JP5120050B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法および有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法および有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法および有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
電圧を印加することで発光する素子の一つとして、発光部が有機物によって構成される有機EL(Electro Luminescence)素子がある。有機EL素子は、通常、陽極と、陰極と、陽極および陰極の間に位置する1または複数の有機機能層とが、基板上に積層されて形成される。有機EL素子は、前記有機機能層として少なくとも発光層を備え、電圧を印加することで陽極から正孔が注入されるとともに、陰極から電子が注入され、これら正孔と電子とが結合することで発光する。
有機機能層は、たとえば有機機能層となる材料を含む塗布液を塗布法で成膜し、さらに乾燥させることで形成される。塗布液を塗布する方法の一つに、毛管現象を利用したキャピラリーコート法がある。キャピラリーコート法では、スリットを上方に向けて配置されるノズルから塗布液が押出された状態で、前記ノズルを下方から基板に近接させることで前記塗布液を基板側に付着させ、塗布液が基板に付着した状態のまま、ノズルと基板とを相対的に移動させることによって塗膜を形成している(例えば特許文献1参照)。
特開2004−164873号公報
キャピラリーコート法を用いた塗布では、塗り始めは所期の膜厚よりも膜厚が厚くなり、塗布をさらに進めることで所期の膜厚に漸近し、最終的に所期の膜厚となるのが通常である。従来から通常用いられているキャピラリーコート法では、塗り始めから塗膜の膜厚が一定になるまでの距離が長くなるという問題がある。このようなキャピラリーコート法を用いて例えば前述の発光層を形成すると、膜厚の厚い部分と膜厚の均一な部分とで発光強度に違いが生じ、また膜厚の厚い塗り始め部分が製品として使用されない場合もあるので、塗り始めから塗膜の膜厚が一定になるまでの距離を短くすることのできる塗布法が求められている。
従って本発明の目的は、塗り始めから塗膜の膜厚が一定になるまでの距離を短くし、均一な膜厚の塗膜を形成することのできる塗布方法を用いて、膜厚が均一な有機機能層を形成することのできる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法およびこの製法によって製造される有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。
本発明は、少なくとも陽極と、陰極と、陽極および陰極の間に位置する1または複数の有機機能層とを基板上に積層して、有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する方法であって、
スリットを上方に向けて配置されるノズルから前記有機機能層となる材料を含む塗布液が押出された状態で、前記ノズルを下方から基板に近接させ、前記塗布液が基板側に付着した状態で、ノズルと基板とを相対的に移動することによって塗膜を形成し、前記有機機能層を成膜する工程を含み、
前記ノズルを下方から基板に近接させる際の上昇速度が0.7m/min(分)以上であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
また本発明は、前記ノズルを下方から基板に近接させた後、ノズルと基板とを相対的に移動する前に、0.7m/min以上の速さで前記ノズルを下降させることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
また本発明は、前記ノズルと基板とを相対的に移動する際の相対速度が、0.7m/min以上であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
また本発明は、前記ノズルと基板とを相対的に移動する際のノズルと基板との間隔が200μm以上であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
また本発明は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法で製造された有機エレクトロルミネッセンス素子である。
本発明によれば、有機機能層を成膜する工程において、ノズルの上昇速度を所定の範囲にすることで、塗り始めから塗膜の膜厚が一定になるまでの距離を短くすることができ、これによって膜厚が均一な有機機能層を形成することができる。
本実施の形態の有機EL素子の製造方法は、少なくとも陽極と、陰極と、陽極および陰極の間に位置する1または複数の有機機能層とを基板上に積層して、有機EL素子を製造する方法であって、スリットを上方に向けて配置されるノズルから前記有機機能層となる材料を含む塗布液が押出された状態で、前記ノズルを下方から基板に近接させ、前記塗布液が基板側に付着した状態で、ノズルと基板とを相対的に移動することによって塗膜を形成し、前記有機機能層を成膜する工程を含み、前記ノズルを下方から基板に近接させる際の上昇速度が0.7m/minであることを特徴とする。
有機EL素子は、少なくとも陽極と、陰極と、陽極および陰極の間に位置する有機機能層として発光層とを備える。陽極と陰極との間には、1層の発光層に限らずに、複数の発光層、及び/又は発光層とは異なる1または複数の有機機能層、並びに無機層を備えていてもよい。以下、本実施の形態の塗布方法を用いて発光層を成膜する工程について説明する。
