JP5134348B2 - 表面がフラットなストレッチ性織物およびスポーツ衣料 - Google Patents

表面がフラットなストレッチ性織物およびスポーツ衣料 Download PDF

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本発明は、パイル部を有さない織物であって、織物表面がフラットであり、かつストレッチ性を呈する織物に関する。
従来、織物はスポーツ衣料やファッション衣料に代表されるように、各種衣料用途に用いられてきた。織物はその構造的に生地自体に伸縮性が少ないため、生地にストレッチ性を付与することが難しく、捲縮を有する加工糸やポリウレタン弾性繊維などを用いることによりストレッチ性が付与されてきた(例えば、特許文献1参照)。そして、かかるストレッチ性織物を用いてなる衣服は、その快適性のために近年広く使用されるようになっている。
これらストレッチ性のある織物は、捲縮を有する加工糸やポリウレタン弾性繊維などを用いて得られたものがほとんどである。しかしながら、これら捲縮を有する加工糸やポリウレタン弾性繊維などを用いて得られた織物では、ストレッチ性は呈するものの、織物表面に凹凸状のシボが発生し外観のよくないものであった。
なお、パイル部を有する織物では、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向の仮撚捲縮加工糸との合糸に交絡が付与することにより低トルクの複合仮撚捲縮加工糸を得ることは特許文献2により提案されている。しかしながら、パイル部を有しているため織物表面がフラットであるかどうか見分けることができなかった。
特開平4−194050号公報 特許第3749549号公報
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、パイル部を有さない織物であって、表面がフラットでありかつストレッチ性を呈する織物、およびかかる織物を用いてなるスポーツ衣料を提供することにある。
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向の仮撚捲縮加工糸との合糸に交絡が付与された、低トルクの複合仮撚捲縮加工糸を用いて編地を編成すると、ストレッチ性を呈するだけでなく、シボが立たず織物表面がフラットな織物が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば「パイル部を有さない織物であって、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸との複合糸に交絡が交絡の個数50〜90個/mの範囲内で付与され、かつ30T/m以下のトルクを有する複合仮撚捲縮加工糸が経糸および/または緯糸に配されてなり、かつ前記複合仮撚捲縮加工糸がポリエチレンテレフタレート繊維からなることを特徴とする表面がフラットなストレッチ性織物。」が提供される。なお、本発明でいう「フラット」とは、織物表面にシボによる凹凸がないという意味である。
本発明の織物において、前記複合仮撚捲縮加工糸のトルクがノントルクであることが好ましい。また、前記複合仮撚捲縮加工糸の捲縮率が5%以上であることが好ましい。また、前記複合仮撚捲縮加工糸において、単糸繊度が4dtex以下であることが好ましい。
本発明の織物において、織物が前記複合仮撚捲縮加工糸のみで構成されることが好ましい。また、織物のカバーファクターCFが2200〜4200の範囲内であることが好ましい。ただし、カバーファクターCFは下記式により定義される。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
また、本発明の織物において、織物の組織が、平織組織、綾織組織、サテン織組織、2重織組織、およびこれらの変化組織からなる群より選択されるいずれかであることが好ましい。また、織物の経方向のストレッチ性が5%以上であり、かつ緯方向のストレッチ性が5%以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の表面がフラットなストレッチ性織物。ただし、ストレッチ性はJIS L 1018により測定するものとする。また、織物の経方向のストレッチ性回復率が75%以上であり、かつ緯方向のストレッチ性回復率が75%以上であることが好ましい。ただし、ストレッチ性はJIS L 1018により測定するものとする。
また、本発明によれば、前記に記載の織物を用いてなる、スポーツ衣料が提供される。
本発明によれば、パイル部を有さない織物であって、表面にシボがなくフラットでありかつストレッチ性を呈する織物、およびかかる織物を用いてなるスポーツ衣料が得られる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
