以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のスルホニウム塩は、上記式(1)で表される化合物である。式(1)において、R1は水素原子又は直鎖もしくは分岐の炭素数1〜3の有機基である。R2〜R4はそれぞれ独立して、水素原子、又は、直鎖、分岐、脂環式、芳香族の炭素数1〜12の有機基又はアルコキシ基を表す。特に好ましい有機基として、メチル基、イソプロピル基、t−ブチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。D1〜D3は互いに独立で、少なくとも1個は上記式(2)で表される基であり、残りは水素原子、上記式(3)で表される基又は上記式(4)で表される基である。また、a、b、c、d、e及びfは、それぞれa+b≦5、c+d≦5、e+f≦5、a+c+e≧1を満たす0以上の整数である。式(2)で表される基は、活性放射線の露光により酸を発生する光酸発生剤としての機能を有する構造と、この酸発生剤から発生した酸で解離・分解する基(酸解離基)とを有するため、式(1)で表されるスルホニウム塩は、有機溶媒に溶解させることにより化学増幅型の感光性組成物とすることができる。式(1)で表されるスルホニウム塩は、式(3)で表される基や式(4)で表される基が導入されていなくてもよいが、式(3)で表される基や式(4)で表される基を導入することにより、溶解度を調整することができる。式(3)で表される基や式(4)で表される基を導入する割合は、式(1)で表されるスルホニウム塩に対してそれぞれ1〜3当量程度が好ましい。
そして、上記式(2)で表される基において、R5は直鎖もしくは分岐の炭素数2〜9の2価の有機基で、R6〜R9はそれぞれ独立に水素原子又は直鎖もしくは分岐の炭素数1〜3の有機基である。また、R10及びR11はそれぞれ独立に有機基である。この有機基の例として、直鎖、分岐もしくは脂環式の構造のアルキル基が挙げられる。また有機基の例として、炭素環式アリール基や複素環式アリール基が挙げられる。好ましい有機基は炭素環式アリール基であり、特に好ましい有機基はフェニル基、メチルフェニル基及びt−ブチルフェニル基である。上記の炭素環式アリール基や複素環式アリール基は、炭素数1〜30の置換基を有するものであってもよい。炭素数1〜30の置換基としては、炭素数1〜30の有機基又はアルコキシ基が好ましい。置換基である炭素数1〜30の有機基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、t−アミル基、デカニル基、ドデカニル基及びヘキサデカニル基等のアルキル基や、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデカニル基、シクロヘキサデカニル基及びアダマンチル基等の脂環式アルキル基や、フェニル基及びナフチル基等のアリール基が挙げられる。また、置換基である炭素数1〜30のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、t−アミロキシ基、n−ヘキシロキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ドデカンオキシ基及び1−アダマンチルオキシ基等が挙げられる。
また、R10及びR11は、互いに結合して環を形成してもよく、この場合には、上記炭素骨格を含む2価の有機基:−R10−R11−となる。このような2価の有機基としては、R10及びR11が飽和炭素骨格を有してつながった炭素数3〜9の脂環式アルキル基が挙げられる。その脂環式アルキル基のうち好ましいものの例として、テトラメチレン基及びペンタメチレン基等のポリメチレン基等が挙げられる。一般に、2価の有機基−R10−R11−がSとともに形成する環は、好ましくは4員環〜8員環、より好ましくは5員環〜6員環を構成するとよい。
また、上記式(3)において、R12は、直鎖、環状もしくは分岐の炭素数1〜20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6〜30の芳香族基を表す。それらのアルキル基及び芳香族基のうち好ましいものは、脂環式アルキル基及び炭素環式アリール基であり、特に好ましいものとして、シクロヘキシル基、トリシクロデカニル基、アダマンチル基、フェニル基、ナフチル基及びジフェニルメチル基が挙げられる。上記の炭素環式アリール基は、炭素数1〜24の置換基を有するものであってもよい。炭素数1〜24の置換基としては、炭素数1〜24の有機基又はアルコキシ基が好ましい。置換基である炭素数1〜24の有機基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、t−アミル基、デカニル基、ドデカニル基及びヘキサデカニル基等のアルキル基や、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデカニル基、シクロヘキサデカニル基及びアダマンチル基等の脂環式アルキル基や、フェニル基及びナフチル基等のアリール基が挙げられる。また、置換基である炭素数1〜24のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、t−アミロキシ基、n−ヘキシロキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ドデカンオキシ基及び1−アダマンチルオキシ基等が挙げられる。
