JP5134771B2 - 水系接着剤組成物およびそれを用いた情報担持シート - Google Patents

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本発明は、情報担持シート用の水系接着剤組成物に関し、該水系接着剤組成物を塗布後乾燥無しで接着して内容物を隠蔽し、内容物を閲覧する際には容易に剥離でき、再度加圧されても接着しない接着剤組成物とそれを用いた情報担持シートである。
郵便法の改正に伴い、親展性の隠蔽はがきシステムが実用化され、普及している。この親展性の隠蔽はがきは、個人的用件、広告や案内等の各種情報が記載されたはがきを折り畳み、重ね合わせ部分を接着して情報内容を隠蔽して郵送し、受取人が重ね部分を剥がして情報内容を見ることができるものである。
初期の隠蔽はがきにおいては、剥離可能な透明フィルムを使用し、フィルム−フィルム間を剥離して情報を見る方式が採用されていたが、接着用のフィルムが積層されているため、シート面の積層部分と他の部分とに段差が生じたり、厚みがあるため印字印刷の調整が難しく、コスト高となるうえ、剥離紙を除かなければならないという不便さがある。
これらの問題を解決するために、基体シート面の少なくとも一部に、従来普通に用いられている非剥離性接着剤の基材とその基材に対して非親和性を示す微粒状充填剤とからなる接着剤組成物の層を設けた情報担体用シートが提案されている。その方法は、接着層を硬化させるために紫外線を照射したり、加圧加熱するなど煩雑である。
また、隠蔽はがき以外の用途として、健康診断結果等の個人情報を印字・印刷した後隠蔽して個人宛に送付することが行われているが、はがきに比べ、大きく、紙質も異なっている。これに対応する手段として、大きく分けて二つの方法がある。一つは、感圧接着による方法、他は、感熱接着による方法である。前者は、剥離後べとつき感はあるものの、加圧しない限り再接着せず、後者は、常態ではべとつき感はなく再接着しないものの、表面は一般に光沢を有し、加熱により再接着できるものである。また、両者の折衷方法もある。いずれも日常の範囲では再接着しないが、加圧あるいは加熱により再接着できる。
特開平4−59395号 特開平6−64368号
本発明は、作業環境の悪化を招く有機溶剤を使用せず、加熱乾燥をしなくても貼り合わせることができ、剥離時には紙破することなく容易に剥離し、再圧着・加熱しても接着せず、情報内容が秘匿状態を保たれていたことが確認できる水系接着剤組成物とそれを用いた情報担持シートを提供せんとするものである。更に詳しくは、親展性情報担体基材、例えば上質紙やコート紙等の各種紙基材、に水系接着剤組成物を塗布し、乾燥時間を取らずに貼り合わせ、貼り合わせ後1分も経てば剥離ができ、しかも情報内容の認識を妨げる紙破が起きず、剥離後再加熱あるいは加圧しても再接着せず、秘匿状態を保っていたことが容易に確認できる水系接着剤組成物とそれを用いた情報担持シート(以下、単に担持シートという。)を提供するものである。
上記課題を解決するために、本発明は、ガラス転移温度が−40℃〜10℃であるアクリル樹脂系エマルジョン、固形分換算で前記アクリル樹脂系エマルジョン100重量部に対して20〜100重量部の酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、固形分換算で前記アクリル樹脂系エマルジョン100重量部に対して20〜100重量部のワックスエマルジョンおよび固形分換算で前記アクリル樹脂系エマルジョン100重量部に対して20〜80重量部のシリコンオイルエマルジョンを必須成分とする水系接着剤組成物を基材の相面する少なくとも一面に塗布した後に、ウエット状態で圧締してなる。
本発明の水系接着剤組成物とそれを用いた担持シートは、乾燥装置や長時間の圧締・養生を必要とせず、ローラー等の圧締で十分であり、養生時間も1分以上あれば良く、環境に悪影響を与える有機溶剤を使用せず、加熱や紫外線照射などによる乾燥や硬化手段も必要としないため省エネルギーで生産性が高く、個人情報の保護を目的としたダイレクトメールや配送用伝票等のビジネスフォーム関連に有用なものとなる。また、本発明の担持シートは、剥離後再加熱や再圧締しても接着せず、再度情報内容を隠蔽することができないため、秘匿性の保持が容易に確認できる。
