特許文献1には、「基礎の強度を担保すると共に、天端出し作業の効率性の向上を図る」ことを目的とした「天端出し方法及び天端出し補助具、並びに鉄筋」が、提案されている。この「天端出し方法及び天端出し補助具、並びに鉄筋」は、図16に示すように、「鉄筋を把持する鉄筋把持部2と調整ネジ体を略鉛直になる様に支持する調整ネジ体支持部3とを有する天端出し補助具1であって、調整ネジ体支持部は、調整ネジ体を進退可能な状態で螺合する受ネジ穴11を備える」という構成を有するものである。
特に、この特許文献1で提案されている「天端出し補助具1」は、調整ネジ体支持部を、調整ネジ体が進退可能な状態で螺合する受ネジ穴11を備えるものとしなければならないものとなっているが、この受ネジ穴11を合成樹脂の一体成形物に備えるようにすることは非常に困難である。この受ネジ穴11を有する天端出し補助具1を、例えば、互いに開閉される上型及び下型だけで射出成形することは、受ネジ穴11が複雑な「アンダーカット部」となって、コストアップした天端出し補助具1となるからである。
一方、特許文献2には、「容易であると共に正確なレベル出しを行うことができるコンクリートの水平面出し方法及び水平面出し補助具、並びに鉄筋用スペーサを提供する」を目的とした「コンクリートの水平面出し方法及び水平面出し補助具、並びに鉄筋用スペーサ」が、提案されている。
この特許文献2の「コンクリートの水平面出し方法」は、「調整ネジ体9を略鉛直となる様に鉄筋6に取り付けられた冶具1に取り付け、調整ネジ体の頭部が所定位置となる様に調整を行う。その後、型枠によって形成された打設空間に所定位置に調整された調整ネジ体の頭部の位置までコンクリートを充填する」という構成を有するものであるが、「調整ネジ体9を略鉛直となる様に鉄筋6に取り付けられた冶具1」は、図17及び図18に示すように、「基準面から所定の間隔をおいて鉄筋を支持する鉄筋用スペーサと係合する係合部と調整ネジ体を略鉛直になる様に支持する調整ネジ体支持部とを有する水平面出し補助具であって、前記調整ネジ体支持部は、調整ネジ体を進退可能な状態で螺合する受ネジ穴を備える」ものである。
この特許文献2の「水平面出し補助具」についても、調整ネジ体支持部が、調整ネジ体を進退可能な状態で螺合する受ネジ穴を備えるものであるから、このジ穴11が複雑な「アンダーカット部」となって、上記特許文献1のそれと同様に、合成樹脂を材料とした射出成形する場合に、非常にコストアップしたものとなってしまう、という問題を含んでいる。
また、上記特許文献1でも、特許文献2でも、図15及び図16に示すように、鉄筋を把持する「鉄筋把持部2」の内側に、鉄筋のリブと係合する「係合部7」を形成しなければならないものとなっているため、この「係合部7」を射出成形するためには、製造型の工夫を凝らさなければならないから、「水平面(天端)出し補助具」を、非常にコストアップしたものとしてしまう。さらに、この「係合部7」は、「鉄筋把持部2」を開きにくくするものとも考えられるから、当該「鉄筋把持部2」の鉄筋への嵌合が困難になるのではないかとも考えられる。
さらに、特許文献3には、「異形棒鋼等のような形状が不均一な部材や、直径が異なる鉄筋にも確実に固定することができ、レベル設定の自由度が高い天端レベル管理具を提供する」を目的としてなされた「住宅基礎の天端レベル管理具」が提案されている。
この特許文献3の「住宅基礎の天端レベル管理具」は、図19及び図20に示すように、「天端レベルの目印となるレベル設定用棒材7と、鉄筋3を両側から挟み込んで固定する対となる挟持部15,16およびレベル設定用棒材7の上下位置を調整して保持可能な保持部17を有する固定部材8とを設け、挟持部15,16に、それぞれの掛止位置を調整可能な調整部19を設ける」ものであり、これにより、「鉄筋3の外径が異なる場合であっても、また、寸法誤差が大きい異形棒鋼であっても、確実に固定することができ、レベル設定用棒材7が傾斜したり上下位置がずれたりすることを防止することができる。また、レベル設定用棒材7が固定部材8に上下位置を調整可能なので、固定部材8を固定した後に天端レベルを微調整することができる。」という機能を発揮するものである。
しかしながら、この特許文献3の「住宅基礎の天端レベル管理具」は、特に、「鉄筋3を両側から挟み込んで固定する対となる挟持部15,16」を素手によって挟み込むことは難しいものとなっており、「鉄筋3を両側から挟み込んで挟持部15,16を固定する」ことは事実上困難なものとなっている。
そして、この種の天端出し補助具は、図1や図15等から理解できるように、鉄筋とともにコンクリート構造物内に埋設されてしまうものであり、かつ、水平面の目印とするために多数使用しなければならないものであるから、一個一個は単価の安いものにしなければならない。しかも、この種の天端出し補助具は、コンクリート構造物自体を構成するものではなくて、水平面の単なる目印とするものであるから、どこでも簡単に取り付けられるものでなければならない。
