a.第1実施形態
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザ加工装置のシステム構成図である。このレーザ加工装置は、直径の小さな円筒状の加工対象物OBの表面に加工用レーザ光を螺旋状に照射してレーザ加工を行うものである。レーザ加工装置は、加工対象物OBを保持して加工対象物OBの中心軸回りに回転させるとともに加工対象物OBをその中心軸方向に移動させるワーク駆動装置50と、加工対象物OBの表面に加工用レーザ光を照射する加工用ヘッド10(図2参照)と、加工対象物OBの表面にサーボ用Z軸方向レーザ光を照射するサーボ用Z軸方向光ヘッド20(図2参照)と、各種の電気回路(後述する)と、レーザ加工装置全体の作動を制御するコントローラ90とを備えている。
ここで、レーザ加工装置における方向を定義する。図3に示すように、ワーク駆動装置50に固定された加工対象物OBの中心軸線方向をX軸方向と呼ぶ。また、X軸方向に直交し、加工用ヘッド10から加工対象物OBに照射される加工用レーザ光の光軸の方向をZ軸方向と呼ぶ。また、X軸方向とZ軸方向との両方に直交する方向をY軸方向と呼ぶ。
本実施形態における加工対象物OBは、表面にフォトレジストが被覆された直径50μmのニッケルパイプである。この加工対象物OBは、最終的に直径50μmのマイクロスプリングの製作に使用されるパイプに加工されるもので、本実施形態のレーザ加工装置は、フォトレジストの表面に加工用レーザ光を螺旋状に照射することにより、フォトレジストに螺旋状の反応跡を形成する装置として使用される。加工対象物OBは、その後、現像液に浸漬されて反応跡が除去され、残ったフォトレジストをマスクとして使ってエッチングされる。これにより、ニッケルパイプに螺旋状の開口が形成されてマイクロスプリング製作用のパイプが作られる。
このように非常に細い径のパイプ状の加工対象物OBに対してレーザ加工を行う場合には、従来から知られているように加工用レーザ光の反射光から非点収差法などによりフォーカスエラー信号を生成しても、加工用レーザ光の光軸が加工対象物OBの中心軸から外れてしまうと、適正なフォーカスエラー信号が得られず、加工用レーザ光の焦点を加工対象物OBの外周面に合わせることができない。そこで、本実施形態においては、加工対象物OBにサーボ用レーザ光をZ軸方向に照射し、加工対象物OBが映し出される射影の位置に基づいて加工用レーザ光の焦点位置をY軸方向に制御して加工用レーザ光の光軸を加工対象物OBの中心軸と交差させるとともに、Y軸方向に制御するための信号を遅延させて、加工用レーザ光の焦点位置をX軸方向に制御して加工用レーザ光の焦点位置を加工対象物OBの外周面に一致させるようにする。
まず、ワーク駆動装置50から説明する。ワーク駆動装置50は、加工対象物OBの両端をチャッキングして回転可能に保持する移動ステージ51と、移動ステージ51に保持された加工対象物OBをその中心軸回りに回転させるスピンドルモータ52と、移動ステージ51をX軸方向に移動させるねじ送り機構53とを備えている。
ねじ送り機構53は、移動ステージ51に固定されたナット(図示略)に螺合するスクリューロッド54と、スクリューロッド54を回転させるフィードモータ55とを備えている。スクリューロッド54は、移動ステージ51に保持された加工対象物OBの中心軸(即ち、スピンドルモータ52の回転軸)と平行となるX軸方向に延びて設けられ、その一端側が、レーザ加工装置本体フレーム(図示略)に固定されたフィードモータ55の出力軸に連結され、他端側が、レーザ加工装置本体フレームに固定された軸受部(図示略)に回転可能に軸支される。また、移動ステージ51は、図示しない案内ガイドにより、回転規制されており、X軸方向にのみ移動可能となっている。したがって、フィードモータ55を正転あるいは逆転駆動すると、フィードモータ55の回転運動が移動ステージ51の直線運動に変換され、加工対象物OBがX軸方向に前進あるいは後退できるようになっている。
スピンドルモータ52内には、エンコーダ52aが組み込まれている。エンコーダ52aは、スピンドルモータ52が所定の微小回転角度だけ回転する度に、その出力がハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を出力する。エンコーダ52aから出力されるパルス列信号は、スピンドルモータ制御回路56に入力される。スピンドルモータ制御回路56は、コントローラ90からの指示により作動開始し、エンコーダ52aから出力されるパルス列信号の単位時間当たりのパルス数からスピンドルモータ52の回転速度を計算し、計算した回転速度がコントローラ90によって設定された回転速度に等しくなるようにスピンドルモータ52の回転を制御する。
フィードモータ55内にも、エンコーダ55aが組み込まれている。このエンコーダ55aは、フィードモータ55が所定の微小回転角度だけ回転する度に、その出力がハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を出力する。エンコーダ55aから出力されるパルス列信号は、フィードモータ制御回路57と移動位置検出回路58に入力される。移動位置検出回路58は、コントローラ90からの指示により作動開始し、作動開始後、エンコーダ55aから出力されるパルス信号が入力されなくなると移動限界位置を意味する信号をフィードモータ制御回路57に出力し、カウント値を「0」として、以後、エンコーダ55aが出力するパルス信号のパルス数をカウントする。そして積算したカウント数から移動ステージ51の移動位置を計算してコントローラ90及びフィードモータ制御回路57に出力する。このカウント値が「0」となる移動限界位置が、移動ステージ51の移動位置を制御する原点位置となる。
フィードモータ制御回路57は、コントローラ90からの指示により作動開始し、コントローラ90から移動位置の設定値を入力すると、移動位置検出回路58から所定時間間隔で出力される移動位置を入力し、入力した移動位置がコントローラ90から入力した設定値になるまでフィードモータ55を駆動して移動ステージ51を移動させる。なお、作動開始直後において移動位置の設定値が入力されると、フィードモータ55を駆動して移動ステージ51を移動限界位置方向に移動させ、移動位置検出回路58から移動限界位置を表す信号を入力するとフィードモータ55への駆動信号の出力を停止する。その後、移動位置検出回路58から出力される移動位置がコントローラ90から入力した移動位置の設定値になるまでフィードモータ55を駆動して移動ステージ51を移動させる。
