(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1の回路図である。車載用のバッテリー等よりなる直流電源1と、直流電源1の電圧を昇降圧させるDC−DCコンバータ2と、昇降圧された直流電圧を矩形波に変換するDC−ACコンバータ3と、始動時に放電灯をブレイクダウンさせるためのパルスを発生させるために高電圧を発生させる高電圧回路4と、この高電圧を受けて放電灯をブレイクダウンさせるためのパルスを発生させると共にDC−ACコンバータ3の出力電力を放電灯に与えるイグナイタ回路5と、DC−DCコンバータ2とDC−ACコンバータ3を制御する制御回路6及びマイコン7と、車両用前照灯となるHIDランプ等よりなる放電灯10から構成されている。
以下、それぞれの構成について説明する。まず、負荷である放電灯10に電力を与える電力変換装置30の構成について説明する。
DC−DCコンバータ2は、スイッチング素子2aとトランス2bと整流用のダイオード2cと平滑用のコンデンサ2dとから構成されている。スイッチング素子2aはMOSFET等よりなり、制御回路6のPWM制御信号により所定の周波数、所定のパルス幅でON・OFF駆動される。スイッチング素子2aのパルス幅をPWM制御することで、コンデンサ2dの出力電圧V2を昇降圧制御することができる。トランス2bは、1次、2次巻線構成になっていて、2次巻線は1次巻線に対して負電位出力になっている。なお、ここでは、フライバック型の昇降圧タイプのDC−DCコンバータを用いているが、DC−DCコンバータで昇降圧タイプのものであれば、他の回路構成でも構わない。
DC−ACコンバータ3は、4個のスイッチング素子によりフルブリッジ回路を構成したものであり、制御回路6のドライバ6dの出力により対角方向の2個のスイッチング素子をON、対角方向の他方の2個のスイッチング素子をOFFさせることにより、DC−DCコンバータ2の直流出力電圧を低周波の矩形波電圧に変換して出力するものである。
高電圧回路4は、DC−DCコンバータ2のトランス2bの2次巻線の出力をコッククロフト回路で整流・平滑することで高電圧を得ているが、要するに、始動時に放電灯をブレイクダウンさせるためのパルスを発生させるために高電圧を発生させる回路であれば、別の回路構成を用いても良い。
イグナイタ回路5は、高電圧パルス発生用のパルストランス5aと、放電ギャップ5bと、高電圧パルス発生用のコンデンサ5cとから構成されている。無負荷時にイグナイタ回路5により高電圧パルスを発生させ、放電灯をブレイクダウンして点灯させる。具体的には、コンデンサ5cに溜められる電荷を放電ギャップ5bでショートするときに発生するトランス5aの1次側のエネルギをトランス5aの2次側から放電灯10に高電圧のパルスとして印加させる。このイグナイタ回路5は放電灯が放電を開始した後は動作を停止する。なお、イグナイタ回路5の構成は図示された回路構成に限定されるものではなく、要するに無負荷時に放電灯をブレイクダウンして点灯させるための高電圧パルスを発生させることができれば良い。
高輝度放電灯が点灯していない状態から、点灯装置30にコネクタ31を介して直流電源1から電力が供給されるとDC−DCコンバータ2は動作を開始する。最初、高輝度放電灯10は放電をしていない状態である。DC−DCコンバータ2から高電圧回路4を通して高電圧を供給し、それを受けてイグナイタ回路5は高電圧パルスを発生させる。イグナイタ回路5によって高電圧パルスを発生し、高輝度放電灯10の電極間を絶縁破壊させて放電を開始する。
放電灯10は車両用前照灯の放電灯であり、D1,D2,D3,D4タイプの放電灯は始動する前に電極間に約400V前後の電圧を加えてから高電圧パルスを印加して電極間の放電を開始させる。
6は制御回路であり、7はマイコンである。制御回路6の機能はハードウェアにより実現されており、マイコン7の機能はソフトウェアにより実現されているが、制御回路6の機能の一部をソフトウェアで実現しても良いし、マイコン7の機能の一部をハードウェアで実現しても良い。
制御回路6は、電源電圧を検出する電圧検出回路6a、DC−DCコンバータ2の出力電圧検出用のオペアンプ6b、出力電流検出用のオペアンプ6c、DC−ACコンバータ3のフルブリッジ回路を構成する各スイッチング素子を制御するためのDC−ACコンバータドライバ6d、DC−DCコンバータ2のスイッチング素子2aを制御するためのPWM制御回路(6e〜6h)などを備えている。
6aはDC−DCコンバータ2の入力電圧V1を検出するための検出回路である。この検出回路6aは、抵抗分圧回路などで構成できる。直流電源1から電力が供給されると、電圧検出回路6aにより検出される電源電圧が点灯可能電圧に達したことをマイコン7が判断し、DC−DCコンバータ2とDC−ACコンバータ3と高電圧回路4を動作開始させる。
