この発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、歩行型の野菜苗の移植機を示すもので、ハンドルフレーム1の前側上部にU字状形態に前後に迂回するように形成のトレイガイド4が設けられ、更に、このトレイガイド4を移送案内される苗トレイAの各苗ポットから苗を取り出す苗取出装置2、及びこの苗取出装置2から供給される苗を保持して土壌面へ植付ける苗植付装置3等が配置されて、苗植装置が設けられる。この苗植装置の前方には苗トレイAを載置する補助苗載台5を配置している。この苗移植機の概要構成を説明する。
この苗移植機の車体6は、前部にエンジン7を搭載し、後部にハンドルフレーム1を有する。尚、エンジン7の後側に設けた主ミッションケース8の背面部に側面視長方形の左右に長い連結フレーム9が一体に設けられており、この連結フレーム9の背面右端部に操縦ハンドル10を支持するハンドルフレーム1の前端部が固着連結されている。ハンドルフレーム1は、苗植装置の平面視右側を通って後方に延び、途中で斜め上向きに湾曲し、そのまま苗植装置の後方位置まで延びている。そして、その後端部に操縦ハンドル10が固着して取り付けられている。また、エンジン7の左側面部には、該エンジン7の動力で駆動する油圧ポンプ11を設けている。
また、後側の転輪12が前側の駆動輪13に対して上下動することで車高を調節できる左右一対のクローラ14と、該クローラ14の前方に配置された左右各々の前輪15とを設けている。このクローラ14は、前記駆動輪13と転輪12との2輪に巻き掛けられた構成となっており、エンジン7からの動力が主ミッションケース8を介して前記駆動輪13へ伝達されて走行駆動する。また、前記駆動輪13の軸心回りに上下回動可能なクローラフレーム16の回動先端側に前記転輪12を取り付けており、油圧によるリフトシリンダ17やローリングシリンダ18の伸縮作動で前記クローラフレーム16が上下に回動することにより、転輪12が駆動輪13に対して上下動して車高が変更される構成となっている。
前輪15及びクローラ14の上下動機構の詳細構成を説明すると、クローラフレーム16の前端部の上側に固着された上側アーム19がリフトシリンダ17のシリンダロッド17aに中継部材20及び該中継部材20の左右両端に設けたリンクロッド21を介して連結され、前記シリンダロッド17aの前後移動でクローラフレーム16が上下に回動する構成となっている。尚、シリンダロッド17aは、前後両端が主ミッションケース8の後部上面に固着した油圧バルブユニット22とハンドルフレーム1に取り付けた取付部材23とに支持されたガイド軸70に沿って摺動するようになっている。また、クローラフレーム16の前端部の下側に固着された下側アーム71が前輪15を上下動させるべく上下に回動する前輪アーム72に連動リンク73を介して連結され、クローラフレーム16が上側に回動すると前輪アーム72が上側に回動し、クローラフレーム16が下側に回動すると前輪アーム72が下側に回動する構成となっている。尚、前輪15の上下移動量はクローラ14の転輪12の上下移動量と略同一となるように設定されており、車高の変更に拘らず、車体の前後傾斜姿勢を維持する構成となっている。従って、苗植付装置3による苗植付姿勢が一定に維持される。また、左側のリンクロッド21には前記ローリングシリンダ18が組み込まれており、該シリンダ18を伸縮作動させることにより左側のリンクロッド21のみの有効長さを変え、左側のみのクローラ14及び前輪15を上下動させて機体の左右傾斜姿勢を変更できる構成となっている。
