JP5126479B2 - 量子鍵配布システム及び受信装置 - Google Patents

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本発明は量子暗号システムに関し、特に光ファイバー通信により暗号秘密鍵を共有する量子鍵配布システムに関する。
インターネットの爆発的普及、電子商取引の実用化を迎え、通信の秘密保持・改竄防止や個人の認証など暗号技術の社会的な必要性が高まっている。現在、DES暗号のような共通鍵方式やRSA暗号をはじめとする公開鍵方式が広く用いられている。しかし、これらは「計算量的安全性」にその基盤を置いている。つまり、現行の暗号方式は計算機ハードウェアと暗号解読アルゴリズムの進歩に常に脅かされている。従って、特に銀行間のトランザクションや軍事・外交にかかわる情報などの極めて高い安全性が要求される分野では、原理的に安全な暗号方式が実用化されればそのインパクトは大きいものと予想される。
情報理論で無条件安全性が証明されている暗号方式にワンタイムパッド法がある。ワンタイムパッド法は通信文と同じ長さの暗号鍵を用い、暗号鍵を1回で使い捨てることが特徴である。非特許文献1において、現在BB84プロトコルとして広く知られている、ワンタイムパッド法に使用する暗号秘密鍵を安全に配送する具体的なプロトコルがベネット(Bennett)らによりはじめて提案された。そして、これを契機に量子暗号の研究が盛んになっている。量子暗号は物理法則が暗号の安全性を保証するため、計算機の能力の限界に依存しない究極の安全性保証が可能になる。現在多く検討されている量子暗号装置では1ビットの情報を単一光子の状態にエンコードして伝送する。これは、光子が他の量子系に比べると環境による擾乱に強いと同時に、既存の光ファイバー通信技術の活用により長距離の暗号鍵配布が期待できるためである。
理論的にその安全性が証明されている量子暗号装置では、非特許文献1に記載されているように、量子力学的2自由度系の2つの区別可能な状態とそれに共役な状態(その重ね合わせ状態)を利用して秘密鍵が安全に伝送される。盗聴行為は量子力学的状態に擾乱を与え、正規送受信者のデータ中のエラーから漏洩情報量が推定できるようにプロトコルが設計されている。このような情報通信に用いられる量子状態はしばしば量子情報と呼ばれる。量子情報を担う量子力学的2自由度系は量子ビットと呼ばれ、それは数学的にはスピン1/2系と等価である。以下、担体となる物理系が光子の場合について、従来技術を記述する。
本発明に関連する、光子を量子ビット担体とし長距離伝送のため光ファイバーを伝送路として用いる暗号鍵配布装置について、以下に従来技術を説明する。光子を用いた量子暗号装置については、非特許文献2〜4に詳細な説明がある。非特許文献1では、光子の持ち得る2つの偏波状態に情報をエンコードする、偏波コーディングと呼ばれる量子暗号装置の実装が提案された。しかしながら、偏波コーディングには伝送路中の偏波回転の実時間制御及び補償が必要となるため、光ファイバーを伝送路として用いる長距離暗号鍵配布システムの実装方法としてはあまり使われない。
長距離暗号鍵配布システムとしては、2連微弱光パルス間の相対位相に情報をエンコードする、位相コーディングと呼ばれる量子暗号装置の実装がやはりベネットらにより提案され、実現されている。
図3は非特許文献2〜4に記載がある、位相コーディングによる量子暗号装置の代表的実装例を示している。この量子暗号装置では、2つの非対称マッハツェンダー干渉計を光ファイバー伝送路で直列に連結した構造の光学干渉計が用いられる。送信部(Alice:アリス)側に装備された微弱レーザー光源301で発生した微弱な短光パルスを送信側の非対称マッハツェンダー干渉計302に入射することにより、光ファイバー伝送路303上にその長短尺光路差だけ空間的に分離したコヒーレント2連光パルス308を準備する。ここで、コヒーレントという言葉は、長短尺光路差の明確に定義された非対称マッハツェンダー干渉計302により2連パルスの2つのパルスの間に相対位相が明確に定義されていることを意味する。
