JP5128366B2 - 表面性状に優れたSi含有熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

表面性状に優れたSi含有熱延鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、Si含有熱延鋼板の製造方法に関するものである。
近年、自動車用途を中心に広く使用されている高張力鋼板では、強度を確保するために、Siが多量に添加された鋼種がある。しかし高Si鋼板も通常の鋼板と同様、スラブ等を加熱した後、熱間圧延して製造される。鉄鋼を高温で加熱すると表面にスケール(ウスタイト(FeO)、マグネタイト(Fe34)、ヘマタイト(Fe23)などのFe系単独酸化物など)が形成されること、及び鋼材中のSiは合金表面にSiO2を形成し、その後FeOと反応してサブスケール(ファイアライト(Fe2SiO4))を地鉄/スケール界面に形成することなどはよく知られている。このファイアライトは融点が低く(1173℃)、高温で高Si鋼材を加熱するとファイアライト層が液状化して鋼側にくさび状に湿潤し、スケールと鋼との密着性を増大させる。そのため加熱後にデスケーリングしてもスケールが残留し、熱間圧延時に鋼板表面に押し込まれることによって疵が発生し、表面性状が悪化する。この表面疵は、高Si鋼板を酸洗した後でも残存し、鋼板製品の品質を低下させる。
Si含有熱延鋼板のファイアライトを制御するため、様々な技術が提案されている。例えば特許文献1は、(1)鋼片を1290℃以上で加熱して、1次スケールの粒界酸化を防止し、(2)粗圧延仕上温度を1150℃以上として、2次スケールによる島状スケール疵の発生しにくい温度域で粗圧延を行い、次いで(3)熱間圧延開始温度を1100℃以下として、ファイアライトの凝固点以下で熱間仕上圧延を行うことを特徴とする熱延鋼板の製造方法を開示している。しかしこの方法では、鋼片を1290℃以上の温度で加熱しており、ファイアライトが液状化して鋼(地鉄)にくさび状に湿潤するため、デスケーリング性の改善が不十分である。
特許文献2及び3は、「Siスケ−ルを鋼板全面に均一に発生させることにより島状スケ−ル疵を抑える」という技術思想の下で、「最もファイアライトの発生しやすい中間の温度帯」に設定して積極的にSiスケ−ルを生成させる方法を開示している。詳しくは特許文献2及び3は、熱間圧延前の加熱工程において均熱温度:1200〜1240℃、均熱中の温度変動幅:15℃以内、均熱時間:30〜90分なる条件で均熱することを特徴とする熱延高張力鋼板の製造方法を開示している。しかしこの方法はファイアライトの生成を抑制するものではなく、むしろ積極的に発生させている。ファイアライトは、液相化しなくても鋼とスケールとの密着性を強固にするものであり、この方法ではデスケーリング性の改善が不十分である。
特許文献4は、Siを0.2〜3.0%含有する鋼板の全表面への均一な赤スケールの生成を促し、島状スケールの発生を抑制するために、NiとCuを所定量添加し、鋼片を1170℃以上に加熱し、第1回目のデスケーリングを1200℃以下の温度域で行うことを特徴とする高強度鋼板の製造方法を開示している。しかし、この特許文献4では加熱雰囲気について何ら考慮されていない。
特許文献5は、鋼片を表面温度1173℃以上で10分間以上加熱してFe−Si−O系溶融相を形成し、引き続き鋼片を表面温度1173℃未満で10分間以上加熱することによってFe−Si−Oの溶融相が凝固すると共にこの凝固相と鋼界面との間に平坦な複合スケールを新たに形成し、スケール剥離性を向上させる方法が開示されている。しかしこの加熱方法と、Fe−Si−O相の平坦化との関連性がどのような自然法則に支配されているのか不明である。
特開平4−247829号公報 特開平6−192728号公報 特開平7−34137号公報 特開平6−346145号公報 特開2005−297008号公報
