JP5130781B2 - 過酸化水素製造装置並びにそれを用いた空調機、空気清浄機及び加湿器 - Google Patents

過酸化水素製造装置並びにそれを用いた空調機、空気清浄機及び加湿器 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、酸素を含むガスと水から電気化学的に過酸化水素を製造する装置並びにそれを用いた空調機、空気清浄機及び加湿器に関するものである。
近年、過酸化水素は漂白、酸化作用を有しており、食品、医薬品を始め工業用に広く使用されている。また、殺菌効果や滅菌効果にも注目されており、家庭用電化製品においても、その殺菌性や防黴性を利用して、清潔で快適な環境を作るため、洗濯機、空気清浄機等への応用が期待されている。従来、過酸化水素はイオン交換膜を利用して電気化学反応にて製造されている。例えば、特許文献1の発明による過酸化水素製造装置においては、電解槽に貯留された電解質溶液に少なくとも一対の電極の一部を浸漬し、電気化学的処理によって電解質溶液中に過酸化水素を生成している。過酸化水素が発生する電極側の電極材料にTa、Ptなどを含む材料を用いることにより、酸素還元が効率的に進行し、過酸化水素を製造することができる。過酸化水素が発生する電極側にはガス拡散が可能な多孔質膜が設置されており、酸素が気相から液相(水)へ導入されて電気化学的に還元される。
また、特許文献2の発明による過酸化水素製造装置においては、ガス拡散電極によってガス室と電解室とに分離された電解槽を形成し、電解室に不溶性金属電極を陽極として設置するとともに海水を流し、ガス室には空気を供給しながら電解を行って海水中に過酸化水素を生成している。ガス拡散電極が、電極物質を担持した親水層と撥水性のガス拡散層からなる半疎水性ガス拡散電極であり、前記電極物質が炭素及び/又は金であることを特徴としている。酸素がガス拡散層を介して、気相から液相(海水)へ導入されて電気化学的に還元される。
特開2005−146344号公報 特許第3689541号公報
しかしながら、従来の過酸化水素の製造方法では、水と酸素含有ガスを用いて過酸化水素の生成を行なう場合には、陰極電極表面の水が酸素の拡散を阻害するため、充分な過酸化水素の生成特性が得られないという問題があった。また、酸素のみを供給すると水素イオン伝導膜中の水素イオンの伝導速度が著しく低下し、十分な過酸化水素の生成特性が得られないという問題があった。
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであり、水と酸素含有ガスを用いて過酸化水素を効率良く生成できる過酸化水素製造装置並びにそれにより製造された過酸化水素を洗浄に利用した空調機、空気洗浄機及び加湿器を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明に係る過酸化水素製造装置は、水素イオン伝導性を有する電解質膜と電解質膜の第1の面に接して配置された陽極電極と電解質膜の第2の面に接して配置された陰極電極とにより構成される電解セルと、陽極電極面が槽の一部を構成し、水を貯える電解槽と、陽極電極と陰極電極とに直流電圧を印加する電源と、超音波発生器により霧状の水滴を発生させて、陰極電極の電解質膜側の面に対向する表面とガス吹出し孔との間に水を供給する水供給手段と、陰極電極の表面にガス吹出し孔から酸素含有ガスを吹き付けて、陰極電極の表面とガス吹出し孔との間に供給された霧状の水滴を陰極電極の表面に液滴として付着させる酸素含有ガス供給手段と、電解セルにて生成された過酸化水素を回収する過酸化水素回収槽と、を備えたことを特徴とする。
請求項の構成では、過酸化水素製造装置において製造される過酸化水素を用いて熱交換器を洗浄する機能を有する空調機であることを特徴とする。
請求項の構成では、過酸化水素製造装置において製造される過酸化水素を用いて空気を除菌する機能を有する空気清浄機であることを特徴とする。
請求項の構成では、過酸化水素製造装置において製造される過酸化水素を用いて加湿素子を洗浄する機能を有する加湿器であることを特徴とする。
本発明によれば、酸素含有ガスと水を同時に陰極電極に供給することにより陰極電極に十分な量の酸素を供給拡散させることができるとともに、イオン伝導膜において高い水素イオン伝導性を得ることが可能になることによって、陰極電極における酸素と水素イオンの接触確率が高くなり、過酸化水素の生成効率が上がるといった従来の装置にはない顕著な効果を奏するものである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る過酸化水素製造装置並びにそれを用いた空調機、空気清浄機及び加湿器について説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における過酸化水素製造装置を示す概略断面図である。図2は、過酸化水素製造装置の電解セル部の概略断面図を示す。
図1に示すように、過酸化水素製造装置の電解セル1は、水素イオン伝導性を有する電解質膜である高分子電解質膜2、この高分子電解質膜2の一方の面に接するように配設された陽極電極3、高分子電解質膜2の他方の面に接するように配設された陰極電極4で構成されており、さらに、陽極電極3には陽極端子5、陰極電極4には陰極端子6が取付けられており、電解セル1は電解槽7の側壁の一部をなすように構成され、高分子電解質膜2はOリング8を介して電解槽7に固定フランジ9により固定、シールされている。電解槽7には水10が貯えられている。水供給手段として、水槽12の底面に超音波発生器13が備えられた噴霧装置11と、噴霧装置11に接続された水供給管16とにより構成され、また、酸素含有ガス供給手段として、酸素含有ガス供給装置17と、この酸素含有ガス供給装置17に接続されたガス吹出し用の孔19を有するガス供給管18とにより構成されている。陰極電極4から滴下される過酸化水素を含有した液滴21を受ける過酸化水素回収槽22が陰極電極4の下方に設置されている。また、電解セル1には、陽極端子5と陰極端子6を介して直流電圧を印加する電源24が接続されている。
まず、図1と図2を用いて過酸化水素製造装置と電解セルの具体的な材料構成と作製方法について説明する。図2に示すように、電解セル1は高分子電解質膜2を、陽極電極3と炭素繊維4aと触媒混合層4bとからなる陰極電極4とで挟み込んだ構造をしている。
陽極電極3は、基材と水の酸化反応を促進する酸化触媒から構成されている。基材としては、チタン(Ti)金属繊維の焼結体(繊維径20μm、長さ50〜100mmの単繊維を織り込んで焼結体としたもの)からなる密度200g/cmの布(半径50mm、厚み300μm)や、チタン製の網目構造を持つエキスパンドメタルを用いる。基材の高分子電解質膜2に接する面に触媒となる白金(Pt)または、酸化イリジウム(IrO)を0.25〜2mg/cmの密度でめっきすることにより陽極電極3を形成する。水の酸化反応は、基材上に形成された酸化触媒と高分子電解質膜2の界面でのみ進行するので、基材としてエキスパンドメタルを用いる場合には、網目の密度が電解性能に影響する。具体的には、1インチあたり10個以上の穴が開いたエキスパンドメタルを用いることが好ましい。