また、フィードモータ制御回路57には、移動ステージ51の移動速度の設定値(設定速度)がコントローラ90により入力される。そして、コントローラ90から移動開始の指示を入力すると、エンコーダ55aから出力されるパルス列信号の単位時間当たりのパルス数から移動ステージ51の移動速度を計算し、計算した移動速度が設定速度になるようにフィードモータ55を駆動制御する。
次に、加工用ヘッド10について図2を用いて説明する。加工用ヘッド10は、加工対象物OBの円筒表面に加工用レーザ光を照射する機能と、サーボ用Z軸方向光ヘッド20から照射されたサーボ用Z軸方向レーザ光を受光して加工対象物OBのY軸方向のずれに応じた信号を出力する機能とを有する。加工用ヘッド10は、加工用レーザ光を出射するレーザ光源102と、レーザ光源102から出射される加工用レーザ光の光軸に沿って設けられるコリメートレンズ104、偏光ビームスプリッタ106、1/4波長板108、ダイクロイックミラー110及び対物レンズ112とを備えている。
レーザ光源102は、加工用レーザ駆動回路150から供給される電流及び電圧により駆動されて加工用レーザ光を出射する。レーザ光源102から出射された加工用レーザ光は、コリメートレンズ104により平行光となって偏光ビームスプリッタ106に入射する。加工用レーザ光は、その大半(例えば、95%)が偏光ビームスプリッタ106をそのまま透過し、1/4波長板108を通過して直線偏光から円偏光に変換される。1/4波長板108を通過した加工用レーザ光は、ダイクロイックミラー110を透過して対物レンズ112に入射する。こうして、加工用レーザ光は、対物レンズ112により加工対象物OBの表面で集光する。
対物レンズ112には、フォーカスアクチュエータ114が設けられている。フォーカスアクチュエータ114は、対物レンズ112を加工用レーザ光の光軸方向、すなわちZ軸方向に移動させるZ軸アクチュエータ114zと、対物レンズ112をY軸方向に移動させるY軸アクチュエータ114yとを備えている。したがって、Z軸アクチュエータ114zを作動させることにより加工用レーザ光の焦点位置をZ軸方向(光軸方向)に移動でき、Y軸アクチュエータ114yを作動させることにより加工用レーザ光の焦点位置(すなわち光軸)をY軸方向に移動できるようになっている。尚、対物レンズ112は、アクチュエータ114z、114yが通電されていないときに、Z軸方向及びY軸方向の可動範囲の中心に位置する。以下、この位置を対物レンズ112の原点位置と呼ぶ。また、対物レンズを2軸方向に駆動するアクチュエータは、例えば、特開2004−39065等において知られている。
対物レンズ112で集光された加工用レーザ光は、加工対象物OBの表面に照射されて反射する。加工対象物OBで反射した反射光は、対物レンズ112、ダイクロイックミラー110及び1/4波長板108を通過する。この場合、反射光は、1/4波長板108を2回通過したことになるため、レーザ光源から出射されたレーザ光とは偏光方向が90度異なったものとなる。したがって、1/4波長板108を通過した反射光は、偏光ビームスプリッタ106で反射する。偏光ビームスプリッタ106の反射方向には、集光レンズ120及びフォトディテクタ122が設けられている。このため、偏光ビームスプリッタ106で反射した反射光は、集光レンズ120によりフォトディテクタ122に集光する。
フォトディテクタ122は、受光面に集光された光の強度に応じた受光信号を出力する受光素子である。したがって、フォトディテクタ122は、加工用レーザ光が加工対象物OBで反射した反射光の強度に対応した受光信号を出力する。フォトディテクタ122の出力する受光信号は、増幅回路152により増幅され、A/D変換器153に供給される。A/D変換器153は、コントローラ90からの指令により作動し、増幅回路152から供給された受光信号の強度(瞬時値)をデジタル信号に変換してコントローラ90に出力する。コントローラ90は、この受光信号が表す反射光強度から、後述するZ軸方向とY軸方向のサーボ制御が適切に行われているかを判定する。
また、加工用ヘッド10は、レーザ光源102から出射された加工用レーザ光の一部(例えば、5%)を偏光ビームスプリッタ106で反射させ、その反射光を集光レンズ124によりフォトディテクタ126の受光面に集光させる構成を備えている。フォトディテクタ126は、フォトディテクタ122と同様に、その受光面に集光された光の強度に応じた受光信号を出力する受光素子である。したがって、フォトディテクタ126は、レーザ光源102が出射した加工用レーザ光の強度に対応した受光信号を出力する。この受光信号は、加工用レーザ駆動回路150に供給される。
加工用レーザ駆動回路150は、コントローラ90からの指令に基づいて、レーザ光源に対して加工用強度、すなわち加工対象物OBの表面を適切に加工できる強度(この例では、フォトレジストに反応跡を形成できる強度)のレーザ光を出射するための電流及び電圧を供給する回路である。本実施形態においては、加工用レーザ駆動回路150は、フォトディテクタ126が出力する受光信号をフィードバックして、受光信号の強度が予め設定した設定強度となるようにレーザ光源102に出力する電流あるいは電圧を調整する。これにより、加工対象物OBに照射される加工用レーザ光の強度が設定加工用強度に維持される。
また、加工用レーザ駆動回路150は、発光信号供給回路151によりレーザ光源102への駆動信号の出力形態が制御される。発光信号供給回路151は、コントローラ90から加工模様を表すデータを入力して、レーザ加工中に、そのデータに対応したパルス列信号、あるいは、連続信号を加工用レーザ駆動回路150に供給する。本実施形態では、加工対象物OBの表面のフォトレジストに連続した螺旋状の反応跡を形成するものであるため、発光信号供給回路151からは連続信号が出力されるが、例えば、複数の微細ピットを列状に形成する場合には、ピットの長さ、ピットの形成間隔に応じた時間幅のハイレベル信号とローレベル信号からなるパルス列信号が出力される。