本発明は、水系接着剤組成物を基材の相対する二面の貼り合わせの少なくとも一面に塗布し、水系接着剤組成物中の水分の一部および樹脂が、基材に移行することによって機能を発現するため、二面とも水分を透過しないフィルムコートには適応できないが、透過性と樹脂保持性のある紙や織布あるいは不織布等の公知の基材に適応できる。特にグロスコート紙や上質紙等の紙基材が適する。
前記水系接着剤組成物は、必須成分として4種類のエマルジョンから構成され、個々の挙動は明確ではないが、次の役目をしていると推定する。個々に説明する。
(アクリル樹脂系エマルジョン)ポリビニルアルコール等の保護コロイドによらない通常のアクリル樹脂エマルジョンの合成方法によるもので、4種のエマルジョン中、粒径はもっとも小さく、平均粒径50〜300nmのものが適する。4種のエマルジョンの中で、紙面、印刷面、紙中の浸透に大きく影響を与える要素で、再剥離ステッカー感圧接着剤用のものが好ましい。前記アクリル樹脂系エマルジョンのガラス転移温度を10℃以下とすることにより、塗布後直ちに接着可能となる上、剥離した面のベタツキが抑えられる。好ましくは、−40℃〜0℃である。
(酢酸ビニル樹脂系エマルジョン)ポリビニルアルコール等の保護コロイドによる通常方法で合成する酢酸ビニル樹脂エマルジョンで、次の2種のエマルジョンと相互作用を示し、剥離性を良くし、再密着を防ぐ役目をしていると推定される。配合比率は固形分換算でアクリル樹脂エマルジョン100重量部に対して20〜100重量部が好ましい。より好ましくは、40〜80重量部である。20重量部未満では、剥離後にアクリル樹脂の性質が強くなり始めるため、紙面に対してベタツキ感が残りやすくなり仕上がり感が低下する傾向にある。また、100重量部を超えると、酢酸ビニル樹脂の性質が強くなり始めるため、剥離時に紙破が起こり易くなる。当該酢酸ビニル樹脂系エマルジョンの最低造膜温度は、後述するアクリル樹脂系エマルジョンのそれほど規制するものではないが、一般に使用する0〜15℃のものが好ましい。なお、異種エマルジョンを種としたシード重合酢酸ビニル樹脂系エマルジョンも適応できる。
(ワックスエマルジョン)ワックスエマルジョンは融点が低い方が柔軟な樹脂皮膜が得られるため、スムーズに剥離でき良好である。好ましくは、40〜80℃の融点を有するものが適する。配合比率は固形分換算でアクリル樹脂エマルジョンに対して 20〜100重量部が好ましい。より好ましくは、40〜80重量部である。20重量部未満では、アクリル樹脂系や酢酸ビニル樹脂系成分が相対して多くなり、紙面に対する剥離作用が低下するため、剥離時に紙破が起こり易くなる傾向にある。100重量部を超えると、アクリル樹脂や酢酸ビニル樹脂成分が少なくなり紙面に対する凝集力が低下するため、剥離時の強度が不足する。前記ワックスエマルジェンは、例えばWR−3900(星光PMC(株)製 固形分30%、pH4〜5、ノニオンタイプ、融点60〜70℃)、ノプコマルMS−40(サンノプコ(株)製 固形分40%、融点79℃)、ノプコLB−550(サンノプコ(株)製 固形分45%、融点55℃)がある。
(シリコンオイルエマルジョン)ジメチルポリシロキサン系であり、乳化方法には界面活性剤系または自己乳化系がある。後者はポリエーテル変性系、高級アルコキシ変性系等のジメチルポリシロキサンエマルジョンがある。ワックスエマルジョンと相互に剥離性の軽重を調整する。ワックスエマルジョンのみでは完全な無欠点剥離はできず、シリコンオイルエマルジョンと併せての調整が必要である。この配合量が多すぎると容易に剥離するため、不慮の事故による秘匿ができない結果を生じる。配合比率は固形分換算でアクリル樹脂エマルジョン100重量部に対して20〜80重量部が好ましい。より好ましくは、30〜60重量部である。20重量部未満では、アクリル樹脂系や酢酸ビニル樹脂系成分が相対して多くなり、紙面に対する剥離作用が低下するため、紙質によっては剥離時に紙破が起こり易くなる傾向にある。80重量部を超えると、アクリル樹脂系や酢酸ビニル樹脂系成分が少なくなり紙面に対する凝集力が低下するため、剥離時の強度が不足する。
上記以外に、浸透性、表面の濡れ性等を改善するための界面活性剤や粘度、浸透調整のためのポリビニルアルコール、剥離性、粘着度調整のための可塑剤を添加してもよい。
