JP5111903B2 - シリンダスリーブの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関を構成するシリンダブロックのボア内に配設されるシリンダスリーブの製造方法に関する。
自動車を走行させる駆動源である内燃機関においては、シリンダボア内にシリンダスリーブが配設されることがある。この場合、シリンダボア内で往復動作するピストンの側周壁部は、このシリンダスリーブの内周壁に摺接する。
シリンダスリーブは、いわゆる遠心鋳造法によって作製されることがある。すなわち、回転動作する円筒状金型の内部に溶湯を導入すると、遠心力によって溶湯が円筒状金型の内周壁に偏在するようになり、円筒形状体が形成される。この状態で溶湯を冷却固化することにより、シリンダスリーブが得られる。この際、シリンダスリーブの外周壁には、塗型材の表面に形成された凹凸形状が転写されることによって、いわゆるスパイニーが形成される。
このシリンダスリーブを金型の所定の位置に配置した後、前記金型に溶湯を注湯して冷却固化すれば(すなわち、鋳造を行えば)、シリンダスリーブが鋳ぐるまれたシリンダブロックが設けられる。この際、前記スパイニーや、前記削り出し等の機械加工によってシリンダスリーブの外周壁に設けられた起伏(例えば、溝状の筋等)、ショットブラスト処理によってシリンダスリーブの外周壁に設けられた凹凸等がアンカーとして機能することにより、シリンダブロックとシリンダスリーブとの接合強度が確保される。
近年、この種のシリンダスリーブの材質には、軽量でありながら耐摩耗性に優れ、且つ高強度であるということから、Al−Si系合金が選定されることが増加しつつある。また、一方のシリンダブロックの材質としても、アルミニウム又はその合金が選定される場合が増加している。
ここで、シリンダブロックを設けるための溶湯は、鋳造作業を円滑に進行させるべく、湯廻り性が良好となる組成に調製される。しかしながら、この組成は、シリンダスリーブにおける優れた耐摩耗性を発現させるための組成と必ずしも一致しない。このように組成が相違することに起因して、シリンダブロックとシリンダスリーブの線膨張係数が互いに相違することになる。
線膨張係数が著しく相違すると、シリンダブロックを鋳造する際に溶湯が冷却固化したとき、スパイニーによるアンカー効果が生じてもなお十分な接合強度を確保することが容易でなくなることがある。そこで、特許文献1には、接合強度を向上させるべく、スパイニーに比して大きな突起物を設けることがシリンダスリーブの外周壁に提案されている。また、特許文献2によれば、シリンダスリーブの外周壁に低融点合金をコーティングすることが接合強度の向上に有効である、とのことである。
特許第3866636号公報 特開2006−43708号公報
上記のような従来技術に関わらず、シリンダスリーブとシリンダブロックとの接合強度を一層簡便な作業によって向上させることが希求されている。また、Al−Si系合金からなるシリンダスリーブを遠心鋳造で作製する場合、耐摩耗性を向上させる初晶Siの量が、耐摩耗性が最も必要な内周壁側で少なくなるという不具合がある。さらに、シリンダスリーブの強度を向上させるためには初晶Siの微細化が必要であるが、前記特許文献1、2には、初晶Siをシリンダスリーブ中に略均等に分散させることや、初晶Siの微細化させることについての方策は開示されていない。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、簡便な作業によってシリンダブロックに確実に接合させることが可能であり、しかも、微細な初晶Siが略均等に分散され、このために内周壁が耐摩耗性に優れるシリンダスリーブの製造方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、内燃機関を構成するシリンダブロックのボア内に配設されるシリンダスリーブであって、
外側円筒形状体及び内側円筒形状体を外周側からこの順序で有し、
