JP5126777B2 - メルカプト化合物を含有する毛髪処理剤 - Google Patents

メルカプト化合物を含有する毛髪処理剤 Download PDF

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Description

本発明は、メルカプト化合物を含有する弱酸性から中性領域で使用可能な毛髪処理剤に関し、より詳しくは特にパーマネントウエーブ加工用薬剤に好適な毛髪処理剤、ならびにこれを用いる毛髪のパーマネントウエーブ加工方法に関する。
パーマネントウエーブは2つの工程により形成されることが知られている。即ち、還元剤の作用により毛髪のシスチン(ジスルフィド)結合を還元切断する工程と、その後の酸化剤を使用した中和または固定工程であり、この後者の工程によりシスチン(ジスルフィド)結合が復元する。
従来、毛髪のパーマネント加工で使用される化合物は、チオグリコール酸、システイン、アセチルシステイン、およびこれらの塩類などの一般にケラチン還元物質ともいわれる化合物が使用されてきた。これらの従来のケラチン還元物質ともいわれる化合物は、毛髪のパーマネント加工用としてアルカリ性条件下で実用的な性能を有するため、多くのパーマ液はpH9.5程度のアルカリ性に調整されている。しかし、アルカリ性に調整されたパーマ液は、毛髪や頭皮の損傷を引き起こすことが知られており、これら不都合を解決するために中性から弱酸性のpH領域(pH:3〜8、25℃)で使用可能なケラチン還元物質の開発が進められている。
このようなpH領域で使用されるケラチン還元物質としては、メルカプトグリコール酸アミド誘導体およびメルカプト乳酸アミド誘導体の使用が検討されている(例えば、特許文献1)。さらには、弱酸性で効果を発揮するとされるシステアミンの使用も検討されている(例えば、特許文献2)。
しかしながら、従来より用いられてきたシステインは、弱酸性〜酸性でのウエーブ性能が充分ではなかった。
特許文献1に提案されたメルカプトカルボン酸アミドには、皮膚刺激性があることは既に知られており、また特許文献2に提案されたシステアミンは、パーマ処置後の頭髪が独特の臭気を有するという問題がある。
特表2000−507272号公報 特開平03−271214号公報
このように従来より提案されていたケラチン還元物質では、必ずしも所望のパーマネントウエーブ加工用薬剤は得られていないのが現状であった。
すなわち、本発明は、特に皮膚への刺激が少ない中性から弱酸性のpH領域においても、毛髪のパーマネントウエーブ加工またはくせ毛直しなどの処理が可能であるとともに、処理後の頭髪に残存する臭気を低減した毛髪用処理剤を提供することを目的としている。
また、本発明は、上記改善処方のパーマネントウエーブ加工用薬剤、および上記毛髪用処理剤をパーマネントウエーブ用薬剤として用いるパーマネントウエーブ加工方法を提供することをも目的としている。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定のメルカプト化合物をケラチン還元性物質と
して含有する毛髪処理剤により、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の[1]〜[7]の事項を含むものである。
[1]下記式(1)で示される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする毛髪処理剤;
Figure 0005126777
(式中、Rは、水酸基、ウレイド基、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)。
[2]前記式(1)のRが水酸基であることを特徴とする上記[1]に記載の毛髪処理剤。
[3]前記式(1)で示される化合物が、1−メルカプトプロパン−2−オンオキシム、または2−(N−アミノカルボニルヒドラゾノ)−プロパン−1−チオールであることを特徴とする上記[1]に記載の毛髪処理剤。
[4]前記式(1)で示される化合物の含有量が、還元物質の含有率(チオグリコール酸換算)で、0.2〜30質量%であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の毛髪処理剤。
[5]pHが3.0〜8.0であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の毛髪処理剤。
[6]パーマネントウエーブ加工用薬剤であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の毛髪処理剤。