リフトシリンダ17及びローリングシリンダ18は、前記油圧ポンプ11から供給される作動油を油圧バルブユニット22内のリフト制御バルブ(図示せず)で制御して作動させられる。リフトシリンダ17を伸縮作動させると、左右のクローラ14及び前輪15が同方向に同量だけ機体に対し上下動し、機体が昇降する。また、ローリングシリンダ18を伸縮作動させると、左側のクローラ14及び前輪15のみが同量だけ上下動し、機体が左右に傾く。そして、車体6下部の接地センサ74の圃場面の検出によって、センサ連結ロッド75等を介して油圧バルブユニット22内のリフト制御バルブを切替えてリフトシリンダ17を作動させ、畝高さに応じて車高を変更しながら、車高及び苗植付装置3による苗植深さを一定に維持制御するように構成されている。尚、前記接地センサ74は、圃場面に追従して左右方向の回動支点軸74a回りに上下に回動することにより機体の対地高さを検出する構成となっている。また、油圧バルブユニット22内のローリング制御バルブ(図示せず)は左右傾斜検出用の振り子76の動きに連動して切り替わるようになっており、機体が左右に傾斜するとローリングシリンダ18が適宜作動し、機体を所望の左右傾斜姿勢になるよう制御する。従って、リフトシリンダ17、ローリングシリンダ18及び油圧バルブユニット22等により、機体に対しクローラ14及び前輪15を上下動させて機体位置を制御する機体制御機構が構成されている。
操縦ハンドル10の下側には、前記接地センサ74の回動支点軸74aを上下に移動させて機体の対地高さを変更調節するための植付深さ調節レバー77を設けている。この植付深さ調節レバー77は、左右のクローラ14の間に配置された接地センサ74から機体後端部の操縦ハンドル10の近傍にまで延設され、操縦ハンドル10の近くにいる作業者が容易に上下方向へ回動させて操作することができる構成となっている。
操縦ハンドル10は両端が後方に延びる平面視略コ字形をしており、その両端部にグリップ10aを設けており、作業者が該グリップ10aを握って操縦する。操縦ハンドル10は機体の左右中心から右側にずらせて設けられているので、畝の右側の溝を歩行しながらハンドル操作を行いやすい。グリップ10aの下側にはサイドクラッチレバー78を設けている。また、操縦ハンドル10の基部には操作パネル79を設け、該操作パネル79に、苗植装置へ伝動する植付クラッチの入・切操作と機体の昇降操作をする植付昇降レバー80、メインクラッチの入・切操作をするメインクラッチレバー81等が設けられている。更に、操縦ハンドル13の左側のグリップ10aの上方直前位置には、左右傾斜検出用の振り子76を強制的に左右に回動させて機体の左右傾斜姿勢を変更するための左右傾斜レバー82を設けている。
苗トレイAは、多数の苗ポットDを縦横方向に一定数整列した形態に形成し各苗ポット内に育苗床を詰め込んで播種して育苗Eし、全体として方形状のマット状の育苗を行うもので、苗植装置のトレイガイド4へは、この苗トレイAの育苗されたままの状態で供給することができる。このトレイガイド4は、ハンドルフレーム1の上側に沿う形態に側面視でU字状形態の底部を前下部に位置させ、供給口83や送出口84の上端部を後上方に位置させた形態に傾斜させた構成としている。
このトレイガイド4は、苗トレイAの底部を受けて案内する案内板24と、この苗トレイAの左右両側縁を案内する案内側板25と、これら案内側板25側に張設されて回転する送りチエン26等からなり、苗トレイAの補給を受けてこの送りチエン26に配置のラグ27によって苗トレイAの左右両側のポットD間隔部を係合して移送させる。案内板24の下端部は送りチエン26の横方向スプロケット軸28の周りに向けて湾曲されて、この外周には左右両側の案内側板25間には案内体30が配置されて、全体として苗トレイAを側面視でU字状に迂回移送するように案内することができる。29は案内板14の中央部に形成した送りガイドで、苗トレイAの底部のポットD間隔部を嵌合させて送出方向の移送を案内する。
このようなトレイガイド4は、ハンドルフレーム1に一体の取付フレーム31に対してガイドレール32によって苗トレイAの横幅に渡って左右に往復移動自在に支持される。このトレイガイド4は案内子33を取付フレーム31に支持されたリードカム34に嵌合させて、主ミッションケース8からの伝動で作動するリードカム34の回転によってトレイガイド4を横方向へ往復移動できる。前記スプロケット軸28の伝動回転によって、送りチエン26を駆動すると共に、リンク機構35を介して左右一対のクランクアーム36からの回動を受ける。このクランクアーム36は、トレイガイド4と一体的に横方向へ移動して、取付フレーム31に対して一定位置で回転するリードカム軸37の左右両側部に一体の駆動アーム38に係合して間歇的に駆動伝達する。これによってトレイガイド4が左横端と右横端に移動された位置で、苗トレイAが苗ポットDの一横列分だけ縦移送される。