加工用ヘッド10には、さらに、ダイクロイックミラー110の反射方向にリレーレンズ(結像レンズ)116及びフォトディテクタ118が設けられている。このリレーレンズ116及びフォトディテクタ118は、サーボ用Z軸方向光ヘッド20から照射されたサーボ用Z軸方向レーザ光を検出するために設けられたものである。したがって、先に、サーボ用Z軸方向光ヘッド20について説明する。
サーボ用Z軸方向光ヘッド20は、図2に示すように、加工対象物OBを挟んで加工用ヘッド10と向き合うように、加工用ヘッド10と対になってレーザ加工装置の本体フレーム(図示略)に固定される。サーボ用Z軸方向光ヘッド20は、サーボ用レーザ光を出射するレーザ光源202と、レーザ光源202から出射されるサーボ用レーザ光の光軸に沿って設けられるコリメートレンズ204及び偏光ビームスプリッタ206と、偏光ビームスプリッタ206の反射方向に設けられる集光レンズ208及びフォトディテクタ210とを備えている。
レーザ光源202は、サーボ用Z軸方向レーザ駆動回路240から供給される電流及び電圧により駆動されてサーボ用レーザ光を出射する。レーザ光源202から出射されたサーボ用レーザ光は、コリメートレンズ204により平行光となって偏光ビームスプリッタ206に入射する。サーボ用レーザ光は、その大半(例えば、95%)が偏光ビームスプリッタ206をそのまま透過してサーボ用Z軸方向光ヘッド20から出射する。このサーボ用Z軸方向光ヘッド20から出射したレーザ光が、サーボ用Z軸方向レーザ光である。サーボ用Z軸方向レーザ光は、加工対象物OBの直径よりも大きな直径の平行光となる。
サーボ用Z軸方向光ヘッド20は、サーボ用Z軸方向レーザ光の出射方向がZ軸方向となり、しかも、その光軸が、加工用ヘッド10の対物レンズ112が原点位置にある時に加工用ヘッド10から出射する加工用レーザ光の光軸と一致するように位置決めされている。この場合、サーボ用Z軸方向光ヘッド20と加工用ヘッド10は、サーボ用Z軸方向レーザ光及び加工用レーザ光の光軸がワーク駆動装置50の回転軸(スピンドルモータ52の回転軸)と直交するように、ワーク駆動装置50に対する相対位置関係が定められている。
サーボ用Z軸方向光ヘッド20から出射したサーボ用Z軸方向レーザ光は、加工対象物OBの直径よりも大きな直径の平行光であるため、加工対象物OBに遮られなかったレーザ光が加工用ヘッド10の対物レンズ112に入射する。この場合、対物レンズ112に入射したサーボ用Z軸方向レーザ光は、受光すると中央に加工対象物OBの棒状の影が形成されたものとなる。この加工対象物OBによってできた影を射影と呼び、射影とその周囲の光とを合わせて射影光と呼ぶ。
対物レンズ112に入射したサーボ用Z軸方向レーザ光は、集光されてダイクロイックミラー110に入射する。ダイクロイックミラー110は、特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を透過する光学素子であり、レーザ光源202から出射されるサーボ用レーザ光に対しては反射し、レーザ光源102から出射される加工用レーザ光に対しては透過するように、各レーザ光の波長が設定されている。したがって、サーボ用Z軸方向レーザ光は、ダイクロイックミラー110で反射する。ダイクロイックミラー110の反射方向には、リレーレンズ116(結像レンズ)及びフォトディテクタ118が設けられており、ダイクロイックミラー110で反射したサーボ用Z軸方向レーザ光がリレーレンズ116により平行光になりフォトディテクタ118の受光面に入射する。フォトディテクタ118の受光面には、加工対象物OBの影である棒状の射影が映し出される。
フォトディテクタ118は、図4に示すように、受光領域が左右に(Y軸方向)2分割された受光素子を備え、その受光領域A,Bに入射した光の強度に比例した検出信号を受光信号(a,b)として出力する。このフォトディテクタ118は、受光したサーボ用Z軸方向レーザ光(射影光L)における棒状の射影Sが受光領域A,Bの分割線DIVと平行になるように、かつ、Z軸方向から見て加工対象物OBの中心軸がワーク駆動装置50の回転軸と一致しているときに加工対象物OBの射影Sが受光領域の分割線DIVにより2等分される位置に配置される。したがって、この受光信号(a,b)は、それらの差により、加工用レーザ光の光軸すなわちワーク駆動装置50の回転軸に対する加工対象物OBのX軸方向の中心軸のY軸方向のずれ量を表している。
フォトディテクタ118から出力される受光信号(a,b)は、Y軸方向エラー信号生成回路161に入力される。Y軸方向エラー信号生成回路161は、受光信号(a,b)を増幅した後、この信号を使って光強度の差(a−b)を演算し、その演算結果をY軸方向エラー信号(a−b)としてY軸方向サーボ回路162に出力する。Y軸方向エラー信号(a−b)の大きさは、加工対象物OBの中心軸とワーク駆動装置50の回転軸(加工用レーザ光の光軸)とのY軸方向におけるずれ量を表すものである。
図5は、加工対象物OBの位置をY軸方向に変化させたときのY軸方向エラー信号(a−b)の波高値を表したものである。図示するように、Y軸方向エラー信号(a−b)は、S字状波形となる。したがって、S字状波形の山(c位置)から谷(a位置)までの範囲r(S字検出範囲rと呼ぶ)においては、加工対象物OBのY軸方向のずれ量とY軸方向エラー信号(a−b)の大きさとが一対一に対応する。このため、S字検出範囲r内において、Y軸方向エラー信号(a−b)に基づいて加工対象物OBのY軸方向のずれ量を検出することができる。
例えば、加工対象物OBの位置がY軸方向にずれていない場合、(b)に示すように、フォトディテクタ118に映し出される射影Sは、受光面の中央に位置するため、Y軸方向エラー信号(a−b)はゼロとなる。一方、加工対象物OBの位置がY軸方向における一方側(左側と呼ぶ)にずれている場合には、(a)に示すように、フォトディテクタ118に映し出される射影Sが受光面の左側に位置するため、Y軸方向エラー信号(a−b)は負の値をとる。また、加工対象物OBの位置がY軸方向における他方側(右側と呼ぶ)にずれている場合には、(c)に示すように、フォトディテクタ118に映し出される射影Sが受光面の右側に位置するため、Y軸方向エラー信号(a−b)は正の値をとる。
