JP5128366B2 - 表面性状に優れたSi含有熱延鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
Alは、脱酸のため、又は鋼板の焼ならし加熱時にオーステナイト結晶粒粗大化を防止するために、必要に応じて添加される元素である。Al量は、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.010%以上である。しかしAlを過剰添加すると、その効果は飽和し、結晶粒が不安定になる。そこでAl量の上限を0.05%以下と定めた。Al量は、好ましくは0.04%以下である。
Crは、鋼板又はその冷間鍛造部品の強度を向上するために、必要に応じて添加する元素である。Cr量は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上である。しかしCr量が過剰であると、鋼板の延性が低下する。そこでCr量の上限を0.3%以下と定めた。Cr量は、好ましくは0.25%以下である。
MoもCrと同様に、鋼板又はその冷間鍛造部品の強度を向上させるために、必要に応じて添加する元素である。Mo量は、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.010%以上である。しかしMo量が過剰であると鋼板の靱性が低下する。そこでMo量の上限を0.2%以下と定めた。Mo量は、好ましくは0.15%以下である。
Tiは、鋼中に炭窒化物として析出して強度を高めると共に、鋼のミクロ組織を微細化して強度、靭性等を向上させるため、必要に応じて添加する。Ti量は、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.010%以上である。しかしTi量が過剰であると、粗大な介在物が形成され、却ってHAZ靱性が劣化する。そこでTi量の上限を0.2%以下と定めた。Ti量は、好ましくは0.15%以下である。
Caは、鋼板表面の腐食に伴う界面雰囲気の水素イオン濃度の上昇を抑制して、鋼板の耐食性を高めるため、必要に応じて添加する。Ca量は、好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.0005%以上である。しかしCa量が過剰であると鋼板の延性が劣化するので、使用する場合のCa量の上限を0.003%以下と定めた。Ca量は、好ましくは0.0025%以下である。
加熱炉温度は、鋼片を適切に軟化するのに必要な温度、例えば、1250℃以上、好ましくは1280℃以上とする。しかし炉内温度が高すぎると、サブスケール層が厚くなってデスケーリング性が低下する。そこで炉内温度は、1350℃以下、好ましくは1320℃以下とする。
加湿空気処理では、H2O濃度が10〜30体積%の加湿空気と鋼片とを接触させる。H2Oの濃度は、好ましくは15〜28体積%、さらに好ましくは20〜25体積%である。
加湿空気処理を行った後、デスケーリングを実施する。デスケーリングでは、高圧水デスケーリングが一般的であるが、メカニカルデスケーリングを実施してもよい。
表1に示す化学成分組成の鋼材スラブAおよびBを溶製した。
スラブAから機械加工で20mm×20mm×2mmの鋼片を試料として採取した。この板状試料の表面の一部にスパッタリングでマーク(膜厚1μmのPt薄膜)を付けた。この試料を、雰囲気制御型熱処理装置に設置し、N2雰囲気(N2フロー)下、10℃/分の昇温速度で加熱した。次いで雰囲気を(ア)大気フロー及び(イ)水蒸気(H2O)を10体積%含む加湿空気フロー(加湿空気処理)のいずれかに切り替え、1200℃で30分間保持した後、N2雰囲気(N2フロー)に戻し、10℃/分の速度で降温した。
スラブAから機械加工でφ8.0mm×12mmの円柱状鋼片を試料として採取し、その側面をRmax≦6μmの表面粗さ(最大高さ)に研磨した後、実験例1Aと同様に熱処理した。熱処理後、円柱状試料を加工フォーマスター試験装置にセットし、真空中で1000℃まで昇温し、試料を圧縮(圧縮歪率:50%、歪速度:10mm/秒)してスケールを剥離させた。剥離後の2次スケール生成を抑制するため、試料をAr雰囲気中で室温まで急冷した後、下記式に基づき、残留したスケールの面積率を調べた。
残留スケール面積率(%)=(残留スケール面積/全面積)×100
なお残留スケール面積は、光学顕微鏡観察に基づいており、具体的には試料側面(曲面)全体を平面に投影した側面全図を出して画像処理することによって求めた。
結果を表2に示す。
スラブAから機械加工で20mm×20mm×2mmの鋼片を試料として採取し、実験例1Aと同様にしてマーク(Pt薄膜)を付けた。この試料を、雰囲気制御型熱処理装置に設置し、N2雰囲気(N2フロー)下、10℃/分の昇温速度で加熱した。次いで(1)雰囲気を燃焼ガスフロー(燃焼ガス組成:71体積%N2−1体積%O2−10体積%CO2−18体積%H2O)に切り替え、温度1250℃で30分間保持する第1熱処理を行った。続いて(2a)H2Oを10体積%又は30体積%含む加湿空気フロー下、鋼片温度1200℃で3〜10秒間保持する第2熱処理(加湿空気処理)を行った後、又は(2b)この第2熱処理を行うことなく直ちにN2雰囲気(N2フロー)に戻し、10℃/分の速度で降温した。
熱処理後の試料の内方酸化層厚さ及び内部酸化層厚さを実験例1Aと同様にして調べた。結果を表3に示す。
スラブAから機械加工でφ8.0mm×12mmの円柱状鋼片を試料として採取し、その側面をRmax≦6μmの表面粗さ(最大高さ)に研磨した後、実験例2Aと同様に熱処理した。熱処理後、実験例1Bと同様にして残留したスケールの面積率を調べた。結果を表3に示す。
スラブBから試料を採取し、処理温度を1150℃にした以外は、実験例1A、1Bと同様にした。結果を表4に示す。
スラブBから試料を採取し、第2熱処理温度(加湿空気処理温度)を1150℃にした以外は、実験例2A、2Bと同様にした。結果を表5に示す。
スラブ(C:0.35%、Si:0.3%、Mn:0.8%、Cr:1.0%、Mo:0.2%、残部鉄及び不可避不純物)から試料を採取し、加湿空気処理温度を1150℃にし、加湿空気でのH2O濃度を0〜40体積%の間で適宜変更する以外は、実験例1Aと同様にした。結果を図1に示す。
Claims (3)
- 鋼片を加熱炉から取り出し、デスケーリングした後、熱間圧延する鋼板の製造方法において、
前記鋼板はSiを0.2〜2%(質量%の意味。鋼の化学成分において以下同じ。)含有するSi含有鋼板であり、
前記加熱炉では、O2濃度2体積%以下の燃焼ガス雰囲気下、鋼片を加熱炉温度1250〜1350℃で、30〜120分間加熱するものとし、
前記加熱炉から取り出した後であってデスケーリング前に、1100〜1250℃の鋼片温度で10秒を超えない範囲で、H2Oを10〜30体積%含む加湿空気を鋼片と接触させることを特徴とするSi含有熱延鋼板の製造方法。 - 前記鋼板は、C:0.02〜0.6%、Si:0.2〜2%、Mn:0.2〜3%、及びS:0.005%以下(0%を含まない)を含有する請求項1に記載のSi含有熱延鋼板の製造方法。
- 前記鋼板は、さらにAl:0.05%以下(0%を含まない)、Cr:0.3%以下(0%を含まない)、Mo:0.2%以下(0%を含まない)、Ti:0.2%以下(0%を含まない)及びCa:0.003%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項2に記載のSi含有熱延鋼板の製造方法。
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