JP5109949B2 - 印字・記録層を備えたプラスチックカード、シルクスクリーンインク組成物 - Google Patents
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Description
印字・記録層を備えたプラスチックカードは、該印字・記録層が透明なシルクスクリーンインクの印刷により形成され、当該層が印字受容性を有し、当該層に対してされた印字・記録が優れた耐摩擦性や薬品に対する耐久性を有するようにした特徴がある。
印字・記録は、多階調を有するフルカラー画像によって、例えば、昇華型感熱転写方式によりされ、文字情報は一般には単色の2値画像よりなり溶融型感熱転写方式または昇華型感熱転写方式により印字されることが多い。
しかし、近年、ポリエチレンテレフタレート(PET)やPET−Gシートが最表面となるカードが出現しており、このようなカードに通常の塩化ビニル樹脂製カードの条件で印字・記録を行うと印字・記録の乗りが悪かったり欠けたり擦れたりし、印字・記録の耐久性が十分でない問題が生じてきている。また、印字適性の優れたオーバーシートであっても、その面に磁気テープを隠蔽する隠蔽印刷や図柄印刷がされている場合は、当該印刷面に重ねて印字・記録することが困難になることも認められている。
しかし、この組成のインク層では、当該層に対してされた印字・記録の磁気ヘッドによる耐久性や耐薬品性が十分でないことが指摘されていた。
このようにするのは近年、オーバーシート103にPETやPET−Gシートが用いられる場合が多く、直接では安定した印字・記録ができないからである。従来、この印字・記録層105は、塩酢ビ系樹脂にポリエチレンワックス(PEワックス)を添加した透明シルクスクリーンインクによる印刷した層から構成されていたが、塩酢ビ系樹脂の印字・記録層105は引っ掻き等の耐摩擦性に劣る問題が指摘されていた。この場合も、印字・記録2の面には、特別な保護層を設けないのが通常である。
特許文献3は、「インク組成物」に関し、厚膜を形成し耐摩擦性の高いインクジェット用インク組成物として、粒子状ワックスを添加することを記載している。PTFEワックスについての言及が見られるが、本願とは、目的、構成、効果が相違している。
また、そのような印字・記録層を形成できるシルクスクリーンインク組成物を提供することも課題とする。
本発明のシルクスクリーンインク組成物は、プラスチックカードの表面に、外観性、印字適性(印字受容性)、耐摩耗性等の優れた印字・記録層を確実に形成できる。
印字・記録層を備えたプラスチックカード1は、各種の層構成を採用できるが、図1の場合は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる2層のコアシート101,102と表裏のPET製透明オーバーシート103,104の構成からなっている。表面側コアシート101には、印刷層3が設けられている。
非接触型・接触型共用ICカードの場合は、カード基体内に内蔵したアンテナコイルに、カード表面からICモジュール装着用凹部を切削して、当該凹部に装着したICモジュールの非接触端子とアンテナコイルを当該凹部内で接続する構造が採用される。
磁気カードの場合は、オーバーシート103の外面、またはオーバーシート103,104の双方の外面に磁気テープが転写され、表面側の磁気テープ面には隠蔽印刷がされているのが通常である。
印字・記録層105の厚みは、1〜20μm、好ましくは、2〜10μm程度である。シルクスクリーン印刷による印刷層であるため、比較的に厚みのある層となる。印字・記録層105の面に印字・記録2がされている。印字・記録2は、溶融型感熱転写か昇華型感熱転写によるものである。溶融型感熱転写の場合は、ワックスと着色料を主成分とする溶融した転写材料が印字・記録層105に文字・記号等を薄膜状に付着させる。昇華型感熱転写の場合は、熱により昇華した転写リボンの染料が印字・記録層105面に吸収されて画像等を染着することになる。