そこで、本発明者等は、この種の天端出し補助具について、取り付け作業がし易く、安価に提供するにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、配筋された鉄筋の内の「横筋」はコンクリート構造物の広範囲に亘って、しかも略水平状態で存在していること、「縦筋」は部分的にしか存在していないこと、に気付き、本発明を完成したのである。
すなわち、本発明の目的とするところは、横筋の何処にでも素手で簡単に取り付けることができて、その取り付け位置の調整も容易に行うことができ、構造を簡単にして安価に提供することもできる天端出し補助具を提供することにある。
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する実施形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「目印体12を本体部11に形成した目印体取付穴11aに対して位置調整可能に取り付けて、目印体12によって天端位置を示すようにした天端出し補助具10であって、
本体部11に、コンクリート構造物を構成する横筋21が嵌合される横筋収納部13bを有した横筋取付部13を形成するとともに、横筋収納部13bの下方を、横筋取付部13の下部に横方向に形成した開口13aにて、横筋21に向けて開放させ、
開口13aの開口端縁の一方に、本体部11の一側面から横筋21を導入するための導入面13dを形成し、他方の開口端縁に、横筋21を案内する案内片13cを形成するとともに、端部が、本体部11に形成した目印体取付穴11a内に対して陥没可能となる目印体押え部11cを、本体部11の一部に形成したことを特徴とする天端出し補助具10」
である。
この請求項1に係る天端出し補助具10は、まず、目印体12を本体部11に対して位置調整可能に取り付けたものであり、この目印体12の生コンポインター12bもしくはレベラーポインター12cによって、生コンクリート31もしくはレベラー32の天端位置を示すようにしたものであって、その基本的機能の、以下に詳述する部分以外は、上記特許文献1または2のそれと同じである。
すなわち、この請求項1に係る天端出し補助具10の第一の特徴は、コンクリート構造物を構成する横筋21が嵌合される横筋収納部13bを有した横筋取付部13が本体部11に形成してあることである。横筋21は、コンクリート構造物を構築するための型枠内の略全域に亘って存在しているものであるから、これらの横筋21に当該天端出し補助具10の取付場所を選定するにあたっては、相当自由に行える。また、横筋21は、略水平に配筋されているから、この横筋21を横筋収納部13b内に収納するように当該天端出し補助具10を設置すれば、本体部11に案内されている目印体12は略垂直方向に自然と向くことになる。勿論、この横筋収納部13b内には、特許文献1及び2におけるような、鉄筋のリブ(節21a)と係合する「係合部7」は形成されていないのであるから、横筋収納部13bへの横筋21の嵌合を行う際の、横筋取付部13の開きが行えるだけでなく、当該天端出し補助具10を横筋21に嵌合したまま、その横方向位置についての微調整も行える。
また、この請求項1に係る天端出し補助具10の第二の特徴は、横筋収納部13bの下方を、横筋取付部13の下部に横方向に形成した開口13aにて、横筋21に向けて開放させたことである。換言すれば、この天端出し補助具10の横筋21に対する嵌合は、横筋収納部13bの下方によって行うのであり、横筋21は作業者の手元の下側にあることが多いから、当該天端出し補助具10の嵌合作業は、作業者が下を向いて行えること、つまり自然な体勢で行えるのである。一方で、横筋収納部13bの上方は閉じられたままとなっているから、横筋21に嵌合された天端出し補助具10は、当該横筋21上に乗った状態で保持されるのであり、横筋21に対する横筋収納部13b内の摩擦力もあって、安定した状態で横筋21に保持されるのである。
このとき重要になってくるのが、第三の特徴である、横筋取付部13に形成した案内片13cと導入面13dである。まず、導入面13dから説明すると、この導入面13dは、図2の(b)及び図3に示すように、開口13aの開口端縁の一方、つまり、本体部11の一側面(図3では図示右側面であり、当該横筋取付部13が一体化されている側の本体部11の側面)とほぼ同一の平面を構成するように形成したものである。これにより、当該天端出し補助具10を横筋21に取付けるにあたって、図3の(a)に示すように、作業者が当該天端出し補助具10の本体部11の一側面を横筋21に当接させ、図3の(a)中の矢印に示すように当該天端出し補助具10をそのまま押し下げれば、横筋取付部13の開口13aは自然に横筋21に向かうことになる。
