JPH09176886A - 過酸化水素の製造方法 - Google Patents

過酸化水素の製造方法

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JPH09176886A
JPH09176886A JP34039095A JP34039095A JPH09176886A JP H09176886 A JPH09176886 A JP H09176886A JP 34039095 A JP34039095 A JP 34039095A JP 34039095 A JP34039095 A JP 34039095A JP H09176886 A JPH09176886 A JP H09176886A
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cathode
catholyte
hydrogen peroxide
aqueous solution
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Tokiya Yaguchi
時也 矢口
Nobuo Yamada
信夫 山田
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Oji Paper Co Ltd
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  • Electrolytic Production Of Non-Metals, Compounds, Apparatuses Therefor (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 パルプ製造等に適した中、低濃度の過酸化水
素水溶液を電解により製造する方法であって、高い電流
密度条件下においても、高い電流効率が得られる方法及
び上記製造方法において活性の低下した炭素を主成分と
する多孔質電極を賦活する方法の提供。 【解決手段】 陰極に酸素含有気体と陰極液とを供給
し、前記酸素含有気体中の酸素を陰極で還元して過酸化
水素を製造する方法であって、前記酸素含有気体と陰極
液とを、酸素含有気体中に陰極液が霧状に分散した状態
で陰極に供給する過酸化水素の製造方法。前記製造方法
において陰極として用いられた、活性の低下した炭素を
主成分とする多孔質電極を賦活する方法であって、前記
活性の低下した陰極を水溶液又は水溶液含有物と所定時
間接触させる方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パルプの漂白等に
有用な過酸化水素の製造方法に関する。更に詳しくは、
より高い電流密度で行われる電解においても、高い電流
効率でかつ長期間安定に中、低濃度の過酸化水素を含有
するアルカリ性水溶液を製造できる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】過酸化水素は、漂白剤及び酸化剤として
古くから有用であり、現在ほとんどがアンスラキノンの
水添、酸化により製造されている。しかるに、アンスラ
キノンの水添・酸化法は、設備が大型で大量生産向きで
ある。従って、アンスラキノンの水添・酸化法により製
造された過酸化水素は、約50〜60%に濃縮され、消
費地まで輸送されるのが一般的である。そのため、濃縮
設備も併せて必要であり、装置が更に巨大化しているの
が現状である。
【0003】しかるに、過酸化水素の使用時には特に高
濃度である必要はなく、むしろ希釈して使用するのが普
通である。従って、中、低濃度の過酸化水素を含有する
水溶液を、使用時に使用場所で簡便に生産でき、かつそ
のまま使用できれば、使用者にとってのメリットは大き
い。例えば、パルプの漂白等に多量の過酸化水素を使用
する製紙業界にとっては、中、低濃度の過酸化水素を含
有する水溶液を、パルプ工場等に隣接して簡便かつ安価
に生産できれば、極めて有益である。
【0004】そこで、本発明者らは、このような観点か
ら、これまでに知られている過酸化水素の製法を再度検