陰極電極4は、炭素系基材と酸素の還元反応を促進する還元触媒から構成されている。炭素系基材としては、半径50mm、厚さ200μmの炭素繊維4a(繊維径約5〜50μm、空隙率50〜80%)を用いる。炭素繊維4aは、撥水化処理されている。例えば、フッ素ガスで処理され(室温、F分圧:50Torr)、表面官能基がC−F結合に置換されている。この炭素繊維4aの高分子電解質膜2に接する面に、炭素粒子26と高分子電解質粒子27を混合した還元触媒層4bを形成する。具体的には、カーボン粉末と高分子電解質(パーフルオロスルホン酸)を分散した溶液を重量比で10:1〜1:10の割合で混合し、炭素繊維4a上に30〜500μmの厚さに塗布した後、50℃、真空下で乾燥させている。
電解槽7の材質は、例えば、アクリル樹脂などからなり、電解セル1の高分子電解質膜2は陽極端子5および陰極端子6により、面圧0.2×10〜1×10Paで締め付けられている。陽極端子5および陰極端子6は、円状の平板(半径1cm、厚み2mm)に細い棒(外径2mm、長さ15mm)を円板の中央から円板に垂直に溶接したもので、材料はチタン(Ti)からできている。電解セル1との接触面での腐食を防止するために、0.1〜3μm程度の厚みで白金(Pt)めっきすることが好ましい。また、比較的低コストで電極端子を作製する必要がある場合には、同様な形状に加工したカーボン板を用いてもよい。
次に、実施の形態1の過酸化水素製造装置を用いた過酸化水素製造方法の動作原理について、図1および図2を参照して説明する。
電源24により、陽極電極3と陰極電極4の間に連続的もしくは断続的に1.5〜10Vの直流電圧を印加しながら電解セル1を動作させる。まず、電解槽7に貯えられた水10は、陽極電極3を通過して高分子電解質膜2に接触する。そして、水は高分子電解質膜2に吸収され、高分子電解質膜2内を拡散し、高分子電解質膜2に保持される。陽極電極3では、供給された水が反応式(1)で示すように酸素(O)と水素イオン(H)とに分けられる。電源24により直流電圧を印加すると、電流が流れ、陽極電極3の表面から酸素分子が生成され、酸素の気泡25が発生する。
陽極: 2HO → O+ 4H + 4e (1)
高分子電解質膜2は、気体を透過せず、電気絶縁性があり、水および水素イオン(H)のみを伝導する材質、例えば、パーフルオロスルホン酸膜でできており、陰極電極4に空気などの酸素(O)を含有する酸素含有ガスおよび水(HO)が供給されると、陰極電極4上で高分子電解質膜2との界面に達した陽極電極3から伝導した水素イオン(H)、および水素イオン(H)に起因する還元性物質と酸素ガス(O)が反応し、反応式(2)で示す還元反応によって過酸化水素(H)が生成される。生成された過酸化水素含む液滴21は滴下され、過酸化水素回収槽22にて回収され徐々に蓄積される。
陰極: O + 2H + 2e → H (2)
陰極電極4への酸素ガスの供給は、酸素含有ガス供給装置17から送出された酸素ガスがガス供給管18の孔19を通して陰極電極4表面に吹き付けることにより行なわれる。また、陰極電極4への水の供給は、水槽12の水14を超音波発生器13による超音波(1kHz〜2MHz)振動を用いて直径数μm程度に微細化した霧状の水滴15を水供給管16から噴霧させ、この水滴15を、ガス供給管18の孔19から吹出された酸素ガスによって陰極電極4表面に押し付けて液滴20として付着させるものである。
さらに、陰極電極4では酸素(O)が更に還元されて水(HO)が生成する反応(3)と水素イオン(H)が直接還元されて、水素(H)が発生する反応式(4)も進行する。
陰極: O + 4H + 4e → 2HO (3)
2H + 2e → H (4)
さらに、図2を用いて反応の様子を詳しく説明する。高分子電解質膜2に隣接する炭素粒子26と電解質粒子27の還元触媒層4bにおいて、電解質粒子27は3次元的に接合しており、陽極電極3側で発生した水素イオン(H)が高分子電解質膜2を透過して伝達する。そして、陰極電極4側から供給された酸素(O)は、炭素粒子26と電解質粒子27の界面28(黒点で示す部分)において電子を受けとり、過酸化水素(H)を生成する電気化学反応が進行する。本発明においては、反応式(2)で示すように酸素を水素イオンによって電気化学的に還元することを目的としているため、還元触媒層4bが水で被覆されてしまうと酸素の供給速度が激減し、過酸化水素の生成能力が低下する。水中とガス中における酸素の拡散係数は、それぞれ1.6x10−9(m/s)、1x10−5(m/s)程度であることから、陰極電極4の表面が水で覆われた場合には、酸素の供給速度が1/10,000に低下し、その結果、反応式(2)はほとんど進行しなくなる。
高分子電解質膜2の水素イオン伝導度は、膜中の相対湿度すなわち水の量に比例して大きくなる。高分子電解質膜2が、パーフルオロスルホン酸膜の場合では、20℃において、相対湿度20%では10−4Scm−1、40%では2×10−3Scm−1、60%では10−2Scm−1と大きく変化する。したがって、たとえ酸素が十分に存在していたとしても水が不足する場合には水素イオンの伝導速度が低下し、過酸化水素の生成能力が低下する。陰極電極4一部に水が供給され、他の部分が酸素ガスに曝されている場合には、電源24によって直流電圧を印加しても電流に伴う水素イオンは水に浸漬された部分に集中し、酸素ガスに曝された気相部分では水素イオンはほとんど伝導しない。水素イオンの伝導量が多い水中においては、上述したように、水中での酸素の溶解度及び拡散速度が非常に遅いため、十分な過酸化水素の生成能力が得られない。このため、陰極電極4に一定の水と酸素を供給することが重要である。
したがって、酸素ガスを水に溶解させた場合、溶存酸素濃度は最大でも20mg/L程度にとどまり、酸素/水の重量比率は1/50,000となる。あるいは、水中に酸素ガスを導入して水中に酸素ガスの気泡を発生させても、水中における酸素の体積割合は一般的には10%を超えることはなく、酸素/水の重量比率は1/5,000程度である。このように通常、水に酸素ガスを混合した状態では、酸素/水の重量比率は1/5,000以下であり、酸素が非常に不足した状態となっている。
これに対して、本発明者らは、本発明のように、陰極電極への水の供給を、水で浸漬させる方法ではなく、霧状の水滴として供給し、合わせて酸素ガスを陰極電極に供給する方法を採ることにより、その供給量を制御し、酸素/水の重量比率を1/5,000以上として、酸素比率の高い状態で陰極電極への酸素と水の両方の供給を可能とした。これにより、単位電流量当たりの過酸化水素の生成量を向上させることができる。
次に、陽極電極3側に供給する水については、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)などの金属イオンに起因する陽イオンが含まれていると、高分子電解質膜2の内部の水素イオンが陽イオンに置換されるため水素イオン伝導速度が著しく低下するので、液体状の水を直接供給する場合も微細化した水を供給する場合にも、イオン交換水または超純水を用いる方が好ましい。水道水であれば、カルキ、トリハロメタンなどをフィルタで除去した水であって、電気伝導度が10mScm−1以下であれば使用することができる。
陽極電極3と陰極電極4との間に印加した電圧の一部は接触抵抗や高分子電解質膜2でジュール熱として失われ、高分子電解質膜2や陽極電極3、陰極電極4の温度を上昇させる。温度上昇が著しい場合には、高分子電解質膜2が変質したり、変形して陽極電極3や陰極電極4と高分子電解質膜2の剥がれが発生したりするので望ましくない。そこで、電圧を断続的にON、OFFすることにより発熱を抑制することができる。具体的には、1〜30分間隔で、OFFの時間を1とするとONの時間を0.2〜5倍程度で操作することが望ましい。
