JP5108440B2 - 車両吸気ダクト - Google Patents

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Description

この発明は、車両吸気ダクトに関するものである。
例えば、図11および図12に示すように、多くの自動車では、車体10の前部に画成されたエンジンルーム12内にエンジンEGが搭載されている。このエンジンEGは、周知の如く、エンジンルーム12内に設置されたエアクリーナーACを介して導入される清浄空気と燃料タンクから供給される燃料とを混合させた混合気を燃焼させて回転する内燃機関であり、特に走行中には外部の空気を連続的かつ安定的に供給することが必要不可欠とされている。そこで、エアクリーナーACに連結される外気導入用の車両吸気ダクトD1をエンジンルーム12の前側に配設し、車外の冷えた空気を取り込んでエアクリーナーACへ案内するようになっている。
ここで車両吸気ダクトD1は、一般的にはエンジンルーム12の前側である車体10の前面中央付近において、エンジンルーム12を開閉可能に閉成するエンジンフード14と、エンジンルーム12の前側に位置してラジエターRDを固定するためのラジエターサポート16との間、すなわち両者の間に画成された間隙Sに臨むように配設することが望ましい。しかし、この間隙Sは、図12および図14に示したように、車体形状の関係から上下方向の寸法を大きく確保することが困難な場合が多く、車両吸気ダクトD1の外形形状は、高さ寸法を低く抑えた幅広の扁平形状とせざるを得ない状況となっている。
すなわち車両吸気ダクトD1は、図13に一部破断して示すように、インジェクション成形技術またはブロー成形技術等の成形技術により成形された合成樹脂製のダクト本体20を主体とし、屈曲状をなす該ダクト本体20の長手方向の一端に横長の空気取込口22を開設すると共に、長手方向の他端に略矩形の空気送出口24を開設してある。そしてダクト本体20は、図11に示すように、その前側部分をピンまたはボルト等の適宜取付手段BLでラジエターサポート16の上面へ取り付けると共に、その後側部分をエンジンルーム12内に設置されたエアクリーナーACへ連結させることで、ラジエターサポート16とエンジンフード14との間に空気取込口22を臨ませた状態でエンジンルーム12へ配設される。
ここで、前述した車両吸気ダクトD1のダクト本体20は、軽量化に伴う薄肉化および扁平状の外形形状等によって剛性があまり高くなく、エンジンEGの駆動時における内部の負圧化およびエンジンルーム12内の温度上昇による軟化に伴い、上壁部分20Aおよび下壁部分20Bの陥凹的な変形が発生し易くなっている。特に、横長の空気取込口22が形成されたダクト本体20の前側部分では変形が起こり易く、上壁部分20Aおよび下壁部分20Bの陥凹的な変形に伴って空気取込口22の開口面積が減少すると、エンジンEGへ充分な空気を取込めなくなる不都合が発生してしまう。そこで、図13および図14に示したように、下壁部分20Bにダクト本体20内へ突出する支持リブ26を設け、この支持リブ26で上壁部分20Aを内側から支持させるよう構成することで、前述した問題を解決する対策が施されている。これに関連する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
特開2004−308453号公報
ところで近年に至っては、歩行者保護に関する安全対策の確立が希求されつつあり、歩行者が衝突した際にはその衝撃によりボディが適度に変形することで、衝撃吸収を図るようにした所謂「歩行者傷害軽減ボディ」が開発されている。このため、エンジンフード14においては、歩行者が衝突した際の衝撃力により陥凹的な変形が発現し易い構造とすることで、衝突による衝撃吸収を図りつつ歩行者の負傷度合を軽減する対策が施されている。従って、エンジンフード14の真下に位置する車両吸気ダクトD1では、エンジンフード14が陥凹的に変形するに際してダクト本体20自体が圧潰的に変形して、エンジンフード14の陥凹的な変形を阻害しないことが要求されている。