Y軸方向サーボ回路162は、コントローラ90からの指令により作動を開始し、Y軸方向エラー信号生成回路161から入力したY軸方向エラー信号(a−b)に基づいて、Y軸方向エラー信号(a−b)が常にゼロとなるようなY軸方向サーボ信号を生成してY軸方向ドライブ回路163に出力する。Y軸方向ドライブ回路163は、Y軸方向サーボ信号に基づいてY軸アクチュエータ114yを駆動する信号を出力して、対物レンズ112をY軸方向に移動させる。したがって、フォトディテクタ118に映し出される射影が受光面の中央に維持されるように対物レンズ112のY軸方向の位置が制御されることとなる。対物レンズ112のY軸方向の移動は、加工対象物OBに照射する加工用レーザ光の光軸をY軸方向に移動させることになる。このため、対物レンズ112のY軸方向の位置制御により、加工用レーザ光の光軸が加工対象物OBの中心軸と交差するように維持される。
サーボ用Z軸方向光ヘッド20は、レーザ光源202から出射されたサーボ用レーザ光の一部(例えば、5%)を偏光ビームスプリッタ206で反射させ、その反射光を集光レンズ208によりフォトディテクタ210の受光面に集光させる構成を備えている。フォトディテクタ210は、受光面に集光された光の強度に応じた受光信号を出力する受光素子である。したがって、フォトディテクタ210は、レーザ光源202が出射したサーボ用レーザ光の強度に対応した受光信号を出力する。この受光信号は、サーボ用Z軸方向レーザ駆動回路240に供給される。
サーボ用Z軸方向レーザ駆動回路240は、コントローラ90からの指令に基づいて、レーザ光源202に対して、加工対象物OBの表面を変化させず、かつ、加工用ヘッド10のフォトディテクタ118で射影光を検出できる強度のサーボ用レーザ光を出射するための電流及び電圧を供給する回路である。本実施形態においては、サーボ用Z軸方向レーザ駆動回路240は、フォトディテクタ210が出力する受光信号をフィードバックして、受光信号の強度が予め設定した設定強度となるようにレーザ光源202に出力する電流あるいは電圧を制御する。これにより、サーボ用Z軸方向光ヘッド20から出射するサーボ用Z軸方向レーザ光の強度が一定の適正値に維持される。
Y軸方向サーボ回路162から出力されるY軸方向サーボ信号は、遅延回路164にも供給されている。遅延回路164は、コントローラ90からの指令により作動を開始し、このY軸方向サーボ信号をコントローラ90によって指示される時間だけ遅延して、Z軸方向サーボ信号としてZ軸方向ドライブ回路165に出力する。この遅延時間は、コントローラ90によって計算されるものであり、加工対象物OBの軸線方向周りの回転速度N(回/秒)の逆数(すなわち、加工対象物OBの1回転当たりの時間1/N)を「4」で除した下記式1によって規定される時間(すなわち加工対象物OBの1/4回転に要する時間)である。
遅延時間=(1/4)・(1/回転速度N) …式1
Z軸方向ドライブ回路165は、遅延回路164からのZ軸方向サーボ信号に基づいてZ軸アクチュエータ114zを駆動する信号を出力して、対物レンズ112をZ軸方向に移動させる。この場合、前記遅延回路164から出力されるZ軸方向サーボ信号は、後述するように、加工対象物OBのZ軸方向のずれ量、すなわちワーク駆動装置の回転軸に対する加工対象物OBのX軸方向の中心軸のZ軸方向のずれ量を表している。したがって、加工対象物OBのZ軸方向のずれ量だけ、対物レンズ112が原点位置からZ軸方向に移動される。
加工用ヘッド10は、対物レンズ112が原点位置にあり、かつ、加工対象物OBの中心軸がワーク駆動装置50の回転軸と一致している場合に、加工用レーザ光の焦点位置が加工対象物OBの表面に一致するように位置決めされている。このため、加工対象物OBの位置がZ軸方向に変動しても、その変動量だけ対物レンズ112を原点位置からZ軸方向に移動させることにより、常に、加工用レーザ光の焦点位置を加工対象物OBの表面と一致させることができる。つまり、加工用レーザ光の焦点位置を、ワーク駆動装置50の回転軸よりも加工対象物OBの半径分だけ対物レンズ112側に維持させることができる。
遅延回路164によって遅延されたY軸方向サーボ信号が加工対象物OBのZ軸方向のずれ量を表す点について詳しく説明しておく。図7は、加工対象物OBをその軸線方向から見た図である。破線で示す加工対象物OBが、回転中心Oを中心に矢印方向に図示実線位置まで回転したとする。このときの回転角をθとし、加工対象物OBの中心軸線位置をO1とし、回転中心Oから加工対象物OBの中心軸線位置O1までの距離をrとする。なお、図示1点差線は、加工対象物OBが1回転する際、加工対象物OBの中心軸線位置O1がたどる軌跡を示している。この場合、図示横方向がY軸方向であり、縦方向がZ軸方向である。破線位置にある加工対象物OBの中心軸線位置O1を基準にすると、加工対象物OBの回転角θの回転により、加工対象物OBの中心軸線位置O1の回転中心Oに対するY軸方向及びZ軸方向のずれ量Devy,Devzは下記式2,3のように表される。
Devy=r・cosθ …式2
Devz=r・sinθ=r・cos(θ−π/2) …式3
これらのY軸方向及びZ軸方向のずれ量Devy,Devzは、図8(A)(B)の波形図のようになる。これらからも明らかなように、Z軸方向の加工対象物OBのずれ量Devzは、Y軸方向の加工対象物OBのずれ量Devyに対してπ/2だけ遅れている。したがって、Y軸方向サーボ回路162からのY軸方向サーボ信号を、遅延回路164によって加工対象物OBの1/4回転に要する時間だけ遅延した信号は、加工対象物OBのZ軸方向のずれ量を表している。
この点についてさらに説明しておくと、加工対象物OBの回転中心Oが加工対象物OBの中心軸線位置O1からずれているために、Y軸方向の加工対象物OBのずれ量Devyは、加工対象物OBが図7の矢印方向に1/4回転した時点で、Z軸方向の加工対象物OBのずれ量Devz と等しくなる。したがって、遅延回路164は、Y軸方向のずれ量Devyを補正するためのサーボ信号を、Y軸方向の加工対象物OBのずれ量DevyがZ軸方向の加工対象物OBのずれ量Devzとして現れるのに要する時間だけ遅延することになる。なお、加工対象物OBが図7の矢印方向と反対方向に回転する場合には、Z軸方向の加工対象物OBのずれ量DevzはY軸方向の加工対象物OBのずれ量Devyに対して加工対象物OBの3/4回転に相当する時間だけ遅れる。したがって、この場合の遅延時間は、下記式4のように表わされる。