前記内側円筒形状体と前記外側円筒形状体とが互いに別種のAl−Si系合金であることを特徴とする。
本発明においては、外周側と内周側とで材質が互いに異なることに基づき、特性が異なる。従って、外周側と内周側とで必要とされる特性が異なる用途に対応することが可能である。
具体的には、シリンダスリーブの内周壁には耐摩耗性が良好であることが希求される。この内周壁にピストンが摺接するからである。従って、内側円筒形状体をなすAl−Si系合金が外側円筒形状体をなすAl−Si系合金に比して耐摩耗性が大きいものであることが好ましい。
さらに、外側円筒形状体の材質は、シリンダブロックをなす材質との線膨張係数の差が3×10-6/℃以内であることが好ましい。このように線膨張係数が近いもの同士をシリンダブロック、外側円筒形状体の材質として選定することにより、シリンダブロックとの接合強度を確保することが容易となる。
そして、外側円筒形状体の外周壁に凹凸が形成されていることが好ましい。この凹凸によっていわゆるアンカー効果が発現し、その結果、シリンダブロックとの接合強度が一層向上するからである。
また、本発明は、内燃機関を構成するシリンダブロックのボア内に配設されるシリンダスリーブを製造する方法であって、
回転する円筒状金型にAl−Si系合金の第1溶湯を供給して遠心鋳造により内側円筒形状体を設ける工程と、
前記円筒状金型を回転させながら、前記第1溶湯とは別種のAl−Si系合金である第2溶湯を、液相−固相線温度以下となった前記外側円筒形状体の内方に供給し、前記外側円筒形状体を冷やし金とする遠心鋳造により側円筒形状体を設け、積層型の予備成形体とする工程と、
前記予備成形体の内周壁側から削り出しを行う工程と、
を有することを特徴とする。
上記した工程を経ることにより、内周側と外周側とで特性が互いに異なるシリンダスリーブを作製することができる。
しかも、本発明においては、内側円筒形状体を設ける際に外側円筒形状体が冷やし金(チラー)として機能するため、第2溶湯の冷却速度が大きくなる。すなわち、初晶Siが大きく成長したり外側円筒形状体側に移動したりする前に溶湯が固化する。従って、微細な初晶Siが略均等に分散した組織を有する内側円筒形状体が得られる。
その上、本発明においては、遠心鋳造作業時に別種の溶湯を供給するという極めて簡便な作業を行うのみで、外周側と内周側とで特性が異なるシリンダスリーブを容易に作製することができる。
内周壁の耐摩耗性が大きなシリンダスリーブを得る場合、第2溶湯として、第1溶湯のAl−Si系合金に比して耐摩耗性が大きいAl−Si系合金の溶湯を用いるようにすればよい。
また、シリンダブロックとの接合強度を確保するためには、第1溶湯として、シリンダブロックをなす材質との線膨張係数の差が3×10-6/℃以内であるものを用いるようにすればよい。
本発明によれば、外側円筒形状体と内側円筒形状体との材質を別種のAl−Si系合金としているので、例えば、シリンダブロックとの接合強度を確保することが可能な材質を外周側とするとともに、耐摩耗性に優れる材質を内周側とする等、外周側と内周側とで希求される特性が異なる用途に好適なシリンダスリーブを設けることができる。
しかも、前記内側円筒形状体においては、微細な初晶Siが略均等に分散している。すなわち、本発明によれば、微細な初晶Siが略一様に分散した組織を有し、このために特性が全体にわたって略同等である内側円筒形状体を具備するシリンダスリーブを構成することも可能である。
以下、本発明に係るシリンダスリーブの製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係るシリンダスリーブを設けるための予備成形体10の概略全体斜視図である。この予備成形体10は、内側円筒形状体12と外側円筒形状体14とが積層された積層体である。
この場合、内側円筒形状体12はAl−17〜23%Si−2.5%Cu系合金(数字は重量%、以下同じ)、すなわち、A390相当材(Al−17%系合金)又はAC9A相当材(Al−23%系合金)からなり、後述するように、溶湯が冷却固化することで設けられた鋳造品である。なお、その厚みT1は、5〜6mm程度に設定される。
