JP5135281B2 - 難燃性樹脂組成物及びそれよりなる成形体 - Google Patents
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Description
プラスチック材料のなかでも汎用性の高い熱可塑性樹脂(及びそのエラストマー)の難燃化には、大別して樹脂自体の難燃化或いは樹脂への難燃剤の配合による手法が主に採用されており、その内でも、比較的簡易で難燃化が達成される、難燃剤の配合による方法が広く使用されている。
一方、難燃性材料は屋内外や車両用等の絶縁電線などに用いられているが、耐摩耗性や耐熱性などの仕様要求が厳しくなり、従来、上記電線・ケーブル等に使用されている大量の無機難燃剤の受容性に富み、可撓性を有する材料として、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等のエチレンと不飽和カルボン酸エステル共重合体やエチレンとビニルエステル共重合体等のエチレン共重合体と無機難燃剤とを用いた難燃性樹脂組成物が開示されている(特許文献1)が、これらエチレン系重合体を用いた難燃性材料は、耐熱性、耐摩耗性等に改良の余地を有している。
また、これら耐摩耗性や耐熱性などの諸特性に優れる材料として、ポリプロピレン系樹脂組成物等が使用されるようになってきている。
例えば、プロピレン−エチレンブロックコポリマーとエチレン・酢酸ビニル共重合体と金属水酸化物とを配合した耐摩耗性の難燃性樹脂組成物が提示されている(特許文献2)が、可撓性等において未だ十分であるとはいえない。
また、プロピレン−エチレンブロックコポリマーとポリオレフィン系エラストマーと金属水酸化物とを配合し、難燃剤の分散性をも良好にした難燃性で耐摩耗性の樹脂組成物も提示されている(特許文献3)。しかしながら、耐摩耗性は改善されているとしても、充分満足できるまでに至っていない。
しかしながら、これらの難燃樹脂組成物は、いずれも耐摩耗性は改善されているとしても、耐熱性や伸び特性及び柔軟性は十分とはいえなかった。
(i)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の温度範囲で観察されるガラス転移によるピークが、単一であり、かつ、そのピーク温度が0℃以下である
(ii)o−ジクロロベンゼン溶媒を用いた−15℃〜140℃の温度範囲での昇温溶離分別法(TREF)による温度に対する溶出量(d重量%/dT)のプロットとして得られるTREF溶出曲線において、以下の特性(ii−A)〜(ii−C)を有する
(ii−A)溶出曲線において2つのピークが観察され、高温側に観測されるピークT(A1)が65〜95℃の範囲にあり、低温側に観測されるピークT(A2)が45℃以下にある
(ii−B)T(A1)とT(A2)両ピークの中間点の温度T(A3)までに溶出する成分(A2)の量W(A2)が5〜70重量%であり、該成分がエチレンを6〜15重量%含むプロピレン・エチレンランダム共重合体である
(ii−C)T(A3)までに溶出する成分の溶出後に溶出する成分(A1)の量W(A1)が95〜30重量%であり、該成分がエチレンを0〜6重量%含むプロピレン単独重合体又はプロピレン・エチレンランダム共重合体である
(iii)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でエチレン含量0〜6重量%の結晶性プロピレン単独重合体又は結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)を95〜30重量%、第2工程でエチレン含有量が6〜15重量%の低結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を5〜70重量%、逐次重合することで得られたものである
(iv)o−ジクロロベンゼン溶媒を用いた−15℃〜140℃の温度範囲での昇温溶離分別法(TREF)による温度に対する溶出量(d重量%/dT)のプロットとして得られるTREF溶出曲線において、以下の特性(iv−A)〜(iv−D)を有する
(iv−A)溶出曲線において2つのピークが観察され、高温側に観測されるピークT(A1)が65〜88℃の範囲にあり、低温側に観測されるピークT(A2)が45℃以下にある
(iv−B)T(A1)とT(A2)両ピークの中間点の温度T(A3)までに溶出する成分(A2)の量W(A2)が30〜70重量%であり、該成分がエチレンを8〜14重量%含むプロピレン・エチレンランダム共重合体である
(iv−C)T(A3)までに溶出する成分の溶出後に溶出する成分(A1)の量W(A1)が70〜30重量%であり、該成分がエチレンを1〜5重量%含むプロピレン・エチレンランダム共重合体である
(iv−D)99重量%が溶出する温度T(A4)が90℃以下で、ピークT(A1)からT(A4)までの温度差ΔT(T(A4)−T(A1))が5℃以下である
一般にプラスチック材料、特に熱可塑性樹脂成形品は、概して易燃性なので、成形品の使用における安全性などのために難燃化が以前から強く要請されている。
従来、ポリプロピレン系樹脂においては、充分な難燃性を付与するために多量の無機系難燃剤を配合しなければならず、機械的特性、特に引張伸度の特性と難燃性特性とを満足させることは困難であった。
180℃の温度で、3mmのシートを圧縮(プレス)成形にて作成し、幅6.5mm×長さ150mmの試験片を切削して得た。得られた試験片をJIS K−7201の手法に則り、酸素指数を測定した。
酸素測定装置を用い、試験片の燃焼時間が3分以上継続して燃焼するか、着炎後の燃焼長さが50mm以上に燃え続けるのに必要な最低酸素流量の測定によって酸素指数を求めた。
OI(%)={[O2]/([O2]+[N2])}×100
[O2]:酸素の流量L/分
[N2]:窒素の流量L/分
(1)基本構成
本発明において採用される、良好な柔軟性及び耐熱性と剛性などを併せ備え、成形性にも優れたポリプロピレン系樹脂材料である、特定のプロピレン−エチレン系共重合体は、各樹脂成分間の相溶性が非常に優れ、かつ多量の無機系難燃剤を配合しても良好な柔軟性等が維持されるため、難燃性樹脂材料に利用すれば、歪が加わった際の応力が低下することで、樹脂成分と難燃剤の界面に応力がかかることが抑制されて機械的強度(特に、引張伸度)の低下を阻止でき、更に耐白化性も向上される。
本発明の難燃性樹脂組成物は、特定のプロピレン−エチレン系共重合体成分(A)とエチレン・α、β―不飽和カルボン酸エステル共重合体(B1)またはエチレン・ビニルエステル共重合体(B2)から選択されるエチレン系共重合体成分(B)と官能基含有オレフィン重合体成分(C)とからなる樹脂成分と、難燃剤成分(D)とからなり、本発明の効能(作用効果)を阻害しない範囲内で付加的成分を加えることができる。各々の成分は諸問題の解決のために各種の要件を満たす必要がある。以下に各成分の詳細な説明を加える。
(i)基本的特徴
従来のポリプロピレン系樹脂においては、プロピレンを主体とする比較的結晶性の高い成分の引張破断伸びを改良するために、低結晶性成分としてエチレン系エラストマーをブレンドしたり、多くのエチレンを含有する低結晶性成分を逐次重合により製造する、通称されるブロックコポリマーを用いるといった手法は広く当該業者に知られるところであるが、これらの低結晶性成分は、プロピレンを主体とする成分と相溶性が低いため相分離し、各々別々の相となる相分離構造を取る。
このような構造の樹脂中に、難燃性を付与するための難燃剤を加えた場合、各相で軟化温度や難燃剤との相性が異なることにより、難燃剤の偏在が発生し、難燃剤濃度が高い部分で破壊が生じ易くなるため引張破断伸びの改良効果を充分に発揮することができない。また、外力が加わった際に、難燃剤と樹脂間だけでなく、樹脂成分の各相の界面でも剥離が生じるために、曲げ白化は極めて悪化するという問題が生じてしまう。
本発明のプロピレン−エチレン系共重合体成分(A)は、エチレン含量は0.1〜20重量%が好ましく、0.2〜15重量%がより好ましい。
本発明のプロピレン−エチレン系共重合体成分(A)は、MFRは0.1〜100g/10分が好ましく、0.5〜50g/10分がより好ましい。
特に、本発明における、下記のプロピレン−エチレン系共重合体成分(A)は、物性のバランスを改良するためにエチレン含有量と結晶性の異なる、以下の特性により規定されるところの、大分して2つの成分(A1)及び(A2)からなるものが好ましい。