図1は、発光層を形成するために用いられるキャップコーターシステム1を模式的に示す図である。有機EL素子が例えば陽極、発光層および陰極が基板上にこの順で積層される素子構造の場合には、陽極が成膜された基板上に発光層が成膜される。以下、本明細書において「上方」および「下方」は、それぞれ「鉛直方向の上方」および「鉛直方向の下方」を意味する。
キャップコーターシステム1は、主に定盤2、ノズル3、およびタンク4を含んで構成される。定盤2は、鉛直方向の下方の面に設けられた基板を保持する。基板の保持方法としては、真空吸着を挙げることができる。定盤2は、図示しない電動機および油圧機などの変位駆動手段によって水平方向に往復運動する。以下、定盤2の移動する方向を塗布方向Xという場合がある。
ノズル3は、スリットを上方に向けて配置される。ノズル3は、鉛直方向Zおよび塗布方向Yにそれぞれ垂直な幅方向Yに延びる開口を上端に有し、該開口に連なる板状の塗布液供給孔5が形成されている。該塗布液供給孔5は、前記開口から下方に延びて形成されている。ノズル3の開口は、例えば塗布方向Xの幅が296mm程度であり、幅方向Yの幅が260mm程度である。ノズル3は、鉛直方向Zに変位可能に支持され、電動機および油圧機などの変位駆動手段によって鉛直方向Zに変位駆動される。
タンク4は、塗布液7を収容する。タンク4に収容される塗布液7は、基板8に塗布される塗布液7であり、本実施の形態では発光層となる材料を含む液体である。具体的には後述する発光材料が溶媒に溶解した溶液である。前記ノズル3の塗布液供給孔5とタンク4とは塗布液供給管6で連通している。すなわちタンク4に収容される塗布液7は、塗布液供給管6を通して塗布液供給孔5に供給され、さらには基板9に塗布される。タンク4は、鉛直方向Zに変位可能に支持され、電動機および油圧機などの変位駆動手段によって鉛直方向Zに変位駆動される。タンク4は、塗布液7の液面を検出する液面センサー8をさらに備える。この液面センサー8によって、塗布液7の液面の鉛直方向Zの高さが検出される。液面センサー8は、例えば光学式センサーや超音波振動式センサーによって実現される。
塗布液供給管6を介してタンク4から塗布液供給孔5に供給される塗布液7は、タンク4内の液面の高さに応じて生じる圧力と、塗布液供給孔5で生じる毛管現象による力と応じて、ノズル3の開口から押出される。したがってタンク4を上下の位置を調整してタンク4内の液面を制御することで、ノズル3内の塗布液7の高さ、またはノズル3の開口から押出される塗布液7の高さを制御することができる。
キャップコーターシステム1は、マイクロコンピュータなどによって実現される制御部をさらに備え、該制御部が、前述した変位駆動手段などを制御する。制御部が変位駆動手段を制御することで、ノズル3およびタンク4の鉛直方向Zの位置、および定盤2の塗布方向Xの変位が制御される。塗布液7を塗布すると、塗布液7が消費されてタンク4内の塗布液7の液面は経時的に低下するが、液面センサー8の検出結果に基づいて制御部が変位駆動手段を制御し、タンク4の鉛直方向Zの位置を調整することで、ノズル3の開口から押出される塗布液7の高さを制御することができる。
図2は、定盤2、タンク4およびノズル3の各位置の時間変化を示すタイムチャートである。図2のタイムチャートに沿って、塗布液を塗布するときの定盤2、タンク4およびノズル3の各位置の制御について説明する。
まず時刻t1では、ノズル3は基板9の下方に所定の間隔をあけて配置されており、タンク4は、塗布位置(塗布を開始するときのタンクの位置)よりも下方に位置する。時刻t1から時刻t2では、定盤2が塗布方向Xの一方(以下、左という場合がある)へ移動し、ノズル3が待機位置まで上昇し、さらにタンク4が接液位置まで上昇する。タンク4が接液位置まで上昇することで、ノズルの開口から塗布液7が押出された状態となる。
時刻t2から時刻t3では、定盤2が塗布開始位置までさらに左に移動し、ノズル3およびタンク4は、時刻2の位置を保持する。なお時刻t3以後、塗布が開始される時刻t7まで、定盤2は時刻t3での位置を保持する。
時刻t3から時刻t4ではノズル3が接液位置まで上昇し、タンク4は時刻t3の位置を保持する。このようにノズル3が基板に近接することで、塗布液が基板側に付着した状態になる。時刻t4でのノズル3と基板9との間隔は、5μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上10μm以下がさらに好ましく、たとえば8μmである。
時刻t5から時刻t6では、タンク4およびノズル3が塗布位置まで下降する。タンク4およびノズル3は下降するが、ノズル3から押出された塗布液は、基板8側に付着した状態を維持している。時刻t6から時刻t7までは、タンク4およびノズル3は、時刻t6の位置を保持する。
時刻t7から時刻t8では、塗布開始位置から塗布終了位置まで定盤2が一定の速度で左に移動するとともに、タンク4が塗布位置から塗布終了位置まで上昇する。この期間中においてタンク4が上昇するのは、塗布液7が消費されることでタンク4中の塗布液7の液面が低下するので、この液面を一定に保つためである。このようにノズル3から押出された塗布液7が基板8側に付着した状態で、定盤2とともに移動する基板が移動することで、基板に塗布液が塗布される。
時刻t8において塗布が終了すると、ノズル3およびタンク4が下降するとともに、基板8が右に移動する。
本実施の形態では、時刻t3から時刻t4の間において、スリットを上方に向けて配置されるノズルから前記有機機能層となる材料を含む塗布液が押出された状態で、前記ノズル3を下方から基板8に近接させる際の上昇速度を0.7m/min以上とする。該ノズル3の上昇速度は、高い方が好ましく、1.0m/min以上3.0m/minが好ましい。