[7]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の毛髪処理剤をパーマネントウエーブ加工用薬剤として用いることを特徴とする毛髪のパーマネントウエーブ加工方法。
本発明の毛髪処理剤は、皮膚への刺激が少ない中性から弱酸性のpH領域において、毛髪に対する優れたパーマネント加工性能およびくせ毛直し性能を有する。また、上記メルカプト化合物含有濃度が低濃度であっても、パーマネントウエーブ形成またはくせ毛直しなどの処理を有効に行うことができる。さらに、本発明の毛髪処理剤は、パーマネントウエーブ加工またはくせ毛直しなどの処理を施した毛髪に臭気が残存しにくい性質をも有する。
このように、本発明の毛髪処理剤は、中性から酸性領域のpH領域においても、従来のパーマネントウエーブ加工用薬剤に比べて安定したウエーブ効率を示すとともに、処理後の毛髪に残存する臭気を低減することができる。そのため、特にパーマネントウエーブ加工用薬剤として好適である。
したがって、本発明の毛髪処理剤は、パーマネントウエーブ加工用薬剤として、毛髪の
パーマネントウエーブ加工方法に好適に用いられる。
以下、本発明について具体的に説明する。
なお、本明細書において「毛髪処理剤」とは、一般に、毛髪のウエーブを形成する、またはウエーブを伸ばすパーマネントウエーブ加工用薬剤と称するもの、あるいは毛髪のウエーブを矯正する毛髪矯正剤と称するもののほか、毛髪矯正剤として使用されるヘアウオーター、ヘアワックス、ヘアムースおよび頭髪用ジェル、ヘアケア剤として使用されるシャンプー、リンス、コンディショナーおよびトリートメントなど、毛髪に適用されるすべての処理剤を含む広義の意味である。
また、パーマネントウエーブ加工処理とは、パーマネントウエーブ形成処理、パーマネントウエーブ形成処理によるウエーブのばし処理、および縮毛矯正処理を含めたものをいう。したがって、本明細書において「パーマネントウエーブ加工用薬剤」とは、パーマネントウエーブ形成処理用薬剤、パーマネントウエーブ形成処理によるウエーブのばし処理用薬剤、および縮毛矯正処理用薬剤を含む広義の意味である。
以下、本発明の毛髪処理剤において、特に好適な態様であるパーマネントウエーブ加工用薬剤を主に説明する。
<メルカプト化合物>
本発明の毛髪処理剤には、下記式(1)で示されるメルカプト化合物の少なくとも1種が含まれている。
Figure 0005126777
上記式中、Rは、水酸基、ウレイド基、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。
Rとしては、水酸基、またはウレイド基のほか、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポシキ基、ブトキシ基などが挙げられる。なかでも水酸基であると、ウエーブ効率がよく、水溶液として使用されるパーマ液への溶解度も比較的高く、液調製の点で好ましい。
なお、ウレイド基とは、下記式(2)で表わされる1価の置換基である。
Figure 0005126777
式(1)で示される化合物としては、具体的には、たとえば、1−メルカプトプロパン−2−オンオキシム、2−(N−アミノカルボニルヒドラゾノ)−プロパン−1−チオール、2−ブチルイミノ−プロパン−1−チオール、2−エトキシイミノ−1−メルカプトプロパンが挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、1−メルカプトプロパン−2−オンオキシムが、パーマネントウエーブ加工性能、毛髪のくせ毛直しまたはカール伸ばしなどの毛髪矯正性能の観点、および工
業的な製造の容易さの点から好ましい。
これらの化合物は、既知の方法に準じて製造可能である。例えば、市販のハロゲン化物のハロゲン原子をメルカプト基で置換することで合成できる。具体的には、市販のハロゲン化合物と水硫化ナトリウムとを反応させることにより、式(1)で示される化合物を得ることができる。
このような特定のメルカプト化合物を毛髪処理剤の主成分として使用すると、毛髪に悪影響を与えない低pHで作用するとともに、良好なウエーブ効果を発揮する。その理由は明確ではないものの、分子内にイミン構造を持つことにより、中〜酸性域でもキューティクル内へ浸透しやすくなり、還元剤として機能を発揮すると思料される。また、上記メルカプト化合物は化合物自体にほとんど臭気がないため、このような特定のメルカプト化合物を主成分として含有することにより、パーマネントウエーブ形成処理またはくせ毛直しなどの処理を施した後、毛髪に残存しがちであった独特の臭気を抑制することができる。
<溶剤>
本発明の毛髪処理剤は、上記式(1)で示されるメルカプト化合物を溶剤に溶解、分散、乳化、懸濁させて使用することが望ましい。溶剤としては、水が好ましい。
