JP5118358B2 - 有機性排水の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機性排水を生物処理する方法に関し、さらに詳しくは該有機性排水の生物処理に汚泥の可溶化処理を組み込み、発生する余剰汚泥の発生量を低減させることが可能な有機性排水の処理方法に関する。
従来、活性汚泥法などの生物処理で発生する余剰汚泥は、脱水、乾燥、焼却などの汚泥処理によって処分されているが、その処分に多大な経費と設備費がかかる点が最大の問題となっている。従来の活性汚泥法の余剰汚泥の発生量は、一般に、除去されるBOD1kg当たり、0.6〜0.8kg・ss(汚泥)であり、非常に多量の余剰汚泥が発生することが良く知られている。しかも、余剰汚泥は質的にも難脱水性であるため、ますますその処分が困難になっている。
余剰汚泥の発生量を低減させる方法として、余剰汚泥を可溶化して生物処理槽(曝気槽)に戻して処理する方法が数多く提案されている。例えば、余剰汚泥をアルカリで処理することで可溶化して生物処理槽に戻す方法(特許文献1参照)、余剰汚泥の超音波、ホモジナイザー、ミキサー、又は急激な圧力変動による破壊や、オゾンガスによる酸化分解をすることにより可溶化して生物処理槽に戻す方法(特許文献2参照)が提案されている。
一方、余剰汚泥の発生を減少させる方法として、有機性排水処理工程に余剰汚泥の一部又は全部を可溶化する可溶化処理手段を設け、その可溶化をアルカリ剤による処理にホモジナイザー、ミキサー等による処理を組み合わせて行う方法も知られている(特許文献3参照)。
これらの処理における、余剰汚泥を可溶化して生物処理槽で処理する方法では、汚泥を再基質化する際、より短時間・低いエネルギーで高い可溶化率が得られた方が有利であり、汚泥をより効率的に可溶化し得る方法が求められていた。
特公昭49−11813号公報 特公昭57−19719号公報 特開2002−113487号公報
本発明は、有機性排水の生物処理に伴って発生する余剰汚泥の発生量を顕著に減少させることができ、且つ有機性排水の処理液性状への影響が少ない新規な有機性排水の処理方法を提供することを目的とする。
本発明者は、斯かる実情に鑑み鋭意研究を行った結果、特定量の硫酸、炭酸、炭酸水素又はそれらの塩の存在下に、固液分離された汚泥の可溶化処理を行うことで、汚泥の可溶化率が向上し、余剰汚泥の発生量を顕著に減少させることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、生物処理槽において有機性排水を生物処理した後、該生物処理混合物を処理水と汚泥に固液分離し、該汚泥の一部又は全部に対して、その中の有機物を可溶化する可溶化処理を施した後、前記生物処理槽に返送する有機性排水の処理方法において、汚泥が循環する系内に、硫酸、炭酸、炭酸水素及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上を、硫酸イオン、炭酸イオン又は炭酸水素イオン基準で、原水量に対して1mmol/L〜30mmol/Lの範囲になるように添加することを特徴とする有機性排水の処理方法を提供するものである。
本発明の有機性排水の処理方法によれば、有機性排水の生物処理に伴って発生する余剰汚泥を効果的に可溶化し得ることで、より少ない投入エネルギーにより余剰汚泥発生量を顕著に減少させることができる。
本発明の有機性排水の処理方法は、余剰汚泥を発生する各種の有機性排水の生物処理に適用し得て、この生物処理は、好気性生物処理でも良いし、嫌気性生物処理でも良い。
好気性生物処理としては、活性汚泥法、生物膜法などが挙げられる。活性汚泥法は、有機性排水を活性汚泥の存在下に好気性生物処理する処理法であり、有機性排水を曝気槽で活性汚泥と混合して曝気し、混合液を濃縮装置で濃縮し、濃縮汚泥の一部を曝気槽に返送する標準活性汚泥法が一般的であるが、これを変形した処理法であっても良い。また、生物膜法は、担体に生物膜を形成して好気性下に有機性排水と接触させる処理法である。
嫌気性生物処理としては、所謂嫌気性消化法、高負荷嫌気性処理法などが挙げられる。
上記各種の有機性排水の生物処理の中でも、有機性排水の処理に多用されている活性汚泥法に好適に適用することができる。以下、活性汚泥法を例にとり、添付図面に関連して本発明を詳しく説明する。