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、デスケーリング性に悪影響を与えるSiを含有するSi含有鋼であっても、デスケーリング性を改善でき、表面性状に優れた鋼板を製造できる方法を提供することにある。
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、Si含有鋼であっても、鋼片の加熱条件を制御すると共に、加熱後であって熱間圧延開始前(粗圧延開始前)に鋼片と水蒸気とを特定の条件下で接触させることによってデスケーリング性を大きく改善でき、熱延鋼板の表面性状を良好にできることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係るSi含有熱延鋼板の製造方法は、Siを0.2〜2%(質量%の意味。鋼の化学成分において以下同じ。)含有する鋼片を加熱炉で、O2濃度2体積%以下の燃焼ガス雰囲気下、加熱炉温度1250〜1350℃で、30〜120分間加熱した後、この鋼片を加熱炉から取り出し、デスケーリングした後、熱間圧延する鋼板の製造方法であって、加熱炉からの取り出し後かつデスケーリング前に、1100〜1250℃の鋼片温度で10秒を超えない範囲で、H2Oを10〜30体積%含む加湿空気と鋼片とを接触させる点に要旨を有するものである。
前記鋼板は、C:0.02〜0.6%、Si:0.2〜2%、Mn:0.2〜3%、及びS:0.005%以下(0%を含まない)を含有していてもよく、さらにAl:0.05%以下(0%を含まない)、Cr:0.3%以下(0%を含まない)、Mo:0.2%以下(0%を含まない)、Ti:0.2%以下(0%を含まない)及びCa:0.003%以下(0%を含まない)などの1種以上を含有していてもよい。
本発明によれば、鋼片の加熱条件を制御し、かつ熱間圧延開始前に鋼片と水蒸気とを特定条件下で接触させることによって、ファイアライト(Fe2SiO4)層と下地との間に剥離性に優れた新たな酸化層(内方酸化層)を形成できるため、デスケーリング性を向上でき、Si含有熱延鋼板の表面性状を良好にできる。
本発明はデスケーリング性に悪影響を与えるSiを含有するSi含有鋼であっても、デスケーリング性を良好にするものである。本発明の対象とするSi含有鋼のSi含有量は、0.2%以上、好ましくは0.5%以上である。さらに本発明によれば、Siを多量に含有していても、デスケーリング性を良好にでき、Si含有量は、例えば、1%以上、好ましくは1.1%以上、さらに好ましくは1.2%以上にすることもできる。Siを添加すると、鋼板の成形性をそれほど低下させずに強度を向上させることができる。Si量の上限は、2%以下、好ましくは1.9%以下、さらに好ましくは1.8%以下である。
本発明はSiに起因するファイアライト(Fe2SiO4)層を制御するものであるため、熱延鋼板として使用できる限り、Si以外の鋼成分は特に限定されないが、Si以外の元素とその量は、例えば、C:0.02〜0.6%、Mn:0.2〜3%、及びS:0.005%以下(0%を含まない)であってもよい。各元素の添加理由は、以下の通りである。
C: Cは鋼板の強度を高めるのに必要な元素であるが、その量が過剰であると冷間加工性が低下する。好ましいC量は、0.03%以上(特に0.04%以上)、0.4%以下(特に0.1%以下)である。
Mn: Mnは鋼板の強度および靱性を確保するために有用な元素であるが、その量が過剰であると却って靱性が低下し、また溶接性も劣化する。好ましいMn量は、0.5%以上(特に1%以上)、2.5%以下(特に2.3%以下)である。
S: Sは、Mnと反応して硫化物系介在物MnSを形成する。このMnSは熱間加工時に偏析して鋼材を脆化させ、鋼材割れを引き起こす。従ってS量を少なくすることが推奨される。好ましいS量は、0.004%以下(特に0.003%以下)である。なお工業生産上、鋼板中のS量を0%にすることは困難である。