討した。その結果、酸素をアルカリ水溶液中で電解還元
する方法は、工程が単純であり、かつ耐腐食性の材料も
必要としないので、装置を簡素化できる可能性があるこ
とが判明した。
【0005】電解法による過酸化水素製造法では、イオ
ン交換膜で分離された陰極側では供給された酸素が電解
されてアルカリ性の過酸化物アニオンを生成し、陽極側
では酸素を発生しながら水素イオンを生成する。これが
カチオン交換膜を透過して陰極側でアルカリ性の過酸化
水素水溶液を生成する。従って、本来陽極は酸性である
のが自然で、且つ陰極で生成する過酸化水素も酸性側の
方が安定なので、保存用の過酸化水素を得たいときは陽
極を酸性側で運転する例が多い。
【0006】ところが、パルプの漂白剤としての過酸化
水素はアルカリ側で使用する。従って、この場合は陰極
で生成したアルカリ性の過酸化水素水溶液をそのまま利
用するためにも、陽極にアルカリ性電解液を流して中和
するかアルカリ側にして運転する方が良い。陽極側をア
ルカリ性にした例としては、特公昭59−15990号
に陽極/アルカリ水溶液/隔離板/多孔質電極よりなる
陰極/酸素の例が開示されている。さらに、Sudoh らの
J.Chem.Eng.Japan, 24巻,165p(1991) には陽極/アルカ
リ水溶液/イオン交換膜/アルカリ水溶液/多孔質電極
よりなる陰極/酸素の例が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このような状況下本出
願人は、パルプの漂白剤として有用なアルカリ性の過酸
化水素の簡便な製造方法を実用化する観点から種々の検
討を行い、その成果を特許出願した〔例えば、特開平6
−88273号、同6−31248号〕。これらの方法
では、イオン交換膜により隔離された陽/陰極電解室に
各々最適濃度に予め調整された電解液を供給することに
より電流効率を向上し、且つ出来るだけ使用条件に近い
上記理論値を下回るアルカリ比のアルカリ性過酸化水素
を得ることができる。
【0008】そしてさらに実用化を目指し、効率を向上
させるという観点から、電流密度の高い条件下での過酸
化水素の製造に関して研究を進めた。その結果、電流密
度を高くしていくと、電流効率が低下することが判明し
た。
【0009】そこで本発明の第1の目的は、パルプ製造
等に適した中、低濃度の過酸化水素水溶液を電解により
製造する方法であって、高い電流密度条件下において
も、高い電流効率が得られる方法を提供することにあ
る。
【0010】ところで、これまでの方法では、過酸化水
素を電解により製造すると、陰極である炭素を主成分と
する多孔質電極の活性が経時的に低下して、徐々に電流
効率が低下してくるという問題があった。そこで、本発
明者らは、電解を行うことにより活性が低下した炭素を
主成分とする多孔質電極の賦活方法について検討し、有
効な賦活方法を見出し、先に特許出願した(特願平6−
257898号)。
【0011】一方、上記本発明の第1の目的を満足する
本発明の過酸化水素の製造方法においても、電解開始当
初は高い電流効率が得られるが,電解の進行とともに電
流効率が低下するという現象が同様に見られた。そこ
で、本発明の過酸化水素の製造方法において活性の低下
した陰極に対して上記賦活方法の適用を試みた。しか
し、上記賦活方法では所望の賦活効果が得られなかっ
た。そこで本発明の第2の目的は、本発明の過酸化水素
の製造方法において活性の低下した炭素を主成分とする
多孔質電極を賦活する方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、陰極に酸素含
有気体と陰極液とを供給し、前記酸素含有気体中の酸素
を陰極で還元して過酸化水素を製造する方法であって、
前記酸素含有気体と陰極液とを、酸素含有気体中に陰極
液が霧状に分散した状態で陰極に供給することを特徴と
する過酸化水素の製造方法に関する。
【0013】さらに本発明は、上記本発明の過酸化水素
の製造方法において陰極として用いられた、活性の低下
した炭素を主成分とする多孔質電極を賦活する方法であ
って、前記活性の低下した陰極を水溶液又は水溶液含有
物と所定時間接触させることを特徴とする方法に関す
