JP5108331B2 - ガソリン組成物 - Google Patents
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Description
この直接噴射式ガソリンエンジンでは、希薄燃焼空気比であるリーン条件下で燃焼反応が行われるため、燃焼室内において、窒素酸化物(NOX)の発生が避けられない。したがって、直接噴射式ガソリンエンジンでは、強力で長寿命のNOX吸蔵還元触媒(以下、「NOX触媒」ということがある)を設置することが必要になる。
しかしながら、この種のNOX触媒は、通常硫黄酸化物(SOX)被毒に対する耐久性が
不充分であるという重大な問題を有している。
そこで、SOX被毒に対する耐久性が優れたNOX触媒を開発するとともに、燃料として、硫黄分が極めて少ない極低硫黄ガソリン、例えば、硫黄分が10質量ppm以下のガソリンを大量に製造することが求められている。
しかしながら、分解ガソリンには、硫黄分が比較的多く含まれており、通常30〜60質量ppm程度である。したがって、直接噴射式ガソリンエンジンなどに用いる極低硫黄ガソリンの基材として用いるのは、不適当である。
このような状況から、分解ガソリンを脱硫して低硫黄化する方法を開発すべく、研究開発活動が行われつつあり、すでに多くの提案がされている(例えば、特許文献1,2参照)。
したがって、極低硫黄分の分解ガソリンを含有する低硫黄ガソリンについて、運転性能や、安全性を維持しつつ、臭気を改善したガソリンの開発が必要になっている。
すなわち、本発明は、
〔1〕下記の基材(A)及び基材(B)を含有することを特徴とするガソリン組成物、
(A):硫黄分が10質量ppm以下である分解ガソリン、
(B):ナフサを熱分解してエチレンを製造する際に生成する分解油を水素化して得られる炭素数が5の炭化水素を主成分とする炭化水素留分
〔2〕基材(A)が、接触分解ガソリンを水素化脱硫して得られたものである前記〔1〕に記載のガソリン組成物、
〔3〕基材(A)の含有量が、ガソリン組成物を基準として、10容量%以上である前記〔1〕又は〔2〕に記載のガソリン組成物、
〔4〕基材(B)の含有量が、ガソリン組成物を基準として、炭素数5の炭化水素量が1容量%以上である前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のガソリン組成物、
〔5〕硫黄分が10質量ppm以下である前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のガソリン組成物、及び
〔6〕含酸素化合物の含有量が0〜10容量%であり、リサーチ法オクタン価が89〜95である前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のガソリン組成物、
を提供するものである。
当該硫黄分含有量が10質量ppm以下である分解ガソリンは、接触分解ガソリンを水素化脱硫して得られるものを用いることができる。
このような接触分解ガソリンは、オレフィン分が多く含まれるため比較的オクタン価は高いが、硫黄化合物がかなり存在し、通常硫黄含有量が30〜60質量ppm程度である。
例えば、アルミナ、シリカアルミナあるいはそれらにホウ素,珪素及びリン等の化合物を添加した担体に周期律表第6,8〜10族に属する金属の中から選ばれる少なくとも一種を担持した触媒を用い、公知の条件で水素化脱硫すればよい。
また、水素化脱硫工程においては、通常硫黄分を低減するとともに、オレフィンの水素化も促進するため、水素化脱硫処理した脱硫分解ガソリンのオクタン価が低下してしまうという欠点がある。そのため、硫黄分を低減するとともに、オレフィンの水素化を抑制できる水素化脱硫方法を用いるのがより好ましい。このような水素化脱硫方法は、種々の方法が知られており、例えば、前記特許文献1及び2の他、特開9−50650号公報、特開9−40972号公報など多くの特許公報に開示されている。
本発明においては、これらいずれの水素化脱硫方法を用いてもよい。
なお、上記水素化脱硫は、分解ガソリンを軽質分と重質分に分留し、硫黄分が多く含まれる重質分を脱硫する方法であってもよい。
このようにして、基材(A)の硫黄分含有量が10質量ppm以下である分解ガソリンを得ることができる。
但し、このような低硫黄分の分解ガソリンを含有するガソリンは、前述のとおり臭気の問題を有する。
本発明においては、基材(B)は、炭素数が5の炭化水素を主成分とするものであればよく、例えば、炭素数5の炭化水素を50容量%以上、さらには70容量%以上、特に好ましくは90容量%以上含む留分を使用することができる。
上記改質ガソリン中のベンゼン低減方法としては、通常改質ガソリンからベンゼン留分を蒸留によって取り除く方法が用いられるが、その他の方法、例えばベンゼン留分を溶剤で抽出して取り除く方法、ベンゼンと低級オレフィンや低級アルコールを用いてアルキル化する方法などによっても得ることができる。
(1)硫黄分が、10質量ppm以下であることが好ましく、5質量ppm以下であることがより好ましい。硫黄分が10質量ppm以下であれば、排ガス中のSOxの増加を抑えるとともに、直接噴射式ガソリンエンジンで使用されるNOX触媒のSOX被毒を抑制することができる。