本発明の毛髪処理剤に用いることのできる水としては、特に限定されないが、イオン交換水、蒸留水、精製水などの精製工程を経たものが好ましい。
<その他>
本発明の毛髪処理剤には、本発明の効果を損なわない範囲内で、従来から使用されているケラチン還元物質を併用してもよい。該ケラチン還元物質としては、チオグリコール酸、チオ乳酸、システイン、アセチルシステイン、システアミン、アシルシステアミン、ジチオグリコールおよびそれらの塩類、または亜硫酸塩などが挙げられる。これらを併用する場合、該ケラチン還元物質の量は、上記式(1)示されるメルカプト化合物との合計量に対し、0.01〜50.0(質量%)程度であるのが望ましい。
上記式(1)で示されるメルカプト化合物は常温ではオイル状であるため、たとえば水などの親水性溶媒と混合しにくく、2層分離してしまうことがある。これらを回避するために、本発明の毛髪処理剤にさらに界面活性剤を配合してもよい。
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両イオン性、非イオン性のいずれであってもよく、また、シリコン系界面活性剤であっても、バイオサーファクタントであってもよい。
たとえば、アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸
塩、ジアルキルスルホコハク酸モノジウム塩、ジソジウムアルキルアミドエチルスルホコハク酸エステル、α-スルフォン化脂肪族アルキルエステル塩、ナトリウムN-メチル-N-オレイルタウリン、ソジウムアルキルイセチネート、石油スルフォン酸塩、アルキル硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルメチルカルボン酸塩、ナフタリンスルフォン酸塩ホルマリン縮合物などが例示される。
また、非イオン性界面活性剤としては、炭酸アルキレン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキ
シプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルグリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノ(ジ)エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ひまし油、脂肪酸ジエテノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
陽イオン界面活性剤としては、第1〜3級脂肪アミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2-アルキル-1-ア
ルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N-ジアルキルモルフォリニウム塩、
ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の塩、ポリエチレンポリアミン脂肪アミドの尿素縮合物の第4級アンモニウム塩などのハロゲン化物、オキソ酸塩、脂肪酸塩などが例示される。
両イオン界面活性剤としては、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N−トリメチル−N−アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N−アシルアミドプロピル−N`,N`−ジメチル−N`−β−ヒドロキシプロ
ピレンアンモニオスルホベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニオベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリウニウムベタインなどが例示される。
シリコン系界面活性剤としては、ジメチコンコポリオール(ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体)などが挙げられる。
バイオサーファクタントとしては、サーファクチンのナトリウム塩が挙げられる。サーファクチンとは7分子のアミノ酸からなる環状ペプチドの親水性部位と、長い脂肪酸残基による疎水性部位とで構成され、環の両端には二個のカルボキシル基があり、全体として2価のアニオンチャージを持つ。環状ペプチドは2分子のD−ロイシンを含み、L−ロイシンがL−バリンまたはL−イソロイシンに置換されていてもよい。また脂肪酸には鎖長と分岐位置は適宜選択される。
