JP5124743B1 - 射出成形用ブッシュ - Google Patents
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Abstract
【課題】溶融状態の熱可塑性樹脂を金型に注入するためのスプルーブッシュやピンポイントゲートブッシュ等の射出成形用ブッシュにおいて、圧力損失の軽減と、サイクルタイムの短縮化と、使用材料の削減と、コストダウンとを、バランスよく高次元で実現する。
【解決手段】加熱溶融状態の熱可塑性樹脂を金型2に注入するための流路24を有するスプルーブッシュ1aであって、内部に流路24が形成された金属製の内筒部26と、内筒部26の外周に流路24の長手方向に沿って設けられた断熱層27と、断熱層27を覆って設けられた金属製の外筒部28とを備えている。金属製の内筒部26が断熱層27によって外筒部28から断熱されているため、金型2に樹脂を注入する際、流路24を流れる樹脂によって内筒部26が瞬時に昇温され、樹脂が高温状態に保たれたまま、高い流動性を維持して金型2内に注入される。
【選択図】図4
【解決手段】加熱溶融状態の熱可塑性樹脂を金型2に注入するための流路24を有するスプルーブッシュ1aであって、内部に流路24が形成された金属製の内筒部26と、内筒部26の外周に流路24の長手方向に沿って設けられた断熱層27と、断熱層27を覆って設けられた金属製の外筒部28とを備えている。金属製の内筒部26が断熱層27によって外筒部28から断熱されているため、金型2に樹脂を注入する際、流路24を流れる樹脂によって内筒部26が瞬時に昇温され、樹脂が高温状態に保たれたまま、高い流動性を維持して金型2内に注入される。
【選択図】図4
Description
本発明は、溶融状態の熱可塑性樹脂(以下、樹脂とも言う)を金型に注入するためのスプルーブッシュ等の射出成形用ブッシュに関する。
射出成形に用いる金型には、金型内に溶融状態の樹脂を注入するためのスプルーブッシュや、溶融状態の樹脂を金型内のキャビティに射出するためのピンポイントゲートブッシュ等の射出成形用ブッシュが取り付けられている。
スプルーブッシュは、射出成形機のノズルが密着されるノズルタッチ部を有すると共に、ノズルタッチ部に密着されたノズルから射出された樹脂(溶融状態)を金型内に注入するための流路(スプルー)が形成されたブッシュであり、上述のノズルが対向する金型の端部に装着される。ピンポイントゲートブッシュは、ノズルから金型内に注入された樹脂(溶融状態)を、金型内のキャビティに射出するための流路が形成されたブッシュであり、金型の内部に装着される。
従来、スプルーブッシュとして、(a)冷却無しの通常のスプルーブッシュ、(b)水冷式のスプルーブッシュ(特許文献1、2参照)、(c)通常よりも流路を細くしたスプルーブッシュ、が知られている。図5(a)は冷却無しの通常のスプルーブッシュ1xに樹脂jを流したときの断面図、図5(b)は水冷式のスプルーブッシュ1yに樹脂jを流したときの断面図、図5(c)は流路24を細くしたスプルーブッシュ1zに樹脂jを流したときの断面図である。図中、24はブッシュの流路、jは溶融状態の樹脂、fは樹脂のフローフロント、kは瞬時固化層、cは冷却水通路である。
従来のスプルーブッシュ1x、1y、1zには、以下のような課題が存在する。
(a)通常のスプルーブッシュ1x:図5(a)
一般にスプルーブッシュ1xは、流路24を通過する樹脂jの圧力損失(以下、圧損とも言う)が大きいと、樹脂jが金型内のキャビティの隅々まで行き渡り難くなってショートショット等の不具合が発生してしまうため、通常、流路24の断面積を大きめに設定している。
一般にスプルーブッシュ1xは、流路24を通過する樹脂jの圧力損失(以下、圧損とも言う)が大きいと、樹脂jが金型内のキャビティの隅々まで行き渡り難くなってショートショット等の不具合が発生してしまうため、通常、流路24の断面積を大きめに設定している。
しかし、圧損を抑えるべく流路24の断面積を大きめに設定すると、キャビティ内の樹脂(製品)以上に流路24内の樹脂jの固化に時間が掛かるケースが生じ、サイクルタイムが長くなりがちである。また、流路24の断面積を大きくすることで、流路24での使用材料が増えるため、樹脂jの有効利用率(投入した樹脂量に対する製品となった樹脂量の比)が悪く、生産コストの悪化を招く。
(b)水冷式のスプルーブッシュ1y:図5(b)