この内側円筒形状体12では、平均粒径が35μm以下の微細な初晶Siが外周壁側(外側円筒形状体14側)に偏在することなく、直径方向に沿って略均等に分散している。その上、初晶Siの粒度分布幅も小さい。換言すれば、内側円筒形状体12の組織は、微細且つ互いに略同寸法の初晶Siが一様に分散した状態となっている。
一方、外側円筒形状体14は、Al−11%Si−2.5%Cu系合金(ADC12)からなる鋳造品である。すなわち、該外側円筒形状体14もまた溶湯が冷却固化することで設けられたものであり、その内周壁は内側円筒形状体12の外周壁に接合している。なお、外側円筒形状体14の好適な厚みT2は、0.5〜2.0mmの範囲内である。
このように構成された予備成形体10からシリンダスリーブを作製するに際しては、該予備成形体10の内周壁側、すなわち、内側円筒形状体12から削り出しが行われる。換言すれば、内側円筒形状体12は、所定の厚みとなるまで薄肉化される。このように、内側円筒形状体12は、予備成形体10の加工代として設けられる。
上記したように、内側円筒形状体12では、微細且つ互いに略同寸法の初晶Siが直径方向に沿って一様に分散している。このため、加工後の予備成形体10、すなわち、シリンダスリーブにおいては、ピストンが摺接する内周壁にも優れた耐摩耗性が発現する。その上、全体にわたって高強度である。従って、このシリンダスリーブを組み込んだ内燃機関は、優れた耐久性を示す。
次に、このシリンダスリーブの製造方法につき、図2に示す遠心鋳造装置20を使用する場合を例示して説明する。
この遠心鋳造装置20は、略水平方向に沿って横臥した円筒状金型22を有する。該円筒状金型22の外周壁には、該外周壁を周回方向に沿って切り欠くようにして2本の環状溝24、24が設けられており、環状溝24、24の各々の底部には、ローラ対をなすローラ26、26の外周壁がそれぞれ摺接する。すなわち、円筒状金型22は2組のローラ対によって支持されている。
4個のローラ26は図示しない回転駆動源に連結されており、このため、円筒状金型22は、前記回転駆動源の作用下にローラ26の各々が回転動作することに伴って回転する。
円筒状金型22の一端部には円盤状閉塞部材30が嵌着されており、一方、他端部には円環状枠体32が取着されている。円環状枠体32は貫通孔34が設けられることで開口しており、この貫通孔34を介して第1トラフ36の注湯管38又は第2トラフ40の注湯管42が円筒状金型22の内部に挿入される。
第1トラフ36の本体には、外側円筒形状体14を設けるためのADC12の溶湯L1が収容される。第1トラフ36の近傍には傾動自在な第1ポット44が配設されており、この第1ポット44を介して第1トラフ36に溶湯L1が供給される。
一方、第2トラフ40の本体には、内側円筒形状体14を設けるための溶湯L2が収容される。上記同様、第2トラフ40の近傍にも傾動自在な第2ポット46が配設され、この第2ポット46から第2トラフ40に向けて溶湯L2が供給される。
シリンダスリーブとなる予備成形体10を製造するに際しては、先ず、溶解炉で調製されたADC12の溶湯L1が第1ポット44に移され、さらに、該第1ポット44が傾動されることに伴って第1トラフ36の本体に移される。その一方で、円筒状金型22の内周壁に塗型材が塗布され、その後、図3に示すように、貫通孔34を介して第1トラフ36の注湯管38が円筒状金型22の内部に挿入される。なお、図3では第2トラフ40の注湯管42を図示していないが、第1トラフ36に干渉しない位置に注湯管42を配置しておくようにしてもよい。