なお、隠蔽印刷5や下地印刷は転写方式でされることが多い。剥離兼保護層とは、絵付け用転写フィルムの基材に施した剥離層が、絵柄と共にカード側の最表面に転移して転移後は保護層の役割をするものである。剥離層としても保護層としても機能するので、このように剥離兼保護層と言っている。
ポリエチレンワックスは、一般に3%以上添加しても物性が向上しなくなる。それ以上添加しても光沢(艶)が低下し、カードの外観性を損ねる問題も生じる。
微粒子状とは、平均粒径がミクロンからサブミクロンの範囲になる。PEワックスも微粒子であるが、本発明ではPTFEワックスには、PEワックスよりは微粒のものを使用することが好ましい。PTFEワックスの密度が大きいため、微粒子にして表面張力等の作用を大きくして沈降を防止するためである。
しかし、シルクスクリーン印刷の場合は、印刷膜厚が2〜4μm程度またはそれ以上にはなるので、そのような効果を発揮させるためには、かなり粒径の大きいワックスを添加する必要があることになる。しかし、経験的には、乾燥後の印刷膜厚よりも粒径の小さい微粒のワックスを使用する場合にも、一定の耐摩擦性向上効果が得られることが認められている。
また、低分子のポリエチレンの融点は、100〜130°Cで融点が高く優れたブロッキング性、耐摩耗性、耐溶剤性を付与できる。
溶剤は、使用樹脂との相溶性を考慮して脂肪族・芳香族炭化水素、アルコール、エステル、エーテル等を使用する。以下、実施例、比較例について説明する。
また、PEワックスには、中心粒径が0.6〜1.8μmの範囲のもの(三井化学株式会社製)を混合して使用し、PTFEワックス(Shamrock Technology社製「SST」)を乾式法で粉砕して粒径を調整し、微粒子の80%(質量比)の粒径が0.1〜0.5μmの範囲となるようにしたものを使用した。
ここに粒径とは、株式会社島津製作所製の粒度分布測定装置(SALD2000J)によるレーザ回折法で測定した径をいうものとする。
なお、表1中の比率(%)は、溶剤を含まない固形分量全体に対する質量%を意味している。溶剤には、シクロヘキサノンとキシロールの混合物を使用した。
別に、厚み0.26mmの2軸延伸PETシート2枚を中心のコアシート101,102とし、その表裏に厚み50μmのホットメルト型接着シートを介して、厚み0.10mmの透明PET−Gシート(三菱樹脂株式会社製「ディアフィクス」)をオーバーシート103,104とし、熱圧(145°C、30kg/cm2 、10分間)をかけてプレスラミネートしたカードを試作した。なお、コアシート101は、非接触ICカード用のアンテナコイルをエッチングして形成し、非接触ICチップを実装したものであり、コアシート102との間にも厚み50μmのホットメルト型接着シートを使用した。
これをプラスチックカードC1とする。
厚み0.30mmの白色硬質塩化ビニルシート(太平化学薬品株式会社製造「TN828」)2枚を中心のコアシート101,102として使用し、白色コアシート間を熱圧(145°C、30kg/cm2 、10分間)をかけてプレスラミネートした。
次いで、磁気テープ転写済みの塩化ビニル製透明オーバーシート(厚み0.10mm)103,104を白色コアシートの両側にあてがい、さらに絵付け用転写フィルムを透明オーバーシート103面に位置合わせして重ね、この仮積積層体を鏡面板間に挟み、熱圧(120°C、25kg/cm2、10分間)をかけてプレスラミネートしてカードを試作した。これをプラスチックカードC2とする。
シルクスクリーン印刷には、アクリル系樹脂と酢酸ビニル系樹脂からなるインクを使用した。剥離兼保護層は、前記のように転写後はカード表面側に残る層である。
〔外観性試験〕
カードの印字・記録層105形成域と、非形成域の艶を肉眼で観察し、有為な艶差がある場合を「×」、有為な艶差がない場合を「○」として評価した。
〔印字受容性試験〕
(a)サーマルヘッドと熱溶融転写リボン(黒色)を使用する感熱溶融熱転写プリント法による文字・記号を印字・記録層105に印字し文字欠けや薄色転写の有無を観察する。
(b)サーマルヘッドと昇華転写リボン(4色)を使用する感熱昇華転写プリント法により多階調の顔写真を印字・記録層105にプリントし、転写性の良否を観察する。