水冷式のスプルーブッシュ1yは、流路24の外側に冷却水の通路cを設け、この通路cを流れる冷却水によって流路24内の樹脂jを冷却するようにしている。これにより、流路24での樹脂jの固化時間が短縮され、サイクルタイムを短縮できる。
水冷式のスプルーブッシュ1yは、流路24の外側に冷却水の通路cを設け、この通路cを流れる冷却水によって流路24内の樹脂jを冷却するようにしている。これにより、流路24での樹脂jの固化時間が短縮され、サイクルタイムを短縮できる。
しかし、冷却水を循環させるエネルギーが必要であり、構造が複雑で、製造コストが高い。また、流路24の断面積(サイズ)は通常のスプルーブッシュ1xと変わりないので、使用材料の低減に繋がらない。
また、金型内に溶融状態の樹脂jを注入する際、冷却によって流路24内周面に生じる樹脂jの瞬時固化層kが厚くなるので、実質的な流路断面積が小さくなり、圧損が増大してしまう。圧損を抑えるために流路24の断面積を大きくすると、通常のスプルーブッシュ1xよりも使用材料が増加してしまう。
(c)流路を細くしたスプルーブッシュ1z:図5(c)
流路24を通常よりも細くして流路断面積を小さくしたスプルーブッシュ1zにおいては、流路24内の樹脂jの体積すなわち熱容量が通常よりも小さくなる。このため、流路24内の樹脂jの温度が低下し易く、冷却時間が短くなるため、サイクルタイムを短くできる。また、流路24での使用材料も低減できる。
流路24を通常よりも細くして流路断面積を小さくしたスプルーブッシュ1zにおいては、流路24内の樹脂jの体積すなわち熱容量が通常よりも小さくなる。このため、流路24内の樹脂jの温度が低下し易く、冷却時間が短くなるため、サイクルタイムを短くできる。また、流路24での使用材料も低減できる。
しかし、流路24を通常よりも細くして流路断面積を小さくしているので、圧損が大きく、ショートショット等の不具合が生じ易い。このため、射出圧を増加する必要がある。
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、圧損の軽減と、サイクルタイムの短縮化と、使用材料の削減と、コストダウンとを、バランスよく高次元で実現できる射出成形用ブッシュを提供することにある。
上述の目的を達成すべく創案された本発明に係る射出成形用ブッシュは、加熱されて溶融状態となった熱可塑性樹脂を金型に注入するための流路を有する射出成形用ブッシュであって、内部に前記流路が形成された金属製の内筒部と、内筒部の外周に流路の長手方向に沿って設けられると共に内筒部の外周に沿って周方向に連続したリング状に形成され、熱硬化性樹脂にフィラーが混合された断熱層と、断熱層を覆って設けられた金属製の外筒部と、外筒部の頂部に、断熱層と連通するように設けられた窪み部と、窪み部を覆うように内筒部と一体的に形成されており流路に連通するノズルタッチ部を有するフランジ部とを備え、フランジ部と窪み部とで区画された空間の少なくとも一部に、断熱層を成す断熱材が収容されたことを特徴とする射出成形用ブッシュである。
本発明に係る射出成形用ブッシュは、窪み部が、リング状に形成されることが好ましい。
本発明に係る射出成形用ブッシュは、フランジ部の熱伝導率が、外筒部の熱伝導率よりも小さいことが好ましい。
本発明に係る射出成形用ブッシュは、内筒部の肉厚が、流路の下流側から上流側に架けて徐々に厚くなっていることが好ましい。
本発明に係る射出成形用ブッシュは、内筒部は、外径が長手方向に沿って一定であり、流路の断面積に相当する内径が流路の上流側から下流側に架けて徐々に大きくなるように形成されることが好ましい。
本発明に係る射出成形用ブッシュは、内筒部の外周面の先端が、外筒部の内周面の先端に圧入されることが好ましい。
本発明に係る射出成形用ブッシュは、フランジ部の下面に凹部が形成され、凹部に外筒部の頂部が圧入され、外筒部の頂部に設けられた窪み部が凹部によって覆われることが好ましい。
本発明に係る射出成形用ブッシュは、断熱層の層厚が、流路の上流側から下流側に架けて徐々に薄くなっていることが好ましい。
本発明に係る射出成形用ブッシュは、フィラーの形状が、粉末状または短繊維状であることが好ましい。
本発明に係る射出成形用ブッシュは、フィラーが、ガラス、セラミック等の断熱性を有する材質から成ることが好ましい。
本発明に係る射出成形用ブッシュによれば、次の如き効果を発揮できる(図5(d)参照)。
(1)圧力損失の軽減