この状態でローラ26の回転が開始され、これに追従して円筒状金型22が回転動作する。その後、ADC12の溶湯L1の所定量が第1トラフ36を介して円筒状金型22の内部に供給され、該円筒状金型22の長手方向に沿って流動する。溶湯L1は、さらに、遠心力の作用によって円筒状金型22の内周壁に円筒体形状をなすように偏在して、外側円筒形状体14を形成する。ここで、本実施の形態では、溶湯L1は、外側円筒形状体14の厚みが0.5〜2.0mmの範囲内となる量で供給される。
このようにして外側円筒形状体14が形成される間、該外側円筒形状体14の外周壁には、塗型材のスパイニーが転写される。
その一方で、溶解炉で調製されたA390相当材(Al−17%系合金)又はAC9A相当材(Al−23%系合金)の溶湯L2を第2ポット46に移しておく。そして、外側円筒形状体14の温度が状態図の液相−固相線温度以下となるのに必要な所定時間、例えば、ある条件下において好適には8〜25秒が経過した直後(換言すれば、外側円筒形状体14の温度が状態図の液相−固相線温度以下となった直後)、該第2ポット46を傾動させて溶湯L2を第2トラフ40の本体に移す。これに追従し、図5に示すように、第2トラフ40の注湯管42を介して円筒状金型22の内部に溶湯L2が導入される。導入された溶湯L2は、その流動性によって円盤状閉塞部材30側まで展開する。勿論、溶湯L2を導入する間、円筒状金型22の回転動作は続行される。
溶湯L2は、遠心力によって外側円筒形状体14の内周壁に添着するように偏在し、これにより、図6に示すように、内側円筒形状体12が形成される。その結果、内側円筒形状体12の外方に外側円筒形状体14が積層され、且つ外側円筒形状体14の内周壁が内側円筒形状体12の外周壁に接合した予備成形体10が得られる。
内側円筒形状体12が冷却固化する際には、外側円筒形状体14が冷やし金(チラー)として機能する。このため、本実施の形態では、一般的な遠心鋳造に比して溶湯L2の冷却速度が大きくなる。すなわち、初晶Siが大きく成長する前に溶湯L2が固化するので、初晶Siが微細な組織が得られる。初晶Siの平均粒径は、概ね35μm以下である。
また、冷却速度が大きいので、溶湯L2中のSiが遠心力によって外周壁側に移動する前に固化が起こる。従って、初晶Siが偏在することが抑制され、内側円筒形状体12の直径方向に沿って略均等に分散する。このように、外側円筒形状体14をチラーとして機能させることで、微細且つ互いに略同寸法の初晶Siが一様に分散した内側円筒形状体12を得ることができる。
次に、円筒状金型22の一端部から円環状枠体32を取り外した後、この端部側から、内側円筒形状体12と外側円筒形状体14とが接合した予備成形体10を引き抜いて塗型材とともに取り出す。その後、外側円筒形状体14の外周壁に付着した塗型材をショットブラスト処理等によって除去し、さらに、内側円筒形状体12の内周壁側から所定量の加工代を除去する削り出しを行えば、初晶Siが略均等に分散した内側円筒形状体12を具備するシリンダスリーブが得られる。
内側円筒形状体12を遠心鋳造によって設ける際、仮に初晶Siが外側円筒形状体14側に若干偏在し、直径方向の中腹部よりも内側(内側円筒形状体12の内周壁側)で初晶Siの量がやや少なくなったとしても、上記したように、削り出しが予備成形体10の内周壁側から行われるので、Siの量が少ない部位が加工代として除去される。結局、初晶Siの量が十分なシリンダスリーブを得ることが可能となる。
以上のように、本実施の形態によれば、高強度で且つ耐摩耗性に優れたシリンダスリーブを作製することができる。
また、本実施の形態では、外側円筒形状体14をチラーとして機能させて初晶Siの微細化を図るようにしているので、円筒状金型の回転数や温度等の鋳造条件を厳密に管理する必要がない。
このようにして得られたシリンダスリーブは、自動車用の内燃機関を構成するシリンダブロックを鋳造成形するための鋳造金型のキャビティに配置される。そして、このキャビティに対し、シリンダブロックとなる金属溶湯が導入される。