上記式(2)において、X−で表される陰イオンは特に限定されず、従来から光酸発生剤に用いられている陰イオンとすることができる。陰イオンの例として、上記式(5)で表される陰イオン、上記式(6)で表される陰イオン及び上記式(7)で表される陰イオン(シクロ1,3−パーフルオロプロパンジスルホンイミドイオン)が挙げられる。また、その他のX−で表される陰イオンとしては、Cl−、Br−及びI−等のハロゲン化物イオンや、BF4 −(テトラフルオロボレートイオン)、AsF6 −(ヘキサフルオロアルセネートイオン)、SbF6 −(ヘキサフルオロアンチモネートイオン)及びPF6 −(ヘキサフルオロホスフェートイオン)等のフッ素化物イオン等の無機陰イオンが挙げられる。
上記式(5)において、k、m及びnはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。mが0の場合には、kは1〜8の整数、nは2k+1であり、式(5)はパーフルオロアルキルスルホネートイオンである。好適なパーフルオロアルキルスルホネートイオンの例として、CF3SO3 −(トリフルオロメタンスルホネートイオン)、C4F9SO3 −(ノナフルオロブタンスルホネートイオン)及びC8F17SO3 −(ヘプタデカフルオロオクタンスルホネートイオン)等が挙げられる。
また、式(5)において、nが0の場合には、kは1〜15の整数、mは1以上の整数であり、式(5)はアルキルスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン又はアルキルベンゼンスルホネートイオンである。アルキルスルホネートイオンの場合には、mは2k+1で示される。好適なアルキルスルホネートイオンの例として、CH3SO3 −(メタンスルホネートイオン)、C2H5SO3 −(エタンスルホネートイオン)、C9H19SO3 −(1−ノナンスルホネートイオン)等や、橋架け環式アルキルスルホネートイオン、例えば、10−カンファースルホネートイオン等が挙げられる。また、好適なアルキルベンゼンスルホネートイオンの例として、4−メチルベンゼンスルホネートイオンや2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホネートイオン等が挙げられる。
さらに、式(5)において、m及びnがそれぞれ独立に1以上の整数の場合には、kは1〜10の整数であり、式(5)はフッ素置換ベンゼンスルホネートイオン、フッ素置換アルキルベンゼンスルホネートイオン又はフッ素置換アルキルスルホネートイオンである。好適なフッ素置換ベンゼンスルホネートイオンの例として、2−フルオロベンゼンスルホネートイオン、4−フルオロベンゼンスルホネートイオン、2,4−ジフルオロベンゼンスルホネートイオン及びペンタフルオロベンゼンスルホネートイオン等を挙げることができる。また、好適なフッ素置換アルキルベンゼンスルホネートイオンの例として、2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネートイオン、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネートイオン、2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホネートイオン及び3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホネートイオン等が挙げられる。さらに、好適なフッ素置換アルキルスルホネートの例として、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネートイオンが挙げられる。
一方、上記式(6)で表される陰イオンは、ビス(パーフルオロアルキルスルホン)イミドイオンであり、式中、pは1〜8の整数である。好適なビス(パーフルオロアルキルスルホン)イミドイオンの例として、ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドイオン及びビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミドイオン等が挙げられる。
以上説明した本発明のスルホニウム塩は、活性放射線(例えば、ディープUV、電子線、X線、EUV)の照射により効率よく酸を発生する光酸発生剤としての機能を有する構造と、この酸発生剤から発生した酸で解離・分解する基とを有するため、上記式(1)で表されるスルホニウム塩は、有機溶媒に溶解させることにより容易に化学増幅型の感光性組成物とすることができる。したがって、酸発生剤とフォトレジストの主成分である酸解離基を有するポリマーとの相溶性が悪いという問題を生じずに、良好な形状のパターンを得ることができるという効果を奏する。
本発明のスルホニウム塩の製造方法は特に限定されないが、例えば、下記式(A)で表されるフェノール化合物と下記式(12)で表される化合物とを反応させることにより製造することができる。以下に製造方法の一例を示す。