また、パルス状の電圧印加によって水素イオンにのみにエネルギーを与えれば熱による損失を抑制することができる。このような場合には、1μsec〜10msec程度のパルス状の電圧を連続的に印加してON、OFFを行なうことが好ましい。
また、実施の形態1では、電解セル1を垂直に設置する場合について説明したが、水平に設置しても良く、それに合わせてガス供給管18も水平に配置し、陰極電極4の下方に過酸化水素回収槽22を設置しても同様の効果が得られる。ここで、陽極電極3全体が水10により浸漬されている場合について説明したが、陽極電極3の少なくとも一部が浸漬される場合であってもよく、過酸化水素の生成量に応じて調整してもよい。
このように、実施の形態1の過酸化水素製造装置によると、陰極電極への水は霧状の水滴として供給し、合わせて酸素ガスを供給する方法を採ることにより、酸素含有ガスと水を同時に陰極電極に供給することにより陰極電極に十分な量の酸素を供給拡散させることができるとともに、イオン伝導膜において高い水素イオン伝導性を得ることが可能になることによって、陰極における酸素と水素イオンの接触確率が高くなり、過酸化水素の生成効率が上がるといった顕著な効果を奏するものである。
〔実施例1〕
図3〜図5は、実施の形態1の過酸化水素製造装置を用いた実施例1による過酸化水素生成特性の測定結果を示す。
電解セル1を構成する材料としては、陽極電極3の基材は、チタン製エキスパンドメタル(1インチ平方あたりのメッシュ数80、線径0.1mm)、酸化触媒は酸化イリジウム(担持密度0.6mg/cm2、無電解めっきで形成)を用いた。陰極電極4は、炭素繊維(繊維径10μm、空隙率70%)を基材としてその上に、炭素粉末と高分子電解質(パーフルオロスルホン酸)粉末を分散した溶液を重量比で1:3の割合で混合し、50〜400μm厚で塗布した後、50℃、真空下で乾燥して還元触媒層4bを形成した。高分子電解質膜2はパーフルオロスルホン酸である。
生成条件としては、印加電圧が2.0〜2.2V、温度が25℃、導入する酸素ガス流量が10〜50cc/min、陽極電極3と陰極電極4の面積が19cm、陽極電極3には空気中から冷却によって水分を回収する状況を想定して、常温のイオン交換水を電解槽7中に50cc入れた。また、過酸化水素回収槽22に100ccの常温のイオン交換水を入れた。陰極電極4で発生した過酸化水素は液滴21として回収され、過酸化水素回収槽22内に徐々に蓄積される。過酸化水素濃度の経時変化は過酸化水素回収槽22の一部に紫外線吸光光度計(図示せず)を取付けて180〜250nmの範囲の波長を用いて測定した。
噴霧装置11内の水14の温度を調節して、水供給管16から供給される水滴量を制御し水蒸気濃度W1を変化させた。電解セル1の陰極電極4の温度25℃における飽和水蒸気濃度をW2として、過飽和度をW1/W2で定義する。
図3は、過飽和度W1/W2が1.7、2.4、3.3となるように供給する水滴量を制御した場合に、陰極電極4の表面に形成される液滴径の時間変化を示している。過飽和度1.7(A)の場合には20μm径、過飽和度2.4(B)の場合には50μm径の液滴20が形成され、過飽和度3.3(C)の場合には時間に伴って400μm径程度まで液滴径が増大した。なお、過飽和度1.01の場合には、1μm径の液滴20が形成された。
次に、過飽和度W1/W2を調節して液滴径を一定に保持して過酸化水素の発生速度を測定した結果を図4に示す。液滴径が1μmにおける過酸化水素の生成速度を1とすると、液滴径200μmでは10、液滴径400μmでは1となった。液滴径が1μm以下では、撥水処理されているため陰極電極4の内部に水が浸透しないため、過酸化水素の発生量が急激に減少する。
一方、液滴径400μm以上では、液滴20同士の融合が進み、陰極電極4の表面の一部が水で覆われてしまうため、酸素の供給速度が激減する。その結果、過酸化水素の発生量が減少するものと考えられる。したがって、過飽和度を1.01から3.3の範囲で制御して、陰極電極4の表面に1〜400μm径の液滴20を形成することが望ましいことが判明した。
また、陰極電極4上に形成された液滴20の状態を光学顕微鏡で観測し、画像解析によって陰極電極4の表面に存在する液滴とその周辺に存在する酸素ガスから、酸素と水の存在比率(重量比)を定量化することができる。1〜400μm径の液滴が形成された場合、酸素/水の重量比は、100/1〜5,000/1に相当することが判明した。このことから、過酸化水素の生成速度を増加させるためには、酸素/水の重量比を、100/1〜5,000/1となるように調整すればよいことが明らかになった。
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2における過酸化水素製造装置を示す概略断面図である。
図5に示すように、電解セル1と水供給管29は水平に設置され、電解セル1が底面をなす電解槽7には水10が貯えられている。水供給手段としては、酸素含有ガス供給装置17と酸素含有ガス供給装置17に接続されたガス供給管18と、ガス供給管18に接続された水槽12と水槽12に接続された孔30を有する水供給管29とから構成されるものであり、酸素含有ガス供給手段としては、水供給手段を兼用するものである。さらに、陰極電極4の下方には過酸化水素を含む液滴21を回収するための過酸化水素回収槽22が設置されている。図1と同一符号は、同一または相当部分を示すので、説明を省略する。
次に、実施の形態2における過酸化水素製造方法について説明する。酸素含有ガス供給装置17からガス供給管18を介して供給された酸素含有ガスにより水槽12の水14がバブリングされ、これにより水滴15が生成される。この水滴15は水供給管29を通して、孔30から陰極電極4に向かって吹出され、水平に設置された陰極電極4の表面全体に均一に液滴20として形成される。水槽12は加熱されており、陰極電極4の近傍の水蒸気濃度が飽和水蒸気濃度を超え、過飽和状態になる。また、酸素含有ガス供給装置17から供給される酸素含有ガスは、水滴15を形成させるだけでなく、酸素ガスとして陰極電極4に供給される。この液滴20に随伴される酸素ガスと高分子電解質膜2から供給される水素イオンとで、(2)式に示す反応により過酸化水素が生成される。生成された過酸化水素は陰極電極4の表面の液滴20に溶かし込まれ、過酸化水素を含む液滴21は滴下されて過酸化水素回収槽22により回収される。過酸化水素は過酸化水素回収槽22内に徐々に蓄積される。その他、電解セル1の材料構成、電解セル1の動作については、実施の形態1および実施例1と同様であるので、説明を省略する。
実施の形態2では、必要な酸素含有ガスに対して、電解セル1の陰極電極4の表面温度における飽和水蒸気濃度以上の水蒸気を含んでいればよく、電解セル1が加熱されていても有効である。
このように、実施の形態2の過酸化水素製造装置によると、実施の形態1と同様、酸素含有ガスと霧状の水滴を同時に陰極電極4に供給することにより、陰極電極4に必要な量の酸素を供給拡散させるとともに、高分子電解質膜2の全面において均一に高い水素イオン伝導性を得ることが可能になり、陰極電極における酸素と水素イオンの接触確率が高まり、過酸化水素の生成効率が上がるといった従来にない顕著な効果を得ることができる。さらに、実施の形態2では、電解セル1と水供給管29が水平に保持されているため、液滴が陰極電極4表面に均一に形成され、安定して高い過酸化水素の生成効率が得られるという効果が得られる。
実施の形態3.