上記C、Si、Mn、S以外の残部は、鉄であってもよい。残部が鉄の場合、不可避不純物(例えば、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる不純物(P、O、N等))が鋼板中に含まれることは、当然に許容される。さらに熱延鋼板は、必要に応じて種々の選択元素(例えば、Al、Cr、Mo、Ti、Caなど)を単独で又は適宜組み合わせて含有していても良い。Al、Cr、Mo、Ti、Caなどの添加量及び添加理由は以下の通りである。
Al:0.05%以下(0%を含まない)
Alは、脱酸のため、又は鋼板の焼ならし加熱時にオーステナイト結晶粒粗大化を防止するために、必要に応じて添加される元素である。Al量は、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.010%以上である。しかしAlを過剰添加すると、その効果は飽和し、結晶粒が不安定になる。そこでAl量の上限を0.05%以下と定めた。Al量は、好ましくは0.04%以下である。
Cr:0.3%以下(0%を含まない)
Crは、鋼板又はその冷間鍛造部品の強度を向上するために、必要に応じて添加する元素である。Cr量は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上である。しかしCr量が過剰であると、鋼板の延性が低下する。そこでCr量の上限を0.3%以下と定めた。Cr量は、好ましくは0.25%以下である。
Mo:0.2%以下(0%を含まない)
MoもCrと同様に、鋼板又はその冷間鍛造部品の強度を向上させるために、必要に応じて添加する元素である。Mo量は、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.010%以上である。しかしMo量が過剰であると鋼板の靱性が低下する。そこでMo量の上限を0.2%以下と定めた。Mo量は、好ましくは0.15%以下である。
Ti:0.2%以下(0%を含まない)
Tiは、鋼中に炭窒化物として析出して強度を高めると共に、鋼のミクロ組織を微細化して強度、靭性等を向上させるため、必要に応じて添加する。Ti量は、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.010%以上である。しかしTi量が過剰であると、粗大な介在物が形成され、却ってHAZ靱性が劣化する。そこでTi量の上限を0.2%以下と定めた。Ti量は、好ましくは0.15%以下である。
Ca:0.003%以下(0%を含まない)
Caは、鋼板表面の腐食に伴う界面雰囲気の水素イオン濃度の上昇を抑制して、鋼板の耐食性を高めるため、必要に応じて添加する。Ca量は、好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.0005%以上である。しかしCa量が過剰であると鋼板の延性が劣化するので、使用する場合のCa量の上限を0.003%以下と定めた。Ca量は、好ましくは0.0025%以下である。
本発明では、上述のSi含有鋼のデスケーリング性を良好にするため、鋼片(スラブ等)を加熱炉で加熱するときの条件を制御すると共に、加熱炉から取り出した後であって熱間圧延開始前(粗圧延開始前)に鋼片と加湿空気(大気に所定量のH2Oを加えた空気)とを特定の条件下で接触(加湿空気処理という)をさせている。
より詳細に説明すると、加熱炉では、燃焼ガス雰囲気下で加熱しており、酸化スケールが形成される。燃焼雰囲気中での酸化は主としてO2によって形成されるものであり、このO2による酸化はFeが外方拡散しつつ進行するため外方酸化層という。本発明では、加熱炉内のO2濃度を低減してスケール(外方酸化層)の形成を抑制している。このことによって鋼板の表面性状が改善される。
