図20は、従来の目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。この図20に例示した目標追尾装置は、2つのn次元(nは1または2)角度センサを含み構成された事例であり、同一に構成された第1のn次元角度センサ1(#1)、及び第2のn次元角度センサ1(#2)、同一に構成された第1の角度追尾部2(#1)、及び第2の角度追尾部2(#2)、航跡統合部3、ならびに第1の航跡表示部4(#1)、及び第2の航跡表示部4(#2)から構成されている。
第1のn次元角度センサ1(#1)及び第2のn次元角度センサ1(#2)は、探知した目標の角度情報を取得し、それぞれ対応する角度追尾部2(#1)または2(#2)、ならびに航跡統合部3に送出する。第1の角度追尾部2(#1)及び第2の角度追尾部2(#2)は、それぞれに対応するn次元角度センサ1からの角度情報に基づいて、第1の角度追尾部2(#1)は、目標の角度及び角速度からなる角度航跡z(k,1)及びその誤差共分散行列Pz(k,1)を、また第2の角度追尾部2(#2)は、目標の角度及び角速度からなる角度航跡z(k,2)及びその誤差共分散行列Pz(k,2)を算出し、航跡統合部3に送出する。
航跡統合部3は、これら2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)での算出結果から、同一の目標に対する航跡を統合して追尾する。ここに、航跡統合部3は、相関部31、距離/距離変化率算出部32、n+1次元航跡初期値算出部33、及び航跡維持部34から構成されている。相関部31は、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)からの角度航跡を同一の目標毎に対をなすように関連づける。距離/距離変化率算出部32は、これら角度航跡に基づき、交会法の手法により2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)のそれぞれから同一の目標までの距離及び距離変化率を算出する。n+1次元航跡初期値算出部33は、距離/距離変化率算出部32の算出結果をもとに、後段の航跡維持部34でこの目標の追尾に必要な初期値となる、この目標のn+1次元航跡とその誤差評価量としての誤差共分散行列を算出する。航跡維持部34は、これら算出結果を初期値として追尾維持処理を実行し、その航跡を継続的に取得する。
航跡維持部34における追尾維持処理は、例えば、式(1)に示した目標の運動モデル、及び式(2)に示した目標の観測モデルに対して、拡張カルマンフィルタ等によって算出することができる。
ここで、x(k)は、観測時刻tkにおける目標の状態ベクトル、F(k,k−1)とG(k,k−1)は、観測時刻tk−1からtkにおける遷移行列と駆動行列、w(k−1)は、観測時刻tk−1における平均0、共分散行列Q(k−1)の正規分布に従うシステム雑音ベクトル、y(k,i)は、観測時刻tkにおけるn次元角度センサ1(#i)の観測ベクトル、h(・)は、観測関数、v(k,i)は、観測時刻tkにおける平均0、共分散行列R(k,i)の正規分布に従う観測雑音ベクトルである。
また、航跡維持部34を拡張カルマンフィルタで構成した場合、式(3)〜式(4)に示す予測処理、ならびに式(5)〜式(9)に示す平滑処理を実施する。
ここで、x^(k|k−1)とP(k|k−1)は、観測時刻tkにおける予測ベクトルと予測誤差共分散行列、S(k)、d(k)およびK(k)は、観測時刻tkにおける残差共分散行列、マハラノビス距離およびカルマンゲイン行列、x^(k|k)とP(k|k)は、観測時刻tkにおける平滑ベクトルと平滑誤差共分散行列である。また、ATは、ベクトルまたは行列Aの転置、A−1は、行列Aの逆行列、Iは、単位行列を示す。
n次元角度センサ1が方位角のみを出力し、航跡維持部34が2次元航跡を維持する場合、上記ベクトルおよび行列は、以下の式(10)〜式(16)のようになる。
ここで、px(k)とpy(k)は、目標のx軸とy軸の位置成分、vx(k)とvy(k)は、目標のx軸とy軸の速度成分、σx(k)とσy(k)は、目標のx軸とy軸のシステム雑音の標準偏差、θ(k,i)は、n次元角度センサ1(#i)の方位角の観測値、px(i)とpy(i)は、n次元角度センサ1(#i)のx軸とy軸の位置成分、σθ(k,i)は、n次元角度センサ1(#i)の方位角の観測雑音の標準偏差、(全て、観測時刻tkにおける値)である。また、Inは、n行n列の単位行列、Onは、n行n列の零行列を示す。
第1の航跡表示部4(#1)及び第2の航跡表示部4(#2)は、航跡統合部3で取得した目標の航跡を、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)のそれぞれに対応させて表示する。
次に、図20に例示した従来の目標追尾装置の動作を、航跡統合部3における処理の流れを中心に説明する。図21は、航跡統合部3の処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、航跡統合部3は、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)から新たな目標の角度航跡、すなわち航跡の初期値を算出済みでない角度航跡を受けとると(ST601のN)、相関部31がこれら角度航跡を入力し(ST602)、次いで、追尾維持処理に必要な一連の初期値算出処理を行う(ST603)。
すなわち、相関部31において、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)からの角度航跡のどの対が同一目標であるかを判別する相関処理を行なった結果(ST607)、同一目標と判別された角度航跡の対がある場合には(ST608のY)、距離/距離変化率算出部32において、これら角度航跡に基づき、交会法を用いてそれぞれのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)からこの目標までの距離及び距離変化率を算出する(ST609)。さらに、この算出結果をもとに、n+1次元航跡初期値算出部33において、後段の航跡維持部34での追尾維持処理の初期値となる、目標のn+1次元航跡とその誤差評価量としての誤差共分散行列を算出し、この目標の追尾開始に備える(ST610)。
次いで、再びST601のステップにより、対象の航跡初期値が算出済みである旨の判定がなされると(ST601のY)、この後は、算出済みの初期値に基づき目標の追尾に移行すべく、航跡維持部34において、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)で探知した角度情報を直接入力し(ST604)、追尾維持処理を開始して、目標のn+1次元航跡の取得を維持継続する(ST605)。そして、その結果を、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)のそれぞれに対応させて2つの航跡表示部4(#1)及び4(#2)に表示する。
以下に、本発明に係る目標追尾装置を実施するための最良の形態について、図1乃至図19を参照して説明する。なお、以下の説明においては、背景技術の欄で説明した従来の目標追尾装置の各構成に相当する部分には、同一の符号を用いて説明する。
図1は、本発明に係る目標追尾装置の第1の実施例の構成を示すブロック図である。図1に例示したように、この目標追尾装置は、2つのn次元(nは1または2)角度センサを含み構成された事例であり、同一に構成された第1のn次元角度センサ1(#1)、及び第2のn次元角度センサ1(#2)、同一に構成された第1の角度追尾部2(#1)、及び第2の角度追尾部2(#2)、航跡統合部3a、ならびに第1の航跡表示部4(#1)、及び第2の航跡表示部4(#2)から構成されている。