2連光パルス308は光ファイバー伝送路303上を伝送中に擾乱を受けるが、それらの相対的位相関係や偏波面の関係は保存される。受信部(Bob:ボブ)側の非対称マッハツェンダー干渉計304により、2連光パルス308は3連光パルス309に変換され、下流側の2つの出力ポートに出力される。2つの出力ポートに接続された光子検出器305により、非対称マッハツェンダー干渉計304の2つの出力ポートに出力される3連光パルス309の中央の光パルス中に含まれる光子が0か1かを識別し記録する。3連光パルス309のうち中央の光パルスには、送信部側で非対称マッハツェンダー干渉計302の長尺部を通り受信部側の非対称マッハツェンダー干渉計304で短尺部を通ってきた光パルスと、送信部側で非対称マッハツェンダー干渉計302の短尺部を通り受信部側の非対称マッハツェンダー干渉計304で長尺部を通ってきた光パルスが寄与し、これら2つの寄与の干渉により2つの出力ポートへの強度比は2連光パルス308の光学遅延(相対的な位相)に正弦波関数的に依存する。この光学干渉システムにおいて2連光パルス308の光学遅延(相対的な位相)に変調を与えることにより、量子暗号の原理に基づく暗号鍵配布を行うことができる。
この目的のため、光パルスが非対称マッハツェンダー干渉計302を通過中に、そこに内包された位相変調器306で{0、π/2、π、3π/2}の4値の位相変調を行う。一方、光ファイバー伝送路303を伝送後の2連光パルス308が非対称マッハツェンダー干渉計304を通過中に、そこに内包された位相変調器307で{0、π/2}の2値の位相変調を行う。非対称マッハツェンダー干渉計302、304における光学遅延を適正に調整することにより、非特許文献1に提案された非直交4状態を用いる量子暗号鍵配布プロトコルを実行し、安全な鍵配布を行うことが可能である。
位相コーディングに基づく量子暗号装置は、光ファイバー伝送路との相性も良く、長距離鍵配布が可能であるというメリットがある。その一方で、送受信者がそれぞれ持つ非対称マッハツェンダー干渉計の相対光学遅延を光波長なみの精度で維持しなければならないという問題がある。これら送受信者に分散して配置された非対称マッハツェンダー干渉計の光学遅延は温度変化その他の原因により独立にゆらいだりドリフトしたりするため、光干渉効果は容易に消失する。この問題を解決するためには、両干渉計の相対光学遅延変化を測定装置で測定し、測定結果をフィードバックして相対光学遅延を一定に維持するアクティブな制御装置が必要となる。このような測定装置はそれ自体がシステムを複雑化するだけでなく、測定に用いる参照光がシステムノイズを増加させ、量子暗号装置の性能劣化の原因となる。
このような問題を解決するため、非特許文献5〜7に開示されているように、平面光回路(PLC: Planar Lightwave Circuit)技術を応用した量子暗号装置が提案され開発されている。非対称マッハツェンダー干渉計を、シリコン基板上にパターニングで形成した光導波路で作製することにより、外乱の影響を受けることのない安定な光学干渉計を、温度制御というパッシブな制御のみによって実現することができ、低雑音のシステムを構築できるというメリットがある。
しかし、PLCを用いた実装の場合、先に示したような位相変調器を内包した低損失な非対称マッハツェンダー干渉計を製作することは現状技術では容易ではない。コスト増は問題としないとしても、デバイスの光学損失の増加は、微弱光を情報担体として用いる量子暗号装置の性能劣化に直結するため、許容できない問題である。
この問題を解決するため、位相変調器を非対称マッハツェンダー干渉計の外部に配置した、図4に示すような量子暗号装置が提案され、開発されている。
この量子暗号装置では、送信部(Alice:アリス)側に装備された微弱レーザー光源401で発生した微弱な短光パルスを送信部側のPLCにより構成された非対称マッハツェンダー干渉計402に入射することより、光ファイバー伝送路403上にその長短尺光路差だけ空間的に分離したコヒーレント2連光パルス409を準備する。2連光パルス409は光ファイバー伝送路403上を伝送される。受信部(Bob:ボブ)側のPLCにより構成された非対称マッハツェンダー干渉計404により、2連光パルス409は3連光パルス410に変換され、下流側の2つの出力ポートに出力される。光子検出器405により、非対称マッハツェンダー干渉計404の2つの出力ポートに出力される3連光パルス410の中央の光パルス中に含まれる光子の有無を識別し記録する。