6bはDC−DCコンバータ2の出力電圧検出用のオペアンプであり、例えば、コンデンサ2dの端子電圧を分圧抵抗により分圧したものを反転増幅することで、DC−DCコンバータ2の出力電圧V2を検出している。DC−DCコンバータ2の出力電圧はグランドレベルに対して出力が負電位なので、分圧抵抗とオペアンプ6bによって−1/100倍に電圧変換してマイコン7に入力すれば、ちょうど0〜5Vの間で検出が可能になる。
6cは出力電流検出用のオペアンプであり、DC−DCコンバータ2の出力電流を検出してマイコン7に入力している。点灯時には、DC−DCコンバータ2の出力電流I2により実質的に放電灯電流Ilaを検出する。また、DC−DCコンバータ2の出力電圧V2により、実質的に放電灯電圧Vlaを検出する。さらに、これらの検出値IlaとVlaに基づいてマイコン7の演算機能により放電灯電力Wla(=Ila×Vla)を検出できるようになっている。安定点灯を維持するために、動作中は放電灯電圧Vlaと放電灯電流Ilaを絶えず検出してフィードバックして安定点灯させている。ただし、極性反転直後は直前の検出値をサンプルホールドして用いることもある。
6dはDC−ACコンバータドライバで、最近は、DC−ACコンバータとドライバを内蔵しているハイブリッドICも開発されているため、それを用いても動作可能であるし、ハーフブリッジ用のハイサイドドライバICなどを用いるのもひとつの方法である。IR製のハーフブリッジドライバIR2111を2個もしくはPhilips製UBA2032TSを1個用いることによってフルフリッジのドライブをすることが可能である。
6e,6f,6g,6hはPWM信号生成回路で、6eはAND回路、6fはラッチ回路、6gはコンパレータ、6hは電流検出回路である。マイコン7のDC−DCコンバータ高周波信号制御部7gからは、周波数固定のオン信号が出力される。このオン信号は、ラッチ回路6fのセット入力端子Sにも入力される。これにより、ラッチ回路6fの出力QがHighになる。AND回路6eにはDC−DCコンバータ高周波信号制御部7gからのオン信号と、ラッチ回路6fの出力Qとが入力されて、出力がHighになり、DC−DCコンバータ2のスイッチング素子2aをオンにする。
スイッチング素子2aがオンになると、トランス2bの1次側に電流が流れ、電流検出回路6hにはトランス2bの1次側に流れる三角波(鋸歯状波)が発生する。この電流検出回路6hはDC−DCコンバータ2の1次側電流信号を検出し、スイッチング電流波形と相似した鋸歯状波の電圧信号を出力する検出回路であり、トランス2bの1次側のスイッチング素子2aのFETがオンしているときのドレイン・ソース間抵抗Rds(ON)による電圧降下を検出する構成でも構わないが、NEC製μPC1555などを用いて発生させた三角波や鋸歯状波を出力するものでも構わない。
電流検出回路6hから出力された三角波(鋸歯状波)はコンパレータ6gに入力される。コンパレータ6gでは、マイコン7のDC−DCコンバータ出力指令値設定部7fの出力と、電流検出回路6hから出力された三角波(鋸歯状波)とを比較して、三角波(鋸歯状波)の方が高くなったら、ラッチ回路6fのリセット入力端子RにHigh信号を出力し、ラッチ回路6fをリセットする。ラッチ回路6fがリセットされると、AND回路6eの出力もLowになり、DC−DCコンバータ2のスイッチング素子2aはオフになる。DC−DCコンバータ1次側の電流が遮断されると、電流検出回路6hから出力される三角波(鋸歯状波)信号もゼロになる。これにより、コンパレータ6gの出力はLowになるので、ラッチ回路6fのリセット入力端子RはLowレベルに戻るが、ラッチ回路6fの出力Qは、次にマイコン7からセット入力端子SにLow→Highに変化する信号が入力されるまで、Lowを維持する。
回路構成上、マイコン7のDC−DCコンバータ高周波信号制御部7gの信号はAND回路6eに接続されているので、マイコン7からの信号によって直接オン・オフすることが可能になる。このような構成であれば、常にマイコン7によってスイッチング素子2aのオン・オフを設定することが可能になる。
次に、マイコン7による制御の内容について説明する。図1の回路図では、マイコン7の処理内容を機能的にブロック化して図示しているが、実際には、プログラムによりシーケンシャルに個々の機能が実行される。
7aは電源電圧監視用のA/D変換部であり、DC−DCコンバータ2の入力電圧を抵抗分圧したアナログ電圧をデジタル値に変換して入力する。このデジタル値が所定の電圧範囲内(例えば、9〜16V)であれば、点灯可能と判断する。
