以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
以下の実施形態においては、車両の進行方向前方に存在する駐車車両等の回避対象物を回避する場合の操舵制御例を説明するが、本発明の適用対象は、回避対象物を回避する場合に限られるものではない。例えば、山道等の走行中に旋回性能を重視する場合や、複数の車線を有する路における車線変更等に対する操舵制御に対しても、本発明は適用することができる。
ここで、操舵制御とは、車両の操舵輪に対する直接的又は間接的な制御である。前者の例としては、例えば、車両を車線内に保持して走行させるために運転者の操舵に関係なく操舵輪を制御したり、車両の進行方向に存在する障害物を回避するために、運転者の操舵とは異なる操舵をしたりする制御がある。後者の例としては、例えば、運転者の操舵に対して操舵輪の応答を低くすることによって急ハンドルによるスピンを回避したり、反対に応答性を高くすることによって、駐車時等における取り回しを向上させたりする制御がある。
本実施形態は、車両の目標とする走行軌跡を設定するとともに、目標とする走行軌跡に応じて、車両の操舵特性を切り替える点に特徴がある。例えば、目標とする走行軌跡が旋回であるような場合には、旋回を重視した操舵特性に設定し、目標とする走行軌跡がレーンチェンジであるような場合には、横移動を重視した操舵特性に設定する。
図1は、本実施形態に係る操舵制御装置を備える車両の構成例を示す構成概略図である。ここで、車両1は、図1の矢印Y方向に前進する。車両1が前進する方向は、車両1の運転者が座る運転席からハンドルへ向かう方向である。左右の区別は、車両1の前進する方向(図1の矢印Y方向)を基準とする。すなわち、「左」とは、車両1の前進する方向に向かって左側をいい、「右」とは、車両1の前進する方向に向かって右側をいう。また、車両1の前後は、車両1が前進する方向を前とし、車両1が後進する方向、すなわち車両1が前進する方向とは反対の方向を後とする。
まず、車両1の全体構成を説明する。車両1は、左側前輪5FL、右側前輪5FR、左側後輪5RL及び右側後輪5RRの4個の車輪を備え、後述するように左側前輪5FL及び右側前輪5FRを駆動輪とする。以下の説明において、車両1の前後の車輪に着する場合には、前輪5F、後輪5Rという。
車両1は、本実施形態に係る操舵制御装置20を搭載し、例えば、車両1が対象物を回避するための走行軌跡として設定された目標軌跡上を走行するように、操舵制御装置20によって制御される。目標軌跡は、例えば、回避する対象物(回避対象物)までの距離や運転者の顔向き、視線方向等に基づいて決定される。
車両1は、内燃機関2を動力発生手段としている。内燃機関2は、車両1の進行方向(図1中の矢印Y方向)前方に搭載される。内燃機関2が発生した動力は、まず変速装置3に入力されて、車両1を走行させるために適した回転数に減速されてから、駆動軸4を介して駆動輪である左側前輪5FL及び右側前輪5FRへ伝達される。これによって、車両1が走行する。なお、本実施形態において、内燃機関2はガソリンを燃料とするレシプロ式の火花点火式内燃機関であるが、内燃機関2はこれに限定されるものではない。
また、車両1の動力発生手段は内燃機関に限定されるものではない。例えば、内燃機関と電動機とを組み合わせた、いわゆるハイブリッド方式の動力発生手段を備えていてもよいし、動力発生手段として、各車輪にそれぞれ電動機を備える、いわゆるインホイールモータ方式としてもよい。さらに、変速装置3は、左側前輪5FLの駆動力と、右側前輪5FRの駆動力とを変更することができる機能を備えていてもよい。
車両1を発進させたり、車両1の速度を調整したりするため、車両1にはアクセルペダル40Pが備えられる。アクセルペダル40Pの踏み込み量は、アクセルペダル40Pに取り付けられるアクセル開度センサ40によって検出され、ECU(Electronic Control Unit)10に取り込まれる。ECU10は、アクセル開度センサ40から取得したアクセルペダル40Pの踏み込み量に基づきスロットル弁2SVを開き、内燃機関2への流入空気量を調整する。ECU10は、内燃機関2の回転数と内燃機関2への流入空気量とに基づいて、内燃機関2への燃料噴射量を決定し、内燃機関2の出力を制御する。
車両1の左側前輪5FL及び右側前輪5FRは、車両1の駆動輪であるとともに、操舵輪としても機能する。このように、車両1は、いわゆるFF(Front engine Front drive)形式の駆動形式を採用する。なお、車両1の駆動形式はFF形式に限られず、いわゆるFR(Front engine Rear drive)形式や、4WD(4 Wheel Drive:4輪駆動)形式であってもよい。また、車両1は、各駆動輪の駆動力を変更することにより、車両1旋回性能を制御したり、車両1の走行安定性を向上させたりできる駆動システムを備えていてもよい。
