JP5107491B2 - ダイヤモンドドリルクラウン用の基体 - Google Patents

ダイヤモンドドリルクラウン用の基体

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、底部を有する管状の支持本体と、底部から突出する差込み端部とを設けたダイヤモンドドリルクラウン(冠状体)用の基体に関するものである。
【0002】
コンクリート、岩石等の硬い基礎構造に大きな直径の孔を形成するためには、ダイヤモンドドリルクラウンを使用する。このダイヤモンドドリルクラウンは穿孔方向側の端面に少なくとも1個の個別のダイヤモンド素子を設けた基体により構成する。この基体は、底部を有する管状の支持本体と、差込み端部とにより構成する。底部は支持本体の穿孔方向とは反対側の端部に存在し、穿孔方向に対してほぼ直交する。差込み端部はこの底部から穿孔方向とは逆方向に向かって突出する。
【0003】
【従来の技術】
ドイツ国特許公開第3603499号に記載のダイヤモンドドリルクラウン用の基体は3個の個別の部分、即ち、円筒形の差込み端部と、管状の支持本体と、底部とにより構成する。これら3個の部分は溶接によって互いに連結する。
【0004】
これら各部分は個別に形成する。従って、複数個の加工作業、例えば、切削加工、個別部分の溶接による継ぎ合わせ加工を要する。これら加工作業は製造コストを押し上げるマイナス要因となる。これら部分を異なるステーションで製造する場合には、輸送コスト及び流通コストが付加されることになる。更に、この既知の基体には、例えば、基体の輸送の際に不適切な取り扱いを受けて支持本体に半径方向の応力が加わることがあって、輸送が元で管状基体の不正確な回転体のずれを生ずることも考慮に入れなければならない。大きい直径の管状の支持本体は輸送の際に激しい衝撃を受けると半径方向に変形し、支持本体の横断面は円形形状から逸脱することになる。
【0005】
管状の支持本体は、例えば、切削加工によって最終形状にし、内面及び外面を滑らかな表面にする。例えば、管状の支持本体の穿孔方向側の遊端に配置したダイヤモンド素子の側面が部分的に摩耗したとき、管状の支持本体の滑らかな表面と基礎構造との間に高い摩擦を生じ、形成すべき孔の品質に悪影響を及ぼすことになる。滑らかな表面には、更に、基礎構造における穿孔した環状空隙から排除すべき穿孔屑を搬出することができないという欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、製造コストが安価であり、重量が少なく、壁厚が小さく、回転性能が良好なダイヤモンドドリルクラウン用の基体を得るにある。更に、基礎構造の穿孔した環状空隙から排除すべき穿孔屑を搬出することができる基体を得るにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明は、底部を有する管状の支持本体と、底部から突出する差込み端部とを設けたダイヤモンドドリルクラウン用の基体において、支持本体及び底部を、互いに対向する2つの端面を有する未加工状態の基体、及び前記基体の互いに対向する2つの端面のうち第1端面から突出する未加工状態の差込み端部を有する素材から、転造ローラ加工により形成するものとし、この転造ローラ加工による形成は、前記基体の互いに対向する2つの端面のうち、穿孔方向側の第2端面に転造マンドレルを押付けるとともに、穿孔方向とは逆方向に移動させること、及び転造ローラ装置の2個の転造ローラを、未加工状態の基体の周面に局部的に掛合させて、前記素材の回転方向とは逆方向に回転させながら前記マンドレルに沿って前記穿孔方向に移動させることにより、支持本体及び底部を形成したことを特徴とする。
【0008】
転造ローラは、基体全体を単独の加工材から構成し、基体の製造において極めて少ない加工作業だけで済むという利点がある。このことは、支持本体の製造コスト低減に役立つ。
【0009】
転造ローラ加工方法によれば、管状部分を極めて長くすることができる。転造ローラによれば加工材を冷間で形成することができ、壁厚を極めて薄くすることができ、例えば、好適には、支持本体の外径の0.008〜0.016倍の壁厚にする。僅かな壁厚にもかかわらず、支持本体は穿孔するに必要な剛性を有するようになる。更に、このような僅かな壁厚によれば重量を軽減し、この利点は、例えば、特に、手持ちドリル装置で作業する場合のユーザーが感じることができる。
【0010】
