JP5106161B2 - 積層体及び画像表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は、積層体及び画像表示装置に係り、特に、液晶表示装置の如き画像表示装置等に有利に使用される積層体、及びそのような積層体を用いてなる画像表示装置に関するものである。
液晶表示装置は、高画質、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を持ち、電卓、時計、携帯電話、テレビ、パソコン、プロジェクタ、ATM、カーナビゲーション等の車載用表示装置等、多くの製品に広く用いられている。また、この液晶表示装置は、多種の部品、材料から構成されていることが知られている。更に、かかる液晶表示装置には、所定の基板に、帯電防止層、反射防止層、ハードコート層、透明導電層、アンチグレア層等を設けて、それぞれの異なった機能を発揮するようにした積層体が、使用されているのである。そして、そのような積層体において、その機能はそれぞれ異なっているものの、その基板には、共通して、高い耐熱性、低い吸水性、高い光透過率が、要求されているのである。
ここにおいて、かかる積層体の基板には、従来から、アクリル樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、ノルボルネン系樹脂等、様々なものが使用されている(特許文献1〜5参照)。しかしながら、それら既存の材料は、比重が大きく、更なる軽量化が求められている。
なお、低比重な熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレンやポリエチレン等の、所謂ポリオレフィンが知られている(特許文献6参照)が、結晶性であるため透明性が低く、屈折率も小さく、そして耐熱性も充分とは言えない。更に、4−メチルペンテン−1重合体(特許文献7参照)は、比重が小さく、融点は高いものの、屈折率が小さく、結晶性であり、複屈折等の光学性能を満足するものではなかった。
特に、この液晶表示装置に対しては、市場要求の大きな一つとして、大型化があり、このため、装置のより一層の軽量化が求められて来ている。そして、この大型化薄型化に伴い、積層体には、その自重による撓みが深刻化しているのである。このような理由から、より軽量な積層体の開発が、求められている。
特開2006−62351号公報 特開2006−134872号公報 特開2005−343120号公報 特開2004−158253号公報 特開2006−181731号公報 特開平7−306319号公報 特開2004−101641号公報
ここにおいて、本発明は、かくの如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、透明性、耐熱性、耐光性、耐衝撃性を高いレベルでバランスし、更に比重が小さく軽量な、機能性薄膜が形成された積層体を提供することにある。
そして、本発明者等は、そのような課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、所定のβ−ピネン重合体を用いることによって、目的とする積層体やそれを用いた画像表示装置が有利に得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、上記せる課題の解決のために、比重が0.85以上、1.0未満であり、且つガラス転移温度が80℃以上である、水素添加せしめられたβ−ピネン重合体であって、([水素添加されたオレフィン性二重結合の数]/[水素添加前の重合体中のオレフィン性二重結合の数])×100の値が、95%以上であるものからなる基板の少なくとも片面に、コーティングによって、0.001〜30μmの厚さの機能性薄膜を少なくとも1層形成したことを特徴とする積層体を、その要旨とする。
また、本発明に従う積層体の望ましい態様の一つによれば、前記基板は、10〜30000μmの厚みを有している。
さらに、本発明に従う積層体の別の望ましい態様の一つによれば、前記機能性薄膜は、帯電防止層、反射防止層、ハードコート層又は透明導電層である。
加えて、本発明は、上記せる如き積層体を含むことを特徴とする画像表示装置をも、その要旨とするものである。
このような本発明に従う積層体やそれを用いた画像表示装置にあっては、積層体の基板形成材料として、所定のβ−ピネン重合体を用いているところから、かかるβ−ピネン重合体の有する優れた特性により、以下の如き効果を奏することが出来る。
(1)積層体の基板材料として用いられるβ−ピネン重合体は、比重が小さい重合体であるところから、目的とする積層体の重量を、効果的に軽量化することが可能となる。
(2)かかるβ−ピネン重合体は、耐熱性が高く、吸水率が小さいので、積層体が光源の熱により変形したり、水の吸脱着により変形したりすることを効果的に防ぐことが出来、映像の画質変化を抑制することが出来る。