7bは放電灯電圧監視用のA/D変換部であり、DC−DCコンバータ2の出力電圧検出用のオペアンプ6bから出力されるアナログ電圧を受けて、これをデジタル値に変換する。
7cは放電灯電流監視用のA/D変換部であり、DC−DCコンバータ2の出力電流検出用のオペアンプ6cから出力されるアナログ電圧を受けて、これをデジタル値に変換する。
なお、各A/D変換部7a,7b,7cは、1つのA/D変換器を複数のアナログ入力ポートに対して時分割的に振り分けて使用しても良い。
7gはDC−DCコンバータ高周波信号制御部であり、所定周波数(数十KHz〜数百KHz)の矩形波信号よりなる駆動信号を出力している。この駆動信号により、DC−DCコンバータ2のスイッチング周波数が決定される。
また、DC−ACコンバータ3の極性反転動作を制御するために、マイコン7には、DC−ACコンバータ低周波信号制御部7dを設けてあり、対角方向の2個のスイッチング素子をON、対角方向の他方の2個のスイッチング素子をOFFさせることにより、DC−DCコンバータ2の直流出力電圧を低周波の矩形波電圧に変換して出力するためのフルブリッジインバータ制御用の2信号を出力している。このフルブリッジインバータ制御用の2信号は、上述のDC−ACコンバータドライバ6dへ出力され、このドライバ6dからフルブリッジインバータの4個のスイッチング素子へドライブ信号が出力されている。
点灯直後は、DC−ACコンバータ3の極性反転の周波数が低いDCフェーズと呼ばれる動作を行い、矩形波出力であっても半周期(直流動作時間)を長く設定することによって電極が温められて、電極の消耗を少なくすることによって電極寿命を長くさせるように動作する。また、点灯直後は放電灯の管温度が低いため、車両用として利用するために光束立ち上げを早めて、光の出力を早く立ち上げるための制御を行っている。
具体的には、放電を開始したら、初期光量を急速に立ち上げるために大電力を与えており、安定電力35Wより高い最大75Wの電力を数秒間印加する。高輝度放電灯10は大電力を与えているにもかかわらず、最初の放電灯電圧は低い。安定するにつれて放電灯電圧は高くなっていく。通常、1分から2分ぐらい経過すると、放電灯電圧はある程度安定する。点灯装置は安定点灯状態に至るまで光の立上りを早めるために出力電力を高い電力から低い電力に徐々に変化させていく。安定点灯状態になったときには、定格出力電力に設定されて、制御部はその電力を出力するようにコントロールされる。
7eは電力指令値演算部であり、点灯してからの経過時間と前回消灯してからの経過時間をカウントしながら放電灯10の状態に適した電力指令値を目標値として設定し、放電灯電圧・電流監視用のA/D変換部7b、7cから入力された現状の放電灯電圧、放電灯電流を参照しながら、フィードバック制御により電力指令値を演算出力する。また、放電灯10の状況からDC−ACコンバータ低周波信号制御部7dに極性反転の出力指令を与える。
7fはDC−DCコンバータ出力指令値設定部であり、出力指令値をD/A変換して、コンパレータ6gに基準電圧として出力する。
ここで、電力指令値演算部7eの詳細な構成を図2、図3に示す。図2は従来の構成であり、図3は本発明の構成である。マイコン7による動作については図5、図6、図7、図8のフローチャートにて説明する。
図2の電力指令値演算部7eの構成について説明する。タイマー7e1は放電灯が点灯してからの点灯時間をカウントしている。そのために、電源電圧監視用のA/D変換部7aの出力により電源が投入されたかを判定し、また、放電灯電圧監視用のA/D変換部7bの出力により放電灯電圧を監視することにより、放電灯が点灯したかどうかを判別している。タイマー7e1で得られた点灯時間の情報を電力指令値変換部7e2に送り、点灯時間に応じた電力指令値を設定し、基準電流演算部7e3に送る。基準電流演算部7e3では、電力指令値を放電灯電圧値で割って、基準電流を作成して、誤差検出部7e4に送る。誤差検出部7e4は、放電灯電流監視用のA/D変換部7cで得られた放電灯電流と、基準電流演算部7e3から出力される基準電流との差分を誤差信号として出力する。DC−DCコンバータ出力指令値設定部7fでは、誤差信号の値に応じて、コンパレータ6gにアナログ出力を設定する。