そこで従来の車両吸気ダクトD1は、エンジンフード14の変形に伴う外力が上方から加わった場合に、前述した支持リブ26を折曲的または撓曲的に圧縮変形させることで、ダクト本体20の圧潰的な変形を実現させるようにしていた。しかしながら、ブロー成形技術により成形されたダクト本体20の場合では、支持リブ26の肉厚のコントロールが困難であるから、該支持リブ26の強度にバラツキが発生し易くなっていた。例えば、支持リブ26が規定より厚く形成されていた場合には、所定の外力が加わっても該支持リブ26が適切に変形しないから、所謂「支え棒」のように作用してダクト本体20の陥凹的な変形を阻害する問題が発生してしまう。また、インジェクション成形された上壁部分20Aと下壁部分20Bとを貼り合わせて形成されたダクト本体20の場合では、支持リブ26の肉厚のコントロールは比較的容易にできるとしても、外力が加わった場合に支持リブ26が折曲的または撓曲的に圧縮変形する点では同様であるから、変形が増加するに伴って反発力が徐々に高まってしまい、依然として荷重の調節が困難であった。
本発明は、ダクト本体の圧潰的な変形の発現を調節し得る車両吸気ダクトを提供することを目的とする。
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
互いに対向してダクト本体をなす第1壁部および第2壁部と、前記第2壁部から前記ダクト本体内へ突出して前記第1壁部を内側から支持する支持部とを備える車両吸気ダクトにおいて、
前記支持部の周囲四方のうちの三方を囲んで連続的に延在するように前記第2壁部に貫通形成されたスリットからなり、該スリットの両方の端部を結ぶ直線状の端部ラインが前記支持部を外れた位置を通るように該第2壁部に設けられた分部と、
前記第2壁部において前記スリットの両方の端部間に前記端部ラインに沿って延在し、該第2壁部におけるスリットで周囲三方が囲われた外周片部の姿勢変位を許容するように折曲変形可能な連設部と、
前記外周片部から前記端部ラインを越えて延在して前記連設部に交差するように前記第2壁部に設けられ、ダクト本体内側またはダクト本体外側に突出する変形調節部とを備えたことを要旨とする。
従って、請求項1に係る発明によれば、第1壁部を押圧する外力がダクト本体に加わった場合に、連設部が折曲変形することで支持部が倒伏的に姿勢変位し、ダクト本体の圧潰的な変形が発現する。そして、連設部に設けた変形調節部により、該連設部を折曲変形させる変形荷重の調節が図られる。また、支持部と第2壁部とがスリットにより分離しているので連設部の折曲変形に影響を与えず、変形調節部による調節が容易となる。
請求項2に記載の発明は、前記変形調節部は、前記支持部に連設されていることを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、支持部と変形調節部との間の部分が強度的に弱くならない。
請求項に記載の発明は、前記変形調節部は、前記変形調節部は、前記第2壁部からダクト本体内へ前記支持部より低く突出し、該第2壁部に一体的に形成されていることを要旨とする。
従って、請求項に係る発明によれば、変形調整部がダクト本体の外方へ突出することなく、連設部を折曲変形させる変形荷重の調節が可能である。
本発明に係る車両吸気ダクトによれば、支持部を倒伏的に姿勢変位させる連設部の折曲変形が変形調節部により調節できるので、ダクト本体の圧潰的な変形の発現を調節し得る。
次に、本発明に係る車両吸気ダクトにつき、好適な実施例を挙げ、添付図面を参照しながら、以下に説明する。
本願が対象とする車両吸気ダクトは、図11〜図15に示した従来の車両吸気ダクトD1と同様に、エンジンルーム12の前側車体構成部分であるラジエターサポート16とエンジンフード14との間に、ダクト本体20の空気取込口22を臨ませた状態で設置されて実施に供されるものである。そこで実施例では、図13に示す従来の車両吸気ダクトD1と同一形状のダクト本体20を有した車両吸気ダクトを例示し、同一の構成部分、部材については、同一の符号を付して説明する。なお実施例では、車体10の前方を指向した側を車両吸気ダクトDの前側とし、エアクリーナーACに連結される側を車両吸気ダクトDの後側とする。また、また車体10の前側から見た該車体10の車幅方向を、車両吸気ダクトDの左右方向とする。
実施例の車両吸気ダクトDは、互いに対向してダクト本体20をなす第1壁部としての上壁部分20Aおよび第2壁部としての下壁部分20Bと、下壁部分20Bからダクト本体20内へ突出して上壁部分20Aを内側から支持する支持部としての支持リブ26とを有している。上壁部分20Aおよび下壁部分20Bからなるダクト本体20は、図1に一部破断して示すように、ポリプロピレン(PP)等の合成樹脂素材からインジェクション成形技術またはブロー成形技術等により成形され、屈曲筒体状を呈する合成樹脂製の中空部材である。ダクト本体20の長手方向の一端である前端部には、横長の空気取込口22が形成されていると共に、該ダクト本体20の長手方向の他端である後端部には、空気送出口24が形成されている。空気送出口24の外周囲には、エアクリーナーACの空気流入口に嵌合する筒状の連結部32が設けられている。また、ダクト本体20の空気取込口22に臨む左右両側には、該ダクト本体20から側方へ延出した取付片部30,30が設けられている。これら取付片部30,30には、ラジエターサポート16の上面に締結されるボルトBLが挿通する係止孔が穿設されている。