仮撚捲縮加工糸には第1ヒーター域で仮撚をセットした、いわゆるone heater仮撚捲縮加工糸と、該糸をさらに第2ヒーター域に導入して弛緩熱処理することによりトルクを減らした、いわゆるsecond heater仮撚捲縮加工糸とがある。しかしながら、いずれの仮撚捲縮加工糸を使用して織物を編成しても、ストレッチ性は得られるものの織物表面に凹凸状シボが発生し、目面のきれいさに劣るという問題がある。
そこで、本発明の織物において、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸との複合糸に交絡が付与され、かつ30T/m以下(好ましくは10T/m以下、特に好ましくは0T/m)の低トルクを有する複合仮撚捲縮加工糸を使用する。かかる低トルクの複合仮撚捲縮加工糸を用いて編地を構成することにより、ストレッチ性を損なうことなく、凹凸状のシボが立たずフラットな表面が得られる。複合仮撚捲縮加工糸のトルクが大きい場合は、染色加工の際の熱により織物表面に、凹凸状のシボが立ちフラットな織物表面にはならないおそれがある。
ここで、仮撚捲縮加工の条件としては、糸条を第1ローラ、セット温度が90〜220℃(より好ましくは100〜190℃)の熱処理ヒータを経由して撚り掛け装置によって施撚し、必要に応じてさらに第2ヒーター域に導入して弛緩熱処理する方法が例示される。仮撚加工時の延伸倍率は、0.8〜1.5の範囲が好ましく、仮撚数は、仮撚数(T/m)=(32500/√Dtex)×αの式においてα=0.5〜1.5が好ましく、通常は0.8〜1.2位とするのがよい。用いる撚り掛け装置としては、デイスク式あるいはベルト式の摩擦式撚り掛け装置が糸掛けしやすく、糸切れも少なくて適当であるが、ピン方式の撚り掛け装置であってもよい。
また、交絡(インターレース)の個数は特に制限はないが、ストレッチ性を損なわないために30〜90個/mの範囲内であることが好ましい。該個数が90個/mよりも大きいとストレッチ性が損なわれるおそれがある。逆に、該個数が30個/mよりも小さいと複合仮撚捲縮加工糸の集束性が不十分となり、製編性が損なわれるおそれがある。なお、交絡処理(インターレース加工)は通常のインターレースノズルを用いて処理したものでよい。
前記複合仮撚捲縮加工糸において、トルクは小さいほど好ましくノントルク(0T/m)が最も好ましい。このようにノントルクとするには、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向の仮撚捲縮加工糸とを合糸する際、トルクの方向が異なること以外は同じトルクを有する2種の仮撚捲縮加工糸を使用するとよい。
また、前記複合仮撚捲縮加工糸において、捲縮率が5%以上(より好ましくは10%以上、特に好ましくは12〜25%)であることが好ましい。該捲縮率が5%未満では十分なストレッチ性が得られないおそれがある。
前記複合仮撚捲縮加工糸において、単糸繊度が4dtex以下(好ましくは0.1〜1.0dtex)であるが好ましい。該単糸繊度が4dtexよりも大きいとソフトな風合いが得られないおそれがある。また、複合仮撚捲縮加工糸の総繊度としては33〜220dtexの範囲内であることが好ましい。さらに、複合仮撚捲縮加工糸のフィラメント数としては50〜300本(より好ましくは100〜300本)の範囲内であることが好ましい。
前記複合仮撚捲縮加工糸を構成する繊維としては、特に制限はないが、ポリエステルからなるポリエステル系繊維が好ましい。かかるポリエステルとしては、テレフタル酸を主たる酸成分とし、炭素数2〜6のアルキレングリコール、すなわちエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種のグリコール、特に好ましくはエチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルが例示される。
かかるポリエステルには、必要に応じて少量(通常30モル%以下)の共重合成分を有していてもよい。その際、使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、P−オキシ安息香酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のごとき芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。また、上記グリコール以外のジオール化合物としては、例えばシクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSのごとき脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコール等をあげることができる。