しかし、加熱炉内のO2濃度を低減しても、スケール(外方酸化層)を完全に消失することは難しい。またスケール(外方酸化層)と地鉄との界面にはファイアライト(Fe2SiO4)などからなるサブスケール層が形成される。このサブスケール層がデスケーリング性低下の原因となるため、本発明では、十分量の酸素の存在下、水蒸気で鋼片を処理することにした。十分量の酸素の存在下、水蒸気と接触しながら鋼片が高温酸化されるときもスケールが成長するが、このスケールは主としてO(酸素)の内方拡散によって形成されるため内方酸化層という。この内方酸化層は、サブスケールの底部、およびサブスケールの下に存在する地鉄(特に表面近傍の地鉄中に酸化物が点在してマクロ的に層状に見える層(内部酸化層))を侵食するようにして形成される。サブスケール下の地鉄では、サブスケール層への合金元素が拡散してしまっているために合金元素が欠乏している。この合金元素欠乏層にOが内方拡散して酸化が起こると、この内方酸化層は、合金元素が欠乏していることからサブスケールにはならず、ウスタイト(FeO)を主体とするスケールになる。ウスタイト(FeO)は地鉄と剥離しやすいため、ウスタイト(FeO)を主体とする内方酸化層がサブスケールと地鉄との間に形成されると、この内方酸化層と共にサブスケールも剥離されるようになってデスケーリング性が向上する。
ところで水蒸気を鋼片と接触させるために、通常、大気にH2Oを添加した加湿空気を鋼片と接触させている。大気にH2Oを添加する場合、H2Oの添加量が少なすぎると内方酸化層の厚みが薄くなるが、H2Oの添加量が多すぎても内方酸化層の厚みが薄くなることが判明した。図1のグラフにこの関係が明瞭に示されている。この図1のグラフの縦軸は、一定温度(1150℃)で一定時間(30分間)加熱酸化したときの酸化層の厚さを示したものであって、酸化速度に比例する。一方、図1のグラフの横軸は、加湿空気中のH2Oの体積濃度を示している。なおこのH2Oの体積濃度は、モル分率に等しく、よって大気圧を1気圧としたときのH2Oの分圧に相当する。図1から、加湿空気中のH2O濃度を10〜30体積%にしたとき(即ち全圧が1気圧であり、H2O分圧が0.1〜0.3気圧の加湿空気を用いたとき)、内方酸化層の厚さ(内方酸化速度)が最大になることが判る。なおこの範囲では、外方酸化層の厚さ(外方酸化速度)も最大となっている。H2O濃度を高くし過ぎると内方酸化速度と外方酸化速度が低下するのは、酸化剤としてのO2とH2Oとの酸化作用および濃度の兼ね合いの結果によるものと考えられる。即ちH2O濃度が増加すると、相対的にO2濃度が減少する。そしてH2OはO2よりも酸化作用が小さいため、H2O濃度が増加し過ぎると雰囲気全体として酸化作用が減少し、その結果、内方酸化層の厚さが減少すると考えられる。
加熱炉での加熱条件及び加湿空気処理条件は、より具体的には、以下の通りである。
加熱炉温度は、鋼片を適切に軟化するのに必要な温度、例えば、1250℃以上、好ましくは1280℃以上とする。しかし炉内温度が高すぎると、サブスケール層が厚くなってデスケーリング性が低下する。そこで炉内温度は、1350℃以下、好ましくは1320℃以下とする。
加熱時間は、鋼片を適切に軟化するのに必要な時間、例えば、30分以上、好ましくは40分以上、さらに好ましくは50分以上とする。しかし加熱時間が長すぎると、サブスケール層が厚くなり、デスケーリング性が低下する。そこで加熱時間は、120分以下、好ましくは100分以下、さらに好ましくは80分以下とする。
加熱炉内は、燃焼ガス雰囲気になっているが、本発明では燃焼ガス中のO2濃度を2体積%以下、好ましくは1.5体積%以下にする。O2濃度が高いと、サブスケール層が局所的に厚く形成されて不均一となり、デスケーリング性が低下する。O2濃度の下限は特に制限されないが、例えば、0.1体積%以上でもよい。
加湿空気処理のときの鋼片の温度は、内方酸化層の形成速度、スラブ加熱時の炉内温度と熱間圧延開始温度との兼ね合いなどから決定され、例えば、1100℃以上(好ましくは1150℃以上)、1250℃以下(好ましくは1200℃以下)である。