る。以下本発明について説明する。
【0014】本発明の方法は、陰極に酸素含有気体と陰
極液とを供給し、前記酸素含有気体中の酸素を陰極で還
元して過酸化水素を製造する方法であり、使用する電解
槽の種類や構造には特に制限はない。例えば、陰極室と
陽極室とがカチオン交換膜で隔てられた電解槽を用いる
ことができる。図1に、そのようなタイプの電解槽1を
示す。電解槽1はカチオン交換膜10により分けられた
陰極室20及び陽極室30を有する。
【0015】カチオン交換膜10は、耐薬品性を考慮す
ると、例えば、フッ素樹脂系のカチオン交換膜であるこ
とが適当である。但し、これに限定されるものではな
く、その他のカチオン交換膜を使用することもできる。
陰極室20には多孔質電極21である、例えば炭素を主
成分とする多孔質電極が充填されている。又、陰極室2
0の上部には、陰極液が霧状に分散した酸素含有気体の
供給口22があり、下部には電解生成液(アルカリ性過
酸化水素水溶液)の排出口23がある。陽極室30内に
は陽極(例えば、ニッケル板)31が設けられ、陽極室
30の下部には、陽極液の供給口32があり、上部には
排出口33がある。
【0016】前記陰極室20に連絡する供給口22は、
陰極液供給口24及び酸素含有気体供給口25と陰極液
を酸素含有気体中に霧状に分散する噴霧部27とを有す
る噴霧装置26と連絡している。噴霧装置26は図2に
示すように、噴霧部27がオリフィスを形成していて、
噴霧部27を通過する陰極液が酸素含有気体中に霧状に
分散される。尚、図3に示すように従来の電解槽におけ
る陰極液と酸素と供給口(24、25)は、陰極室に対
して別々に設けられていた。そのため、陰極液と酸素と
は、陰極室内で合流して(または一部別々に)陰極と接
触し、電解が進行していた。
【0017】酸素含有気体と陰極液との混合比率(酸素
含有気体リットル/陰極液ml)は適宜決定できる。但
し、陰極液の分散及びスムーズな給液と排液という観点
からは、例えば、0.1〜10の範囲であることが適当
である。また、霧状の陰極液の平均液滴径は、噴霧装置
26の噴霧部27の絞り具合により適宜調整することが
できる。高い電流密度においても高い電流効率で電解を
行えるという観点からは、例えば、霧状の陰極液の平均
液滴径を1〜100μmの範囲にすることが適当であ
る。
【0018】酸素の電気化学的還元による過酸化水素の
製造は公知の方法であり、例えば特開平6−88273
号及び特開平6−200389号に記載の方法がある。
本発明の製造方法においては、酸素含有気体と陰極液と
を、酸素含有気体中に陰極液が霧状に分散した状態で陰
極に供給すること以外は、公知の方法をそのまま利用す
ることができる。但し、本発明の製造方法によれば、よ
り高い電流密度においても高い電流効率が得られること
から、高い電流密度での運転が好ましく、例えば、陰極
における見掛けの電流密度が600A/m2 以上である
ことができる。
【0019】酸素含有気体は、例えば、酸素、空気又は
PSA酸素であることができる。従来から酸素源として
は液化酸素が一般的である。但し、活性汚泥による排水
処理やパルプの漂白等に使用する場合、使用量がある程
度まとまることから、コストダウンのためにPSA酸素
を使用することが好ましい。PSA酸素は、ゼオライト
を用い、ガスに対する活性度の違いやモレキュラーシー
ブ効果によって、空気中の窒素ガスを吸着し、窒素と酸
素を分離して酸素ガスだけを取り出すことによ得られる
ものである。上記操作では空気中のアルゴンは酸素中に
残留するので、酸素の純度は95%程度である。
【0020】尚、酸素含有気体は、実質的に二酸化炭素
を含まないものであることが、長期間高い電流効率で運
転できることから好ましい。実質的に二酸化炭素を含ま
ない酸素含有気体は、例えば、原料ガスをアルカリ水溶
液を通過させることにより調製することができる。但
し、工業的に大規模な製造に適するという観点からは、
二酸化炭素を実質的に含まない酸素含有ガスとしては、
空気から窒素ガスを吸着除去し、酸素分を取り出したP
SA酸素を使用することが好ましい。二酸化炭素は窒素