本発明に係る射出成形用ブッシュは、内部に樹脂の流路が形成された金属製の内筒部が、断熱層によって外筒部から断熱されており、内筒部の熱容量が、外筒部から熱的に遮断された限定されたものとなっている。このため、金型に樹脂を注入する際、流路を流れる樹脂によって、内筒部が瞬時に昇温され、樹脂が高温状態に保たれたまま、高い流動性を維持して金型内に注入され、圧力損失を軽減できる。
本発明に係る射出成形用ブッシュは、内部に樹脂の流路が形成された金属製の内筒部が、断熱層によって外筒部から断熱されており、内筒部の熱容量が、外筒部から熱的に遮断された限定されたものとなっている。このため、金型に樹脂を注入する際、流路を流れる樹脂によって、内筒部が瞬時に昇温され、樹脂が高温状態に保たれたまま、高い流動性を維持して金型内に注入され、圧力損失を軽減できる。
(2)サイクルタイムの短縮化
金型に樹脂を注入する際、内筒部が瞬時に昇温されるので、内筒部の内周面に樹脂の瞬時固化層が形成され難く、実質的な流路断面積を稼ぐことができる。よって、ブッシュの流路の小径化(小断面積化)を推進できる。流路を現状よりも小径化することで流路内の樹脂の体積すなわち熱容量が小さくなるため、樹脂の金型内への注入が完了した後、流路内の樹脂の温度が低下し易くなり、流路内の樹脂が速やかに固化する。よって、サイクルタイムの短縮化を図ることができる。
金型に樹脂を注入する際、内筒部が瞬時に昇温されるので、内筒部の内周面に樹脂の瞬時固化層が形成され難く、実質的な流路断面積を稼ぐことができる。よって、ブッシュの流路の小径化(小断面積化)を推進できる。流路を現状よりも小径化することで流路内の樹脂の体積すなわち熱容量が小さくなるため、樹脂の金型内への注入が完了した後、流路内の樹脂の温度が低下し易くなり、流路内の樹脂が速やかに固化する。よって、サイクルタイムの短縮化を図ることができる。
(3)使用材料の軽減
流路を現状よりも小径化することで、流路における使用材料を削減できる。よって、樹脂の有効利用率(投入した樹脂量に対する製品となった樹脂量の比)が向上し、低コスト化及び環境負荷の低減に繋がる。
流路を現状よりも小径化することで、流路における使用材料を削減できる。よって、樹脂の有効利用率(投入した樹脂量に対する製品となった樹脂量の比)が向上し、低コスト化及び環境負荷の低減に繋がる。
(4)低コスト化
射出される溶融状態の樹脂の温度を利用した所謂パッシブ方式なので、水冷式のように冷却水を積極的に循環させるエネルギーは不要であり、水冷式よりもランニングコストが低い。また、水冷式よりも構造が簡単なので、製造コストが安い。
加えて、ノズルタッチ部を有するフランジ部と窪み部とで区画された空間に収容された断熱材によって、ノズルからフランジ部への放熱が抑制されるため、ノズルの温度低下を抑制できる。よって、ノズルの温度低下に起因する樹脂の流動性悪化を抑制でき、ショートショット等の不具合を抑制できる。
射出される溶融状態の樹脂の温度を利用した所謂パッシブ方式なので、水冷式のように冷却水を積極的に循環させるエネルギーは不要であり、水冷式よりもランニングコストが低い。また、水冷式よりも構造が簡単なので、製造コストが安い。
加えて、ノズルタッチ部を有するフランジ部と窪み部とで区画された空間に収容された断熱材によって、ノズルからフランジ部への放熱が抑制されるため、ノズルの温度低下を抑制できる。よって、ノズルの温度低下に起因する樹脂の流動性悪化を抑制でき、ショートショット等の不具合を抑制できる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(金型)
図1及び図2に、本発明の好適実施形態に係る射出成形用ブッシュとしてのスプルーブッシュ1aが取り付けられた射出成形用の金型2を示す。図1は金型2を開いた状態、図2は金型2を閉じた状態を示す。金型2は、固定側取付板3、ランナーストリッパプレート4、固定側型板(キャビプレート)5、可動側型板(コアプレート)6、受け板7、スペーサブロック8、可動側取付板9を有し、それらが互いに平行に積層されるように配置されている。
図1及び図2に、本発明の好適実施形態に係る射出成形用ブッシュとしてのスプルーブッシュ1aが取り付けられた射出成形用の金型2を示す。図1は金型2を開いた状態、図2は金型2を閉じた状態を示す。金型2は、固定側取付板3、ランナーストリッパプレート4、固定側型板(キャビプレート)5、可動側型板(コアプレート)6、受け板7、スペーサブロック8、可動側取付板9を有し、それらが互いに平行に積層されるように配置されている。