送信部側の非対称マッハツェンダー干渉計402の下流に直列に挿入接続した位相変調器406、407に、それぞれの位相変調器の2連光パルス409の通過時に同期してパルス的な変調信号を印加する。これにより、2連光パルス409の一方のパルスに選択的に{0、π/2、π、3π/2}の4値の位相変調を与え、もって2連光パルス409の光学遅延(相対位相)に4値変調を与える。一方、受信部側の非対称マッハツェンダー干渉計404の上流に直列に挿入接続した位相変調器408に、2連光パルス409の通過時に同期してパルス的な変調信号を印加する。これにより、2連光パルス409の一方のパルスに選択的に{0、π/2}の2値の位相変調を与え、もって2連光パルス409の光学遅延(相対位相)に2値変調を与える。非対称マッハツェンダー干渉計402、404における光学遅延を調整することにより、図3の量子暗号装置と同様に非特許文献1に提案された非直交4状態を用いる量子暗号鍵配布プロトコルを実行し、安全な鍵配布を行うことが可能である。
ベネット(Bennett)、ブラッサ-ド(Brassard)著 IEEEコンピュータ、システム、信号処理国際会議(IEEE Int. Conf. on Computers, Systems, and Signal Processing, Bangalore, India, p. 175 (1984)) ツビンデン(Zbinden)ほか著「Experimental Quantum Cryptography」、「INTRODUCTION TO QUANTUM COMPUTATION AND INFORMATION(ロー(Lo)ら編著)」(World Scientific、1998年出版)、120ページ エカート(Ekert)ほか著「Quantum Cryptography」、「The Physics of Quantum Information(ボウメスター(Bouwmeester)ら編著)」(Springer、2000年出版)、15ページ ジザン(Gisin)ほか著「Quantum Cryptography」 レビュー・オブ・モダン・フィジックス(Rev. Mod. Phys.)、74号(2002年出版)、145−195ページ 南部ほか著「BB84 Quantum Key Distribution System Based on Silica-Based Planar Lightwave Circuits」 ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn J. Appl. Phys.)、43号(2004年出版)、L1109ページ 木村ほか著「Single-photon Interference over 150 km Transmission Using Silica-based Integrated-optic Interferometers for Quantum Cryptography」 ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn J. Appl. Phys.)、43号(2004年出版)、L1217ページ 南部ほか著「One-way Quantum Key Distribution System based on Planar Lightwave Circuit」 ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn J. Appl. Phys.)45号、6A巻(2006年出版)、5344−5348ページ
上記技術の第1の問題点は、受信部側における位相変調器の光学損失である。位相変調器は典型的には3dB程度の損失を持ち、これがそのまま暗号鍵生成レートの低下につながる。