まず、下記反応式に示すように、メタンスルホン酸(CH3SO3H)中で、五酸化ニリン(P2O5)を触媒として、下記式(8)で表される化合物にジアルキルスルホキシドを反応させ、下記式(9)で表される化合物(メタンスルホン酸塩)を得る。なお、ジアルキルスルホキシドは、ジアルキルスルフィドを過酸化水素で酸化することにより容易に得ることができる。また、触媒である五酸化ニリンは、式(8)で表される化合物1モルに対して、0.1〜3.0モル、好ましくは0.5〜1.5モル用いる。メタンスルホン酸は、式(8)で表される化合物1モルに対して、1〜10モル、好ましくは4〜6モル用いる。反応温度は、通常0〜50℃、好ましくは10〜30℃であり、反応時間は、通常1〜15時間、好ましくは3〜8時間である。反応終了後、水を添加することにより反応を停止させる。
次に、下記反応式に示すように、式(9)で表される化合物のCH3SO3 −をX−で塩交換する。なお、下記反応式中、M+は一価の金属イオンを表す。具体的には、式(9)で表される化合物の水溶液に、X−、例えば、上記式(5)、式(6)又は式(7)を含む各種酸H+X−あるいは塩M+X−を、式(8)で表される化合物1モルに対して1〜2モル、好ましくは1.05〜1.2モルを加える。反応溶媒としては、塩素系溶媒、例えばジクロロメタンやクロロホルム等を用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常10〜50℃、好ましくは20〜30℃である。反応終了後、水層を分離し、さらに有機層を水で洗浄する。洗浄終了後、適当な溶媒で結晶化させることにより、式(9)で表される化合物を得ることができる。なお、式(8)で表される化合物を生成した後反応溶液にヨウ化カリウムを加え、式(9)で表される化合物をヨウ素イオンに塩交換することにより固体として取り出し、精製後、精製物についてX−で塩交換してもよく、また精製物について、スルホン酸エステルを用いてヨウ素イオンを塩交換してもよい。
その後、下記反応式に示すように、式(10)で表される化合物と式(11)で表される化合物とを用いて脱ハロゲン化水素反応を行わせることにより、式(12)で表される化合物を得ることができる。なお、下記反応式中YはCl及びBr等のハロゲン原子を表す。具体的には、例えば、極性溶媒中で炭酸カリウム(K2O3)等の塩基性触媒の存在下で式(10)で表される化合物と式(11)で表される化合物とを反応させる。反応温度は通常60〜90℃とする。反応終了後、溶媒を留去することにより、式(12)で表される化合物を得ることができる。なお、式(8)〜式(11)の化合物は、市販されているものを用いることもできる。
この式(12)で表される化合物と、下記式(A)で表されるフェノール化合物とを有機溶媒中において酸性触媒下で反応させると、式(A)で表されるフェノール化合物の−OHと式(12)で表される化合物の二重結合部位とが反応して、上記式(1)で表されるスルホニウム塩を製造することができる。酸性触媒としては、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸及びトリフルオロ酢酸等を用いることができる。有機溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、1,3―ジオキソラン、1,3―ジオキサン等のエーテル類や、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類を用いることができる。また、下記式(A)で表されるフェノール化合物の具体例としては、下記式(a−1)〜(a−56)に表されるフェノール化合物が挙げられる。
(式中の記号は、式(1)におけるものと同様である。)
また、上記式(3)で表される基は、上記式(A)で表されるフェノール化合物に下記式(13)で表されるビニルエーテルを、1,3−ジオキソラン等の有機溶媒中において酸性触媒の存在下で付加反応させることにより導入することができる。酸性触媒としては、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸及びトリフルオロ酢酸等を用いることができる。
(R
12は直鎖、環状もしくは分岐の炭素数1〜20のアルキル基、又は、置換基を有してよい炭素数6〜30の芳香族基を表す。)
また、上記式(4)で表される基は、下記式(14)で表されるジ−t−ブチルジカーボネートと上記式(A)で表されるフェノール化合物とを、1,3−ジオキソラン等の有機溶媒中において塩基性触媒存在下で反応させることにより導入することができる。塩基性触媒としては、トリエチルアミン、ピリジン及び4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。なお、上記式(12)で表される化合物と、必要に応じて上記式(13)で表される化合物や下記式(14)で表される化合物と、上記式(A)で表されるフェノール化合物とを反応させる順番は特に限定されず、また、同時に反応させてもよい。
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されものではない。
(合成例1)
下記式で表される化合物(4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウムシクロ(1,3−パーフルオロプロパンジスルホン)イミド塩)の合成