従来は時刻t3から時刻t4の間において、ノズルを0.2m/min程度で上昇させていたところ、塗布の開始時刻は時刻t7であり、それ以前の工程(時刻t3からt4)においてノズル3の上昇速度を調整したとしても、この調整が塗膜の膜厚に影響を与えることは予想し難いが、実施例で効果を示すようにノズル3の上昇速度を所定の範囲に設定することで、塗り始めから塗膜の膜厚が一定になるまでの距離を短くすることができる。
また時刻t5からt6において、前記ノズルを下方から基板に近接させた後、ノズルと基板とを相対的に移動する前に、0.7m/min以上の速さで前記ノズルを下降させることが好ましい。該ノズル3の下降速度は、高い方が好ましく、1.0m/min以上3.0m/min以下がさらに好ましい。
従来は時刻t5から時刻t6の間において、ノズルを0.2m/min程度で下降させていたところ、塗布の開始時刻は時刻t7であり、それ以前の工程(時刻t5からt6)においてノズル3の下降速度を調整したとしても、この調整が塗膜の膜厚に影響を与えることは予想し難いが、実施例で効果を示すようにノズル3の下降速度を所定の範囲に設定することで、塗り始めから塗膜の膜厚が一定になるまでの距離を短くすることができる。
また、ノズル3と基板とを相対的に移動する際の相対速度が、0.7m/min以上であることが好ましく、1.0m/min以上3.0m/min以下であることがさらに好ましい(時刻t7からt8)。このようにノズル3と基板とを相対的に移動する際の相対速度を所定の範囲に設定することで、塗り始めから塗膜の膜厚が一定になるまでの距離を短くすることができる。
また前記ノズル3と基板8とを相対的に移動する際(時刻t7から時刻t8)のノズル3と基板との間隔が200μm以上であることが好ましく、また300μm以上350μm以下であることがさらに好ましく、300μm以上320μm以下であることがさらに好ましい。このような間隔に設定することで、塗り始めから塗膜の膜厚が一定になるまでの距離を短くすることができる。
本実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前述の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法によって製造される。
本実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前述の実施の形態の製造方法を用いることによって、均一な膜厚の素子を実現することができる。
以下に、有機EL素子の層構造、各層の構成、および各層の製法について説明する。
前述したように、有機EL素子は、少なくとも陽極と、陰極と、陽極および陰極の間に配置される発光層とを含んで構成されるが、陽極と発光層との間、及び/又は発光層と陰極との間に、発光層とは異なる他の層を有していてもよく、また陽極と陰極との間には、一層の発光層に限らずに、複数の発光層が配置されてもよい。
陰極と発光層との間に設けられる層としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層などを挙げることができる。陰極と発光層との間に電子注入層と電子輸送層との両方の層が設けられる場合、陰極に近い層を電子注入層といい、発光層に近い層を電子輸送層という。
電子注入層は、陰極からの電子注入効率を改善する機能を有する層である。電子輸送層は、陰極、電子注入層または陰極により近い電子輸送層からの電子注入を改善する機能を有する層である。正孔ブロック層は、正孔の輸送を堰き止める機能を有する層である。なお電子注入層、及び/又は電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が正孔ブロック層を兼ねることがある。
正孔ブロック層が正孔の輸送を堰き止める機能を有することは、例えばホール電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
陽極と発光層との間に設けられる層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層などを挙げることができる。正孔注入層と正孔輸送層との両方の層が設けられる場合、陽極に近い層を正孔注入層といい、発光層に近い層を正孔輸送層という。
正孔注入層は、陽極からの正孔注入効率を改善する機能を有する層である。正孔輸送層は、陽極、正孔注入層または陽極により近い正孔輸送層からの正孔注入を改善する機能を有する層である。電子ブロック層は、電子の輸送を堰き止める機能を有する層である。なお正孔注入層、及び/又は正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が電子ブロック層を兼ねることがある。
電子ブロック層が電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、電子電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
なお、電子注入層および正孔注入層を総称して電荷注入層と言う場合があり、電子輸送層および正孔輸送層を総称して電荷輸送層と言う場合がある。
本実施の形態の有機EL素子のとりうる層構成の具体的な一例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
e)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
f)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
