JP5111626B2 - 電動シートリクライニング用ころ軸受 - Google Patents
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Description
電動シートリクライニング装置では、このようなリクライニング機構33において、図14に概略を示すように、背もたれ32に固定される金具34に軸受嵌合孔35を設け、軸受嵌合孔35に嵌合した軸受36を、軸受中心に対して偏心した中心Pを持つカム37で受けるようにしたものがある。金具34およびこれに固定された背もたれ32は、傾き角度が変わるとカム37の作用により、上下位置が変わる。電動シートリクライニング装置では、モータ(図示せず)により背もたれ32の角度を変える。
例えば、非脱落タイプの総ころ軸受のうち、キーストンタイプのものは、ころ本数20本以上では設計が困難である。ころ本数が少ないと、上記のゴリ感の解消は図れない。
非脱落タイプの総ころ軸受のうち、C端面のタイプのもの(例えば特許文献2)は、ころ端面に尖り部を設けて脱落防止を図るものであるが、尖り部のために幅寸法が大きくなる。さらに、有効接触長さも短く、かつころ端面、および外輪のころ端面との接触部が摩耗する問題がある。ころ端面に尖りがある形状では、特に、誘起スラスト力が大きい使用形態では、ころ端面の摩耗が顕著となる。シートリクライニング装置では、シート座面を広くするために、リクライニング機構の低断面化が望まれ、その軸受の幅寸法を小さくしたいという市場の要求がある。したがって、C端面のタイプの総ころ軸受の採用は好ましくない。
この構成によると、内外2つの保持器を設けたため、軌道輪を有しない保持器付きころ軸受でありながら、機器への未組込み状態でころが非脱落形式のころ軸受とできる。この場合に、内外の保持器の柱部がころを内径側および外径側から保持するものであり、その内側の保持器柱部の外径をころ配列のピッチ円直径よりも小径とし、外側の保持器柱部の内径をころ配列のピッチ円直径よりも大径としたため、保持器柱部がころ配列のピッチ円直径上に存在しないものとすることができる。そのため、柱部によってころの配列間隔が広がらず、保持器を用いてころ非脱落形式としながら、総ころ形式と同程度のころ本数を有するものとでき、同じ断面高さの従来の外輪付きころ軸受に比べて、より大きな負荷容量を付与できる。そのため、脱落防止スリーブを用いることなく少ない工数で組立が可能となる等、総ころ形式の各種の課題を解消することができる。
(1) ころピッチが小さくなるため、円周方向の一部に設けられたカムにころが接する構成の電動シートリクライニング装置に使用した場合に、ころがカムに断続的に乗ることが無くなり、そのため動作時のゴリ感が軽減し、フィーリング特性が向上する。
(2) フィーリング特性が向上するため、低振動となる。
(3) 総ころ形式並のころ本数を保有できることから、負荷容量がアップし、長寿命となる。
(4) 負荷容量がアップすることにより、ころとカム面との面圧が下がり、低トルクとなる。勿論、滑り軸受に比べ、滑り軸受のコーティングの有無に関係なく、転がり形式であるため低いトルクである。
(5) 樹脂コーティングの滑り軸受のように、コーティングが剥がれ、摩耗することがなく、摩耗による遊びで応答性が低下することがない。
(6) 平面の端面のころを使用した軸受においても、非脱落とすることができる。平面の端面のころを使用できるため、限られた幅寸法の中でも、ころ有効長さを最大限に設定できる。従って幅寸法を小さくできる。外輪が鍔付きであれば、ころに発生した誘起スラスト力を、外輪の鍔部で受けることができる。
(7) 保持器によりころを非脱落にできるため、熱固化グリースによりころを非脱落にする必要がないため、低トルクとできる。また、そのため、潤滑剤の種類が制限されず、潤滑剤を自由に選ぶことができる。
(8) 組立が従来の非脱落総ころ軸受よりも容易である。
ころ配列における隣合うころ間の隙間は、外径側が次第に大きくなる三角形状の隙間となるため、ころ間の間隔を広げることなく柱部の断面積を大きくするには、柱部を内径側へ先狭まりとなる断面形状とすることが好ましい。しかし、柱部の幅が最も広がる最外径部は、ころ表面に沿って広げずに、略一定幅としてころ表面と柱部表面との隙間を広げることにより、潤滑油の流れが阻害されるのを回避でき、潤滑性の低下を防止できる。
先狭まり形状に構成することにより、組立時のころ配列の外側への保持器の挿入をより円滑に行うことができ、組立性がさらに向上する。