固定側取付板3には、サポートピン10が固定されている。サポートピン10は、ランナーストリッパプレート4に形成された孔、キャビプレート5に形成された孔に挿通されている。サポートピン10の先端には、抜け止め用のフランジ部11が設けられている。サポートピン10は、図2に示すように金型2が閉じられたとき、コアプレート6、受け板7、スペーサブロック8に形成された孔に差し込まれる。
ランナーストリッパプレート4には、ストップボルト12及びプラーボルト13が固定されている。ストップボルト12は、固定側取付板3に形成された孔に挿通された大径部14と、大径部14の端部に形成された抜け止め用のフランジ部15とを有する。フランジ部15は、固定側取付板3の内部に形成された孔内を移動し、段差部に当接して抜け止めされる。プラーボルト13は、キャビプレート5に形成された孔に挿通されている。プラーボルト13の先端には、抜け止め用のフランジ部16が設けられている。プラーボルト13は、図2に示すように、金型2が閉じられたとき、コアプレート6、受け板7、スペーサブロック8に形成された孔に差し込まれる。
固定側取付板3とランナーストリッパプレート4との間には、それらを離間する方向に付勢する図示しないスプリングが設けられ、ランナーストリッパプレート4とキャビプレート5との間には、それらを離間する方向に付勢する図示しないスプリングが設けられている。よって、図2の金型閉じ状態から可動側取付板9を固定側取付板3から離間する方向に移動させると、上述したスプリングの付勢力により、キャビプレート5がランナーストリッパプレート4から離間し、ランナーストリッパプレート4が固定側取付板3から離間した後、コアプレート6がキャビプレート5から離間して、図1の状態となる。
キャビプレート5のコアプレート6側の面(パーティングライン面)には、実質的な製品の型の一方を構成するキャビティ型17が取り付けられ、コアプレート6のキャビプレート5側の面(パーティングライン面)には、実質的な製品の型の他方を構成するコア型18が取り付けられている。キャビティ型17とコア型18とによって実質的な製品の型であるキャビティ19(図2参照)が区画される。
キャビプレート5のランナーストリッパプレート4側の面(ランナー面)には、ランナー(樹脂通路)20用の凹部21が形成されている。凹部21には、図2に示すように金型2を閉じた状態としたとき、射出成形機のノズル22から射出された加熱溶融状態の熱可塑性樹脂(以下、樹脂とも言う)が、固定側取付板3に取り付けられたスプルーブッシュ1aを通して注入される。ランナー20用の凹部21に注入された樹脂は、キャビティ型17に取り付けられたピンポイントゲートブッシュ1bを通して、キャビティ19に射出され充填される。
キャビティ19に射出・充填された樹脂が冷えて硬化した後、図1に示すように金型2が開かれ、ランナーストリッパプレート4とキャビプレート5との間からランナー20が取り出され、キャビティ型17とコア型18との間から製品が取り出される。
(スプルーブッシュ1a)
図1〜図3に示すように、スプルーブッシュ1aは、射出成形機のノズル22が密着されるノズルタッチ部23を有し、ノズルタッチ部23に密着されたノズル22から射出された樹脂(加熱溶融状態)を金型2内に注入するための流路(スプルー)24が形成されたブッシュである。スプルーブッシュ1aは、ノズルタッチ部23がノズル22に対向するように、固定側取付板3にボルト25等で装着されている。なお、図3及び図4(a)においては、ボルト25等の取付孔を省略している。
図1〜図3に示すように、スプルーブッシュ1aは、射出成形機のノズル22が密着されるノズルタッチ部23を有し、ノズルタッチ部23に密着されたノズル22から射出された樹脂(加熱溶融状態)を金型2内に注入するための流路(スプルー)24が形成されたブッシュである。スプルーブッシュ1aは、ノズルタッチ部23がノズル22に対向するように、固定側取付板3にボルト25等で装着されている。なお、図3及び図4(a)においては、ボルト25等の取付孔を省略している。
図4(a)、図4(b)に示すように、スプルーブッシュ1aは、内部に上述の流路24が形成された金属製の内筒部26と、内筒部26の外周に流路24の長手方向に沿って設けられた断熱層27と、断熱層27を覆って設けられた金属製の外筒部28とを備えている。これら内筒部26と断熱層27と外筒部28とによってブッシュ本体29が構成される。ブッシュ本体29には、スプルーブッシュ1aをボルト25等で固定側取付板3に固定するためのフランジ部30が設けられている。