第2の問題点は、送信部側、受信部側の双方で位相変調器の高速制御が必要な点である。非対称マッハツェンダー干渉計の長短尺光路差は典型的には5ナノ秒程度であり、2連光パルスの片方だけに位相変調を行うためには1ナノ秒オーダーの高速な変調が必要になる。また、この高速変調を光パルスの通過に同期して与えるためには高精度な信号同期も必要となる。
本発明の目的は、受信部側から位相変調器を排除できるようにすることによって暗号鍵生成レートを向上することである。
本発明の他の目的は、従来のシステムよりも簡便な構成で済む量子鍵配布システムを提供することである。
本発明による量子鍵配布システムにおける送信装置は、BB84プロトコルに必要な非直交4状態を生成するために2つの位相変調器を並列に接続して用いることを特徴とする。
具体的に言えば、送信装置は、光パルスを発生するレーザー光源と、前記光パルスを受けてコヒーレントな2連光パルスを生成する光遅延回路、例えば非対称マッハツェンダー干渉計と、前記光遅延回路からの光路を2つに分岐する第1のカップラーと、前記第1のカップラーの各出力ポートに1つずつ接続された第1、第2の位相変調器と、前記第1、第2の位相変調器の出力を1つの光路に結合する第2のカップラーとを有し、前記第1の位相変調器では入射する光パルスに{0°、90°}の位相変調を施し、第2の位相変調器では入射する光パルスに{0°、180°}の位相変調を施すことにより符号化を行うことを特徴とする。
一方、本発明による量子鍵配布システムにおける受信装置は、位相変調器を必要とせず、送信装置からの2連光パルスの相対位相を分析するための光遅延回路、例えば非対称マッハツェンダー干渉計と、光パルスの到着時間を分析するための光学系とを含むことを特徴とする。
なお、受信装置においては、前記送信装置からの光パルスをカップラーで2つに分岐し、分岐した一方の光パルスを該受信装置側の前記非対称マッハツェンダー干渉計に、分岐した他方の光パルスを前記光学系にそれぞれ入射させるようにしても良いし、あるいはまた、前記送信装置からの光パルスを該受信装置側の前記非対称マッハツェンダー干渉計に入射させ、該非対称マッハツェンダー干渉計の内部に分岐用のカップラーを接続して分岐した光パルスを前記光学系に入射させるようにしても良い。
本発明によればまた、上記の送信装置と、上記の受信装置とを含む量子鍵配布システムが提供される。
本発明によれば、受信装置から位相変調器を排除することができるため、暗号鍵生成レートを向上することが可能である。また、これに伴って受信装置における位相変調器の制御が不要となるため、従来の量子鍵配布システムよりも簡便な構成の量子鍵配布システムを提供できる。
[発明の概念]
本発明による量子鍵配布システムの実施形態について説明する前に、本発明の概念を説明する。
本発明による量子鍵配布システムにおける送信装置では、まず微弱レーザー光源から発生した光パルスを非対称マッハツェンダー干渉計などの光遅延回路によって2連光パルスに変換する。次に、この2連光パルスを並列接続された2つの位相変調器に入射し、それらの出力光を結合したうえで光ファイバー通信路を通して受信装置へと送信する。
並列接続された位相変調器というのは、入力光である2連光パルスを2つの光路に分岐し、各光路に1つずつ位相変調器を配置し、その後再び2つの光路を結合させたものである。この並列接続された2つの位相変調器の入出力関係は以下の数1で表すことができる。
Figure 0005126479
上記数式において、Ein、Eoutは入出力光の複素電場振幅を、φ、φは各位相変調器による位相シフト量をそれぞれ表す。本発明ではそれぞれの位相変調は2値変調とし、φ={0°,90°}、φ={0°,180°}の値を採用する。この場合に出力される4つの状態の強度と位相は以下の表1のようになる。
Figure 0005126479
このような並列接続された2つの位相変調器を用いて、分岐された2連光パルスの各光パルスに個別に変調を施すことにより、BB84プロトコルに必要な非直交4状態を生成することができる。