本発明の水系接着剤組成物の担持シートへの適用は、基材の紙質や坪量、印刷濃度、生産性、剥離品質により決定するが、塗布量として10〜30g/m、塗布速度50〜80m/分、貼り合わせ圧力0.01MPaの微圧で加工ができ、約1分後には剥離を異常なく行うことができる。
以下、実施例に基づき説明する。
酢酸ビニル樹脂エマルジョンの合成
攪拌機、温度計、加熱ヒーター、還流冷却管を備えたフラスコ中に水256部、ポリビニルアルコール(電気化学工業株式会社 B−04 平均重合度400、ケン化度88%)15部とを仕込んで80℃に加熱して溶解させ、80℃に保った状態で水10部に過硫酸アンモニウム1部を溶解させた触媒と酢酸ビニルモノマー220部を3時間かけて滴下しながら乳化重合を進めた。その後、可塑剤としてテキサノール(2.2.4−トリメチル−1.3−ペンタンジオールモノイソブチレート;チッソ株式会社製 商品名 CS−12)20部を添加し、酢酸ビニル樹脂エマルジョン(固形分50重量%、粘度2Pa・s/23℃ 最低造膜温度2℃)を調製した。
アクリル樹脂エマルジョンとしてアクロナール4D(商品名、BASFジャパン(株)製 固形分50%、pH6〜7.5、平均粒径0.1μm、ガラス転移温度−42℃、最低造膜温度0℃以下)、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンとして上記調製方法を示した酢酸ビニル樹脂エマルジョン、ワックスエマルジョンとしてWR3900(星光PMC(株)製 固形分30%、pH4〜5、ノニオンタイプ)、シリコンオイルエマルジョンとしてC−800(旭化成ワッカーシリコーン(株)製、ジメチルシロキサン系、固形分80%、自己乳化ノニオンタイプ)を用い、その配合とその評価結果を表1に示した。配合はすべて重量部である。
なお 比較例5として アクリル樹脂エマルジョンとしてポリトロンE750(商品名、旭化成(株)製 固形分50%、pH7.0、平均粒径0.13μm、ガラス転移温度15℃、)を使用した以外上記どおりである。
Figure 0005134771
試験方法を以下に示す。
剥離性:上質紙(コクヨ(株)製 コピー用紙KB9TN、坪量75g/m2)に塗布量10g/mにて塗布し、20cm幅ハンドローラーを用いて0.4Nで加圧し、2回繰り返した。常温にて1日養生した後、試験片の接着面を25mm幅にカットし、75mm/秒の速度で180°引張剥離試験を行った。評価結果を ○:0.5N以上且つ紙破がないこと、 ×:0.5N未満、 ××:3.5N以上且つ紙破があること で示した。
再密着性:一度剥がした試験片に以下の条件で再加圧あるいは再加熱処理し、処理後試験片の接着面を25mm幅にカットし、75mm/秒の速度で180°引張剥離試験を行った。
加圧条件:一度剥がした20cm角試験片を常温で1MPaで10分間加圧。
加熱条件:一度剥がした試験片を70℃に設定したアイロンにて0.01MPaで加圧。
評価基準は○:測定下限値未満、×:0.01N以上、−:紙破のため測定不可能 とした。
情報担持シートの加工においては、一般に、熱乾燥、UV照射などの設備を要し、さらに、加熱あるいは加圧装置が必要であるが、本発明では、基材への塗布と、微圧によるウエット方式のラミネート加工ができ、養生時間も必要がないものであり、簡易な加工装置で生産効率が高く、個人情報など情報内容を秘匿する必要のあるはがきやダイレクトメール、ビジネスフォームなど広範囲な適応が可能である。

Claims (2)

  1. ガラス転移温度が−40℃〜10℃であるアクリル樹脂系エマルジョン、固形分換算で前記アクリル樹脂系エマルジョン100重量部に対して20〜100重量部の酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、固形分換算で前記アクリル樹脂系エマルジョン100重量部に対して20〜100重量部のワックスエマルジョンおよび固形分換算で前記アクリル樹脂系エマルジョン100重量部に対して20〜80重量部のシリコンオイルエマルジョンを必須成分とすることを特徴とする情報担持シート用水系接着剤組成物。
  2. 請求項1記載の水系接着剤組成物を基材の相面する少なくとも一面に塗布した後に、ウエット状態で圧締してなることを特徴とする情報担持シート。
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