この場合、前記金属溶湯としては、アルミニウム、又はAl−9%Si−3%Cu合金(ADC10ないしADC12)が選定される。アルミニウム、ADC10又はADC12の線膨張係数は、外側円筒形状体14の材質であるADC12の線膨張係数と略同等であるので、前記金属溶湯の導入時、及び該金属溶湯の冷却固化時にシリンダスリーブとシリンダブロックとが略同程度に膨張・収縮し、このため、外側円筒形状体14の外周壁に転写されたスパイニーのアンカー効果で、シリンダスリーブとシリンダブロックとの間に十分な接合強度が確保される。最終的に、シリンダブロックにシリンダスリーブが鋳ぐるまれ、これにより、内燃機関が構成される。
内燃機関においては、シリンダスリーブの内周壁にピストンが摺接する。このシリンダスリーブの内周壁は、上記したように初晶Siに富むA390相当材又はAC9A相当材からなる内側円筒形状体12であり、従って、耐摩耗性が極めて大きい。このため、耐久性に優れる。
以上のように、本実施の形態によれば、シリンダブロックとの接合強度が大きく、且つピストンが摺接する内周壁の耐摩耗性が良好なシリンダスリーブを構成することができる。
図7に示されるような遠心鋳造装置50を構成し、溶湯L2を円筒状金型22に導入して内側円筒形状体12を設けるようにしてもよい。以下、この実施形態について説明する。
この場合、円環状枠体32の貫通孔34には、注湯管52が通されている。換言すれば、該注湯管52は、貫通孔34を介して円筒状金型22の内部に挿入される。
注湯管52は、4本の棒状ヒータ54で囲繞されている。すなわち、各々の中央貫通孔に注湯管52が通された第1挟持板56、第1貫挿支持板58、第2貫挿支持板60、第2挟持板62の各々は、該注湯管52の先端側からこの順序で位置決め固定されており、各棒状ヒータ54の両端部は、この中の第1挟持板56及び第2挟持板62で挟持されている。また、第1貫挿支持板58及び第2貫挿支持板60は、前記中央貫通孔の周囲に形成された小貫通孔に各棒状ヒータ54を通すことで、その中腹部を支持している。
図8に示すように、注湯管52は、供給管64を介して溶湯保持炉66に連結されている。すなわち、供給管64は、注湯管52に連結されたフレキシブルチューブ68と、溶湯保持炉66から延在して略逆L字型をなす逆L字管70とが互いに連結されることで、注湯管52から溶湯保持炉66にわたって橋架されている。
一方、溶湯保持炉66の底面には車輪72が設けられており、各車輪72は、作業ステーションの床に敷設された案内レール74に摺動自在に係合している。すなわち、溶湯保持炉66は、車輪72が回転した際に案内レール74に沿って変位する。
溶湯保持炉66の内部には断熱材76が収容されており、この断熱材76に囲繞されるようにして溶湯収容容器78が挿入されている。この溶湯収容容器78の内部には図示しない浸漬ヒータが挿入されており、該溶湯収容容器78に貯留されたA390相当材又はAC9A相当材の溶湯L2は、前記浸漬ヒータによって加温されるとともに前記断熱材76によって保温される。
また、溶湯収容容器78の上端部の一部には溶湯を導入するための開口が設けられ、該開口は、蓋部材80で封止されている。
蓋部材80には2本の貫通孔が設けられており、この中の1本には、上記したように、前記供給管64を構成する逆L字管70が通されている。逆L字管70の先端部は、溶湯L2に浸漬されている。また、残余の1本には、図示しないアルゴンガス供給源に連結されたガス導入管82が通されており、該ガス導入管82は、溶湯L2の液面から若干離間している。
このように構成された遠心鋳造装置50によって予備成形体10を製造するに際しては、先ず、円筒状金型22の内周壁に塗型材が塗布される。その後、ローラ26の回転が開始され、これに追従して円筒状金型22が回転動作する。そして、上記と同様に、貫通孔34を介して円筒状金型22の内部に挿入された第1トラフ36の注湯管38から、ADC12の溶湯L1が供給される。第1トラフ36の注湯管38は、所定量の溶湯L1が供給された後、円筒状金型22の外部に後退動作する。