第1の状態は、2連光パルスの前パルスに{φ}={0°,0°}の変調を、後パルスに{φ}={0°,180°}の変調をそれぞれ施す。これにより強度が1の前パルスのみの状態を生成できる。第2の状態は、第1の状態と同じ変調を逆の順序で施すことにより、強度が1の後パルスのみの状態を生成する。ここでは便宜上、これらの2つの状態を「Z基底に属する2状態」と呼び、それぞれにビット0、ビット1を割り当てる。この2状態は直交状態となっているため、適切な測定方法によって確実に識別することができる。
第3の状態は、2連光パルスの前パルスに{φ}={90°,0°}の変調を、後パルスに{φ}={90°,180°}の変調をそれぞれ施す。これによって強度が1/2で、前後パルスの相対位相が+90°ずれた2連光パルスを生成できる。第4の状態は、第3の状態と同じ変調を逆の順序で施すことにより、強度が1/2で前後パルスの相対位相が−90°ずれた2連光パルスを生成する。これら2つの状態を「Y基底に属する2状態」と呼び、再びビット0、1を割り当てる。これらの2状態もやはり直交状態となっているため適切な測定方法によって識別可能である。また、Z基底に属する状態とY基底に属する状態とは直交状態になっていないため、どのような測定方法を用いても誤りなく識別することは不可能である。
以上のように、2連光パルスと並列接続された2つの位相変調器によってBB84プロトコルに必要な非直交4状態を生成することができる。
本発明による量子鍵配布システムにおける受信装置では位相変調器を用いずに、2連光パルスの相対位相を分析するための非対称マッハツェンダー干渉計と、光パルスの到着時間を分析するための光学系とを含む分析系を2組並列に用意し、送信装置から送られた光パルスが各分析系に等確率で入射されるようにする。一方の分析系はY基底に関する測定を行い、他方の分析系はZ基底に関する測定を行うことができる。以下ではそれぞれの動作について説明する。
非対称マッハツェンダー干渉計に対してY基底に属する状態の2連光パルスが入射された場合の出力は3連光パルスとなり、その中央部分は入射前の2連光パルスが重ね合わさったものになる。2連光パルスの相対位相は、前記第1の状態では+90°、前記第2の状態では−90°であったので、非対称マッハツェンダー干渉計の長尺光路、短尺光路の位相差が+90°となるように設定しておくことによって、2連光パルスの相対位相は第1の状態では180°(逆位相)、第2の状態では0°(同位相)とすることができる。従って非対称マッハツェンダー干渉計の2つの出力ポートのどちらから光子が検出されたかによってY基底の2状態を識別することができる。
光パルスの到着時間を分析するための光学系に対してZ基底に属する状態の光パルスが入射した場合については、当然識別が可能である。なぜならZ基底の2つの状態とは、光パルスが前の時間スロットにある状態か後の時間スロットにある状態かであり、到着時間が異なる状態だからである。
以上のような原理、方法によって送信装置側で2つの非直交基底に属する4状態を生成し、受信装置側ではそれぞれの基底において2つの状態を識別することができる。従って本発明を用いてBB84プロトコルを実行し、安全に暗号鍵を共有することが可能である。
[実施形態の構成]
図1は本発明による量子鍵配布システムの実施形態の構成を示す図である。送信装置(Alice:アリス)101と受信装置(Bob:ボブ)102が光ファイバー通信路103によって接続されている。
送信装置101の構成は以下のようになっている。送信装置101に内蔵された微弱レーザー光源104の出力は、非対称マッハツェンダー干渉計などの光遅延回路105に入力され、続いてその出力は並列接続された2つの位相変調器(第1、第2の位相変調器)106−1、106−2に入射する。並列接続された2つの位相変調器106−1、106−2では、それらの入力側において50/50カップラー(第1のカップラー)106−3などによって2つの光路に分岐され、各光路に1つずつ配置された第1、第2の位相変調器106−1、106−2を通過した後再び2つの光路がカップラー(第2のカップラー)106−4で結合され、出力される。この出力は、送信装置101からの出力として光ファイバー通信路103に接続される。