本発明に用いられるプロピレン−エチレン系共重合体成分(A)は、引張伸度(引張破断伸び)を改良するための低結晶性の成分(A2)を含みながらも、プロピレンを主体とする比較的結晶性の高い成分(A1)と相分離構造を取らないことが必要である。
これは、固体粘弾性測定において、通常プロピレン−エチレン系共重合体樹脂のガラス転移温度は、tanδ曲線のピークとして−60〜20℃の間に観測されるが、単一相においてはその相のガラス転移温度だけが観測されるのに対し、相分離構造を取る場合には、各相各々のガラス転移温度が別々に観測されるために複数のピークを示すことに基づく。
なお、測定温度範囲全体においては、20〜120℃程度に別の緩和のピークが現れる場合があるが、これは、α緩和と呼ばれる結晶緩和に基づくものであり、本発明で対象としているガラス転移とは区別される。
本発明に用いられるプロピレン−エチレン系共重合体成分(A)に含まれる低結晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A2)は、成分(A1)と相分離構造を取らず、かつ、充分な引張破断伸びの改良効果を有するために、エチレン含量を増加させて結晶性を充分に低下させることが必要であり、かつ、エチレン含有量が増加すると相溶性は低下していくので、特定の範囲内に抑えなくてはならない。
また、本発明に用いられるプロピレン−エチレン系共重合体成分(A)に含まれる比較的結晶性の高いプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A1)は、高結晶側への結晶性分布が少ないことを特徴とし、結晶性分布が狭いことからより均一で微細な結晶構造を取ることで引張破断伸びが改良される。
プロピレン−エチレン系共重合体の結晶性分布をTREFにより評価する手法は、当該業者によく知られるものであり、例えば、次の文献などで詳細な測定法が示されている。
G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45,1−24(1990)
L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)
J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639−1654(1995)
TREF測定では、結晶性が低いものほど低温で溶出し、結晶性の高いものほど高温で溶出するため、ポリプロピレン系樹脂の結晶性がどのような分布を持っているかを正確に把握することができる。
本発明におけるプロピレン−エチレン系共重合体成分(A)は、成分(A1)及び(A2)各々の結晶性に大きな違いがあり、両成分をTREFにより精度良く分別することが可能である。
溶出曲線は、o−ジクロロベンゼン溶媒を用いた−15℃〜140℃の温度範囲での昇温溶離分別法(TREF)による温度に対する溶出量(d重量%/dT)のプロットとして得られるTREF溶出曲線である。
本発明に用いられるプロピレン−エチレン系共重合体成分(A)は、2つのピークが観察されるように、大分して結晶性の異なる2つの成分からなり、その結果、十分な伸びの改良が得られる。このことから、本発明に用いられるプロピレン−エチレン系共重合体成分(A)は、2つのピークが観察されるのが好ましい。
一方、本発明に用いられるプロピレン−エチレン系共重合体成分(A)中に含まれる低結晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A2)は、結晶性が充分に低下していないと引張破断伸びの改良効果を発揮することができないため、ピーク温度T(A2)は45℃以下であることが必要である。
ここで、正確に数式にて表現すると、T(A3)={T(A1)+T(A2)}/2である。
このとき、T(A3)までに溶出する成分は低結晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A2)であり、その量W(A2)は5〜70重量%である。これに従って、T(A3)までに溶出する成分を取り除いた後(溶出後)の成分は比較的結晶性の高いプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A1)であり、その量W(A1)は95〜30重量%である。
このとき分別された成分をそれぞれ取り出し、各成分中を分析することで、各成分中のエチレン含有量を測定することができる。ここで、T(A3)までに溶出する低結晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A2)は、結晶性が充分に低下していないと引張破断伸びの改良効果を発揮することができないため、ピーク温度T(A2)は45℃以下であることが必要であり、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20〜30℃である。このときプロピレン・エチレンランダム共重合体の結晶性はエチレン含有量が多いほど低下する傾向があるため、本発明において6重量%以上、好ましくは8重量%以上、のエチレンを含有することが必要である。一方で、エチレン含有量が多くなり過ぎると相分離構造を取ることから、相分離を生じない範囲内に抑えることが肝要で多くとも15重量%、好ましくは14重量%、であることが必要である。
ここで、成分(A1)の結晶性が高いと、成分(A2)で相溶性を改良したとしても、難燃性を向上させるにはできるだけ多くの無機充填剤を添加することが好ましいため、このときには引張破断伸びが不足する場合がある。これをさらに改良するためには、成分(A1)の結晶性も特定の範囲にあることが好ましい。
即ち、成分(A1)自体の結晶性を耐熱性や成形性を維持できる範囲で下げ、また、結晶性分布が狭いものを選択することで結晶構造が微細化し、引張破断伸びは改善される。このためには、成分(A1)中のエチレン含有量は1重量%以上が好ましく、このとき結晶性の尺度であるTREF溶出曲線におけるピーク温度T(A1)は88℃以下であることが好ましい。このとき、T(A1)が下がったとしても、結晶性分布が広がり高結晶性成分が多く存在する場合には改良効果が低下することから、99重量%が溶出する温度T(A4)が90℃以下であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましい。そして、ピークT(A1)からT(A4)までの温度差ΔT(T(A4)−T(A1))が5℃以下であることも好ましく、4℃以下であることがより好ましい。
イ.成分(A1)と(A2)の分離
先のTREF測定により求めたT(A3)を基に、分取型分別装置を用い昇温カラム分別法により、T(A3)可溶成分の成分(A2)と、T(A3)不溶成分の成分(A1)とに分別し、NMRにより各成分のエチレン含有量を求める。
昇温カラム分別法とは、例えば、Macromolecules;21,314〜319(1988)に開示されたような測定方法をいう。
直径50mm・高さ500mmの円筒状カラムにガラスビーズ担体(80〜100メッシュ)を充填し、140℃に保持する。次に、140℃で溶解した試料のo−ジクロロベンゼン(ODCB)溶液(10mg/mL)200mLを前記カラムに導入する。その後、該カラムの温度を0℃まで10℃/時間の降温速度で冷却する。0℃で1時間保持後、10℃/時間の昇温速度でカラム温度をT(A3)まで加熱し、1時間保持する。なお、一連の操作を通じてのカラムの温度制御の精度は±1℃とする。
次いで、カラム温度をT(A3)に保持したまま、o−ジクロロベンゼンを20mL/分の流速で800mL流すことにより、カラム内に存在するT(A3)で可溶な成分を溶出させ回収する。
次いで10℃/分の昇温速度で当該カラム温度を140℃まで上げ、140℃で1時間静置後、140℃の溶媒(ODCB)を20mL/分の流速で800mL流すことにより、T(A3)で不溶な成分を溶出させ回収する。
分別によって得られたポリマーを含む溶液は、エバポレーターを用いて20mLまで濃縮された後、5倍量のメタノール中に析出される。析出ポリマーを濾過して回収後、真空乾燥器により一晩乾燥する。
上記の分別により得られた成分(A1)と(A2)それぞれについてのエチレン含有量は、プロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した、13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。