従来の標準活性汚泥法の処理系の一般的なフローは、図1に示すとおりである。図1の処理系のフローにおいては、ライン1から有機性排水が曝気槽2に供給され、曝気槽2において曝気されて活性汚泥により好気性生物処理を受け、次いでライン3を経て汚泥沈降槽4に送られる。そして、固液分離後、汚泥沈降槽4の上澄み液が処理水としてライン5から排出、放流され、一方、汚泥沈降槽4の沈殿汚泥が返送汚泥としてライン6を経て曝気槽2に戻される。この返送汚泥の一部が分取されて余剰汚泥としてライン7を経て、必要に応じて汚泥濃縮工程8に供給されて固形物濃度が一層高められた後、ライン9を経て汚泥脱水工程10に導かれて脱水され、得られた脱水余剰汚泥11が系外に排出される。
上記のような従来の標準活性汚泥法に可溶化処理を施し、しかる後、前記生物処理槽に返送する処理系のフローを図示すれば、図2のとおりである。この図2に関連して本発明を説明する。
図2に示す本発明の実施態様例の処理系のフローでは、ライン1から有機性排水が曝気槽2に供給され、曝気槽2において曝気されて活性汚泥により好気性生物処理を受け、次いでライン3を経て汚泥沈降槽4に送られる。そして、固液分離後、汚泥沈降槽4の上澄み液が処理水としてライン5から排出、放流され、一方、汚泥沈降槽4の沈殿汚泥が返送汚泥としてライン6を経て曝気槽2に戻される。そして、前記返送汚泥の一部が分取されて余剰汚泥としてライン7を経て、必要に応じて汚泥濃縮工程8に供給されて固形物濃度を0.5〜5重量%程度に濃縮された後、この余剰汚泥の一部がライン9を経て汚泥脱水工程10に導かれて脱水され、得られた脱水余剰汚泥11が系外に排出される。ここまでのフローは、上記従来の標準活性汚泥法の処理系のフローと同様である。
返送汚泥の一部または濃縮槽で濃縮された汚泥の一部または全部は、ライン12を経て汚泥可溶化槽13に導かれて可溶化処理され、該可溶化処理物がライン14を経て曝気槽2に戻され、活性汚泥によって生物処理される。ただし、返送汚泥から分取された余剰汚泥の固形物濃度が高い場合は、汚泥濃縮工程8を設けて余剰汚泥の濃縮を行う必要はない。
また、この処理系の処理条件を、可溶化処理しない条件での余剰汚泥発生量の約2〜3.5倍の沈殿汚泥を可溶化処理することによって、系外に排出される余剰汚泥をなくすこともできる。
本発明において、曝気槽2、汚泥沈降槽4としては従来から用いられているものを適宜用いることができる。また、汚泥濃縮工程8の濃縮手段としても、従来から用いられている濃縮手段、例えば重力沈降分離機、浮上分離機、遠心分離機、膜分離機、スクリュー脱水機等を定義用いることができる。また、汚泥脱水工程10の脱水手段としても、従来から用いられている脱水手段、例えば遠心分離機、ベルトフィルター脱水機、スクリュープレス脱水機等を適宜用いることができる。
本発明において、有機物の可溶化を促進するために添加する硫酸、炭酸、炭酸水素又はそれらの塩の添加位置としては、汚泥が循環する系内であれば特に限定されない。ここで、汚泥が循環する系内とは、生物処理槽(曝気槽)及び固液分離槽を含む、汚泥が循環する系内であることを意味する。例えば、図2に示すライン1、曝気槽2、ライン3、ライン6、ライン12、汚泥可溶化槽13、ライン14などが挙げられ、汚泥濃縮工程から汚泥可溶化槽に汚泥を送液する場合は、ライン7、汚泥濃縮工程8などが挙げられる。これらのうち、可溶化率向上の観点から、ライン1、曝気槽2、ライン3、ライン12、ライン7、汚泥濃縮工程8の位置が好ましく、特にライン1、ライン12、汚泥濃縮工程8が好ましい。
硫酸、炭酸、炭酸水素又はそれらの塩としては、その形態は特に限定されないが、添加した際に溶解する形態のものを用いるのが好ましい。塩としては、例えばナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩などが挙げられる。これらのうち、好ましい形態としてはアルカリ金属塩であり、特にナトリウム塩である硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが好ましい。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硫酸、炭酸、炭酸水素又はそれらの塩の添加量は、可溶化率向上の観点から、硫酸イオン、炭酸イオン又は炭酸水素イオン基準で、原水量に対して1mmol/L〜30mmol/Lの範囲が好ましく、特に1.5mmol/L〜25mmolが好ましい。硫酸、炭酸、炭酸水素又はそれらの塩を2種以上用いる場合は、全量として前記添加量になるように添加すればよい。また、原水に硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩等が含有されている場合は、その量を勘案して、全量として前記添加量の範囲になるように、調節して添加すればよい。