図6は、本発明の実施の形態3における過酸化水素製造装置を示す概略断面図である。
図6に示すように、電解セル1とガス供給管18は水平に設置され、電解セル1が底面をなす電解槽7には水10が貯えられている。陰極電極への水供給手段としては、酸素含有ガス供給装置17と酸素含有ガス供給装置17に接続されたガス供給管18と陰極電極4の下方に設置された過酸化水素回収槽22から構成されるものであり、ガス供給管18は水平に配置されており、酸素含有ガスを吹出す孔19を有し、過酸化水素回収槽22に貯えられた水23に浸漬されている。また、酸素含有ガス供給手段としては、水供給手段を兼用するものである。図1および図5と同一符号は、同一または相当部分を示すので、説明を省略する。
次に、実施の形態3における過酸化水素製造方法について説明する。酸素含有ガス供給装置17から供給された酸素含有ガスを、ガス供給管18の孔19から吹出させ、過酸化水素回収槽22の水23をバブリングさせることにより、酸素含有ガスの気泡31を発生させ、酸素ガスを陰極電極に供給するものである。水供給手段は、この気泡31によって生成された酸素ガスを含有する水滴32により陰極電極4表面で液滴20を形成させて供給するものである。過酸化水素回収槽22は加熱されており、陰極電極4の近傍の水蒸気濃度が飽和水蒸気濃度を超え、過飽和状態になる。この液滴20と酸素ガスと高分子電解質膜2から供給される水素イオンとで、(2)式に示す反応により過酸化水素が生成される。生成された過酸化水素は陰極電極4の表面の液滴20に溶かし込まれ、過酸化水素を含む液滴21は滴下されて過酸化水素回収槽22により回収される。過酸化水素は過酸化水素回収槽22内に徐々に蓄積される。ここで、水23の水面と陰極電極4とは、所定の距離dだけ離されている。その他、電解セル1の材料構成、電解セル1の動作については、実施の形態1および実施例1と同様であるので、説明を省略する。
ガス供給管18は過酸化水素を分解しない材料のパイプを使用し、水面に向けて複数の孔19を開けた構造をしている。例えば、電解セル1のサイズが直径50mm程度である場合には、ガス供給管18の内径は0.5〜10mm程度の望ましいが、過酸化水素回収槽22に貯めた水量に依存して決められる。孔19は、0.1〜2mm径程度で陰極電極4の径に亙って複数個設ける。ガス供給管18によって形成される気泡31の径は孔19の径に依存して大きくなるが、0.5mm以下であっても形成される気泡の径は0.5mm以上となる。これは酸素含有ガスがガス供給管18を離れるには、気泡31の浮力が水の表面張力を超える必要があり、孔19の近傍に0.5mm以下の微細気泡が形成されても浮力が小さいためにガス供給管18から離れることができないためである。
ガス供給管18の材料としては、具体的にはアクリル、塩化ビニル、ガラス、TiO、酸化アルミ、カーボンなどの親水性を有するものを用いると、気泡31が孔19から離れやすくなるため微細な気泡を形成できる。具体的にはこれにより0.1mm径程度まで気泡を微細化できる。微細な気泡を形成すれば、陰極電極4表面により均一に酸素と水を同時に供給できるので、電解セル1のより安定した運転を実現できる。また、過酸化水素回収槽22およびガス供給管18の材料としては、上述の他、過酸化水素の分解性能が低いものがよく、樹脂材料全般、チタン、カーボン、ガラス、金などを用いることができる。
孔19の間隔は、孔19の直径程度かその1〜5倍程度で均一にするのがよい。また、陰極電極4の中心付近に到達した水滴32は徐々に融合しながら周辺へ移動する。したがって、陰極電極4の全面に渡り同程度の酸素含有ガスを導入するには、中心よりも周辺の密度を小さく配置することがより望ましい。具体的には、陰極電極4の中心からの距離をrとすると、孔19を形成する間隔は中心から周辺に向かってr−1に比例するように減少させるのがよい。また、孔19を等間隔で形成する場合には、陰極電極4の中心からの距離をrとすると中心から周辺に向かって孔19の穴径をr−0.5に比例するように制御するのが望ましい。
必要とする過酸化水素の生成量に応じて過酸化水素回収槽22の水量、水温、酸素含有ガス流量及び陰極電極4と水面までの距離dを決める。
このように、実施の形態3の過酸化水素製造装置によると、水中に配置された酸素含有ガス供給管からバブリングにより気泡を形成し、このとき発生する酸素含有ガスを内包した水滴とともに陰極電極に酸素を供給することにより、陰極電極に必要な量の酸素を供給拡散させるとともに、高分子電解質膜の全面において均一に高い水素イオン伝導性を得ることが可能になり、陰極電極における酸素と水素イオンの接触確率が高まり、過酸化水素の生成効率が上がるといった従来にない顕著な効果を得ることができる。
〔実施例2〕
図6に示す実施の形態3の過酸化水素製造装置を用いた実施例2による過酸化水素生成特性の測定結果を示す。
実施例1と同様、電解セル1を構成する材料としては、陽極電極3の基材は、チタン製エキスパンドメタル(1インチ平方あたりのメッシュ数80、線径0.1mm)、酸化触媒は酸化イリジウム(担持密度0.6mg/cm2、無電解めっきで形成)を用いた。陰極電極4は、炭素繊維(繊維径10μm、空隙率70%)を基材としてその上に、炭素粉末と高分子電解質(パーフルオロスルホン酸)粉末を分散した溶液を重量比で1:3の割合で混合し、50〜400μm厚で塗布した後、50℃、真空下で乾燥して還元触媒層4bを形成した。高分子電解質膜2はパーフルオロスルホン酸である。
生成条件としては、印加電圧が2.0〜2.2V、温度が25℃、導入する酸素ガス流量が10〜50cc/min、陽極電極3と陰極電極4の面積が19cm、陽極電極3には空気中から冷却によって水分を回収する状況を想定して、常温のイオン交換水を電解槽7中に50cc入れた。また、過酸化水素回収槽22に100ccの常温のイオン交換水を入れた。陰極電極4で発生した過酸化水素は過酸化水素回収槽22内に徐々に蓄積される。
陰極電極4と過酸化水素回収槽22の水23の水面までの距離をd(以後、ギャップ長と呼ぶ)と定義して、電解セル1対して上下に平行移動させることでdを調節した。ギャップ長dが正の場合には酸素含有ガスの供給を止めた状態で電解セル1の陰極電極4はガス中に存在し、d=0で陰極電極4は水面と一致する。一方、ギャップ長dが負の場合には陰極電極4は完全に水中に浸かった状態に対応する。
図7に実施例2での過酸化水素の生成速度(単位時間あたりの発生量)を測定した結果を実線で示す。ギャップ長dが0の場合の発生速度を1として、その相対値を示している。ギャップ長dが0〜20mmにおいて特異的に生成速度が速い領域があり、最大で10になることがわかった。また、ギャップ長dが20mm以上となると急激に発生速度が減少し、0.15程度に漸近した。なお、酸素含有ガスの供給を止めると過酸化水素の生成速度は、d=10mmで0.1、d=30mmで0となる。
次に、陰極電極4近傍の酸素と水の存在比率(重量比)を調べる目的で、水面と平行に可視のレーザー光を照射し、発色した水面近傍の水滴の状態を水面の上方から高速度カメラで毎秒1,000コマの速度で撮影した。画像を解析して、水面からの距離に対する水滴の密度、サイズの分布を測定した。水滴は酸素含有ガスを内包しているので、水面からの距離における画像解析から水と酸素の重量比率が評価できる。従って、この手法により水滴が存在する水面からの距離d(ギャップ長)に対する酸素と水の比率が定量化できる。