下壁部分20Bに突設した支持リブ26は、ダクト本体20の成形時に第2壁部20Bに一体的に形成されたもので、ダクト本体20の内部へ突出して上壁部分20Aの内面に臨む略四角錐形状となっている。支持リブ26の形成位置は、図1および図4に示すように、ダクト本体20の前側部分における左右中央で、かつダクト本体20の前側部分をラジエターサポート16の上面に取着固定させた状態において、該ラジエターサポート16の上面から外れた後方または後側となるよう設定されている。すなわち、空気取込口22が形成されたダクト本体20の前端から支持リブ26の前端部までの間隔は、ダクト本体20の底面とラジエターサポート16の上面との接触部分の前後長と略同一、または該前後長より大きくなるように設定されている。支持リブ26の形成位置をこのように設定するのは、図5に示すと共に後述するように、支持リブ26が倒伏的に姿勢変位するに際し、該支持リブ26の外周片部28が下壁部分20Bからダクト本体20の外方へ突出して退避するので、支持リブ26または外周片部28がラジエターサポート16に干渉しないようにするためである。なお、支持リブ26の形状は、前述した略四角錐形状に限定されるものではなく、例えば円錐または楕円錐形状、多角錐形状、円柱または角柱形状等であってもよい。
また、支持リブ26の先端が対面する上壁部分20Aの裏面部位には、図1および図2(b)に示すように、不織布またはウレタン等を材質とするシート状の緩衝材38が貼り付けられている。この緩衝材38は、支持リブ26と上壁部分20Aとが直接的に接触することによる異音の発生を防止するために貼り付けられている。従って支持リブ26は、緩衝材38を介して上壁部分20Aを内側から支持するよう構成されている。但し、支持リブ26と上壁部分20Aとが接触しても異音が発生しない場合や、異音の発生レベルが極小さい場合には、緩衝材38を貼り付ける必要はない。
そして、実施例の車両吸気ダクトDでは、図1および図2等に示すように、下壁部分20Bの支持リブ26を囲繞する部位に、下壁部分20Bの部分的な分離を許容する分割部40と、支持リブ26と下壁部分20Bとを連設する連設部46と、この連設部46と交差するように延在する変形調節部50とを備えている。従って、上壁部分20Aを押圧する外力がダクト本体20に加わった場合には、連設部46が折曲変形することで支持リブ26が倒伏的に姿勢変位し、当該ダクト本体20の圧潰的な変形が発現するよう構成されている。また、連設部46に設けた変形調節部50は、所謂補強リブであって、連設部46を折曲変形させる変形荷重を調節するために機能する。
分割部40は、図2(a)および図3(a)に示すように、下壁部分20Bを貫通するスリット42から構成されている。このスリット42は、支持リブ26の周囲三方を囲んで連続し、該分割部40の両方の端部40A,40Aを結ぶ端部ラインHLが支持リブ26から外れた位置を通る部位まで、該端部40A,40Aが延在するよう下壁部分20Bに設けられている。すなわち、分割部40としてのスリット42は、支持リブ26の周囲三方である左側縁部、後縁部および右側縁部に沿って該支持リブ26を囲み、左側縁部および右側縁部に沿う直線部分は支持リブ26の前縁部から更に前方向へ延長されており、全体的には縦長の略U字形に延在している。従って下壁部分20Bは、スリット42で囲んだ部分とその外側の部分とに分離され、下壁部分20Bの一部をなすスリット42で囲んだ部分は、支持リブ26の基端部と一体をなす外周片部28とされている。なおスリット42は、ダクト本体20を成形した後工程において、ミーリング加工またはレーザー加工等により形成される。
連設部46は、分割部40における両方の端部40A,40A間で端部ラインHLに沿った部位であって、スリット42で囲んだ部分である外周片部28と、該スリット42の外側の部分である下壁部分20Bの一般部分とを連結している。すなわち連設部46は、下壁部分20Bと外周片部28との境界部分に沿った部位であり、支持リブ26の頂部または外周片部28を上方から押すと折曲変形し得るよう構成されている。これにより支持リブ26は、図5に示すように、連設部46が折曲変形することで、ダクト本体20の後方側に向けて倒伏的に姿勢変位することが許容される。