(3)本発明に従う積層体は、弾性率と耐衝撃性が高度にバランスされているところから、有利に薄型化することが可能である。
(4)本発明に従う積層体は、水蒸気透過速度が小さいために、積層体の内側に水分を通し難く、従って内部の水分に弱い素材を有利に保護することが可能である。
(5)本発明に従う積層体は、廃棄された後、焼却しても、有害なガスを発生しない特徴を有している。
(6)本発明に従う積層体は、透明性が高いところから、鮮明な映像を得ることが可能である。
(7)本発明に従う積層体は、耐光性が高いために、長時間使用における性能の低下が少ない利点を有している。
(8)本発明において用いられるβ−ピネン重合体は、天然物由来の原料から得ることが可能なため、カーボンニュートラルな材料であり、環境にやさしい特徴を有している。
要するに、本発明に係る積層体は、比重が0.85以上、1.0未満であり、且つガラス転移温度が80℃以上である、水素添加せしめられたβ−ピネン重合体であって、([水素添加されたオレフィン性二重結合の数]/[水素添加前の重合体中のオレフィン性二重結合の数])×100の値が、95%以上であるものからなる基板を用い、その少なくとも片面に、コーティングによって、0.001〜30μmの厚さの機能性薄膜が、形成されたものである。ここで、機能性薄膜とは、基板のみでは発現し得ない機能を有する層を与える膜であればよく、特に限定されるものではない。例えば、帯電防止層、反射防止層、ハードコート層、透明導電層等の機能性薄膜がある。
ところで、かかる本発明において積層体の基板材料として用いられるβ−ピネン重合体は、比重が0.85以上、1.0未満であり、且つガラス転移温度が80℃以上である、水素添加せしめられたβ−ピネン重合体であって、([水素添加されたオレフィン性二重結合の数]/[水素添加前の重合体中のオレフィン性二重結合の数])×100の値が、95%以上であるものである。ここで、本明細書及び特許請求の範囲におけるβ−ピネン重合体とは、重合体(ポリマー)中のβ−ピネンの含有量が50質量%以上のものをいう。本発明に係る積層体においては、β−ピネンの含有量が60質量%以上のβ−ピネン重合体が有利に用いられ、更に有利には、β−ピネンの含有量が70質量%以上のβ−ピネン重合体が用いられる。
かかるβ−ピネン重合体を製造する際の原料となるβ−ピネンとしては、従来より公知のものが何れも使用可能である。例えば、松や柑橘類等の植物から採取されたものを、精製した後、直接、用い得ることは勿論のこと、植物から採取されたα−ピネン等のテルペン類や石油由来の化合物を用いて、従来より公知の手法(例えば、米国特許第3278623号明細書に開示の手法)に従って製造されたβ−ピネン等も、用いることが可能である。このような植物由来のβ−ピネンを用いて得られたβ−ピネン重合体は、カーボンニュートラルな材料であり、この点において、本発明に係るプラスチックレンズは、循環型社会の形成や地球温暖化防止に寄与し得るものとなっているのである。
また、本発明で使用されるβ−ピネン重合体は、上記したβ−ピネンの単独重合体であっても、また、β−ピネンと他の共重合可能な単量体の少なくとも1種以上との共重合体であっても、何等差支えない。β−ピネンと共重合可能な単量体としては、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体、配位重合性単量体及び植物由来のテルペン類等を挙げることが出来る。
なお、本発明において、β−ピネン重合体を製造する際に用いられる、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体及び配位重合性単量体としては、従来より一般的に用いられているものを使用することが可能である。また、植物由来のテルペン類も、カチオン重合法、ラジカル重合法又は配位重合法の何れかの重合法において、重合性単量体として用いることが可能である。具体的には、カチオン重合性単量体としては、イソブチレン、イソプレン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、インデン、アルキルビニルエーテル、ノルボルネン等を、また、ラジカル重合性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニルモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニルモノマー;酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、フマル酸エステル、マレイミド等を挙げることが出来る。また、配位重合性単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン、シクロペンテン、ノルボルネン等を例示することが出来、更に、植物由来のテルペン類としては、ミルセン、アロオシメン、オメシン、α−ピネン、ジペンテン、リモネン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、2−カレン、3−カレン等を、例示することが出来る。これらの中から、β−ピネンの使用量等に応じて、一種又は二種以上のものが適宜に選択されて用いられることとなる。β−ピネン重合体はカチオン重合法によって有利に得られることから、上述の如き重合性単量体の中でも、特にカチオン重合性単量体が有利に用いられる。