機種:日本電子(株)製 GSX−400又は、同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上) 溶媒:o−ジクロロベンゼン:重ベンゼン=4:1(体積比) 濃度:100mg/mL 温度:130℃ パルス角:90° パルス間隔:15秒 積算回数:5,000回以上
[PPP]=k×I(Tββ) (1)
[PPE]=k×I(Tβδ) (2)
[EPE]=k×I(Tδδ) (3)
[PEP]=k×I(Sββ) (4)
[PEE]=k×I(Sβδ) (5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} (6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。
したがって、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1
(7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えば、I(Tββ)は、Tββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、本発明のプロピレンランダム共重合体には、少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/又は1,3−結合)が含まれ、それにより、以下の表2に記載された微小なピークを生じる。
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う。
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここでXはモル%表示でのエチレン含有量である。
ブロック共重合体全体のエチレン含有量は、上記より測定された成分(A)、(B)それぞれのエチレン含有量[E]A、[E]B、及び、TREFより算出される各成分の重量比率W(A)、W(B)[重量%]から以下の式により算出される。
[E]W=[E]A×W(A)/100+[E]B×W(B)/100 (重量%)
本発明のエチレン系共重合体成分(B)は、以下に説明するエチレン・α、β―不飽和カルボン酸エステル共重合体(B1)またはエチレン・ビニルエステル共重合体(B2)から選択される。
{エチレン・α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体(B1)}
上記エチレンとα,β−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体の代表的な共重合体としては、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体等のエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体;エチレン・無水マレイン酸・酢酸ビニル共重合体、エチレン・無水マレイン酸・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・無水マレイン酸・アクリル酸エチル共重合体等の二元共重合体又は多元共重合体、あるいはそれらの金属塩等が挙げられる。
すなわち、これらのコモノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル等を挙げることができる。この中でも特に好ましいものとして(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のアルキルエステルを挙げることができる。特に(メタ)アクリル酸エステル含有量は3〜35重量%、好ましくは5〜30重量%の範囲である。
また、上記金属塩の金属としては、K、Na、Li、Ca、Zn、Mg、Al等が挙げられる。
上記エチレン・ビニルエステル共重合体とは、高圧ラジカル重合法で製造されるものであり、エチレンと、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。これらの中でも特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。エチレン50〜99.5重量%、ビニルエステル0.5〜50重量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜49.5重量%からなる共重合体が好ましい。さらにビニルエステル含有量は好ましくは3〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%の範囲で選択される。
本発明の官能基含有オレフィン重合体(C)は、プロピレン−エチレン系共重合体(A)およびエチレン系共重合体成分(B)と良好な相溶性を有し、かつ難燃剤(D)とのカップリング効果が著しく、難燃性樹脂組成物の機械的強度、燃焼時の炭化層(チャー)の形成を促し、難燃性を向上させる役割として用いられる。
具体的なものとして、カルボン酸基若しくは酸無水物基含有オレフィン系ランダム共重合体またはその金属塩、あるいは変性ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。ただし成分(B)に属する重合体は除かれる。
本発明のカルボン酸基若しくは酸無水物基含有オレフィンランダム共重合体またはその金属塩は、エチレン、プロピレン等のオレフィンと、メタクリル酸、アクリル酸等のカルボン酸基含有モノマー、または無水マレイン酸等の酸無水物基含有モノマーとの共重合体またはその金属塩である。
カルボン酸基または酸無水物基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、フラン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸またはこれらの無水物等が挙げられる。その好ましい共重合体としては、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・無水マレイン酸・酢酸ビニル共重合体、エチレン・無水マレイン酸・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・無水マレイン酸・アクリル酸エチル共重合体等の二元又は三元共重合体が挙げられる。上記金属塩の金属としては、K、Na、Li、Ca、Zn、Mg、Al等が挙げられる。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂とは、a:不飽和カルボン酸またはその誘導体、b:エポキシ基含有化合物、c:ヒドロキシル基含有化合物、d:アミノ基含有化合物、e:有機シラン化合物、f:有機チタネート化合物等の官能基含有化合物で変性されたポリオレフィン系樹脂である。
上記a:不飽和カルボン酸またはその誘導体を含有する化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、フラン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、ペンテン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸または無水物、あるいはそれらの金属塩等が挙げられる。
また、10重量%を超える場合は、変性させる際に分解、架橋反応などが併発する虞を生じる。
上記変性に用いるポリオレフィン系樹脂としては、前記ポリオレフィン系樹脂及びこれらの混合物を用いることができる。
これらの中でも密度が0.86〜0.97g/cm3のポリエチレン、中でも密度0.88〜0.96g/cm3の範囲の超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中・高密度ポリエチレン樹脂を変性したものが該ポリオレフィン系樹脂と無機難燃剤との相溶性に優れ軟質樹脂の可撓性を損なわずに耐熱性を維持し、燃焼時の炭化層の形成を促し難燃性を向上し、機械的強度の向上が望めることから最も好ましい。
その中でも無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレンが好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂(C)としては、市販品のものを用いることが出来る。例えば三菱化学社製の商品名モデックCMPP−2(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)、日本ポリエチレン社製の商品名アドテックス(無水マレイン酸変性ポリエチレン)等が挙げられる。