上述の手法を用いて、酸素と水の重量比について評価した結果を説明する。ギャップ長d<0の場合には陰極電極4の全面が水で覆われるが、酸素含有ガスを内包した水滴32が陰極電極4の表面に衝突するので、酸素/水の重量比率は1/80,000であり、ある程度の過酸化水素発生量は得られる。ギャップ長dが0〜20mmの範囲において、ギャップ長dに対する酸素と水の重量比率を測定すると、d=0〜20mmの範囲では酸素/水の重量比率は100/1〜1/5,000の範囲にあることがわかった。陰極電極4における酸素と水素イオンの接触確率が高まった結果、過酸化水素生成速度が急激に向上したと考えられる。一方、ギャップ長d>20mmでは酸素/水の重量比率は500/1〜100/1となり、酸素のみが供給されて水がほとんど届かないため、d>20mmのイオン伝導膜の水素イオン伝導性が著しく低下する。その結果、過酸化水素の生成速度は激減する。必要とする過酸化水素の生成量に応じて過酸化水素回収槽22の水量、水温、酸素含有ガス流量及びギャップ長dを決めればよい。
〔実施例3〕
実施の形態3の過酸化水素製造装置を用いて、水23に添加剤を混合した実施例3による過酸化水素の生成速度の測定結果について述べる。
過酸化水素生成条件としては、印加電圧が2.0〜2.2V、温度が25℃、陽極電極3と陰極電極4の面積が19cmである。電解セル1を構成する材料は、実施例1と同じであるので説明を省略する。添加剤として酢酸を100mg/L添加した場合(A)と添加剤を添加しない実施例2の場合(B)における過酸化水素の生成速度を比較した結果を図8に示す。過酸化水素の生成速度のギャップ長dに対する依存性は実施例2と同様の傾向を示すが、過酸化水素の生成速度は2〜3倍に増大した。これは、添加剤により酸素含有ガスを内包した水滴同士の融合が抑制された結果、より細かい水滴を高密度に形成できたためと考えられる。
陰極電極4側に供給する水23に混合する添加剤の成分としては、酢酸や、カルボキシル基以外の親水性の残基(−OH、−NH(第1アミン)、−NH−(第2アミン)、−N<(第3アミン)、−C(O)NH−(ペプチド結合)、−C(O)NH(第1アミド)、(−C(O))2NH(第2アミド)、(−C(O))N(第3アミド)、−O−、−SOH、−POH、−F、−NO、−S(O)−、−CNなど)のいずれかを持つカルボン酸が使用可能である。また、水に対し、残基(カルボキシル基)の濃度が0.001〜1mol/Lとなるように用いると好ましく、0.01〜0.2mol/Lとなるように用いるとさらに好ましい。残基の濃度が0.001mol/Lよりも低い場合、発生する酸素含有ガスを内包した水滴32の径が大きくなってしまう傾向がある。残基の濃度が1mol/Lよりも高い場合には、浮上した気泡31がなかなか消滅しない傾向がある。なお、ここで残基の濃度とは、分子の濃度に1分子中の残基(この例ではカルボキシル基)の数を乗じた値を意味する。また、この水のpHは、4以下であると好ましく、3以下であるとさらに好ましい。水のpHが4よりも大きい場合、発生する水滴32の径が大きくなってしまう傾向がある。一方、無機化合物を添加する場合には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどの強電離性の塩を用いるのがよい。塩濃度は0.1重量%以上にするのが望ましい。
水滴の融合を防止する添加剤は水滴表面に選択的に吸着する。添加剤が水に溶解すると、添加剤分子内に微小な電荷が発生するため、水滴の表面に電気二重層が形成される。すると水滴全体が同様に電荷を帯びたように振舞うので、水滴同士は斥力によって電気的に反発して融合が防止されるのである。つまり、添加剤は水滴表面に吸着し、電気二重層を形成するという効果がある。
添加剤により陰極電極4に接触する水滴32をより細かく、高密度にすると、陰極電極4に十分な量の酸素を供給拡散させるとともに、前記イオン伝導膜の全面においてより均一に水素イオン伝導性を得ることが可能になる。その結果、陰極電極4における酸素と水素イオンの接触確率が高まり、過酸化水素の生成効率が上がるといった従来にはない顕著な効果を得ることができる。
実施の形態4.
図9は、本発明の実施の形態4における過酸化水素製造装置を示す概略断面図である。
図9に示すように、実施の形態4は実施の形態3において、電解槽7を傾斜させ電解セル1を過酸化水素回収槽22の水23の水面に対して、角度θで設置したものである。ガス供給管18の孔19は陰極電極4の水面に近い側に形成されている。図1および図6と同一符号は、同一または相当部分を示すので、説明を省略する。
ガス供給管18の孔19から吹出された酸素含有ガスにより生成された酸素含有ガスを内包した水滴32は陰極電極4の表面に到達するとお互いに融合し、液滴20として滞留する。陰極電極4の全面に渡り同程度の酸素含有ガスを導入するには、陰極電極4の中心からの距離をrとすると、孔19を形成する間隔は中心から周辺に向かってr−1に比例するように減少させるのがよい。しかし、水面に対する陰極電極4の水平度や水滴32の密度、速度成分が規定されていないと、陰極電極4の中で水滴32の融合に伴って酸素含有ガスのよどみが発生する。
傾斜させた陰極電極4の水面に近い側のみから酸素含有ガスを含む水滴を供給することで、陰極電極4に到達した水滴を一定方向に流すことができる。その結果、水滴が陰極電極4の表面で滞留しないため、水滴が融合し大きな液滴となることを防止することができる。
過酸化水素を生成する電解セル1の動作については、実施の形態1から3と同じであるので説明を省略する。
このように、実施の形態4の過酸化水素製造装置によると、酸素含有ガスと水を同時にかつよどみなく均一に陰極電極に供給することにより陰極電極に十分な量の酸素を供給拡散させるとともに、前記イオン伝導膜の全面において均一に高い水素イオン伝導性を得ることが可能になり、陰極電極における酸素と水素イオンの接触確率が高まり、過酸化水素の生成効率が上がるといった従来にはない顕著な効果を得ることができる。
〔実施例4〕
実施の形態4の過酸化水素製造装置を用いて、電解セル1を過酸化水素回収槽22の水23の水面に対して傾斜させた影響について述べる。
過酸化水素の生成条件としては、印加電圧が2.0〜2.2V、温度が25℃、陽極電極3と陰極電極4の面積が19cmである。電解セル1を構成する材料は、実施例1と同じであるので説明を省略する。
陰極電極4の水面に最も近い箇所(点Aとする)と最も遠い場所(点Bとする)として、点Aの水面からの距離をL1[mm]とし、陰極電極4の傾斜方向の長さをL2[mm]と定義する。L2=40[mm]、L1=2[mm]の条件において、角度θ=0度の場合の過酸化水素の生成速度を1とすると、θ=2度では2.0、θ=5度では1.5、θ=10度では0.7となった。また、θ=20度では0.5、θ=30度では0.3となった。
したがって、電解セル1の水面に対する傾斜角度をθ[度]とすると、θの範囲は0.1〜20度程度が望ましい。過酸化水素の生成量を更に向上するためには、陰極電極4の水面に最も近い箇所(点Aとする)と最も遠い場所(点Bとする)について、水面からの距離を0〜20mmの範囲内に設置することが望ましい。例えば、点Aの水面からの距離をL1[mm]とし、陰極電極4の傾斜方向の長さをL2[mm]とすると、角度θは、以下の式(5)のように決定される。
L1<L2×tanθ+L1<20 (5)
このように、実施例4によると、酸素含有ガスと水を同時にかつよどみなく均一に陰極電極に供給することにより陰極電極に十分な量の酸素を供給拡散させるとともに、前記イオン伝導膜の全面において均一に高い水素イオン伝導性を得ることが可能になり、陰極電極における酸素と水素イオンの接触確率が高まり、過酸化水素の生成効率が上がるといった従来にはない顕著な効果を得ることができる。また、水面から陰極電極4までの距離L1を0〜20mmに制御することにより、酸素/水の重量比率は100/1〜1/5,000の範囲に制御することができる。
実施の形態5.