第1のn次元角度センサ1(#1)及び第2のn次元角度センサ1(#2)は、探知した目標の角度情報を取得し、それぞれ対応する角度追尾部2(#1)または2(#2)、ならびに航跡統合部3aに送出する。第1の角度追尾部2(#1)及び第2の角度追尾部2(#2)は、それぞれに対応するn次元角度センサ1からの角度情報に基づいて、第1の角度追尾部2(#1)は、目標の角度航跡z(k,1)及びその誤差共分散行列Pz(k,1)を、また第2の角度追尾部2(#2)は、目標の角度航跡z(k,2)及びその誤差共分散行列Pz(k,2)を算出し、航跡統合部3aに送出する。
航跡統合部3aは、後述するが、追尾フィルタの異なる2つの航跡維持部を有しており、角度追尾部2(#1)及び2(#2)での算出結果を受けて、同一の目標に対してそれぞれの航跡維持部で算出した目標の航跡を統合し、第1の航跡表示部4(#1)及び第2の航跡表示部4(#2)に送出する。ここに、航跡統合部3aは、相関部31a、仮説距離生成部35、航跡初期値算出部(1)36、航跡維持部(1)37、距離算出部32a、航跡初期値算出部(2)33a、航跡維持部(2)34a、事後確率算出部38、及び統合航跡算出部39から構成されている。
相関部31aは、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)からの角度航跡を入力し、それぞれで取得した角度航跡の関連づけを行ってどの対が同一目標のものであるかを判定する相関処理を行い、同一目標の角度航跡の対を後段に送出する。また、同一目標の角度航跡の対から、新目標の出現についても判定する。なお、この相関部31aでの処理には、例えば、特許文献1に記載の手法等を適用することができる。
仮説距離生成部35は、相関部31aからの角度航跡に基づいて、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)から目標までの仮説距離を算出し、航跡初期値算出部(1)36に送出する。仮説距離の算出にあたっては、例えば、非特許文献2等に詳述される手法を適用できる。この手法の主要な処理部分を、以下の式(17)〜式(19)に示す。
ここで、rminは目標の最小距離、rmaxは目標の最大距離、mは仮説距離の数(=サブフィルタの数m、mは1以上)、r(j)(j=1〜m)はm個の仮説距離、σr(j)(j=1〜m)は距離誤差の標準偏差である。
航跡初期値算出部(1)36は、これら仮説距離をもとに、後段の航跡維持部(1)37でこの目標の追尾に必要な初期値となる、目標のn+1次元航跡とその誤差評価量としての誤差共分散行列を算出し、航跡維持部(1)37に送出する。これら初期値となるn+1次元航跡とその誤差評価量の算出にあたっては、例えば、非特許文献2等に詳述される手法を適用できる。この手法の主要な処理部分については、例えば、航跡維持部(1)37が2次元航跡を維持する場合、航跡としてのj番目(j=1〜m)のサブフィルタの平滑ベクトルx^(k|k,j)と平滑誤差共分散行列P(k|k,j)は、以下の式(20)〜式(21)で表される。
ここで、x^(k,i)は、n次元角度センサ1(#i)の状態ベクトル、fp2cは、共分散行列の極座標・直交座標変換関数、σvは、速度誤差の標準偏差を示す。
航跡維持部(1)37は、航跡初期値算出部(1)36での算出結果を初期値として、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)からの探知情報に基づき目標の追尾維持処理を実行し、その航跡を継続的に取得する。ここでは、目標の運動モデル及び観測モデルを、それぞれ式(22)及び式(23)として、目標の追尾維持処理を、レンジパラメタライズド拡張カルマンフィルタにより構成した場合について説明する。
ここで、x(k)は、観測時刻tkにおける目標の状態ベクトル、F(k,k−1)とG(k,k−1)は、観測時刻tk−1からtkにおける遷移行列と駆動行列、w(k−1)は、観測時刻tk−1における平均0、共分散行列Q(k−1)の正規分布に従うシステム雑音ベクトル、y(k,i)は、観測時刻tkにおけるn次元角度センサ1(#i)の観測ベクトル、h(・)は、観測関数、v(k,i)は、観測時刻tkにおける平均0、共分散行列R(k,i)の正規分布に従う観測雑音ベクトルである。
航跡維持部(1)37をレンジパラメタライズド拡張カルマンフィルタで構成した場合、m個のサブフィルタを構成してこれらによる処理が行なわれる。j番目(j=1〜m)のサブフィルタでは、式(24)〜式(25)に示す予測処理、及び式(26)〜式(30)に示す平滑処理を実施する。
ここで、x^(k|k−1,j)とP(k|k−1,j)は、予測ベクトルと予測誤差共分散行列、S(k,j)、d(k,j)およびK(k,j)は、残差共分散行列、マハラノビス距離およびカルマンゲイン行列、x^(k|k,j)とP(k|k,j)は、平滑ベクトルと平滑誤差共分散行列である(全て、観測時刻tkのj番目のサブフィルタにおける値)。
観測時刻t
kにおける平滑ベクトルx^(k|k)と平滑誤差共分散行列P(k|k)は、以下の式で算出される。
ここで、l(k,j)は尤度、p(k,j)とw(k,j)は、事後確率と重みである(全て、観測時刻tkのj番目のサブフィルタにおける値)。
なお、上記した事例では、航跡維持部(1)37をレンジパラメタライズド拡張カルマンフィルタで構成した場合を詳述したが、航跡維持部(1)37は、レンジパラメタライズド・アンセンテッドカルマンフィルタやレンジパラメタライズド・パーティクルフィルタで構成しても良い。また、航跡維持部(1)37がレンジパラメタライズド拡張カルマンフィルタまたはレンジパラメタライズド・アンセンテッドカルマンフィルタで構成される場合、航跡維持部(1)37は、m個のサブフィルタにより算出・更新されるm個の目標のn+1次元航跡の中から、所定の観測回数または観測時間が経過した時点で最も事後確率の高い1つを選択し、以降はこの選択したサブフィルタによる目標のn+1次元航跡を出力するように構成しても良い。
距離算出部32aは、相関部31aからの角度航跡に基づいて、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)から目標までのそれぞれの距離を算出し、航跡初期値算出部(2)33aに送出する。距離の算出にあたっては、例えば、非特許文献1に記載の手法等を適用することができる。
航跡初期値算出部(2)33aは、目標の角度航跡及び距離の算出結果をもとに、後段の航跡維持部(2)34aでこの目標の追尾に必要な初期値となる、この目標のn+1次元航跡とその誤差評価量としての誤差共分散行列を算出する。算出にあたっては、距離算出部32aにより算出された距離と各n次元角度センサ1との角度航跡から、位置のみを含み速度を含まないn+1次元航跡を算出し、複数回(2回以上)のn+1次元航跡とその誤差評価量から、これら航跡初期値を算出することができる。また、距離算出部32aにより算出された距離と各n次元角度センサ1との角度航跡から、位置のみを含み速度を含まないn+1次元航跡を算出し、前述したレンジパラメタライズド拡張カルマンフィルタの初期値のように、航跡初期速度を0として、航跡初期値を算出するように構成することができる。なお、上述した距離算出部32a及び航跡初期値算出部(2)33aにおける各値の算出手法の代わりに、特許文献1に記載の手法等を適用することができる。
航跡維持部(2)34aは、航跡初期値算出部(2)33aでの算出結果を初期値として、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)からの探知情報に基づき目標の追尾維持処理を実行し、その航跡を継続的に取得する。この航跡維持部(2)34aで実行される追尾維持処理は、図20に例示した従来の目標追尾装置における航跡維持部34と同じ内容であり、説明を省略する。なお、拡張カルマンフィルタの代わりに、アンセンテッドカルマンフィルタやパーティクルフィルタで構成しても良い。