フランジ部30の頂面には、射出成形機のノズル22が密着されるノズルタッチ部23が窪んで形成され、ノズルタッチ部23の中央には、内筒部26の流路24と連通する入口31が形成されている。なお、フランジ部30は、内筒部26と一体成形されている。
ノズル22が密着されるフランジ部30は、本実施形態では、外筒部28よりも熱伝導率が小さい材質から成っている。例えば、外筒部28を鉄とした場合には、フランジ部30には鉄よりも熱伝導率が小さいステンレス等が用いられる。なお、フランジ部30及び外筒部28の材質は、上記組み合わせに限られず、例えばステンレス、鉄、アルミ、銅等から熱伝導率の大小を基準に選択される。なお、フランジ部30の材質と外筒部28の材質とが同じであっても構わない。
(内筒部26)
内筒部26は、内部に長手方向に沿った流路24を有し、ノズルタッチ部23に密着されたノズル22から射出された加熱溶融状態の樹脂が、その流路24内を流れることで加熱される金属製(SUS、Fe等)の筒体である。内筒部26は、外径が長手方向に沿って一定であり、内径(流路24の断面積に相当)が流路24の上流側から下流側に架けて徐々に大きくなるように形成されている。この結果、内筒部26の肉厚は、流路24の上流側から下流側に架けて徐々に薄くなっている。
内筒部26は、内部に長手方向に沿った流路24を有し、ノズルタッチ部23に密着されたノズル22から射出された加熱溶融状態の樹脂が、その流路24内を流れることで加熱される金属製(SUS、Fe等)の筒体である。内筒部26は、外径が長手方向に沿って一定であり、内径(流路24の断面積に相当)が流路24の上流側から下流側に架けて徐々に大きくなるように形成されている。この結果、内筒部26の肉厚は、流路24の上流側から下流側に架けて徐々に薄くなっている。
(断熱層27)
内筒部26の外周には断熱層27が設けられている。断熱層27は、図4(a)に示すように、内筒部26の外周面と外筒部28の内周面との間に流路24の長手方向に沿って形成され、樹脂によって加熱された内筒部26の熱が外筒部28に伝導することを抑制するものである。断熱層27は、図4(b)に示すように、内筒部26の外周面に沿って周方向に連続したリング状に形成されており、断熱層27の層厚は、流路24の上流側から下流側に架けて徐々に薄くなっている。
内筒部26の外周には断熱層27が設けられている。断熱層27は、図4(a)に示すように、内筒部26の外周面と外筒部28の内周面との間に流路24の長手方向に沿って形成され、樹脂によって加熱された内筒部26の熱が外筒部28に伝導することを抑制するものである。断熱層27は、図4(b)に示すように、内筒部26の外周面に沿って周方向に連続したリング状に形成されており、断熱層27の層厚は、流路24の上流側から下流側に架けて徐々に薄くなっている。
断熱層27は、内筒部26の金属よりも熱伝導率が低い材質から成り、本実施形態では主として熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラニン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等)から成っている。断熱層27の断熱材には、上述の熱硬化性樹脂にフィラー(filler)を混合したものを用いることが好ましい。フィラーには、例えば、ガラスやセラミック等の断熱性を有する材質が用いられ、形状は粉末状又は短繊維状等となっている。
(外筒部28)
断熱層27は金属製の外筒部28によって覆われている。外筒部28は、図1、図2に示すように、固定側取付板3及びランナーストリッパプレート4に形成された孔に接触するように挿通され、それらと熱交換する。図4(a)に示すように、外筒部28の内周面には、内筒部26の先端が圧入される圧入部32と、内筒部26との間に隙間33を形成する拡径部34とが形成されている。隙間33には、上述した熱硬化性樹脂等が充填され、それが断熱材となって断熱層27を構成している。
断熱層27は金属製の外筒部28によって覆われている。外筒部28は、図1、図2に示すように、固定側取付板3及びランナーストリッパプレート4に形成された孔に接触するように挿通され、それらと熱交換する。図4(a)に示すように、外筒部28の内周面には、内筒部26の先端が圧入される圧入部32と、内筒部26との間に隙間33を形成する拡径部34とが形成されている。隙間33には、上述した熱硬化性樹脂等が充填され、それが断熱材となって断熱層27を構成している。