なお、硫黄分の含有量はJIS K 2541の微量電量滴定式酸化法に従って測定した値である。
(2)リサーチ法オクタン価(RON)が89以上であることが好ましい。RONが89以上であれば、ノッキングを生ずるなど運転性能が低下する恐れがない。RONの上限値については特に制限はないが、通常およそ102である。但し、脱硫分解ガソリンがレギュラーガソリンの基材として比較的多く使用されることから、RONが89〜95であることが好ましい態様の一つである。
なお、このリサーチ法オクタン価は、JIS K 2280により測定した値である。
なお、ベンゼン含有量は、JIS K 2536「石油製品成分試験方法」のガスクロマトグラフィーによる全成分試験方法によって測定した値である。
(4)オレフィン分が10〜30容量%であることが好ましく、10〜25容量%であることがさらに好ましい。オレフィン分が10容量%以上であれば、希薄燃焼状態で失火を起こす恐れがなく、直接噴射式エンジン車などの運転性能を確保できる。また、オレフィン分が30容量%以下であれば、排気ガス中の窒素酸化物が増加する恐れがなく、オゾンを生成する恐れもない。さらにガソリン自体の酸化安定性も良好である。なお、オレフィン分は、JIS K 2536「石油製品成分試験方法」の蛍光指示薬吸着法で測定した値である。
(5)蒸留性状としては、70%留出温度(T70)が130℃以下であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましい。また、90%留出温度(T90)が170℃以下であることが好ましく、165℃以下であることがより好ましい。これらを満たしていれば、運転性能を良好に保つことができる。T70、及びT90は、JIS K 2254に基づいて測定した蒸留性状から求めた値である。
〔ガソリン組成物の性状〕
・リサーチ法オクタン価
JIS K 2280によって測定した。
・硫黄分
JIS K 2541の微量電量滴定式酸化法によって測定した。
・オレフィン分
JIS K 2536「石油製品成分試験方法」の蛍光指示薬吸着法によって測定した。
・ベンゼン、炭素数5の炭化水素等の成分分析
JIS K 2536「石油製品成分試験方法」のガスクロマトグラフによる全成分試験法によって測定した。
・蒸留性状
JIS K 2254によって測定した。
・臭気試験
(a) 試験方法
ガラス製褐色ビンに採取した試料ガソリンの臭気を以下に示す3点比較法によって判定した。
刺激臭が強く、臭気が好ましくない比較例1の試料を基準ガソリン(X)とし、それ以外の実施例、比較例及び参考例の各ガソリンを比較ガソリン(Y)とし、Xと各Yを順次比較して判定した。
具体的手順は、どちらか一方を2個、他方を1個、すなわち、パネラーにはわからない状況でXYY又はXXYの3個1組にした試料ガソリンを提供し、その1組の各ガソリン臭気を確認させ、どれが異なる一個であるかを選びださせ(識別性の判断)、その識別ができた場合は、さらにそれと他の2個とのどちらの臭気が好ましいかを判定させ(臭気の好・嫌判断)、二項検定に基づいて試験結果を表示した。
なお、パネラーは30名で行い、識別性については片側検定(危険率5%)、臭気の好・嫌判断については両側検定(危険率5%)により判断した。
(b) 判定基準
(識別性について)
有り:基準ガソリンと臭気について識別できる
無し:識別できない
(臭気の好・嫌について)
○:基準ガソリン(X)より、臭気が好ましい(刺激臭が弱い)
×:基準ガソリン(X)より、臭気が好ましくない(刺激臭が強い)
第1表に示した基材を用いて、第2表に示す割合で混合して、実施例、比較例及び参考例のガソリン組成物を調製し、その性状・組成及び性能を測定した。その結果を第2表に示す。
なお、参考例1は、脱硫していない分解ガソリンを含有するガソリンである。
なお、参考例1の脱硫分解ガソリンを含有しないガソリンは、比較例1のガソリンより刺激臭は弱く、臭気は好ましい。
Claims (6)
- 下記の基材(A)及び基材(B)を含有することを特徴とするガソリン組成物。
(A):硫黄分が10質量ppm以下である分解ガソリン
(B):ナフサを熱分解してエチレンを製造する際に生成する分解油を水素化して得られる炭素数が5の炭化水素を90容量%以上とする炭化水素留分 - 基材(A)が、接触分解ガソリンを水素化脱硫して得られたものである請求項1に記載のガソリン組成物。
- 基材(A)の含有量が、ガソリン組成物を基準として、10容量%以上である請求項1又は2に記載のガソリン組成物。
- 基材(B)の含有量が、ガソリン組成物を基準として、炭素数5の炭化水素量が1容量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のガソリン組成物。
- 硫黄分が10質量ppm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のガソリン組成物。
- 含酸素化合物の含有量が0〜10容量%であり、リサーチ法オクタン価が89〜95である請求項1〜5のいずれかに記載のガソリン組成物。
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