また、上記共重合可能な単量体をβ−ピネンと共重合する場合において、その共重合量は、ポリマー中の0.001〜50質量%が好ましく、中でも0.01〜20質量%がより好ましく、0.05〜10質量%が最も好ましい。なお、その共重合量が多過ぎると、吸水率が増加したり、耐熱性が低下してしまう等の問題を生じるため、好ましくない。
一方、前記した共重合性単量体と共に、或いは前記共重合性単量体に代えて、少量の2官能以上の架橋性の単量体(以下、架橋性単量体という)を共重合することも出来る。かかる架橋性単量体は、重合体を製造する際に、分岐剤若しくは架橋剤として一般的に用いられているが、その使用量を少量とすることにより、所謂、長鎖分岐構造を有し、有機溶媒への不溶部が生じない程度の分子量を有するβ−ピネン重合体が、有利に得られる。本発明において用いられ得る架橋性単量体としては、具体的に、m−ジイソプロペニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等の2官能性ビニル化合物を挙げることが出来、それらの中でも、経済性や反応性の観点から、m−ジイソプロペニルベンゼンが、好ましく用いられる。
そのような架橋性単量体をβ−ピネン(及びβ−ピネンと共重合可能な単量体)と共重合する場合に、その共重合量は、ポリマー中の0.001〜7質量%が好ましく、中でも0.01〜5質量%がより好ましく、特に0.05〜4質量%が最も好ましい。その共重合量が多過ぎると、得られるβ−ピネン重合体がゲル状となり、熱可塑性を失ってしまい、好ましくない。
ところで、本発明で使用されるβ−ピネン重合体の重合方法は、特に限定されるものではなく、用いられる各重合性単量体に適した公知の重合手法を適宜に選択することが出来る。例えば、アニオン重合法、カチオン重合法、ラジカル重合法及び配位重合法のうちの何れかを、選択して用いることが出来るが、一般に、カチオン重合法が採用されることとなる。
なお、かかるカチオン重合法に従って、本発明で使用されるβ−ピネン重合体を得る場合において、その重合触媒としては、公知のカチオン重合触媒が、適宜に用いられることとなる。具体的には、BF3 、BF3 OEt2 、BBr3 、BBr3 OEt2 、AlCl3 、AlBr3 、AlI3 、TiCl4 、TiBr4 、TiI4 、FeCl3 、FeCl2 、SnCl2 、SnCl4 、WCl6 、MoCl5 、SbCl5 、TeCl2 等の、周期律表3族〜16族の金属のハロゲン化合物;HF、HCl、HBr等の水素酸;H2 SO4 、H3 BO3 、HClO4 、CH3 COOH、CH2 ClCOOH、CHCl2 COOH、CCl3 COOH、CF3 COOH、パラトルエンスルホン酸、CF3 SO3 H、H3 PO4 、P25 等のオキソ酸、及びこれらの基を有するイオン交換樹脂等の高分子化合物;燐モリブデン酸、燐タングステン酸等のヘテロポリ酸;SiO2 、Al23 、SiO2 −Al23 、MgO−SiO2 、B23 −Al23 、WO3 −Al23 、Zr23 −SiO2 、硫酸化ジルコニア、タングステン酸ジルコニア、H+ 又は希土類元素と交換したゼオライト、活性白土、酸性白土、γ−Al23 、P25 をケイソウ土に担持させた固体燐酸等の固体酸等を挙げることが出来る。
これらのカチオン重合触媒は、組み合わせて用いても良く、また他の化合物等を重合系に添加しても良い。かかる他の化合物等は、例えばそれを添加することにより触媒の活性を向上させることが出来る化合物等である。そして、金属ハロゲン化合物の酸性化合物としての活性を向上させる化合物の例としては、MeLi、EtLi、BuLi、Et2 Mg、EtMgBr、Et3 Al、Et2 AlCl、EtAlCl2 、Et3 Al2 Cl3 、(i−Bu)3 Al、Et2 Al(OEt)、Me4 Sn、Et4 Sn、Bu4 Sn、Bu3 SnCl等の金属アルキル化合物;2−メトキシ−2−フェニルプロパン、t−ブタノール、1,4−ビス(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、2−フェニル−2−プロパノール等の、リビングカチオン重合における重合開始剤として用いられる化合物等が、例示される。