前記トレイガイド4は、前側上部に供給口83を位置させ、後側上端部に送出口84部を配置する。この供給口83は、高位置からできるだけ低位置に渡って形成されて、上側から苗トレイAの供給を受けて、左右両側の苗トレイAの案内縁部を案内側板25の内側に案内させることができる。又、送出口84は該案内側板25の後端部から後上方に渡って空トレイBの送り出しを支持案内する案内体44を設け、この案内体44の先端部を苗補給マーカ85とする。即ち、一枚の苗トレイAと一枚の空トレイBとがトレイガイド4に連接状態で連続案内されて、この空トレイBの送出端がこの苗補給マーカ85に達したとき、苗トレイAの終端は案内側板25内に案内されて、供給口83は空の状態となる関係にトレイガイド4の案内行程として形成している。このトレイガイド4の全行程はトレイ二枚分として設定したが、三枚乃至四枚分等にように整数枚分の行程形態として構成することができる。
操縦ハンドル10を把持して苗植運転する作業者は、この手前の苗補給マーカ85に空トレイBの送出端が達したことを監視しながら、これにより補助苗載台5上に用意されている苗トレイAを取出して供給口83部に補給することによって、トレイガイド4では苗トレイAが連続して移送されて空トレイBとして送り出される。苗取出装置2による苗取出や、苗植付装置3による苗植付けを連続的に行うことができる。
苗植付装置3は、主ミッションケース8からの動力が伝達される苗植伝動ケース86の伝動機構によって駆動されるリンクアーム40の先端部に、植付嘴41を取り付けて構成される。この植付嘴41は昇降駆動されると共に、上死点部では、閉じて上側の供給筒42からの苗Eを受けることができ、下死点部では、畝面Cに植付穴を形成して前後に開いて保持苗Eを植付けるように作動する。これらトレイガイド4と苗植付装置3との間に苗取出装置2が設けられる。この苗取出装置2は、苗ポットD内の苗Eを一株宛て挾持して苗トレイAから取出して前記供給筒42内へ供給するもので、カム機構とダブルクランク機構との組合せにより所定の苗取出軌跡に作動される左右一対の苗取出針43を有する。この苗取出装置2及び苗植付装置3は左右横方向へ移動するトレイガイド1に対して、移動幅域の中央位置に設けられる。
苗植付装置2による苗植付位置の後方には、左右一対の鎮圧輪87を設けている。この鎮圧輪87は、下部ほど互いの間隔が狭くなるように斜めに取り付けられ、機体の進行に伴って畝面を転動し、苗が植付けられた後の苗移植穴の周囲の土を崩落させて穴を埋め戻すと共に、その跡を軽く鎮圧するようになっている。鎮圧輪87が取り付けられた鎮圧輪フレーム88は、ハンドルフレーム1に上下に回動自在に支持されている。
ところで、図6及び図7に示すように、左右傾斜検出用の振り子76は、左右のクローラ14より機体の左右方向内側で該クローラ14の前側位置に設けられ、上端部の前後方向のスプール軸89回りに自重で左右に回動する構成であり、前記スプール軸89の六角軸部89aに嵌合して該スプール軸89と一体で左右に回動するスプール回動アーム90に、ボルト91等を介して一体で回動するよう固定されている。従って、前記振り子76の回動に伴って前記スプール軸89が回動し、このスプール軸89の回動により油圧バルブユニット22内のローリング制御バルブが切り替えられる。振り子76の直ぐ後側には平面視コの字型のプレートで構成されるロックアーム(固定手段)92を設けており、このロックアーム92の前側の左右両側部分92aが振り子76の上下中途部の左右両側に位置している。従って、振り子76は、ロックアーム92の前記左右両側部分92aの間で回動自在であり、ロックアーム92に当接するとそれ以上の回動が規制される。従って、前記ロックアーム92は、振り子76の回動を規制するストッパとなる。また、前記ロックアーム92は、油圧バルブユニット22本体に設けた前後方向の第一支点軸93から下方に延び該第一支点軸93回りに左右に回動可能な左右回動アーム94と、該左右回動アーム94の下部に設けた左右方向の第二支点軸95とを介して設けられている。従って、前記左右回動アーム94を左右傾斜レバー82で強制的に第一支点軸93回りに回動させることにより、ロックアーム92を左右移動させて振り子76を強制的に回動させ、機体を強制的に左右に傾かせる構成となっている。尚、左右回動アーム94の下端部には該アーム94を下方へ引っ張る引張スプリング96を連結しており、該引張スプリング96の付勢力により、作業者が左右傾斜レバー82を放せば左右回動アーム94が中立状態に自動的に復帰する構成となっている。