図4(a)に示すように、外筒部28の頂面には、リング状の窪み部35が形成されている。窪み部35は、断熱層27を囲むように形成された内壁36と外壁37とを有しており、フランジ部30によって覆われている。詳しくは、フランジ部30には、外筒部28の頂部が圧入される凹部38が形成されており、この凹部38によって窪み部35が覆われている。
外壁37の頂部は、フランジ部30の凹部38に突き当たり、外筒部28の圧入深さを定めるストッパとなっている。内壁36の頂部とフランジ部38との間にはリング状の隙間が形成されており、この隙間が断熱層27と窪み部35とを繋ぐ連通部39となっている。フランジ部30と窪み部35とで区画された空間40には、空間40の少なくとも一部に、内筒部26と外筒部28との隙間33(断熱層27の部分)から連通部39を通って溢れ出た断熱材(熱硬化性樹脂等)が、収容されている。
(作用・効果)
本発明の第1実施形態に係るスプルーブッシュ1aによれば、次のような作用効果を発揮できる。
本発明の第1実施形態に係るスプルーブッシュ1aによれば、次のような作用効果を発揮できる。
図4(a)、図4(b)に示すように、このスプルーブッシュ1aは、内部に樹脂の流路24が形成された金属製の内筒部26が、断熱層27によって外筒部28から断熱されており、内筒部24の熱容量が、外筒部28から熱的に遮断された限定されたものとなっている。
このため、金型2に樹脂を注入する際、流路24を流れる溶融樹脂の温度によって内筒部26が瞬時に昇温され、樹脂が高温状態に保たれたまま高い流動性を維持して金型2内に注入される。よって、樹脂が流路24を通過する際の圧力損失が軽減され、低圧成形が可能となる。低圧成形することで、製品の残留応力を抑制できるので製品の反りを抑制でき、また射出成形に必要な消費電力を低減できる。
図5(a)は従来の通常のスプルーブッシュ1xに溶融樹脂(樹脂)jを流したときの断面図、図5(b)は従来の水冷式のスプルーブッシュ1yに樹脂jを流したときの断面図、図5(c)は従来の流路24を細くしたスプルーブッシュ1zに樹脂jを流したときの断面図、図5(d)は本発明の第1実施形態に係るスプルーブッシュ1aに樹脂jを流したときの断面図である。図中、fは樹脂jのフローフロント、kは瞬時固化層、cは冷却水通路である。
図6は、本発明の第1実施形態に係るスプルーブッシュ(発明品:図5(d)参照)1aの内筒部26の温度変化と、従来の通常のスプルーブッシュ(従来品:図5(a)参照)1xの流路24近傍の温度変化の関係を示すグラフである。ここで、射出時間とは、樹脂射出開始からキャビティ19に樹脂jが行き渡るまでの時間、保圧時間とは、ノズル22から圧力を加えることでキャビティ19内の樹脂jに成形に必要な所定圧を加える時間、冷却時間とは、キャビティ19、流路24、ランナー20等の樹脂jが固まる時間である。発明品と従来品とを対比すると次のようになる。
発明品 従来品
時間(秒) 温度(℃) 時間(秒) 温度(℃)
樹脂射出 0 90 0 90
射出時間 3 170 3 130
冷却時間 13 100 15 105
サイクルタイム 23 90 25 90
時間(秒) 温度(℃) 時間(秒) 温度(℃)
樹脂射出 0 90 0 90
射出時間 3 170 3 130
冷却時間 13 100 15 105
サイクルタイム 23 90 25 90
発明品のスプルーブッシュ1aによれば、流路24に溶融状態の樹脂jが流れた際、断熱層27によって外筒部28から断熱された薄い内筒部26が瞬時に加熱されるため、従来品(通常のスプルーブッシュ1x)と比べると、樹脂jが高温状態に保たれたまま高い流動性で金型2内に注入される。
これにより、保圧時間終了まで流路24の内周面の温度が樹脂jのガラス転移温度以上に保たれ、瞬時固化層kが形成されず、圧力伝達の低下が生じない。よって、ショートショット等の射出成形品の不具合を抑制できる。また、内筒部26の内周面に樹脂jの瞬時固化層kが形成され難くなるため、実質的な流路断面積を稼ぐことができ、流路24の小径化(小断面積化)を推進できる(図5(d)参照)。