この発明において、内外の各保持器の円周方向の複数箇所に、この保持器の一側縁から他側縁の近傍まで切り欠かれた形状のスリットを設けても良い。
この構成によると、軸受の組み立てに際して、外側の保持器の挿入側部分を拡径させ、内側の保持器の挿入側部分を縮径させながらころ配列の内外に保持器を容易に挿入することができる。この後、保持器を材質の持つ弾性で元の径に自然復元させることで、ポケット内に各ころが入り、軸受が組み立てられる。上記保持器の挿入においては、上記スリットがあるため、保持器をその材質の弾性域内で変形させることができ、そのため保持器の撓み変形が少なく、変形に伴う精度低下を防止できる。これにより組立性の向上および精度向上を図ることができ、また組立の自動化も可能となる。
なお、内外の各保持器のいずれか一方の保持器の円周方向の複数箇所に、この保持器の一側縁から他側縁の近傍まで切り欠かれた形状のスリットを設けても良い。また、上記スリットは、円周方向の1箇所であっても良い。
内外の保持器が共に上記スリットを有する場合は、組立時に外側の保持器の挿入側部分を拡径させ、内側の保持器の挿入側部分を縮径させながらころ配列の内外に保持器を容易に挿入することができる。
スリット内にもころを配置することで、スリットを設けながら、ころ本数を増やすことができ、ころ軸受の負荷容量を増大させることができる。
この発明の電動シートリクライニング用ころ軸受は、それぞれ円周方向に並ぶ複数のポケットを有するリング状に形成された内外2つの保持器と、これら2つの保持器のポケットに渡って保持された複数のころとを備え、内側の保持器は、各ポケット間の柱部が各ころ間で前記ころを内径側から保持し、前記柱部の外径がころ配列のピッチ円直径よりも小径であり、外側の保持器は、各ポケット間の柱部が各ころ間で前記ころを外径側から保持し、前記柱部の内径をころ配列のピッチ円直径よりも大径とした前提構成において、前記外側の保持器の内径寸法を、ころ配列のピッチ円径よりも0.1mm以上大きくする、または、前記外側の保持器の内径面における幅方向の縁部を、テーパ状または断面円弧状の先狭まり形状とする、または、前記内外の各保持器が、その各保持器の一側縁から他側縁の近傍まで切り欠かれた形状のスリットを有する、または、前記内外の保持器のスリットの円周方向位置が互いにずれた位置である。このため、内外の軌道輪を有しない軸受でありながら、非脱落形式とでき、また少ない工数で組立可能で、大きな負荷容量を付与することができる。
このように、保持器3を用いてころ非脱落形式としながら、総ころ形式と同じ程度のころ本数を有するものとできるため、電動シートリクライニング装置に使用した場合に、次の各利点(1) 〜(8) が得られる。
(1) ころピッチが小さくなるため、例えば図14と共に前述したような円周方向の一部に設けられたカム37にころ2が接する構成の電動シートリクライニング装置に使用した場合に、ころ2がカム37に断続的に乗ることが無くなり、そのため動作時のゴリ感が軽減し、フィーリング特性が向上する。
(2) フィーリング特性が向上するため、低振動となる。
(3) 総ころ形式並のころ本数を保有できることから、負荷容量がアップし、長寿命となる。
(4) 負荷容量がアップすることにより、ころ2とカム面との面圧が下がり、低トルクとなる。勿論、滑り軸受に比べ、滑り軸受のコーティングの有無に関係なく、転がり形式であるため低いトルクである。
(5) 樹脂コーティングの滑り軸受のように、コーティングが剥がれ、摩耗することがなく、摩耗による遊びで応答性が低下することがない。
(6) 平面の端面のころを使用した軸受においても、非脱落とすることができる。平面の端面のころ2を使用できるため、限られた幅寸法の中でも、ころ有効長さを最大限に設定できる。従って幅寸法を小さくできる。外輪1が鍔1bを有するものであれば、ころに発生した誘起スラスト力を、外輪1の鍔部1bで受けることができる。
(7) 保持器3によりころ2を非脱落にできるため、熱固化グリースによりころを非脱落にする必要がないため、低いトルクとできる。また、そのため、潤滑剤の種類が制限されず、潤滑剤を自由に選ぶことができる。
(8) 組立が従来の非脱落総ころ軸受よりも容易である。
また、内側の保持器13の内径寸法d13iを、ころ配列の内接円径d2iの最大径よりも0.1mm以上大きくしたため、軸と保持器13との間に0.1mm以上の隙間が生じる。そのため、軸に保持器13が強く接触することがなく、保持器13によって摩擦トルクが増大することが回避される。