五酸化二リン4.66g及びジフェニルスルホキシド13.3gをメタンスルホン酸63.1gに溶解した後、フェノール9.26gを投入し室温で15時間攪拌した。30℃以下の温度を保ちながら水を199g滴下し、t−ブチルメチルエーテル66.4gで3回水層を洗浄した後、ジクロロメタン120g及びシクロ1,3−パーフルオロプロパンジスルホンイミドカリウム塩23.9gを投入し2時間攪拌した。攪拌を止め、分離した水層を取り除いた後、0.1重量%アンモニア水溶液66.4gを加え攪拌した。次に有機層を蒸留水で洗浄し、これを分離した水層のpHが7になるまで繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、褐色油状の4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウムシクロ(1,3−パーフルオロプロパンジスルホン)イミド塩32.1gを得た。
次に、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウムシクロ(1,3−パーフルオロプロパンジスルホン)イミド塩32.1g、炭酸カリウム11.2g及びN,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン0.67gをジメチルスルホキシド164gに溶解した。その後クロロエチルビニルエーテルを8.65g添加し80℃まで昇温した。15時間撹拌し、反応液を30℃以下に冷却した。濾過により固形分を取り除いた後、水を80g加え、ヘキサン40gを用いて水層を3回洗浄した。ジクロロメタン120g及び水260gを加え攪拌し、ジクロロメタン層に目的物を抽出した。分離した水層のpHが7になるまで蒸留水で有機層の洗浄を繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、油状の物質29.1gを得た。この物質は、1H NMR及びイオンクロマトグラフィによる測定結果から、4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウムシクロ(1,3−パーフルオロプロパンジスルホン)イミド塩であることが確認された。
1H NMR (400MHz,CDCl3)δ4.05−4.08(m,3H),4.24(d,J=7.4,2.4Hz,1H),4.31−4.33(m,2H),6.49(dd,J=14.4,7.4Hz,1H),7.24(d,J=6.8Hz,2H),7.64−7.74(m,12H)
(合成例2)
下記式で表される化合物(4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウムビス(パーフルオロメタンスルホン)イミド塩)の合成
五酸化二リン2.33g及びジフェニルスルホキシド6.65gをメタンスルホン酸31.5gに溶解した後、フェノール4.80gを投入し室温で15時間攪拌した。30℃以下の温度を保ちながら水を100g滴下し、t−ブチルメチルエーテル30gで3回水層を洗浄した後、ジクロロメタン60g及びビス(パーフルオロメタンスルホン)イミドカリウム塩11.6gを投入し2時間攪拌した。攪拌を止め、分離した水層を取り除いた後、0.1重量%アンモニア水溶液30gを加え攪拌した。次に有機層を蒸留水で洗浄し、これを分離した水層のpHが7になるまで繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、褐色油状の4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウムビス(パーフルオロメタンスルホン)イミド塩16.1gを得た。
4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウムビス(パーフルオロメタンスルホン)イミド塩16g、炭酸カリウム4.7g及びN,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン0.33gをジメチルスルホキシド80gに溶解した。その後クロロエチルビニルエーテルを3.66g添加し80℃まで昇温した。15時間撹拌し、反応液を30℃以下に冷却した。濾過により固形分を取り除いた後、水を40g加え、ヘキサン30gを用いて水層を3回洗浄した。ジクロロメタン60g及び水120gを加え攪拌し、ジクロロメタン層に目的物を抽出した。分離した水層のpHが7になるまで蒸留水で有機層の洗浄を繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、油状の物質14.4gを得た。この物質は、1H NMR及びイオンクロマトグラフィによる測定結果から、4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウムビス(パーフルオロメタンスルホン)イミド塩であることが確認された。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ4.05−4.08(m,3H),4.24(d,J=7.4,2.4Hz,1H),4.31−4.33(m,2H),6.49(dd,J=14.4,7.4Hz,1H),7.24(d,J=6.8Hz,2H),7.64−7.74(m,12H)
(合成例3)
下記式で表される化合物(4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロブタンスルホン酸塩)の合成