g)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/発光層/電荷輸送層/陰極
l)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
m)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷輸送層/陰極
o)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
p)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
本実施の形態の有機EL素子は、2層以上の発光層を有していてもよく、2層の発光層を有する有機EL素子としては、以下のq)に示す層構成を挙げることができる。
q)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/電荷発生層/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
また、3層以上の発光層を有する有機EL素子としては、具体的には、(電荷発生層/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層)を一つの繰り返し単位として、以下のr)に示す前記繰り返し単位を2つ以上含む層構成を挙げることができる。
r) 陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/(該繰り返し単位)/(該繰り返し単位)/・・・/陰極
上記層構成p)およびq)において、陽極、電極、陰極、発光層以外の各層は必要に応じて削除することができる。
ここで、電荷発生層とは電界を印加することにより、正孔と電子を発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、酸化モリブデンなどから成る薄膜を挙げることができる。
また有機EL素子は、封止のための封止膜または封止板などの封止部材で覆われてもよい。また基板に有機EL素子を設ける場合、通常基板側に陽極が配置されるが、基板側に陰極を配置するようにしてもよい。
本実施の形態の有機EL素子は、発光層からの光を外に取出すために、通常、発光層を基準にして光が取出される側に配置される全ての層を透明なものとしている。一例として基板/陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極/封止部材という層構成を有する有機EL素子について説明すると、発光層からの光を基板側から取出す所謂ボトムエミッション型の有機EL素子の場合には、基板、陽極、電荷注入層及び正孔輸送層の全てを透明なものとし、発光層からの光を封止部材側から取出す所謂トップエミッション型の有機EL素子の場合には、電子輸送層、電荷注入層、陰極及び封止部材の全てを透明なものとする。また一例として基板/陰極/電荷注入層/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/電荷注入層/陽極/封止部材という構成を有する有機EL素子について説明すると、ボトムエミッション型の素子の場合には、基板、陰極、電荷注入層および電子輸送層の全てを透明なものとし、トップエミッション型の有機EL素子の場合には、正孔輸送層、電荷注入層、陰極および封止部材の全てを透明なものとする。ここで透明の程度としては、光の取出される側の有機EL素子の最表面と、発光層との間の可視光透過率が40%以上のものが好ましい。紫外領域または赤外領域の発光が求められる有機EL素子の場合には、当該領域において40%以上の光透過率を示すものが好ましい。
本実施の形態の有機EL素子は、さらに電極との密着性向上や電極からの電荷注入性の改善のために、電極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよい。また界面での密着性向上や混合の防止などのために、前述した各層間に薄いバッファー層を挿入してもよい。
積層する層の順序、層数、および各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜設定することができる。
次に、有機EL素子を構成する各層の材料および形成方法について、より具体的に説明する。
<基板>
基板は、有機EL素子を製造する工程において変化しないものが好適に用いられ、例えばガラス、プラスチック、高分子フィルム、およびシリコン基板、並びにこれらを積層したものなどが用いられる。前記基板としては、市販のものが使用可能であり、また公知の方法により製造することができる。
<陽極>
陽極は、陽極を通して発光層からの光を取出す構成の有機EL素子の場合、透光性を示す電極が用いられる。透光性を示す電極としては、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物および金属などの薄膜を用いることができ、光透過率の高いものが好適に用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、および銅などから成る薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、または酸化スズから成る薄膜が好適に用いられる。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などを挙げることができる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