一方、案内片13cは、開口13aの、上記横筋21を導入するための導入面13dとは反対側の開口端縁に形成してあるから、図3の(b)及び(c)に示すように、開口13aに向かってきた横筋21を受け止めるとともに、この横筋21を開口13aから横筋収納部13b内へと案内することになる。そこで、作業者が、当該天端出し補助具10をさらに強く横筋21に向けて押し込めば、受けた力によって案内片13cが、図3の(b)中の矢印に示すように、外方に押し出され、結果的に当該横筋取付部13の開口13aを拡開することになる。そうなれば、横筋21が、図3の(c)に示すように、横筋取付部13の横筋収納部13b内に完全に収納されるとともに開口13aが閉じるから、当該天端出し補助具10は横筋21に取付けられることになるのである。
以上の当該天端出し補助具10の取付操作を順に纏めてみると、作業者は、横筋取付部13の開口13aが下に向くようにして当該天端出し補助具10を手で持ち、型枠内の殆んど何処にでも配筋されている横筋21の適宜箇所に、本体部11の横筋取付部13が一体化されている一側面を当接させる。そして、そのまま当該天端出し補助具10を横筋21に向けて押し下げれば、当該天端出し補助具10は横筋取付部13の開口13aにて横筋21に嵌り込むため、当該天端出し補助具10は横筋21に取付けられることになる。このとき、本体部11は、横筋21に取付けられているためほぼ水平になっている横筋取付部13に対してほぼ垂直となっているから、この本体部11に取付けられた目印体12もほぼ垂直になるのである。なお、横筋取付部13は、横筋21の半径方向に少し回動していて、目印体12がほぼ垂直になっていないこともあり得るが、そのときには、当該天端出し補助具10全体を横筋21の半径方向に回動させて、目印体12がほぼ垂直になるように微調整すればよい。
以上の通り、この天端出し補助具10は、目印体12と、この目印体12を上下位置調整可能に支持する本体部11と、この本体部11を横筋21に取り付けるための横筋取付部13とからなり、しかも、開口13aの開口端縁の一方に、本体部11の一側面から横筋21を導入するための導入面13dを形成し、他方の開口端縁に、横筋21を案内する案内片13cを形成した簡単な構成のものであり、例えば合成樹脂による一体成形を本体部11及び横筋取付部13について行える。このため、天端出し補助具10全体として、非常に安価なものとすることが十分可能になっているのである。
勿論、横筋21に嵌合された各天端出し補助具10は、その本体部11に対して上下方向に位置調整される目印体12を有しているのであるから、この目印体12によって、打設される生コンクリート31や、その上のレベラー32についての天端(表面)位置の規定を行うことになることは、従来技術のそれと同様である。
また、この請求項1に係る天端出し補助具10については、端部が、本体部11に形成した目印体取付穴11a内に対して陥没可能となる目印体押え部11cを、本体部11の一部に形成してある。
すなわち、この請求項1に係る天端出し補助具10は、その本体部11に目印体12が挿入されるべき目印体取付穴11aを形成したものであり、本体部11の一部に目印体押え部11cを形成したものである。この目印体押え部11cを形成するにあたっては、その端部と本体部11との間に、例えば図4の(c)に示すように、離間部を積極的に形成しておき、当該目印体押え部11cが本体部11に対して揺動可能となるようにしてある。そして、この目印体押え部11cは、目印体取付穴11a内に目印体12が存在しない場合に、端部が目印体取付穴11a内に陥没した状態となるようにしてあるのである。
つまり、この目印体押え部11cは、図4の(c)に示すように、目印体取付穴11a内に目印体12が存在しない場合に、端部が目印体取付穴11a内に陥没しているものであり、目印体取付穴11a内に目印体12が挿入されてくると、この目印体12によって端部が目印体取付穴11aの外側に押し出されようとし、目印体12の一部を弾発的に押圧するものである。
換言すれば、目印体取付穴11a内に挿入された目印体12は、目印体押え部11cによって目印体取付穴11aの内壁に弾発的に押え付けられるのであり、目印体12は目印体押え部11cによってガタ付きがないように目印体取付穴11aに対して支持されるのである。
従って、この請求項1に係る天端出し補助具10は、横筋21の何処にでも素手で簡単に取り付けることができて、その取り付け位置の調整も容易に行うことができ、簡単に製造することもできて、しかも安価に提供することができるものとなっているのである。