また、前記ロックアーム92と植付昇降レバー80とをロックケーブル97を介して連結しており、植付昇降レバー80の植付クラッチ入り操作に連動して、ロックケーブル97によりロックアーム92の後部を引き上げてロックアーム92の前部92aを第二支点軸95回りに下側へ回動させる構成となっている。尚、ロックアーム92は、第二支点軸95部分に設けたトルク・スプリング(図示せず)により、前部92aが上側へ回動する方向へ付勢されている。また、振り子76の上下中途部は、その上側部分76aがロックアーム92の左右両側部分92aの互いの間隔より狭い左右幅に構成され、下側部分76bがロックアーム92の左右両側部分92aの互いの間隔と同等の左右幅に構成されている。従って、植付昇降レバー80を植付クラッチ入り操作位置以外の植付クラッチ切り操作位置、機体下降操作位置、機体昇降停止操作位置あるいは機体上昇操作位置等の植付クラッチ切り状態となる操作位置へ操作した状態では、ロックケーブル97が弛んで前記トルク・スプリングの付勢力によりロックアーム92の前部(回動先端部)92aが上側に回動し、ロックアーム92の前部92aが振り子76の前記上側部分76aの側方に位置するため、ロックアーム92の左右両側部分92aの間で幅狭の前記上側部分76aが左右に移動でき、振り子76が作動する。一方、植付昇降レバー80を植付クラッチ入り操作位置へ操作した状態では、ロックケーブル97が引っ張られて前記トルク・スプリングの付勢力に抗してロックアーム92の前部92aが下側に回動し、ロックアーム92の前部92aが振り子76の前記下側部分76bの側方に位置するため、ロックアーム92の左右両側部分92aで幅広の前記下側部分76bが挟まれ、振り子76の作動が規制される。これにより、植付クラッチ入り状態では、振り子76の作動が規制されるので、圃場面の凹凸等により機体の左右傾斜姿勢が変化してもローリングシリンダ18が作動せず、左右傾斜レバー82を操作して適宜機体の左右傾斜姿勢を変更させることができる。一方、植付クラッチ切り状態では、振り子76が自重で作動するので、圃場面の凹凸等により機体の左右傾斜姿勢が変化するとそれに応じて自動的にローリングシリンダ18が作動し、機体の左右傾斜姿勢を自動的に所望の姿勢(左右水平姿勢)に制御することができる。このように、植付作業状態では、機体が自動的に左右に傾くことはなく作業者が左右傾斜レバー82を操作して機体を任意の左右傾斜姿勢に設定できるので、機体の左右傾動で機体の姿勢が不安定になるようなことを防止でき、苗の植付位置、植付姿勢及び植付深さ等の植付精度を良好に維持できる。一方、機体旋回時や路上走行時等の非植付作業状態では、機体が自動的に左右水平姿勢に維持されるので、機体の転倒を防止できて安全性が向上する。また、振り子76の上下中途部分の側面の段付き形状により、単にロックアーム92を回動させるという簡単な構成でローリング制御の入切が行える。
操縦ハンドル10の左側のグリップ10aの上方直前位置に設けた左右傾斜レバー82は、その操作部が前後方向へ延びるレバー軸82aから上側に屈曲した部分に設けられ、前記レバー軸82aの軸心回りに左右に回動させて操作する構成となっている。前記レバー軸82aは、左側のグリップ10a近傍から左外側で且つ下側に向かって傾斜して前側へ延びており、該レバー軸82aの前端で屈曲自在の軸継ぎ手(ユニバーサルジョイント)98を介して前側の中継軸99に連結されている。前記中継軸99は、前記軸継ぎ手98から右内側で且つ若干上側へ向かって傾斜して左右のクローラ14より前端部付近にまで延びており、前端に該軸99と一体回動する左右傾斜用アーム100を固着している。