陽極には、光を反射する材料を用いてもよく、該材料としては、仕事関数3.0eV以上の金属、金属酸化物、金属硫化物が好ましい。
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができ、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
<正孔注入層>
正孔注入層を構成する正孔注入材料としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、および酸化アルミニウムなどの酸化物や、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、アモルファスカーボン、ポリアニリン、およびポリチオフェン誘導体などを挙げることができる。
正孔注入層の成膜方法としては、例えば正孔注入材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔注入材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水を挙げることができる。
溶液からの成膜方法としては、前述した本実施の形態の塗布方法を用いて成膜することが好ましく、本実施の形態の塗布方法以外には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法などの塗布法を挙げることができる。
正孔注入層の膜厚は、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜設定され、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなるので好ましくない。従って正孔注入層の膜厚は、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
<正孔輸送層>
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。
これらの中で正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などの高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
正孔輸送層の成膜方法としては、特に制限はないが、低分子の正孔輸送材料では、高分子バインダーと正孔輸送材料とを含む混合液からの成膜を挙げることができ、高分子の正孔輸送材料では、正孔輸送材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール、テトラリン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒などを挙げることができる。
溶液からの成膜方法としては、前述した本実施の形態の塗布方法を用いて成膜することが好ましく、本実施の形態の塗布方法以外には、前述した正孔中注入層の成膜法と同様の塗布法を挙げることができる。
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収の弱いものが好適に用いられ、例えばポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。
正孔輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜設定され、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚は、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
<発光層>
発光層は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、または該有機物とこれを補助するドーパントとから形成される。ドーパントは、発光効率の向上や発光波長を変化させるなどの目的で加えられる。なお、有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよい。発光層を構成する発光材料としては、例えば以下の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料、ドーパント材料を挙げることができる。
(色素系材料)
色素系材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などを挙げることができる。
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、例えば中心金属に、Al、Zn、Beなど、またはTb、Eu、Dyなどの希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを有する金属錯体を挙げることができ、例えばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体などを挙げることができる。
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素系材料や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどを挙げることができる。
上記発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、およびそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などが好ましい。