また、この請求項1に係る天端出し補助具10は、前述した機能を発揮する他に、目印体12を目印体押え部11cによってガタ付きがないように目印体取付穴11aに対して支持するのである。
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の天端出し補助具10について、
「本体部11に、横筋21に組み付けられた縦筋22の一部に係合する縦筋取付部14を形成したこと」
である。
この請求項2に係る天端出し補助具10は、請求項1のそれと同様に、横筋取付部13にて横筋21の任意の位置に取付け可能にした点は踏襲しているものではあるが、横筋21に組み付けられた縦筋22が存在する箇所で積極的に使用することで、この縦筋22を利用して、横筋21に対する回動を簡単に止められるようにするものである。この横筋21に対する天端出し補助具10の回動止めを行うのが、本体部11に形成した縦筋取付部14なのである。
縦筋取付部14は、本体部11の下端に一体的に形成したものであり、図1と、図2の(a)及び(c)に示すように、本体部11の下端から、横筋取付部13の延在方向とは反対側に伸びたものである。また、この縦筋取付部14は、図2の(c)及び図3の(b)に示すように、その平面視形状が二又となっているものであり、この二又の間に、図1に示すように、縦筋22を嵌め込めるようにしたものである。勿論、この縦筋取付部14は、縦筋22に係止できるのであれば種々な形状のものが採用できるものであり、必ずしも、平面視が二又となるようにする必要はない。
この天端出し補助具10を、図1に示すように、その横筋取付部13にて横筋21に取付けて、かつこの横筋21に組み付けられた縦筋22の一部に縦筋取付部14を係合させれば、当該天端出し補助具10は、その縦筋取付部14によって横筋21に対する回動が阻止されることになるのである。なお、横筋取付部13にて横筋21に取付けた天端出し補助具10は、この横筋21に対してある程度横方向に移動できるものであるから、横筋取付部13にて横筋21に取付けた後に天端出し補助具10を移動させることにより、縦筋取付部14での縦筋22に対する取り付けを行うようにすると、作業が簡単に行える。
従って、この請求項2に係る天端出し補助具10は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、縦筋取付部14の縦筋22に対する係合を行うことによって、横筋21に対する回動を阻止し得るものとなっているのである。
また、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に記載の天端出し補助具10について、
「本体部11に、横筋21と縦筋22との交差部分に当接する交差鉄筋当接部15を形成したこと」
である。
この請求項3に係る天端出し補助具10は、請求項1のそれと同様に、横筋取付部13にて横筋21の任意の位置に取付け可能にした点は踏襲しているものではあるが、横筋21に組み付けられた縦筋22が存在する箇所で積極的に使用することで、この縦筋22を利用して、横筋21に対する回動を簡単に止められるようにするものである。この横筋21に対する天端出し補助具10の回動止めを行うのが、本体部11に形成した交差鉄筋当接部15なのである。
交差鉄筋当接部15は、横筋21と縦筋22との交差部分に当接するものであるから、図9に示すように、本体部11の、横筋取付部13の近傍に位置する部分に一体化されるものである。この部分には、請求項2に係る天端出し補助具10の縦筋取付部14が一体化されることはないから、この交差鉄筋当接部15を単独で使用することは勿論、この交差鉄筋当接部15と共に上記縦筋取付部14を採用することは十分可能である。
そして、この交差鉄筋当接部15は、図8に示すように、当該天端出し補助具10を横筋21に取付けた後に、横筋21と縦筋22との交差部分に当接されるのであるが、これによって、当該天端出し補助具10は、横筋取付部13にての横筋21に対する回動が阻止されることになる。
従って、この請求項3に係る天端出し補助具10は、上記請求項1または請求項2のそれと同様な機能を発揮する他、横筋21と縦筋22との交差部分に交差鉄筋当接部15を当接させることによって、横筋21に対する回動を阻止し得るものとなっているのである。
さらに、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の天端出し補助具10について、
「本体部11の中心に、目印体12を位置調整可能に挿通する目印体取付穴11aを形成するとともに、この目印体取付穴11a内に、目印体12に形成したネジ山12a間に係合することになる目印体係止突起11bを形成して、