また、本発明で使用されるβ−ピネン重合体の重合方法として、溶媒を用いた溶液重合法を用いてもよい。使用可能な溶媒としては、採用される重合法により異なるため、一義的に規定することは困難であるが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;エステル、エーテル等の含酸素系溶媒等を挙げることが出来る。なお、反応性を考慮すると、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒等の使用が、好ましい。これらの溶媒は、単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
かくの如き溶媒の使用量は特に限定されないが、β−ピネン等の単量体100質量部に対して、通常100〜10000質量部程度、好ましくは150〜5000質量部、より好ましくは200〜3000質量部である。この溶媒量が少ないと、重合触媒の均一な混合が困難になるため、反応が不均一となり、均一な重合体が得られなかったり、反応の制御が困難になる。一方、溶媒量が多いと、生産性が低下してしまう問題がある。
そして、重合反応を行う場合、反応温度は通常−80℃〜100℃が好ましく、中でも−40℃〜80℃がより好ましく、−20℃〜80℃が最も好ましい。この反応温度が低過ぎると、反応の進行が遅く、また高過ぎると、反応の制御が困難となり、再現性が得られ難い。
また、重合反応を行うための反応圧力は、特に限定されるものではないが、0.5〜50気圧が好ましく、0.7〜10気圧がより好ましい。通常、1気圧前後で、重合反応が行われることとなる。
さらに、重合反応を行う反応時間は、特に限定されず、反応温度、反応圧力等の条件に応じて、収率良く、β−ピネン重合体が得られるように、反応時間を適宜に決定すればよい。通常は0.01時間〜24時間程度、好ましくは0.2時間〜10時間である。
ところで、重合反応によって生成したβ−ピネン重合体は、例えば、再沈殿、加熱下での溶媒除去、減圧下での溶媒除去、水蒸気による溶媒の除去(スチーム・ストリッピング)等の、重合体を溶液から単離する際の通常の操作によって、反応混合物から分離、取得することが出来る。
本発明で使用されるβ−ピネン重合体は、耐光性、耐衝撃性、耐熱性等の観点から、そのオレフィン性二重結合が水素添加されているものである。そして、この水素添加率としては、一般に90%以上水素添加されていることが好ましく、中でも95%以上水素添加されていることがより好ましく、99%以上水素添加されていることが、最も好ましい。本発明にあっては、前記β−ピネン重合体は、水素添加せしめられたものであって、その水素添加率を示す([水素添加されたオレフィン性二重結合の数]/[水素添加前の重合体中のオレフィン性二重結合の数])×100の値が、95%以上である。なお、水素添加された重合体における不飽和二重結合(炭素−炭素二重結合)の水素添加率は、ヨウ素価滴定法、赤外分光スペクトル測定、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル) 測定等の分析手段を用いて、算出することが可能である。
ここにおいて、本発明で使用されるβ−ピネン重合体の水素添加の方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることが出来る。例えば、ウィルキンソン錯体、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム等の均一系触媒、ケイソウ土、マグネシア、アルミナ、シリカ、アルミナ−マグネシア、シリカ−マグネシア、シリカ−アルミナ、合成ゼオライト等の担持体に、ニッケル、パラジウム、白金等の触媒金属を担持させた不均一系触媒等による公知の方法を用いることが出来る。
また、かかる水素添加する場合に用いることの出来る溶媒としては、β−ピネン重合体が溶解され、且つ水素添加触媒に不活性な有機溶媒であれば、何れも使用することが可能である。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;エステル、エーテル等の含酸素系溶媒等を用いることが出来る。なお、反応性を考慮すると、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒等が好ましい。これらの溶媒は、単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用しても、何等差支えない。