車両1は、左側前輪5FLには左側前輪用制動装置6FLが、右側前輪5FRには右側前輪用制動装置6FRが、左側後輪5RLには左側後輪用制動装置6RLが、右側後輪5RRには右側後輪用制動装置6RRが備えられている。左側後輪用制動装置6RL、右側後輪用制動装置6RR、左側前輪用制動装置6FL及び右側前輪用制動装置6FR(以下、必要に応じてこれらを制動装置という)は、ブレーキペダル43Pの踏力を油圧に変換し、この油圧によって制動力を発生させる。
ブレーキペダル43Pから入力される制動動作は、ブレーキペダル43Pに取り付けられるブレーキセンサ43により検出される。ブレーキセンサ43は、ブレーキペダル43Pのストローク、踏力、マスタシリンダ圧力を検出することにより、ブレーキペダル43Pの踏み量や踏み込み速度等を知ることができる。
ブレーキセンサ43により検出されたブレーキペダル43Pの踏み量や踏み込み速度の情報は、ECU10に入力される。本実施形態において、ECU10は、路面の状態や車両1の挙動に応じて、それぞれの制動装置の制動力を調整して、制動中における左側前輪5FLや右側後輪5RRのロックを抑制する。また、ECU10は、車両1の各車輪の制動力を調整することにより、車両1の旋回中や発進時等に車両の横滑りを抑制することにより、車両1の姿勢を安定させる、いわゆる横滑り防止制御を実行することもできる。
本実施形態に係る車両1では、運転者によるハンドル9の操作は、前輪操舵補助装置7を介して左側前輪5FL及び右側前輪5FRに伝達され、これによって、左側前輪5FL及び右側前輪5FRが操舵される。前輪操舵補助装置7は、操舵力補助機能と操舵特性変更機能とを備える。操舵力補助機能は、電動機等によってステアリング機構に補助操舵力を与えることにより、運転者の操舵力を低減する。操舵特性変更機能は、車両1の運転状態(例えば車両1の速度、すなわち車速)に応じて、ハンドル9の操作量に対する左側前輪5FL及び右側前輪5FRの操舵角を変更する。ここで、前輪操舵補助装置7は、ECU10や操舵制御装置20によって制御される。
また、本実施形態に係る車両1は、後輪操舵装置(ARS:Active Rear Steering)8を備える。後輪操舵装置8は、左側後輪5RL及び右側後輪5RRを操舵するものであり、ECU10によって、車両1の運転状態(例えば車速や旋回状態)に応じて、左側前輪5FL及び右側前輪5FRの操舵角と同位相、あるいは逆位相で操舵される。このように、本実施形態に係る車両1は、左側前輪5FL及び右側前輪5FRとともに、左側後輪5RL及び右側後輪5RRも操舵輪となる。
後輪操舵装置8も、前輪操舵補助装置7と同様に操舵特性変更を有しており、車両1の運転状態(例えば車速)に応じて、ハンドル9の操作量に対する左側後輪5RL及び右側後輪5RRの操舵角を変更する。ここで、後輪操舵装置8は、ECU10や操舵制御装置20によって制御される。
車両1には、車両1の運転者の動作を検出するセンサ類、車両1の周辺環境(対象物の有無、回避場所の有無等)を検出するセンサ類、あるいは車両1の運転状態を検出するためのセンサ類が備えられる。車両1の運転者の動作を検出するセンサ類は、ハンドル9の操舵角を検出する操舵角センサ50、運転者の顔の向きを検出する顔向き検出センサ(カメラ)41、及び運転者の眼球の動きから運転者の視線を検出する視線検出センサ(カメラ)42、ブレーキセンサ43、操舵トルクセンサ52である。これらを称して、ドライバ動作検出手段という。なお、運転者のハンドル9の操作は、前輪操舵補助装置7の操舵トルクセンサ52によって検出されるハンドル9の操舵力や操舵力変化速度に基づいて判定してもよい。車両1の運転者の動作は、前記ドライバ動作検出手段によって検出され、運転者が車両1を進行させたい方向が判定される。
車両1の周辺環境を検出するセンサ類は、車両1の進行方向前方に設けられる対象物検出センサ44、道路形状検出センサ45、及び路面状態検出センサ46、ナビゲーション装置47である。これらを称して、周辺環境検出手段という。車両1の周辺環境は、車両1の進行方向に存在する物体(先行車両や駐車車両等物)や、車両1の進行方向における状況(交差点の有無、車線の増減、路面が低μ路面か否か等)であり、これらに関する情報によって、車両1の走行に何らかの影響を与え得るか否かを判定することができる。
対象物検出センサ44は、車両1の進行方向前方に存在する物体(駐車車両、先行車両、落石等)を検出するためのもので、例えば、ミリ波レーダー装置、レーザーレーダー装置、ソナー装置、あるいはカメラ等が用いられる。道路形状検出センサ45は、車両1の進行方向における道路の情報、例えば、車両1の進行方向には交差点がある、車両1の進行方向の道路が1車線から2車線になる等の情報を検出するために用いられる。道路形状検出センサ45は、例えば、カメラが用いられる。