図3の電力指令値演算部7eの構成について説明する。図3の構成では、図2の構成に比ベて、立消え防止部7e5が追加されている。立消え防止部7e5では、タイマー7e1から放電灯点灯時間のデータを取得し、放電灯電圧監視用のA/D変換部7aより放電灯電圧の値を取得し、放電灯電流監視用のA/D変換部7cから放電灯電流の値を取得している。タイマー7e1の点灯時間データに基づいて安定点灯状態であることを確認し、また、放電灯電圧もしくは放電灯電流を監視して、所定の値の信号が入ったときに、電力指令値変換部7e2に送り、電力指令値変換部7e2は、立ち消え防止部7e5より送られた情報に基づき電力指令値を高く設定する。
例えば、放電灯電圧を監視する場合について図4を用いて説明する。図4の(a)は安定点灯状態における放電灯電圧、(b)は安定点灯状態における電力指令値である。点灯時間が経過するにつれて、電極が消耗し、電極間距離が広がることにより、寿命末期に近づくにつれて、安定点灯状態の放電灯電圧は高くなる。安定点灯状態の放電灯電圧が所定の電圧閾値を越えると、安定点灯状態における電力指令値を高くする。これにより、放電灯に注入される電力が増大するから、電極ロスも増加し、電極温度が上昇する。電極温度が上昇すると、電子の放射効率が改善され、点灯維持能力が改善される。これにより立ち消えを防止できる。
安定点灯状態か否かの判断は、上述のように、マイコンのタイマー機能を用いて点灯してからの経過時間を計測することによって判断できる。無水銀タイプのD4規格またはD3規格のランプでは、35Wの定格電力のもので、およそ40〜45Vで安定する。水銀を含むD1規格またはD2規格のランプにくらべ、およそ半分の電圧である。
点灯時間が経過するにつれて電極が消耗され、放電長が長くなり、放電灯電圧も高くなる。寿命末期のランプの電圧はまちまちであるが、無水銀タイプのD4規格またはD3規格のランプでは、およそ50V強ぐらいで寿命末期に近くなる。
電極の消耗が進むと立ち消えが起きやすくなる。DC−ACコンバータ3によって矩形波点灯しているため、電流が2つの電極に対して交互に極性が反転するように流れている。点灯しづらくなるのは一方の極性に集中する傾向にある。その状態では、極性反転後に小規模な立ち消えが発生する。
この場合、放電灯電流はゼロに近づき、放電灯電圧が高くなる。放電灯電圧が高い状態が維持され続けると立ち消えてしまう。立ち消えが数マイクロ秒であれば問題ないが、矩形波点灯周波数は凡そ300〜1000Hzのため、半周期で1〜1.6msなので、数百マイクロ秒も休止が続くと出力電圧も高くなる。
このような極性反転後の立ち消えは、すぐに目に見える立ち消えにはならないが、極性反転時に流れる電流の交互の極性で発生し始めると目に見える立ち消えに至りやすくなる。
そこで、DC−ACコンバータ3の出力極性の切り替えで決まる放電灯に流れる電流の2方向のうち、どちらかもしくは両方に立ち消えが発生しつつある場合には、出力電力の指令値を定格出力電力の設定値よりも高く設定することによって点灯を維持することが可能になる。
すなわち、点灯維持性能を高めるためには、電極からの熱電子放射を促進することが有効であり、単純に電極の温度を上げることが必要になる。温度を上げるためには出力電力を増加して電極温度を高くすることが有効である。
以上のように、安定点灯時に放電灯電圧が高くなった場合に出力電力を、定格出力電力に近い範囲で少し高く設定することによって熱電子を放出させやすくなり、点灯維持性能が高くなる。
なお、点灯時間(使用時間)が短く、立ち消えが起きにくい放電灯(新品のランプなど)については通常の定格電力で点灯維持することによって、過剰な電力を注入することがなく、これによりトータルの寿命も長くなる。
以上の説明では、動作の概要をブロック図で示したが、ソフト上で詳細に動作を明確にする。
図5は、マイコン7の動作を示すフローチャートである。基本的に、初期設定ブロック、無負荷ブロック、点灯ブロック(異常処理ブロックを含む)からなる。
まず、初期設定ブロックについて説明する。処理20a0では、リセット信号が入力され、メモリクリア、ポートの設定等、マイコンの基本的な初期設定を行う。処理20a1では、電源電圧V1の判定をして、始動可能かどうかを確認する。電源電圧V1は例えば抵抗分圧によってマイコン7のA/D変換ポートに入力することによって検出可能であり、抵抗分圧された電源電圧V1をマイコンのA/D変換機能によってデジタル値に変換した後、マイコンの比較演算機能により始動可能下限電圧(例えば9V)、始動可能上限電圧(例えば16V)との大小関係を比較判定することにより始動可能か否かを判定する。ここでは、9≦V1≦16であれば「始動可能」と判定され、始動時間をカウントするタイマT1をカウントし始める(20a2)。
次に、無負荷ブロックについて説明する。図6に無負荷ブロックの詳細を示してある。