なお、下壁部分20Bの外面には、図1等に示したように、前述した貫通状のスリット42を設けたことに伴い、該スリット42の開口部を覆蓋するシート状のシール部材36が貼り付けられている。これにより、エンジンEGが駆動して空気取込口22からダクト本体20内へ外気が取り込まれるに際し、該ダクト本体20内が負圧となったとしても、エンジンルーム12内の空気がスリット42を介してダクト本体20内へ流入することが防止される。
変形調節部50は、図1および図2(a)〜図2(c)に示すように、下壁部分20Bに一体的に形成され、該下壁部分20Bからダクト本体20の内側へ支持リブ26より低く突出し、該支持リブ26から下壁部分20Bへ連設部46と交差するよう延設してある。この変形調節部50は、連設部46を折曲変形させるのに必要な荷重(以後「変形荷重」と云う)を増加調節するためのものである。すなわち、一般的な通常の使用状態においては、(1)エンジンEGの駆動による吸気量増加に伴ってダクト本体20内が負圧となった場合や、(2)エンジンルーム12内の温度上昇に伴ってダクト本体20が軟化した場合に、上壁部分20Aおよび下壁部分20Bが相互に近接する方向へ変形して、該上壁部分20Aが支持リブ26を上方から押圧するようになる。そこで実施例の車両吸気ダクトDは、連設部46に交差するよう延在する変形調節部50を設けることで、通常の使用状態において前述した(1)および(2)が発現しても、連設部46が折曲変形しないようにして支持リブ26を起立状態に保持させ、該支持リブ26でダクト本体20の陥凹的な変形を防止するよう構成されている。
具体的に変形調節部50は、図2(a)〜図2(c)に示すように、下壁部分20Bの内面から突出長L、突出幅W、突出高Hで直線状に突出し、かつ幅方向における縦断面形状が略半円状に突出した内側膨出部52から構成されている。内側膨出部52は、図2(b)および図3に示すように、該内側膨出部52の後端側(支持リブ26側)は支持リブ26の前壁部に接合され、該内側膨出部52の前端側は空気取込口22の近傍に臨んでいる。また、下壁部分20Bの内側膨出部52に対応した外面には、該内側膨出部52側へ陥凹した線状陥凹部54が、該内側膨出部52に沿って形成されている。従って、変形調節部50を構成する内側膨出部52の厚さRは、下壁部分20Bの厚さCと同一となっている。すなわち、実施例の変形調節部50における内側膨出部52は、下壁部分20Bの支持リブ26から前側の部分を、ダクト本体20の内側へ膨出的に成形することで形成されたもので、該下壁部分20Bの一部として構成されている。
これにより実施例の車両吸気ダクトDは、連設部46と交差する内側膨出部52からなる変形調節部50を設けたことで、該変形調節部50を設けない場合と比較して、連設部46の折曲変形が発現し難くなっている。換言すると、連設部46を折曲変形させるのに必要な変形荷重が、変形調節部50を設けたことで増加している。すなわち、変形調節部50を設けない場合には、図3(b)に示すように、連設部46が単なる平板状を呈しているので、小さい変形荷重により該連設部46が折曲変形する。これに対し、変形調節部50を設けた場合には、図3(a)に示すように、連設部46が端部ラインHLと交差する方向に補強リブを設けたことになる。しかも、連設部46が折曲変形する際には、図5に示すように、内側膨出部52の連設部46に臨む部位が撓曲的に変形する必要がある。従って、変形調節部50を設けない場合よりも更に大きい変形荷重を付与させなければ、連設部46が折曲変形しない。
なお、連設部46を折曲変形させる変形荷重は、内側膨出部52の各寸法(突出長L、突出幅W、突出高Hおよび厚さR)を変更することで、増減調節することが可能である。例えば、突出高H、突出幅Wまたは厚さRを大きく設定すると、内側膨出部52の撓曲的な変形がより一層発現し難くなるので、連設部46を折曲変形させる変形荷重の増加を図ることができる。従って、実施例の車両吸気ダクトDでは、内側膨出部52の突出長L、突出幅W、突出高Hおよび厚さRの寸法設定に基づき、連設部46の折曲変形が発現する変形荷重を、前述した(1)または(2)の状況時に発生する押圧力に伴う変形荷重より大きく設定してある。