とともに吸着され除去されてしまうので、PSA酸素
は、実質的に二酸化炭素を含まない。酸素含有気体は大
気圧以上の圧とすることが、充分量の酸素含有気体を陰
極液に供給するという観点から好ましい。
【0021】陰極液はアルカリ水溶液又はイオン交換水
であることができる。陰極で得られたアルカリ性の過酸
化水素水溶液はそのまま、希釈又は濃縮することなしに
使用されることが好ましく、従って、運転条件も過酸化
水素の使用目的に応じて適宜変動させることができる。
例えば、パルプの漂白に使用する場合、過酸化水素水溶
液中のアルカリ比率は漂白の使用条件に近い方が好まし
い。従って、陰極室に供給されるアルカリ水溶液濃度は
高くないことが望ましい。具体的には陰極液のアルカリ
濃度は0.6モル以下、好ましくは0.4モル以下が適
当である。より好ましくは、アルカリを含まない、例え
ば、イオン交換水であることが適当である。
【0022】陰極液のアルカリ濃度及び供給量、酸素含
有気体の供給量並びに電流は電解槽の規模により適宜設
定することができる。但し、本発明では生産効率を高め
るという観点から、前述のように見かけの電流密度(電
流/電極投影面積)を600A/m2 以上とすることが
好ましい。見掛けの電流密度(電流/電極投影面積)
は、より好ましくは800A/m2 以上である。尚、見
掛けの電流密度に上限はない。しかし、見掛けの電流密
度が上昇すると、槽電圧も上昇し、その結果、電力原単
位も上昇する。そこで、槽電圧を考慮して経済的に有利
な見掛けの電流密度を適宜選択することができる。但
し、実際上は、最高でも約5000A/m2 であり、好まし
くは、2000A/m2 以下であることが適当である。電解
液の温度は、電解による発熱を考慮して、供給液が高温
にならないようにすることが好ましい。特に陰極室の電
解生成液の温度は、過酸化水素を含有することから、4
0℃以下の温度になるように制御することが好ましい。
【0023】陰極は、アルカリ水溶液中の酸素を還元し
て過酸化水素を製造する方法において用いられる炭素を
主成分とする多孔質電極をそのまま用いることができ
る。例えば、特開平6−200389号に記載の充填密
度0.3以上の炭素繊維材料を挙げることができる。炭
素繊維材料としては、炭素繊維の編物を例示することが
でき、炭素繊維の編物としては、例えば市販のグラファ
イトフェルトやクロスを挙げることができる。グラファ
イトフェルトやクロス以外の炭素繊維材料であっても良
い。
【0024】さらに、陰極として、多孔質の無定形炭素
材料を例示することもできる。多孔質の無定形炭素材料
は、非結晶質で実質的に無配向、即ち異方性のない多孔
質の炭素材料である。そのような炭素材料としては、例
えば、多孔質の無定形炭素繊維材料及び多孔質の無定形
炭素成形体を挙げることができる。
【0025】上記多孔質の炭素繊維材料は、以下のよう
にして得られる。ノボラック型のフェノール樹脂を溶融
紡糸し、これをホルマリンで熱処理すると分子間に僅か
な三次元架橋を形成した非結晶、無配向のフェノール繊
維が得られる。この繊維は、防炎性、耐熱性、耐薬品性
の繊維で、これを加熱するとその形態のまま炭素化し炭
素含有率の高い無定形構造の炭素繊維となる。この際、
溶融したり収縮したりすることがないため、フェノール
繊維をフェルトやクロスに加工してから炭化すると、そ
のまま無定形炭素繊維のフェルトやクロスを得ることが
できる。これはグラファイトの如き結晶構造を持たない
ものの、僅かに架橋しているために柔軟で、無定形のグ
ラッシーカーボン(ガラス状炭素)として電極に最適で
ある。
【0026】多孔質の炭素繊維材料は、電極としての形
状を保持するためには、フェルト状またはクロス状であ
る方が好ましい。フェルトやクロスを、所定の面積、厚
みになるよう電極保持枠の中に充填することが好まし
い。充填密度は電解効率に大きく影響し、密度が低いと
電極と酸素、アルカリ電解液との接触が不充分で電解効
率が悪く、密度が高すぎると酸素、アルカリ電解液の流
れが妨げられて電解効率が落ちる。
【0027】尚、前記の特開平6−200389号にお
いて用いた炭素繊維は、無定形の炭素繊維ではなく、ピ