図10は、本発明の実施の形態5における過酸化水素製造装置を示す概略断面図である。図11は、実施の形態5の過酸化水素製造装置のヘッダ部の構成を示す図である。図11において、(a)はヘッダ部の上面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図、(d)は(a)のC−C断面図、(e)はヘッダ部側面図、(f)は(e)のD−D断面図、(g)は(b)のE−E断面図である。
実施の形態5では、実施の形態3におけるガス供給管18の代わりにヘッダ33を用いて陰極電極4の表面に液滴20を形成するものである。ヘッダ33にはガス供給口37とガス吸引口38があり、図11(a)から(d)に示すように交互に直線的に並んでいる。ヘッダ33の内部には(g)、(f)の示すようにガス供給口37とガス吸引口38につながる蛇行した流路39、40がそれぞれ形成されている。酸素含有ガス供給装置17から供給される酸素含有ガスがガス供給管34を通してガス供給口37に導入され、ガス供給口37から酸素含有ガスの気泡31が放出される。水面から出た気泡31は酸素含有ガスを内包する水滴32として陰極電極4に接触し陰極電極4表面で液滴20を形成する。一方、ヘッダ33には吸引手段としてポンプ36が接続されていて、ガス吸引口38を介して陰極電極4の表面の余分な気泡31を水とともに吸引し、除去する。除去された水と気泡の酸素含有ガスは水槽23に戻り管41を通して返される。陰極電極には酸素と共に水を供給する必要があるのでヘッダ33は水面下に存在する必要があり、酸素/水の重量比率を100/1〜1/1,000の範囲にするには、ヘッダ33の上面と水面との距離hを10mm〜0.1mmに設定すればよい。その他、装置の構成、電解セルの材料構成、電解セルの動作方法などは実施の形態1と同じであるので省略する。
陰極電極4の表面に酸素含有ガスを内包する水滴32が到達するとお互いに融合し、滞留する。実施の形態5のヘッダ33を用いることで、水滴32を陰極電極4に十分接触させると同時に、過剰な気泡31が融合する前に吸引し除去することができる。その結果、過剰な水滴が陰極電極4の表面で滞留しないため、酸素含有ガスと水を同時に、かつよどみなく均一に陰極電極に供給することができ、効率良く過酸化水素を生成することができる。なお、ヘッダ33の形状としては、図11で示すものの他、ガス供給口37が1個もしくは複数のガス吸引口38に囲まれた構造であればヘッダとして用いることができる。
このように、実施の形態5の過酸化水素製造装置によると、過剰な水滴や気泡を除去することにより、酸素含有ガスと水を同時に、かつよどみなく均一に陰極電極に供給することにより陰極電極に十分な量の酸素を供給拡散させるとともに、前記イオン伝導膜の全面において均一に高い水素イオン伝導性を得ることが可能になり、陰極における酸素と水素イオンの接触確率が高まり、過酸化水素の生成効率が上がるといった従来にはない顕著な効果を得ることができる。
〔実施例5〕
実施の形態5の過酸化水素製造装置を用いて、実施例5によるヘッダ33を用いて余分な気泡を吸引し、除去する効果について述べる。
過酸化水素の生成条件としては、印加電圧が2.0〜2.2V、温度が25℃、陽極電極3と陰極電極4の面積が19cmである。この実施例5では、酸素含有ガスとして100%の濃度の酸素ガスを用い、その流量は50cc/minに設定した。また、水面とヘッダとの距離hは、1mmと設定した。電解セル1を構成する材料は、実施例1と同様であるので説明を省略する。
ポンプ36を作動させない場合の最大の過酸化水素の生成速度を1とすると、ポンプ36のガス吸引流量が10cc/minでの生成速度が1.2、20cc/minでは1.5、50cc/minでは2.0、75cc/minでは1.5、100cc/minでは1.0であった。このことから、余分な気泡を吸引し、除去することにより過酸化水素の生成効率を向上させることができるが明らかになった。
酸素ガスの流量が50cc/min以外の場合にも詳細に検討した結果、酸素含有ガス供給装置の供給ガス流量をQ1とポンプ36の吸引流量をQ2との関係は、以下の式(6)
0.1×Q1<Q2<2×Q1 (6)
を満たせばよい。
ここで、水面とヘッダとの距離hが10mm〜0.1mmであれば、酸素/水の重量比率を100/1〜1/1,000の範囲に設定することができる。ただし、酸素の濃度が100%ではない酸素含有ガスを用いる場合は、酸素量に換算して考えればよい。
実施の形態6.
図12は、本発明の実施の形態6における過酸化水素製造装置を示す概略断面図である。
図12に示すように、電解セル1は過酸化水素回収槽22の上に設置され、過酸化水素回収槽22の水23の水面と陰極電極4とは間隔が空けられている。酸素含有ガス供給手段としては、酸素含有ガス供給装置17と酸素含有ガス供給装置に接続されたガス供給管18で構成され、ガス供給管18により水23の水面に酸素含有ガスを放出させ、陰極電極4に供給するものである。水供給手段としては、過酸化水素回収槽22に設置された搖動体42により構成されるもので、搖動体42を左右に移動させることにより、水を陰極電極4に供給するものである。図1と同一符号は、同一または相当部分を示すので、説明を省略する。
実施の形態6では、水の供給は、過酸化水素回収槽22の水23を揺動装置である搖動体42により水面に波を発生させ、波頭43を陰極電極4表面に断続的に接触させることにより行なう。酸素含有ガスの供給は、酸素含有ガス供給装置17から発生した酸素含有ガスを、ガス供給管18から陰極電極4の周辺に導入され、陰極電極4から波頭43が離れたときに陰極電極4に供給される。その他、装置の構成、電解セルの材料構成、電解セルの動作方法などは実施の形態1と同じであるので省略する。
揺動手段としては、上述のように水中に板状の搖動体を垂直に設置して、その搖動体を左右に移動させるもの、水面に板状の搖動体を平行に設置してその搖動体で水面を叩くもの、超音波素子を用いて水面を振動させるものなどが考えられる。揺動手段で水を陰極電極4に供給するとともに酸素ガス含有ガス供給装置17から酸素含有ガスを陰極電極4に供給することにより、必要な水と酸素を陰極電極4に供給し、過酸化水素を生成させることができる。
このように、実施の形態6の過酸化水素製造装置によると、搖動手段と酸素含有ガス供給装置により、酸素含有ガスと水とを同時に陰極電極に供給することにより陰極電極に十分な量の酸素を供給拡散させるとともに、前記イオン伝導膜の全面において均一に高い水素イオン伝導性を得ることが可能になり、陰極電極における酸素と水素イオンの接触確率が高まり、過酸化水素の生成効率が上がるといった従来にはない顕著な効果を得ることができる。
〔実施例6〕
実施の形態6の過酸化水素製造装置を用いて、実施例6によるいくつかの搖動手段を用いた過酸化水素の生成特性について述べる。
過酸化水素の生成条件としては、印加電圧が2.0〜2.2V、温度が25℃、陽極電極3と陰極電極4の面積が19cmである。電解セル1を構成する材料は、実施例1と同じであるので説明を省略する。
陰極電極4と水面までの距離を5mmに設定して、揺動手段を停止した状態での最大の過酸化水素の生成速度を1とすると、水中に垂直に設置した板状の揺動体42を左右に0.1〜10Hz程度の周期で移動させた場合には、過酸化水素の生成速度は、5〜50の範囲で増加した。水面に平行に設置した板状の搖動体で0.1〜10Hzの周期で叩いた場合には、過酸化水素の生成速度は、5〜40の範囲で増加した。また、100〜10MHzの範囲の超音波素子を用いて水面を振動させた場合には、過酸化水素の生成速度は、2〜100の範囲で増加した。さらに、陰極電極4から水面までの距離を1〜50mmの範囲で変化させても、揺動体42による過酸化水素の生成速度を増大させる効果(停止の場合と比較して)があることが確認された。
これにより、揺動手段を用いると、水面から陰極電極4までの距離が5mmの場合においては、酸素/水の重量比率を100/1〜1/3,000の範囲に設定できることが確認された。
図13は、本発明の実施の形態7における過酸化水素製造装置を示す概略断面図である。
図13に示すように、電解セル1は過酸化水素回収槽22の上に設置され、過酸化水素回収槽22の水23の水面と陰極電極4とは間隔が空けられている。酸素含有ガス供給手段としては、酸素含有ガス供給装置17と酸素含有ガス供給装置に接続されたガス供給管18で構成され、ガス供給管18により水23の水面に酸素含有ガスを放出させ、陰極電極4に供給するものである。水供給手段としては、電解槽7に設置された搖動手段である回転モータ44により構成されるもので、電解槽7を回転させることにより、陰極電極4に水を供給するものである。図1と同一符号は、同一または相当部分を示すので、説明を省略する。
実施の形態7では、水の供給は、過酸化水素回収槽22の水23を搖動手段である回転モータ44により電解槽7を回転させ、それにより水面に発生された波の波頭43を陰極電極4表面に断続的に接触させることにより行なう。酸素含有ガスの供給は、酸素含有ガス供給装置17から発生した酸素含有ガスを、ガス供給管18から陰極電極4の周辺に導入し、陰極電極4から波頭43が離れたときに陰極電極4に供給する。その他、装置の構成、電解セルの材料構成、電解セルの動作方法などは実施の形態1と同じであるので省略する。
このように、実施の形態7の過酸化水素製造装置によると、電解槽回転手段と酸素含有ガス供給装置により、酸素含有ガスと水とを同時に陰極電極に供給することにより陰極電極に十分な量の酸素を供給拡散させるとともに、前記イオン伝導膜の全面において均一に高い水素イオン伝導性を得ることが可能になり、陰極電極における酸素と水素イオンの接触確率が高まり、過酸化水素の生成効率が上がるといった従来にはない顕著な効果を得ることができる。
なお、高分子電解質膜2として、本発明の実施の形態の説明では、パーフルオロスルホン酸膜を使用する場合について述べたが、気体を透過せず、電気絶縁性があり、水分および水素イオンのみを伝導する材料であればよく、他にポリベンゾイミダゾール系イオン交換膜、ポリベンズオキサゾール系イオン交換膜、ポリアリーレンエーテル系イオン交換膜なども用いることができる。さらに、高分子電解質膜2中に含まれる水の分子数の約2〜6倍のリン酸分子を添加すると水素イオン伝導性が高まり、過酸化水素の生成効率が改善される。
また、陰極電極材料としては、実施の形態で述べた炭素繊維以外にも、基材として、カーボンナノファイバ(太さ10〜100nm)、黒鉛または層間にアルカリ金属を挿入した黒鉛、単層または多層のカーボンナノチューブ(太さ10nm以下)、繊維状活性炭または粒子状活性炭を用いてもよい。
また、電解槽7、固定フランジ9の材質は絶縁材料以外でもよく、機械的強度を高めるためにカーボン、ステンレス鋼(SUS316、SUS304など)を用いてもよい。また、電解槽7、固定フランジ9自体を陽極端子5、陰極端子6の一体の部材として通電させてもよい。また、腐食を抑制するために、電解槽7、固定フランジ9の表面に0.01〜4μm程度の厚みの白金(Pt)めっき、もしくはチタン(Ti)めっきを行ってもよい。
実施の形態8.