前記ポリエステルは任意の方法によって合成したものでよい。例えばポリエチレンテレフタレートの場合について説明すると、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのごときテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるかまたはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステルおよび/またはその低重合体を生成させる第1段階の反応と、第1段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段階の反応によって製造されたものでよい。また、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、ポリ乳酸やステレオコンプレックスポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルであってもよい。
前記ポリエステルには、必要に応じて、艶消し剤(二酸化チタン)、微細孔形成剤(有機スルホン酸金属塩)、着色防止剤、熱安定剤、難燃剤(三酸化二アンチモン)、蛍光増白剤、着色顔料、帯電防止剤(スルホン酸金属塩)、吸湿剤(ポリオキシアルキレングリコール)、抗菌剤、その他の無機粒子の1種以上が含まれていてもよい。
本発明の織物において、経糸および/または緯糸に配されて前記の複合仮撚捲縮加工糸が配されている。ここで、該複合仮撚捲縮加工糸は、織物の全重量に対して70重量%以上(特に好ましくは100重量%)含まれていることが好ましい。
また、織物のカバーファクターしては、1200〜3500の範囲であるであることが好ましい(より好ましくは1500〜2800)。織物のカバーファクターがかかる範囲よりも小さいと、糸ズレがおきるおそれがあり、かかる範囲より大きいと十分なストレッチ性が得られないおそれがある。
本発明の織物は、前記の複合仮撚捲縮加工糸を用いて通常の織機を使用して容易に製織することができる。その際、パイル部を有さない織物であれば、織物の組織は限定されず、平織、綾織、サテン織等が好ましく例示される。また、2重織でもよい。なお、地組織部の片面または両面にパイル部を有する織物では、使用の際に地組織部表面が外気側に現れないため本発明から除外する。また、前記の複合仮撚捲縮加工糸に下記式で表される撚係数3000以下程度の撚糸をしてもよい。
(撚係数)=撚数[T/M]×√(繊度[De])
ただし、繊度[De]は繊度[Dtex]に0.9をかけた値である。
かくして得られた織物において、厚さは特に限定されないが、1mm以下(より好ましくは0.1〜0.5mm)であることが好ましい。目付けも特に限定されないが、200g/m以下(より好ましくは40〜150g/m)であることが好ましい。また、本発明の目的が損なわれない範囲内であれば、常法の染色仕上げ加工、吸水加工、撥水加工、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
織物の表面に発生するシボは織物を構成する糸条のトルクに起因して発生するものであるが、本発明の織物において、前記の低トルクの複合仮撚捲縮加工糸が配されているので、ストレッチ性を発現させるために、染色加工工程において十分に糸の捲縮を発現させても、織物表面に凹凸状のシボが発生することなく織物がフラットとなり、また優れたストレッチ性が得られる。
かかるストレッチ性としては、織物の経方向のストレッチ性が5%以上(好ましくは8〜50%)であり、かつ緯方向のストレッチ性が5%以上(好ましくは15〜60%以上)であることが好ましい。ただし、ストレッチ性はJIS L 1096 B法JIS L 1018により測定するものとする。また、織物の経方向のストレッチ性回復率が75%以上であり、かつ緯方向のストレッチ性回復率が75%以上であることが好ましい。ただし、ストレッチ性回復率はJIS L 1096 B−1法により測定するものとする。
次に、本発明のスポーツ衣料は、前記の織物を用いてなるものである。かかるスポーツ衣料には、各種スポーツ 用の上着又は下着として着用されるシャツ類、パンツ、ショーツ類が含まれ、競技用、トレーニング用を問わない。例としては、サッカーシャツ、ゴルフシャツ、テニスシャツ、バスケットシャツ、卓球シャツ、バドミントンシャツ、ランニングシャツ、サッカーパンツ、テニスパンツ、バスケットパンツ、卓球パンツ、バドミントンパンツ、ランニングパンツ、ゴルフパンツ、各種スポーツ 用アンダーシャツ、各種スポーツ 用インナーウエア等、セーター、Tシャツ、ジャージ、トレーナー、ウインドブレーカーなどが含まれる。かかるスポーツ衣料は前記の織物を用いているので、シボが立たず織物表面がフラットであり、かつストレッチ性に優れる。
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)トルク