本発明の好適な実施例において、支持本体の回転対称形状からのずれは1.3mm以下にする。このような僅かな回転対称形状からのずれは転造ローラ加工方法から得ることができ、転造ローラによれば、加工材の周囲を均一に押しのけて変形することができる。更に、管状の支持本体に一体に底部により、支持本体の半径方向の剛性を高めることができ、これにより、輸送の際の不適切な取り扱いにも変形しないようにすることができる。
【0011】
切り刃素子を固定することができるようにするため、支持本体の穿孔方向側の遊端の半径方向の寸法を管状の支持本体の壁厚よりも僅かに大きくするが、このことは、切り刃素子の摩耗が進むと、支持本体の管状部分と基礎構造との間の摩擦をどうだいすることになる。この摩擦は、基体全体の温度を上昇させ、基体を連結することができるドリル装置におけて基体を駆動するのに使用する駆動モータに対する負荷を増大させる。好適には、支持本体の管状部分の内面及び/又は外面に刻み出しの形成部を設けることによって、支持本体の基礎構造との接触面を減少することができる。支持本体度基礎構造との間の高い摩擦をこのようにして回避することができる。この刻み出しの形成部は、補強リブとしても機能し、支持本体の管状部分の剛性を増大する作用を行なう。
【0012】
管状の支持本体の内面及び/又は外面の刻み出し形成部は螺旋形状にすると、搬出すべき穿孔屑を基礎構造に穿孔した環状空隙から基礎構造の表面まで搬出することができるようになる。基体刻み出し形成部の領域の壁厚は、支持本体の外径の大きくても0.03倍程度とする。
【0013】
支持本体の穿孔方向側の遊端には少なくとも1個のダイヤモンド素子を、例えば、ろう付け又は溶接によって固定することができるようにするためには、相応の大きな接合ゾーンを必要とする。この大きな接合ゾーンは、支持本体の壁厚を好適には、穿孔方向側の遊端に向けて拡開することによって形成することができる。この支持本体の拡開は、例えば、支持本体の外側輪郭を半径方向に拡開することによって形成することができ、この拡開範囲は支持本体の全長の一部にわたり延在させる。この大きな接合ゾーンは、例えば、支持本体の外面及び内面の双方の拡開、又は単に内面だけの拡開とすることができる。内面側の拡開は、穿孔方向側の遊端における管状支持本体の内法寸法を自動的に減少する。
【0014】
支持本体の壁厚は、穿孔方向側の遊端で、例えば、支持本体の拡開領域で測った外径の0.012〜0.014倍とする。
【0015】
穿孔屑の排出に悪影響を及ぼさない支持本体の管状部分と拡開部分との間のほぼ均一な移行部を形成するため、拡開部の長さは、支持本体の全長の0.04〜0.14倍とすると好適である。
【0016】
支持本体の安定性を高めるためには、支持本体の底部を釣り鐘状に構成すると好適である。例えば、基体を金属から構成すると、転造ローラ加工によって良好に変形することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に図面につき本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0018】
図1には、回転拡張又は回転変形技術で製造するための、未加工状態の差込み端部1及び未加工状態の基体2を有する素材を示す。この素材は、図示しない転造ローラ装置の主スピンドルに収容した転造マンドレル3に対して、遊びなく連結する。図2に示す転造マンドレル3は、例えば円筒形の外側輪郭を有し、未加工状態の基体2′における穿孔方向の端面に対して穿孔方向とは反対方向に押付ける。
【0019】
同様に図示しない対向保持力によって、差込み端部を軸線方向の移動に対して固定し、転造ローラ装置の主駆動装置によって回転運動を付与する。回転運動を示す対応の矢印を図3に示す。転造ローラ装置の2個の転造ローラ5,6は孔を形成する方向に円錐形の先細テーパを有する外部輪郭を設ける。転造作業の際には、図3に示すように、差込み端部1′すなわち素材の回転方向とは逆方向に回転する転造ローラ5,6穿孔方向に移動させる。この際に、2個の図示しない軸線に沿って案内する転造ローラ5,6を未加工状態の基体2の周面に局部的に掛合させる。このことを図3に明示する。転造ローラ5,6の直接的な転圧作用によって基体2の加工材は支持本体2として塑性変形し、この塑性変形部分を転造マンドレル3に沿って穿孔方向に押しやり、これにより支持本体2に管状形状を付与する。転造ローラ5,6の規定た移動行程は、支持本体2を構成する未加工素材の部分を要求される壁厚に減少し、また所要の長さにするものとする。
【0020】