遅延時間=(3/4)・(1/回転速度N) …式4
コントローラ90は、CPU、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータと、ハードディスクや不揮発性メモリなどの記憶装置と、入出力インタフェース等から構成される電子制御装置である。コントローラ90には、作業者が各種パラメータや処理等を指示するための入力装置91と、作業者に対して作動状況等を視覚的に知らせるための表示装置92とが接続されている。
次に、レーザ加工を行う際の制御について説明する。図6は、コントローラ90が実行するレーザ加工制御ルーチンを表すフローチャートである。レーザ加工制御ルーチンは、コントローラ90のROM内に制御プログラムとして記憶されている。作業者は、加工対象物OBをワーク駆動装置50にセットした後、入力装置91を使ってレーザ加工の開始指示操作を行う。これにより、本制御ルーチンが起動する。
本制御ルーチンがステップS100にて起動すると、コントローラ90は、ステップS102において、各種回路の作動を開始させる。つづいて、ステップS104において、フィードモータ制御回路57に対して加工開始位置への移動指令を出力する。この指令により、フィードモータ制御回路57は、移動位置検出回路58により検出される移動位置を取り込みながらフィードモータ55を駆動して移動ステージ51を加工開始位置にまで移動させる。つづいて、コントローラ90は、ステップS106において、スピンドルモータ制御回路56に対して回転開始指令を出力する。これにより、スピンドルモータ52が起動して加工対象物OBの回転が始まる。このとき、スピンドルモータ制御回路56は、エンコーダ52aにより検出されるパルス列信号の単位時間当たりのパルス数からスピンドルモータ52の回転速度を計算し、計算した回転速度がコントローラ90によって設定された回転速度に等しくなるようにスピンドルモータ52の回転を制御する。
つづいて、コントローラ90は、ステップS108において、サーボ用Z軸方向レーザ駆動回路240に対して、サーボ用レーザ光の照射開始指令を出力する。したがって、サーボ用Z軸方向光ヘッド20からサーボ用Z軸方向レーザ光が加工対象物OBに対してZ軸方向に照射される。また、このサーボ用レーザ光の照射により、フォトディテクタ118が受光信号(a,b)を出力し、Y軸方向エラー信号生成回路161はY軸方向エラー信号(a−b)を出力し始める。
つづいて、コントローラ90は、ステップS110において、Y軸方向サーボ回路162と遅延回路164とに対して、サーボ制御の開始指令を出力する。これにより、Y軸方向サーボ回路162は、Y軸方向エラー信号生成回路161からY軸方向エラー信号(a−b)を入力し、このY軸方向エラー信号(a−b)に基づいて、Y軸方向エラー信号(a−b)が常にゼロとなるようなY軸方向サーボ信号を生成してY軸方向ドライブ回路163に出力する。Y軸方向ドライブ回路163は、Y軸方向サーボ信号に基づいてY軸アクチュエータ114yを駆動する信号を出力して、対物レンズ112をY軸方向に移動させる。したがって、フォトディテクタ118に映し出される射影が受光面の中央に維持されるように対物レンズ112のY軸方向位置が制御され、加工用レーザ光の光軸が加工対象物OBの中心軸と交差するように維持される。
一方、遅延回路164は、前記サーボ制御の開始指示と同時に、Y軸方向サーボ信号を遅延する時間を表す遅延時間データをコントローラ90から入力する。コントローラ90は、加工対象物OBの1/4回転に相当する時間を計算して、遅延時間データとして遅延回路164に出力する。遅延回路164は、前記Y軸方向サーボ回路162から入力したY軸方向サーボ信号を前記遅延時間だけ遅延して、Z軸方向サーボ信号としてZ軸方向ドライブ回路165に出力する。Z軸方向ドライブ回路165は、Z軸方向サーボ信号に基づいてZ軸アクチュエータ114zを駆動する信号を出力して、対物レンズ112をZ軸方向に移動させる。このY軸方向サーボ信号を遅延して形成したZ軸方向サーボ信号は、前述のように、加工対象物OBのZ軸方向のずれ量を表している。したがって、加工対象物OBのZ軸方向のずれ量だけ、対物レンズ112が原点位置からZ軸方向に離れた位置に制御され、加工用レーザ光の焦点位置が加工対象物OBの表面と常に一致するようになる。
つづいて、コントローラ90は、ステップS112において、加工用レーザ駆動回路150に対して、加工用レーザ光の照射開始指令を出力する。この場合、コントローラ90は、加工用レーザ光の強度を、加工対象物OBが変化しない低レベルに設定した照射開始指令を出力する。これにより、加工用レーザ駆動回路150は、レーザ光源102に供給する電圧及び電流の強度を低いレベルに設定してレーザ光源102を駆動させる。したがって、加工用ヘッド10からは、非加工強度のレーザ光が加工対象物OBに向けて出射されることになる。加工対象物OBは、この非加工強度のレーザ光に対してはレーザ加工されない。
つづいて、コントローラ90は、ステップS114において、加工用ヘッド10に設けられたフォトディテクタ122の出力する受光信号を増幅回路152及びA/D変換器153を介して取り込んで加工用レーザ光の反射光強度Rを検出する。次に、ステップS116において、反射光強度Rが下限値Rrefより大きいか否かを判定する。反射光強度Rが下限値Rrefよりも大きければ、上述したZ軸方向サーボ制御とY軸方向サーボ制御とが正常に行われていると判定して、その処理をステップS118に進める。一方、反射光強度Rが下限値Rref以下であれば、Z軸方向サーボ制御とY軸方向サーボ制御とが正常に行われていないと判定して、ステップS138において、表示装置92にその旨を表示し、その処理をステップS130に進める。
コントローラ90は、ステップS116において「Yes」、つまり、Z軸方向サーボ制御とY軸方向サーボ制御とが正常に行われていると判定した場合には、ステップS118において、加工用レーザ駆動回路150に対して、レーザ光源102から出射されているレーザ光の強度を非加工強度から加工強度に変更する指令を出力する。これにより、加工用レーザ駆動回路150は、レーザ光源102に供給する電圧及び電流の強度を加工用レベルに切り換えてレーザ光源102を作動させる。したがって、加工用ヘッド10からは、加工強度のレーザ光が加工対象物OBに向けて出射されることになる。