次に、上記に準拠して外側円筒形状体14の温度が状態図の液相−固相線温度以下となった直後、前記アルゴンガス供給源からアルゴンガス(不活性ガス)が供給され、ガス導入管82を経由した後、溶湯保持炉66を構成する溶湯収容容器78の内部に放出される。
溶湯収容容器78内では、溶湯L2がアルゴンガスによって押圧される。アルゴンガスの圧力がさらに上昇すると、溶湯L2は、逆L字管70を上昇してフレキシブルチューブ68を経由した後、注湯管52に到達する。このように、本実施の形態においては、不活性ガスで溶湯L2を押圧することで溶湯保持炉66から円筒状金型22へ移液するようにしているので、大気を巻き込み難く、勿論、不活性ガスも巻き込み難い。
図9に示すように、注湯管52は、その先端が円盤状閉塞部材30の近傍に位置するまで円筒状金型22の内部に挿入されている。このため、溶湯L2は円盤状閉塞部材30の近傍に導出され、その後、円環状枠体32側に向かって流動する。
溶湯L2が導出される間、円筒状金型22の回転動作が続行される。このため、溶湯L2は、図10に示すように、遠心力の作用によって外側円筒形状体14の内周壁に偏在して内側円筒形状体12を形成する。なお、溶湯L2の導入に先立ち、棒状ヒータ54を予め発熱させておく。棒状ヒータ54の総発熱量は、例えば、約30kWに設定すればよい。
この場合、溶湯L2は、予備成形体10の最終的な厚みが5〜6mmの範囲内となる量で供給され、その結果、棒状ヒータ54と予備成形体10の内周壁とのクリアランスは約5mmとなる。上記したように、溶湯Lが大気やその他のガスを巻き込んだとしてもその量は極めて僅かであるので、予備成形体10には気泡(内部欠陥)が生じ難い。なお、前記クリアランスが5mmである場合、巻き込み量は極めて微量であることが本発明者らによって確認されている。
次に、注湯管52が円筒状金型22の内部に滞在した状態で溶湯L2の冷却固化が行われる。上記したように棒状ヒータ54が予め発熱されているため、冷却固化の最中、内側円筒形状体12の内周壁は棒状ヒータ54によって加温されることになる。その一方で、内側円筒形状体12の外周壁は、先に固化した外側円筒形状体14に接触している。従って、内側円筒形状体12における冷却速度は、外周壁側で大きく且つ内周壁側で小さくなる。
内側円筒形状体12にこのような熱勾配が生じることにより、仮に溶湯L2にアルゴンガスが巻き込まれて気泡が生じたとしても、この気泡は、外周壁側に比して冷却速度が小さく固化に時間を要する内周壁側に移動することができる。
一方、外周壁側では冷却速度が大きいので、初晶Siが大きく成長して粗大化することが抑制される。すなわち、本実施の形態によれば、外周壁側に微細な初晶Siが分散し、且つ内周壁側に欠陥が集中した内側円筒形状体12が得られる。
次に、溶湯保持炉66に力を付与し、これにより該溶湯保持炉66を案内レール74に沿って円筒状金型22から離間する方向に変位させる。勿論、この際には、溶湯保持炉66の底面に設けられた車輪72が回転する。
上記した溶湯保持炉66の変位に追従して、注湯管52及び棒状ヒータ54が円筒状金型22の外部に導出される。また、溶湯保持炉66は、最終的に溶湯補給ステーションまで変位され、変位停止後に溶湯収容容器78に溶湯Lが補給される。
次に、円筒状金型22の一端部から円環状枠体32を取り外した後、この端部側から予備成形体10を引き抜いて塗型材とともに取り出す。その後、該予備成形体10の外周壁に対してショットブラスト処理等を施して塗型材を除去し、さらに、削り出しを内周壁側から行えば、欠陥が集中した内周壁側が除去され、且つ微細な初晶Siが略均等に分散した外周壁側が残留する。すなわち、内部欠陥が極めて少なく、且つ微細な初晶Siに富むために高強度で且つ耐摩耗性に優れたシリンダスリーブが得られる。勿論、このシリンダスリーブの外周壁には、塗型材の表面の凹凸が転写されることでスパイニーが形成されている。