処理20a3では、点灯する前の無負荷出力動作の設定をする。具体的には、DC−DCコンバータ2の出力電圧V2を無負荷二次電圧(例えば、400V程度)となるように電圧を立ち上げる設定をすると共に、DC−ACコンバータ3の極性反転周期を無負荷時に適した長い周期(または極性反転しない一定の電圧極性)に設定する。
処理20a4では、無負荷動作時間を監視する。つまり、初期設定ブロックの処理20a2でカウントし始めたタイマT1のカウント値が1秒以上となっているか否かを判定する。タイマT1のカウント値が1秒未満であれば、処理20a5に移行して無負荷動作を継続する。また、無負荷動作を開始してから1秒以上が経過すると、処理20a4から処理20a27へ移行して、永久停止する。
処理20a5では、無負荷動作として出力電圧V2が上昇しているかどうかを確認する。これは点灯前に放電灯電極に高電圧(400V程度)が印加されてから、パルス印加によってブレイクダウンして電圧V2が(数十V程度に)下がることになるため、まず、電圧V2が上がるかを確認する必要があるため設けられている。本当にオープン状態であればすぐに電圧V2が上昇する。これを検出するには、例えば、抵抗分圧を経てオペアンプ6bにより検出されたDC−DCコンバータ2の出力電圧V2をマイコン7のA/D変換機能によりデジタル値に変換し、400[V]以上か否かを判定する。出力電圧V2が400[V]未満であれば、処理20a5から処理20a3に戻って、無負荷動作を継続する。処理20a4,20a5はループになっていて、電圧V2が上がらないまま1秒が経過すると、タイムアウトで停止する。処理20a5で出力電圧V2が400[V]以上になれば、放電灯電極に高電圧が印加されていると考えられるから、処理20a6に移行する。
無負荷二次電圧が上昇したら、放電灯がブレイクダウンをしたかどうかを、以下の処理にて判断する。
処理20a6は、無負荷二次電圧が400Vになった以降の出力設定をする。処理20a3の出力設定と同じでも構わない。
処理20a7は、無負荷動作時間の監視である。始動してから1秒後にまだオープン状態であれば、永久停止20a27へジャンプする。
処理20a8では、パルス印加によって放電灯がブレイクダウンして電圧が下がり、点灯したことを確認する。出力電圧V2が220[V]以下になれば、放電灯は点灯したと判断して、次の点灯ブロックに移行する。一方、放電灯が点灯しない(出力電圧V2>220[V])のときは、処理20a8から処理20a6に戻って、無負荷動作を継続する。処理20a7,20a8はループになっていて、無負荷動作を開始してから1秒経過後にまだ出力電圧V2が220[V]より高ければ、タイムアウトで停止する。無負荷動作を開始してから1秒以内に点灯したら、点灯ブロックへ移行する。
図5に戻って、点灯ブロックでは、処理20a10で点灯タイマT2をカウント開始し、その後は、処理20a11〜処理20a16の点灯ループを繰り返す。
処理20a10では、点灯を開始したとき、点灯時間をカウントするタイマT2のカウントを開始する。安定点灯状態となる時間までカウントを継続し、安定点灯状態に達したときにはカウントを停止する。
処理20a11の点灯出力動作では、点灯時の出力電力を設定する。具体的には、検出されたDC−DCコンバータ2の出力電圧V2と出力電流より基準となる電力を演算し、図1のDC−DCコンバータ出力指令値設定部7fより出力指令値を出力する。ここでの出力電力の設定は、点灯タイマT2の計測時間に応じて始動初期には安定出力電力WLAよりも出力電力を増加させて光束の立上りを促進する処理をする。また、安定点灯状態では所定の安定出力電力WLAとなるように制御する。さらに、後述の安定点灯時出力電力アップのフラグが設定されている場合、ここで安定出力電力WLAを増加させて、出力電力を増加させる。
処理20a12では、低周波反転の判定を行う。所定の時間を経過した場合に極性反転処理に移行する。低周波経過時間タイマの計測時間を判定して所定の時間が経過していれば、処理20a16ヘ分岐する。経過していなければ、処理20a13ヘ分岐する。
処理20a16ではDC−ACコンバータ3の出力極性を反転させると共に、S&Hタイマをリセットする。この処理20a16は各極性反転時に1回だけ実行する。
処理20a13のS&Hタイマは、極性反転直後の電圧・電流の計測値をサンプルホールド(S&H)する時間を計測するためのS&Hタイマの経過時間を測定して、極性反転後、所定の時間が経過してなければ、処理20a14を飛ばす処理をする。極性反転直後は電流・電圧が安定しないからである。極性反転後、所定の時間が経過していれば、処理20a14の処理を行う。
異常処理ブロック20a15は図7にて説明する。