また、緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
また、赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
(ドーパント材料)
ドーパント材料としては、例えばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどを挙げることができる。なお、このような発光層の厚さは、通常約2nm〜200nmである。
<発光層の成膜方法>
発光層の成膜方法としては、発光材料を含む溶液を塗布する方法、真空蒸着法、転写法などを用いることができる。溶液からの成膜に用いる溶媒としては、前述の溶液から正孔輸送層を成膜する際に用いられる溶媒と同様の溶媒を挙げることができる。
発光材料を含む溶液を塗布する方法としては、前述した本実施の形態の塗布方法を用いて成膜することが好ましく、本実施の形態の塗布方法以外には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法およびノズルコート法などのコート法、並びにグラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法などの塗布法を挙げることができる。パターン形成や多色の塗分けが容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法などの印刷法が好ましい。また、昇華性を示す低分子化合物の場合には、真空蒸着法を用いることができる。さらには、レーザーによる転写や熱転写により、所望のところのみに発光層を形成する方法も用いることができる。
<電子輸送層>
電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、公知のものを使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などを挙げることができる。
これらのうち、電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子の電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、または溶液若しくは溶融状態からの成膜を挙げることができ、高分子の電子輸送材料では溶液または溶融状態からの成膜を挙げることができる。なお溶液または溶融状態からの成膜する場合には、高分子バインダーを併用してもよい。溶液から電子輸送層を成膜する方法としては、前述した本実施の形態の塗布方法を用いて成膜することが好ましく、本実施の形態の塗布方法以外には、前述の溶液から正孔輸送層を成膜する方法と同様の成膜法を挙げることができる。
電子輸送層の膜厚は、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜設定され、少なくともピンホールが発しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って該電子輸送層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
<電子注入層>
電子注入層を構成する材料としては、発光層の種類に応じて最適な材料が適宜選択され、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、またはこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、および炭酸化物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。電子注入層は、2層以上を積層した積層体で構成されてもよく、例えばLiF/Caなどを挙げることができる。電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、印刷法などにより形成される。電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
<陰極>
陰極の材料としては、仕事関数の小さく、発光層への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また陽極側から光を取出す有機EL素子では、発光層からの光を陰極で陽極側に反射するために、陰極の材料としては可視光反射率の高い材料が好ましい。陰極には、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属およびIII−B族金属などを用いることができる。陰極の材料としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、またはグラファイト若しくはグラファイト層間化合物などが用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などを挙げることができる。また、陰極としては導電性金属酸化物および導電性有機物などから成る透明導電性電極を用いることができる。具体的には、導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、およびIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などを挙げることができる。なお、陰極は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお、電子注入層が陰極として用いられる場合もある。