つづいて、コントローラ90は、ステップS120において、フィードモータ制御回路57に対して移動ステージ51のX軸方向への移動開始指令を出力する。フィードモータ制御回路57は、エンコーダ55aから出力されるパルス列信号の単位時間当たりのパルス数から移動ステージ51の移動速度を計算し、計算した移動速度が設定速度になるようにフィードモータ55を駆動制御する。
これにより、加工対象物OBは、その中心軸回りに回転するとともにX軸方向に移動し、その表面に加工用レーザ光が照射される。したがって、加工対象物OBは、螺旋状に加工用レーザ光が照射され、その照射軌跡に沿ってフォトレジストに反応跡が形成される。また、同時に、加工用レーザ光の光軸が加工対象物OBの中心軸と交差し、かつ、焦点位置が加工対象物OBの表面に一致するように、対物レンズ112のZ軸方向とY軸方向の位置が制御される。したがって、加工対象物OBの表面には、適正に集光された加工用レーザ光が垂直に照射され、適正幅の螺旋状の反応跡がフォトレジストに形成される。
つづいて、コントローラ90は、ステップS122において、移動位置検出回路58により検出される移動ステージ51の移動位置を取り込み、ステップS124において、現時点の移動位置が加工終了位置に到達したか否かを判定する。ステップS122,S124の処理は、移動ステージ51の移動位置が加工終了位置に到達するまで繰り返される。したがって、この間は、上述したように、加工対象物OBのレーザ加工及びサーボ制御が継続される。
移動ステージ51の移動位置が加工終了位置に達すると、コントローラ90は、ステップS124にて「Yes」と判定し、ステップS126にて加工用レーザ駆動回路150に対して加工用レーザ光の照射停止指令を出力する。これにより、加工用レーザ光の照射が停止される。次に、ステップS128において、フィードモータ制御回路57に対して移動ステージ51の移動停止指令を出力する。これによりフィードモータ55への通電が停止され移動ステージ51が停止する。つづいて、コントローラ90は、ステップS130において、Y軸方向サーボ回路162と遅延回路164とに対して、サーボ制御の停止指令を出力する。これにより、Y軸方向サーボ回路162と遅延回路164は作動を停止し、Y軸アクチュエータ114y及びZ軸アクチュエータ114zの作動が停止する。次に、ステップS132において、サーボ用Z軸方向レーザ駆動回路240に対して、サーボ用レーザ光の照射停止指令を出力する。これにより、サーボ用Z軸方向光ヘッド20からのサーボ用Z軸方向レーザ光の照射が停止される。
つづいて、コントローラ90は、ステップS134において、スピンドルモータ制御回路56に対して回転停止指令を出力する。これにより、スピンドルモータ52への通電が停止され、加工対象物OBの回転が停止する。次に、ステップS136において、フィードモータ制御回路57に対して加工対象物OBの取り外し位置への移動指令を出力する。これによりフィードモータ制御回路57は、移動位置検出回路58により検出される移動位置を取り込みながらフィードモータ55を駆動して移動ステージ51を加工対象物OBの取り外し位置にまで移動させる。作業者は、この位置で加工対象物OBをワーク駆動装置50から取り外す。こうして、移動ステージ51が所定の取り外し位置にまで移動すると、ステップS140により本レーザ加工制御ルーチンが終了する。
以上説明した第1実施形態のレーザ加工装置によれば、サーボ用Z軸方向レーザ光を加工対象物OBに照射し、その射影の位置に基づいて、Y軸方向エラー信号生成回路161、Y軸方向サーボ回路162及びY軸方向ドライブ回路163により、対物レンズ112のY軸方向の位置が制御され、加工用レーザ光の光軸の位置が加工対象物OBの中心軸と交差するようになる。また、Y軸方向サーボ信号を用いた遅延回路164及びZ軸方向ドライブ回路165の作用により、対物レンズ112のZ軸方向の位置が制御され、焦点位置が加工対象物OBの表面に一致するようになる。したがって、本実施形態のように50μmという非常に細い円筒状の加工対象物OBの表面をレーザ加工する場合でも、適正に集光した加工用レーザ光を加工対象物OBの表面に垂直に照射することができ、これにより、適正幅の螺旋状の反応跡をフォトレジストに形成することができる。この結果、高精度にマイクロスプリング製作用のパイプを製造することが可能となる。
また、上記第1実施形態においては、遅延回路164がY軸方向サーボ信号を遅延することにより、Z軸方向サーボ信号を形成するようにしたので、サーボ用Y軸方向レーザ光を照射するサーボ用Y軸方向光ヘッド及びサーボ用Y軸方向レーザ光を受光するY軸方向受光装置が不要となり、レーザ加工装置全体を簡単に構成できる。
また、上記第1実施形態においては、加工用レーザ光とサーボ用Z軸方向レーザ光とを同一の光軸上で照射し、フォトディテクタ118の受光信号から得られたY軸方向エラー信号(a−b)をフィードバックして、Y軸方向エラー信号(a−b)が常にゼロとなるようにクローズドループ制御によりY軸アクチュエータ114yを駆動するため、特にY軸方向サーボ制御を高精度に行うことができる。
また、加工用レーザ光の反射光強度Rと下限値Rrefとの比較に基づいて、Z軸方向サーボ制御とY軸方向サーボ制御の異常発生の有無を判定し、異常が検出されたときには、加工用レーザ光の焦点位置が適正となっていないためレーザ加工を中止する。これにより、レーザ加工の失敗を防止することができる。
また、サーボ用Z軸方向レーザ光を出射するにあたり、フォトディテクタ210で検出した光の強度が設定強度となるようにレーザ光源202の出力を制御するため、Z軸方向及びY軸方向のサーボ制御を精度良く行うことができる。
b.第2実施形態
次に、第2実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。図9は、第2実施形態のレーザ加工装置における加工用ヘッド12の概略構成を表す。第2実施形態のレーザ加工装置は、第1実施形態のレーザ加工装置の加工用ヘッド10とサーボ用Z軸方向光ヘッド20に代えて、加工用ヘッド12を設けたもので、他の構成については第1実施形態と同一である。この加工用ヘッド12は、加工用レーザ光を照射/受光する構成に加えて、サーボ用Z軸レーザ光を照射/受光する構成を備えている。以下、第1実施形態と同様な構成については、図面に第1実施形態と同一の符号を付して簡単な説明に留める。