本発明において使用される難燃剤(D)は、材料を難燃化させるために必要な成分であって、有機ハロゲン系難燃剤、有機リン系難燃剤等の有機系難燃剤、および無機系難燃剤等を包含するものである。
有機ハロゲン系難燃剤としては、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルオキシド、ポリジブロモフェニレンオキシド、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス・ペンタブロモベンゼン、エチレンビス・ジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビス・テトラブロモフタルイミド、ジブロモエチル・ジブロモシクロヘキサン、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモフェノール、トリブロモフェノールアリルエーテル、テトラブロモ・ビスフェノールA誘導体、テトラブロモ・ビスフェノールS、テトラデカブロモ・ジフェノキシベンゼン、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ペンタブロモフェノール、ペンタブロモトルエン、ペンタブロモジフェニルオキシド、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモジフェニルエーテル、オクタブロモフェノールエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルオキシド、ジブロモネオペンチルグリコールテトラカルボナート、ビス(トリブロモフェニル)フマルアミド、N−メチルヘキサブロモフェニルアミン、臭素化エポキシ樹脂、塩素化パラフィン、塩素化ポリオレフィン、塩素化ポリエチレン、パークロロシクロペンタデカン、トリアリルシアヌレート臭化物等が例示される。
無機系難燃剤としては、ハンタイト、ドロマイト、ハイドロマグネサイト、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、天然ブルーサイト鉱石、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、リン酸カルシウム、酸化ジルコン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、ホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、ホウ酸亜鉛、炭酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、酸化スズの水和物、硼砂、無水アルミナ、二硫化モリブデン、粘土、赤リン、ケイソウ土、カオリナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、タルク、シリカ、ホワイトカーボン、ゼオライト、アスベストまたはリトポン等が例示される。上記無機系難燃剤の中でも好ましい難燃剤成分は金属水和物である。
上記有機ハロゲン系難燃剤、有機リン系難燃剤および無機系難燃剤等の難燃剤は単独で用いても、また複数組み合わせて用いてもよいことはいうまでもない。
表面処理剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸またはその金属塩、脂肪酸エステル、パラフィン、ワックス、またはそれらの変性物、有機シラン、有機ボランまたは有機チタネート、リン酸エステル、ひまし油またはその硬化油等が例示される。
また、上記以外にも、ビニル基やエポキシ基等の官能基を末端に有するシランカップリング剤を用いて表面処理を行った金属水和物なども用いることができる。また、シリコーン、オルガノポリシロキサン等で表面処理を行ってもよい。
このようなシランカップリング剤の中でも、特に末端にエポキシ基および/またはビニル基、(メタ)アクロイル基、アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。これらは1種単独でも、2種以上併用して使用しても良いし、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン酸エステル等とこれらシランカップリング剤を併用しても良い。
また、成分(C)は、一般的には有機系難燃剤を使用する場合においては、使用しなくても差し支えないが、難燃剤成分が無機系難燃剤の場合には、成分(C)は必須であることが好ましく、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは2〜20重量%である。
上記成分(C)が25重量%を超える場合は、難燃性樹脂組成物の柔軟性や可撓性が損なわれる虞が生じる。
そのため、難燃剤成分(D)は、成分(A),成分(B)および成分(C)の樹脂成分100重量部に対し3〜300重量部の範囲にあることが必要である。
上記難燃剤が、有機難燃剤の場合には3〜30重量部、好ましくは5〜20重量部の範囲で選択されることが望ましい。上記有機難燃剤が3重量部未満では難燃性が発揮されない虞が生じる。また30重量部以上を添加しても、難燃性効果が向上せず、経済的にデメリットとなる。
一方、無機難燃剤のみを使用する場合には、一般的には20〜300重量部、好ましくは20〜250重量部、より好ましくは30〜200重量部である。成分(D)が20重量部未満であると、無機難燃剤単独では適切な難燃性が得らない虞が生じ、一部有機難燃剤との併用が必要となる。また配合量が300重量部を超えると、目的の引張破断伸びや、曲げ白化性の向上が得られない。
(1)組成物の製造方法
本発明における難燃性樹脂組成物は、プロピレン−エチレン系共重合体成分(A)とエチレン系共重合体成分(B)と難燃剤成分(D)、あるいはそれらの成分に加え官能基含有オレフィン重合体成分(C)を必須成分とし、所望により本発明の効能(作用効果)を阻害しない範囲で付加的成分を配合し、これらを二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーなどの公知の溶融混練法を用いて混合して製造することができる。
例えば、各成分を常温において混合した後、二軸の混練押出機を用いて溶融混練を行って製造してもよいし、混練押出機の途中にフィード孔を設け、そこから難燃剤をフィードし、溶融混練を同時に行うことで製造してもよい。
本発明の難燃性成形体は、上記で得られた難燃性樹脂組成物をペレットとしたものを用いるのが一般的であるが、マスターバッチ法や、ドライブレンド法では、ペレットブレンドの状態で成形する、または、重量式フィーダなどを用いて、連続計量し秤量しつつ成形することもできる。
本発明に用いられる好ましいプロピレン−エチレン系共重合体成分(A)は、比較的結晶性の高いプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A1)と低結晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A2)の、大分して2種の結晶性が異なるプロピレン・エチレンランダム共重合体からなり、本発明の要件を満たす限りどのような製造法を用いてもかまわない。
しかし、成分(A1)と成分(A2)は結晶性が異なるため、融解温度も大きく異なり、各成分が別々に溶融混練されると、成分(A2)は極めて早い段階で溶融し、その後温度が更に上昇してから成分(A1)が溶融するため、先に融けた成分(A2)中に無機系難燃剤が集中し、分散不良が生じ易くなる。そこで、成分(A1)と成分(A2)は逐次重合することで製造されることが最も好ましい。
(i)成分(A1)と成分(A2)の逐次重合
本発明の成分(A1)と成分(A2)を製造実施するに際しては、成分(A1)と成分(A2)を逐次重合することが好ましい。
このとき、成分(A2)はエチレン含有量が多く単独ではべたつき易い共重合体であるので、反応器への付着などの問題を防止するために、成分(A1)を重合した後で成分(A2)を重合する方法を用いることが好ましい。
連続法の場合には成分(A1)と成分(A2)を個別に重合する必要から2個以上の反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要があるが、本発明の効能を阻害しない限り成分(A1)及び成分(A2)のそれぞれについて複数の反応器を直列及び/又は並列に接続して用いてもよい。