汚泥可溶化槽13における可溶化処理方法は限定されないが、特に、アルカリ剤を用いた可溶化、物理的な破砕による可溶化、アルカリ剤と物理的な破砕を組み合わせた可溶化処理方法が好適である。
アルカリ剤としては、特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、特に水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ剤の添加量は、特に限定されないが、可溶化処理する余剰汚泥に対して0.005〜0.1Nであればよく、好ましくは0.01〜0.05Nである。
物理的な破砕としては、ミキサー、ミル、超音波による破砕が挙げられ、特にミキサー、ミルが好ましい。
可溶化処理の時間としては、特に限定されないが、1分〜300分が好ましく、特に3分〜250分、更に10分〜200分が好ましい。
可溶化処理後の汚泥可溶化液(以下、「可溶化液」という)は、必要に応じて中和処理又は酸化剤による脱色処理を行ってもよい。脱色処理を行うことによって、余剰汚泥の減容化を行う際に発生する可溶化処理物の着色、それに起因する処理水の色相への悪影響を削減することができる。この脱色処理と中和処理とは併用できるが、その場合、中和処理を行う前に脱色処理を行うことが好ましい。中和処理には、硫酸等の鉱酸、使用済みの廃酸などを使用できる。酸化剤としては、酸化力が強く、そのものが分解後、活性汚泥にとって無害なものに変化する過酸化水素、過酸化ナトリウム、過炭酸ナトリウム等が好ましく、過酸化水素が特に好ましい。
同じ可溶化処理量の場合、可溶化率を高くすることで余剰汚泥発生量の削減率を高くすることが可能となる。
本発明の有機性排水の処理方法は、活性汚泥において処理する原水中のカルシウムイオン濃度が、10ppm〜200ppmの範囲、好ましくは20ppm〜100ppmの範囲の原水に対して、特に有用である。
以下に、実施例を挙げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
工場排水(COD=80〜120mg/L(試験期間平均100mg/L)、Ca濃度30ppm〜50ppm(試験期間平均40ppm))を曝気時間12時間、活性汚泥MLSS=3000mg/Lの40L曝気槽(COD容積負荷0.20(kgCOD/m3・day))に供給した後、20L沈降槽において活性汚泥を沈降分離し、固形物濃度0.5〜1重量%の沈殿汚泥を得た。原水の硫酸イオン濃度は0.3mmol/L、炭酸水素イオン濃度は0.1mmol/L、炭酸イオン濃度は0.1mmol/Lであった。また、原水の三価金属量は、1ppm以下であった。
この排水処理において、硫酸ナトリウムを沈殿槽の入り口に原水量に対して、硫酸イオン濃度2mmol/Lとなるように添加して運転を行った。
上記工場排水処理量において、工場排水処理量を0.08m3/dayとし、沈殿汚泥の1.2〜2.4L/day(dry-base 12.0g/day)を抜き出して、残りの沈殿汚泥は曝気槽に返送した。次に、この抜き出した沈殿汚泥を、回分式タイプの汚泥可溶化槽に導き、インラインミキサー(特殊機化製パイプラインホモミクサーPL-SL)にて、回転数8,000rpmに設定して、苛性ソーダを0.025Nになるように添加して、10分間処理して、汚泥を可溶化した。その可溶化液を前記曝気槽に一定速度で添加して、好気的な生物処理を行った。30日間、上記条件に従って運転を続けた結果、可溶化率の平均は38%であった。さらに、その間に活性汚泥槽のMLSSを一定になるように抜き出した全余剰汚泥量は、22g(乾燥重量)であった。
実施例2
実施例1のうち、硫酸ナトリウムを原水量に対して硫酸イオン濃度20mmol/Lとなるように添加して運転を行う以外は、同様に運転を行った。30日間、上記条件に従って運転を続けた結果、可溶化率の平均は44%であった。さらにその間に活性汚泥槽のMLSSを一定になるように抜き出した全余剰汚泥量は、10g(乾燥重量)であった。
比較例1