まず、処理20a17の立ち消え判定では、無負荷2次電圧が220Vより高くなったときに、立ち消えたと判定し、処理20a21にて出力停止処理をする。そうでなければ処理20a18に移行する。
立ち消えた後の処理は、処理20a21にてDC−DCコンバータ出力停止処理をする。処理20a22にて点灯時間計測タイマT1が3秒以上経過していたら、無負荷ブロックへ移行する。そうでなければ20a23で点灯時間計測タイマT1が1秒以上経過していれば処理20a27の永久停止処理にてストップする。そうでなければ処理20a24で停止処理して、初期設定ブロックの始動可能判定処理20a1へ移行する。
放電灯が立ち消えても、点灯してから1秒以上3秒以内であれば永久停止をすることで、連続して立ち消えして点滅が持続するのを防ぐように設定してある。
処理20a18では、負荷が短絡しているかどうかの判断をする。放電灯電圧V2が20Vより高ければ、短絡時間をカウン卜するタイマT3をリセットして20a19へ移行する。そうでなければ処理20a25でタイマT3をカウントアップして、処理20a26にてタイマT3が1秒より長く経過したら処理20a27の永久停止に移行する。そうでなければ点灯ループへもどる。
処理20a19と処理20a20は点灯維持に必要な電源電圧V1の上限と下限を判定する。車両用の12V系のバッテリーであれば、下限6Vから上限20Vの間であれば、点灯ループの処理20a11へと移行する。それ以外の電圧であれば、処理20a24にて停止処理して、初期設定ブロックの始動可能判定処理20a1へと移行し、始動可能電圧になるまで待つ状態になる。
図5の処理20a14では、極性反転立消え判定処理をする。図8にて詳細を説明する。
処理20a28は放電灯電圧VLAが高くなっているかどうかを設定されている閾値と比べて判定する。放電灯電圧VLAが閾値より高ければ処理20a29へ移行して出力電力の指令値を高くする。放電灯電圧VLAが閾値より低ければ処理20a30へ移行して出力電力の指令値を維持するように、出力電力の指令値を設定する。最終的に設定された出力電力は、点灯ループの点灯出力動作の処理20a11にて出力電力の指令値として使用される。
点灯してから放電灯電圧VLAは始動時から安定時にかけて低い状態から高い状態に変化して、やがて安定する。無水銀ランプでも有水銀ランプでもこの動作は変わらない。安定時に異常な状態、つまり規模の小さいものから人間の目で分かるぐらいのちらつきが発生した場合は、放電灯電圧VLAが上下する。有水銀の放電灯は定格電圧が85Vであり、定格を超える高い電圧は110Vぐらいの検出値が多くなると立ち消えが目立ってくる。よって、放電灯電圧VLAの判定の閾値としては有水銀の放電灯では110Vよりも少し低い電圧、つまり105V程度に設定すれば、寿命末期に放電灯電圧VLAが高くなると、あらかじめ電力を高くすることで点灯維持能力を高くすることが可能になる。これにより、放電灯の立ち消えが目立たなくなる効果がある。
無水銀ランプであれば、定格電圧が40〜45Vであり、寿命末期であれば放電灯電圧VLAは55V前後にも至る。そこで、無水銀の放電灯では、寿命末期になる55V付近に放電灯電圧VLAの判定の閾値電圧を設定することにより、放電灯電圧VLAが高くなると、あらかじめ出力電力を高くして点灯維持能力を高くすることが可能になる。
安定点灯時の定格は通常35Wが使用されている。有水銀のランプであるD1規格やD2規格でも、無水銀のランプであるD3規格やD4規格でも、定格電力は35Wである。電力定格としては±1Wであるが、量産用としては±3Wまで許容される場合もある。点灯維持能力は、ランプ電力を2W上げるだけでもかなり効果が出てくる。ランプ電力を3Wも余分に与えるとエネルギーとして8%も余分に与えることになり、かなり点灯維持能力が上がる。
このように、放電灯電圧VLAの極度に高い状態に対応して、点灯維持を持続するために、本実施形態のような出力電力指令値アップの対策を実施すれば、出力電力が高くなることで、電極温度が高くなり、電極温度に比例して熱電子放射がしやすくなり、点灯維持が持続しやすくなるのである。
また、放電灯電圧VLAの高い状態を検出して直ちに出力電力を上げるのではなく、時間的に余裕を持たせてから出力電力を上げる方法も実用的である。
図9にその制御手順を示す。上述の図8の極性反転立ち消えブロックの内容を修正したものである。処理20b1では安定点灯状態になったか否かを判定する。点灯時間タイマT2の計測値が安定点灯状態に達するのに要する時間Taより長ければ、安定点灯状態になったと判定し、処理20b2で電力アップタイマTxのカウント開始を許可する。そうでなければ、処理20a30で出力電力指令値を維持する処理をして、図5の異常処理ブロックへ移行する。