尚、前記レバー軸82aはその後端部で操縦ハンドル10に固着した軸受プレート(軸受部)101に軸受され、前記中継軸99はその前端部で主ミッションケース8の上面に固着した軸受部材102に軸受されている。この軸受プレート101及び軸受部材102により、前記軸継ぎ手98は機体平面視で左側のクローラ14の左外端部の後方に位置し、中継軸99は、左側のクローラ14の左外端より左右方向内側(右側)で、左側のクローラ14の上方で且つ苗植伝動ケース86の左端部の下方を通過するように配置される。尚、レバー軸82a、中継軸99及び軸継ぎ手98はトレイガイド4の取付フレーム31及びリードカム軸37の下方を通過するように配置され、機体側面視において、レバー軸82aが前記取付フレーム31に沿って略平行となるよう配置され、中継軸99がクローラ14の上面に沿って略平行となるよう配置されている。
中継軸99位置より下位となる左右傾斜用アーム100の下端部には該アーム100から右側へ延びる左右傾斜用ロッド103を連結し、該左右傾斜用ロッド103の右端と左右回動アーム94の下端部とを連結している。従って、作業者が左右傾斜レバー82を左右一方側へ回動操作すると、左右傾斜用アーム100ひいては左右回動アーム94が左右傾斜レバー82の回動方向とは左右反対側に回動し、ロックアーム92を介して左右傾斜検出用の振り子76が強制的に前記左右反対側に回動し、ローリングシリンダ18の作動により左右傾斜レバー82を回動させた左右一方側へ機体が強制的に傾く。作業者が左右傾斜レバー82を放せば、引張スプリング96の付勢力により左右回動アーム94が中立状態に復帰するため、ローリングシリンダ18の作動が停止して機体の左右傾斜姿勢が維持固定される。よって、左右傾斜レバー82を操作している間だけローリングシリンダ18が作動して機体が右又は左へ傾動するので、作業者は機体が所望の左右傾斜姿勢になるまで左右傾斜レバー82を操作すればよい。これにより、ローリング制御時には引張スプリング (付勢手段)96の付勢力が振り子76に作用せず、該振り子76により適正にローリングさせることができ、ローリング手動操作時には前記スプリング96により中立復帰する振り子76自体を前記スプリング96に抗して操作する構成として、ローリング手動操作のための機構を簡単に構成できる。
次に、左右傾斜レバー82を操作して機体を左右に傾動させる場合の具体例について説明する。傾斜地で植付作業をする場合、圃場の傾斜に伴って機体が左右方向に傾くので、機体を走行させると機体が自重で傾斜下位側に滑って移動しやすくなり、畝に対して機体が傾斜下位側に偏り、畝に対して苗の植付位置が傾斜下位側に偏位しやすくなる。このとき、左右傾斜レバー82を操作して機体を傾斜上位側となる左右一方側へ傾動させ、畝に対する苗の植付位置を傾斜上位側へ変えることができる。また、畝上面の傾斜と機体の傾斜姿勢とが相違するとき、畝面に対して略垂直に苗を植え付けるべく左右傾斜レバー82を操作して機体を左右に傾動させることができる。
以上により、この苗移植機は、左右一対の走行推進体となるクローラ14より後側で機体の後端部に操縦ハンドル10及び操作具となる左右傾斜レバー82を設け、該左右傾斜レバー82からクローラ14より前側にある操作対象となる振り子76の位置までレバー軸82a、軸継ぎ手98、中継軸99、左右傾斜用アーム100、左右傾斜用ロッド103及び左右回動アーム94からなる操作連繋機構を延設し、前記中継軸99を左側のクローラ14の上方を通過するよう配置した車体6を備えている。
従って、この苗移植機は、左右一対のクローラ14を駆動させながら苗植装置を作動させることにより、作業者が機体後端部の操縦ハンドル10を把持して歩行しながら走行させて植付作業が行える。また、機体後端部に左右傾斜レバー82を設けているので、作業者が操縦ハンドル10の近傍で左右傾斜レバー82を容易に操作でき、この左右傾斜レバー82の操作が操作連繋機構により左側のクローラ14の上方を介して該クローラ14前端部近傍にある振り子76にまで伝達される構成としたので、操作連繋機構をクローラ14より左右方向外側に突出させずに機体をコンパクトにすることができ、また畝幅が狭い場合に左右のクローラ14のトレッドが狭く設定されていても、操作連繋機構の伝達経路をクローラ14の左右方向内側にある苗植付装置3や苗取出装置2を避けて容易に設定できるために、操作連繋機構をレバー軸82aから単一の軸継ぎ手98を介して中継軸99へ連繋する伝達軸構造で簡素な構成にでき、該操作連繋機構による操作伝達精度の向上及びコストダウンが図れる。