界面活性剤を使用すると、前記溶剤と、上記メルカプト化合物とを均一に混合(分散)させることが可能となる上、しかも混合したエマルジョンも分離しにくくなる。
界面活性剤の配合量はその使用目的、組成物の粘度に応じて適宜選択されるが、毛髪処理剤中0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜5質量%の量で使用される。
本発明の毛髪処理剤には、さらに、毛髪の加工性能を向上させる目的および使用形態に応じて、種々の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、膨潤剤、浸透促進剤、緩衝剤、油剤、増粘剤、毛髪保護剤、湿潤剤、乳化剤、pH調整剤、香料、染料、安定化剤、臭気マスキング剤などを用いることができる。
膨潤剤あるいは浸透促進剤としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン、エチルカルビトール、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、尿素、2−メチルピロリドンなどが挙げられる。
緩衝剤としては、無機緩衝剤のほか、アルギニン、リジン、ジメチルイソソルビド、コハク酸ジエトキシエチル、トリイソステアリン酸などの塩基性アミノ酸を含む緩衝剤が挙げられる。
油剤としては、炭酸アルキレン、パラフィン、流動パラフィン、ミツロウ、スクワラン、ホホバ油、オリーブ油、エステル油、トリグリセリド、ワセリン、ラノリンなどが挙げられる。
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸塩、ペクチン、トラガントガム、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコール、カオリン、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ウンデシル酸、イソステアリン酸などの脂肪酸、ワセリンなどが挙げられる。
毛髪保護成分としては、コラーゲンやケラチンなどの加水分解物およびその誘導体などが挙げられる。
湿潤剤あるいは乳化剤としては、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ソルビトール、植物抽出エキス、ビタミン類、ヒアルロン酸塩、コンドロイチン硫酸塩、カチオン性、アニオン性、両性、非イオン性の界面活性剤やポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテルなどのエーテル型非イオン界面活性剤、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコンオイル、アルコール変性シリコンオイル、フッ素変性シリコンオイル、ポリエーテル変性シリコンオイル、アルキル変性シリコンオイルなどのシリコン誘導体などが挙げられる。
pH調整剤としては、塩酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、シュウ酸などの有機酸あるいは、そのナトリウム塩、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ剤が挙げられる。
安定剤としては、過剰還元防止を目的として、還元化合物のジスルフィド体のほか、ジチオジグリコール酸などがあげられる。
その他の添加剤としては、キレート剤として、エデト酸およびその金属塩、グルタミン酸4酢酸およびその金属塩、アスパラギン酸4酢酸およびその金属塩、プロピルジアミン4酢酸およびその金属塩などが挙げられる。
<毛髪処理剤>
本発明の毛髪処理剤は、少なくとも上記式(1)で示されるメルカプト化合物を含有している。
該毛髪処理剤の具体的な態様としては、パーマネントウエーブ加工用薬剤、毛髪矯正剤などが好ましく挙げられる。毛髪矯正剤は、主として、毛髪のくせ毛直し、カール伸ばし、いわゆる寝ぐせの改善のほか、カール形成などにも好適に使用される処理剤である。
上述したように、本発明の毛髪処理剤の用途に特に制限はなく、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアウオーター、ヘアワックス、ヘアムース、頭髪用ジェルなどとして用いられる。これらの中では、シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアウオーター、またはヘアムースからなる群より選ばれるいずれかの毛髪化粧料として好ましく用いられる。