また、ナビゲーション装置47も、車両1の進行方向における道路の情報を検出するために用いられる。例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)により得られる車両1の現在位置情報、及びナビゲーション装置47の有する地図、地形情報に基づき、車両1の進行方向に存在する道路の幅、交差点までの距離、曲線の半径、回避場所の有無等の道路情報が判定される。
路面状態検出センサ46は、車両1の走行する路面の状態を検出するもので、例えば、カメラが用いられる。また、カメラの他に、気温計、路面温度検出手段、駆動輪の発生する力、車両1の車輪(左側前輪5FLや右側前輪5FR等)のロックやスリップ、路面と車輪との摩擦係数、車輪間における摩擦係数の違い等を検出する手段を路面状態検出センサ46として用いてもよい。そして、これらの手段によって検出される情報に基づいて、車両1の走行する路面の状態が判定される。
なお、駆動輪の発生する力は、内燃機関2の発生するトルク、変速装置3の変速比、駆動輪の半径等に基づいて求めることができる。車両1の車輪のロックやスリップは、車両1の各輪に設けられる左側前輪回転速度センサ51FL、右側前輪回転速度センサ51FR、左側後輪回転速度センサ51RL、右側後輪回転速度センサ51RRによって検出することができる。路面と車輪との摩擦係数は、例えば、駆動輪の荷重と当該駆動輪が発生する駆動力との比から求めることができる。
車両1の運動状態は、加速度センサ48、ヨーレートセンサ49、左側前輪回転速度センサ51FL、右側前輪回転速度センサ51FR、左側後輪回転速度センサ51RL、右側後輪回転速度センサ51RRによって検出される。これらを称して、自車両状態検出手段という。車両1の運動状態は、例えば、車両1の前後速度(車両1の前後方向における速度)や前後加速度、車両1の横速度(前後方向に直交する方向における速度)や横加速度、車両1のヨー角、ヨー角速度、ヨー角加速度、車両1のスリップ角、スリップ角速度、スリップ角加速度等によって決定される。なお、上記ドライバ動作検出手段、周辺環境検出手段及び自車両状態検出手段は一例であって、上記センサ類に限定されるものではない。
図2は、本実施形態に係る操舵制御装置の構成を示す説明図である。操舵制御装置20はECU10内に設けられ、ECU10の1機能として、本実施形態に係る操舵制御を実現するものとして構成される。操舵制御装置20は、いわゆるマイクロコンピュータであり、記憶部16に格納されている本実施形態に係る操舵制御を実現するためのコンピュータプログラムに従って、本実施形態に係る操舵制御を実行する。
操舵制御装置20と記憶部16とは、データバス11cによって接続されて、相互に通信できるようになっている。ECU10は、操舵制御装置20が、本実施形態に係る操舵制御に必要な情報を取得するために、入力ポート12及び入力インターフェース13を備える。また、操舵制御装置20が制御対象を動作させるため、出力ポート14及び出力インターフェース15を備える。操舵制御装置20と入力ポート12とは、データバス11aによって接続され、また、操舵制御装置20と出力ポート14とは、データバス11bによって接続される。
入力ポート12には、入力インターフェース13が接続されている。入力インターフェース13には、車両1を運転する運転者の動作を検出するドライバ動作検出手段S1、対象物の有無や道路の形状等を検出する周辺環境検出手段S2、車両1の運動を検出する自車両状態検出手段S3その他の、操舵制御に必要な情報を取得する検出手段が接続されている。これらの検出手段から出力される信号は、入力インターフェース13内のA/Dコンバータ13aやディジタル入力バッファ13bにより、操舵制御装置20が利用できる信号に変換されて入力ポート12へ送られる。これにより、操舵制御装置20は、本実施形態に係る操舵制御に必要な情報を取得することができる。
出力ポート14には、出力インターフェース15が接続されている。出力インターフェース15には、本実施形態に係る操舵制御における制御対象として、前輪操舵補助装置7や後輪操舵装置8が接続されている。出力インターフェース15には、制御回路15a、15b等が設けられており、操舵制御装置20で演算された制御信号に基づき、前輪操舵補助装置7や後輪操舵装置8を動作させる。