事後確率算出部38は、航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aから目標のn+1次元航跡を受けとり、それぞれからのn+1次元航跡に対する事後確率及び重みを算出する。事後確率及び重みの算出は、以下の式(35)〜式(38)に示した処理手法による。
ここで、l(k,RP)、p(k,RP)及びw(k,RP)は、それぞれ、航跡維持部(1)37の尤度、事後確率及び重み、l(k,EKF)、p(k,EKF)及びw(k,EKF)は、航跡維持部(2)34aの尤度、事後確率および重みである(全て、観測時刻t
kにおける値)。また、S(k,EKF)とd(k,EKF)は、それぞれ式(5)と式(6)との値を用い、S(k,RP)及びd(k,RP)は、以下の式(39)〜式(42)で算出する。
統合航跡算出部39は、航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aのそれぞれで取得された目標のn+1次元航跡を、事後確率算出部38で算出されたそれぞれの事後確率及び重みに基づき統合し、統合航跡を算出する。統合航跡の算出にあたっては、事後確率に基づく重み付けにより、以下の式(43)〜式(44)を用いて算出する。
ここで、x^(k,RP)とP(k,RP)は、式(33)と式(34)の値を用い、x^(k,EKF)とP(k,EKF)は、式(8)と式(9)の値を用いる。また、事後確率により重み付けせずに、航跡維持部(1)37、または航跡維持部(2)34aのそれぞれで取得された目標のn+1次元航跡のうち、事後確率の高いいずれか一方を選択してこれを統合航跡とするように構成することもできる。
航跡表示部4(#1)及び航跡表示部4(#2)は、このようにして航跡統合部3aで算出された目標の統合航跡を、それぞれn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)を基準にして表示する。
次に、前出の図1、ならびに図2〜図3のフローチャート及び図4の説明図を参照して、上述のように構成された本実施例の目標追尾装置の動作について、航跡統合部3aにおける処理の流れを中心に説明する。図2及び図3は、図1に例示した目標追尾装置の第1の実施例の動作を説明するためのフローチャートである。
まず、航跡統合部3aは、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)から新たな目標の角度航跡、すなわち航跡の初期値を算出済みでない角度航跡を受けとると(ST101のN)、相関部31aがこれら角度航跡を入力し(ST102)、次いで、追尾維持処理に必要な一連の初期値算出処理を行う(ST103)。このST103での初期値算出では、最初に2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)からの角度航跡間のどの対が同一目標であるかを判定する相関処理を行ない(ST107)、その結果、同一目標と判定された新たな角度航跡の対がある場合には(ST108のY)、後段の航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aでのそれぞれの追尾維持処理における初期値を、同時並行的に算出する。(ST109)。
すなわち、相関部31aからの新たな角度航跡の対に基づいて、仮説距離生成部35においては、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)から目標までの仮説距離を算出し(ST114)、さらに、これら仮説距離をもとに、航跡初期値算出部(1)36において、航跡維持部(1)37での追尾維持処理の初期値となる、この目標のn+1次元航跡とその誤差評価量としての誤差共分散行列を算出し、航跡維持部(1)37に送出する(ST115)。一方、これと並行して距離算出部32aでは、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)から目標までのそれぞれの距離を算出し(ST116)、さらに、この算出結果をもとに、航跡初期値算出部(2)33aにおいて、航跡維持部(2)34aでの追尾維持処理の初期値となる、目標のn+1次元航跡とその誤差評価量としての誤差共分散行列を算出し、航跡維持部(2)34aに送出する(ST117)。
次いで、再びST101のステップにより、対象目標の航跡の初期値が算出済である旨の判定がなされると(ST101のY)、航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aは、追尾維持処理に移行すべく、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)で探知した角度情報を直接入力し始める(ST104)。そして、ST103のステップで算出済みの初期値に基づいて、それぞれの追尾維持処理を同時進行させながら目標のn+1次元航跡の取得を維持継続し、さらに、これら2つの航跡維持部からの航跡を事後確率に基づいて統合し、統合航跡を得ている(ST105)。
すなわち、ST103のステップで算出済みの初期値、及び2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)からの角度情報に基づいて、航跡維持部(1)37は、上述した手法により追尾維持処理を実行して目標のn+1次元航跡を継続的に取得し、その結果を事後確率算出部38、及び統合航跡算出部39に送出する(ST110)。一方、これと並行して航跡維持部(2)34aも、自身の追尾維持処理を実行して目標のn+1次元航跡を継続的に取得し、その結果を事後確率算出部38、及び統合航跡算出部39に送出する(ST111)。次いで、事後確率算出部38は、これら2つのn+1次元航跡のそれぞれについて事後確率を算出し、統合航跡算出部39に送出すると(ST112)、統合航跡算出部39では、事後確率を用いた重み付け、または事後確率の大小関係により2つのn+1次元航跡を統合して、目標の統合航跡を得る。そして、その結果を航跡表示部4に送出し、航跡表示部4は、これを表示する(ST113)。この後は、動作終了が指示されるまで、上記した動作ステップを繰り返す(ST106)。
図4は、上記した航跡統合部3a内での処理の流れに対応した航跡統合部3a内主要部の動作タイミングの一例を、時間経過に沿ってモデル化して示す説明図である。相関部31aにより、同一目標の角度航跡の対から新たな目標と判定した角度航跡の対が抽出されると(T11)、航跡初期値算出部(1)36では、仮説距離生成部35からの仮説距離を用いて、航跡維持部(1)37での追尾維持処理に必要な航跡初期値として、目標のn+1次元航跡とその誤差評価量が算出される(T12)。同様に、航跡初期値算出部(2)33aでは、距離算出部32aで算出された距離を用いて、航跡維持部(2)34aでの追尾維持処理に必要な目標の航跡の初期値が算出される(T13)。これらの初期値をもとに、航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aは、目標の追尾維持処理に移行し、それぞれの追尾維持処理が開始されて、目標のn+1次元航跡が継続して取得される。この時に、航跡維持部(1)37の追尾維持処理と航跡維持部(2)34aの追尾維持処理は、同時並行して進行する(T14、及びT15)。さらに、これらと並行して動作する統合航跡算出部39では、航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aからの目標航跡が、事後確率算出部38で算出した事後確率に基づいて統合され、統合航跡として航跡表示部4に送出される(T16)。