目印体12を回転させたとき、目印体係止突起11bを基点として、目印体12が螺進螺退可能となるようにしたこと」
である。
すなわち、この請求項4の天端出し補助具10は、本体部11の目印体取付穴11aに目印体12を進退可能に取付けるにあたって、目印体取付穴11aをネジ穴にしなくても、つまり、単なる丸穴であっても、目印体係止突起11bを形成しておくだけで、目印体12の本体部11に対する螺進螺退が可能となるようにしたものである。
目印体取付穴11a内に形成した目印体係止突起11bは、図2、図4の(c)、図6、図8及び図9の各(b)、図10及び図11の各(b)、そして図12に示すように、目印体取付穴11aの軸心方向に対して僅かに傾斜した状態のものである。また、この目印体係止突起11bは、図7の(a)あるいは(b)に示す目印体12の各ネジ山12a間に入る程度の大きさで、かつ、その傾斜角度は、ネジ山12aの傾斜角度と同じにしたものである。このような目印体係止突起11bは、後述する実施形態で説明するような方法で、本体部11の目印体取付穴11a内に形成されるものであり、本体部11の目印体取付穴11aが単なる丸穴であっても、本体部11に対する目印体12の螺進螺退を可能にするのである。
この目印体係止突起11bは、目印体12を目印体取付穴11a内に挿入して回転させたとき、目印体12のネジ山12aに係合するのであり、目印体12は、当該目印体係止突起11bを基点として螺進螺退するのである。つまり、この目印体係止突起11bが単なる丸穴である目印体取付穴11a内に形成してあるだけで、目印体12は本体部11に対して上下方向の位置調整が螺進螺退によってなされるのである。
従って、この請求項4に係る天端出し補助具10は、上記請求項1〜請求項3のいずれかに係るそれと同様な機能を発揮する他、目印体取付穴11aが単なる丸穴であっても、目印体係止突起11bを形成しておくだけで、目印体12の本体部11に対する螺進螺退を可能とするものである。
以上、説明した通り、本発明においては、
「目印体12を本体部11に形成した目印体取付穴11aに対して位置調整可能に取り付けて、目印体12によって天端位置を示すようにした天端出し補助具10であって、
本体部11に、コンクリート構造物を構成する横筋21が嵌合される横筋収納部13bを有した横筋取付部13を形成するとともに、横筋収納部13bの下方を、横筋取付部13の下部に横方向に形成した開口13aにて、横筋21に向けて開放させ、
開口13aの開口端縁の一方に、本体部11の一側面から横筋21を導入するための導入面13dを形成し、他方の開口端縁に、横筋21を案内する案内片13cを形成するとともに、端部が、本体部11に形成した目印体取付穴11a内に対して陥没可能となる目印体押え部11cを、本体部11の一部に形成したこと」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、横筋21の何処にでも素手で簡単に取り付けることができて、その取り付け位置の調整も容易に行うことができ、構造を簡単にして安価に提供することもできる天端出し補助具10を提供することができるのである。
また、本発明に係る天端出し補助具10は、上記効果を発揮する他、目印体12を目印体押え部11cによってガタ付きがないように、目印体取付穴11aに対して支持することができるものとなっているのである。
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した実施の形態である天端出し補助具10について説明するが、この実施形態は、実施例1と実施例2の2種類があるので、それぞれ項を分けて説明する。また、これらの実施例には、共通する部分が多々あるから、各実施例の前に、これら共通部分を先に説明する。
まず、本発明に係る天端出し補助具10は、例えば図7に示したような形態のものに別途形成した目印体12と、合成樹脂を材料として一体的に成形した他の部分と、の2つに分かれる。換言すれば、本発明に係る天端出し補助具10の、目印体12以外の部分は、合成樹脂を材料として一体成形したものであり、これにより、製造を容易にし、かつ安価なものに仕上げるようにしているのである。
一方、目印体12は、図7に示したように、その大部分がネジ山12aを形成した棒状のものであり、この上部に上から順に、レベラー32の完成された上面のための目印となるレベラーポインター12c、及び型枠内に打設される生コンクリート31の上面のための目印となる生コンポインター12bを形成したものである。なお、この目印体12の下端には、本体部11の目印体取付穴11aに挿入できるようにするための差込部分が形成してある。