本実施形態に係る車両1が備える前輪操舵補助装置7は、いわゆるEPS(Electronic Power Steering:電動パワーステアリング装置)で、かつVGRS(Variable Gear Ratio Steering:ステアリングギヤ比可変ステアリング装置)を備える。すなわち、前輪操舵補助装置7は、電動機でハンドル9の操作を補助するとともに、ハンドル9の入力に対する前輪の操舵角や操舵速度等を、自車両状態検出手段によって検出される車速や駆動力、あるいは周辺環境検出手段によって検出される道路状況等に応じて変更する。これによって、車両1の旋回性能を向上させたり、ハンドル9を切り過ぎた場合にはこれを抑制して車両1の姿勢を安定させたりすることができる。また、本実施形態1に係る車両1が備える後輪操舵装置8は、車速や駆動力、あるいは道路状況等に応じて後輪を操舵する。これによって、車両1の旋回性能を向上させたり、車両1の姿勢を安定させたりすることができる。
車両1が備える左側後輪用制動装置6RL、右側後輪用制動装置6RR、左側前輪用制動装置6FL及び右側前輪用制動装置6FRは、それぞれ独立に制御することができる。これによって、例えば、車両1の旋回中に、旋回内側の車輪に制動力を与えれば、旋回性能を向上させることができる。また、旋回外側の車輪に制動力を与えれば、車両1のスピンを抑えることができる。
図2に示すように、操舵制御装置20は、目標軌跡設定部21と、操舵特性設定部22と、操舵制御部23と、制御条件判定部24とを含んで構成される。これらが、本実施形態に係る操舵制御を実行する部分となる。目標軌跡設定部21と操舵特性設定部22と操舵制御部23と制御条件判定部24とは、相互に制御データをやり取りしたり、一方に命令を出したりできるように構成されている。
目標軌跡設定部21は、本実施形態に係る操舵制御に必要な情報を取得するためのドライバ動作検出手段S1や周辺環境検出手段S2等から取得した情報に基づき、運転者の進みたい方向を推定し、車両1の目標とする進行方向を設定する。操舵特性設定部22は、目標軌跡設定部21が設定した進行方向及び姿勢で車両1が進行するように、前輪操舵補助装置7や後輪操舵装置8を制御する。
ここで、例えば、車両1がトラクションコントロールシステムや、VSC(Vehicle Stability Control:車両安定性制御システム)、あるいはVDIM(Vehicle Dynamics Integrated Management:アクティブステアリング統合制御システム)を備える場合、前輪操舵補助装置7や後輪操舵装置8に対する操舵制御装置20の制御は、これらのシステムを利用して実現してもよい。
記憶部16には、本実施形態に係る操舵制御の処理手順を含むコンピュータプログラムや制御マップ等が格納されている。記憶部16は、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。なお、上記コンピュータプログラムは、操舵制御装置20が既に備えているコンピュータプログラムと組み合わせることによって、本実施形態に係る操舵制御の処理手順を実現できるものであってもよい。また、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、目標軌跡設定部21、操舵特性設定部22、操舵制御部23及び制御条件判定部24の機能を実現するものであってもよい。
図3は、車両の走行状態を示す説明図である。図4−1、図4−2は、車両の操舵特性を決定するために用いるマップの一例を示す概念図である。図5は、車両の寸法を説明するための模式図である。本実施形態では、車両1の目標とする走行軌跡(目標軌跡)に応じて、車両1の操舵特性を変更する。図3に示すように、道路Rを走行してきた車両1の進行方向前方に回避対象物である駐車車両Jが存在する場合、車両1に搭乗している運転者は、駐車車両Jを回避して車両1の走行を継続しようとする。
駐車車両Jを車両1が回避するためには、車両1を横移動させること、すなわち、いわゆるレーンチェンジによって駐車車両Jを回避する方法と、車両1を旋回させて駐車車両Jを回避する方法とがある。横移動によって駐車車両Jを回避する場合、車両1は、図3の実線で示す走行軌跡を通って駐車車両Jを回避する。この場合、駐車車両Jを回避する前における車両1の進行軌跡(図3中の矢印L0で示す)と、駐車車両Jを回避した後における車両1の進行軌跡(図3中の矢印LR1で示す)とは同じであり、車両1は、同一の道路R内で駐車車両Jを回避する。
旋回によって駐車車両Jを回避する場合、車両1は、図3の一点鎖線で示す走行軌跡を通って駐車車両Jを回避する。この場合、駐車車両Jを回避する前における車両1の進行軌跡L0と、駐車車両Jを回避した後における車両1の進行軌跡(図3中の矢印LR2で示す)とは異なり、車両1は、道路R内から横道R2へ進行方向を変更することで、駐車車両Jを回避する。