なお、上記した実施例においては、距離算出部32aにおいて距離変化率を算出する必要がないため、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)において各速度を算出する必要がなく、この結果、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)を省略することができる。この時の目標追尾装置の構成のブロック図を図5に例示する。
以上説明したように、本実施例においては、2つのn次元角度センサからの目標の角度情報に対して、相関手段によって同一目標と判定された角度情報とm個(mは、1以上)の仮説距離に基づき、目標のn+1次元空間での位置および速度よりなるm個のn+1次元航跡とその誤差評価量を算出し、これを初期値として、2つのn次元角度センサのいずれかよりの新たな探知情報が得られるたびに、この探知情報を反映してn+1次元航跡およびその誤差評価量を更新して、目標のn+1次元追尾を行なう第1の追尾維持手段としての航跡維持部(1)と、相関手段によって同一目標と判定された角度情報から、交会法に基づいて目標の距離を算出し、この距離と2つのn次元角度センサの角度航跡とに基づき、目標のn+1次元空間での位置および速度よりなるn+1次元航跡とその誤差評価量を算出し、これを初期値として、2つのn次元角度センサのいずれかよりの新たな探知情報が得られるたびに、この探知情報を反映してn+1次元航跡およびその誤差評価量を更新して、目標のn+1次元追尾を行なう第2の追尾維持手段としての航跡維持部(2)を備え、さらに、これら2つの航跡維持部で取得された目標航跡を事後確率により統合/選択している。
これにより、2つの航跡維持部(1)及び(2)が目標の追尾維持処理に移行する際に、その初期値に仮説距離を用いて処理を開始し継続取得した目標航跡と、交会法により算出された距離を用いて処理を開始し継続取得した目標航跡とが統合されるので、目標に対する2つのn次元角度センサからの交会角が小さな場合でも、追尾安定性を向上することができる。
図6は、本発明に係る目標追尾装置の第2の実施例の構成を示すブロック図である。また、図7〜図9は、この目標追尾装置の第2の実施例の動作を説明するためのフローチャート及び説明図である。この第2の実施例について、図1〜図5に示した第1の実施例の各部と同一の部分は同一の符号で示し、その説明は省略する。第2の実施例が第1の実施例と異なる点は、第1の実施例においては、相関部において新しい目標と判定した角度航跡の対に対して、2つの追尾維持処理、すなわち、航跡初期値の算出に目標との仮説距離を用いた、航跡維持部(1)による第1の追尾維持処理と、航跡初期値の算出に交会法による算出距離を用いた、航跡維持部(2)による第2の追尾維持処理とを、同時並行に進行させたのに対し、第2の実施例においては、相関部おいて新しい目標と判定した角度航跡の対に対して、2つのn次元角度センサによる交会角を算出し、この交会角の値の範囲によって、上記した2つの追尾維持処理のいずれか一方を選択してその後の目標の航跡を取得するようにした点である。以下、前出の図1〜図5、ならびに図6〜図9を参照して、その相違点のみを説明する。
図6に例示したように、この目標追尾装置は、同一に構成された第1のn次元角度センサ1(#1)、及び第2のn次元角度センサ1(#2)、同一に構成された第1の角度追尾部2(#1)、及び第2の角度追尾部2(#2)、航跡統合部3b、ならびに第1の航跡表示部4(#1)、及び第2の航跡表示部4(#2)から構成されている。2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)、ならびに、2つの航跡表示部4(#1)及び4(#2)は、第1の実施例と同じであり、説明を省略する。また、航跡統合部3bは、相関部31a、事前選択部40、仮説距離生成部35、航跡初期値算出部(1)36、航跡維持部(1)37、距離算出部32a、航跡初期値算出部(2)33a、及び航跡維持部(2)34aから構成されている。ここに、事前選択部40を除く各構成は、第1の実施例と同じであり、説明を省略する。
事前選択部40は、相関部31aにおいて新目標と判定した角度航跡の対に基づいて、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)による目標の交会角を算出するとともに、この算出結果をあらかじめ設定されたしきい値と比較し、算出した交会角がしきい値未満の場合、すなわちこの場合は交会角が小さく、交会法により算出した目標との距離に大きな誤差が含まれるおそれがあるため、仮説距離生成部35からの仮説距離に基づき航跡初期値算出部(1)36で算出した初期値を用いた、航跡維持部(1)37での追尾維持処理により、その後の目標のn+1次元航跡を継続して取得するように選択制御を行う。一方、算出した交会角がしきい値以上の場合には、距離算出部32aからの交会法による算出距離に基づき航跡初期値算出部(2)33aで算出した初期値を用いた、航跡維持部(2)34aでの追尾維持処理により目標の航跡を継続して取得するように選択制御を行う。交会角の算出にあたっては、例えば、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)からの目標の角度航跡、または2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)からの探知情報を、方向単位ベクトルu(k,1)とu(k,2)に変換し、2つの方向単位ベクトルの内積の逆余弦から算出する手法等を適用できる。なお、交会角としきい値の代わりに、交会角の余弦成分(すなわち、方向単位ベクトルの内積)としきい値の余弦成分を用いるように構成することもできる。
次に、図7及び図8のフローチャートを参照して、上述のように構成された第2の実施例の目標追尾装置の動作について、航跡統合部3bにおける処理の流れを中心に説明する。まず、航跡統合部3bは、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)から航跡の初期値を算出済みでない角度航跡を受けとると(ST201のN)、相関部31aがこれら角度航跡を入力し(ST202)、次いで、追尾維持処理に必要な一連の初期値算出処理を行う(ST203)。
このST203での初期値算出では、最初に2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)からの角度航跡間のどの対が同一目標であるかを判定する相関処理を行ない(ST207)、その結果、同一目標と判定された新たな角度航跡の対がある場合には、これら角度航跡を事前選択部40に送出する(ST208のY)。次いで、事前選択部40は、この新たな目標に対する交会角を算出し、その算出結果をあらかじめ設定されたしきい値と比較する(ST209)。そして、その比較結果に基づいて、後段の追尾維持処理に必要な航跡初期値の算出を行う(ST210)。
すなわち、交会角がしきい値未満の場合には(ST214のしきい値未満)、角度航跡の対は仮説距離生成部35に送られ、仮説距離生成部35は、目標までの仮説距離を算出する(ST215)。さらに、この仮説距離と角度航跡とから、航跡初期値算出部(1)36は、航跡初期値としての目標のn+1次元航跡とその誤差評価量を算出して、航跡維持部(1)37による以降の追尾維持処理に備える(ST216)。一方、交会角がしきい値以上の場合には(ST214のしきい値以上)、角度航跡の対は距離算出部32aに送られ、距離算出部32aは、交会法により目標との距離を算出する(ST217)。そして、航跡初期値算出部(2)33aにおいて航跡の初期値を算出し、航跡維持部(2)34aによる追尾維持処理に備える(ST218)。