五酸化二リン15.5g及びジフェニルスルホキシド42.8gをメタンスルホン酸203gに溶解した後、フェノール30.0gを加えて室温で15時間攪拌した。30℃以下の温度を保ちながら水を650g滴下し、t−ブチルメチルエーテル220gで3回水層を洗浄した後、メチルイソブチルケトン220g及びパーフルオロブタンスルホン酸カリウム78.7gを加えて2時間攪拌した。攪拌を止め、分離した水層を取り除いた後、0.1重量%アンモニア水溶液220gを加え攪拌した。次に有機層を純水で洗浄し、これを分離した水層のpHが7になるまで繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩100.0gを得た。
次に、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロブタンスルホン酸塩52.2g、炭酸カリウム18.0g及びN,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン1.05gをジメチルスルホキシド26.1gに溶解した。その後クロロエチルビニルエーテルを13.9g添加し80℃まで昇温した。15時間撹拌し、反応液を30℃以下に冷却した。濾過により固形分を取り除いた後、水を100g加え、ヘキサン100gを用いて水層を3回洗浄した。ジクロロメタン209g及び水260gを加え攪拌し、ジクロロメタン層に目的物を抽出した。分離した水層のpHが7になるまで蒸留水で有機層の洗浄を繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、油状の物質69.9gを得た。この物質は、1H NMR及びイオンクロマトグラフィによる測定結果から、4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロブタンスルホン酸塩であることを確認した。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ4.05−4.08(m,3H),4.24(d,J=7.4,2.4Hz,1H),4.31−4.33(m,2H),6.49(dd,J=14.4,7.4Hz,1H),7.24(d,J=6.8Hz,2H),7.64−7.74(m,12H)
(合成例4)
下記式で表される化合物(4−ビニロキシエトキシ3,5−ジメチルフェニルジ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムパーフルオロブタンスルホン酸塩)の合成
五酸化二リン15.5g及びビス(4−t−ブチルフェニル)スルホキシド66.5gをメタンスルホン酸203gに溶解した後、2,6−キシレノール38.8gを加えて室温で15時間攪拌した。30℃以下の温度を保ちながら水を650g滴下し、t−ブチルメチルエーテル220gで3回水層を洗浄した後、メチルイソブチルケトン220g及びパーフルオロブタンスルホン酸カリウム78.7gを加えて2時間攪拌した。攪拌を止め、分離した水層を取り除いた後、0.1重量%アンモニア水溶液220gを加え攪拌した。次に有機層を純水で洗浄し、これを分離した水層のpHが7になるまで繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニルジ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩118.0gを得た。
次に、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニルジ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムパーフルオロブタンスルホン酸塩28.6g、炭酸カリウム8.10g及びN,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン0.46gをジメチルスルホキシド142gに溶解した。その後クロロエチルビニルエーテルを6.08g添加し80℃まで昇温した。19時間撹拌し、反応液を30℃以下に冷却した。濾過により固形分を取り除いた後、水を20.9g加え、ヘキサン85.1gを用いて水層を3回洗浄した。ジクロロメタン226g及び水141gを加え攪拌し、ジクロロメタン層に目的物を抽出した。分離した水層のpHが7になるまで蒸留水で有機層の洗浄を繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、褐色油状の物質27.4gを得た。この物質は、1H NMR及びイオンクロマトグラフィによる測定結果から、4−ビニロキシエトキシ3,5−ジメチルフェニルジ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムパーフルオロブタンスルホン酸塩であることが確認された。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ1.35(s,18H),2.36(s,6H),4.02−4.08(m,3H),4.12−4.14(m,2H),4.25(d,J=14.3,6.1Hz,1H),6.50(dd,J=14.3,6.6Hz,1H),7.35(s,2H),7.59−7.75(m,8H)
(合成例5)
下記式で表される化合物(4−ビニロキシオクトキシフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロブタンスルホン酸塩)の合成