流路24を従来品(図5(a)参照)よりも小径化することで流路24内の樹脂jの体積すなわち熱容量が小さくなるため、樹脂jの金型2内への注入が完了した後、流路24内の樹脂jの温度が低下し易くなり、流路24内の樹脂jが速やかに固化する。この結果、図6に示すように、冷却時間を従来品よりも短くでき(例えば15秒から13秒)、サイクルタイムを短縮化(例えば25秒から23秒)できる。サイクルタイムを短縮することで、単位時間当たりの成形回数を増加でき、量産される製品のコストダウンを推進できる。
また、流路24を従来品(図5(a)参照)よりも小径化することで、流路24における使用材料を削減できる。よって、樹脂jの有効利用率(投入した樹脂量に対する製品となった樹脂量の比)が向上し、低コスト化、環境負荷の低減に繋がる。
このスプルーブッシュ1aは、溶融状態の樹脂jの温度を利用した所謂パッシブ方式であるので、従来の水冷式(図5(b)参照)のように冷却水を積極的に循環させるエネルギーや複雑な機構等は不要であり、水冷式よりもランニングコストが低く且つ信頼性が高い。また、水冷式よりも構造が簡単なので、製造コストが安い。
以上説明したように、本発明に係るスプルーブッシュ1aによれば、圧力損失の軽減、サイクルタイムの短縮化、使用材料の軽減、低コスト化を、バランスよく高次元で実現できる。
また、このスプルーブッシュ1aは、図4(b)に示すように、断熱層27が、内筒部26の外周に沿って周方向に連続したリング状に形成されている。このため、断熱層27は、流路24の長手方向のみならず周方向にも安定した断熱性を発揮し、流路24内の樹脂の周方向の温度勾配が均一となる。
断熱層27は、主として熱硬化性樹脂から成っている。この熱硬化性樹脂は、断熱材として機能するのみならず、内筒部26と外筒部28とを接着する接着剤としても機能し、断熱材と接着剤とを兼用する。また、熱可塑性樹脂ではないので、流路24を流れる溶融樹脂の温度によって軟化して接着性能が低下することはない。
断熱層27は、熱硬化性樹脂に断熱性を有するフィラー(粉末状のガラス等)が混合されたものが用いられている。フィラーによって断熱層27の強度がアップするので、ノズル22から流路24に射出された溶融樹脂の圧力によって内筒部26が径方向外方に膨出して変形することを抑制できる。よって、内筒部26の薄肉化(小熱容量化)を推進できる。また、フィラーを混合した熱硬化性樹脂を用いて断熱層27とすることで、断熱層27と金属製の内筒部26及び外筒部28との熱膨張差がフィラーを混合しない場合と比べて小さくなるので、熱膨張差に因る断熱層27の剥離を抑制できる。
また、熱硬化性樹脂に断熱性を有するフィラーを混合することで、フィラーを混合しない場合と比べて断熱層27の耐熱温度が向上する。例えば、粉末状のガラスをフィラーとして熱硬化性樹脂に混合した場合、耐熱温度220〜250℃程度(硬化温度:180℃)の断熱層27が得られる。図6に示すように、内筒部26の温度(内筒部26と断熱層27との界面の温度)は最高でも180℃以下なので、耐熱温度220〜250℃の断熱層27が熱劣化することはない。
図2に示すように、ノズル22がスプルーブッシュ1aのノズルタッチ部23に密着された際、図4(a)に示すように、ノズルタッチ部23の奥に形成された空間40がノズル22に対する断熱空間として機能するため、ノズル22からスプルーブッシュ1aへの放熱が抑制され、ノズル22の温度低下を抑制できる。よって、ノズル22の温度低下に起因する樹脂の流動性悪化を抑制でき、ショートショット等の不具合を抑制できる。ここで、空間40に収容された熱硬化性樹脂(フィラーが混合されていてもよい)は樹脂断熱材として機能し、空間40の空気の部分は空気断熱層として機能する。また、空間40がリング状(ドーナッツ状)に形成されているので、ノズル22に対する断熱機能が向上する。
このスプルーブッシュ1aにおいては、ノズルタッチ部23が形成されたフランジ部30の熱伝導率が、外筒部28の熱伝導率よりも小さいので、フランジ部30の熱伝導率が外筒部28の熱伝導率以上のものと比べると、ノズルタッチ部23に接触されたノズル22からフランジ部30への放熱が抑制される。よって、これによってもノズル22の温度低下を抑制できる。
図4(a)に示すように、空間40を構成する窪み部35と断熱層27とが連通部39を介して繋がっている。よって、このスプルーブッシュ1aを製造する際、外筒部28の内部に流体状の断熱材(フィラーが混合された熱硬化性樹脂等)を収容した状態で、その外筒部28に内筒部26を挿入すると、外筒部28と内筒部26との隙間33における過剰な断熱材が連通部39を通って空間40に流出し、断熱層27での断熱材の充填率を可及的に高められる。