次いで、再びST201のステップにより、対象目標の航跡の初期値が算出済みである旨の判定がなされると(ST201のY)、航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aは、追尾維持処理に移行すべく、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)で探知した角度情報を直接入力し始める(ST204)。そして、ST209での事前選択の結果によって選択した、航跡維持部(1)37、または航跡維持部(2)34aのどちらか一方の追尾維持処理で目標の航跡を継続取得して、追尾を維持する(ST205)。
すなわち、事前選択部40において算出した交会角がしきい値未満の場合には(ST211のしきい値未満)、ST216のステップで算出した航跡初期値算出部(1)36の算出結果をもとに、航跡維持部(1)37が、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)で探知した角度情報を入力して目標の航跡の取得を維持継続し、その結果を航跡表示部4に送出する(ST212)。一方、事前選択部40において算出した交会角がしきい値以上の場合には(ST211のしきい値以上)、ST218のステップで算出した航跡初期値算出部(2)33aの算出結果をもとに、航跡維持部(2)34aが、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)で探知した角度情報を入力して目標の航跡の取得を維持継続し、その結果を航跡表示部4に送出する(ST213)。この後は、動作終了が指示されるまで、上記した動作ステップを繰り返す(ST206)。
図9は、上記した航跡統合部3b内での処理の流れに対応した航跡統合部3b内主要部の動作タイミングの一例を、時間経過に沿ってモデル化して示す説明図である。相関部31aにより、同一目標の角度航跡の対から新たな目標と判定した角度航跡の対が抽出されると(T21)、事前選択部40により、交会角が算出され、その算出結果に基づいて以降の追尾維持処理として、航跡維持部(1)37と航跡維持部(2)34aの何れか一方が選択される。事前選択部40により、航跡維持部(1)37による追尾維持処理が選択された場合、航跡初期値算出部(1)36は、仮説距離生成部35による距離算出結果に基づき航跡初期値を算出し(T22)、航跡維持部(1)37による追尾維持処理に移行する。一方、事前選択部40により、航跡維持部(2)34aによる追尾維持処理が選択された場合、航跡初期値算出部(2)33aは、距離算出部32aによる距離算出結果に基づき航跡初期値を算出し(T22)、航跡維持部(2)による追尾維持処理に移行する。そして、その後は、追尾終了まで、航跡維持部(1)37と航跡維持部(2)34aの何れか一方の追尾維持処理が動作し、目標の航跡が継続取得される(T23)。
以上説明したように、本実施例においては、相関部において新しい目標と判定した角度航跡の対に対して、事前選択部において2つのn次元角度センサによる交会角を算出し、この交会角の値の範囲によって、2つの追尾維持処理のいずれか一方を選択している。すなわち、算出した交会角がしきい値未満の場合、交会角がより小さいので、交会法により算出した目標との距離に、より大きな誤差が含まれるおそれがあるため、航跡初期値の算出に目標との仮説距離を用いた、航跡維持部(1)による第1の追尾維持処理を選択し、それ以外の場合は、航跡初期値の算出に交会法による算出距離を用いた、航跡維持部(2)による第2の追尾維持処理を選択して、その後の目標の航跡を継続取得している。これにより、第1の実施例と同様に追尾安定性の向上に加え、2つの追尾維持処理を同時並行に動作させず、どちらか一方を動作させることにより追尾維持しているので、装置の処理負荷を軽減することができる。
図10は、本発明に係る目標追尾装置の第3の実施例の構成を示すブロック図である。また、図11〜図12は、この目標追尾装置の第3の実施例の動作を説明するためのフローチャートである。この第3の実施例について、図1〜図9に示した第1の実施例及び第2の実施例の各部と同一の部分は同一の符号で示し、その説明は省略する。第3の実施例が第2の実施例と異なる点は、事前選択部において算出した目標の交会角に基づいて後段で目標の航跡を継続取得するための追尾維持処理を選択する際に、第2の実施例においては、2つの選択肢、すなわち、航跡初期値の算出に目標との仮説距離を用いた、航跡維持部(1)による第1の追尾維持処理と、航跡初期値の算出に交会法による算出距離を用いた、航跡維持部(2)による第2の追尾維持処理とを設け、いずれか一方を選択したのに対し、第3の実施例においては、さらに選択肢を増やし、これら2つの追尾維持処理を同時に選択して、第1の実施例で示したように、それぞれで取得した航跡を統合した統合航跡も選択できるようにしており、交会角の範囲に基づいて、3つの選択肢からいずれか1つを選択するようにした点である。以下、前出の図1〜9、ならびに図10〜12を参照して、その相違点のみを説明する。
図10に例示したように、この目標追尾装置は、同一に構成された第1のn次元角度センサ1(#1)、及び第2のn次元角度センサ1(#2)、同一に構成された第1の角度追尾部2(#1)、及び第2の角度追尾部2(#2)、航跡統合部3c、ならびに第1の航跡表示部4(#1)、及び第2の航跡表示部4(#2)から構成されている。2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)、ならびに、2つの航跡表示部4(#1)及び4(#2)は、前出の第1及び第2の実施例と同じであり、説明を省略する。
また、航跡統合部3cは、相関部31a、事前選択部40a、仮説距離生成部35、航跡初期値算出部(1)36、航跡維持部(1)37、距離算出部32a、航跡初期値算出部(2)33a、航跡維持部(2)34a、事後確率算出部38、及び統合航跡算出部39aから構成されている。ここに、事前選択部40a及び統合航跡算出部39aを除く各構成は、第1及び第2の実施例と同じであり、説明を省略する。
事前選択部40aは、相関部31aにおいて新目標と判定した角度航跡の対に基づいて、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)による目標の交会角を算出するとともに、この算出結果をあらかじめ設定された2つのしきい値である、しきい値1及びしきい値2(しきい値2>しきい値1)と比較し、その結果により、角度航跡の送出及び目標の航跡の継続取得について次のような選択制御を行う。すなわち、交会角が第1のしきい値未満(以下、第1の交会角範囲と表す)の場合、仮説距離生成部35からの仮説距離に基づき航跡初期値算出部(1)36で算出した初期値を用いた、航跡維持部(1)37での追尾維持処理により、その後の目標のn+1次元航跡を継続して取得するように選択制御を行う。また、交会角が第1のしきい値以上、第2のしきい値未満(以下、第2の交会角範囲と表す)の場合、上記した航跡維持部(1)37での追尾維持処理と、距離算出部32aからの交会法による算出距離に基づき航跡初期値算出部(2)33aで算出した初期値を用いた、航跡維持部(2)34aでの追尾維持処理とを共に動作させ、これら2つの追尾維持処理により取得した航跡を統合して目標の航跡を継続取得するように選択制御を行う。また、交会角が第2のしきい値以上(以下、第3の交会角範囲と表す)の場合、上記した航跡維持部(2)34aでの追尾維持処理により、その後の目標の航跡を継続して取得するように選択制御を行う。
統合航跡算出部39aは、第1の実施例における統合航跡算出部39と同様の処理機能に加え、事前選択部40aからの選択制御に基づいて、目標の航跡を、航跡維持部(1)37での追尾維持処理による航跡、航跡維持部(2)34aでの追尾維持処理による航跡、または、これらを統合した航跡のいずれかから選択し、後段の航跡表示部4に送出する。