本発明の毛髪処理剤には、上記式(1)で表されるメルカプト化合物が還元物質の含有率(チオグリコール酸換算)で、0.2〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%となる量で含有されている。メルカプト化合物の含有量がこの範囲にあると、毛髪や皮膚へのダメージがなく、ウエーブ効率を高く保持することができる。
還元物質の含有率が0.2質量%未満では、毛髪処理剤としての性能が全くでない場合がある。一方、30質量%を越えると、毛髪の極端な縮毛、キューティクルの部分剥離が促進されることで毛髪ダメージが大きくなることがある。
また、本発明の毛髪処理剤は、このような特定のメルカプト化合物を主成分として含有することにより、従来から使用されているシステアミンなどのケラチン還元物質と比して、パーマネントウエーブ形成処理またはくせ毛直しなどの処理を施した後の毛髪に残存しがちな独特の臭気を効果的に抑制することができる。
本発明では、毛髪処理剤として所望の配合比となるように、予め調整した薬剤を使用しても良いし、使用する直前に各薬剤を混合する用事調整で使用しても良い。用事調整の場合には、本発明の上記式(1)で表されるメルカプト化合物以外を含む薬剤に、当該メルカプト化合物原液あるいは結晶をそのまま添加する方式でも良いし、当該メルカプト化合物を膨潤剤や浸透促進剤などの添加剤で希釈した溶液を混合、溶解する方式でも良い。
なお、還元物質の含有率(チオグリコール酸換算)とは、医薬部外品に関するパーマネントウエーブ用剤品質規格で施術ごとに定められたケラチン還元性物質濃度の表記法であり、下記の方法に準じて測定された濃度である。
[還元物質の含有率(チオグリコール酸換算)の測定方法]
試料10mLを100mLのメスフラスコに取り、化粧品原料基準に適合する精製水(以下、単に「水」と記載する。)を加えて全量を100mLとし、これを試験溶液とする。
試験溶液20mLを正確に取り、水50mLおよび30%硫酸5mLを加え、穏やかに加熱し、5分間煮沸する。冷却後、0.1Nヨウ素液で滴定し、その消費量をAmLとする(指示薬:デンプン試液 3mL)。得られた滴定結果を下式によりチオグリコール酸換算の含有率として算出する。
還元物質の含有率(チオグリコール酸換算)(%)=0.4606×A
また、化粧品分類のパーマネントウエーブ用剤(カーリング剤)も同様の規制値により使用量が規定されている。
なお、メルカプト化合物に加えて、チオグリコール酸、チオ乳酸などのケラチン還元物質を添加する際には、調整後のパーマネントウエーブ用液の総還元力の分析値が上記の範囲内となるように混合量を調整することが好ましい。
この場合、還元物質含有量のうち50モル%以上が、上記式(1)のメルカプト化合物であることが好ましく、更に好ましくは、75モル%以上、もっとも好ましくは、90モル%以上である。50モル%以下の場合には、弱酸性〜中性でのウエーブ効率が充分でない。
本発明の毛髪処理剤は、上記式(1)で示されるメルカプト化合物を含む限り、特にその形態に制限はなく、例えば、液状、泡状、ゲル状、クリーム状、ペーストなどの形態で
使用可能である。そして、その形態によって液タイプ、スプレータイプ、エアゾールタイプ、クリームタイプ、ゲルタイプ等、種々のタイプの薬剤として使用できる。
本発明の毛髪処理剤のpHについては特に制限は無く、pH9程度のアルカリ性で使用しても良いが、好ましくはpH3.0〜8.0、更に好ましくはpH3.5〜8.0、もっとも好ましくはpH6.0〜7.5の範囲で使用することが好ましい。なお、本発明の毛髪処理剤をパーマネントウエーブ加工用薬剤として使用した場合、アルカリ性であってもウエーブ効果があるものの、中性、弱酸性になるほどその効果が大きくなる。なお、pHは室温(23℃)でpHメーターを用いて測定される値である。
処理剤のpHが上記範囲にあると皮膚刺激性も少なく、毛髪や頭皮の損傷を引き起こす原因となりにくい傾向にある。また、本発明の毛髪処理剤は、pHを上記範囲内として使用してもパーマネント加工の実用的な性能を発揮することができる。上記範囲内に薬剤のpHを制御するためには、例えば上記pH調整剤を処理剤に添加することによって行うことができる。
本発明の毛髪処理剤では、上記したメルカプト化合物を含んでいるので、皮膚への刺激が少ない中性から弱酸性のpH領域において、毛髪のパーマネントウエーブ加工性能に優れている。
[パーマネントウエーブ加工方法]
本発明のパーマネントウエーブ加工方法は、上述した毛髪処理剤をパーマネントウエーブ加工用薬剤として使用する限り、特に制限されるものではないが、例えば、毛髪に対するパーマネントウエーブ加工処理の方法としては、下記(1)〜(4)の工程からなる方法が挙げられる。なお、パーマネントウエーブ加工処理とは、上述したように、パーマネントウエーブ形成処理、パーマネントウエーブ形成処理によるウエーブのばし処理、および縮毛矯正処理を含めたものをいう。