また、連設部46に変形調節部50を設けたことにより、折曲変形している連設部46の形状復元力が大きくなっている。従って、倒伏的に姿勢変位していた支持リブ26に作用する外力が解除された際には、該支持リブ26の起立姿勢への復元力が増大しているので、ダクト本体20の形状復元性が向上する。これにより、例えばエンジンEG等のメンテナンス作業に際し、作業員がダクト本体20を上方から押して該ダクト本体20が変形したとしても、この押付けが解除された際にはダクト本体20は元の形状に復元し易い。
なお、支持リブ26が倒伏的に姿勢変位することで分割部40の内側に形成される開口部34は、倒伏的に姿勢変位する該支持リブ26の通過を許容する開口形状・サイズとするのが望ましく、これを考慮してスリット42の形成位置が設定されている。すなわち、図2に示すように、連設部46から支持リブ26の先端後部までの長さを折曲高さFとし、連設部46からスリット42の後端縁部までの長さを前後延在長Eとすると、この前後延在長Eは少なくとも折曲高さFより大きく設定されている(E>F)。このように寸法設定すると、支持リブ26が倒伏的に姿勢変位する際に、該支持リブ26の頂部が開口部34の端縁に接触することがなくなり、支持リブ26がダクト本体20の外方へ退避することが許容される。
前述のように構成された実施例の車両吸気ダクトDは、図1および図4に示したように、エンジンルーム12内に設置したエアクリーナーACへ連結部32を連結させると共に、取付片部30,30へ挿通させたボルトBL,BLをラジエターサポート16の上面へ締結させることで、エンジンルーム12の前側部分に配設される。そして、エンジンフード14を車体10へ閉成させた際には、ラジエターサポート16とエンジンフード14との間の間隙Sにダクト本体20の前側部分が臨み、この前側部分に設けた空気取込口22が前方へ開口するようになる。なお支持リブ26は、図4に示すように、ラジエターサポート16の上面から外れて後側に位置している。また、連設部46を交差するように設けた変形調節部50の内側膨出部52は、下壁部分20Bからダクト本体20の内側へ突出しているので、ラジエターサポート16の上面と下壁部分20Bの外面とは密着的に当接している。
このような実施例の車両吸気ダクトDは、エンジンEGの駆動に伴う吸気量増加によりダクト本体20内が負圧となったり、エンジンルーム12内の温度上昇に伴って該ダクト本体20が軟化した場合では、支持リブ26が上方から押圧されても変形調節部50により連設部46が折曲変形せず、支持リブ26は倒伏的に姿勢変位しない。従って通常の使用状態では、常に支持リブ26が起立姿勢に保持されるので、上壁部分20Aおよび下壁部分20Bの陥凹的な変形が殆ど発生せず、空気取込口22の開口面積が減少する不都合も好適に防止される。
そして、歩行者がエンジンフード14に激突して該エンジンフード14が陥凹的に変形し、上壁部分20Aを前方斜め上方から押圧する外力がダクト本体20に加わった場合には、図5に示すように、支持リブ26に対して通常の使用状態よりも大きな外力が加わるので、変形調節部50が撓曲的に変形して連設部46が折曲変形する。これにより、支持リブ26がダクト本体20の奥側(後方)へ倒伏的に姿勢変位し、これに伴って上壁部分20Aの陥凹的な変形が許容されるので、ダクト本体20が圧潰的に変形する。
そして、倒伏的に姿勢変位した支持リブ26が開口部34を介してダクト本体20の外方へ退避することで、上壁部分20Aが下壁部分20Bへ接触する程度までの圧潰的な変位が許容されるようになるから、エンジンフード14の陥凹的な変形を阻害することがなくなる。従って、ダクト本体20の圧潰的な変形およびエンジンフード14の陥凹的な変形が円滑に進行し、エンジンフード14の衝撃吸収性能を最大限に発揮させることが可能である。
以上のように構成した実施例に係る車両吸気ダクトDでは、次のような作用効果を奏する。上壁部分20Aを押圧する外力がダクト本体20に加わった場合に、連設部46が折曲変形することで支持リブ26が倒伏的に姿勢変位し、該ダクト本体20の圧潰的な変形が発現する。そして、連設部46に設けた変形調節部50により、連設部46を折曲変形させる変形荷重の調節が可能であり、外力によるダクト本体20の圧潰的な変形の発現を調節し得る。また、変形調節部50と支持リブ26とを連設したので、これら支持リブ26と変形調節部50との間の部分が強度的に弱くならない。