8−クロロ−1−オクタノール1.23g、炭酸ナトリウム0.47g、ジ−μ−クロロビス[η−シクロオクタジエンイリジウム(I)]0.47g及び酢酸ビニル1.31gをトルエン6.15gに加え100℃で4時間攪拌した。室温まで冷却後、溶媒を留去し、溶媒としてヘキサンとジクロロメタンとの混合溶媒(ヘキサンとジクロロメタンとの体積比は2:1)を用いたカラムクロマトグラフィーで精製することにより、無色透明液体の8−クロロオクチルビニルエーテル1.16gを得た。
4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロブタンスルホン酸塩2.67g、炭酸カリウム0.78g及びN,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン0.05gをジメチルスルホキシド13.3gに溶解した。その後8−クロロオクチルビニルエーテル1.05gを添加し80℃まで昇温した。時間撹拌し、反応液を30℃以下に冷却した。濾過により固形分を取り除いた後、水を13.3g加え、ヘキサン7.96gを用いて水層を3回洗浄した。ジクロロメタン10.6g及び水10gを加え攪拌し、ジクロロメタン層に目的物を抽出した。分離した水層のpHが7になるまで蒸留水で有機層の洗浄を繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、褐色油状の物質2.53gを得た。この物質は、1H NMR及びイオンクロマトグラフィによる測定結果から、4−ビニロキシオクトキシフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロブタンスルホン酸塩であることが確認された。
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ1.36−1.47(m,8H),1.64−1.67(m,2H),1.78−1.83(m,2H),3.67(t,J=6.6 Hz,2H),3.96(dd,J=6.8,2.0Hz,1H),4.04(t,J=6.6Hz,2H).4.16(dd,J=14.4,2.0Hz,1H),6.46(dd,J=14.4,6.8Hz,1H),7.16−7.19(m,2H),7.65−7.76(m,12H)
(実施例1)下記式(15)で表されるスルホニウム塩の合成
窒素雰囲気下、上記式(a−3)で表されるビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン5.0gと合成例1で得た4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウムシクロ(1,3−パーフルオロプロパンジスルホン)イミド塩7.8gとをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート25gに溶解し、共沸脱水で系中の水分を低減した。次いで、シクロヘキシルビニルエーテル1.3gを添加し、トリフルオロ酢酸15μLを添加して、30℃で1時間撹拌した。反応後、アンモニア水で中和し、25gの酢酸エチルを加えて、アンモニア水で洗浄し、さらに純水で洗浄した。減圧留去で溶媒を除いた後、シリカゲルでカラム精製を行い、12.8gの粘性のある化合物を得た。1H−NMRの結果から、D1〜D3がH、上記式(16)で表される基及び上記式(17)で表される基の何れかである上記式(15)で表されるスルホニウム塩が得られ、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタンに対して、上記式(17)で表される酸発生剤基が1.2当量、上記式(16)で表される基が1.0当量であることが確認された。
(実施例2)下記式(18)で表されるスルホニウム塩の合成
窒素雰囲気下、上記式(a−1)で表されるトリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン2.0gと合成例2で得られた4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウムビス(パーフルオロメタンスルホン)イミド塩12.8gとをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20gに溶解し、共沸脱水をした。次いで、トリフルオロ酢酸5μLを添加して、30℃で1時間撹拌した。反応後、アンモニア水で中和し、20gの酢酸エチルを加えて、アンモニア水で洗浄し、さらに純水で洗浄した。減圧留去で溶媒を除いた後、シリカゲルでカラム精製を行い、12.6gの粘性のある化合物を得た。1H−NMRの結果から、D1〜D3がH又は上記式(19)で表される基である上記式(18)で表されるスルホニウム塩が得られ、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンに対して、上記式(19)で表される酸発生剤基が2.8当量であることが確認された。
(実施例3)下記式(20)で表されるスルホニウム塩の合成