処理20b2ではマイコンのタイマー機能を用いて時間計測を開始する。今回は、数秒程度あればよいので、あらかじめタイマによる割込み時間を100msに設定しておいて、100msに1回タイマ変数Txをカウントアップするように設定すれば良い。8ビットのマイコンであれば、2バイトのカウンタで最大6553.5秒まで測定することが可能である。
処理20a28では放電灯電圧VLAが高くなっているかどうかを設定されている閾値と比べて判定する。放電灯電圧VLAが閾値より高ければ処理20b3でタイマ変数Txを参照する。
処理20b3でTx≧5であれば、0.5秒以上は放電灯電圧VLAの高い状態が継続したと判断し、処理20a29で出力電力指令値アップのフラグを立てる。
処理20b4ではタイマ変数Txをリセットし、図5の異常処理ブロックへ移行する。
このように、図9の制御手順を図8の制御手順に代えて用いれば、放電灯電圧VLAの高い状態を検出して直ちに出力電力を上げるのではなく、時間的な余裕を持たせて出力電力を上昇させることができる。
(実施形態2)
図10により本発明の実施形態2の動作を説明する。本実施形態では、立ち消えした後に再度点灯する場合の安定点灯時の出力電力の指令値が通常時よりも高くなるように設定するものである。基本的な構成は実施形態1と同様であり、マイコン7の制御フローについても異常処理ブロック(図7)に対してのみ修正を加え、立ち消え後の再点灯時の出力電力をアップする構成を追加したものである。
処理20a17の立ち消え判定で無負荷2次電圧V2が220Vより高くなって立ち消え判定した場合、処理20a21で出力停止処理をし、追加された処理20a32にて出力電力の指令値を高くするようにしている。この場合、立ち消え処理後、再点灯する経路である処理20a22,20a23の後に処理20a31、20a32を追加したものである。
処理20a31では、点灯時間タイマT2が安定時間Taに達していたときには、出力電力をアップする処理20a32に移行する。そうでなければそのまま処理20a24に移行する。
処理20a32では、出力電力の指令値を高くするフラグを立てておく。そのまま停止処理20a24を経由して初期設定ブロックの始動可能電圧判定の処理20a1に戻る。初期設定ブロックに戻った後は、無負荷ブロックを通って再点灯する。点灯したときには処理20a11からの点灯ループに移行し、出力電力アップフラグが立っているので、安定点灯時の出力電力を高くする。
そうすることにより、安定点灯状態で立ち消えした場合には、その後の再始動時の安定出力電力をはじめから高く設定することになるため、再始動後の安定点灯状態での出力電力が高くなり、ランプの温度が上がり、電極温度も上がり、熱電子放出をしやすくなる。熱電子が放出しやすくなることによって点灯維持能力が上がる効果がある。これにより再始動後の立ち消えの確率を低下させ、放電灯が始動と立ち消えを繰り返して点滅することを防止できる。
なお、実施形態1の図7の異常処理ブロックの処理20a23から処理20a24に移行した場合でも、図8または図9の処理20a29を通過した後に立ち消えした場合には、同様に、出力電力指令値アップフラグが立っているので、再点灯後の安定点灯時の出力電力を高くすることができる。つまり、処理20a24から初期設定ブロックの処理20a0ではなく処理20a1に戻ることで、処理20a0でフラグがリセットされないから、立ち消え前に出力電力指令値アップフラグが立っていれば、再点灯後の安定点灯時の出力電力を高くすることができるのである。
このように、実施形態1でも実施形態2と同様に、点灯中にバルブが立ち消えをした場合、立ち消え前の安定点灯中の電圧が定格電圧より所定の閾値を超えていた場合には、再点灯したときの安定出力電力設定値よりも高くするようにして点灯維持能力を上げている。そうすることによって立ち消えしやすい状態を予想して最初から出力電力を高く設定して再度立ち消えしにくくすることができる。
(実施形態3)
図11により本発明の実施形態3の動作を説明する。本実施形態では、立消えの頻度を測定するために、実施形態1の極性反転立ち消え判定ブロック(図8または図9)を図11に示す制御手順に置き換えたものである。図11に示す制御手順では、図8の極性反転立ち消え判定ブロックにおいて、処理21a1から21a7を追加したものである。また、図5の処理20a16では低周波反転と同時に、極性反転フラグをHにする処理を追加する。
処理21a1では、極性反転フラグを参照することで、極性反転をしたかどうかを確認する。極性反転による立ち消えの影響を確認するためにこの処理がある。処理内容は、極性反転したときに、図5の処理20a16で極性反転フラグをHにして、処理21a1で極性反転フラグがHならLに変えて処理20a28に移行する。そうでない場合は処理21a6に移行する。これにより、極性反転をした場合には1回だけ処理20a28に移行する。