ッチ系又はアクリル系の炭素繊維である。一般に、ピッ
チ系の炭素繊維は、グラファイト構造(無定形炭素を高
温に加熱して生じる層状の結晶構造)であり、異方性が
大きく結晶方向により電気抵抗値も異なる。アクリル系
の炭素繊維は、結晶構造を有する繊維をそのまま炭素化
しているのでグラファイトよりも更に結晶性が高い。
【0028】陰極液及び陽極液には、過酸化水素の安定
剤、金属封鎖剤(キレート剤)、スケーリング防止剤等
の助剤を添加することにより、電流効率の向上等をはか
ることができる。添加量については、使用される苛性ソ
ーダのグレイドやコスト/効率の工業的見知から判断で
きる。特に、陽極液がキレート剤を含むことが好まし
い。陽極液にキレート剤を添加することで、カルシウム
イオンによるカチオン交換膜の白化を防止したり、鉄、
ニッケル等の重金属による過酸化水素の分解を防止でき
るため、長期間、高い電流効率で過酸化水素の製造を続
けることができる。
【0029】キレート剤は、水溶液中の金属イオンと錯
体を形成することができる化合物であれば特に制限はな
い。そのような化合物としては、EDTA(エチレンジ
アミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢
酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、HEDTA(ヒドロ
キシエチルエチレンジアミン三酢酸)、TTHA(トリ
エチレンテトラミン六酢酸)、HIDA(ヒドロキシエ
チルイミノ二酢酸)及びこれらのアルカリ金属塩(例え
ば、ナトリウム塩、カルシウム塩等)やナトリウムグル
コヘプトネート(sodium glucoheptonate )を例示する
ことができる。特に、カルシウムイオンに対する安定度
定数が高いキレート剤を用いることが好ましい。カルシ
ウムイオンに対する安定度定数が高く、少量の添加で効
果的にカルシウムイオンと錯体を形成することができる
という観点からは、EDTA、DTPA及びナトリウム
グルコヘプトネートが好ましい。
【0030】陽極液に対するキレート剤の添加量は、キ
レート剤種類(カルシウムイオン等に対する安定度定
数)や配位数及び陽極液中に含有されているカルシウム
等の金属イオン濃度等を考慮して適宜決定できる。例え
ば、EDTAでカルシウムイオンを安定化する場合、E
DTAとカルシウムイオンとは1:1の錯体を形成する
ので、陽極液中に含有されているカルシウムイオンと等
モル以上、好ましくは1〜5モル倍のEDTAを添加す
ることが適当である。
【0031】上記キレート剤は、電解前の陽極液に添加
する。キレート剤は、粉末のものは粉末のままでも良い
し、水に溶解した水溶液として陽極液に添加することも
できる。水溶液として添加することで、キレート剤を迅
速に陽極液へ行き渡らせることができる。キレート剤を
均一に行き渡らせるという観点からは、キレート剤の添
加後、1〜10分間程度陽極液を攪拌することが好まし
い。例えば、陽極液の調製タンクや貯蔵タンク内で、十
分攪拌し、均一化した後に、陽極室に供給することが好
ましい。
【0032】上記キレート剤に加えて、キレート助剤と
して、水酸化マグネシウムや水ガラスを陽極液に添加す
ることもできる。これらのキレート助剤をキレート剤に
併用することで、キレート剤の量を削減でき経済的なメ
リットがあるという利点がある。
【0033】陰極材料である炭素繊維材料等の多孔質電
極は、長時間電解に供すると、徐々に活性が低下して電
流効率が低下する。そこで、定期的に陰極材料を賦活し
て高電流効率を維持することが好ましい。本発明の賦活
方法は、活性の低下した陰極を水溶液又は水溶液含有物
と所定時間接触させることを特徴とする。
【0034】上記「活性の低下した陰極」とは、電解開
始時に比べて活性、即ち電流効率が低下した陰極であ
る。通常、過酸化水素製造用電解装置においては、陰極
反応が律速になるように設定されており、電流効率の低
下は、陰極の活性の低下により生じる。賦活を行うべき
活性の低下の度合いは、賦活に必要な時間等を考慮し
て、適宜決定することができる。電流効率の低下は、そ
のまま生産性の低下につながるので好ましくないが、賦