そして、変形調節部50の内側膨出部52は、下壁部分20Bの厚さCと同一の厚さRに形成してあり、該下壁部分20Bの肉厚を大きくしていないので、該変形調節部50を設けたことによるダクト本体20の重量増加を回避しながら、連設部46を折曲変形する変形荷重の調節を図り得る。また変形調節部50は、ダクト本体20の成形と同時に該ダクト本体20に形成されるので、該変形調節部50を設けることによる製造コストのアップも殆どない。更に変形調節部50は、内側膨出部52の寸法(突出長L、突出幅W、突出高H、厚さR)を調整することで、連設部46の折曲変形に係る変形荷重の増減調節を行なうことができる。更にまた、変形調節部50の内側膨出部52がダクト本体20内へ突出していて、該ダクト本体20の外側には変形調節部50を設けたことによる突出部が形成されないので、車両吸気ダクトDを車体10に配設するに際してダクト本体20の前側部分をラジエターサポート16の上面に密着させる際に支障とならない。
(変更例1)
図6は、変更例1に係る車両吸気ダクトDに設けた支持リブ26およびその周辺部を示した部分斜視図である。変更例1の車両吸気ダクトDは、下壁部分20Bからダクト本体20の外側へ突出した変形調節部50を、支持リブ26の外周片部から下壁部分20Bに亘り連設部46を交差するよう延設してある。すなわち変形調節部50は、図6(a)〜図6(c)に示すように、下壁部分20Bの外面から突出長L、突出幅W、突出高Hで直線状に突出し、かつ幅方向における縦断面形状が略半円状に突出した外側膨出部56であり、下壁部分20Bに一体的に形成されている。また、下壁部分20Bの外側膨出部56に対応した内面には、該外側膨出部56側へ陥凹した線状陥凹部58が、該外側膨出部56に沿って形成されている。従って、変形調節部50を構成する外側膨出部56の厚さRは、下壁部分20Bの厚さCと同一となっている。
これにより変更例1の車両吸気ダクトDは、連設部46が折曲変形する際には、外側膨出部56の該連設部46に臨む部位が撓曲的に変形する必要がある。従って、外側膨出部56からなる変形調節部50を設けた連設部46を折曲変形させる変形荷重は、該変形調節部50を設けない場合よりも大きくなり、実施例の車両吸気ダクトDと同等の作用効果を奏する。なお、変更例1の車両吸気ダクトDは、変形調節部50の外側膨出部56がダクト本体20の外側へ突出していて、該ダクト本体20の内側には変形調節部50を設けたことによる突出部が形成されない利点がある。
(変更例2)
図7は、変更例2に係る車両吸気ダクトDに設けた支持リブ26およびその周辺部を示した部分斜視図である。変更例2の車両吸気ダクトDにおける変形調節部50は、下壁部分20Bからダクト本体20の内側へ突出した複数(変更例2では2本)の内側膨出部52を、支持リブ26から下壁部分20Bに亘り連設部46を交差するよう並列的に延設して構成されている。変形調節部50を設けて連設部46を折曲変形させる変形荷重を増加させる場合は、単一の内側膨出部52で対応しようとすると該内側膨出部52のサイズ(突出高H)が大きくなる。しかし、複数の内側膨出部52から構成される変形調節部50では、各内側膨出部52の突出高Hを大きくすることなく、連設部46を折曲変形させる変形荷重を増加させ得る。しかも、各内側膨出部52の厚さRを下壁部分20Bと同一にすれば、ダクト本体20の重量が殆ど増加することもない。よって、変更例2に係る車両吸気ダクトDは、前述した実施例および各変更例の各車両吸気ダクトDと同等の作用効果を奏すると共に、更には変形荷重の増加に好適に対応し得る。
(変更例3)
図8は、変更例3に係る車両吸気ダクトDに設けた支持リブ26およびその周辺部を示した部分斜視図である。変更例3の車両吸気ダクトDにおける変形調節部50は、下壁部分20Bからダクト本体20の外側へ突出した複数(変更例2では2本)の外側膨出部56を、支持リブ26から下壁部分20Bに亘り連設部46を交差するよう並列的に延設して構成されている。複数の外側膨出部56から構成される変形調節部50では、各外側膨出部56のサイズを、前述した変更例1の変形調節部50の内側膨出部52と同等サイズとすることで、連設部46を折曲変形させる変形荷重を増加させ得る。しかも、各外側膨出部56の厚さRを下壁部分20Bと同一にすれば、ダクト本体20の重量が殆ど増加することもない。よって、変更例3に係る車両吸気ダクトDは、前述した実施例および各変更例の各車両吸気ダクトDと同等の作用効果を奏すると共に、更には変形荷重の増加に好適に対応し得る。
(変更例4)