次に受信装置102の構成を説明する。光ファイバー通信路103からの入力光は受信装置102に入力され、内部の50/50カップラー111などによって2つの光路に分岐される。その一方は非対称マッハツェンダー干渉計107へ、もう一方は光パルスの到着時間を分析する光学系108へそれぞれ接続され、それぞれの出力ポートには光子検出器109が接続される。
なお、図1に示す受信装置102の構成に代えて、図2に示すように、非対称マッハツェンダー干渉計201の内部に50/50カップラー202を接続して光パルスの到着時間を分析する光学系203へと分岐させた場合にも、この受信装置102’は図1に示す受信装置102と同様の機能を持つ。
[動作]
送信装置101に内蔵された微弱レーザー光源104から発生した光パルスは光遅延回路105に入射し、光路長の異なる長尺光路、短尺光路を通過した後再び結合されるために2連光パルスとなる。この2連光パルスに対し、並列接続された2つの位相変調器106−1、106−2を用いて、一方の位相変調器106−1では{0°、90°}の2値の位相変調を与え、もう一方の位相変調器106−2では{0°、180°}の2値の位相変調を与える。[発明の概念]の項で述べたように、これらの2つの位相変調器106−1、106−2によってBB84プロトコルに必要な4状態110を生成することができる。このように生成された光パルスは、光ファイバー通信路103によって受信装置102へと送信される。
受信装置102では、送信されてきた光パルスは50/50カップラー111などによって分岐され、非対称マッハツェンダー干渉計107、光パルスの到着時間を分析する光学系108にそれぞれ入射する。[発明の概念]の項で述べたように、非対称マッハツェンダー干渉計107ではY基底に属する2つの状態を識別できるため、もし送信されてきた光パルスがY基底に属する状態であれば、受信装置102はこれによってビットが0か1かを決定することができる。また逆に、到着時間を分析する光学系108ではZ基底に属する2状態を識別できるため、もし送信されてきた光パルスがZ基底に属する状態であれば、受信装置102はこれによってビットが0か1かを決定できる。
なお、Y基底の状態が送信されたにも関わらず到着時間を分析する光学系108で光子を検出してしまった場合や、その逆のZ基底が送信されたにも関わらず非対称マッハツェンダー干渉計107で光子を検出してしまった場合には、受信装置102はランダムな測定結果を得てしまうことになり、送信されたビット値を推測することができない。このためBB84プロトコルには、光パルスの送受信が完了した後に通常の通信路(図示せず)によって両者が使用した基底を公開し、基底の一致した光パルスによるイベントだけを抽出するという処理が含まれている(この際、ビット値は公開せずに基底のみを公開するため、この通信は盗聴されても構わない)。以上のような処理を行うことにより、安全に暗号鍵を共有することができる。
図1は本発明による量子鍵配布システムの実施形態の構成を示す図である。 図2は図1に示された受信装置の他の構成例を示す図である。 図3は従来の量子鍵配布システムの第1の例の構成図である。 図4は従来の量子鍵配布システムの第2の例の構成図である。
符号の説明
101 送信装置
102 受信装置
103 光ファイバー通信路
104 微弱レーザー光源
105 光遅延回路
106−1、106−2 並列接続された位相変調器
107 非対称マッハツェンダー干渉計
108 光パルスの到着時間を分析する光学系
109 光子検出器
110 BB84プロトコルに必要な4状態
111 50/50カップラー
201 非対称マッハツェンダー干渉計
202 50/50カップラー
203 光パルスの到着時間を分析する光学系

Claims (6)

