JP5142020B2 - 輸液容器 - Google Patents

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Description

この発明は可撓性若しくは軟質合成樹脂フィルムの袋体より成る輸液容器に関し、特に、輸血などの大量輸液に適したエア抜き機能を備えた輸液容器に関するものである。
点滴などの輸液速度が遅い場合は輸液容器としての輸液バッグからの液体の移動は重力のみに依拠させることができるが、短時間に多量の液体の移動が必要となる輸血等の場合は輸液バッグを外部から機械的に加圧することにより積極的に液体の押し出しを必要な輸液速度を得るようにしている。出血時には、血圧低下を防ぎ、血液値を保つために、出血速度に合わせて輸液を投与し続け、また同時に輸血をし、出血速度に負けない速度で輸液(血)し続けることが重要であり、このことが救命率をあげるのである。近年の事件の一つとして、輸液(血)のスピードが間に合わず患者を助けられなかったことがクローズアップされたことがあったほどである。輸液を加圧して投与するためには、輸液バッグの加圧装置(例えば特許文献1を参照)を用いたり、シリンジによるポンピングを行なったりする。前述の装置は非常に高価であり、また後者の場合には、常に人手が必要である。
輸液バックの製造時には、バッグ内液面の目視の容易のためバッグ内に空気が残っていると便利である。他方、輸液バッグの製造過程で空気を完全に排除することは現実的には困難である。そこで、通常輸液バッグは工場から空気を含んだ状態で出荷される。従って、輸液バッグを外部から機械的な加圧を加えて液体の強制的な押し出しを行う場合には、輸液バッグ中の空気が輸液経路を介してそのまま体内に取り込まれてしまうことになる。そこで、輸液(血)等の高速投与に際しては、その準備作業として医師若しくは看護士による輸液バッグからの空気抜き作業が必要である。また、輸液経路から空気(気泡)を自動的に行うものとして、輸液経路に気泡分離装置(バブルトラップ)を設けることも行われている(非特許文献1等参照)が非常に高価なものであり、十分に整備されているとは言えないものであり、更にこれらの機械のエアチャンバーの容量には限りがあり、これを超えてしまって輸液ルートにエアーが入ってしまった場合には、ルートを取り替える作業が必須となり、手術中の忙しい作業の中で、これがまた煩雑な作業なのである。
特開2004−230032号公報 "レンジャー血液・輸液ウォーミングセット"[online]、2007年5月25日、 NIHON KODEN、[平成19年11月8日検索]、インターネット
バブルトラップによるものは輸液中に混入した空気(気泡)の自動除去を意図しているが、輸液速度が10mL/min程度と限界があり、点滴などの低速輸液作業には間に合うが、200mL/min〜300mL/min、時には400mL/minといった急速輸液用には空気除去能力に不足がある。さらにこれらの総計の輸液量は多い時には5000〜10000mLとなる場合もあるくらいである。そのため、急速輸液の場合には、輸液バッグ中の空気を排除するため針やシリンジを用いた人手による作業が必須であり、また手術が進むにつれ特に大量の輸液を必要となった場合には、手術の横で人手による脱気作業が必要であったが、極めて不効率であり、簡便な手法により輸液バッグの空気排除を行い得るようにすることが希求されていた。この発明はこの問題点に鑑みなされたもので、輸液バッグからの空気排除を効率的にかつ簡便に行いうるようにすることを目的とする。
この発明の輸液容器は、可撓性フィルムにて形成され、その内部に輸液を収納するための袋体と、前記袋体の外周に設けられ、一端は袋体の内部に開口する排出ポートと、弾性材にて形成され、前記袋体の外部における排出ポートの他端に設けられ袋体の内部を通常は閉鎖し、輸液セットの穿刺針により穿刺開通される栓体と、袋体の外部よりの袋体内部に収納された薬液の加圧による袋体内部からのエア抜き具とを備え、前記エア抜き具は前記栓体より内側において袋体内部に開口するように設けられる筒状部材と、前記筒状部材内に設けられ、前記加圧時に袋体内部よりの空気の通過は許容するが薬液の通過は阻止する疎水性フィルタ部材と、前記筒状部材に設けられ、エア抜き時にフィルタ部材を外部に対して開放するが通常状態ではフィルタ部材を外部に対して閉塞する閉塞手段とを備える。