さらに、水素添加反応の反応温度は、使用する水素添加触媒や水素圧力に依存するが、一般に20℃〜250℃程度が好ましく、中でも25℃〜150℃がより好ましく、更には40℃〜100℃が最も好ましい。反応温度が低くなり過ぎると、反応が円滑に進行し難く、また反応温度が高過ぎると、副反応や分子量低下が起こり易い。なお、水素圧力としては、好ましくは常圧〜200kgf/cm2 程度、より好ましくは5〜100kgf/cm2 を用いることが出来る。この水素圧力が低過ぎると、反応が円滑に進行し難く、また水素圧力が高過ぎると、装置上の制約がかかってしまう。
なお、そのような水素添加反応系中におけるβ−ピネン重合体の濃度は、通常2質量%〜40質量%程度であり、好ましくは3質量%〜30質量%、より好ましくは5質量%〜20質量%である。β−ピネン重合体の濃度が低いと、生産性の低下が起こり易く、好ましくない。また、β−ピネン重合体の濃度が高過ぎると、水素化重合体が析出したり、反応混合物の粘度が高くなり、攪拌が円滑に行い難くなる場合が生じ、好ましくない。
また、水素添加反応の反応時間は、使用する水素添加触媒や水素圧力、反応温度に依存するが、通常、0.1時間〜50時間程度、好ましくは0.2時間〜20時間、より好ましくは0.5時間〜10時間が採用されることとなる。
さらに、水素添加反応後のβ−ピネン重合体は、例えば、再沈殿、加熱下での溶媒除去、減圧下での溶媒除去、水蒸気による溶媒の除去(スチーム・ストリッピング)等の、重合体を溶液から単離する際の通常の操作によって、反応混合物から分離、取得されることとなる。
ところで、本発明で使用されるβ−ピネン重合体の分子量は、重合溶液の粘度や溶融粘度、成形性、積層体の強度、耐熱性の観点から、重量平均分子量で3万〜100万程度であることが好ましく、4万〜50万がより好ましく、特に6万〜25万が好ましく、中でも9万〜20万が最も好ましい。なお、重合体の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で求めるゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)や、静的光散乱測定(SLS)等の公知の分析手法を用いて、算出することが出来る。
また、本発明で使用されるβ−ピネン重合体のガラス転移温度(Tg)は、積層体の使用環境から高い方が好ましく、光源の熱による悪影響を避ける上において、80℃以上である必要があり、中でも、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上である。このガラス転移温度の上限は特に定めないが、200℃程度であることが望ましい。本発明に用いられるβ−ピネン重合体のような非晶性重合体においては、ガラス転移温度が高過ぎると、高分子の絡み合いが少なくなり、成形品が脆くなる場合があるからである。
さらに、本発明で使用される、β−ピネン重合体からなる基板の全光線透過率は、高い方が好ましく、一般に80%以上が好ましく、中でも85%以上がより好ましく、そして90%以上が最も好ましい。
更にまた、本発明で使用されるβ−ピネン重合体は、寸法安定性の観点から、吸水率が低い方が好ましい。かかるβ−ピネン重合体の吸水率は、60℃、90%RH(相対湿度)雰囲気下に置いたときの飽和吸水率として0.2%以下が好ましく、中でも0.1%以下がより好ましく、特に0.05%以下が最も好ましい。このような吸水率を与えるβ−ピネン重合体が、有利に選定されることとなる。
このような本発明で使用されるβ−ピネン重合体は、比重が小さいことが特徴である。比重が小さいことで、より軽い積層体を得ることが出来るのである。従って、本発明で使用されるβ−ピネン重合体の比重は、0.85以上、1.0未満である必要があり、特に、0.85〜0.98がより好ましい。0.85よりも小さな比重の重合体を得ることは困難であり、また比重が1.0以上となると、軽量化の目的を充分に達成し得なくなるからである。
本発明は、上記したβ−ピネン重合体より形成される基板を用いるところに、大きな特徴を有するものである。そして、そのような基板の厚みは、本発明の積層体が使用される用途に応じて、適宜に選択されるが、機械的強度やハンドリング性等の観点から、一般に10〜30000μmが好ましく、20〜10000μmがより好ましく採用されることとなる。
また、本発明に用いられる基板中には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤等を含有せしめることが可能である。例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機、無機の粒子(例えば、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末等)、顔料、染料、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤等を含有せしめることが出来るのである。
