JP5124164B2 - 航空機用空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

この発明は、航空機用空気入りタイヤに関し、特に、各ビード部に複数のビードコアを有する航空機用空気入りタイヤに関する。
従来、各ビード部に複数のビードコアを有する、ジェット旅客機等の航空機に使用される航空機用空気入りタイヤが知られている。このビードコアには、複数本のワイヤを並列させてゴム被覆したストランドをリング状に巻き重ねた構造を有する、所謂ストランドビードを用いるのが一般的であるが、ビードコアの巻き終わり端の跳ね上がりを防止するため、ビードワイヤの巻き終わり端にラッピングテープを巻き付けている。ラッピングテープは、繊維部材をゴムで被覆(トリート)して形成されている。このような航空機用空気入りタイヤとして、例えば、「航空機用空気入りバイアスタイヤ」(特許文献1参照)がある。
この航空機用空気入りタイヤにおいては、ビードコアと、ビードコアを覆うラッピングテープとの間のゴムゲージを確保するため、ビードコア最外層の外側に、ビードを被覆するインシュレーションゴムと同一材質のゴムシートを巻き付けている。また、ゴムシートが巻き付けられたビードの巻き終わり端には、その前の工程で巻き終わり端のワイヤの跳ね上がりを押さえるため、ゴムで被覆した繊維部材(トリート)が巻き付けられている。
特開平7−164836号公報
ところで、近年、航空機を利用した輸送が普及し輸送量が増大するのに伴って空港の大規模化が進み、この結果、航空機の離着陸時における滑走路とターミナルの間の走行距離が長くなって、タイヤのビード部の疲労も増大するようになった。即ち、長距離走行に際し、ビード部に繰り返し入力があると、ビード部のビードコアにおけるワイヤとゴムとの剥離を招くことになり、ビードコアでのワイヤ剥離は、カーカスをつなぎ止めるビードコアの剛性低下を招く結果、ひいてはタイヤ剛性を維持することができなくなる。従って、ビードコアにおけるワイヤの剥離を生じさせないためにビードワイヤの接着性を向上させることが必要である。
ビードコアにおいて、該コア最外層ストランド両端に位置するビードワイヤに剥がれが発生するのは、ビードワイヤとラッピングテープの間のゴムゲージが薄いことが要因となっているが、これは、ビードワイヤの巻き終わり部に隣接して、ビードワイヤ最外層の外側に端末止め用の繊維部材(トリート)が位置することになるからである。つまり、結果的に、ゴムゲージ確保のためのゴムシートが機能していないことによる。
この発明の目的は、ビード部の剥離を生じさせないためにビードワイヤの接着性を向上させた航空機用空気入りタイヤを提供することである。
上記目的を達成するため、この発明に係る航空機用空気入りタイヤは、一対のビード部のそれぞれに、複数本のワイヤを並列させゴム被覆したストランドを巻き重ねて積層したビードコアを、タイヤ幅方向に複数並べて配置した航空機用空気入りタイヤにおいて、少なくともタイヤ幅方向最内側のビードコアは、トランド巻き終わり端部と共に前記ストランド巻き終わり端部が重なる複数段の前記ストランドの全周囲を覆う、ゴム材料をシート状にした端末止めゴム層と、外層ストランドの外周部及び両側部のみを覆ってタイヤ径方向外側及びタイヤ幅方向外側に位置し、前記ストランド巻き終わり端部では前記端末止めゴム層の外側に位置させたカバーゴム層と前記端末止めゴム層及び前記カバーゴム層を含むビードコア全体を覆う、ゴム部材により被覆して形成されたラッピングテープとを有し、前記ストランド巻き終わり端部であるビードワイヤ端末部におけるゴムゲージを確保することを特徴としている。
また、この発明において、前記カバーゴム層と前記端末止めゴム層は、前記ビードコアのインシュレーションゴムと同一のゴム質を有するゴム材料により形成されていることが好ましい。
また、この発明において、前記カバーゴム層のゴム厚は、1.0〜2.0mmの範囲にあり、前記端末止めゴム層のゴム厚は0.4〜0.8mmの範囲にあることが好ましい。
また、この発明において、前記端末止めゴム層は、前記ストランド巻き終わり端部の前後50mmの範囲内に位置することが好ましい。