フィルタ部材は疎水性メンブレンフィルタにより構成することができる。
エア抜き具は袋体に設けることができるし、排出ポートに設けるようにすることも可能である。
エア抜き具はその閉塞手段によって通常状態では疎水性メンブレンフィルタ等のフィルタ部材が外部から閉塞されているため輸液は袋体内部に保持される。
エア抜き時は閉塞手段を解除することでフィルタ部材が外部に対して開放され、袋体に収容された輸液を加圧することにより袋体内部の空気はフィルタ部材を通して排出されるがフィルタ部材の疎水性によって液体の通過は阻止される。
エア抜き完了後に閉塞手段によりフィルタ部材は再び外部に対して閉塞され、袋体はエア抜き状態に保持される。
疎水性フィルタ部材を外部に対して開放し、袋体に収容された輸液を加圧するのみでエア抜きを簡便かつ確実に実行し、輸血などの急速輸液作業の効率化を実現することができる。また、疎水性フィルタを用いることで、エアのみを外部に排出できことに加え、外気からの細菌類の進入にも対処することができ、輸液バッグの汚染防止の観点で有利である。
図1において、輸液バッグ10(本発明の袋体)は厚さ200ミクロンといったポリエチレンフィルムなどの多層構造の可撓性フィルムよりなり、所定寸法の上下2枚のフィルム切片を外周部(剥離不能溶着部)12において溶着して構成される。溶着部での溶着温度はポリエチレンフィルムの場合は120℃といった温度で、輸液バッグ10中に輸液を密封収容した状態で薬液バッグを輸液の部位において外部から加圧しても溶着部12でのフィルムの剥離が起こらず、溶着状態を維持する温度に設定されている。溶着部12には懸垂孔14が穿設され、この懸垂孔14によって輸液バッグ10を輸液台などに吊り下げ保持し、輸血などの輸液作業を行うことになる。尚、輸液バッグ10を2枚のフィルム切片の溶着構造の代わりに袋状のフィルムより薬液バッグを構成することも可能である。
輸液バッグ10の外周(輸液バッグ10を輸液台などに吊り下げ保持した状態での下端位置)に排出ポート16が設けられ、排出ポート16は、その形態を維持しうる剛性を有した肉厚を有した合成樹脂(薬剤バッグ10との密着性を得るため薬剤バッグ10と同一プラスチック素材とするのが好ましい)の成形品である。排出ポート16は両端で開口し、中間がテーパ部16-1をなし、輸液バッグ10の外側の端部(下端)にフランジ部16-2(図1)を有した筒状に形成される。フランジ部16-2にはキャップ16-3が突当溶着され、キャップ16-2の底面開口部にはゴム栓(栓体)18が装着される。輸血などの輸液時には輸液セットの穿刺針によりゴム栓18を穿刺し、薬剤バッグ10の内部空洞を輸液チューブに連通させ、輸液を行うことになる。
排出ポート16を挟んで輸液バッグ10の反対側にエア抜き具20が設けられる。エア抜き具20は輸液作業の開始に先立って輸液バッグ10からのエア抜きを行うためのもので、効率的なエア抜きのための以下のような工夫を施したものである。即ち、図2に示すように、エア抜き具20は輸液バッグ10の内部に一端が開放する筒状体22と、筒状体22の他端を開閉自在とするべく筒状体22に装着可能なキャップ(この発明の閉塞手段)24と、筒状体22の内部を横切るように設けられ、薬剤バッグ10よりの空気の通過は許容するが、薬液の通過は阻止するフィルタ部材26とを備える。この実施形態においては筒状体22は輸液バッグ10を構成する上下2枚の合成樹脂フィルム切片の溶着時にこの上下の合成樹脂フィルム切片間に挟着されかつ溶着され、そのため外周部12の溶着による輸液バッグ10の完成状態では筒状体22の一端は輸液バッグ10の外周部12に流密に一体化されている。フィルタ部材26はディスク形状をなし、この実施形態においては公知の疎水性メンブレンフィルタであり、セルロースアセテートや、PTFEや、ポリカーボネート等を素材とし、貫通した多数の孔を形成しており、この孔の径は空気は十分な透過速度にて透過させるものになっており、かつ素材自体は疎水性であり、液体は素材表面の表面張力により保持されるため液体の通過は阻止することができるものである(疎水性メンブレンフィルタについては例えば特開2006−320849号公報等参照)。フィルタ部材26は保持スリーブ28により筒状体22の他端に流密に固定される(メンブレンフィルタのハウジング支持構造については例えば特開平6−238142号公報等参照)。そして、キャップ24は保持スリーブ28の外端に適当なシール材を介して螺合され、キャップ24は脱着自在となっている。
輸液バッグ10は内部に輸液を収納し、排出ポート16及びエア抜き具20を装着した状態で出荷される。輸液を収容した状態においても輸液バッグ10の内部には空気が残される。完全に空気を排除した状態で密封を行うことは技術的に困難があるし、内部に空気が残っていることで液面=液量の確認が可能となる点で便利である。内部の薬液は、通常状態では、フィルタ部材26を構成する疎水性メンブレンフィルタ表面をその高い表面張力により湿潤させることがなく、そのため、輸液バッグ10の内部の輸液がフィルタ部材26を通過することはない。また、輸液バッグ10の移送中にフィルタ部材26に輸液の圧力は作用することはあり得るが、メンブレンのバブルポイント値(液膜を破壊して空気をしてメンブレンフィルタの孔を通過させる圧力値)を超えることがなく、輸液バッグ内の空気は保持される。
輸血等の輸液作業に先立ち、エア抜きのためキャップ24を外し、エア抜き具20を上側にして輸液バッグ10を保持し、薬液バッグを加圧する。加圧することにより空気のみフィルタ部材26を介して外部に排出することができる。エア抜き完了後にキャップ24を再装着し、完全エア抜きした状態の輸液バッグ10とすることができ、輸血等の急速輸液作業に移行することができる。
図3及び図4は別実施形態を示し、排出ポート116に対してエア抜き具120を一体化した構造のもので、エア抜き具120(図4)の筒状体122は排出ポート116のテーパ部116-1に流密固定若しくは一体化される。筒状体122の内部には疎水性メンブレンフィルタ126が装着され、筒状体122の外側端部にねじ等により脱着自在なキャップ124が設けられる。この実施形態では薬液バッグ10のエア抜きはキャップ124を外した状態で排出ポート116を介して疎水性メンブレンフィルタ126により行われる。エア抜き後はキャップ124をねじ部124Aにより排出ポート116に再装着し、ゴム栓118の穿刺により通常と同様な輸血等の輸液作業を実施することができる。
以上の実施形態では輸液バッグからのエア抜きはキャップ24, 124を着脱自在にして輸血等の輸液作業直前に行う説明となっているが、輸液バッグ製造工程でエア抜き具12, 120によりエア抜きし、キャップ24, 124を着脱不能に装着し、その後滅菌、包装することでエア抜き不要の輸液バッグとして流通させることも場合によっては可能である。尚、滅菌はキャップ装着前の工程として実施することも可能である。また、エア抜き具の設置位置としては実施例に限定されることはなく、エア抜きしやすい適当な位置を選択可能である。
また、以上の説明では閉塞手段としてねじ式のキャップ24, 124の例を説明したが、それ以外に、ゴム材やフィルム材による逆止弁構造としたり、3方弁のようにコック形状したりするなど各種の変形構造とすることもできる。また粘着フィルムによるラベル構造とすることも可能である。工場出荷時に、工場出荷状態でエア抜き製品とする場合には閉塞手段として熱シール方式(剥離可能であるが再貼着はできない)を採用することも可能である。
図1はこの発明の輸液容器の平面図である。 図2は図1の輸液容器におけるエア抜き具の詳細構成図で、図1のII−II線に沿った矢視断面図である。 図3はこの発明の別の実施形態の輸液容器の平面図である。 図4は図3の輸液容器におけるエア抜き具の概略的断面図である。
符号の説明
10…輸液バッグ(本発明の袋体)
12…溶着部
16…排出ポート
18…ゴム栓
20…エア抜き具
24…キャップ
26…疎水性フィルタ部材