また、レバー軸82a、軸継ぎ手98及び中継軸99を備える操作連繋機構は、クローラ14より左右方向外側に突出しないので、隣接する畝等の他の構造物に干渉するようなことが防止される。更に、左右の走行推進体として上下幅の小さいクローラ14を設けているため、機体に対してクローラ14を上下動させる構成としても、中継軸99すなわち操作連繋機構をクローラ14の上方で且つ苗植装置の苗植伝動ケース86の左端部の下方を通過するように配置することができ、操作連繋機構を合理的に配置できて機体のコンパクト化が図れる。また、機体側面視において、レバー軸82aが前記取付フレーム31に沿って略平行となるよう配置され、中継軸99がクローラ14の上面に沿って略平行となるよう配置されているので、操作連繋機構を合理的に配置できて機体のコンパクト化が図れる。
従来は、左右の走行推進体として車輪(後輪)を備えており、該車輪は走行推進力を得るべくある程度の外径を要するためにクローラより上下幅が大きくなるので、該車輪の上方に該車輪と干渉しないように操作連繋機構を配置することは困難であり、操作連繋機構を車輪の左右方向内側に配置するにしても、苗植付装置等の機体の構造物の配置との関係から操作連繋機構を前後に長い直線部分を備えて配置することが困難であった。そこで、屈曲可能なワイヤ(ケーブル)により操作連繋機構を構成し、該ワイヤを機体の構造に応じて適宜屈曲させながら前後に延設させなければならず、この屈曲構成によりワイヤが長くなったり操作連繋機構自体の剛性が低下するので、操作伝達精度が低下したり、コストアップを招くおそれがある。
尚、上述の苗移植機では、植付昇降レバー80の植付クラッチ入り操作に連動してローリング制御が停止する構成について説明したが、機体の下降操作あるいは機体の下降規制を解除する操作に連動してローリング制御が停止する構成としてもよい。尚、前記の機体の下降規制を解除する操作とは、例えば植付昇降レバー80とは別に該レバー80の操作に拘らず機体の下降を規制する状態に切り替えできる規制レバー(規制手段)を設け、該規制レバーを下降規制の解除位置に操作することが考えられる。また、格別のローリング制御の入切操作手段を設けてもよい。
図8及び図9に示すものは、上述の苗移植機における前輪15を左右に操向可能に構成したものであり、機体後端部の操作具として前輪15を左右に操向させるための操向レバー104を設けたものである。この左右の前輪15は、前輪支持フレーム105の左右両端部に軸心回りに回動可能に設けた各々の上下方向の前輪支持ロッド106を介して取り付けられている。左右の前輪支持ロッド106には前側へ延びる操向アーム107を各々固着しており、この左右の操向アーム107を操向ロッド108により連結し、左右の前輪15が共に同じ側に操向する構成となっている。左右一方(左側)の操向アーム107には操縦ハンドル10の左下方に位置する前記操向レバー104の前端が連結され、該操向レバー104を左右に回動操作することにより左右の前輪15を操向させる構成となっている。これにより、車体6において走行推進体としてクローラ14を設けた構成としながら、駆動車輪を設けた場合と比較して機体の操向性を良好に維持することができる。例えば、傾斜地等での植付走行時、作業者が操向レバー104を適宜操作して左右の前輪15を傾斜上位側へ操向させ、機体が傾斜下位側へ滑って偏位するのを抑えることができる。尚、前記操向レバー104は、左側のクローラ14の上方でトレイガイド4の取付フレーム31及びリードカム軸37の下方を通過するようにクローラ14より前側の操向アーム107位置まで延設され、前部が若干下側へ屈曲する略直線状の軸により構成されている。また、操向レバー104は、その中途部で苗植伝動ケース86に回動可能に取り付けた支持部材109により支持されている。
