JP5142875B2 - センタレス研削用調整車ドラム - Google Patents
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なお、ワークWaの研削状態では機械や砥石が弾性変形しており、砥石の切り込みを停止させて弾性変形の回復による微小な研削状態を通常スパークアウト研削と呼ぶが、スルーフィードセンタレス研削においても微小研削領域となる、ワークWaが仕上げられる最終領域近くをスパークアウト研削領域と呼び、これによりワークWaの真円度や面粗度を向上させる。
また、スパークアウト研削領域を得るため、図11に示すように、研削砥石3の外周面3aの砥石形状を、例えば、径方向外方に凸となるR形状にする場合、次のような問題がある。ワーク型番毎にワーク取代Wtの違いがあるため、ドレッサーのテンプレート等の変更によりワーク型番毎に砥石形状を変更する必要がある。したがって、砥石形状を変更するためのドレッシングによる砥石損耗量の増加、およびそのための工数(ドレッシング作業、テンプレートの交換等)の増加が生じる。
ことを特徴とする。
特に、前記ねじ溝の各周の底面と、前記ドラム軸芯とのなす角度を、ドラム全域において同一角度にし、且つ、前記ねじ溝の各周の軸方向同一箇所をドラム軸芯方向に沿って繋ぐ包絡線が、ドラム軸芯方向にわたり径方向外方に突出する凸の曲線にすることにより、研削当りにおける切込みがゼロに近いスパークアウト研削領域を確保できる。したがって、円錐形状ワークの真円度および面粗さ等の加工精度を向上させることができる。この場合、円錐形状ワークの型番毎に研削砥石の形状を変更する必要がないため、砥石形状を変更するためのドレッシングによる砥石摩耗量が増加することがなく、そのための工数も低減することができる。それ故、円錐形状ワークの生産効率を高めることができ、製造コストの低減を図ることができる。
前記ねじ溝に転接させる円錐形状ワークの外周面を研削する研削砥石に対し、前記ドラム軸芯から径方向外方に最も離れたねじ溝の位置を、同研削砥石における、円錐形状ワークの搬送方向下流側端または搬送方向下流側端付近としても良い。前記研削砥石に対し、ドラム軸芯から径方向外方に最も離れたねじ溝の位置、いわゆる包絡線の頂点位置を、円錐形状ワークの搬送方向下流側端にすると、円錐形状ワークが搬送方向上流側から下流側に搬送されるに従って、ワーク取代を次第に小さくすることができる。したがって、円錐形状ワークの搬送方向下流側において、スパークアウト研削を行うことができる。包絡線の頂点位置を、搬送方向下流側端付近つまり研削砥石のワーク出口側端より僅かに内側にすると、円錐形状ワークの搬送方向下流側において、スパークアウト研削を行うことができるうえ、スパークアウト研削後の円錐形状ワークの逃げをスムーズにでき、砥石エッジによる傷の発生等を未然に防止することができる。
「平行段差」は、一の円錐形状部から他の円錐形状部までの略平行な段差をも含む。
前記ねじ溝の各周の底面と、前記ドラム軸芯とのなす角度が、ドラム全域において同一角度であり、この調整車ドラムをドラム軸芯を含む任意の仮想平面で切断した断面において、前記ねじ溝の各周の軸方向同一箇所をドラム軸芯方向に沿って繋ぐ包絡線が、ドラム軸芯方向にわたり径方向外方に突出する凸の曲線であるため、スパークアウト研削領域を確保でき、円錐形状ワークの真円度、面粗さを向上させることができ、かつ工数の低減を図ることができる。
調整車ドラム10はドラム軸13の外周に取り付けられる。この調整車ドラム10は、螺旋状に続くねじ溝10aを外周に有し、このねじ溝10aの各周の底面10aaが円錐形状部を成し、ドラム軸13のドラム軸芯Dj回りに回転駆動される。この調整車ドラム10は、円錐形状ワークからなるワークWをねじ溝10aの底面10aaに転接させる回転自在な構成である。前記ねじ溝10aの底面10aaは、螺旋状の鍔部10bによって区画形成され、螺旋状に続く円錐形状に形成されている。
前記研削砥石12は、円筒形状に形成され、調整車ドラム10と略平行な軸芯回りで回転駆動され、調整車ドラム10およびブレード11で支持されたワークWの外周面を研削する。つまりワークWの外径は、ねじ溝10aおよび鍔部10bを有する調整車ドラム10と、研削砥石12の外周面との間にワークWを通すことにより研削される。図1に示すように、研削砥石12の外周面は、平面視において平坦であり、ワークWの型番毎に変更されない。