  1. 光パルスを発生するレーザー光源と、前記光パルスを受けてコヒーレントな2連光パルスを生成する光遅延回路と、前記光遅延回路からの光路を2つに分岐する第1のカップラーと、前記第1のカップラーの各出力ポートに1つずつ接続された第1、第2の位相変調器と、前記第1、第2の位相変調器の出力を1つの光路に結合する第2のカップラーとを有し、前記第1の位相変調器では入射する光パルスに{0°、90°}の位相変調を施し、第2の位相変調器では入射する光パルスに{0°、180°}の位相変調を施すことにより符号化を行う量子鍵配布システム用の送信装置と組み合わせて用いられる受信装置であって、
    前記送信装置からの光パルスを受光してその位相差を分析する光遅延回路と、前記光パルスの到着時間を分析する光学系とを備え、
    前記送信装置からの光パルスをカップラーで2つに分岐し、分岐した一方の光パルスを該受信装置側の前記光遅延回路としての非対称マッハツェンダー干渉計に、分岐した他方の光パルスを前記光学系にそれぞれ入射させることを特徴とする受信装置
  2. 光パルスを発生するレーザー光源と、前記光パルスを受けてコヒーレントな2連光パルスを生成する光遅延回路と、前記光遅延回路からの光路を2つに分岐する第1のカップラーと、前記第1のカップラーの各出力ポートに1つずつ接続された第1、第2の位相変調器と、前記第1、第2の位相変調器の出力を1つの光路に結合する第2のカップラーとを有し、前記第1の位相変調器では入射する光パルスに{0°、90°}の位相変調を施し、第2の位相変調器では入射する光パルスに{0°、180°}の位相変調を施すことにより符号化を行う量子鍵配布システム用の送信装置と組み合わせて用いられる受信装置であって、
    前記送信装置からの光パルスを受光してその位相差を分析する光遅延回路と、前記光パルスの到着時間を分析する光学系とを備え、
    前記送信装置からの光パルスを該受信装置側の前記光遅延回路としての非対称マッハツェンダー干渉計に入射させ、該非対称マッハツェンダー干渉計の内部に分岐用のカップラーを接続して分岐した光パルスを前記光学系に入射させることを特徴とする受信装置。
  3. 請求項1に記載の送信装置及び受信装置を含むことを特徴とする量子鍵配布システム。
  4. 請求項2に記載の送信装置及び受信装置を含むことを特徴とする量子鍵配布システム。
  5. 前記送信装置は、
    並列接続された前記第1、第2の位相変調器を用い、分岐された2連光パルスの各光パルスに個別に変調を施すことにより、
    前記第1の位相変調器は分岐された2連光パルスのそれぞれに第1位相シフト量の変調を行い、前記第2の位相変調器は分岐された2連光パルスの一方のパルスに第1位相シフト量の変調を行い、他方のパルスに第1位相シフト量よりπ大きい変調を行うことで第1の状態を生成し、あるいは、
    前記第1の位相変調器は分岐された2連光パルスのそれぞれに第2位相シフト量の変調を行い、前記第2の位相変調器は分岐された2連光パルスの一方のパルスに第2位相シフト量よりπ大きい変調を行い、他方のパルスに第2位相シフト量の変調を行うことで第2の状態を生成し、または
    前記第1の位相変調器は分岐された2連光パルスのそれぞれに第3位相シフト量の変調を行い、前記第2の位相変調器は、分岐された2連光パルスの一方のパルスに第3位相シフト量よりπ/2小さい変調を行い、他方のパルスに第3位相シフト量よりπ/2大きい変調を行うことで第3の状態を生成し、もしくは
    前記第1の位相変調器は分岐された2連光パルスのそれぞれに第4位相シフト量の変調を行い、前記第2の位相変調器は、分岐された2連光パルスの一方のパルスに第4位相シフト量よりπ/2大きい変調を行い、他方のパルスに第4位相シフト量よりπ/2小さい変調を行うことで第4の状態を生成することを特徴とする請求項3又は4に記載の量子鍵配布システム
  6. 前記送信装置における前記光遅延回路として非対称マッハツェンダー干渉計を有することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の量子鍵配布システム
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