次に、図11及び図12のフローチャートを参照して、上述のように構成された第3の実施例の目標追尾装置の動作について、航跡統合部3cにおける処理の流れを中心に説明する。まず、航跡統合部3cは、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)から航跡の初期値を算出済みでない角度航跡を受けとると(ST301のN)、相関部31aがこれら角度航跡を入力し(ST302)、次いで、追尾維持処理に必要な一連の初期値算出処理を行う(ST303)。
このST303での初期値算出では、最初に2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)からの角度航跡間のどの対が同一目標であるかを判定する相関処理を行ない(ST307)、その結果、同一目標と判定された新たな角度航跡の対がある場合には、これら角度航跡を事前選択部40aに送出する(ST308のY)。次いで、事前選択部40aは、この新たな目標に対する交会角を算出し、その算出結果をあらかじめ設定された2つのしきい値と比較する(ST309)。そして、その比較結果に基づいて、以下の3つの手順のいずれかにより、後段の追尾維持処理に必要な航跡初期値の算出を行う(ST310)。
すなわち、交会角が第1の交会角範囲の場合には(ST315の第1の交会角範囲)、角度航跡の対は仮説距離生成部35に送られ、仮説距離生成部35は、目標までの仮説距離を算出する(ST316)。さらに、この仮説距離と角度航跡とから、航跡初期値算出部(1)36は、航跡初期値としての目標のn+1次元航跡とその誤差評価量を算出して、航跡維持部(1)37による以降の追尾維持処理に備える(ST317)。また、交会角が第3の交会角範囲の場合には(ST315の第3の交会角範囲)、角度航跡の対は距離算出部32aに送られ、距離算出部32aは、交会法により目標との距離を算出する(ST318)。さらに、航跡初期値算出部(2)33aにおいて航跡の初期値を算出し、航跡維持部(2)34aによる追尾維持処理に備える(ST319)。また、交会角が、第2の交会角範囲の場合には(ST315の第2の交会角範囲)、上記した2つの初期値算出を共に行って、航跡維持部(1)37及び航跡維持部(2)34aによる2つの追尾維持処理の同時動作による統合航跡の取得に備える。
次いで、再びST301のステップにより、対象目標の航跡の初期値が算出済みである旨の判定がなされると(ST301のY)、航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aは、追尾維持処理に移行すべく、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)で探知した角度情報を直接入力し始める(ST304)。そして、ST309での事前選択の結果によって選択した、航跡維持部(1)37の追尾維持処理、航跡維持部(2)34aの追尾維持処理、または、これらの統合結果のいずれか1つにより目標の航跡を継続取得して、追尾を維持する(ST305)。
すなわち、事前選択部40aにおいて算出した交会角が第1の交会角範囲の場合には(ST311の第1の交会角範囲)、ST317のステップで算出した航跡初期値算出部(1)36の算出結果をもとに、航跡維持部(1)37が、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)で探知した角度情報を入力して目標の航跡の取得を維持継続し、その結果を統合航跡算出部39aを経由して航跡表示部4に送出する(ST312)。一方、事前選択部40aにおいて算出した交会角が第3の交会角範囲の場合には(ST311の第3の交会角範囲)、ST319のステップで算出した航跡初期値算出部(2)33aの算出結果をもとに、航跡維持部(2)34aが、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)で探知した角度情報を入力して目標の航跡の取得を維持継続し、その結果を統合航跡算出部39aを経由して航跡表示部4に送出する(ST314)。これに対して、事前選択部40aにおいて算出した交会角が第2の交会角範囲の場合には(ST311の第2の交会角範囲)、図3(c)に示したST105と同様の動作ステップにより、航跡維持部(1)37及び航跡維持部(2)34aでそれぞれに継続取得した目標の航跡を、事後確率算出部38での算出結果に基づいて統合航跡算出部39aにて統合し、この統合航跡を航跡表示部4に送出する(ST313)。この後は、動作終了が指示されるまで、上記した動作ステップを繰り返す(ST306)。
上述した航跡統合部3c内での処理の流れに対応した航跡統合部3c内の主要部の動作タイミングについては、第1の実施例の図4、及び第2の実施例の図9を組み合わせたものとなる。すなわち、事前選択部40aにおける交会角の判定が第2の交会角範囲の場合は、図4と同様な動作タイミングとなり、第1の交会角範囲、または第3の交会角範囲の場合は、図9と同様な動作タイミングとなる。
以上説明したように、本実施例においては、相関部において新しい目標と判定した角度航跡の対に対して、事前選択部において2つのn次元角度センサによる交会角を算出し、この交会角の値の範囲によって、目標の航跡を継続取得する追尾維持処理を選択している。すなわち、交会角が最も小さな範囲である第1の交会角範囲の場合は、航跡初期値の算出に目標との仮説距離を用いた、航跡維持部(1)による第1の追尾維持処理を選択し、交会角が最も大きい範囲である第3の交会角範囲の場合は、航跡初期値の算出に交会法による算出距離を用いた、航跡維持部(2)による第2の追尾維持処理を選択し、交会角がこれらの中間値となる第2の交会角範囲の場合は、航跡維持部(1)及び航跡維持部(2)のそれぞれの追尾維持処理で取得した航跡を統合して、その後の目標の航跡を継続取得している。これにより、交会角が小さな場合でも目標に対する追尾安定性を向上させることができるとともに、交会角の範囲によっては追尾維持処理を同時並行に動作させないので、装置の処理負荷を軽減することができる。
図13は、本発明に係る目標追尾装置の第4の実施例の構成を示すブロック図である。また、図14〜図16は、この目標追尾装置の第4の実施例の動作を説明するためのフローチャート及び説明図である。この第4の実施例について、上述した第1〜第3の実施例の各部と同一の部分は同一の符号で示し、その説明は省略する。第4の実施例が第1の実施例と異なる点は、第1の実施例においては、航跡維持部(1)、及び航跡維持部(2)のそれぞれの追尾維持処理からの目標航跡を事後確率算出部で算出した事後確率に基づいて統合し、この統合航跡を追尾終了まで継続取得することによって追尾維持するのに対し、第4の実施例においては、追尾維持処理に移行後、所定の経過時間までは同様に統合航跡を継続取得するが、その後は、航跡維持部(1)、及び航跡維持部(2)のそれぞれの追尾維持処理による目標航跡のうち、事後確率の大きなどちらか一方を選択し、この選択した側の目標航跡を継続取得することによって追尾維持するように構成した点である。
以下、前出の図1〜図5、ならびに図13〜図16を参照して、その相違点のみを説明する。
図13に例示したように、この目標追尾装置は、同一に構成された第1のn次元角度センサ1(#1)、及び第2のn次元角度センサ1(#2)、同一に構成された第1の角度追尾部2(#1)、及び第2の角度追尾部2(#2)、航跡統合部3d、ならびに第1の航跡表示部4(#1)、及び第2の航跡表示部4(#2)から構成されている。2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)、ならびに、2つの航跡表示部4(#1)及び4(#2)は、第1の実施例と同じであり、説明を省略する。また、航跡統合部3dは、相関部31a、仮説距離生成部35、航跡初期値算出部(1)36、航跡維持部(1)37、距離算出部32a、航跡初期値算出部(2)33a、及び航跡維持部(2)34a、事後確率算出部38、事後選択部41、及び統合航跡算出部39bから構成されている。ここに、事後選択部41、及び統合航跡算出部39bを除く各構成は、第1の実施例と同じであり、説明を省略する。