また、これらの目印体12は、図7の(a)に示したような、全ての部分を合成樹脂で一体成形したものや、図7の(b)に示したような、ネジ山12a部分だけ、あるいはネジ山12aと軸部分を金属材料によって形成したもの等、種々なものが考えられる。
また、本発明に係る天端出し補助具10は、図14の(a)に示したように、生コンクリート31等を打設するための空間を形作る型枠内に配筋された横筋21に、多数取り付けられるものである。横筋21に取付けられた各天端出し補助具10については、これが有している目印体12のレベラーポインター12c等が同一水平面内に位置するように、レーザー光線等を使用して各目印体12の位置調整がなされる。
各天端出し補助具10における目印体12の位置調整が済めば、図14の(b)に示したように、生コンポインター12bが示す位置まで生コンクリート31が打設されるのであり、これが完了すれば、図15の(a)に示したように、生コンクリート31の表面にはレベラーポインター12cのみが露出する。次に、図15の(b)に示したように、生コンクリート31上にレベラー32を打設するのであるが、この場合、レベラーポインター12cが指し示す位置まで打設が行われるのである。打設された生コンクリート31やレベラー32が硬化すれは、図15の(c)に示したように、レベラー32によって完全平面が形成されて、天端出し補助具10が埋め殺されたコンクリート構造物が完成する。
型枠内に配筋された鉄筋としては、図14の(a)に示したように、基本的には横筋21と縦筋22が採用されている。横筋21は、例えば、コンクリート基礎の場合、殆ど何処にでも存在するものであり、本発明に係る天端出し補助具10の取付場所とするには、場所の制限が発生しないから、うってつけのものとなっている。また、この横筋21は、配筋されるときには、殆ど水平となるようになされるため、もし、この横筋21に取付ける部分が天端出し補助具10にあれば、この取付部分は、常に水平となり得ることになる。
勿論、横筋21に縦筋22を連結して、鉄筋全体として剛性のあるものとなされるのであるが、この横筋21と縦筋22との連結部分、つまり横筋21と縦筋22との交差部分では、スポット溶接によって固定されることもあるが、施工現場に溶接機を導入して溶接作業を行うことは費用が掛かるため、一般的には、図8に示すように、結束線23を使用した固定が行われる。固定部分における結束線23は、図8の(b)に示したように、縦筋22から節21a以外の突出部分を形成するものである。
(実施例1)
図1〜図6には、本発明の実施例1に係る天端出し補助具10が示してある。この天端出し補助具10は、図1及び図2に示したように、上下方向に配置されることになる本体部11と、この本体部11の一側面に一体化した横筋取付部13と、本体部11の下部であって上記横筋取付部13とは反対側に突出する縦筋取付部14とを、合成樹脂を材料として一体成形するとともに、上記本体部11の目印体取付穴11aに位置調整可能に取付けた、図7に示した目印体12とにより構成したものである。
本体部11は、本実施形態に係るものの場合、図2の(c)に示したように、平面視略四角形状のもので、図2の(a)及び(b)にも示したように、四角柱形状のものとなっている。この本体部11の中心には、図1及び図5に示すように、目印体12を位置調整可能に取付けるための目印体取付穴11aが形成してある。この目印体取付穴11aは、本体部11等を合成樹脂の射出成形による成形時に同時成形するためと、目印体12を「ネジ形式」のものにするために、以下のように種々な工夫がしてある。
まず、この目印体取付穴11aの基本的形態は、図5の(a)〜(d)に示したように、殆どストレートな穴としてあって、ネジである目印体12のネジ山12aに応じた「ネジ溝」とはしていない。本体部11の射出成形によって、目印体取付穴11aを「ネジ溝」とすることは、当該天端出し補助具10の製造の型代や時間を増大させ、結果的に天端出し補助具10全体のコストアップとなるからである。しかし、ネジ山12aを有する目印体12を使用することは、目印体12の位置調整を円滑に行えるようにするから、ネジ山12aを有する目印体12に応じた目印体取付穴11aとするために、本実施形態では、図2の(b)及び(c)などに示したように、目印体取付穴11aの内面の一部分に目印体係止突起11bを形成したのである。
目印体係止突起11bは、図6の(a)及び(b)等に示したように、目印体12のネジ山12aに嵌合できる、つまり目印体12に形成したネジ山12a間に係合することになる部分的な「ネジ山」にしたもので、図6の(a)に示したように、平面視円弧状で、かつ図6の(b)に示したように、側面視斜め線状のものである。そして、この目印体係止突起11bが目印体12のネジ山12aに確実に歯合するようにするために、当該目印体係止突起11bは本体部11の目印体押え部11cに形成してある。