(1)本発明のメルカプト化合物を含む薬液で毛髪を湿潤し、毛髪に型付けをするためのロッドで巻き込む。
なお、縮毛矯正の際には、ロッドを使用しない。また、水巻などで毛髪を固定してからケラチン還元液で湿潤しても良い。
(2)薬液を湿潤した後、室温にて放置する。その際、30℃から40℃程度の温度に加温することが好ましい。
(3)酸化剤を含有する組成物によってメルカプト化合物を酸化し、毛髪を固定する。
(4)固定した毛髪からロッドを取り外し、毛髪を洗浄、シャンプー処理をし、乾燥する。
なお、(3)で使用する酸化剤としては、一般的に使用される臭素酸ナトリウムの3〜8質量%程度の水溶液や過酸化水素、過ホウ酸ナトリウムなどの希釈液が使用できる。
本発明によれば、上記したパーマネントウエーブ加工用薬剤を使用しているので、皮膚に対する影響も少なく、ウエーブ効率にも優れており、かつ処理後の毛髪に残存しがちな臭気を低減することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお、本発明のメルカプト化合物を含むパーマネントウエーブ加工用薬剤を第1剤または第1液、酸化剤を含有する組成物を第2剤または第2液とよぶこともある。
[合成例1]
2−(N−アミノカルボニルヒドラゾノ)−プロパン−1−チオール
70%水硫化ナトリウム(80g、1mol、純正化学株式会社)をメタノール(60g、純正化学株式会社)と精製水(蒸留後にイオン交換フィルターを通した水、60g)との混合溶媒に溶解した。室温で1−クロロ−2−プロパノン(97g、1mol、純度
95%、東京化成工業株式会社)を滴下した。滴下終了後、70℃まで昇温し2時間攪拌した。
その後、溶液を10℃以下に保ちながら、濃塩酸を滴下し、pH7に調整した。エバポレーターで反応液を約1/4質量まで濃縮して、析出する無機塩をろ過により除去した液を減圧蒸留することにより、1−メルカプト−2−プロパノン(69g、60℃/0.4kPa、収率77%)を得た。
1−メルカプト−2−プロパノン(45g、0.5mol)とヒドラジンカルボキサミド塩酸塩(58g、0.5mol、東京化成工業株式会社)をエタノール(180g、純正化学)に溶解し、室温で1時間攪拌した。その後、精製水(720g)を混合し、析出した結晶を濾別し、室温で減圧乾固して白色結晶2−(N−アミノカルボニルヒドラゾノ)−プロパン−1−チオール(60g、収率82%)を得た。
[実施例1]
下記の方法に従い、メルカプト化合物として、市販の1−メルカプトプロパン−2−オンオキシム(アルドリッチ社製)を含有するパーマネントウエーブ用第1液、およびパーマネントウエーブ用第2液を調整し、パーマネントウエーブ処理を行い、ウエーブ効率を求めた。
[実施例2]
下記の方法に従い、合成例1で得られたメルカプト化合物を含有するパーマネントウエーブ用第1液、およびパーマネントウエーブ用第2液を調整し、パーマネントウエーブ処理を行い、ウエーブ効率を求めた。
パーマネントウエーブ用第1液の調製
まず、精製水80gに、それぞれ表1に示す組成に従い、ポリオキシエチレンセチルエーテル、プロピレングリコールを加え、その後リン酸二水素ナトリウムを加えて均一になるように攪拌した。攪拌しながらメルカプト化合物をそれぞれ表1に示す配合量で加えた。しばらく攪拌した後、実施例1についてはクエン酸を加えて表1に示すpHに調整し、全量が100gとなるよう、さらに精製水を加えた。実施例2および比較例1〜2についてはクエン酸を加えることなく、全量が100gとなるよう、さらに精製水を加えた。
このようにして得られた薬剤中の各メルカプト化合物の含有量は、チオグリコール酸還元力換算で2質量%に相当する。
パーマネントウエーブ用第2液の調製
臭素酸ナトリウム5g、および精製水95gを混合してパーマネントウエーブ用第2液を得た。
パーマネントウエーブ処理
ウェーブ効率をキルビー法(日本パーマネントウェーブ液工業組合、「Scienceof Wave revised edition」、第4刷、新美容出版株式会社、20
03年9月28日、p33参照)に基づき、キルビー器具(同文献参照)を用いて以下のようにして求めた。
まず、中国人毛髪(長さ約20cm)をキルビー器具に固定した。40℃に加温した上記パーマネントウエーブ用第1液に、固定した毛髪を20分間浸した。その後、第1液か
ら取り出した毛髪から液が滴らない程度に軽く拭き取った。
この毛髪に上記パーマネントウエーブ用第2液を湿潤させて、25℃で、10分間放置した。その後、流水を用いて毛髪を洗浄し、キルビー器具から毛髪を外した。