事後選択部41は、追尾維持処理の初期値が算出されて追尾維持処理に移行後、所定の時間が経過した時点で、事後確率算出部38で算出した、航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aのそれぞれの追尾維持処理による目標航跡の事後確率を参照し、所定の時間経過以降は、事後確率の大きなどちらか一方からの目標航跡を採用して追尾維持を継続するように選択制御を行う。統合航跡算出部39bは、第1の実施例における統合航跡算出部39と同様の処理機能に加え、事後選択部41からの選択制御に基づいて、所定の時間が経過するまでは統合航跡を、また所定の時間経過後は、航跡維持部(1)37、または、航跡維持部(2)34aのそれぞれの追尾維持処理による目標航跡のうちで、どちらか一方を選択し、後段の航跡表示部4に送出する。
次に、図14及び図15のフローチャートを参照して、上述のように構成された第4の実施例の目標追尾装置の動作について、航跡統合部3dにおける処理の流れを中心に説明する。まず、航跡統合部3dは、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)から航跡の初期値を算出済みでない角度航跡を受けとると(ST401のN)、相関部31aがこれら角度航跡を入力し(ST402)、次いで、追尾維持処理に必要な一連の初期値算出処理を行う(ST403)。このST403での初期値算出手順は、図2(b)、及び図3(d)に示した第1の実施例における手順と同様である。
次いで、再びST401のステップにより、対象目標の航跡の初期値が算出済である旨の判定がなされると(ST401のY)、航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aは、追尾維持処理に移行すべく、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)で探知した角度情報を直接入力し始める(ST404)。そして、ST403のステップで算出済みの初期値に基づいて、それぞれの追尾維持処理を同時進行させながら目標航跡の取得を維持継続し、さらに、これら2つの航跡維持部からの航跡を事後確率に基づき統合した統合航跡を得るとともに、所定の時間経過した時点で事後選択を行い、事後確率の大きなどちらか一方の目標航跡を選択して追尾維持する(ST405)。
次に、このST405のステップについて、図15を参照して詳述する。事後選択は、追尾維持処理に移行後、所定の時間経過した時点で行われるため、所定の時間が経過するまでは、事後選択がなされていないので(ST407のN)、航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aにおけるそれぞれの追尾維持処理を同時進行させながら、これらを統合した統合航跡を継続取得し、後段の航跡表示部4に送出する(ST408)。このST408での統合航跡の算出手順は、図3(c)に示した第1の実施例における手順と同様である。所定の時間が経過するまでは(ST409のN)、この統合航跡を繰り返し取得することによって追尾維持する。そして、所定時間が経過すると(ST409のY)、事後選択部41は、事後確率算出部38からの事後確率に基づいて、事後選択を行う。すなわち、以降は統合航跡により追尾維持するのではなく、同時並列に動作していた航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aのそれぞれの追尾維持処理による目標航跡の事後確率を参照し、事後確率の大きなどちらか一方からの目標航跡を採用して追尾維持を継続するように選択制御を行う(ST410)。
このようにして所定の時間が経過し事後選択がなされた後は(ST407のY)、再びST404のステップで次の角度情報が探知されると、これら探知情報は、事後選択された航跡維持部(1)37、または航跡維持部34aのどちらかに送られる(ST411)。そして、事後選択されたどちらかの航跡維持部(1)37、または航跡維持部(2)34aは、それぞれの航跡維持処理により目標航跡の取得を継続して追尾維持するとともに、取得した目標航跡を後段の航跡表示部4に送出し表示する(ST412、またはST413)。この後は、動作終了が指示されるまで、上記した動作ステップを繰り返す(ST406)。
図16は、上記した航跡統合部3d内での処理の流れに対応した航跡統合部3d内主要部の動作タイミングの一例を、時間経過に沿ってモデル化して示す説明図である。相関部31aにより、同一目標の角度航跡の対から新目標と判定した角度航跡の対が抽出されると(T41)、航跡初期値算出部(1)36では、仮説距離生成部35からの仮説距離を用いて、航跡維持部(1)37での追尾維持処理に必要な航跡初期値として、目標のn+1次元航跡とその誤差評価量が算出される(T42)。同様に、航跡初期値算出部(2)33aでは、距離算出部32aで算出された距離を用いて、航跡維持部(2)34aでの追尾維持処理に必要な、目標の航跡の初期値が算出される(T43)。
これらの初期値をもとに、航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aは、目標の追尾維持処理に移行し、それぞれの追尾維持処理が開始されて、目標のn+1次元航跡が継続して取得される。この時に、航跡維持部(1)37の追尾維持処理と航跡維持部(2)34aの追尾維持処理は、同時並行して進行する(T44、及びT45)。さらに、これらと並行して動作する統合航跡算出部39では、航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aからの目標航跡が、事後確率算出部38で算出した事後確率に基づいて統合され、統合航跡として航跡表示部4に送出される(T46)。その後、所定の時間が経過すると、統合航跡に換えて、事後選択部41により選択された航跡維持部(1)37または航跡維持部(2)34aのいずれか一方が、追尾終了まで動作する。図16では、事後選択部41により、航跡維持部(1)37が選択された場合を例示している(T47)。
以上説明したように、本実施例においては、目標の追尾維持処理に移行後、所定の時間が経過して追尾安定性が高まるまでは統合航跡を継続取得して追尾維持し、その後、追尾安定性が高まった以降は、航跡維持部(1)、及び航跡維持部(2)のそれぞれの追尾維持処理による目標航跡のうち、事後確率の大きなどちらか一方を選択し、この選択した側の目標航跡を継続取得することによって追尾維持している。これにより、交会角が小さな場合でも目標に対する追尾安定性を向上させることができるとともに、追尾維持処理に移行して所定の時間経過後は、同時並行に動作する2つの追尾維持処理のうち、どちらか一方を動作させて目標の航跡を継続取得しているので、時間経過に伴い追尾維持処理が収束するに従って、装置の処理負荷を軽減することができる。
なお、本実施例では、事後選択41が事後選択を行なうタイミングとして、経過時間を用いる場合を説明したが、事後選択を行なうタイミングは、これ以外に、観測回数が所定の回数を超えた場合とすることもできる。また、事後確率のどちらか一方が所定の確率を超えた場合、さらには、それらの条件の組み合わせを満足するタイミング等、種々の中から選択することができる。