また、内側の保持器13の柱部5の並びの外径寸法d13oは、ころ配列のピッチ円直径PCDよりも小さくし、その小さくする程度を、例えばピッチ円直径PCDよりも0.1mm以上としたため、ころ配列の間隔を広げる必要がなく、また柱部5の横断面における最外径部の幅が薄くなりすぎて強度不足になることが回避される。
また、スリット7は、必ずしも内外両方の保持器13,23に設けなくても良く、例えば図5に示すように、内側の保持器13のみにスリット7を設けても良く、また図6に示すように外側の保持器23のみにスリット7を設けても良い。
図7(A)は、スリット7が、一側縁(図中の左側)から切り欠かれたもののみである保持器13の例を示す。
図7(B)は、スリット7に、一側縁から切り欠かれたものと、他側縁から切り欠かれたものとがあって、両側のスリット7が円周方向に千鳥状に並ぶように設けられた保持器3の例を示す。
図7(C)は、スリット7,7Aが一側縁から切りかかれたもののみの例であるが、2種類のスリット7,7Aを有している。その一つの種類のスリット7は、リング状部6における隣合う柱部5間の部分の略全体を除去した部分とポケットを兼用する部分とでスリット7とされる。他の一つの種類のスリット7Aは、リング状部6における隣合う柱部5間の部分の一部6aを除去した部分とポケットを兼用する部分とで構成される。2種類のスリット7,7Aは、円周方向に交互に設けられている。
図7(D)は、図7(B)と同様に、一側縁から切り欠かれたスリット7と他側縁から切り欠かれたスリット7とを、円周方向に千鳥状に並べた保持器3の例であるが、この場合には専用のポケット4を省略して、一側縁から切り欠かれたスリット7と、他側縁から切り欠かれたスリット7とが円周方向に交互に並ぶようにされている。
また、図7(A),(B)の各例は、いずれもポケット4とスリット7とが交互に形成されていて、柱部5は、ポケット4とポケットを兼用するスリット7との間に設けられたものとされている。
図7(C)の例では、スリット7Aは複数個のポケット4の並びを開けて設けられ、柱部5は、ポケット4とポケットを兼用するスリット7との間に設けられたものの他に、同図では図示が省略されているが、専用のポケット4が隣合う部分にも設けられている。図7(A),(B)の例においても、スリット7は複数個のポケット4の並びを開けて設けられたものとしても良い。
柱部5の断面形状は、ポケット4とスリット7の間のものと、隣合う専用のポケット4間のものとのいずれも、図3(B)と共に前述した形状とされる。
ている。
また、内外の保持器13,23のスリット7の円周方向位置が互いにずれた位置とされている場合は、内外の保持器13,3によるころ2の保持強度を十分確保できる。
図11の例は、保持器23の内径面の左右両縁部23cを、テーパ状の先狭まり形状としたものである。その他の構成は、図3〜図8に示す実施形態と同じである。
このように、保持器23の内径面の縁部23cをテーパ状の先狭まり形状とすることにより、組立時のころ配列の外側への保持器23の挿入を円滑に行うことができ、組立性がさらに向上する。また、保持器23の内径面の両縁部23cともテーパ状の先狭まり形状としているので、保持器23をいずれの側縁からころ配列の外側へ挿入しても、その挿入を円滑に行うことができる。
その他の構成は図3〜図8に示す実施形態と同じである。この構成の場合も、第13〜図8の各の実施形態で示した各作用、効果が得られる。
3…保持器
4…ポケット
5…柱部
7,7A…スリット
10…連結部
13…内側の保持器
23…外側の保持器
Claims (14)
- 電動シートリクライニング装置に用いられ、背もたれを傾き角度調整自在に支持するころ軸受であって、それぞれ円周方向に並ぶ複数のポケットを有するリング状に形成された内外2つの保持器と、これら2つの保持器のポケットに渡って保持された複数のころとを備え、内側の保持器は、各ポケット間の柱部が各ころ間で前記ころを内径側から保持し、前記柱部の外径がころ配列のピッチ円直径よりも小径であり、外側の保持器は、各ポケット間の柱部が各ころ間で前記ころを外径側から保持し、前記柱部の内径がころ配列のピッチ円直径よりも大径であり、前記外側の保持器の内径寸法を、ころ配列のピッチ円径よりも0.1mm以上大きくしたことを特徴とする電動シートリクライニング用ころ軸受。