図14は、本発明の実施の形態4における過酸化水素製造装置を冷暖房機能を有する空調機に設置した例を示す概略断面図である。空気中の水蒸気は熱交換器45の表面において冷却され、熱交換器45の表面で凝縮され凝縮水46となる(凝縮水のことを以下「ドレン水」と呼ぶ)。熱交換器45の表面は親水化処理されているため、ある一定以上の凝縮水46が付着すると自然落下を始めて、ドレン水47として、ドレンパン48に回収される。次に、ドレン水47は水供給手段49によって一定速度で過酸化水素製造装置50の陰極電極に供給され、さらに、陰極電極には送風ファン(図示せず)によって送出された空気が供給される。生成された過酸化水素52は過酸化水素供給手段51によって熱交換器45の表面に散布され、熱交換器45の表面に発生、付着するカビや細菌などを除去する。
水供給手段49、過酸化水素供給手段51としては、液送ポンプなどの動力や、繊維状の吸水性シートの毛管現象、超音波噴霧などを利用することができる。吸水性のシートとしては、パルプとポリエチレン繊維を編んだシートやセラミック繊維、ガラス繊維からなるシートを用いることができる。特に、過酸化水素52を熱交換器45へ供給する場合には、過酸化水素との反応性の低い、セラミック繊維、ガラス繊維を用いるのが好ましい。なお、過酸化水素製造装置に供給する水として、空気中の水蒸気を凝縮した凝縮水を利用することにより、外部から水を供給する必要がないという利点があるが、必ずしもドレン水を使用せず、新たに供給される水を使用してもよい。
このように、本発明の過酸化水素製造装置を設置した空調機によると、過酸化水素製造装置により製造された過酸化水素で熱交換器を洗浄することで、熱交換器の表面に発生するカビや細菌の発生を抑制することができる効果がある。
〔実施例7〕
図15は、本発明の実施の形態8における過酸化水素製造装置を設置した空調機による熱交換器に付着させた菌体に対する除菌効果を実施例7の測定結果で示す。以下のような設定条件で試験を実施した。過酸化水素の生成条件としては、実施の形態2において、電流値0.5〜5A、温度25℃、酸素含有ガスとして供給する空気流量が20〜100cc/min、陽極電極3と陰極電極4の面積が19cm2、陰極電極4と水面までのギャップ長dは5mmである。また、電解セル1を構成する材料は実施例1と同様のものを用いた。
空気中の水蒸気は熱交換器45の表面において冷却され、熱交換器45の表面で凝縮されて凝縮水46なる。熱交換器45の表面は親水化処理されているため、単位面積あたり0.1mg/cm以上の凝縮水46が付着すると自然落下を始めて、ドレンパン48に回収される。次に、ドレンパン48のドレン水47は水供給手段49によって一定速度で過酸化水素製造装置50の陰極電極に供給され、さらに、陰極電極には送風ファン(図示せず)によって送出された空気が供給される。生成された過酸化水素52は過酸化水素供給手段51によって熱交換器45の表面に散布される。予め熱交換器45の表面には大腸菌を1cmあたり900個生息させておき、過酸化水素製造装置50により生成された過酸化水素溶液を噴霧した場合の大腸菌の菌体数を測定した。水供給手段49としては、厚さが0.25mmから3mm、線径0.1μmから100μmのガラス繊維を主成分とする無機酸化物からなる幅40mm、長さ30cmの複合ペーパを用いた。過酸化水素供給手段51には、超音波噴霧装置を用いた。噴霧速度としては250cc/hr、噴霧粒径は3μmに設定した。
次に、熱交換器45に生成された過酸化水素52を散布した場合における熱交換器表面の菌体数の変化について詳細に述べる。図15において、電流値を0.5Aに設定した場合の前記菌体数の時間変化を実線Aで、電流値を5Aに設定した場合の菌体数の時間変化を一転鎖線Bで示す。また、比較のために本実施例において電源をOFFして、電流値を0Aに設定した場合の菌体の時間変化を比較例として破線Cで示す。AおよびBでは電源ONとともに時間に伴って大腸菌の菌体数が減少し、減少速度は電流値に比例して増加した。これは、電流値に比例して過酸化水素濃度が増加したためと考えられる。AおよびBでの過酸化水素の生成量はそれぞれ120ppm、800ppmであった。これに対して、比較例では過酸化水素が生成されないので、菌体数はほぼ800〜900個/cmと一定であった。
このように、本発明の過酸化水素製造装置により製造された過酸化水素で熱交換器を洗浄することにより空調機内部にある熱交換器の表面に発生するカビや細菌の発生を抑制できる効果があることが確認できた。
実施の形態9.