なお、上記した実施の形態においては、シリンダブロックの材質としてアルミニウム、ADC10又はADC12を選定するとともに、外側円筒形状体14の材質としてADC12を選定するようにしているが、接合強度を確保するための外側円筒形状体14の材質は特にこれに限定されるものではなく、その熱膨張係数と、シリンダブロックの材質の線膨張係数との差が3×10-6/℃以内のものであればよい。また、シリンダブロックと外側円筒形状体14とを同一のアルミニウム合金としてもよいことは勿論である。
また、内側円筒形状体12の材質もA390相当材(Al−17%系合金)又はAC9A相当材(Al−23%系合金)に特に限定されるものではなく、耐摩耗性を確保する場合、外側円筒形状体14をなすAl−Si系合金に比して耐摩耗性が大きなAl−Si系合金であれば如何なるものであってもよい。
さらに、内側円筒形状体12の材質は耐摩耗性が大きいもの、外側円筒形状体14の材質はシリンダブロックの線膨張係数に近いものに特に限定されるものではなく、希求される特性に応じて適宜変更すればよい。
さらにまた、外側円筒形状体14の厚みT2も0.5〜2.0mmの範囲内に特に限定されるものではなく、内側円筒形状体12の冷却速度を制御して所望の組織が得られるように設定される。
本実施の形態に係るシリンダスリーブを設けるための予備成形体の概略全体斜視図である。 図1に示す予備成形体を作製するための遠心鋳造装置の要部概略構成図である。 図2の遠心鋳造装置を用いて外側円筒形状体を設けている状態を示す長手方向断面説明図である。 外側円筒形状体が設けられた状態における遠心鋳造装置の直径方向断面説明図である。 図2の遠心鋳造装置を用いて内側円筒形状体を設けている状態を示す長手方向断面説明図である。 内側円筒形状体が設けられた状態における遠心鋳造装置の直径方向断面説明図である。 別の遠心鋳造装置の要部概略構成図である。 図7の遠心鋳造装置を構成する注湯管及び溶湯保持炉の概略構成を示す一部縦断面要部構成説明図である。 図7の遠心鋳造装置を構成する円筒状金型に溶湯の導入を開始した状態を示す円筒状金型の長手方向に沿う断面説明図である。 円筒形状体を内周壁側から棒状ヒータで加温している状態を説明する円筒状金型の長手方向に沿う断面説明図である。
符号の説明
10…予備成形体 12…内側円筒形状体
14…外側円筒形状体 20、50…遠心鋳造装置
22…円筒状金型 26…ローラ
36、40…トラフ 38、42、52…注湯管
44、46…ポット 54…棒状ヒータ
64…供給管 66…溶湯保持炉
72…車輪 74…案内レール
76…断熱材 78…溶湯収容容器
82…ガス導入管 L1、L2…溶湯

Claims (4)

  1. 内燃機関を構成するシリンダブロックのボア内に配設されるシリンダスリーブを製造する方法であって、
    回転する円筒状金型にAl−Si系合金の第1溶湯を供給して遠心鋳造により外側円筒形状体を設ける工程と、
    前記円筒状金型を回転させながら、前記第1溶湯とは別種のAl−Si系合金である第2溶湯を、液相−固相線温度以下となった前記外側円筒形状体の内方に供給し、前記外側円筒形状体を冷やし金とする遠心鋳造により内側円筒形状体を設け、積層型の予備成形体とする工程と、
    前記予備成形体の内周壁側から削り出しを行う工程と、
    を有することを特徴とするシリンダスリーブの製造方法。
  2. 請求項記載の製造方法において、前記第2溶湯として、前記第1溶湯のAl−Si系合金に比して耐摩耗性が大きいAl−Si系合金の溶湯を用いることを特徴とするシリンダスリーブの製造方法。
  3. 請求項又は記載の製造方法において、前記第1溶湯として、シリンダブロックをなす材質との線膨張係数の差が3×10-6/℃以内であるものを用いることを特徴とするシリンダスリーブの製造方法。
  4. 請求項のいずれか1項に記載の製造方法において、前記外側円筒形状体の内方に前記溶湯を供給する際、前記溶湯の内周側を加熱することで熱勾配を設けることを特徴とするシリンダスリーブの製造方法。
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