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して適宜設定され、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法などを挙げることができる。
<絶縁層>
絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料などを挙げることができる。膜厚2nm以下の絶縁層を設けた有機EL素子としては、陰極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けたもの、陽極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けたものを挙げることができる。
本実施の形態の有機EL素子は、面状光源、セグメント表示装置およびドットマトリックス表示装置の光源、並びに液晶表示装置のバックライトとして用いることができる。
本実施の形態の有機EL素子を面状光源として用いる場合には、例えば面状の陽極と陰極とを積層方向の一方から見て重なり合うように配置すればよい。またセグメント表示装置の光源としてパターン状に発光する有機EL素子を構成するには、光を通す窓がパターン状に形成されたマスクを前記面状光源の表面に設置する方法、消光すべき部位の有機物層を極端に厚く形成して実質的に非発光とする方法、陽極および陰極のうちの少なくともいずれか一方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらの方法でパターン状に発光する有機EL素子を形成するとともに、いくつかの電極に対して選択的に電圧を印加できるように配線を施すことによって、数字や文字、簡単な記号などを表示可能なセグメントタイプ表示装置を実現することができる。ドットマトリックス表示装置の光源とするためには、陽極と陰極とをそれぞれストライプ状に形成して、積層方向の一方からみて互いに直交するように配置すればよい。部分カラー表示、マルチカラー表示が可能なドットマトリックス表示装置を実現するためには、発光色の異なる複数の種類の発光材料を塗り分ける方法、並びにカラーフィルターおよび蛍光変換フィルターなどを用いる方法を用いればよい。ドットマトリックス表示装置は、パッシブ駆動してもよく、TFTなどと組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示装置は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダーなどの表示装置として用いることができる。
さらに、前記面状光源は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト、あるいは面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
塗布方向Xの長さが200mm、幅方向Yの長さが200mm、厚みが0.7mmのガラス基板上に塗布液を塗布した。塗布液の溶媒としては、アニソールとシクロヘキシルベンゼンとを重量比1:1で混合した混合溶媒を用い、発光材料としては、サメイション製のSW006を用いた。この発光材料は、白色光を発光する材料である。塗布液における発光材料の割合を0.8重量%とした。
定盤、タンクおよびノズルの変位は、それぞれ図2のタイムチャートに示す順序で行った。時刻t1から時刻t2までのタンクの上昇速度を0.1m/minとし、時刻t5から時刻t6までのタンクの下降速度を0.25m/minとした。また時刻t3からt4までのノズルの上昇速度を1.0m/minとし、時刻t5から時刻t6までのノズルの下降速度を1.0m/minとした。さらに時刻t7から時刻t8までの定盤の速度を、0.5m/minとした。また時刻t7において、定盤の速度が0m/minから0.5m/minに達するまでの加速時間を、3sec(秒)とした。また時刻t4から時刻t5までの基板とノズルとの間隔を8μmとし、時刻t7から時刻t8までの基板とノズルとの間隔を220μmとした。
(比較例1)
比較例1として、ノズルの上昇速度および下降速度のみを異ならせたこと以外は実施例1と同様にして塗布液を塗布した。時刻t3から時刻t4までのノズルの上昇速度を0.25m/minとし、時刻t5から時刻t6までのノズルの下降速度を0.05m/minとした。
(参考例1)
参考例1として、タンクの上昇速度および下降速度のみを異ならせたこと以外は比較例1と同様にして塗布液を塗布した。時刻t1から時刻t2までのタンクの上昇速度を3.0m/minとし、時刻t5から時刻t6までのタンクの下降速度を3.0m/minとした。
(参考例2)
参考例2として、時刻t7における定盤の加速度のみを異ならせたこと以外は比較例1と同様にして塗布液を塗布した。時刻t7において、定盤の速度が0m/minから0.5m/minに達するまでに要する加速時間を、0.1secとした。
(評価)
光干渉膜厚計((株)菱化システム社製「三次元非接触表面形状計測システム」MM557N-M100型)を用いて、実施例1、比較例1、参考例1、参考例2で塗布した塗膜の膜厚を測定した。測定結果を図3に示す。図3では、横軸は基板の塗布方向の長さを表し、縦軸は塗膜の膜厚を表す。基板の塗布方向の一端を0mmとした。
図3に示すように、比較例1に比べると、実施例1では塗布開始位置から急激に膜厚が薄くなり、塗り始めから可及的速やかに塗膜の膜厚が一定になることを観測した。このように、塗布の開始する時刻t7以前の工程においてノズルの上昇速度および下降速度を調整することで、塗り始めから塗膜の膜厚が一定になるまでの距離が短くなることを確認した。また参考例1および参考例2の膜厚の変化から、タンクの上昇速度および下降速度、並びに定盤の加速度を変更することで、塗り始めから塗膜の膜厚が一定になるまでの距離が短くなることを確認した。