重合プロセスは、スラリー法、バルク法、気相法など任意の重合方法を用いることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。
ここでエチレン含有量の多い成分(A2)は、炭化水素などの有機溶媒や液化プロピレンに溶けやすいため、成分(A2)の製造に際しては気相法を用いることが望ましい。
結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)の製造に対してはどのプロセスを用いても特に問題はないが、比較的結晶性の低い成分(A1)を製造する場合には、付着などの問題を避けるために気相法を用いることが望ましい。
したがって、連続法を用いて、まず成分(A1)をバルク法又は気相法にて重合し、引き続き成分(A2)を気相法にて重合することが最も望ましい。
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0〜200℃、より好ましくは40〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は、選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、より好ましくは0.1〜50MPaの範囲を用いることができる。その際に、窒素などの不活性ガスを共存させることもできる。
第一工程で成分(A1)、第二工程で成分(A2)の逐次重合を行う場合、第二工程にて系中に重合抑制剤を添加することが望ましい。第二工程のエチレン−プロピレンランダム共重合を行う反応器に重合抑制剤を添加すると、得られるパウダーの粒子性状(流動性など)やゲルなどの製品品質を改良することができる。この手法については各種技術検討がなされており、一例として特公昭63−54296号公報、特開平7−25960号公報、特開2003−2939号公報などを例示することができる。本発明にも当該手法を適用することが望ましい。
各成分は、結晶性分布が狭い、即ち組成分布が狭いことが必要であることから、従来広くポリプロピレン系樹脂の製造に用いられているチーグラー・ナッタ型触媒では本発明の必要要件を満たすプロピレン・エチレンランダム共重合体を製造することは困難である。そこで、その製造にはメタロセン系触媒が用いられる。
メタロセン系触媒の種類は、本願発明の性能を有する共重合体を生成できる限りは、特に限定はされるものではないが、本発明の要件を満たすために、例えば、下記に示すような成分(a)及び成分(b)、更に必要に応じて使用する成分(c)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
成分(a):後述の一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
成分(b):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(b−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体
(b−2)成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物又はルイス酸が担持された微粒子状担体
(b−3)固体酸微粒子
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(c):有機アルミニウム化合物
成分(a)としては、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Q(C5H4−a−aR1)(C5H4−b−bR2)MeXY (1)
[式中、Qは、2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を示し、Meはチタン、ジルコニウム、またはハフニウムから選ばれる金属原子を示し、X及びYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示し、X及びYは、それぞれ独立に、即ち同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基を示す。a及びbは置換基の数である。]
X及びYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示し、このうちで好ましいものとしては、水素、塩素、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基などを例示することができる。
R1及びR2は、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基を表す。炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基などが例示される。また、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基などを典型的な例として例示できる。これらの中で、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。
ところで、隣接したR1とR2は、結合して環を形成してもよく、この環上に炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。
Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれる金属原子であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムである。
これらの具体例の化合物のシリレン基をゲルミレン基に、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も好適な化合物として例示される。
なお、触媒成分は本発明の重要要素ではないので、煩雑な列記を避け、代表的な例示に限定しているが、これにより本発明の有効範囲が制限されることが無いのは自明のことである。
成分(b)としては、上述した成分(b−1)〜成分(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報、特開2003−105015号公報などに詳細な例示がある。
ここで、成分(b−1)及び成分(b−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、更には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
上記成分(b)の中で特に好ましいものは、成分(b−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、更に好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
必要に応じて成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、
一般式 AlRaX3−a
(式中、Rは、炭素数1から20の炭化水素基、Xは、水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数)で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲン若しくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
成分(a)及び成分(b)更に必要に応じて成分(c)を接触させて触媒とする。その接触方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。
1)成分(a)と成分(b)を接触させる
2)成分(a)と成分(b)を接触させた後に成分(c)を添加する
3)成分(a)と成分(c)を接触させた後に成分(b)を添加する
4)成分(b)と成分(c)を接触させた後に成分(a)を添加する
5)三成分を同時に接触させる
本発明の触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。
オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的に或いは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
予備重合温度と時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。