加工用ヘッド12は、第1実施形態の加工用ヘッド10と同様に、加工用レーザ光を加工対象物OBに照射する構成としてレーザ光源102、コリメートレンズ104、偏光ビームスプリッタ106、1/4波長板108、ダイクロイックミラー110及び対物レンズ112を備え、加工用レーザ光の反射光強度を検出する構成として集光レンズ120及びフォトディテクタ122を備え、レーザ光源102から出射する加工用レーザ光の強度を検出する構成として集光レンズ124及びフォトディテクタ126を備え、対物レンズ112をZ軸方向とY軸方向とに駆動する構成としてZ軸アクチュエータ114zとY軸アクチュエータ114yからなるフォーカスアクチュエータ114を備える。
さらに、加工用ヘッド12は、サーボ用レーザ光を照射するレーザ光源130と、レーザ光源130から出射されるサーボ用レーザ光の光軸に沿って設けられるコリメートレンズ132、偏光ビームスプリッタ134及び1/4波長板136を備えている。レーザ光源130は、サーボ用Z軸方向レーザ駆動回路240から供給される電流及び電圧により駆動されてサーボ用レーザ光を出射する。レーザ光源130から出射されたサーボ用レーザ光は、コリメートレンズ132により平行光となって偏光ビームスプリッタ134に入射する。サーボ用レーザ光は、その大半(例えば、95%)が偏光ビームスプリッタ134をそのまま透過して1/4波長板136を通過して直線偏光から円偏光に変換される。1/4波長板136を通過したサーボ用レーザ光は、加工用レーザ光の光路途中に設けられるダイクロイックミラー110に入射し、そこで反射する。したがって、サーボ用レーザ光と加工用レーザ光とが合成されて対物レンズ112に入射する。この場合、ダイクロイックミラー110で反射したサーボ用レーザ光の光軸と、ダイクロイックミラー110を透過した加工用レーザ光の光軸とが一致するように、サーボ用レーザ光と加工用レーザ光の光路が設定されている。
サーボ用レーザ光は、対物レンズ112により加工対象物OBの直径よりも小さな径であって、加工用レーザ光と同程度に集光されて加工対象物OBの表面にスポット状に照射される。この加工対象物OBの照射されるサーボ用レーザ光がサーボ用Z軸方向レーザ光である。加工用レーザ光及びサーボ用Z軸方向レーザ光は、加工対象物OBの表面で反射して対物レンズ112に入射し平行光に戻される。この場合、加工用レーザ光は、そのままダイクロイックミラー110を透過するが、サーボ用Z軸方向レーザ光は、ダイクロイックミラー110で反射する。したがって、ダイクロイックミラー110で加工用レーザ光とサーボ用Z軸方向レーザ光とが分離されることになる。
ダイクロイックミラー110で反射したサーボ用Z軸方向レーザ光は、1/4波長板136を通過する。この場合、サーボ用Z軸方向レーザ光(反射光)は、1/4波長板を2回通過したことになるため、レーザ光源130から出射されたレーザ光とは偏光方向が90度異なったものとなる。したがって、サーボ用Z軸方向レーザ光は、偏光ビームスプリッタ134で反射する。
偏光ビームスプリッタ134の反射方向には、フォトディテクタ140が設けられている。したがって、加工対象物OBの表面を反射したサーボ用Z軸方向レーザ光は、フォトディテクタ140に入射する。このフォトディテクタ140は、第1実施形態のフォトディテクタ118と同様に、受光領域が左右に(Y軸方向)2分割された2つの受光素子を備え、その受光領域A,Bに入射した光の強度に比例した検出信号を受光信号(a,b)として出力する。また、フォトディテクタ140は、対物レンズ112が原点位置にあり、かつ、Z軸方向から見て加工対象物OBの中心軸がワーク駆動装置50の回転軸と一致しているときに、図10(b)に示すように、サーボ用Z軸方向レーザ光が受光領域の分割線DIVにより2等分される位置に配置される。したがって、この受光信号(a,b)も、それらの差により、加工用レーザ光の光軸すなわちワーク駆動装置50の回転軸に対する加工対象物OBのX軸方向の中心軸のY軸方向のずれ量を表している。
フォトディテクタ140から出力される受光信号(a,b)は、第1実施形態と同様にY軸方向エラー信号生成回路161に入力される。Y軸方向エラー信号生成回路161は、受光信号(a,b)を増幅した後、この信号を使って光強度の差(a−b)を演算し、その演算結果をY軸方向エラー信号(a−b)としてY軸方向サーボ回路162に出力する。加工対象物OBの位置がY軸方向に変動すると、図10(a),(b),(c)に示すように、その変動位置に応じて加工対象物OBに照射されるサーボ用Z軸方向レーザ光の位置が変化し、これに伴って、フォトディテクタ140に受光される反射光RLの位置が変化する。このため、Y軸方向エラー信号(a−b)の大きさは、加工対象物OBの中心軸とワーク駆動装置50の回転軸(加工用レーザ光の光軸)とのY軸方向におけるずれ量を表すものとなる。
Y軸方向サーボ回路162及びY軸方向ドライブ回路163の動作についても第1実施形態と同様である。つまり、Y軸方向サーボ回路162が、Y軸方向エラー信号生成回路161から入力したY軸方向エラー信号(a−b)に基づいて、Y軸方向エラー信号(a−b)が常にゼロとなるようなY軸方向サーボ信号を生成し、Y軸方向ドライブ回路163が、Y軸方向サーボ信号に基づいてY軸アクチュエータ114yに駆動信号を出力して、対物レンズ112をY軸方向に移動させる。したがって、フォトディテクタ140に受光されたサーボ用Z軸方向レーザ光の反射光が、受光面の中央に維持されるように対物レンズ112のY軸方向位置が制御されることとなる。このため、加工用レーザ光の光軸が加工対象物OBの中心軸と交差するように維持される。
加工用ヘッド12は、さらに、レーザ光源130から出射されたサーボ用レーザ光の一部(例えば、5%)を偏光ビームスプリッタ134で反射させ、その反射光を集光レンズ142によりフォトディテクタ144の受光面に集光させる構成を備えている。フォトディテクタ144は、第1実施形態のフォトディテクタ210と同様に、レーザ光源130が出射したサーボ用レーザ光の強度に対応した受光信号を出力する。この受光信号は、サーボ用Z軸方向レーザ駆動回路240に供給される。サーボ用Z軸方向レーザ駆動回路240は、フォトディテクタ144が出力する受光信号をフィードバックして、受光信号の強度が予め設定した強度となるようにレーザ光源130の出力を調整する。これにより、加工用ヘッド12から加工対象物OBに向けて出射するサーボ用Z軸方向レーザ光の強度が一定の適正値に維持される。