(c)印字・記録後に、プリント面を消しゴムで摩擦する。
(d)印字・記録後に、プリント面にセロファンテープを貼り付けし、24時間放置した後、急速に剥離する。
上記、(a)〜(d)のいずれかの試験で、欠陥が生じた場合を「×」、欠陥が生じない場合を「○」として評価した。
カードをATM(Automatic Teller Machine)機仕様の磁気リーダライタを通過させた場合を想定し、磁気ヘッドによる耐久性試験を行う。具体的には、通常の磁気ヘッドの圧力下に、プラスチックカードの印字・記録2面を通過させて、500回から3000回の間で剥離や摩耗が生じるか否かを観察する。
3000回の通過テストで、印字・記録2の剥離や摩耗が生じた場合は、「×」、剥離や摩耗が生じない場合は、「○」として評価をした。
カードの耐薬品性試験方法として、ISO/IEC7810:2003には、汚染試験として、ISO/IEC10373−1の5.4.1.1に規定する次の7種の溶液を使用することが規定されている。
a)5%NaCl(塩化ナトリウム)溶液
b)5%CH3 COOH(酢酸)溶液
c)5%Na2 CO3 (炭酸ソーダ) 溶液
d)60%CH3CH2OH(エチルアルコール)溶液
e)10%C12H22O11 (砂糖)溶液
f)FuelB(2,2,4−Tri methylpentane Toluene)g)50%HOCH2CH2OH(エチレングリコール)溶液
本発明のプラスチックカード1では、特に印字・記録層105や印字・記録2の汚染や表面性状の変化に着目し、いずれかの溶液で、汚染、または表面性状の変化が見られた場合は、「×」、いずれかの溶液でも、汚染、または表面性状の変化が見られない場合は、「○」として評価をした。表2は以上の試験の評価結果である。
耐摩擦性は、PTFEワックス量が、0.1%以下では十分な効果が得られないものと評価された。0.2%から0.5質量%の範囲でほぼ良好な結果が得られている。
印字受容性と耐薬品性は、何れの場合も良好であった。
また、PEワックスの固形分全体に対する質量%が0.5〜2.8質量%、PTFEワックスの固形分全体に対する質量%が0.2〜0.5%の範囲(実施例1〜6)であれば、良好な結果が得られることが確認できた。
2 印字・記録
3 印刷層
4 磁気テープ
5 隠蔽印刷
101、102 コアシート
103,104 オーバーシート
105 印字・記録層(印字・記録可能な層)
Claims (4)
- カード表面に印字・記録可能な層を有するプラスチックカードであって、当該印字・記録可能な層が、アクリル系樹脂を主成分とし、これに塩酢ビ系樹脂を加えたバインダーに、溶剤を除く固形分比で、微粒子状のポリエチレンワックス0.5〜2.8質量%、微粒子状のポリテトラフルオロエチレンワックス0.2〜0.5質量%を添加した組成に、適量の溶剤を加えた、着色剤を含まないシルクスクリーンインクにより印刷された層からなることを特徴とする印字・記録層を備えたプラスチックカード。
- 印字・記録層の下地となるカード表面が、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、またはPET−G樹脂であり、その表面に印字・記録層が備えられていることを特徴とする請求項1記載の印字・記録層を備えたプラスチックカード。
- 印字・記録層の下地となるカード表面が、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、PET−G樹脂のいずれかからなり、その表面の隠蔽印刷層や図柄印刷を介して印字・記録可能な層が備えられていることを特徴とする請求項1記載の印字・記録層を備えたプラスチックカード。
- アクリル系樹脂を主成分とし、これに塩酢ビ系樹脂を加えたバインダーに、溶剤を除く固形分比で、微粒子状のポリエチレンワックス0.2〜2.8質量%、微粒子状のポリテトラフルオロエチレンワックス0.2〜0.5質量%を添加し着色剤を含まない組成に、適量の溶剤を加えたことを特徴とするシルクスクリーンインク組成物。
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