図1に示す車両1は、前輪5Fと後輪5Rとをそれぞれ別個に操舵できる。ここで、車両1の操舵特性は、前輪5Fの操舵特性と後輪5Rの操舵特性とによって決定される。そして、前輪5Fの操舵特性は、前輪5Fの操舵角ゲイン(前輪操舵角ゲイン)Gfによって決定され、後輪5Rの操舵特性は、後輪5Rの操舵角ゲイン(後輪操舵角ゲイン)Grによって決定される。
前輪操舵角ゲインGfは、前輪5Fの操舵角(前輪操舵角)δf(s)と、ハンドル9の切れ角(ハンドル切れ角)δ(s)との比(Gf=δf(s)/δ(s))であり、後輪操舵角ゲインGrは、後輪5Rの操舵角(後輪操舵角)δr(s)とハンドル切れ角δ(s)との比(Gr=δr(s)/δ(s))である。
ここで、前輪操舵角ゲインGfは式(1)から、後輪操舵角ゲインGrは式(2)から求めることができる。なお、式(1)、式(2)は、ともに複素領域で記述されているため、時間領域における前輪操舵角ゲインGf及び後輪操舵角ゲインGrを求めるためには、式(1)、式(2)をラプラス逆変換すればよい。
なお、図5に示すように、mは車両1の質量、Lは車両1の前輪車軸Zfと後輪車軸Zrとの間における軸間距離、Lfは車両1の重心Gから前輪車軸Zfまでの水平距離、Lrは車両1の重心Gから後輪車軸Zrまでの水平距離、Kfは車両1の前輪5Fが発生するコーナーリングパワー、Krは車両1の後輪5Rが発生するコーナーリングパワー、Vは車両1の速度(車速)、βは車両1のスリップ角、Iは車両1のヨー方向における慣性モーメント、γは車両1のヨーレート、sはラプラス演算子である。また、ヨーレートγとハンドル切れ角δとの比(γ(s)/δ(s))をヨーレートゲインGγといい、スリップ角βとハンドル切れ角δとの比(β(s)/δ(s))をスリップ角ゲインGβという。
式(1)、式(2)から、車両1がある車速Vで走行している場合、ヨーレートゲインGγ及びスリップ角ゲインGβを決定すれば、前輪操舵角ゲインGf及び後輪操舵角ゲインGrを求めることができる。ここで、車両1が横移動するか旋回するかによって、すなわち車両1の走行状態によって、同じ車速VであってもヨーレートゲインGγ及びスリップ角ゲインGβが異なる。例えば、図4−1に示すヨーレートゲインマップ60、図4−2に示すスリップ角ゲインマップ61においては、ヨーレートゲインGγ、スリップ角ゲインGβは、一点鎖線、実線、点線の順に、旋回に適した値から横移動に適した値に変化する。すなわち、同じ車速Vであっても、旋回に適したヨーレートゲインGγ、スリップ角ゲインGβと、横移動に適したヨーレートゲインGγ、スリップ角ゲインGβとは異なる。
旋回と横移動との両方をある程度のレベルで達成させる場合、例えば、図4−1に示すヨーレートゲインマップ60においては、ヨーレートゲインGγを、実線で示すヨーレートゲインライン60Bで決定し、図4−2に示すスリップ角ゲインマップ61においては、スリップ角ゲインGβを実線で示すスリップ角ゲインライン61Bで決定する。しかし、実線で示すヨーレートゲインライン60B及びスリップ角ゲインライン61Bは、旋回と横移動とをある程度のレベルで両立できるように設定したものであるため、旋回あるいは横移動に特化した場合と比較して、旋回性能あるいは横移動の性能が低下することがある。
ここで、車両1の目標とする走行軌跡から、旋回をより重視して車両1が走行するのか、横移動をより重視して車両1が走行するのかを判定することができる。そこで、本実施形態では、車両1の目標とする走行軌跡に基づいてヨーレートゲインGγ又はスリップ角ゲインGβの少なくとも一方を設定する。そして、設定したヨーレートゲインGγ、あるいはスリップ角ゲインGβを式(1)、式(2)へ与えて、車両1の前輪操舵角ゲインGf及び後輪操舵角ゲインGr、すなわち、前輪5Fの操舵特性及び後輪5Rの操舵特性を設定する。このようにして設定された前輪操舵角ゲインGf及び後輪操舵角ゲインGrで車両1の前輪5F及び後輪5Rを操舵することにより、車両1は、目標とする軌跡上を走行際に必要なヨーレート及びスリップ角で走行するので、運転者に与える違和感は抑制される。これによって、運転者に与える違和感が低減され、かつ、走行性能及びドライバビリティが向上する。
上述したように、車両1の前輪操舵角ゲインGf及び後輪操舵角ゲインGrを設定するにあたっては、ヨーレートゲインGγ及びスリップ角ゲインGβの少なくとも一方を設定すればよい。このように、ヨーレートゲインGγ及びスリップ角ゲインGβの少なくとも一方によって操舵特性を設定できるので、操舵特性の設定が容易になり、操舵制御装置20の演算負荷が低減できる。
図4−1に示すヨーレートゲインマップ60には、車両1の操舵特性に応じて、車速VとヨーレートゲインGγとの関係(ヨーレートゲインライン)が、複数記述されている。本実施形態においては、3本のヨーレートゲインライン60B、60a、60cが記述されているが、ヨーレートゲインマップ60に記述されるヨーレートゲインラインの本数はこれに限定されるものではない。