(参考例3)
参考例3として比較例1と同様にして塗布液を塗布した。なお図4に示す参考例3の結果は比較例1の結果とは異なるが、この差異は、装置をセッティングする際に生じる初期設定の微妙な差異に起因するものと思われる。
(参考例4)
参考例4として、塗布液を塗布する際のノズルと基板との間隔を異ならせたこと以外は参考例3と同様にして塗布液を塗布した。時刻t7からt8までの基板とノズルとの間隔を320μmとした。
(参考例5)
参考例5として、塗布液を塗布する際のノズルと基板との間隔を異ならせたこと以外は参考例3と同様にして塗布液を塗布した。時刻t7から時刻t8までの基板とノズルとの間隔を70μmとした。
(参考例6)
参考例6として、塗布液を塗布する際の定盤の速度およびタンク4の塗布位置のみを異ならせたこと以外は参考例3と同様にして塗布液を塗布した。時刻t7から時刻t8までの定盤の速度を1.0m/minとし、タンク塗布位置を2mm下降させた。なおタンク4の塗布位置を変更したのは、速度を高くすると膜厚が厚くなるので、膜厚を参考例3と同程度にするためである。
(評価)
前述の光干渉膜厚計によって、参考例3〜6で塗布した塗膜の膜厚を測定した。測定結果を図4に示す。図4では、横軸は基板の塗布方向の長さを表し、縦軸は塗膜の膜厚を表す。基板の塗布方向の一端を0mmとした。
図4に示すように、参考例3〜5では、塗布液を塗布する際のノズルと基板との間隔がそれぞれ異なるのみであるが、基板とノズルとの間隔を3つのなかで最も広い320μmにすると(参考例4)、塗り始めから塗膜の膜厚が一定になるまでの距離が短くなることを確認した。また参考例6のように、塗布液を塗布する際の定盤の速度を1.0m/minと高くすると、塗り始めから塗膜の膜厚が一定になるまでの距離が短くなることを確認した。
実施例1と同じガラス基板上に、実施例1と同じ塗布液を塗布した。定盤、タンクおよびノズルの変位は、図2のタイムチャートに示す順序で行った。時刻t1から時刻t2までのタンクの上昇速度を3.0m/minとし、時刻t5から時刻t6までのタンクの下降速度を3.0m/minとした。また時刻t3から時刻t4までのノズルの上昇速度を1.0m/minとし、時刻t5から時刻t6までのノズルの下降速度を1.0m/minとした。さらに時刻t7からt8までの定盤の速度を、1.0m/minとした。また時刻t7において、定盤の速度が0m/minから1.0m/minに達するまでの加速時間を、0.1 secとした。また時刻t7から時刻t8までの基板とノズルとの間隔を320μmとした。
(比較例2)
比較例2として比較例1と同様にして塗布液を塗布した。なお図5に示す比較例2の結果は比較例1の結果とは異なるが、この差異は、装置をセッティングする際に生じる初期設定の微妙な差異に起因するものと思われる。
(評価)
前述の光干渉膜厚計を用いて、実施例2、比較例2で塗布した塗膜の膜厚を測定した。測定結果を図5に示す。図5では、横軸は基板の塗布方向の長さを表し、縦軸は塗膜の膜厚を表す。基板の塗布方向の一端を0mmとした。
図5に示すように、実施例2の条件とすることで、塗り始めから塗膜の膜厚が一定になるまでの距離が短くなることを確認した。
発光層を形成するために用いられるキャップコーターシステム1を模式的に示す図である。 定盤2、タンク4およびノズル3の各位置の時間変化を示すタイムチャートである。 実施例1、比較例1、参考例1、参考例2で塗布した塗膜の膜厚を示す図である。 参考例3〜6で塗布した塗膜の膜厚を示す図である。 実施例2、比較例2で塗布した塗膜の膜厚を示す図である。
符号の説明
1 キャップコーターシステム
2 定盤
3 ノズル
4 タンク
5 塗布液供給孔
6 塗布液供給管
7 塗布液
8 液面センサー
9 基板
X 塗布方向
Y 幅方向
Z 鉛直方向

Claims (5)

  1. キャピラリーコート法を用いて、少なくとも陽極と、陰極と、陽極および陰極の間に位置する1または複数の有機機能層とを基板上に積層して、有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する方法であって、
    スリットを上方に向けて配置されるノズルから前記有機機能層となる材料を含む塗布液が押出された状態で、前記ノズルを下方から基板に近接させ、前記塗布液が基板側に付着した状態で、ノズルと基板とを相対的に移動することによって塗膜を形成し、前記有機機能層を成膜する工程を含み、
    前記ノズルを下方から基板に近接させる際の上昇速度が0.7m/min以上であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  2. 前記ノズルを下方から基板に近接させた後、ノズルと基板とを相対的に移動する前に、0.7m/min以上の速さで前記ノズルを下降させることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  3. 前記ノズルと基板とを相対的に移動する際の相対速度が、0.7m/min以上であることを特徴とする請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  4. 前記ノズルと基板とを相対的に移動する際のノズルと基板との間隔が200μm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法で製造された有機エレクトロルミネッセンス素子。
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