このようにして得られた乾燥毛髪の採寸を行い、下記ウェーブ効率計算式によりウェーブ効率を算出した。結果を表1に示す。
ウェーブ効率(%)=100−[100×(B−A)]÷(C−A)
A:キルビー器具の1番目と6番目の棒の間隔(棒の中心点を実測)
B:カールした毛髪の5山分の長さ
C:カールした毛髪を直線に伸ばした時の5山分の長さ
A、B、Cのいずれも単位はcm
[比較例1]
実施例1で用いたメルカプト化合物をシステイン5.26g(昭和電工株式会社製、チオグリコール酸換算で4質量%)に変更した以外は実施例1と同様にして、pH7.0のパーマネントウエーブ用第1液の調製を行った。得られたパーマネントウエーブ用第1液と、実施例1で調整したパーマネントウエーブ用第2液とを用いて、実施例1と同様にパーマネントウエーブ処理を行った。しかしながら、該パーマネントウエーブ用第1液はpH7.0においてはパーマネント加工性能が低く、キルビー器具を用いての測定が不可能であり、ウェーブ効率を算出することができなかった。
[比較例2]
実施例1で用いたメルカプト化合物をシステアミン3.35g(東京化成工業株式会社製、チオグリコール酸換算で2質量%)に変更した以外は実施例1と同様にして、pH6.5のパーマネントウエーブ用第1液の調製を行った。得られたパーマネントウエーブ用第1液と、実施例1で調整したパーマネントウエーブ用第2液とを用いて、実施例1と同様にパーマネントウエーブ処理を行い、ウエーブ効率を算出した。
結果を表1に示す。
Figure 0005126777
パーマネントウエーブ処理後の毛髪に残存する臭気に関する官能試験
実施例1および実施例2で得られたパーマネントウエーブ用第1液を40℃に加温し、pH6.5の条件下、該液中に中国人毛髪(長さ約20cm)を20分間浸した。その後、第1液から取り出した毛髪から液が滴らない程度に軽く拭き取りとった。
この毛髪を上記パーマネントウエーブ用第2液で湿潤させて、25℃下、10分間放置した。その後、流水を用いて毛髪を洗浄した後、毛髪を乾燥し臭気を評価した。
比較例2のシステアミンを含む第1剤も同様の処理、臭気評価を行い、この臭気を基準とした。これに対して改善されたと感じた人数をもとに下記の基準で評価した。
官能評価 0:6人のパネラー全てが改善していないと感じた。
官能評価 1:6人のパネラーのうち、1−2名が臭気改善効果を認めた。
官能評価 2:6人のパネラーのうち、3−4名が臭気改善効果を認めた。
官能評価 3:6人のパネラーのうち、5−6名が臭気改善効果を認めた。
その結果を表2に示す。
Figure 0005126777
以上により、特定のメルカプト化合物を含有するパーマネントウエーブ加工用薬剤は、中性から酸性領域のpH領域においても、安定したウエーブ効率が得られ、かつ処理後の毛髪に残存する臭気を低減することが判明した。

Claims (7)

  1. 下記式(1)で示される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする毛髪処理剤;
    Figure 0005126777
    (式中、Rは、水酸基、ウレイド基、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)。
  2. 前記式(1)のRが水酸基であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪処理剤。
  3. 前記式(1)で示される化合物が、1−メルカプトプロパン−2−オンオキシム、または2−(N−アミノカルボニルヒドラゾノ)−プロパン−1−チオールであることを特徴とする請求項1に記載の毛髪処理剤。
  4. 前記式(1)で示される化合物の含有量が、還元物質の含有率(チオグリコール酸換算)で、0.2〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪処理剤。
  5. pHが3.0〜8.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の毛髪処理剤。
  6. パーマネントウエーブ加工用薬剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の毛髪処理剤。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の毛髪処理剤をパーマネントウエーブ加工用薬剤として用いることを特徴とする毛髪のパーマネントウエーブ加工方法。
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