また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(b)に対し、好ましくは0.01〜100部、更に好ましくは0.1〜50部である。
予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行うことも可能である。
更に、上記各成分の接触の際、若しくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
本発明の難燃性樹脂組成物には、本発明の効能が損なわれない範囲で、他の特性を付与するために、付加的成分を配合することができる。
主な付加的成分としては、以下に述べる熱可塑性エラストマー成分、架橋剤(または架橋助剤)、その他の添加剤成分等を挙げることができる。
熱可塑性エラストマーは、一般に熱可塑性樹脂材料の改質剤であり樹脂組成物の柔軟性や耐衝撃性を高めるために配合添加されるものである。
本発明においては、熱可塑性エラストマー成分の配合添加は、柔軟性と一見相反する耐摩耗性をも向上されるのに寄与する。熱可塑性エラストマー成分としては、スチレン・ビニルイソプレンブロック共重合体及びその水素添加物、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体、エチレン・オクテン共重合体などのエチレンを主成分とするエチレンとα−オレフィンとの共重合体、スチレン・エチレンブタジエン・スチレン共重合体及び水素添加物、イソプレン共重合体などを挙げることができる。これらの中でスチレン・ビニルイソプレンブロック共重合体を用いることが耐摩耗性の観点より好ましい。熱可塑性エラストマー成分のMFRは0.05〜15g/10分、好ましくは1〜10g/10分のものを挙げることができる。
また、本発明の効能が損なわれない範囲で、耐熱性を高めるために、架橋剤および/または架橋助剤を配合することが望ましい。
架橋剤としては、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシドなどを挙げることができる。
その他の添加剤成分としては、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、結晶造核剤、銅害防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、着色剤、充填剤、金属不活性剤、プロセスオイル、ひまし油またはその硬化油、石油樹脂、抗菌剤、防蟻剤、可塑剤、カーボンブラック、メヤニ防止剤などを配合することができる。
メヤニ防止剤としては12−ヒドロキシステアリン酸金属塩、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸金属塩、カルボン酸アマイド系ワックス、フッソ系エラストマーなどが挙げられる。
本発明の難燃性成形体の用途としては、特に自消性成形体が好適であるが、それに限定
されずに、例えば、フィルム、シート、容器、パッキング、シール剤、ホース類、保護具、射出製品、電線被覆、光ファイバー被覆、鋼管被覆、鋼線被覆、ケーブル被覆、コルゲートチューブなどの被覆押出成形体の分野、建築・土木産業資材、家電製品の部品、及び自動車部品などが挙げられる。
本発明の難燃性成形体は、例えば好適には、難燃性樹脂組成物を被覆押出成形及び/又は異形押出成形により製造することができる。
被覆押出成形体としては、例えば、電線被覆、鋼管被覆、鋼線被覆、ケーブル被覆などを挙げることができる。
更に、射出成形法や圧縮成形法など各種の成形法により、多様な難燃性成形品への用途も展開される。
1)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210 A法 条件M に従い、以下の条件で測定した。
試験温度:230℃(成分(A))、190℃(成分(A)以外) 公称加重:2.16kg ダイ形状:直径2.095mm 長さ8.00mm
〔溶出曲線の作成〕
前出において記載した方法による。
〔装置〕
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ × 150mmステンレスカラム カラム充填材:100μm・表面不活性処理ガラスビーズ 加熱方式:アルミヒートブロック 冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷) 温度分布:±0.5℃ 温調器:(株)チノー・デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン) 加熱方式:空気浴式オーブン 測定時温度:140℃ 温度分布:±1℃ バルブ:6方バルブ・4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式 注入量:ループサイズ・0.1ml 注入口加熱方式:アルミヒートブロック 測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製・MIRAN 1A 検出波長:3.42μm 高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm 窓形状2φ×4mm長丸・合成サファイア窓板 測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製・SSC−3461ポンプ
〔測定条件〕
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む) 試料濃度:5mg/mL 試料注入量:0.1mL 溶媒流速 :1mL/分
試料は下記条件により射出成形した厚さ2mmのシートから、10mm幅×18mm長×2mm厚の短冊状に切り出したものを用いた。装置はレオメトリック・サイエンティフィック社製のARESを用いた。周波数は1Hzである。測定温度は−60℃から段階状に昇温し、試料が融解して測定不能になるまで測定を行った。歪みは0.1〜0.5%の範囲で行った。
〔試験片の作成〕
規格番号:JIS−7152(ISO294−1) 成形機:東洋機械金属社製TU−15射出成形機 成形機設定温度:ホッパ下から 80,80,160,200,200,200℃ 金型温度:40℃ 射出速度:200mm/s(金型キャビティー内の速度) 射出圧力:800kgf/cm2 保持圧力:800kgf/cm2 保圧時間:40秒 金型形状:平板(厚さ2mm 幅30mm 長さ90mm)
セイコー社製DSCを用い、試料5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、更に10℃/分の昇温速度で融解させたときの融解ピーク温度をTmとした(単位:℃)。昇温時の吸熱曲線の面積からdHmを求めた。
前出において記載した方法による。
180℃でプレス成形した厚さ1mmのシートから引張試験片を打ち抜き、JIS K6251に準拠して、200mm/分の試験速度で引張試験を行った。標線間の破断伸びが350%以上を良好、350%未満を不良とした。
180℃でプレス成形した厚さ3mmのシートから、試験片の形状IVの試料を作成し、JIS K7201に準拠して酸素指数を測定し、以下の基準で評価した。
難燃性合格 :酸素指数21以上
難燃性不合格:酸素指数21未満
180℃でプレス成形した厚さ1mmのシートから引張試験片を打ち抜き、JIS K6251に準拠して、200mm/分の試験速度で引張試験を行い、弾性率を測定した。引張弾性率が1000MPa未満を良好、1000MPa以上を不良とした。
180℃でプレス成形した厚さ2mmのシートから試験片を切り出し、JIS C3005に準拠して、加熱変形測定を行った。90℃で30分間の予熱(無負荷)後、同温度で30分間の負荷(荷重3kg)をかけ、負荷後の厚み方向の変位の測定を行い、元の厚みに対する減少率を計算した。減少率が10%未満を良好、10%以上を不良とした。
1)プロピレン−エチレン系共重合体成分(A)
成分(A)として、下記のPP−1、PP−2を用いた。
[重合体製造例A−1]
(予備重合触媒の調製)
珪酸塩の化学処理:10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μm 粒度分布=10〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。仕様及び乾燥条件は、以下の通りである。