このヨーレートゲインマップ60において、基本とする車速VとヨーレートゲインGγとの関係は、ヨーレートゲインライン60Bであり、ヨーレートゲインライン60cは、基本とする車速VとヨーレートゲインGγとの関係よりも横移動を重視したものである。また、ヨーレートゲインライン60aは、基本とする車速VとヨーレートゲインGγとの関係よりも旋回を重視したものである。
図4−1に示すヨーレートゲインマップ60と同様に、図4−2に示すスリップ角ゲインマップ61には、車両1の操舵特性に応じて、車速Vとスリップ角ゲインGβとの関係(スリップ角ゲインライン)が、複数記述されている。本実施形態においては、3本のスリップ角ゲインライン61B、61a、61cが記述されているが、スリップ角ゲインマップ61に記述されるスリップ角ゲインラインの本数はこれに限定されるものではない。
スリップ角ゲインマップ61において、基本とする車速Vとスリップ角ゲインGβとの関係は、スリップ角ゲインライン61Bであり、スリップ角ゲインライン61cは、基本とする車速Vとスリップ角ゲインGβとの関係よりも横移動を重視したものである。また、スリップ角ゲインライン61aは、基本とする車速Vとスリップ角ゲインGβとの関係よりも旋回を重視したものである。
このように、ヨーレートゲインラインやスリップ角ゲインラインは、車速に応じて変化するとともに、異なる操舵特性に対してそれぞれ設定される。これによって、車両1の走行状態が異なって操舵特性が異なる場合には、適切なヨーレートゲインラインやスリップ角ゲインラインを選択すればよいので、簡易に車両1の操舵特性を設定できる。なお、ヨーレートゲインラインやスリップ角ゲインラインは、実験や解析等により予め定めておく。また、ヨーレートゲインマップ60やスリップ角ゲインマップ61は、ECU10の記憶部16に格納される。
車両1の目標とする走行軌跡から、現時点以降において、車両1の操舵特性が旋回をより重視するのか、横移動をより重視するのかを判定することができるので、ヨーレートゲインマップ60又はスリップ角ゲインマップ61の少なくとも一方から、車両1の操舵特性に最も適した車速VとヨーレートゲインGγとの関係(ヨーレートゲインライン)又は車速Vとスリップ角ゲインGβとの関係(スリップ角ゲインライン)の少なくとも一方を選択する。なお、車両1の目標とする走行軌跡に対応する適切なヨーレートゲインラインやスリップ角ゲインラインが存在しない場合には、補間等によって適切なヨーレートゲインラインやスリップ角ゲインラインを求めてもよい。
車両1の操舵特性に最も適した車速VとヨーレートゲインGγとの関係や車速Vとスリップ角ゲインGβとの関係が選択されたら、車速Vを与えて、ヨーレートゲインGγやスリップ角ゲインGβを求める。このようにして求めたヨーレートゲインGγやスリップ角ゲインGβを、式(1)及び式(2)へ与えて前輪操舵角ゲインGf及び後輪操舵角ゲインGrを求め、この前輪操舵角ゲインGf及び後輪操舵角ゲインGrで車両1の前輪5F及び後輪5Rを操舵する。
ここで、車両1の目標とする走行軌跡を設定する手法について説明する。車両1の目標とする走行軌跡は、上述したドライバ動作検出手段によって検出される、車両1の運転者の顔向き又は視線方向のうち少なくとも一方と、車両1の進行方向前方に存在する回避対象物(本実施形態では駐車車両J)に関する情報とに基づいて設定される。
車両1の運転者の顔向きは、図1に示す顔向き検出センサ(カメラ)41によって検出され、運転者の視線は、図1に示す視線検出センサ(カメラ)42によって検出される。また、回避対象物である駐車車両Jに関する情報は、図1に示す対象物検出センサ44によって検出される。駐車車両Jに関する情報は、駐車車両Jの存在、車両1から駐車車両Jまでの距離等である。車両1の運転者の顔向き又は視線方向のうち少なくとも一方から、運転者が車両1を進行させたい位置(車両目標進行位置)を知ることができる。例えば、車両1の横移動によって駐車車両Jを回避する場合、車両目標進行位置をP1_aとし、車両1の旋回によって駐車車両Jを回避する場合、車両目標進行位置をP2_aとする。
また、車両1の現時点における位置(STA0)と、車両1から駐車車両Jまでの距離と、車両目標進行位置とから、車両1の目標とする走行軌跡を設定する。例えば、車両1の横移動によって駐車車両Jを回避する場合は車両目標進行位置がP1_aなので、車両1の目標とする走行軌跡はLP1_aとなる(図3の実線)。
また、車両1の旋回によって駐車車両Jを回避する場合、車両目標進行位置がP2_aなので、車両1の目標とする走行軌跡はLP2_aとなる(図3の一点鎖線)。車両1の旋回によって駐車車両Jを回避する場合、ナビゲーション装置47から、横道R2が存在することを知ることができるので、横道R2が存在する場合には、現時点における車両1の位置と横道R2の位置との情報から、車両1の旋回によって駐車車両Jを回避する場合における、車両1の目標とする走行軌跡を設定してもよい。