活処理が頻繁過ぎるのも生産性に悪影響を及ぼす。賦活
処理は、電流効率が例えば80%(使用開始当初の電流
効率は陰極材料により異なるが、通常、約90%であ
る)を割った時点で行うこともできるし、一日に1〜3
回又は2〜7日間に1〜2回程度行うこともできる。本
発明の賦活方法においては、電解を停止して、陰極室内
に水溶液又は水溶液含有物を導入して、前記活性の低下
した多孔質電極に接触させることで、陰極の賦活を行
う。
【0035】陰極室内への水溶液又は水溶液含有物の導
入量、導入速度、導入時間等は、陰極の材料、構造、
量、陰極の賦活の程度等を考慮して適宜決定される。実
用上は、生産性の観点から導入時間が短い方が好まし
く、例えば5〜120分間、好ましくは30〜90分間
の範囲とすることが好ましい。また、陰極室内へ水溶液
又は水溶液含有物を導入し、一定時間、例えば、1〜2
4時間、放置することによっても陰極の賦活をすること
ができる。また、陰極室内への水溶液又は水溶液含有物
の導入は、室温で行うことができる他、加熱下で行うこ
ともできる。加熱は、陰極室を直接加熱する方法や加熱
した水溶液又は水溶液含有物を導入することにより行う
ことができる。加熱の温度には特に制限はないが、例え
ば30〜70℃とすることができる。但し、イオン交換
膜の劣化を防止するとうい観点からは、30〜50℃の
範囲とすることが好ましい。水溶液又は水溶液含有物の
導入終了後は、再度過酸化水素の製造を行うことができ
る。このような賦活処理を繰り返し行なえば、極めて長
期に渡り高い電流効率で陰極を使用し続けることができ
る。
【0036】
【発明の効果】本発明の過酸化水素の製造方法によれ
ば、高い電流密度条件下においても高い電流効率が得ら
れ、パルプ製造等に適した中、低濃度の過酸化水素水溶
液を高い生産効率で製造することができる。さらに本発
明の賦活方法によれば、上記本発明の過酸化水素の製造
方法で活性が低下した炭素を主成分とする多孔質電極を
賦活でき、過酸化水素の電解製造と賦活とを繰り返し行
うことにより、長期間安定的にパルプ製造等に適した
中、低濃度の過酸化水素水溶液を高い生産効率で製造す
ることができる。
【0037】
【実施例】以下、本発明を実施例により、更に説明す
る。 実施例1 図1で示される電解槽において陽極としてニッケル多孔
板を用い、陰極には見掛けの面積が125cm2 (5c
m×25cm×3mm)のカーボンフェルト(0.15
g/m2 、日本カーボン社製GF20−5)を用い、カ
チオン交換膜としては、ナフィオン117(デュポン社
製膜厚0.3mm)を用いた。250ppmのEDTA
を含む2M NaOH水溶液を陽極液として6ml/m
inで陽極室に供給した。また、陰極室には、イオン交
換水を6ml/minと酸素を6リットル/minを噴
霧装置を介して霧状になった状態で供給した。電解は、
陰極における見掛けの電流密度が800A/m2 になる
ように定電流電解を行った。結果を表1に示す。
【0038】比較例 電解槽として図3に示す構造(陰極室へのイオン交換水
と酸素の供給口が異なる)のものを用いた以外は実施例
1と同様の条件で電解を行った。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】実施例2 実施例1と同様の条件で96時間電解を行った後、電源
を切った(電源切断時の電流効率は89.5%であっ
た)。その後、陰極への霧状のイオン交換水と酸素の供
給はそのままの条件(イオン交換水:6ml/min、
酸素:6リットル/min)で12時間続けて、陰極の
賦活を行った。その後、実施例1と同様の条件で電解を
再開した。再開後の結果を表2に示す。
【0041】実施例3 実施例1と同様の条件で96時間電解を行った後、電源
を切った(電源切断時の電流効率は89.1%であっ
た)。その後、陰極への霧状のイオン交換水と酸素の供
給を、イオン交換水の供給量を50ml/min、酸素
の供給量は6リットル/min(そのままの条件)で1
時間続けて、陰極の賦活を行った。さらに、陰極への霧
状のイオン交換水と酸素の供給を実施例1と同様の条件
に戻して30分間放置した。その後、実施例1と同様の