Claims (4)

  1. 可撓性フィルムにて形成され、その内部に輸液を収納するための袋体と、前記袋体の外周に設けられ、一端は袋体の内部に開口する排出ポートと、弾性材にて形成され、前記袋体の外部における排出ポートの他端に設けられ袋体の内部を通常は閉鎖し、輸液セットの穿刺針により穿刺開通される栓体と、袋体の外部よりの袋体内部に収納された薬液の加圧による袋体内部からのエア抜き具とを備え、前記エア抜き具は前記栓体より内側において袋体内部に開口するように設けられる筒状部材と、前記筒状部材内に設けられ、前記加圧時に袋体内部よりの空気の通過は許容するが薬液の通過は阻止する疎水性フィルタ部材と、前記筒状部材に設けられ、エア抜き時にフィルタ部材を外部に対して開放するが通常状態ではフィルタ部材を外部に対して閉塞する閉塞手段とを備えた輸液容器。
  2. 請求項1若しくは2に記載の発明において、前記疎水性フィルタ部材は疎水性メンブレンフィルタである輸液容器。
  3. 請求項1若しくは2に記載の発明において、前記エア抜き具の筒状部材は袋体に設けられる輸液容器。
  4. 請求項1若しくは2に記載の発明において、前記エア抜き具の筒状部材は袋体の外部において排出ポートに設けられる輸液容器。
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