この発明によれば、ビードコアと、ゴムが被覆されているラッピングテープとの間のゴムゲージが確保されて、ビードワイヤの接着性が向上することにより、ビードコアにおけるワイヤ部の剥離を防止することができる。
以下、この発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施の形態に係る航空機用空気入りタイヤの部分断面を示す説明図である。図1に示すように、航空機用空気入りタイヤ10は、サイドウォール部10aのタイヤ径方向内側に連続する左右一対のビード部11を有しており、一対のビード部11のそれぞれには、ビードベース11aに沿って横並びに、複数のビードコア12が配置されている。なお、図1において、ビード部11は、左右一対の内の左側のみを図示する。
この航空機用空気入りタイヤ10は、タイヤのサイズに応じて規格に規定された適用リムRのビードシートにビードベース11aを密着させて装着される。各ビードコア12には、複数のカーカス13a,13b,13c(ここでは、3個を例示)のそれぞれが、ビードコア12の周りを内側から外側に向かって折り返すように装着されている。
図2は、図1のビードコアの内部構造を示し、(a)はワイヤ端末部以外の断面図、(b)はワイヤ端末部の断面図である。図2に示すように、ビードコア12は、例えば、硬鋼線材料からなるビードワイヤ14を複数本並列させゴム部材(インシュレーションゴム)で被覆して、テープ状のストランド15とし、このストランド15を巻回して複数層に巻き重ねて積層したワイヤ束を、ラッピングテープ16により覆って形成されている((a),(b)参照)。
積層状態に巻き重ねたテープ状のストランド15の巻き終わり端部15a付近は、巻き重ねた複数段のストランド15の全周囲が、ゴム材料をシート状に形成したテープ部材からなる端末止めゴム層17により覆われている((b)参照)。この端末止めゴム層17は、ストランド15の巻き終わり端部15aのビードコア周囲を覆っており、ストランド15を形成する工程において、ビードワイヤ14の巻き終わり端の跳ね上がりを抑えることを目的として設けられる。
また、ビードコア12の最外周である、テープ状のストランド15を積層状態に巻き重ねたワイヤ束の最上層に位置するストランド15の外周部及び両側部を覆い、且つ、タイヤ径方向外側及びタイヤ幅方向両側に位置させて、カバーゴム層18が設けられている((a),(b)参照)。このカバーゴム層18は、ストランド15の巻き終わり端部15a付近では、端末止めゴム層17のタイヤ径方向外側に位置するように配置されている((b)参照)。
そして、端末止めゴム層17及びカバーゴム層18が設けられたビードコア12は、端末止めゴム層17及びカバーゴム層18を内包するように、ビードコア12全体がラッピングテープ16により覆われている。ラッピングテープ16は、例えば、繊維部材(有機繊維部材)全体をゴム部材により被覆して形成されており、ビードコア12を形成するストランド15を覆うように巻き付けられて、ビードコア12を補強している。
上記構成を有することにより、最上段のビードワイヤ14が、端末止めゴム層17やラッピングテープ16の繊維部材と接触して接着力が低下するのを抑制することができる。
このようなビードコア12の構成は、少なくともタイヤ幅方向最内側のビードコア12が備えていれば良いが、全てのビードコア12が備えていても良い。
これら端末止めゴム層17及びカバーゴム層18は、ビードコア12のインシュレーションゴム(insulation rubber)と同一のゴム質からなるゴム材料により形成されている。インシュレーションゴムは、ストランドビード(ビードコア12)のワイヤ周りに設けられたゴムであり、ビードワイヤ14との接着性に優れ、且つ、ビードワイヤ14の配列を確保するため加硫中の十分な粘度を必要とする。加硫中に粘度が低くなると、ビードコア12を包んでいるプライの熱収縮によりインシュレーションゴムがビードコア12の下段から上段の方向へ絞り出されてしまい、このインシュレーションゴムの流れにより、ビードワイヤ14の配列が乱れビードワイヤ14のゴムゲージが確保されなくなる。
また、端末止めゴム層17及びカバーゴム層18も、ビードワイヤ14に隣接する部分に配置するゴムであることから、ビードコア12のインシュレーションゴムと同様に、ビードワイヤ14との接着性に優れていること、及びビード部11の性状を確保するため加硫中の十分な粘度を有することが要求される。このため、インシュレーションゴムと同一のゴム質を有する必要がある。