目印体押え部11cは、本体部11の一部に形成されて、この本体部11の目印体取付穴11a内に端部が陥没可能となるようにしたものである。つまり、この目印体押え部11cは、図4の(c)及び図6に示したように、目印体係止突起11bが形成されるべき部分と本体部11の他の部分との間に、図6に示したように「離間部」を形成して、目印体12が挿入されないときに、その図6の(a)の左端部分が、目印体取付穴11a内に僅かに陥没した状態となるようにしたものである。
この目印体押え部11cが図6の(a)に示した状態にあれば、目印体取付穴11a内に目印体12が挿入されてきたとき、目印体押え部11cの内面に形成してあった目印体係止突起11bは、目印体12のネジ山12aに食い込むことになり、目印体12を目印体取付穴11a内面に強く押すことになる。換言すれば、この目印体押え部11cは、目印体12のネジ山12aの外形が目印体取付穴11aの内径より小さいときには、自身が目印体取付穴11a内に陥没していることによって目印体12を目印体取付穴11a内壁に押え付けるのであり、逆に、目印体12のネジ山12aの外形が目印体取付穴11aの内径より大きいときには、図6の(a)中の矢印にて示したように、自身が外方に撓んで目印体12の挿通を可能にするのである。
このような目印体押え部11cや、その内面に形成してある目印体係止突起11bを、本体部11に形成するには、図2の(b)に示したように、四角柱状に形成してある本体部11の一側面の開口から、型の一部あるいはスライドコアを天端出し補助具10内に挿入するような成形方を採用すればよい。なお、目印体取付穴11aの他の部分も、本体部11の側面に形成した開口を利用することにより、同様に形成できる。
さて、横筋取付部13であるが、この横筋取付部13は、図1及び図2に示したように、上記本体部11に対して直交する方向、つまり本体部11を垂直方向に配置したとき、当該横筋取付部13が水平方向となるように本体部11に一体化したものである。この横筋取付部13の下部には、図2の(b)及び図4の(a)に示したように、横方向、つまり横筋21と平行となるような開口13aが形成してあり、この横筋取付部13の内部には、横筋21が収納されるべき横筋収納部13bが形成してある。そして、開口13aの開口端部の両側には、案内片13cと導入面13dとが一体的に形成してある。
まず、導入面13dから説明すると、この導入面13dは、図2の(b)、図3、及び図4の(a)に示したように、開口13aの開口端縁の一方に形成したものであり、図2の(a)に示したように、当該横筋取付部13の全長に亘って形成したものである。この導入面13dは、図3の(a)及び(b)に示したように、当該天端出し補助具10を横筋21に取付けるにあたっての、本体部11の一側面から横筋21を導入するための、文字通り「導入面」を形成するものである。
すなわち、この導入面13dは、図2の(b)及び図3に示したように、開口13aの開口端縁の一方、つまり、本体部11の一側面(図3では図示右側面であり、当該横筋取付部13が一体化されている側の本体部11の側面)とほぼ同一の平面を構成するように形成したものである。これにより、当該天端出し補助具10を横筋21に取付けるにあたって、図3の(a)に示したように、作業者が当該天端出し補助具10の本体部11の一側面を横筋21に当接させ、図3の(a)中の矢印に示したように、当該天端出し補助具10をそのまま押し下げれば、横筋取付部13の開口13aは自然に横筋21に向かうことになる。
一方、案内片13cは、開口13aの、上記横筋21を導入するための導入面13dとは反対側の開口端縁に、当該横筋取付部13の全長に亘って形成したものであり、横筋21を横筋収納部13b内に案内するためのものである。すなわち、この案内片13cは、図3の(b)及び(c)に示したように、開口13aに向かってきた横筋21を受け止めるとともに、この横筋21を開口13aから横筋収納部13b内へと案内するものである。つまり、当該天端出し補助具10を横筋21に取付けるにあたって、作業者が当該天端出し補助具10を強く横筋21に向けて押し込めば、受けた力によって案内片13cが、図3の(b)中の矢印に示したように、外方に押し出され、結果的に当該横筋取付部13の開口13aを拡開する。そうなれば、横筋21が、図3の(c)に示したように、横筋取付部13の横筋収納部13b内に完全に収納されるとともに開口13aが閉じることになるから、当該天端出し補助具10を横筋21にしっかりと取付けることになるのである。