実施例1のうち、硫酸ナトリウムを添加せずに運転を行う以外は、同様に運転を行った。30日間、上記条件に従って運転を続けた結果、可溶化率の平均は20%であった。さらにその間に活性汚泥槽のMLSSを一定になるように抜き出した全余剰汚泥量は、68g(乾燥重量)であった。
参考例1
実施例1のうち、硫酸ナトリウムの添加位置を濃縮槽の入り口に変更して運転を行う以外は、同様に運転を行った。30日間、上記条件に従って運転を続けた結果、可溶化率の平均は37%であった。さらにその間に活性汚泥槽のMLSSを一定になるように抜き出した全余剰汚泥量は、30g(乾燥重量)であった。
参考例2
参考例1のうち、硫酸ナトリウムに替えて、炭酸水素ナトリウムを添加して運転を行う以外は、同様に運転を行った。30日間、上記条件に従って運転を続けた結果、可溶化率の平均は33%であった。さらにその間に活性汚泥槽のMLSSを一定になるように抜き出した全余剰汚泥量は、35g(乾燥重量)であった。
参考例3
参考例1のうち、硫酸ナトリウムに替えて、炭酸ナトリウムを添加して運転を行う以外は、同様に運転を行った。30日間、上記条件に従って運転を続けた結果、可溶化率の平均は35%であった。さらにその間に活性汚泥槽のMLSSを一定になるように抜き出した全余剰汚泥量は、30g(乾燥重量)であった。
実施例6
実施例2のうち、可溶化処理の操作を、インラインミキサーに替えて、インラインミル(IKA製ラボパイロット2000/4)にて、回転数6,000rpmに設定して10分間処理する以外は、同様に運転を行った。30日間、上記条件に従って運転を続けた結果、可溶化率の平均は42%であった。さらにその間に活性汚泥槽のMLSSを一定になるように抜き出した全余剰汚泥量は、10g(乾燥重量)であった。
実施例7
実施例2のうち、可溶化処理の操作を、インラインミキサーに替えて、超音波(超音波発生器、出力100W)にて10分間処理する以外は、同様に運転を行った。30日間、上記条件に従って運転を続けた結果、可溶化率の平均は48%であった。さらにその間に活性汚泥槽のMLSSを一定になるように抜き出した全余剰汚泥量は、4g(乾燥重量)であった。
参考例4
実施例2のうち、可溶化処理の操作を、インラインミキサーに替えて、超音波(超音波発生器、出力100W)にて苛性ソーダを添加しないで10分間処理する以外は、同様に運転を行った。30日間、上記条件に従って運転を続けた結果、可溶化率の平均は38%であった。さらにその間に活性汚泥槽のMLSSを一定になるように抜き出した全余剰汚泥量は、35g(乾燥重量)であった。
比較例2
参考例4のうち、硫酸ナトリウムを添加せずに運転を行う以外は、同様に運転を行った。30日間、上記条件に従って運転を続けた結果、可溶化率の平均は14%であった。さらにその間に活性汚泥槽のMLSSを一定になるように抜き出した全余剰汚泥量は、90g(乾燥重量)であった。
以上の実施例及び比較例をまとめたものを次表に示す。
Figure 0005118358
Figure 0005118358
Figure 0005118358
Figure 0005118358
従来の標準活性汚泥法の処理系の一般的なフローシートである。 本発明の実施形態の一例の処理系のフローシートである。

Claims (3)

  1. 生物処理槽において有機性排水を生物処理した後、該生物処理混合物を処理水と汚泥に固液分離し、該汚泥の一部又は全部に対して、その中の有機物を可溶化する可溶化処理を施した後、前記生物処理槽に返送する有機性排水の処理方法において、
    汚泥中の有機物を可溶化する可溶化処理が、アルカリ剤と物理的な破砕を組み合わせた可溶化処理であり、
    固液分離のための汚泥沈降槽入口に、硫酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩及び炭酸水素アルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上を、硫酸イオン、炭酸イオン又は炭酸水素イオン基準で、原水量に対して1mmol/L〜30mmol/Lの範囲になるように添加することを特徴とする有機性排水の処理方法。
  2. 硫酸、炭酸又は炭酸水素のアルカリ金属塩がナトリウム塩である請求項1記載の処理方法。
  3. 有機性排水がカルシウムイオンを10ppm〜200ppm含有するものである請求項1又は2記載の有機性排水の処理方法。
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