また、第2実施形態のレーザ加工装置は、第1実施形態と同様のレーザ加工制御ルーチンを実行する。
以上説明した第2実施形態のレーザ加工装置においては、加工用ヘッド12によりサーボ用Z軸方向レーザ光を集光して加工対象物OBに照射し、その反射光の位置に基づいて加工用レーザ光の光軸の位置が加工対象物OBの中心軸と交差するように対物レンズ112のY軸方向の位置を制御する。また、遅延回路164及びZ軸方向ドライブ回路165は、Y軸方向サーボ回路162からY軸方向サーボ信号を用いて、加工用レーザ光の焦点位置が加工対象物OBの表面位置と一致するように対物レンズ112のZ軸方向の位置を制御する。したがって、第1実施形態と同様な効果を奏する。また、サーボ用Z軸方向レーザ光の反射光の検出位置は、加工対象物OBのY軸方向の変位に対して大きく変動するため、Y軸方向サーボ制御を高精度に行うことができる。
以上、本発明の第1及び第2実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
上記第1実施形態においては、サーボ用Z軸方向レーザ光を、加工用レーザ光を集光させる対物レンズ112を介してフォトディテクタ118で受光する構成を採用しているが、サーボ用Z軸方向レーザ光の光軸を加工用レーザ光の光軸から僅かにずらし、対物レンズ112の近傍に設けたフォトディテクタでサーボ用Z軸方向レーザ光を受光する構成であってもよい。この構成では、加工対象物OBの変動を加工用レーザ光の焦点位置の近傍で検出することになるが、加工対象物OBの変動が大きくなければサーボ制御は可能である。
上記各実施形態においては、Y軸方向サーボ回路162からのY軸方向サーボ信号を遅延回路164に導いて、遅延回路164がZ軸方向サーボ信号を生成するようにした。しかし、これに代えて、図1に破線で示すように、Y軸方向ドライブ回路163から出力される駆動信号を遅延回路164に入力するようにして、遅延回路164が前記駆動信号を上記各実施形態と同様に遅延してZ軸方向サーボ信号を生成するようにしてもよい。また、サーボ用Z軸方向レーザ光の光軸を加工用レーザ光の光軸から僅かにずらし、対物レンズ112の近傍に設けたフォトディテクタでサーボ用Z軸方向レーザ光を受光する構成の場合は、サーボ制御はオープンループ制御であるためエラー信号を遅延させるようにしてもよい。すなわち、Y軸方向エラー信号生成回路161から出力されるY軸方向エラー信号(a−b)を遅延回路164に入力するようにして、遅延回路164が前記Y軸方向エラー信号(a−b)を上記各実施形態と同様に遅延する。そして、Y軸方向サーボ回路162と同様なZ軸方向サーボ回路を新たに設けて、Z軸方向サーボ回路が前記遅延したY軸方向エラー信号(a−b)を用いてZ軸方向サーボ信号を生成して、Z軸方向ドライブ165に供給するようにしてもよい。
また、サーボ制御がオープンループ制御である場合はエラー信号を作成する際に用いる受光信号を遅延させるようにしてもよい。すなわち、図1に破線で示すように、フォトディテクタ118から出力される受光信号(a,b)を遅延回路164に入力するようにして、遅延回路164が前記受光信号(a,b)を上記各実施形態と同様に遅延する。そして、Y軸方向エラー信号生成回路161及びY軸方向サーボ回路162と同様なZ軸方向エラー信号生成回路及びZ軸方向サーボ回路を新たに設けて、Z軸方向エラー信号生成回路が前記遅延した受光信号(a,b)を用いてZ軸方向エラー信号を生成し、Y軸方向サーボ回路が前記生成したZ軸方向エラー信号を用いてZ軸方向サーボ信号を生成して、Z軸方向ドライブ165に供給するようにしてもよい。
また、上記各実施形態においては、アクチュエータ114による対物レンズ112の駆動のみにより加工用レーザ光の焦点位置が加工対象物OBの適正位置になるように制御したが、Y軸アクチュエータ114yに変位センサを設け、この変位センサが出力する信号の直流成分(オフセット部分)を検出し、この直流成分がゼロになるように加工用ヘッド及びサーボ用Z軸方向光ヘッドをY軸方向に一体的に移動させるアクチュエータを別に設けるようにしてもよい。この場合には、対物レンズ112が原点位置を中心に駆動されるため、さらに精度の高いサーボ制御を行うことができる。尚、Y軸アクチュエータ114yに変位センサを設けずに、Y軸方向サーボ回路162又は遅延回路168が出力する信号の直流成分を検出するようにしてもよい。
また、上記各実施形態においては、加工用レーザ光の照射位置を加工対象物OBに対して相対的にX軸方向に移動させるために、ワーク駆動装置50により加工対象物OBをX軸方向に移動させた。しかし、これに代えて、加工対象物OBを固定し、加工用ヘッド10及びサーボ用Z軸方向光ヘッド20(又は加工用ヘッド12)を一体化したユニットをX軸方向に移動させるようにしてもよい。また、加工対象物OBと、加工用ヘッド10及びサーボ用Z軸方向光ヘッド20(又は加工用ヘッド12)を一体化したユニットとの両方を、X軸方向に同時に移動させるようにしてもよい。
また、上記各実施形態においては、加工用レーザ光の照射位置を加工対象物OBに対して相対的にX軸方向回りに回転させるために、加工対象物OBをその中心軸回りに回転させた。しかし、これに代えて、加工対象物OBを固定し、加工用ヘッド10及びサーボ用Z軸方向光ヘッド20(又は加工用ヘッド12)を一体化したユニットを加工対象物OBの中心軸回りに回転させてもよい。また、加工対象物OBと、加工用ヘッド10及びサーボ用Z軸方向光ヘッド20(又は加工用ヘッド12)を一体化したユニットとの両方を、X軸方向回りに同時に回転させてもよい。
また、上記各実施形態においては、加工対象物OBを横方向に向けて固定しているが、加工対象物OBを固定する向きは任意の方向に設定できるものである。また、これに伴って、加工用レーザ光及びサーボ用Z軸方向レーザ光の向きに関しても、X軸、Y軸、Z軸方向の関係を満たす条件で任意に設定できるものである。