- 電動シートリクライニング装置に用いられ、背もたれを傾き角度調整自在に支持するころ軸受であって、それぞれ円周方向に並ぶ複数のポケットを有するリング状に形成された内外2つの保持器と、これら2つの保持器のポケットに渡って保持された複数のころとを備え、内側の保持器は、各ポケット間の柱部が各ころ間で前記ころを内径側から保持し、前記柱部の外径がころ配列のピッチ円直径よりも小径であり、外側の保持器は、各ポケット間の柱部が各ころ間で前記ころを外径側から保持し、前記柱部の内径がころ配列のピッチ円直径よりも大径であり、前記外側の保持器の内径面における幅方向の縁部を、テーパ状または断面円弧状の先狭まり形状とした電動シートリクライニング用ころ軸受。
- 電動シートリクライニング装置に用いられ、背もたれを傾き角度調整自在に支持するころ軸受であって、それぞれ円周方向に並ぶ複数のポケットを有するリング状に形成された内外2つの保持器と、これら2つの保持器のポケットに渡って保持された複数のころとを備え、内側の保持器は、各ポケット間の柱部が各ころ間で前記ころを内径側から保持し、前記柱部の外径がころ配列のピッチ円直径よりも小径であり、外側の保持器は、各ポケット間の柱部が各ころ間で前記ころを外径側から保持し、前記柱部の内径がころ配列のピッチ円直径よりも大径であり、前記内外の各保持器が、その各保持器の一側縁から他側縁の近傍まで切り欠かれた形状のスリットを有するものである電動シートリクライニング用ころ軸受。
- 電動シートリクライニング装置に用いられ、背もたれを傾き角度調整自在に支持するころ軸受であって、それぞれ円周方向に並ぶ複数のポケットを有するリング状に形成された内外2つの保持器と、これら2つの保持器のポケットに渡って保持された複数のころとを備え、内側の保持器は、各ポケット間の柱部が各ころ間で前記ころを内径側から保持し、前記柱部の外径がころ配列のピッチ円直径よりも小径であり、外側の保持器は、各ポケット間の柱部が各ころ間で前記ころを外径側から保持し、前記柱部の内径がころ配列のピッチ円直径よりも大径であり、内外のいずれか一方の保持器が、一側縁から他側縁の近傍まで切り欠かれた形状のスリットを有するものであり、前記スリットは保持器の円周方向の複数箇所に設け、前記内外の保持器のスリットの円周方向位置が互いにずれた位置である電動シートリクライニング用ころ軸受。
- 請求項3または請求項4において、前記スリットが、ころを保持するポケットを兼ねるものである電動シートリクライニング用ころ軸受。
- 請求項2ないし請求項4のいずれか1項において、外側の保持器の内径寸法を、ころ配列のピッチ円径よりも0.1mm以上大きくした電動シートリクライニング用ころ軸受。
- 請求項1,請求項3,請求項4のいずれか1項において、外側の保持器の内径面における幅方向の縁部を、テーパ状または断面円弧状の先狭まり形状とした電動シートリクライニング用ころ軸受。
- 請求項1,請求項2,請求項4のいずれか1項において、内外の各保持器が、その各保持器の一側縁から他側縁の近傍まで切り欠かれた形状のスリットを有するものである電動シートリクライニング用ころ軸受。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、内外のいずれか一方の保持器が、一側縁から他側縁の近傍まで切り欠かれた形状のスリットを有するものであり、前記スリットは保持器の円周方向の複数箇所に設け、前記内外の保持器のスリットの円周方向位置が互いにずれた位置である電動シートリクライニング用ころ軸受。
- 請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、外側の保持器の柱部の横断面形状を、外径部よりも内径側の部分が、長方形または内径側へ先狭まりとなる形状とした電動シートリクライニング用ころ軸受。
- 請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、保持器を合成樹脂製とした電動シートリクライニング用ころ軸受。
- 請求項1ないし請求項11のいずれか1項において、ころ本数を総ころ形式と同じか、または2本以下の本数だけ少なくした電動シートリクライニング用ころ軸受。
- 請求項1ないし請求項12のいずれか1項において、外側の保持器の外径寸法を、ころ配列の外接円最小径よりも0.1mm以上小さくした電動シートリクライニング用ころ軸受。
- 請求項1ないし請求項13のいずれか1項において、内側の保持器と外側の保持器とを互いに一体化させた電動シートリクライニング用ころ軸受。
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