図3に示すように、ねじ溝10aの各周の底面10aaと、ドラム軸芯Djとのなす角度δdは、ドラム全域において同一角度である。この角度δdを「ドラム角δd」と称す。
この調整車ドラム10をドラム軸芯Djを含む任意の仮想平面で切断した断面において、前記ねじ溝10aの各周の軸方向同一箇所をドラム軸芯方向に沿って繋ぐ包絡線L2が、ドラム軸芯方向にわたり径方向外方に突出する凸の曲線となるように、この調整車ドラム10が形成されている。図1、図3に示すように、前記包絡線L2は円弧でありこのクラウニング曲率Rscは、研削砥石12の砥石幅H1内におけるねじ溝10aの包絡線L2のワーク入口側開き量が、ワーク外径取代Wt程度になる曲率に設定している。また図1に示すように、ドラム軸芯方向に並ぶ複数の鍔部10bの外径を繋ぐ包絡線L3は、ねじ溝10aの各周の軸方向同一箇所をドラム軸芯方向に沿って繋ぐ包絡線L2と同一形状に形成されている。
図3に示すように、測定治具14を用いて前記ドラム角δdが測定され得る。測定治具14は、底面が基準面15aとなる治具本体15、および前記基準面15aに対する垂直方向の距離を測定する測定ゲージ16を備える。治具本体15のうち前記基準面15aに続く端面15bが、鍔部10bの一側面10baに当接可能に形成されている。この端面15bは、基準面15aに垂直に形成されている。
測定ゲージ16は針状測定子16aとメータ16bとを有する。これらのうち測定子16aは、治具本体15に基準面15aに対する垂直方向の移動が可能な状態で保持されている。メータ16bは、この測定子16aの移動距離を示す。
δd=sin−1(Hd/Ld) ……(1)
具体的には、図3に示すように、ドラム軸芯Djから径方向外方に最も離れたねじ溝10aの底面10aaより、1/2リード分搬送方向下流側にずれた底面10aa−1に、治具本体15の基準面15aを押し当てる。これと共に、前記底面10aa−1に続く鍔部10bの一側面10baに、治具本体15の端面15bを押し当てる。さらに1/2リード分ずれた搬送方向上流側にずれたねじ溝10aの底面10aa−2に、測定ゲージ16の測定子16aを当てることにより、包絡線L2のクラウニング量に影響されずにドラム角段差Hd、すなわちドラム角δdが測定できる。
これを関係図を示す図9と共に説明する。
ドラム軸芯から径方向外方に最も離れたねじ溝10aの底面10aaと、この底面10aaに続く鍔部10bの一側面10ba(これを「鍔面10ba」と称す)との交点、言い換えれば、鍔面10baと傾斜溝との交点Pの包絡線L2の頂点Paを軸方向の基準にする。この頂点Paから包絡線L2上の任意の点Px1までの軸方向距離をLsx1とし、包絡線L2上の次の任意の点Px2までの軸方向距離をLsx2とすると、次の式が得られる。
Δdw1=Rsc−√(Rsc2−Lsx12) ・・・・・(3)
Δdw2=Rsc−√(Rsc2−Lsx22) ・・・・・(4)
Hdx=Hd−(Δdw2−Δdw1)・cosδd ・・・・・(5)
ここでねじ溝10aのリードを Ld、頂点Paから点Px1までの径方向距離を Δdw1、頂点Paから点Px2までの径方向距離を Δdw2とする。
式(3)、(4)を式(5)に代入し、
〔√(Rsc2−Lsx12)−√(Rsc2−Lsx22)〕=(Hd−Hdx)/cosδd
両辺を2乗し、
2・Rsc2−Lsx12−Lsx22−(Hd−Hdx)2/cos2δd=2・√{(Rsc2−Lsx12)・(Rsc2−Lsx22)}
両辺を2乗し、クラウニング曲率:Rscを求めると、
Rsc=√〈〔{Lsx12+Lsx22+(Hd−Hdx)2/cos2δd}2−4・Lsx12・Lsx22〕/〔4・(Hd−Hdx)2/cos2δd〕〉・・・・・(6)
式(6)にて、測定されたドラム角段差Hdxより、クラウニング曲率:Rscを求めることができる。このようなクラウニング曲率Rscを得た調整車ドラム10を用いて、ワークWの外周面を研削し、このワークWの真円度および面粗さ等の加工精度を容易に向上させることができる。
包絡線L2の頂点位置を、搬送方向下流側端付近つまり研削砥石12のワーク出口側端より僅かに内側にすると、図5に示すように、ワークWの搬送方向下流側において、スパークアウト研削を行うことができるうえ、スパークアウト研削後のワークWの逃げをスムーズにでき、砥石エッジによる傷の発生等を未然に防止することができる。