車両1の目標とする走行軌跡が設定されると、その走行軌跡から車両1の操舵特性を設定することができる。例えば、車両1の目標とする走行軌跡の半径が大きくなるにしたがって、車両の操舵特性を旋回重視から横移動重視に変更する。図3に示す例では、LP1_aの半径>LP2_aの半径なので、車両1の目標とする走行軌跡がLP1_aである場合、車両1の操舵特性は旋回よりも横移動を重視し、車両1の目標とする走行軌跡がLP2_aである場合には、する車両1の操舵特性は横移動よりも旋回を重視する。
車両1の操舵特性が設定されたら、図4−1に示すヨーレートゲインマップ60又は図4−2に示すスリップ角ゲインマップ61の少なくとも一方から、車両1の目標とする走行軌跡に基づいて設定された車両1の操舵特性に最も適したヨーレートゲインライン、あるいはスリップ角ゲインラインを選択する。本実施形態においては、車両1の操舵特性が横移動を重視する場合、ヨーレートゲインマップ60からはヨーレートゲインライン60cが選択され、スリップ角ゲインマップ61からはスリップ角ゲインライン61cが選択される。また、車両1の操舵特性が旋回を重視する場合、ヨーレートゲインマップ60からはヨーレートゲインライン60aが選択され、スリップ角ゲインマップ61からはスリップ角ゲインライン61aが選択される。
ヨーレートゲインラインあるいはスリップ角ゲインラインが選択されたら、現時点における車速をヨーレートゲインマップ60あるいはスリップ角ゲインマップ61に与え、設定した車両1の操舵特性を達成可能なヨーレートゲインGγあるいはGβを求める。ヨーレートゲインマップ60に車速V1を与えると、旋回に適した操舵特性を示すヨーレートゲインライン60aからはヨーレートゲインGγa1が得られ、横移動に適した操舵特性を示すヨーレートゲインライン60cからはヨーレートゲインGγc1が得られる。また、スリップ角ゲインマップ61に車速V1を与えると、旋回に適した操舵特性を示すスリップ角ゲインライン61aからはスリップ角ゲインGβa1が得られ、横移動に適した操舵特性を示すスリップ角ゲインライン61cからはスリップ角ゲインGβc1が得られる。
このようにして求めたヨーレートゲインGγやスリップ角ゲインGβを、式(1)及び式(2)へ与えて、前輪操舵角ゲインGf及び後輪操舵角ゲインGrを求め、この前輪操舵角ゲインGf及び後輪操舵角ゲインGrになるように、車両1の前輪5F及び後輪5Rを操舵する。
横移動によって車両1が駐車車両Jを回避した場合(図3の実線)、車両目標進行位置P1_bに向かう走行軌跡LP_1bを通って、駐車車両Jを回避する前の走行軌跡L0の延長上における走行軌跡LR1に復帰する。この場合には、車両1が前記走行軌跡LR1に復帰するために適した操舵特性に設定することが好ましい。例えば、車両1が走行軌跡LR1に復帰するときには、駐車車両Jを回避するときよりも、より旋回を重視した操舵特性とする。このようにすれば、駐車車両Jを回避する前の走行軌跡L0の延長上における走行軌跡LR1に復帰する際には、急な横移動が緩和されるので、運転者に与える違和感を抑制できる。
回避前の走行軌跡L0の延長線上における走行軌跡LR1に車両1が復帰する際には、車両1の運転者の顔向きや視線方向が、駐車車両Jを回避する前とは車両1の前後軸に対して反対方向になる。また、車両1の進行方向前方には回避対象物が存在しない。これらの情報から、回避前の走行軌跡L0の延長線上における走行軌跡LR1に車両1が復帰すると判定できる。車両1が回避前の走行軌跡の延長上に復帰する際には、復帰用に予め設定したヨーレートゲインラインやスリップ角ゲインラインを用いてヨーレートゲインGγやスリップ角ゲインGβを求めることができる。なお、旋回によって回避対象物を回避した場合も、必要に応じて回避後における目標軌跡を設定し、これに基づいて操舵特性を設定してもよい。
車両1が、回避前の走行軌跡L0の延長線上における走行軌跡LR1に復帰して、所定の距離を走行したら、ヨーレートゲインラインを基準のヨーレートゲインライン60Bに設定し、スリップ角ゲインラインを基準のスリップ角ゲインライン61Bに設定する。また、旋回によって車両1が駐車車両Jを回避した場合(図3の一点鎖線)、旋回が終了して車両1が直進状態で所定の距離を走行したら、ヨーレートゲインラインを基準のヨーレートゲインライン60Bに設定し、スリップ角ゲインラインを基準のスリップ角ゲインライン61Bに設定する。