処理20a28は放電灯電圧VLAが高くなっているかどうかを設定されている閾値と比べて判定する。放電灯電圧VLAが閾値より高ければ処理21a2へ移行する。
処理21a2では立ち消え回数カウント用の変数TK1をカウントアップして、点滅した回数をインクリメントする。
処理21a3ではタイマ変数TKTのカウント開始を許可する。マイコンのタイマー機能を用いて時間を測定する。
本フローでは、放電灯電圧VLAが閾値以上である状態が発生してから0.1秒以内に5回より多くの頻度でその状態が検出されたら処理20a29によって出力電力アップのフラグを立てて、点灯ループ(処理20a11)にて出力が上げられる設定がされる。
逆に、放電灯電圧VLAが閾値よりも低い場合は、処理20a28から処理21a6に移行する。
処理20a6は立ち消え検出タイマのリセット機能を持っていて、立消え検出タイマTKTが10秒より経過すると処理21a7にて立ち消え検出タイマTKTおよびカウントTK1をリセットする。さらに、タイマ変数TKTのカウントを停止する。
一般的にDC−ACコンバータ3の周波数は、300〜1000Hzがランプメーカーから推奨されているので、極性反転は1秒間に600回から2000回発生することになる。0.1秒では60回〜200回の極性反転になる。本実施形態による設定では、点灯周波数が300Hzのときに、立ち消え回数のカウントは0.1秒で5回の設定とした。この場合、0.1秒に極性反転回数は60回のため、そのうちの立ち消え回数が5回より大きいとき、つまり6回以上になると出力電力の指令値を上げる構成になる。つまり、確率で言えば、立ち消えの確率が10%になった場合、出力電力の指令値を上げることになる。
また、放電灯電圧VLAが極性反転より高くならない状態が続いた場合には、10秒後にリセットされてカウントし始める。その場合、出力電圧が高くなっていなければ、元の電力に戻る設計になっている。
ここで、出力を高くする設定は、0.1秒以内で判断するが、いったん出力電力を高くした状態から低くする場合は、少なくとも10秒以上経過しないと、元に戻らないように時間的にヒステリシス特性を持たせている。これにより、頻繁に出力電力を上げ下げしてちらつきにならないようにする。
これ以外にも出力電力の変化を段階的にしても構わない。たとえば、立ち消えの頻度に応じて出力電力を高くすることも効果がある。これにより、規模の小さい目に見えないDC−ACコンバータの半周期だけで立ち直る立ち消えを検出して出力電力を少しずつ上げるように制御することによって、目に見えてくる立ち消えが発生する前に点灯維持能力を上げて、ちらつきの発生を予見して抑制することが可能になる。
DC−ACコンバータ3が極性反転するたびに立ち消えが発生しやすくなるが、立ち消えするのは片側の極性から始まる。例えば、極性反転直後は立ち消えのような波形になるが、DC−ACコンバータ3が極性反転する前にようやく点灯し始めたり、あるいは一方の極性では立ち消えしているが極性反転後には再び点灯に戻ったりする動作となる場合があり、そういう場合が増えてくると本格的な立ち消えに至る。これは本格的に立ち消える一歩手前の状態であり、立ち消えしないためにはこのような状態を前もって予見することが必要になる。
このように、立ち消えにも規模の大小があり、目で見える立ち消えが発生する前に、何回か片側の電流が流れる方向で立ち消えが繰り返されて、小さい立ち消えが繰り返されて初めて目で見える立ち消えに成長する。
そこで、このような小さい立ち消えが繰り返し発生する頻度を計測することによって目で見える立ち消えに成長する前に、出力電力を定格電力よりも少し上げることによって点灯維持能力が向上して、点灯維持動作を長くすることが可能になる。結果的に、放電灯の寿命を延ばすことができ、ユーザーの利便性が高まる。
また、立ち消えが始まるのは、電流が流れる2方向のうち一方向で発生しやすくなる。したがって、電極温度は、放電灯電流が流れる極性によって低くなったり高くなったりする。電極温度が低くならないようにするには、電極の温度が下がる時間を短くするのも効果的である。そこで、立ち消えしそうな状態では、DC−ACコンバータ3の極性反転の周波数を高く設定して、点灯周期を短くし、点灯維持能力を上げることも有効である。
(実施形態4)
上述の実施形態1〜3の放電灯点灯装置は、高輝度放電灯と共に車載用照明器具に搭載することで、車両のヘッドライトやフォグライトなどの車載用光源の点灯装置として利用することができる。