加湿空気処理では、H2O濃度が10〜30体積%の加湿空気と鋼片とを接触させる。H2Oの濃度は、好ましくは15〜28体積%、さらに好ましくは20〜25体積%である。
加湿空気と鋼片との接触時間は、例えば、10秒以下、好ましくは8秒以下である。接触時間が長いほどデスケーリング性が向上するが、接触時間を長くしすぎると、生産性が低下する。また自動コンベア搬送中に水蒸気と鋼片とを接触させることとした場合、接触時間を長くしすぎると、圧延速度が低下する。接触時間の下限は、例えば、1秒以上(好ましくは2秒以上)である。
加湿空気処理は、通常、鋼片搬送コンベア上で実施する。鋼片と加湿空気との接触は、例えば、コンベア上に設置した雰囲気制御用のフード内に加湿空気を流しつつ鋼片を通過させることで実施できる。
加湿空気処理を行った後、デスケーリングを実施する。デスケーリングでは、高圧水デスケーリングが一般的であるが、メカニカルデスケーリングを実施してもよい。
以下、実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実験例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
製造例
表1に示す化学成分組成の鋼材スラブAおよびBを溶製した。
Figure 0005128366
実験例1A
スラブAから機械加工で20mm×20mm×2mmの鋼片を試料として採取した。この板状試料の表面の一部にスパッタリングでマーク(膜厚1μmのPt薄膜)を付けた。この試料を、雰囲気制御型熱処理装置に設置し、N2雰囲気(N2フロー)下、10℃/分の昇温速度で加熱した。次いで雰囲気を(ア)大気フロー及び(イ)水蒸気(H2O)を10体積%含む加湿空気フロー(加湿空気処理)のいずれかに切り替え、1200℃で30分間保持した後、N2雰囲気(N2フロー)に戻し、10℃/分の速度で降温した。
前記熱処理を行った試料を樹脂に埋め込んだ。断面を研磨した後、光学顕微鏡及びSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、マーク(Pt薄膜)よりも内側のスケール層の厚さ(内方酸化層厚さ)と、地鉄中の酸化物粒子分散層の厚さ(内部酸化層厚さ)を求めた。結果を表2に示す。
実験例1B
スラブAから機械加工でφ8.0mm×12mmの円柱状鋼片を試料として採取し、その側面をRmax≦6μmの表面粗さ(最大高さ)に研磨した後、実験例1Aと同様に熱処理した。熱処理後、円柱状試料を加工フォーマスター試験装置にセットし、真空中で1000℃まで昇温し、試料を圧縮(圧縮歪率:50%、歪速度:10mm/秒)してスケールを剥離させた。剥離後の2次スケール生成を抑制するため、試料をAr雰囲気中で室温まで急冷した後、下記式に基づき、残留したスケールの面積率を調べた。
残留スケール面積率(%)=(残留スケール面積/全面積)×100
なお残留スケール面積は、光学顕微鏡観察に基づいており、具体的には試料側面(曲面)全体を平面に投影した側面全図を出して画像処理することによって求めた。
結果を表2に示す。
Figure 0005128366
表2の結果から以下のことが分かる。まず大気雰囲気下で熱処理を行った試料No.1では内方酸化層が形成されておらず、内部酸化層が厚く形成されている。これに対してH2Oを10体積%含む加湿空気雰囲気下で熱処理(加湿空気処理)を行った試料No.2では、内方酸化層が厚く形成され、また残留スケール面積率が小さくなっている。これらの結果から、加湿空気処理を行えば、内方酸化層が厚く形成され、デスケーリング性が向上することが分かる。
実験例2A