図9は、変更例4に係る車両吸気ダクトDに設けた支持リブ26およびその周辺部を示した部分斜視図である。変更例4の車両吸気ダクトDにおける変形調節部50は、下壁部分20Bからダクト本体20の内側へ突出した内側突出リブ60を、支持リブ26から下壁部分20Bに亘り連設部46を交差するよう延設したものである。すなわち、変形調節部50の内側突出リブ60は、下壁部分20Bの内面から突出長L、突出幅W、突出高Hで直線状に突出し、下壁部分20Bに一体的に形成されている。従って、変更例4の車両吸気ダクトDにおいても、連設部46が折曲変形するに際して内側突出リブ60が折曲的に変形するため、該連設部46を折曲変形させる変形荷重を増加させ得る。よって、変更例4に係る車両吸気ダクトDは、前述した実施例および各変更例の各車両吸気ダクトDと同等の作用効果を奏する。更に変更例4では、ダクト本体20の重量が僅かに増加するものの、図9(b)に示すように、下壁部分20Bの変形調節部50を設けた部分に対応するダクト本体20の外面部分が平坦となるので、ダクト本体20の外形形状を、内側突出リブ60を設けない場合の外面形状と同一とし得る利点がある。
(変更例5)
図10は、変更例5に係る車両吸気ダクトDに設けた支持リブ26およびその周辺部を示した部分斜視図である。変更例5の車両吸気ダクトDにおける変形調節部50は、下壁部分20Bからダクト本体20の外側へ突出した複数(変更例2では2本)の外側突出リブ62を、支持リブ26から下壁部分20Bに亘り連設部46を交差するよう並列的に延設して構成されている。複数の外側突出リブ62から構成される変形調節部50では、各外側突出リブ62のサイズを大きくすることなく、連設部46を折曲変形させる変形荷重を増加させ得る。よって、変更例5に係る車両吸気ダクトDは、前述した実施例および各変更例の各車両吸気ダクトDと同等の作用効果を奏する。更に変更例5では、ダクト本体20の重量が僅かに増加するものの、図10に示すように、下壁部分20Bの変形調節部50を設けた部分に対応するダクト本体20の内面部分が平坦となるので、ダクト本体20の内面形状を、外側突出リブ62を設けない場合の内面形状と同一とし得る利点がある。
変更例2では、2つの内側膨出部52から構成された変形調節部50を例示したが、内側膨出部52は3つまたはそれ以上であってもよい。また変更例2では、各内側膨出部52を並列的かつ平行に形成した場合を例示したが、各内側膨出部52の延設方向は平行でなくてもよい。同様に変更例3では、2つの外側膨出部56から構成された変形調節部50を例示したが、外側膨出部56は3本またはそれ以上であってもよい。また変更例3では、各外側膨出部56を並列的かつ平行に形成した場合を例示したが、各外側膨出部56の延設方向は平行でなくてもよい。
変更例4では、1つの内側突出リブ60から構成される変形調節部50を例示したが、変更例3の如く、複数の内側突出リブ60を並列的に形成するようにしてもよい。また変更例5では、2つの外側突出リブ62から構成される変形調節部50を例示したが、1つの外側突出リブ62から構成するようにしてもよい。
また図示省略するが、内側膨出部52および外側膨出部56を並列的に形成して変形調節部50を構成するようにしてもよい。
実施例および各変更例では、折曲変形する連設部46を支持リブ26の前縁側に位置させ、該支持リブ26が後方側へ倒伏的に姿勢変位する態様とを例示したが、この支持リブ26の姿勢変位に係る態様はこれに限定されるものではない。例えば、連設部46を支持リブ26の後縁部側に位置させ、該支持リブ26を前方側へ倒伏的に姿勢変位させる態様も実施可能である。更には、連設部46を支持リブ26の左側縁部または右側縁部に位置させて、該支持リブ26を右方向または左方向へ倒伏的に姿勢変位させる態様も実施可能である。
実施例および各変更例では、スリット42からなる分割部40を例示したが、この分割部40はスリット以外でもよい。すなわち分割部40は、支持リブ26に所定以上の外力が加わった際に破断する有底溝として、実施例のスリット42と同じく、支持リブ26の周囲三方を囲んで連続し、該分割部40の両方の端部40A,40Aを結ぶ端部ラインHLが、支持リブ26を外れた位置を通るように延設してもよい。ここで、所定以上の外力とは、前述した(1)または(2)の通常の使用状態において支持リブ26に加わる押圧力以上の力である。
また分割部40は、前述したスリット42や有底溝等のように支持リブ26の周囲三方を囲むように連続する形態の他に、例えば下壁部分20Bを貫通する多数の微小通孔または該下壁部分20Bを貫通しない多数の微小有底孔を、支持リブ26の周囲三方を囲むように所要間隔毎に配列したミシン目状としてもよい。このようなミシン目状の形態でも分割部40の脆弱化が図られ、支持リブ26に所定以上の外力が加わった際には、該分割部40が破断するようになる。