回転筒:円筒状・内径50mm・加温帯550mm(電気炉) かき上げ翼付き回転数:2rpm 傾斜角:20/520 珪酸塩の供給速度:2.5g/分 ガス流速:窒素・96リットル/時間 向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
撹拌及び温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換した。乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1,160ml、更にトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で撹拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2,000mlに調製した。次に、先に調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。平行して、(r)−ジクロロ[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム2,180mg(0.3mM)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)33.1mlを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、上記反応後の珪酸塩スラリーに加え、1時間撹拌後、混合ヘプタンを追加して5,000mlに調製した。
続いて、槽内温度を40℃昇温し、温度が安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを2,400mlデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液9.5ml、更に混合ヘプタンを5,600ml添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5,600ml除いた。更にこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mモル/L、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液を170ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。触媒1g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒が得られた。
この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従ってプロピレン−エチレン系共重合体の製造を行った。
内容積0.4m3の撹拌装置付き液相重合槽を用いてプロピレン−エチレンランダム共重合を実施した。液化プロピレンと液化エチレン、トリイソブチルアルミニウムをそれぞれ90kg/時、4.2kg/時、21.2g/時で連続的に供給した。水素供給量は第一工程のMFRが目標の値となるように調節した。更に、上記の予備重合触媒を、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)、6.9g/時となるように供給した。また、重合温度が45℃となるように重合槽を冷却した。
第一工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合を分析したところ、BD(嵩密度)は0.46g/cc、MFRは7.0g/10分、エチレン含有量は3.7重量%であった。
内容積0.5m3の撹拌式気相重合槽を用いてプロピレン−エチレンランダム共重合を実施した。第一工程の液相重合槽より重合体粒子を含んだスラリーを連続的に抜き出し、液化プロピレンをフラッシングした後、窒素で昇圧して気相重合槽へ連続的に供給した。重合槽は、温度が80℃でプロピレンとエチレンと水素の分圧の合計が1.5MPaとなるように制御した。その際にプロピレンとエチレンと水素の分圧の合計に占めるプロピレンとエチレン及び水素の濃度は、それぞれ66.97vol%、32.99vol%、420volppmとなるように制御した。さらに、活性抑制剤としてエタノールを気相重合槽に供給した。エタノールの供給量は、気相重合槽に供給される重合体粒子に随伴して供給されるトリイソブチルアルミニウム中のアルミニウムに対して、0.3mol/molとなるようにした。
得られたプロピレン−エチレン系共重合体を分析したところ、活性は8.7kg/g−触媒、BDは0.41g/cc、MFRは7.0g/10分、エチレン含有量は8.7重量%であった。
得られた測定結果からPP−1は、−60〜20℃の温度範囲で観察されるガラス転移によるピークが1つであり、そのピーク温度が−16.4℃であり、TREF溶出曲線において2つのピークが観察された。以上から、PP−1は、本発明のプロピレン−エチレン系共重合体成分(A)としての全ての要件を満たすといえる。
(担持型固体触媒成分の調製)
窒素置換した内容積500mlの温度計及び攪拌棒付きガラス製三つ口フラスコに、75mlの精製ヘプタン、75mlのチタンテトラブトキシド及び10gの無水塩化マグネシウムを加え、その後、フラスコを90℃まで昇温し2時間かけて無水塩化マグネシウムを完全に溶解させた。次に、フラスコを40℃まで降温してメチルハイドロジエンポリシロキサン15mlを添加することにより、塩化マグネシウム・チタンテトラブトキシド錯体を析出させた。これを精製ヘプタンで洗浄して灰白色の析出固体を得た。得られた析出固体の20gを含むヘプタンスラリー65mlを、窒素置換した内容積300mlの温度計及び攪拌棒付きガラス製三つ口フラスコに入れ、次いで、四塩化珪素8.7mlを含むヘプタン溶液25mlを室温で30分間かけて加え、その後、30℃で30分間反応させた。更に、90℃で1時間反応させ、反応終了後、精製ヘプタンで洗浄した。次に、塩化フタロイル1.6mlを含むヘプタン溶液50mlを加えて50℃で2時間反応させ、これを精製ヘプタンで再洗浄し、更に四塩化チタン25mlを加えて90℃で2時間反応させ、これをまた精製ヘプタンで洗浄して担持型固体触媒成分を得た。該担持型固体触媒成分のチタン含量は3.22重量%であった。
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブをプロピレンで充分に置換した後、これに脱水及び脱酸素したn−ヘプタン60リットルを導入し、更にトリエチルアルミニウム15.0g、上記担持型固体触媒成分3.0g及び第三ブチルメチルジメトキシシラン4.3gを70℃でプロピレン雰囲気下で導入した。第1段目の重合は、オートクレーブを75℃まで昇温した後、水素濃度を13%に保ちながらプロピレンを9kg/時間の速度でフィードすることにより開始した。228分後、プロピレンのフィードを止め、75℃で90分間更に重合を継続させた。気相部プロピレンを0.2kg/cm2Gとなるまでパージした。次に、n−ブタノール4.9gを添加し、オートクレーブを60℃まで降温した後、第2段目の重合をプロピレン2.58kg/時間及びエチレン1.72kg/時間の速度で53分間フィードすることにより実施した。
この様にして得られたスラリーを濾過し、乾燥して粉末状のプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−2)を得た。該共重合体の物性は表3に示す通りである。PP−2は、−60〜20℃の温度範囲で観察されるガラス転移によるピークが2つであり、そのピーク温度は−36℃と4℃であり、TREF溶出曲線において2つのピークが観察された。以上から、PP−2は、本発明のプロピレン−エチレン系共重合体成分(A)としての要件を満たしていないといえる。
成分(B)として、下記のB−1〜B−3を用いた。
B−1:エチレン・アクリル酸エチル共重合体(日本ポリエチレン製、A1200)
MFR[190℃]=0.8g/10分、アクリル酸エチル含量=20重量%
B−2:エチレン・アクリル酸エチル共重合体(日本ポリエチレン製、A1100)
MFR[190℃]=0.4g/10分、アクリル酸エチル含量=10重量%
B−3:エチレン・酢酸ビニル共重合体(日本ポリエチレン製、LV430)
MFR[190℃]=1.0g/10分、酢酸ビニル含量=15重量%
成分(C)として、下記のC−1を用いた。
C−1:無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリエチレン
密度=0.923g/cm3、MFR[190℃]=2g/10分の直鎖状低密度ポリエチレン100重量部に無水マレイン酸0.25重量部、有機過酸化物としてパーヘキシン25Bの0.02重量部を配合し、押出機にて溶融混練して、直鎖状低密度ポリエチレンを無水マレイン酸でグラフト変性したもの(無水マレイン酸含有量0.2重量%)
成分(D)として、下記のD−1〜D−3を用いた。
D−1:合成系水酸化マグネシウム(協和化学工業製 キスマ−5A)平均粒子径約1μm、ステアリン酸表面処理品
D−2:赤燐(日本化学工業製TP−10)平均粒径約20μm
D−3:アルキル変性シリコーンオイル(信越化学工業製KF4917)
成分(A)として製造例A−1で得られたプロピレン−エチレン系共重合体(PP−1
)35重量%と、成分(B)としてB−1 60重量%と、成分(C)としてC−1 5重量%との合計量100重量部に対して、成分(D)としてD−1 水酸化マグネシウムを100重量部、さらに添加剤として以下の成分を配合した。
分散剤:ステアリン酸マグネシウム(試薬1級)0.3重量部
酸化防止剤1:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(チバ・スペシャルズケミカル社製・イルガフォス168)0.2重量部
酸化防止剤2:テトラキス[メチレン−3−(3´,5´−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルズケミカル社製・イルガノックス1010)0.1重量部
酸化防止剤3:ジミリスチルチオジプロピオネート(住友化学社製・スミライザーTPD)0.2重量部
。
(溶融混練)機器:ナカタニ製作所製・NCM50 ニーダー温度:180℃ ローター回転数:500rpm 樹脂温度:170℃ 押出機のスクリュー回転数:65rpm
成分(A),成分(B)、成分(C)、成分(D)の種類及び配合割合を表4に示す通りに変更する以外は、実施例1と同様の配合で、同様の条件にて、造粒と成形及び評価を行った。配合と各種評価結果を表4に示す。
成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)の配合割合を表5に示す通りに変更する以外は、実施例1と同様の配合で、同様の条件にて、造粒と成形及び評価を行った。配合と各種評価結果を表5に示す。
本発明の要件を全て満たす実施例1〜11では、酸素指数が全て良好であり、非常に良好な難燃性を示しており、さらに、引張破断伸びが全て350%以上で格別に優れた引張特性を示し、柔軟性にも優れるなど、押しなべて良好な結果になっている。
一方、比較例1〜2では、成分のA−1が無添加のため、耐熱性が劣っており、比較例3〜4では、成分(A)として、従来のプロピレンーエチレンブロック共重合体(成分A−2)を使用したため(ガラス転移のピーク温度が0℃を超え)、柔軟性が劣っている。
また、比較例5〜6では、成分(B)が許容範囲以上であるため、耐熱性が劣る結果となった。さらに、比較例7では、成分D−1(水酸化マグネシウム)が多く難燃性を満足するが、柔軟性、引張伸びの点で満足いくものでなかった。
以上の各実施例のデータ、及び各実施例と各比較例の対照結果よりして、本発明の難燃性樹脂組成物が、従来の材料より、難燃性を保持しながら各性能において非常に優れており、本発明の構成の要件の合理性と有意性が実証され、従来技術への卓越性も明らかにされている。
Claims (10)
- シングルサイト触媒で製造された下記の特性(i)〜(ii)を有するプロピレン−エチレン系共重合体成分(A)5〜95重量%とエチレン・α、β―不飽和カルボン酸エステル共重合体(B1)またはエチレン・ビニルエステル共重合体(B2)から選択されるエチレン系共重合体成分(B)4〜70重量%と官能基含有オレフィン重合体成分(C)0〜25重量%とからなる樹脂成分100重量部に対して、難燃剤成分(D)3〜300重量部を配合することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
(i)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の温度範囲で観察されるガラス転移によるピークが、単一であり、かつ、そのピーク温度が0℃以下である
(ii)o−ジクロロベンゼン溶媒を用いた−15℃〜140℃の温度範囲での昇温溶離分別法(TREF)による温度に対する溶出量(d重量%/dT)のプロットとして得られるTREF溶出曲線において、以下の特性(ii−A)〜(ii−C)を有する
(ii−A)溶出曲線において2つのピークが観察され、高温側に観測されるピークT(A1)が65〜95℃の範囲にあり、低温側に観測されるピークT(A2)が45℃以下にある
(ii−B)T(A1)とT(A2)両ピークの中間点の温度T(A3)までに溶出する成分(A2)の量W(A2)が5〜70重量%であり、該成分がエチレンを6〜15重量%含むプロピレン・エチレンランダム共重合体である
(ii−C)T(A3)までに溶出する成分の溶出後に溶出する成分(A1)の量W(A1)が95〜30重量%であり、該成分がエチレンを0〜6重量%含むプロピレン単独重合体又はプロピレン・エチレンランダム共重合体である - プロピレン−エチレン系共重合体成分(A)は、さらに、以下の特性(iii)を有することを特徴とする、請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
(iii)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でエチレン含量0〜6重量%の結晶性プロピレン単独重合体又は結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)を95〜30重量%、第2工程でエチレン含有量が6〜15重量%の低結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を5〜70重量%、逐次重合することで得られたものである - プロピレン−エチレン系共重合体成分(A)は、さらに、以下の特性(iv)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物。
(iv)o−ジクロロベンゼン溶媒を用いた−15℃〜140℃の温度範囲での昇温溶離分別法(TREF)による温度に対する溶出量(d重量%/dT)のプロットとして得られるTREF溶出曲線において、以下の特性(iv−A)〜(iv−D)を有する
(iv−A)溶出曲線において2つのピークが観察され、高温側に観測されるピークT(A1)が65〜88℃の範囲にあり、低温側に観測されるピークT(A2)が45℃以下にある
(iv−B)T(A1)とT(A2)両ピークの中間点の温度T(A3)までに溶出する成分(A2)の量W(A2)が30〜70重量%であり、該成分がエチレンを8〜14重量%含むプロピレン・エチレンランダム共重合体である
(iv−C)T(A3)までに溶出する成分の溶出後に溶出する成分(A1)の量W(A1)が70〜30重量%であり、該成分がエチレンを1〜5重量%含むプロピレン・エチレンランダム共重合体である
(iv−D)99重量%が溶出する温度T(A4)が90℃以下で、ピークT(A1)からT(A4)までの温度差ΔT(T(A4)−T(A1))が5℃以下である - エチレン系共重合体成分(B)は、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体及び/又はエチレン・酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
- 難燃剤成分(D)は、無機系難燃剤であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
- 成分(A)5〜95重量%と成分(B)4〜70重量%と成分(C)1〜25重量%とからなる樹脂成分100重量部に対して、成分(D)20〜300重量部を配合することを特徴とする、請求項5に記載の難燃性樹脂組成物。
- 官能基含有オレフィン重合体成分(C)は、酸無水物基含有オレフィン系共重合体またはその金属塩、及び/又は変性ポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物を成形してなる成形体。
- 請求項8に記載の成形体が押出成形により製造されたことを特徴とする押出成形体。
- 電線・ケーブルであることを特徴とする請求項9に記載の押出成形体。
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