窒素雰囲気下、上記式(a−27)で表されるビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン3.6gと合成例3で得た4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロブタンスルホン酸塩7.8gとをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート28gに溶解し、共沸脱水で系中の水分を低減した。次いで、エチルビニルエーテル0.7gを添加し、トリフルオロ酢酸10μLを添加して、30℃で1時間撹拌した。その後、4−ジメチルアミノピリジン0.04gとジ−t−ブチルジカーボネート2.6gとを添加し40℃まで加温した。反応後、アンモニア水で中和し、28gの酢酸エチルを加えて、アンモニア水で洗浄し、さらに純水で洗浄した。減圧留去で溶媒を除いた後、シリカゲルでカラム精製を行い、13.0gの粘性のある化合物を得た。1H−NMRの結果から、D1〜D3がH及び上記式(21)〜(23)で表される基の何れかである上記式(20)で表されるスルホニウム塩が得られ、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタンに対して、上記式(23)で表される酸発生剤基が1.2当量、上記式(21)で表される基が1.0当量、上記式(22)で表される基が1.1当量であることが確認された。
(実施例4)下記式(24)で表されるスルホニウム塩の合成
窒素雰囲気下、上記式(a−50)で表されるビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン3.8gと合成例4で得た4−ビニロキシエトキシ3,5−ジメチルフェニルジ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムパーフルオロブタンスルホン酸塩9.5gとをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20gに溶解し、共沸脱水で系中の水分を低減した。次いで、エチルビニルエーテル1.1gを添加し、トリフルオロ酢酸15μLを添加して、30℃で1時間撹拌した。反応後、アンモニア水で中和し、20gの酢酸エチルを加えて、アンモニア水で洗浄し、さらに純水で洗浄した。減圧留去で溶媒を除いた後、シリカゲルでカラム精製を行い、13.0gの粘性のある化合物を得た。1H−NMRの結果から、D1〜D3がH、上記式(21)で表される基及び上記式(25)で表される基の何れかである上記式(24)で表されるスルホニウム塩が得られ、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタンに対して、上記式(25)で表される酸発生剤基が1.2当量、上記式(21)で表される基が1.5当量であることが確認された。
(実施例5)下記式(26)で表されるスルホニウム塩の合成
窒素雰囲気下、上記式(a−32)で表されるトリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン3.1gと合成例5で得られた4−ビニロキシオクトキシフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロブタンスルホン酸塩1.8gとをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート25gに溶解し、共沸脱水をした。次いで、トリフルオロ酢酸10μLを添加して、30℃で1時間撹拌した。反応後、アンモニア水で中和し、25gの酢酸エチルを加えて、アンモニア水で洗浄し、さらに純水で洗浄した。減圧留去で溶媒を除いた後、シリカゲルでカラム精製を行い、13.5gの粘性のある化合物を得た。1H−NMRの結果から、D1〜D3がH又は上記式(27)で表される基である上記式(26)で表されるスルホニウム塩が得られ、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンに対して、上記式(27)で表される酸発生剤基が2.9当量であることが確認された。
(フォトレジストの調製と特性評価)
上記の実施例1〜5で得たスルホニウム塩100重量部とトリエタノールアミン3重量部とをプロピレングリコールモノメチルアセテート400重量部に溶解し、フィルター(PTFEフィルター)でろ過した。この溶液を、スピナーを用いて、シリコンウエハ(直径:4インチ)に塗布し、120℃で90秒間プレベークし、膜厚300nmのレジスト膜を得た。この膜に、キセノンランプ(波長:248nm)により露光し、次いで100℃で60秒間ポストベークを行った。その後、23℃で現像液(2.38重量%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイドの水溶液)を用いて、ブレークスルータイム(一定のエネルギーを照射した後、現像により残膜が皆無になる秒数)を測定した。
この結果、実施例1〜5で得たスルホニウム塩のブレークスルータイムが、100mJではすべて1秒以下であった。このことから、実施例1〜5で得られた感光性化合物は、キセノンランプによる露光で、本発明のスルホニウム塩から由来した構造部分から酸が発生し、この酸によりそのスルホニウム塩における上記式(2)で表される基、上記式(3)で表される基及び上記式(4)で表される基が分解し、現像液に対して難溶解性から可溶性になったことが判った。
(レジスト溶媒に対する溶解性)
実施例1〜5のスルホニウム塩は、フェノール化合物を母体とし、任意に上記式(3)、上記式(4)の基を導入できるため、従来のスルホニウム塩よりもレジスト溶媒への溶解性が高いという特徴が挙げられる。実施例1〜5のスルホニウム塩は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに20重量%以上溶解することが確認された。