流路24の断面積(内径)が、上流側から下流側に架けて徐々に大きくなり、内筒部26の肉厚が、流路24の下流側から上流側に架けて徐々に厚くなっている。このように、内筒部26の流路24入口側の肉厚が出口側の肉厚よりも厚いので、内筒部26の入口側の強度が出口側の強度よりも高まり、入口側の高い樹脂圧(ノズル22から噴射された直後の高い樹脂圧)に対応できる。
断熱層27の層厚が、流路24の上流側から下流側に架けて徐々に薄くなっている。このように、断熱層27の流路24出口側の層厚が入口側の層厚よりも薄いので、樹脂を金型2内に注入した後の冷却時において、流路24出口側の樹脂(入口側よりも流路断面積が大きく冷め難い)の冷却(外筒部28及び金型2への放熱)が、断熱層27によって妨げられる影響が小さくなり、冷却時間が短くなってサイクルタイムの短縮化に繋がる。本実施形態では、内筒部26の先端が断熱層27を介さずに外筒部28に圧入されているので、流路24の最も断面積が大きい部分の樹脂の冷却は、断熱層27の影響を受けない。
断熱層27の層厚に相当する内筒部26と外筒部28との隙間33が、流路24の下流側から上流側に架けて徐々に大きくなっている。このため、スプルーブッシュ1aを製造する際、外筒部28の内部に流体状の断熱材を収容した状態で、その外筒部28に内筒部26を挿入すると、断熱材が外筒部28と内筒部26との隙間33に沿って上がり易く、生産性及び歩留まりが向上する。
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。例えば、図4に示す内筒部26と外筒部28とを別体の部材とすることなく一体成形品としてもよい。また、内筒部26を電気鋳造、メッキ、CVD、PVD等によって形成してもよい。
本発明は、溶融状態の樹脂を金型に注入するためのスプルーブッシュ等の射出成形用ブッシュに利用できる。
1a スプルーブッシュ
2 金型
23 ノズルタッチ部
24 流路
26 内筒部
27 断熱層
28 外筒部
30 フランジ部
35 窪み部
40 空間
2 金型
23 ノズルタッチ部
24 流路
26 内筒部
27 断熱層
28 外筒部
30 フランジ部
35 窪み部
40 空間
Claims (10)
- 加熱されて溶融状態となった熱可塑性樹脂を金型に注入するための流路を有する射出成形用ブッシュであって、
内部に前記流路が形成された金属製の内筒部と、
該内筒部の外周に前記流路の長手方向に沿って設けられると共に前記内筒部の外周に沿って周方向に連続したリング状に形成され、熱硬化性樹脂にフィラーが混合された断熱層と、
該断熱層を覆って設けられた金属製の外筒部と、
該外筒部の頂部に、前記断熱層と連通するように設けられた窪み部と、
該窪み部を覆うように前記内筒部と一体的に形成されており前記流路に連通するノズルタッチ部を有するフランジ部とを備え、
該フランジ部と前記窪み部とで区画された空間の少なくとも一部に、前記断熱層を成す断熱材が収容されたことを特徴とする射出成形用ブッシュ。 - 前記窪み部が、リング状に形成された請求項1に記載の射出成形用ブッシュ。
- 前記フランジ部の熱伝導率が、前記外筒部の熱伝導率よりも小さい請求項1又は2に記載の射出成形用ブッシュ。
- 前記内筒部の肉厚が、前記流路の下流側から上流側に架けて徐々に厚くなっている請求項1から3の何れか1項に記載の射出成形用ブッシュ。
- 前記内筒部は、外径が長手方向に沿って一定であり、前記流路の断面積に相当する内径が前記流路の上流側から下流側に架けて徐々に大きくなるように形成された請求項1から4の何れか1項に記載の射出成形用ブッシュ。
- 前記内筒部の外周面の先端が、前記外筒部の内周面の先端に圧入された請求項1から5の何れか1項に記載の射出成形用ブッシュ。
- 前記フランジ部の下面に凹部が形成され、該凹部に前記外筒部の頂部が圧入され、前記外筒部の頂部に設けられた前記窪み部が前記凹部によって覆われた請求項1から6の何れか1項に記載の射出成形用ブッシュ。
- 前記断熱層の層厚が、前記流路の上流側から下流側に架けて徐々に薄くなっている請求項1から7の何れか1項に記載の射出成形用ブッシュ。
- 前記フィラーの形状が、粉末状または短繊維状である請求項1から8の何れか1項に記載の射出成形用ブッシュ。
- 前記フィラーが、ガラス、セラミック等の断熱性を有する材質から成る請求項1から9に記載の射出成形用ブッシュ。
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