このように、重なり合う端末止めゴム層17とカバーゴム層18を同一のゴム質からなるゴム材料により形成することで、ゴム層同士が一体化してビードコア12内における亀裂の進展を抑えることができる。
また、端末止めゴム層17は、ゴム層の厚さが、1.0mm〜約2.0mmの範囲に、カバーゴム層18は、ゴム層の厚さが、約0.4mm〜0.8mmの範囲に、それぞれ形成されている。これは、カバーゴム層18の厚さが、1.0mmに満たないと接着力の低下を抑制する効果を十分に得ることができず、0.8mmを越えるとゴム材料が流動し易くなってビードコア12の形状が崩れ易くなってしまうからである。
また、端末止めゴム層17は、ストランド15の巻き終わり端部15aの前後約50mmの範囲に配置される。端末止めゴム層17を、巻き終わり端部15aの前後約50mmの範囲に配置するのは、巻き終わり端部15aのビードワイヤ14の跳ね上がりを抑制することを目的としており、重量抑制や生産性向上等を考慮した場合、この範囲に設定することが望ましい。
つまり、ラッピングテープ16は、ビードワイヤ14を覆う端末止めゴム層17及びカバーゴム層18と同一のゴム質からなるゴム材料により形成されている。これにより、タイヤの加硫成形に際し、ビードワイヤ14とラッピングテープ16の確実な接着融合を図って、ビードコア12を所定形状に保持している。
このように、ワイヤ端末止め部材を、従来の繊維部材からゴム部材、即ち、端末止めゴム層17に変更することで、巻き重ねたストランド15の巻き終わり端部15aであるワイヤ端末部における、ビードワイヤ14とビードワイヤ14を覆うラッピングテープ16を、同一のゴム質からなるゴム材料により形成して、そのゴムゲージを確保することができる。
従って、ワイヤ端末部におけるビードワイヤ14の周囲の剪断力を抑えることができるため、長距離走行によりビード部11の疲労が増大するようになっても、ワイヤ周りの接着力を維持し確保することができる。よって、ジェット旅客機等の航空機に使用される航空機用空気入りタイヤ10のビード部11におけるワイヤ接着部の耐久性を向上させることができる。
次に、端末止め層の材質とゲージを異ならせた3種類のビード部について、室内耐久試験を行った。
図3は、室内耐久試験を行った3種類のビード部の概略構造を示し、(a)は構造Aのワイヤ端末部以外の断面説明図、(b)は構造Aのワイヤ端末部の断面説明図、(c)は構造Bのワイヤ端末部以外の断面説明図、(d)は構造Bのワイヤ端末部の断面説明図、(e)は構造Cのワイヤ端末部以外の断面説明図、(f)は構造Cのワイヤ端末部の断面説明図である。
表1は、室内耐久試験を行った3種類のビード部における主たる構成を一覧にしたものである。
図3に示すように、3種類のビード部の内、構造A(従来例に相当)の場合、ワイヤ端末部以外は、ビードワイヤ14からなるストランド15の積層部の上方(外周部)のみを覆うゴムシート19が配置されており、ビードコア全体がラッピングテープ16により覆われている((a)参照)。ワイヤ端末部は、ワイヤ端末部以外の構成に加え、ビードコア周囲に繊維部材(トリート)からなる端末止め層20が形成されている((b)参照)。そして、繊維部材(トリート)からなる端末止め層20のゲージは略0.66mmである(表1参照)。
構造B(本発明に相当)の場合、ワイヤ端末部以外は、ビードワイヤ14からなるストランド15の積層部の上方(外周部)に加え、積層部の上端部両側部を覆うカバーゴム層18が配置されており、ビードコア全体がラッピングテープ16により覆われている((c)参照)。ワイヤ端末部は、ワイヤ端末部以外の構成に加え、ビードコア周囲にゴムシートからなる端末止め層(端末止めゴム層17)が形成されている((d)参照)。そして、ゴムシートからなる端末止めゴム層17のゲージは略0.4mmである(表1参照)。
構造C(本発明に相当)の場合、ワイヤ端末部以外及びワイヤ端末部は、構造Bと同一の構成を有しており((e)、(f)参照)、ゴムシートからなる端末止めゴム層17のゲージは略0.8mmである(表1参照)。