図10及び図11は、前述の苗移植機における前輪15をクローラ14とは別に上下動させる構成を示したものである。この構成は、前述のような連動リンク73を設けず、前輪アーム72の先端部すなわち前輪車軸15aから上側に延びる左右各々のスイングロッド110を、エンジン7を支持するエンジンフレーム111の前端に固着した案内プレート(案内部)112に上下移動可能に挿通させて設けている。そして、スイングロッド110の外周で前記案内プレート112と前輪車軸15aとの間に圧縮スプリング113を設け、この左右各々の圧縮スプリング113により前輪15を下側に付勢している。従って、左右の前輪15は、圃場の凹凸に応じて個別に上下動し、機体の姿勢を安定させることができる。尚、前輪アーム72を前輪15の左右方向外側に配置しているのに対して、スイングロッド110及び圧縮スプリング113を前輪15の左右方向内側に配置し、前輪15に対して前輪アーム72とスイングロッド110及び圧縮スプリング113とを左右に振り分けて配置しているので、圧縮スプリング113の付勢力が適確に前輪15に作用し、前輪15の上下動を円滑に且つ適正に行わせることができる。
図12乃至図15は、上述の苗移植機における前輪アーム72を主ミッションケース8からの動力を前輪15へ伝達する伝動ケースで構成し、左右の前輪15も駆動させて走行推進力を向上させた構成を示したものである。この前輪アーム72は、クローラ14及びクローラフレーム16の左右方向外側に配置され、入力軸114を介してクローラ14の駆動輪13と一体回転する入力スプロケット115と、前輪車軸15aと一体回転する出力スプロケット116と、前記入力スプロケット115並びに出力スプロケット116に巻き掛けた伝動チェーン117とを備えている。尚、前輪アーム72は、前記入力スプロケット115(入力軸114)回りに上下に回動する構成となっている。また、入力軸114に沿って駆動輪13及びクローラフレーム16を左右移動させ、左右のクローラ14のトレッドを変更できる構成となっている。そして、クローラ14を左右方向外側に移動させることにより、入力軸114上で駆動輪13と前輪アーム72との間に遊転するように設けたスペーサ118が前輪アーム72に当たって該前輪アーム72を左右方向外側に押し、この前輪アーム72の左右方向外側への移動で前輪15も移動させることができる。逆に、前輪アーム72を左右方向内側に移動させることにより、前記スペーサ118が前記駆動輪13に当たってクローラフレーム16を左右方向内側に押し、このクローラフレーム16の左右方向内側への移動でクローラ14も移動させることができる。従って、畝幅に応じて左右のクローラ14及び前輪15のうちの一方のトレッドを変更すると、他方も追従してトレッドが変更され、クローラ14と前輪15とのトレッド変更を簡単に行えると共に、クローラ14及び前輪15のうちの一方のみトレッド変更して他方のトレッド変更を忘れるようなことを防止できる。尚、トレッド変更にあたり、先ずクローラ14及び前輪15のうちの一方をトレッド変更し、他方を駆動輪13と前輪アーム72との間隔がスペーサ118の幅と同じになるようにトレッド変更してもよい。何れにしても、左右位置基準の指標となるスペーサ118により、クローラ14及び前輪15のうちの一方を基準に他方の左右位置を設定できるので、作業者がクローラ14と前輪15とのトレッドの相違が生じないように簡単にトレッド変更できる。また、図14及び図15に示すように、左右の前輪15のトレッドを変更するにあたり、エンジンフレーム111の前端に左右方向の支持パイプ119を固着し、該支持パイプ119の左右両側に各々案内軸120を挿入し、該案内軸120にスイングロッド110を上下移動可能に挿通させて設けている。従って、前輪15の左右移動に伴って、前記案内軸120が支持パイプ119から出入して左右移動するため、スイングロッド110を格別に装着し直す必要がなく、トレッド調節が容易である。尚、図15に示すように、走行時に案内軸120が左右に移動しないように、案内軸120と支持パイプ119とを貫通する規制ピン(規制手段)121を設けた構成としてもよい。