スラブAから機械加工で20mm×20mm×2mmの鋼片を試料として採取し、実験例1Aと同様にしてマーク(Pt薄膜)を付けた。この試料を、雰囲気制御型熱処理装置に設置し、N2雰囲気(N2フロー)下、10℃/分の昇温速度で加熱した。次いで(1)雰囲気を燃焼ガスフロー(燃焼ガス組成:71体積%N2−1体積%O2−10体積%CO2−18体積%H2O)に切り替え、温度1250℃で30分間保持する第1熱処理を行った。続いて(2a)H2Oを10体積%又は30体積%含む加湿空気フロー下、鋼片温度1200℃で3〜10秒間保持する第2熱処理(加湿空気処理)を行った後、又は(2b)この第2熱処理を行うことなく直ちにN2雰囲気(N2フロー)に戻し、10℃/分の速度で降温した。
熱処理後の試料の内方酸化層厚さ及び内部酸化層厚さを実験例1Aと同様にして調べた。結果を表3に示す。
実験例2B
スラブAから機械加工でφ8.0mm×12mmの円柱状鋼片を試料として採取し、その側面をRmax≦6μmの表面粗さ(最大高さ)に研磨した後、実験例2Aと同様に熱処理した。熱処理後、実験例1Bと同様にして残留したスケールの面積率を調べた。結果を表3に示す。
Figure 0005128366
表3の結果から明らかなように、加湿空気処理を行っていない試料No.3に比べて、加湿空気処理した試料No.4〜9では、H2O濃度が高いほど、また加湿空気処理時間が長くなるほど、内方酸化層厚さが増加しかつ内部酸化層厚さが減少し、デスケーリング性が向上した。
実験例3
スラブBから試料を採取し、処理温度を1150℃にした以外は、実験例1A、1Bと同様にした。結果を表4に示す。
Figure 0005128366
表4の結果から明らかなように、H2Oを10体積%含む加湿空気雰囲気下で熱処理(加湿空気処理)した試料No.11は、大気雰囲気下で熱処理した試料No.10に比べて、内方酸化層厚さが増加し、デスケーリング性が向上した。
実験例4
スラブBから試料を採取し、第2熱処理温度(加湿空気処理温度)を1150℃にした以外は、実験例2A、2Bと同様にした。結果を表5に示す。
Figure 0005128366
表5の結果から明らかなように、加湿空気処理を行っていない試料No.12に比べて、加湿空気処理した試料No.13〜18では、H2O濃度が高いほど、また加湿空気処理時間が長くなるほど、内方酸化層厚さが増加しかつ内部酸化層厚さが減少し、デスケーリング性が向上した。
実験例5
スラブ(C:0.35%、Si:0.3%、Mn:0.8%、Cr:1.0%、Mo:0.2%、残部鉄及び不可避不純物)から試料を採取し、加湿空気処理温度を1150℃にし、加湿空気でのH2O濃度を0〜40体積%の間で適宜変更する以外は、実験例1Aと同様にした。結果を図1に示す。
図1はH2O濃度と酸化層厚さとの関係を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 鋼片を加熱炉から取り出し、デスケーリングした後、熱間圧延する鋼板の製造方法において、
    前記鋼板はSiを0.2〜2%(質量%の意味。鋼の化学成分において以下同じ。)含有するSi含有鋼板であり、
    前記加熱炉では、O2濃度2体積%以下の燃焼ガス雰囲気下、鋼片を加熱炉温度1250〜1350℃で、30〜120分間加熱するものとし、
    前記加熱炉から取り出した後であってデスケーリング前に、1100〜1250℃の鋼片温度で10秒を超えない範囲で、H2Oを10〜30体積%含む加湿空気を鋼片と接触させることを特徴とするSi含有熱延鋼板の製造方法。
  2. 前記鋼板は、C:0.02〜0.6%、Si:0.2〜2%、Mn:0.2〜3%、及びS:0.005%以下(0%を含まない)を含有する請求項1に記載のSi含有熱延鋼板の製造方法。
  3. 前記鋼板は、さらにAl:0.05%以下(0%を含まない)、Cr:0.3%以下(0%を含まない)、Mo:0.2%以下(0%を含まない)、Ti:0.2%以下(0%を含まない)及びCa:0.003%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項2に記載のSi含有熱延鋼板の製造方法。
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