この発明の他の実施形態として、上記調整車ドラムを超仕上げ加工する際に用いても良い。この発明の実施形態の例として、円錐形状のワークで説明したが、外周面が円柱形状のワークであっても良い。この場合は、ドラム軸芯に対するねじ溝の各周の底面の角度はゼロとなる。
10a…ねじ溝
10aa…底面
10b…鍔部
12…研削砥石
14…測定治具
15…治具本体
15a…治具基準面
15b…治具端面
16…測定ゲージ
Dj…ドラム軸芯
L2…包絡線
W…ワーク
Claims (8)
- スルーフィードセンタレス研削用の調整車ドラムであって、螺旋状に続くねじ溝を外周に有し、このねじ溝の各周の底面が円錐形状部を成し、円錐形状部間に鍔部を有し、ドラム軸芯回りに回転駆動されて円錐形状ワークを前記ねじ溝の底面に転接させる回転自在な調整車ドラムにおいて、
前記ねじ溝の各周の底面と、前記ドラム軸芯とのなす角度が、ドラム全域において同一角度であり、
この調整車ドラムをドラム軸芯を含む任意の仮想平面で切断した断面において、前記ねじ溝の各周の軸方向同一箇所をドラム軸芯方向に沿って繋ぐ包絡線が、ドラム軸芯方向にわたり径方向外方に突出する凸の曲線であるセンタレス研削用調整車ドラム。 - 請求項1において、前記包絡線が円弧であるセンタレス研削用調整車ドラム。
- 請求項1または請求項2において、前記ねじ溝に転接させる円錐形状ワークの外周面を研削する研削砥石に対し、前記ドラム軸芯から径方向外方に最も離れたねじ溝の位置を、同研削砥石における、円錐形状ワークの搬送方向下流側端または搬送方向下流側端付近としたセンタレス研削用調整車ドラム。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記円錐形状ワークの外周面が研削する取代に応じた、包絡線形状であるセンタレス研削用調整車ドラム。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記ねじ溝の円錐形状部に当接する基準面と鍔部の一側面に当接する端面とを有する治具本体と、
この治具本体に設けられ前記基準面に対する垂直方向の距離を測定する測定ゲージと、を備えた測定治具を用いて、ねじ溝の底面とドラム軸芯とのなす角度が求められるセンタレス研削用調整車ドラム。 - 請求項5において、前記ドラム軸芯から径方向外方に最も離れたねじ溝の底面に、治具本体の基準面を押し当てると共に、前記底面に続く鍔部の一側面に、前記治具本体の端面を押し当て、測定ゲージにより測定される測定値から、一の円錐形状部から他の円錐形状部までの平行段差である第1のドラム角段差を求め、
前記治具本体を、前記測定値を得た位置よりも1リード分ずれたねじ溝の底面に、同治具本体の基準面を押し当てると共に、前記底面に続く鍔部の一側面に、前記治具本体の端面を押し当て、ドラム軸芯から径方向外方に最も離れたねじ溝の底面に、測定ゲージの測定子を当接させて測定される測定値から、一の円錐形状部から他の円錐形状部までの平行段差である第2のドラム角段差を求め、
これら第1および第2のドラム角段差より求められる角度を、ドラム軸芯に対するねじ溝の底面の角度とするセンタレス研削用調整用ドラム。 - 請求項5において、前記ドラム軸芯から径方向外方に最も離れたねじ溝の底面より、1/2リード分ずれた底面に、治具本体の基準面を押し当てると共に、前記底面に続く鍔部の一側面に、前記治具本体の端面を押し当て、測定ゲージにより測定される測定値から、一の円錐形状部から他の円錐形状部までの平行段差であるドラム角段差を求め、このドラム角段差より求められる角度を、ドラム軸芯に対するねじ溝の底面の角度とするセンタレス研削用調整用ドラム。
- 請求項5ないし請求項7のいずれか1項において、前記ドラム軸芯から径方向外方に最も離れたねじ溝の底面と、この底面に続く鍔部の一側面との交点をドラム軸芯方向位置の基準位置とし、
任意のねじ溝の底面に、治具本体の基準面を押し当てると共に、前記底面に続く鍔部の一側面に、前記治具本体の端面を押し当て、測定ゲージにより測定される測定値から、一の円錐形状部から他の円錐形状部までの平行段差であるドラム角段差を求め、
このドラム角段差と、前記基準位置からの軸方向距離とから求められる曲率を、前記包絡線のクラウニング曲率とするセンタレス研削用調整車ドラム。
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