試料(捲縮糸)約70cmを横に張り、中央部に0.18mN×表示テックス(2mg/de)の初荷重を吊るした後、両端を引揃える。
糸は残留トルクにより回転しはじめるが初荷重が静止するまでそのままの状態で持ち、撚糸を得る。こうして得た撚糸を17.64mN×表示テックス(0.2g/de)の荷重下で25cm長の撚数を検撚器で測定する。得られた撚数(T/25cm)を4倍にトルク(T/m)を算出する。
(2)インターレース度
交絡糸を8.82mN×表示テックス(0.1g/de)の荷重下で1mの長さをとり、除重後、室温で24時放縮後の結節点の数を読み取り、ケ/mで表示する。
(3)捲縮率
供試糸条を、周長が1.125mの検尺機のまわりに巻きつけて、乾繊度が3333dtexのかせを調製した。前記かせを、スケール板の吊り釘に懸垂して、その下部分に6gの初荷重を付加し、さらに600gの荷重を付加したときのかせの長さL0を測定する。その後、直ちに、前記かせから荷重を除き、スケール板の吊り釘から外し、このかせを沸騰水中に30分間浸漬して、捲縮を発現させる。沸騰水処理後のかせを沸騰水から取り出し、かせに含まれる水分をろ紙により吸収除去し、室温において24時間風乾する。この風乾されたかせを、スケール板の吊り釘に懸垂し、その下部分に、600gの荷重をかけ、1分後にかせの長さL1aを測定し、その後かせから荷重を外し、1分後にかせの長さL2aを測定する。供試フィラメント糸条の捲縮率(CP)を、下記式により算出する。
CP(%)=((L1a−L2a)/L0)×100
(4)ストレッチ性
JIS L 1096 B法によりストレッチ性(%)を測定した。
(5)ストレッチ性回復率
JIS L 1096 B−1法によりストレッチ性回復率(%)を測定した。
(6)織物表面の外観
試験者3人の官能評価により、織物表面を、3級:織物表面にシボによる凹凸がなくフラットであり良好、2級:普通、1級:織物表面にシボによる凹凸があり不良、の3段階に評価した。
(7)織物の厚さ
JIS L1096により織物の厚さ(mm)を測定した。
(8)織物の目付け
JIS L1096により織物の目付け(g/m)を測定した。
[実施例1]
通常のポリエチレンテレフタレートを用いて通常の紡糸装置から280℃で溶融紡糸し、2800m/分の速度で引取り、延伸することなく巻取り、半延伸されたポリエステル糸条56dtex/36filを得た。
次いで、該ポリエステル糸条を用いて、延伸倍率1.6倍、仮撚数2500T/m(S方向)、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行った。また、前記ポリエステル糸条を用いて延伸倍率1.6倍、仮撚数2500T/m(Z方向)、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行った。
次いで、これらS方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向の仮撚捲縮加工糸とを合糸して空気交絡処理を行い、複合仮撚捲縮加工糸(66dtex/72fil、捲縮率14%、トルク0T/m)を得た。空気交絡処理は、インターレースノズルを用い、オーバーフィード率1.0%、圧空圧0.3MPa(3kgf/cm)で50個/mの交絡を付与した。
次いで、該複合仮撚捲縮加工糸を経糸および緯糸に配して、通常のウォータージェットルーム織機を使用して平組織の織物を織成した。そして、該織物に通常の染色仕上げ加工を行い、通常の撥水加工したあとでファイナルセットを施した。
かくして得られた織物において、厚さ0.24mm、目付け80g/m、経密度121本/2.54cm、緯密度102/2.54cm、カバーファクターは1727、経ストレッチ性12%、緯ストレッチ性28%、経方向のストレッチ性回復率89%、緯方向のストレッチ性回復率84%、表面は3級:織物表面がフラットであり良好と、シボが立たずフラットな目面であり、経方向および緯方向のストレッチ性に優れていた。
また、かかる編地を用いてウインドブレーカー(スポーツ衣料)を縫製し着用したところ、フラットな目面、経方向および緯方向のストレッチ性に優れていた。
[実施例2]
実施例1において、Z方向仮撚りのみの仮撚り数を1800T/Mに変更することにより、複合仮撚捲縮加工糸(66dtex/72fil、捲縮率10%、トルク10T/m)を得た。これ以外は実施例1と同様にした。
かくして得られた織物において、厚さ0.28mm、目付け74g/m、経密度114本/2.54cm、緯密度93/2.54cm、カバーファクターは1603、経ストレッチ性13%、緯ストレッチ性29%、経方向のストレッチ性回復率89%、緯方向のストレッチ性回復率83%、表面は3級:織物表面がフラットであり良好と、シボが立たずフラットな目面であり、経方向および緯方向のストレッチ性に優れていた。