実施例では、1つの支持リブ26を設けた場合を例示したが、この支持リブ26は、ダクト本体20の幅方向および/または長さ方向へ2つまたはそれ以上設けてもよい。この場合、各々の支持リブ26の周辺部に分割部40を設けるようにすれば、各々の支持リブ26がスムーズに姿勢変位するようになり、ダクト本体20の圧潰的な変形を実現するようになる。
実施例の車両吸気ダクトを車体前方に取り付けた状態を示した一部破断斜視図である。 (a)は、実施例の車両吸気ダクトにおけるダクト本体に設けた支持リブ、分割部、連設部および変形調節部を示した部分斜視図であり、(b)は、(a)のIIb−IIb線断面図であり、(c)は、(a)のIIc−IIc線断面図である。 (a)は、連設部に変形調節部を設けた場合に、該連設部が折曲変形する際の応力分布状態を示した説明図であり、(b)は、連設部に変形調節部を設けない場合に、該連設部が折曲変形する際の応力分布状態を示した説明図である。 実施例の車両吸気ダクトを車両前方に取り付けた状態を、エンジンフードの変形前状態で示した側断面図である。 エンジンフードの変形による外力が支持リブに作用することで該支持リブが倒伏的に姿勢変位し、ダクト本体が圧潰的に変形した状態を示した側断面図である。 (a)は、変更例1の車両吸気ダクトにおけるダクト本体に設けた支持リブ、分割部、連設部および変形調節部を示した部分斜視図であり、(b)は、(a)のVIb−VIb線断面図であり、(c)は、(a)のVIc−VIc線断面図である。 (a)は、変更例2の車両吸気ダクトにおけるダクト本体に設けた支持リブ、分割部、連設部および変形調節部を示した部分斜視図であり、(b)は、(a)のVIIb−VIIb線断面図である。 変更例3の車両吸気ダクトにおけるダクト本体に設けた支持リブ、分割部および変形調節部を示した部分断面図である。 (a)は、変更例4の車両吸気ダクトにおけるダクト本体に設けた支持リブ、分割部、連設部および変形調節部を示した部分斜視図であり、(b)は、(a)のIXb−IXb線断面図である。 変更例5の車両吸気ダクトにおけるダクト本体に設けた支持リブ、分割部および変形調節部を示した部分断面図である。 車両におけるエンジンルーム内を略示した斜視図である。 図11のXII−XII線断面図である。 図11に例示した従来の車両吸気ダクトの一部破断斜視図である。 図13に例示した従来の車両吸気ダクトを車両前方に組み付けた状態を、エンジンフードの変形前状態で示した側断面図である。 図13に例示した従来の車両吸気ダクトを車両前方に組み付けた状態を、エンジンフードの変形に伴う外力が加わった状態で示した側断面図である。
符号の説明
20 ダクト本体,20A 上壁部分(第1壁部),20B 下壁部分(第2壁部)
26 支持リブ(支持部),28 外周片部,40 分割部,40A 端部,42 スリット,
46 連設部50 変形調節部,C 厚さ,R 厚さ,HL 端部ライン

Claims (3)

  1. 互いに対向してダクト本体をなす第1壁部および第2壁部と、前記第2壁部から前記ダクト本体内へ突出して前記第1壁部を内側から支持する支持部とを備える車両吸気ダクトにおいて、
    前記支持部の周囲四方のうちの三方を囲んで連続的に延在するように前記第2壁部に貫通形成されたスリットからなり、該スリットの両方の端部を結ぶ直線状の端部ラインが前記支持部を外れた位置を通るように該第2壁部に設けられた分部と、
    前記第2壁部において前記スリットの両方の端部間に前記端部ラインに沿って延在し、該第2壁部におけるスリットで周囲三方が囲われた外周片部の姿勢変位を許容するように折曲変形可能な連設部と、
    前記外周片部から前記端部ラインを越えて延在して前記連設部に交差するように前記第2壁部に設けられ、ダクト本体内側またはダクト本体外側に突出する変形調節部とを備えた
    ことを特徴とする車両吸気ダクト。
  2. 前記変形調節部は、前記支持部に連設されている請求項1記載の車両吸気ダクト。
  3. 前記変形調節部は、前記第2壁部からダクト本体内側へ前記支持部より低く突出し、該第2壁部に一体的に形成されている請求項1または2記載の車両吸気ダクト。
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