転造ローラ5,6の穿孔方向への移動中、転造マンドレル3を穿孔方向とは逆方向に移動させる。この際に、管状に形成される支持本体2を構成する加工材の一部を側方に押しやり底部4を形成し、この底部4の壁厚は支持本体2の管状をなす部分の壁厚よりも大きくする。本発明の転造方法によって形成した管状部分の壁厚は0.7mm〜2.5mmの範囲、好適には、1.7mmまでの範囲とすることができる。管状部分の回転方向のずれは最大でも1.1mmである。底部4の壁厚は10mmの値とする。本発明転造方法によれば、管状の支持本体2の長さを20mm〜500mmにすることができる。
【0021】
支持本体2の壁厚は、支持本体2の穿孔方向側の遊端に向かって増大させ、図示しない少なくとも1個のダイヤモンド製の切り刃素子を固定できるようにする。支持本体2の拡開部8は、基体2の外側輪郭を半径方向に拡開させることにより形成し、穿孔方向に平行に測ったこの拡開部8の全体の長さを支持本体2の全長の0.04〜0.14倍とする。支持本体2の壁厚は穿孔方向側の端部で1.5mm〜3.5mmとする。支持本体2の底部は釣り鐘形状に構成することができる。
【0022】
差込み端部1、この差込み端部1における長手方向溝7、及び支持本体2の穿孔方向側の遊端を、図4に示すように切削ツール9,10により後加工する。
【0023】
図5には、管状の支持本体12の基体の他の実施例を示し、このベース本体に差込み端部11を連結する。差込み端部11には閉鎖した長手方向溝17を設ける。管状の支持本体12の外面及び内面には例えば、台形断面の螺旋条軌13,14を設ける。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明転造方法のための基体を形成する素材を示す側面図である。
【図2】 図1の素材に転造マンドレルを連結した状態を示す側面図である。
【図3】 図1の素材の部分から複数個の転造ローラによって管状の支持本体を形成する過程を示す一部断面とする側面図である。
【図4】 差込み端部及び支持本体の穿孔方向側の遊端を切削加工することを説明する一部断面とする側面図である。
【図5】 本発明により形成した基体を示し、この支持本体の内面及び外面に螺旋条を刻み出した実施例の一部切除した側面図である。
【符号の説明】
1′ 未加工状態の差込み端部(素材)
差込み端部
2′ 未加工状態の基体(素材)
支持本体
3 転造マンドレル
4 底部
5 転造ローラ
6 転造ローラ
7 長手方向溝
8 拡開部
9 切削ツール
10 切削ツール
11 差込み端部
12 支持本体
13 螺旋条軌
14 螺旋条軌
17 長手方向溝

Claims (7)

  1. 底部(4)を有する管状の支持本体(2,12)と、底部(4)から突出する差込み端部(1,11)とを設けたダイヤモンドドリルクラウン用の基体において、
    支持本体(2,12)及び底部(4)を、互いに対向する2つの端面を有する未加工状態の基体(2′)、及び前記基体(2′)の互いに対向する2つの端面のうち第1端面から突出する未加工状態の差込み端部(1′)を有する素材から、転造ローラ加工により形成するものとし、
    この転造ローラ加工による形成は、前記基体(2′)の互いに対向する2つの端面のうち、穿孔方向側の第2端面に転造マンドレル(3)を押付けるとともに、穿孔方向とは逆方向に移動させること、及び転造ローラ装置の2個の転造ローラ(5,6)を、未加工状態の基体(2′)の周面に局部的に掛合させて、前記素材の回転方向とは逆方向に回転させながら前記マンドレル(3)に沿って前記穿孔方向に移動させることにより、支持本体(2,12)及び底部(4)を形成した
    ことを特徴とするダイヤモンドドリルクラウン用の基体。
  2. 前記支持本体(2,12)の壁厚を、支持本体(2,12)の外径の0.008〜0.016倍の寸法とした請求項1記載の基体。
  3. 前記支持本体(2,12)の周方向のずれを1.3mmより少ないものとした請求項1又は2記載の基体。
  4. 前記支持本体(12)の外面及び内面に条軌(13,14)を設けた請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の基体。
  5. 前記条軌(13,14)を螺旋状条軌として形成した請求項4記載の基体。
  6. 前記支持本体(2,12)の壁厚をこの支持本体(2,12)の穿孔方向側の遊端に向かって拡開させた請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の基体。
  7. 前記壁厚拡開部の長手方向の範囲を前記支持本体(2,12)の全長の0.04〜0.14倍の寸法とした請求項6記載の基体。
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