図6は、本実施形態に係る操舵制御の手順を示すフローチャートである。本実施形態に係る操舵制御を実行するにあたって、ステップS101において、操舵制御装置20の目標軌跡設定部21は、対象物検出センサ44から、車両1の進行方向前方に回避対象物(例えば駐車車両)が存在するか否かを判定する。ステップS101でNoと判定された場合、すなわち、目標軌跡設定部21が、回避対象物は車両1の進行方向前方に存在しないと判定した場合、STARTに戻り、操舵制御装置20は、回避対象物の監視を継続する。
ステップS101でYesと判定された場合、すなわち、目標軌跡設定部21が、回避対象物は車両1の進行方向前方に存在すると判定した場合、ステップS102において、目標軌跡設定部21は、車両1の目標とする走行軌跡(目標軌跡)を設定する。目標軌跡の設定は、上述した通りであり、車両1の運転者の顔向き又は視線方向のうち少なくとも一方と、車両1の進行方向前方に存在する回避対象物(本実施形態では駐車車両J)に関する情報とに基づいて設定される。
次に、ステップS103において、操舵制御装置20の操舵特性設定部22は、ステップS102で設定された車両1の目標軌跡に基づいて、車両1の操舵特性を設定する。操舵特性の設定は上述した通りである。車両1の操舵特性が設定されたら、操舵制御装置20の操舵制御部23は、ステップS103で設定された操舵特性になるように、図1に示す車両1の前輪操舵補助装置7及び後輪操舵装置8を制御する。これによって、車両1は、回避対象物を回避する。
ステップS104において、操舵制御装置20の制御条件判定部24は、車両1が回避対象物の回避を終了したか否かを判定する。ステップS104でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部24が、車両1は回避対象物の回避を終了していないと判定した場合、ステップS105において、車両1は回避動作を継続する。回避動作を継続する際において、操舵制御部23は、ステップS103で設定された操舵特性になるように、図1に示す車両1の前輪操舵補助装置7及び後輪操舵装置8を制御する。
ステップS104においてYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部24が、車両1は回避対象物の回避を終了したと判定した場合には、ステップS106に進む。ステップS106において、操舵特性設定部22は、車両1が回避対象物を回避した後に、所定の走行軌跡(例えば、回避前の走行軌跡L0の延長線上における走行軌跡LR1、図3参照)に復帰する際の操舵特性を設定する。ステップS106は、特に横移動によって回避対象物を回避した場合に実行することが好ましい。
ステップS107において、制御条件判定部24は、車両1が直進走行に移行して所定の距離を走行したか否かを判定する。ステップS107でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部24が、車両1が直進走行に移行して所定の距離を走行していないと判定した場合、車両1は、まだ所定の走行軌跡に復帰していないと判定できる。この場合、ステップS108において、操舵特性設定部22は、ステップS106で設定した操舵特性を維持する。
ステップS107でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部24が、車両1が直進走行に移行して所定の距離を走行したと判定した場合、車両1は、所定の走行軌跡に復帰したと判定できる。この場合、ステップS109において、操舵特性設定部22は、ステップS106で設定した操舵特性を、基準の操舵特性に戻す。すなわち、図4−1に示すヨーレートゲインマップ60においては基準のヨーレートゲインライン60Bを用いてヨーレートゲインGγを設定し、図4−2に示すスリップ角ゲインマップ61においては、基準のスリップ角ゲインライン61Bを用いてスリップ角ゲインGβを設定する。そして、これによって設定されたヨーレートゲインGγとスリップ角ゲインGβとを用いて、車両1の前輪操舵角ゲインGf及び後輪操舵角ゲインGrを設定する。なお、ステップS109においては、操舵特性を基準の操舵特性に戻さずに、ステップS106で設定した操舵特性で車両1を走行させてもよい。この場合、操舵があった場合に車両1の目標とする走行軌跡を設定し、これに基づいて操舵特性を変更する。
以上、本実施形態では、車両の目標とする走行軌跡を設定するとともに、設定した目標軌跡に応じて、車両の操舵特性を切り替える。これによって、運転者による操舵を補助するにあたっては、車両の走行状態に応じた適切な操舵特性を設定することができるので、運転者に与える違和感を低減することができる。また、ヨーレートゲイン及びスリップ角ゲインに基づいて前輪操舵角ゲイン及び後輪操舵角ゲインを設定することで操舵特性を変更するので、簡易に車両の操舵特性を変更できる。