条件で電解を再開した。再開後の結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】実施例4 実施例1と同様の条件で23時間電解を行った。電源を
切った後、陰極への霧状のイオン交換水と酸素の供給
を、イオン交換水の供給量を50ml/min、酸素の
供給量は6リットル/min(そのままの条件)で30
分間続けて、陰極の賦活を行い、さらに、陰極への霧状
のイオン交換水と酸素の供給を実施例1と同様の条件に
戻して30分間放置した。その後、実施例1と同様の条
件で電解を再開した。このような23時間の電解と1時
間の賦活を繰り返し行った。但し、電解開始後184時
間からは、陰極における見掛けの電流密度を800A/
2 から1200A/m2 になるようにして定電流電解
を行った。結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】実施例5 実施例1と同様の条件で96時間電解を行った後、電源
を切った(電源切断時の電流効率は88.2%であっ
た)。陰極への霧状のイオン交換水と酸素の供給も停止
した。次いで、陰極液の排出口24からイオン交換水を
3.5ml/minで1時間供給して陰極の賦活を行っ
た。その後、実施例1と同様の条件で電解を再開した。
再開後の結果を表4に示す。
【0046】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の過酸化水素の製造方法の実施に使用
する電解槽の断面説明図。
【図2】 本発明の過酸化水素の製造方法の実施に使用
する噴霧装置の断面説明図。
【図3】 従来の過酸化水素の製造方法の実施に使用す
る電解槽の断面説明図。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陰極に酸素含有気体と陰極液とを供給
    し、前記酸素含有気体中の酸素を陰極で還元して過酸化
    水素を製造する方法であって、 前記酸素含有気体と陰極液とを、酸素含有気体中に陰極
    液が霧状に分散した状態で陰極に供給することを特徴と
    する過酸化水素の製造方法。
  2. 【請求項2】 酸素含有気体と陰極液との混合比率(酸
    素含有気体リットル/陰極液ml)が0.1〜10の範
    囲であり、かつ霧状の陰極液の平均液滴径が1〜100
    μmの範囲である請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 陰極における見掛けの電流密度が600
    A/m2 以上である請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 酸素含有気体が酸素、空気又はPSA酸
    素である請求項1記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 陰極液がアルカリ水溶液又はイオン交換
    水である請求項1記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製
    造方法において陰極として用いられた、活性の低下した
    炭素を主成分とする多孔質電極を賦活する方法であっ
    て、前記活性の低下した陰極を水溶液又は水溶液含有物
    と所定時間接触させることを特徴とする方法。
  7. 【請求項7】 水溶液がアルカリ性水溶液、酸性水溶液
    又はイオン交換水である請求項6記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 水溶液含有物が陰極液または酸素含有気
    体と陰極液との混合物である請求項6記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記酸素含有気体と陰極液との混合物
    が、酸素含有気体中に陰極液が霧状に分散した状態で存
    在する混合物である請求項8記載の製造方法。
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