで測定を行った。得られたTG曲線のピークの外挿温度を分解点とし、分解点における温度を熱分解温度とした。熱分解温度は耐熱性を示す指標とすることができる。
(2)重量減少率の評価
参考例1〜2、実施例3及び比較例1〜5の色材A〜Hをそれぞれ約5mgを石英製パンにいれ、株式会社リガク社製、差動型示差熱天秤(TG−DTA) TG8120を用い、リファレンスとして石英製パンにアルミナ、昇温速度20℃/分で230℃まで昇温し230℃到達時点から60分同温で保持したのち重量減少率を測定した。重量減少率は下記式により算出され、耐熱性を示す指標とすることができる。
重量減少率 = (加熱前重量 − 加熱後重量)/加熱前重量 ×100(%)
<染着性評価>
(1)布への染着
参考例1の色材Aを0.5gとって、メタノール10mlを加えて、色材Aのメタノール溶液とした。当該メタノール溶液0.1mlを布に滴下し、ドライヤーでメタノールを除去し、色材Aを布に染着した。
また、色材Aの代わりに色材B〜Hをそれぞれ用いた以外は、上記と同様にして、色材B〜Hを布に染着した。
(2)水による評価
色材A〜Hが染着した布を、20℃の流水で10分間洗浄して、目視により色落ちを観察し、下記評価基準に従って評価した。
[評価基準]
○:色落ちがなかった。
△:色落ちが確認された。
×:色が残らなかった。
(3)洗剤による評価
色材A〜Hが染着した布を、界面活性剤を含む洗剤に5分間浸漬した後、20℃の流水で5分間洗浄して、目視により色落ちを観察し、上記水による評価と同様の評価基準により評価した。
各評価結果を表1に示す。
[結果のまとめ]
一般式(I)で表される参考例1〜2、実施例3の色材A〜Cは、染着性及び耐熱性に優れていることが明らかとなった。
従来のトリアリールメタン系染料である比較例1の色材は、耐熱性及び染着性に劣っていた。比較例2〜4のようにアニオンを代えることにより、耐熱性及び染着性が改善されたが不十分であり、家庭用洗剤によって簡単に色落ちするものであった。
比較例5の色材は、トリアリールメタン系染料がシロキサンによって重合された構造を有するカチオンを含有するが、重合度の異なる色素の混合物であるため、耐熱性及び染着性は不十分であり、メタノールに対して溶け残りが存在した。

Claims (4)

  1. 下記一般式(I)で表わされる色材。
    (一般式(I)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する環状の脂肪族炭化水素基表し、炭素鎖中にO、S、Nが含まれていてもよい。Bは1価のアニオンを表し、複数あるBは同一であっても異なっていてもよい。R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、RとR、RとRが結合して環構造を形成してもよい。Arは置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。複数あるR〜R及びArはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
    aは2以上の整数を表す。bは0又は1であり、bが0のとき結合は存在しない。複数あるbは同一であっても異なっていてもよい。)
  2. 前記一般式(I)におけるアニオン(B)が、スルホナト基(−SO 基)を有する有機アニオンである、請求項1に記載の色材。
  3. 前記一般式(I)におけるアニオン(B)が、下記一般式(II)で表されるアニオンである、請求項1又は2に記載の色材。
    (一般式(II)中、Arは置換基を有していてもよい1価の芳香族基である。)
  4. 下記一般式(A)で表される化合物と、下記一般式(B)で表される化合物とを縮合反応させる工程を有する、下記一般式(I)で表わされる色材の製造方法。
    (上記一般式(A)、上記一般式(B)及び上記一般式(I)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する環状の脂肪族炭化水素基表し、炭素鎖中にO、S、Nが含まれていてもよい。Bは1価のアニオンを表し、複数あるBは同一であっても異なっていてもよい。R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、RとR、RとRが結合して環構造を形成してもよい。Arは置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表し、Ar1’はArに水素が結合した1価の芳香族基である。複数あるR〜R、Ar及びAr1’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
    aは2以上の整数を表す。bは0又は1であり、bが0のとき結合は存在しない。複数あるbは同一であっても異なっていてもよい。)
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