図16は、本発明の実施の形態9における過酸化水素製造装置を業務用に使用される空気清浄機に設置した例を示す概略断面図である。図16に示すように、空気を循環させる送風機53、温湿度調整を行なう冷却コイル54及び加熱コイル55及び過酸化水素を空気と接触させる水膜を形成する除菌エレメント56が装置内部に設置されて空気清浄機62が構成されている。
また、除菌エレメント56に過酸化水素を供給するための手段として過酸化水素製造装置50が設けられ、生成された過酸化水素がポンプ57、流量調整弁58を介して、散水ヘッダ59より除菌エレメント56に供給されるように構成されている。そして、除菌エレメント56設置側(図16中、左側)から、除菌対象となる空気60が空気清浄機62内に吸引されるように構成されている。また、水膜を形成する除菌エレメント56の中央部にはパッドが配設され、その上面には分散マット(図示せず)が取付けられている。そして、この分散マットに流量調整弁58に接続された散水ヘッダ59を介して過酸化水素が供給されるように構成されている。さらに、パッドの下部にはドレンパン48が配設され、パッドを流下した過酸化水素を含むドレン水47を装置外部に排出できるように構成されている。
過酸化水素製造装置50で生成された過酸化水素はポンプ57で吸い上げられ、流量調節弁58を通して、散水ヘッダ59により除菌エレメント56の分散マットに散布される。一方、空気60は送風機53により、空気清浄機62本体に取り込まれ、除菌エレメント56でカビや細菌が除去され、冷却コイル54で冷やされ、除湿された後、加熱コイル55で暖められ、清浄化された空気が、空気清浄機62から取り出される。
なお、水膜を形成する除菌エレメント56のパッドとして、保水性の高い吸水性素材を使用すると、過酸化水素の滴下量を低減することができるだけでなく、除菌対象となる空気との接触時間を長くすることができるので、除菌性能を向上させることができる。このパッドの材質としては、例えば、グラスファイバを骨材として焼成した複合セラミックスや、多孔質セラミックを用いることができる。また、ポリエステル、ポリエチレン等の化学繊維を用いた吸水性素材を用いてもよい。
また、過酸化水素製造装置に供給する水として、ドレン水を使用してもよく、外部から供給する水を削減することができる。
このように、本発明による過酸化水素製造装置を業務用に使用される空気清浄機に設置することで、効率よく過酸化水素を生成でき、除菌エレメントを過酸化水素により空気中に存在するカビや細菌を除去できる効果がある。
実施の形態10.
図17は、本発明の実施の形態10における過酸化水素製造装置を加湿器に設置した例を示す概略断面図である。図17に示すように加湿器は、空気を加湿するための水を貯めておく貯水タンク63、加湿素子64から水を回収するドレンパン48、ドレンパン48から貯水タンク63にドレン水47を送る配管67、貯水タンク63と加湿素子64を結ぶ配管68などから構成されている。
加湿用の水は、貯水タンク63から水供給手段49によって一定速度で過酸化水素製造装置50の陰極電極に水が供給され、さらに、陰極電極には送風ファン(図示せず)によって送出された空気が供給される。過酸化水素製造装置50で生成された過酸化水素65は過酸化水素供給手段51によって、加湿素子64に散布される。過酸化水素65は加湿素子64の表面を洗浄し、表面に発生するカビや細菌などを除去する。洗浄に使用された過酸化水素66はドレンパン48で回収される。ドレンパン48のドレン水47は配管67を通して貯水タンク63に送られる。配管68は、貯水タンク63から加湿素子64に水を供給するためのものである。
水供給手段49、過酸化水素供給手段51としては、液送ポンプなどの動力や、繊維状の吸水性シートの毛管現象、超音波噴霧などを利用することができる。吸水性のシートとしては、パルプとポリエチレン繊維を編んだシートやセラミック繊維、ガラス繊維からなるシートを用いることができる。特に、過酸化水素65を加湿素子64へ送出する場合には、過酸化水素との反応性の低い、セラミック繊維、ガラス繊維を用いるのがよい。なお、過酸化水素製造装置に供給する水として、加湿用の水の一部を利用することにより、外部から水を供給する必要がないという利点があるが、必ずしも加湿用の水を使用せず、別途新たに供給される水を使用してもよい。
このように、加湿器で水分が蓄積しやすい部分、特に加湿素子、ドレンパンなどはカビが発生しやすいという問題があるが、加湿用の水の一部を利用して本発明による過酸化水素製造装置により過酸化水素を生成させて加湿素子を洗浄することにより、カビや細菌の発生を抑制する効果がある。また、一度、過酸化水素を供給した場所が乾燥した場合でも、過酸化水素は水と比較して蒸気圧が1/10程度であるので蒸発しにくいため、過酸化水素が濃縮されてカビや細菌の除菌効果は飛躍的に向上する。
実施の形態1における過酸化水素製造装置を示す概略断面図である。 実施の形態1における過酸化水素製造装置の電解セル部の構成示す概略断面図である。 実施の形態1における過酸化水素製造装置を用いた実施例1による経過時間と液滴平均径の測定結果を示す図である。 実施の形態1における過酸化水素製造装置を用いた実施例1による液滴径と過酸化水素の生成速度の測定結果を示す図である。 実施の形態2における過酸化水素製造装置を示す概略断面図である。 実施の形態3における過酸化水素製造装置を示す概略断面図である。 実施の形態3における過酸化水素製造装置を用いた実施例2によるギャップ長に対する過酸化水素の生成速度の測定結果を示す図である。 実施の形態3における過酸化水素製造装置を用いた実施例3による添加剤の有無に対する過酸化水素の生成速度の測定結果を示す図である。 実施の形態4における過酸化水素製造装置を示す概略断面図である。 実施の形態5における過酸化水素製造装置を示す概略断面図である。 実施の形態5における過酸化水素製造装置のヘッダ部を示す概略図である。 実施の形態6における過酸化水素製造装置を示す概略断面図である。 実施の形態7における過酸化水素製造装置を示す概略断面図である。 実施の形態8における過酸化水素製造装置を空調機に設置した例を示す概略断面図である。 実施の形態8における過酸化水素製造装置を設置した空調機の熱交換器に付着させた菌体に対する除菌効果の実施例7による測定結果を示す図である。 実施の形態9における過酸化水素製造装置を業務用に使用される空気清浄機に設置した例を示す概略断面図である。 実施の形態10における過酸化水素製造装置を加湿器に設置した例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 電解セル
2 高分子電解質膜
3 陽極電極
4 陰極電極
7 電解槽
13 超音波発生器
15 水供給管
17 酸素含有ガス供給装置
18、34 ガス供給管
22 過酸化水素回収槽
24 電源
33 ヘッダ
35 ガス吸引管
36 ポンプ
42 搖動体
44 回転モータ
45 熱交換器
50 過酸化水素製造装置
56 除菌エレメント
64 加湿素子

Claims (9)

  1. 水素イオン伝導性を有する電解質膜と前記電解質膜の第1の面に接して配設された陽極電極と前記電解質膜の第2の面に接して配設された陰極電極とにより構成される電解セルと、
    前記陽極電極面が槽の内壁の一部を構成し、水を貯える電解槽と、
    前記陽極電極と前記陰極電極とに直流電圧を印加する電源と、
    超音波発生器により霧状の水滴を発生させて、前記陰極電極の前記電解質膜側の面に対向する表面とガス吹出し孔との間に水を供給する水供給手段と、
    前記陰極電極の前記表面に前記ガス吹出し孔から酸素含有ガスを吹き付けて、前記陰極電極の前記表面と前記ガス吹出し孔との間に供給された前記霧状の水滴を前記陰極電極の前記表面に液滴として付着させる酸素含有ガス供給手段と、
    前記電解セルにて生成された過酸化水素を回収する過酸化水素回収槽と、
    を備えたことを特徴とする過酸化水素製造装置。
  2. 陰極電極は撥水化処理された炭素繊維基材と、前記炭素繊維基材の電解質膜側の面に形成された還元触媒層と、
    を含む請求項1に記載の過酸化水素製造装置。
  3. 陽極電極と陰極電極との間に断続的に直流電圧を印加する、請求項1または2に記載の過酸化水素製造装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の過酸化水素製造装置を備え、前記過酸化水素製造装置により製造される過酸化水素を用いて熱交換器を洗浄する機能を有する空調機。
  5. ドレン水を過酸化水素製造装置の陰極電極に供給する手段を備える請求項4に記載の空調機。
  6. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の過酸化水素製造装置を備え、前記過酸化水素製造装置製造により製造される過酸化水素を用いて空気を除菌する機能を有する空気清浄機。
  7. 生成された過酸化水素を、除菌エレメントの上方に設置された散水ヘッダから前記除菌エレメントに供給する、請求項6に記載の空気清浄機。
  8. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の過酸化水素製造装置を備え、前過酸化水素製造装置により製造される過酸化水素を用いて加湿素子を洗浄する機能を有する加湿器。
  9. ドレン水を過酸化水素製造装置の陰極電極に供給する手段を備える請求項8に記載の加湿器。
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