そして、本体部11の下部に一体化した縦筋取付部14であるが、本実施例1においては、図1、図2の(c)、及び図4の(b)に示したように、この縦筋取付部14は、横筋取付部13の延在方向とは反対側に伸び、かつ、縦筋22の外側を挟み込めるような二又形状にしたものである。この縦筋取付部14は、当該天端出し補助具10が横筋取付部13によって鉄筋の特に横筋21にしっかりと取付けられるのであれば、天端出し補助具10を構成するにあたって必ずしも必要なものではない。しかしながら、この縦筋取付部14は、存在していると次のようなメリットがある。
この天端出し補助具10を、図1に示したように、その横筋取付部13にて横筋21に取付けて、かつこの横筋21に組み付けられた縦筋22の一部に縦筋取付部14を係合させれば、当該天端出し補助具10は、その縦筋取付部14によって横筋21に対する回動を阻止されることになるのである。つまり、この縦筋取付部14は、横筋21に組み付けられた縦筋22が存在する箇所で積極的に使用することで、この縦筋22を利用して、横筋21に対する回動を簡単に止められるようにしたものである。
(実施例2)
図8〜図12には、本発明の実施例2に係る天端出し補助具10が示してあるが、この実施例2に係る天端出し補助具10においては、上記実施例1に係る天端出し補助具10における各構成部材の殆どをそのまま踏襲しているものであるため、実施例1と共通する部材については、各図面中に、実施例1で使用したのと同一符号を付すことによって、それらの詳細な説明を省略する。
この実施例2の、実施例1との差異は、縦筋取付部14を採用していないこと、その代わり、本体部11に一体化した交差鉄筋当接部15を有していること、そして、本体部11の上下方向の長さが、実施例1のそれより少し短いことである。この実施例2に係る天端出し補助具10は、実施例1のそれと同様に、横筋取付部13にて横筋21の任意の位置に取付け可能にした点は踏襲しているものである。
この実施例2で採用している交差鉄筋当接部15は、本体部11の、横筋取付部13とは反対側側面に一体化したものであり、かつ、横筋取付部13の延在方向とは反対側に向けて伸びたものである。この交差鉄筋当接部15は、横筋21と縦筋22とが交差する箇所で当該天端出し補助具10を積極的に使用することで、この縦筋22を利用して、横筋21に対する回動を簡単に止められるようにするものである。
交差鉄筋当接部15は、当該天端出し補助具10を鉄筋に取付けたとき、横筋21と縦筋22との交差部分に当接するものであり、図9に示したように、本体部11の、横筋取付部13の近傍に位置する部分に一体化されるものである。この部分には、実施例1に係る天端出し補助具10の縦筋取付部14が一体化されることはないから、この交差鉄筋当接部15を単独で使用することは勿論、この交差鉄筋当接部15と共に上記縦筋取付部14を採用することは十分可能である。
そして、この交差鉄筋当接部15は、図8に示したように、当該天端出し補助具10を横筋21に取付けた後に、横筋21と縦筋22との交差部分に当接されるのであるが、これによって、当該交差鉄筋当接部15は、横筋取付部13にての横筋21に対する天端出し補助具10の回動を阻止することになる。
ところで、横筋21と縦筋22との交差部分には、図8の(b)に示したように、節21aが盛り上がっていたり、結束線23が結ばれていたりすることがあり、その部分に交差鉄筋当接部15が当接すると、本体部11の垂直状態を阻害することになる。何故なら、節21aが盛り上がっていたり、結束線23が結ばれていたりする部分は、縦筋22の他の部分より膨らんでいるから、この膨らんだ部分に交差鉄筋当接部15が当接すると、その分、本体部11を傾斜させてしまうことになるからである。そこで、本実施例2に係る天端出し補助具10では、図8及び図9の各(a)に示したように、交差鉄筋当接部15を分割して、上記節21aや結束線23を避けられるようにしている。
すなわち、この実施例2に係る天端出し補助具10では、図8及び図9の各(a)に示したように、上下一対の押え片15aの間に一つの逃げ片15bを形成することによって、交差鉄筋当接部15を3分割したものであり、当該天端出し補助具10を鉄筋に取付けたとき、中央の逃げ片15bのみが節21aや結束線23に当接するようにしたものである。交差鉄筋当接部15を3分割した結果、特に、逃げ片15bは、本体部11に対してそれぞれ撓み易いものとなる。
その結果、当該天端出し補助具10を鉄筋に取付けるにあたって、図8の(a)及び(b)に示したように、中央の逃げ片15bのみが節21aや結束線23に当接し、上下の各押え片15aは節21aや結束線23を避けるようにすれば、逃げ片15bは節21aや結束線23の存在によって外側に撓むが、各押え片15aは縦筋22に自然な状態で当接したものとなる。換言すれば、節21aや結束線23の膨らみ部分は、逃げ片15bの撓みによって逃げられるから、当該交差鉄筋当接部15を一体化している本体部11は傾斜することにはならない。