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレートからなる仮撚捲縮加工糸(56dtex/72fil、捲縮率14%、トルク45T/m)を用い、通常のウォータージェットルーム織機を使用して平組織の織物を織成した。そして、該織物に通常の染色仕上げ加工を行い、撥水加工したあとでファイナルセットを施した。
かくして得られた織物において、厚さ0.21mm、目付け75g/m、経密度126本/2.54cm、緯密度93/2.54cm、カバーファクターは1548、経ストレッチ性2%、緯ストレッチ性14%、経方向のストレッチ性回復率96%、緯方向のストレッチ性回復率91%、表面は3級:織物表面がフラットであり良好と、シボが立たずフラットな目面であったが、経方向のストレッチ性に劣るものであった。
また、かかる織物を用いてウインドブレーカー(スポーツ衣料)を縫製し着用したところ、フラットな目面であったが、経方向のストレッチ性に劣るものであった。
[比較例2]
ポリエチレンテレフタレートからなる仮撚捲縮加工糸(56dtex/72fil、捲縮率24%、トルク64T/m)を表側糸条として用いた以外は、比較例1と同様に行った。
かくして得られた織物において、厚さ0.30mm、目付け83g/m、経密度131本/2.54cm、緯密度112/2.54cm、カバーファクターは1718、経ストレッチ性11%、緯ストレッチ性29%、経方向のストレッチ性回復率90%、緯方向のストレッチ性回復率86%、表面は1級:織物表面がフラットでなく不良であり、経方向および緯方向のストレッチ性には優れるものの、織物表面(目面)がフラットではなく凹凸状のシボが発生していた。
本発明によれば、パイル部を有さない織物であって、表面にシボがなくフラットでありかつストレッチ性を呈する織物、およびかかる織物を用いてなるスポーツ衣料が提供され、その工業的価値は極めて大である。

Claims (10)

  1. パイル部を有さない織物であって、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸との複合糸に交絡が交絡の個数50〜90個/mの範囲内で付与され、かつ30T/m以下のトルクを有する複合仮撚捲縮加工糸が経糸および/または緯糸に配されてなり、かつ前記複合仮撚捲縮加工糸がポリエチレンテレフタレート繊維からなることを特徴とする表面がフラットなストレッチ性織物。
  2. 前記複合仮撚捲縮加工糸のトルクがノントルクである、請求項1に記載の表面がフラットなストレッチ性織物。
  3. 前記複合仮撚捲縮加工糸の捲縮率が5%以上である、請求項1または請求項2に記載の表面がフラットなストレッチ性織物。
  4. 前記複合仮撚捲縮加工糸において、単糸繊度が4dtex以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の表面がフラットなストレッチ性織物。
  5. 織物が前記複合仮撚捲縮加工糸のみで構成される、請求項1〜4のいずれかに記載の表面がフラットなストレッチ性織物。
  6. 織物のカバーファクターCFが2200〜4200の範囲内である、請求項1〜5のいずれかに記載の表面がフラットなストレッチ性織物。
    ただし、カバーファクターCFは下記式により定義される。
    CF=(DWp/1.1) 1/2 ×MWp+(DWf/1.1) 1/2 ×MWf
    [DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWf
    は緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
  7. 織物の組織が、平織組織、綾織組織、サテン織組織、2重織組織、およびこれらの変化組織からなる群より選択されるいずれかである、請求項1〜6のいずれかに記載の表面がフラットなストレッチ性織物。
  8. 織物の経方向のストレッチ性が5%以上であり、かつ緯方向のストレッチ性が5%以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の表面がフラットなストレッチ性織物。
    ただし、ストレッチ性はJIS L 1018により測定するものとする。
  9. 織物の経方向のストレッチ性回復率が75%以上であり、かつ緯方向のストレッチ性回復率が75%以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の表面がフラットなストレッチ性織物。
    ただし、ストレッチ性はJIS L 1018により測定するものとする。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の織物を用いてなる、スポーツ衣料。
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