なお、構造A〜Cにおいて、ビードワイヤ14とラッピングテープ16の間に位置するゴム部のゲージ(ゴムゲージ)と幅(ゴム幅)は、ゴムゲージが略1.2mm、ゴム幅がビード幅+約1mmである。
Figure 0005124164
室内耐久試験を行う際に、試験内圧、試験荷重、速度、慣らし時間、試験開始温度、走行時間、及び試験間隔等の試験条件を適宜設定した。試験対象タイヤのサイズは、H49×19.0−20 32PRである。設定した試験条件を表2に示す。
Figure 0005124164
この室内耐久試験を行った結果、表3に示すような評価を得た。
Figure 0005124164
表3において、ビードワイヤ14を巻き終えた後のワイヤ端末の跳ね上がり量は、構造Aが略4mm、構造Bが略11mm、構造Cが略7mmである。確保されたゴムゲージ、即ち、ビードワイヤとラッピングテープの間のゴムゲージは、構造Aが略0mm、構造Bが略0.25mm、構造Cが略0.51mmである。ビードワイヤの接着力(%)は、構造Aを100とした場合、構造Bが113、構造Cが147である。
従って、室内耐久試験結果を評価すると、耐久力は、構造Aを100とした場合、構造Bは228、構造Cは422以上となり、構造A(従来例に相当)に比べて、少なくとも2倍以上、ゴムゲージ量によっては4倍を超える耐久力を確保することができることが分かった。
この発明の一実施の形態に係る航空機用空気入りタイヤの部分断面を示す説明図である。 図1のビードコアの内部構造を示し、(a)はワイヤ端末部以外の断面図、(b)はワイヤ端末部の断面図である。 室内耐久試験を行った3種類のビード部の概略構造を示し、(a)は構造Aのワイヤ端末部以外の断面説明図、(b)は構造Aのワイヤ端末部の断面説明図、(c)は構造Bのワイヤ端末部以外の断面説明図、(d)は構造Bのワイヤ端末部の断面説明図、(e)は構造Cのワイヤ端末部以外の断面説明図、(f)は構造Cのワイヤ端末部の断面説明図である。
符号の説明
10 航空機用空気入りタイヤ
10a サイドウォール部
11 ビード部
11a ビードベース
12 ビードコア
13a,13b,13c カーカス
14 ビードワイヤ
15 ストランド
15a 巻き終わり端部
16 ラッピングテープ
17 端末止めゴム層
18 カバーゴム層
19 ゴムシート
20 端末止め層
R 適用リム

Claims (4)

  1. 一対のビード部のそれぞれに、複数本のワイヤを並列させゴム被覆したストランドを巻き重ねて積層したビードコアを、タイヤ幅方向に複数並べて配置した航空機用空気入りタイヤにおいて、
    少なくともタイヤ幅方向最内側のビードコアは、
    トランド巻き終わり端部と共に前記ストランド巻き終わり端部が重なる複数段の前記ストランドの全周囲を覆う、ゴム材料をシート状にした端末止めゴム層と、
    外層ストランドの外周部及び両側部のみを覆ってタイヤ径方向外側及びタイヤ幅方向外側に位置し、前記ストランド巻き終わり端部では前記端末止めゴム層の外側に位置させたカバーゴム層と
    前記端末止めゴム層及び前記カバーゴム層を含むビードコア全体を覆う、ゴム部材により被覆して形成されたラッピングテープとを有し、
    前記ストランド巻き終わり端部であるビードワイヤ端末部におけるゴムゲージを確保することを特徴とする航空機用空気入りタイヤ。
  2. 前記カバーゴム層と前記端末止めゴム層は、前記ビードコアのインシュレーションゴムと同一のゴム質を有するゴム材料により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の航空機用空気入りタイヤ。
  3. 前記カバーゴム層のゴム厚は、1.0〜2.0mmの範囲にあり、前記端末止めゴム層のゴム厚は0.4〜0.8mmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の航空機用空気入りタイヤ。
  4. 前記端末止めゴム層は、前記ストランド巻き終わり端部の前後50mmの範囲内に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の航空機用空気入りタイヤ。
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