図17は、本発明に係る目標追尾装置の第5の実施例の構成を示すブロック図である。また、図18〜図19は、この目標追尾装置の第5の実施例の動作を説明するためのフローチャートである。この第5の実施例について、上述した第1〜第4の実施例の各部と同一の部分は同一の符号で示し、その説明は省略する。第5の実施例においては、第3の実施例における事前選択部の処理機能と、第4の実施例における事後選択部の処理機能とを同時に具備した構成としている。すなわち、新たな目標に対しては、事前選択として、各n次元角度センサからの交会角の範囲に基づき目標の航跡を継続取得するための追尾維持処理を選択するとともに、この事前選択で航跡維持部(1)と航跡維持部(2)からの航跡を統合した統合航跡が採用された場合には、事後選択として、追尾維持処理に移行後、所定の経過時間までは統合航跡を継続取得し、その後は、事後確率に基づき航跡維持部(1)または航跡維持部(2)のどちらか一方の追尾維持処理を選択して追尾維持するように構成している。以下、前出の図10〜図16、ならびに図17〜19を参照して、その相違点のみを説明する。
図17に例示したように、この目標追尾装置は、同一に構成された第1のn次元角度センサ1(#1)、及び第2のn次元角度センサ1(#2)、同一に構成された第1の角度追尾部2(#1)、及び第2の角度追尾部2(#2)、航跡統合部3e、ならびに第1の航跡表示部4(#1)、及び第2の航跡表示部4(#2)から構成されている。2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)、ならびに、2つの航跡表示部4(#1)及び4(#2)は、前出の各実施例と同じであり、説明を省略する。また、航跡統合部3eは、相関部31a、事前選択部40a、仮説距離生成部35、航跡初期値算出部(1)36、航跡維持部(1)37、距離算出部32a、航跡初期値算出部(2)33a、及び航跡維持部(2)34a、事後確率算出部38、事後選択部41a、及び統合航跡算出部39cから構成されている。ここに、事後選択部41a、及び統合航跡算出部39cを除く各構成は、前出の第3及び第4の実施例と同じであり、説明を省略する。
事後選択部41aは、事前選択部40aにおける選択制御において、目標の交会角が第2の交会角範囲の場合に対応する、統合航跡による目標の追尾維持が選択された場合に、前出の第4の実施例における事後選択部41と同様の処理機能を果たすよう構成される。また、統合航跡算出部39cは、事前選択部40aにおける選択制御において、統合航跡による目標の追尾維持が選択された場合には、前出の第4の実施例における統合航跡算出部39bと同様の処理機能を果たすとともに、事前選択部40aにおける選択制御において、航跡維持部(1)37、または航跡維持部(2)34aの追尾維持処理による目標の追尾維持が選択された場合には、これら選択制御に該当する追尾維持処理による目標航跡を後段の航跡表示部4に送出する。
次に、図18及び図19のフローチャートを参照して、上述のように構成された第5の実施例の目標追尾装置の動作について、航跡統合部3eにおける処理の流れを中心に説明する。まず、航跡統合部3eは、2つの角度追尾部2(#1)及び2(#2)から航跡の初期値を算出済みでない角度航跡を受けとると(ST501のN)、相関部31aがこれら角度航跡を入力し(ST502)、次いで、追尾維持処理に必要な一連の初期値算出処理を行う(ST503)。このST503での初期値算出手順は、図11(b)、及び図12(d)に示した第3の実施例における手順と同様である。すなわち、事前選択部40aにおける交会角の判定において、交会角が第1の交会角範囲の場合には、航跡初期値算出部(1)36により初期値を算出し、また、交会角が第2の交会角範囲の場合には、航跡初期値算出部(1)36、及び航跡初期値算出部(2)33aの2つの初期値算出部で共に初期値を算出し、さらに、交会角が第3の交会角範囲の場合には航跡初期値算出部(2)33aにより初期値を算出して、以降の航跡維持部(1)37及び航跡維持部(2)34aによる追尾維持処理に備える。
次いで、再びST501のステップにより、対象目標の航跡の初期値が算出済みである旨の判定がなされると(ST501のY)、航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aは、追尾維持処理に移行すべく、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)で探知した角度情報を直接入力し始める(ST504)。そして、事前選択部40aにおける交会角による選択制御に基づいて、航跡維持部(1)37の追尾維持処理、航跡維持部(2)34aの追尾維持処理、または、これらの統合結果のいずれか1つにより目標の航跡を継続取得して、追尾を維持する(ST507)。
すなわち、目標の交会角が第1の交会角範囲の場合には(ST507の第1の交会角範囲)、航跡維持部(1)37が、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)で探知した角度情報を入力して目標の航跡の取得を維持継続し、その結果を統合航跡算出部39cを経由して航跡表示部4に送出する(ST508)。また、目標の交会角が第2の交会角範囲の場合には(ST507の第2の交会角範囲)、所定の経過時間まで統合航跡を継続取得し、所定の時間を経過した後は、航跡維持部(1)37、及び航跡維持部(2)34aのそれぞれの追尾維持処理による目標航跡のうち、事後確率算出部38で算出した事後確率の大きなどちらか一方を選択し、この選択した側の目標航跡を継続取得することによって追尾維持するとともに、この目標航跡を航跡表示部4に送出する(ST509)。このST509での処理手順は、図15(b)に示した第4の実施例におけるST405の詳細な処理手順と同様である。
また、目標の交会角が第3の交会角範囲の場合には(ST507の第3の交会角範囲)、航跡維持部(1)34aが、2つのn次元角度センサ1(#1)及び1(#2)で探知した角度情報を入力して目標の航跡の取得を維持継続し、その結果を統合航跡算出部39cを経由して航跡表示部4に送出する(ST510)。この後は、動作終了が指示されるまで、上記した動作ステップを繰り返す(ST506)。
上述した航跡統合部3e内での処理の流れに対応した航跡統合部3e内の主要部の動作タイミングについては、第2の実施例の図9、及び第4の実施例の図16を組み合わせたものとなる。すなわち、事前選択部40aにおける交会角の判定が、第1の交会角範囲、または第3の交会角範囲の場合は、第2の実施例の図9と同様な動作タイミングとなり、第2の交会角範囲の場合は、第4の実施例の図16と同様な動作タイミングとなる。
以上説明したように、本実施例においては、相関部において新しい目標と判定した角度航跡の対に対して、事前選択部において2つのn次元角度センサによる交会角を算出した結果、交会角が最も小さな範囲である第1の交会角範囲の場合は、航跡初期値の算出に目標との仮説距離を用いた、航跡維持部(1)による第1の追尾維持処理を選択し、交会角が最も大きい範囲である第3の交会角範囲の場合は、航跡初期値の算出に交会法による算出距離を用いた、航跡維持部(2)による第2の追尾維持処理を選択し、交会角がこれらの中間値となる第2の交会角範囲の場合は、航跡維持部(1)及び航跡維持部(2)のそれぞれの追尾維持処理で取得した航跡を統合して、その後の目標の航跡を継続取得している。加えて、統合航跡を選択した場合は、追尾維持処理に移行後、追尾安定性が高まるまでは、2つの追尾維持処理による統合航跡を継続取得して追尾維持し、その後、所定の時間が経過して追尾安定性が高まった以降は、航跡維持部(1)、及び航跡維持部(2)のそれぞれの追尾維持処理による目標航跡のうち、事後確率の大きなどちらか一方を選択し、この選択した側の目標航跡を継続取得することによって追尾維持している。これにより、交会角が小さな場合でも目標に対する追尾安定性を向上させることができるとともに、目標の交会角の範囲によって1つの追尾維持処理のみを選択するか、あるいは、時間経過に伴い追尾維持処理が収束するに従って同時並行動作させた2つの追尾維持処理のどちらか一方を選択して目標の航跡を継続取得しているので、装置の処理負荷を軽減することができる。
なお、本発明は、上記した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。