さらに、本発明の基板の成形方法としては、従来公知の成形方法に従えば良く、例えば射出成形、押出成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、多層ブロー成形、コネクションブロー成形、二重壁ブロー成形、延伸ブロー成形、真空成形、回転成形、溶液キャスト法等が挙げられるが、射出成形及び押出成形が好ましく採用される。
本発明において、基板の少なくとも片面に、コーティングによって形成される機能性薄膜は、特に限定されるものではないが、好ましくは帯電防止層、反射防止層、ハードコート層、透明導電層、アンチグレア層等の機能性を有する薄膜である。
そのような機能性薄膜の厚みは、0.001〜30μmの範囲内において、本発明に従う積層体が使用される用途に応じて適宜に選択されることとなる。その厚みが厚過ぎると、屈曲により容易に機能性薄膜が割れてしまい、機能が低下してしまう問題がある。また、薄過ぎると、その機能を発現し難い問題を生じる。
なお、本発明において、かかる目的とする機能性薄膜は、公知の各種のコーティング手法によって形成することが可能であり、例えば、公知の機能性材料の溶液を用いて、ディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、グラビア法、エアーナイフコート法、ワイヤーバー法、エクストルージョン法、ブレード法、ダイコート法などの湿式法や、スパッターや蒸着等の真空成膜する乾式法により、形成することが出来る。
ここで、本発明に従う機能性薄膜の一つである帯電防止層をコーティングによって形成するための帯電防止剤としては、一般の帯電防止剤、即ちアニオン系帯電防止剤、カチオン系帯電防止剤、非イオン系帯電防止剤、両性系帯電防止剤の他、それら2種類以上の帯電防止剤を併用したものを良好に使用することが出来る。
そこにおいて、アニオン系帯電防止剤とは、アルキルサルフェート型、アルキルアリルサルフェート型、アルキルホスフェート型及びアルキルアミンサルフェート型帯電防止剤である。カチオン系帯電防止剤とは、第4級アンモニウム塩型、第4級アンモニウム樹脂型、イミダゾリン型、ホスホニウム塩型及びスルホニウム塩型帯電防止剤である。
また、非イオン系帯電防止剤とは、ソルビタン型、エーテル型、アミン型、アミド型及びエタノールアミド型帯電防止剤である。両性系帯電防止剤とは、スルホベタイン型、アミンオキシド型、ホスフェート型及びホスホン酸エステル型帯電防止剤である。
さらに、かかる帯電防止層は、通常、他の機能と複合せしめることも可能である。例えば、帯電防止機能とハードコート機能、帯電防止機能と反射防止機能のように、複合化された機能性薄膜として使用される場合がある。
そして、本発明の積層体を反射防止積層体として使用する場合においては、高屈折率層を設け、更にその上に低屈折率層を設けて、反射防止層を構成することが、好適に採用される。そこで、高屈折率層としては特に限定されないが、屈折率1.55〜1.70程度のものであって、積層厚みを0.03〜0.15μmとするのが好ましい。このような高屈折率層は、バインダー成分中に金属化合物粒子を微分散させることによって得ることが出来る。そのバインダー成分は特に限定されるものではなく、ポリエステル、アクリル、ウレタン、エポキシ等の汎用の樹脂を使用出来る。また、金属化合物粒子としては、それ自体が屈折率の高いものであり、具体的には、スズ含有酸化アンチモン粒子、亜鉛含有酸化アンチモン粒子、スズ含有酸化インジウム粒子、酸化亜鉛/酸化アルミニウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子等を用いることが出来るが、帯電防止機能を付加出来る化合物がより好ましく、スズ含有酸化インジウム粒子が特に好適である。この金属化合物粒子は、平均一次粒子径(BET法による球相当径)が0.5μm以下、好ましくは0.001〜0.3μmの粒子径のものが透明性を維持する点で好適である。これらの金属化合物に、更に導電性を向上させる目的で、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン等の有機導電材料を添加することも出来る。
また、低屈折率層としては、屈折率が1.30〜1.40程度のものが好ましく、その積層厚みは0.01〜0.15μm程度である。なお、この低屈折率層を形成する材料としては、公知の材料を用いることが出来、例えばフッ素化合物やパーフルオロアルキル基を有する化合物等が好適である。また、バインダー樹脂中に中空微細粒子を充填させることによって達成することも出来る。このような中空粒子は、例えば、特開2001−233611号公報及びJ.Am.Chem.Soc.,2003,125,316−317等の公知文献に記載されている。
さらに、本発明に従うハードコート層の形成には、公知の硬化性組成物を用いることが出来る。この硬化性組成物には、熱硬化性組成物、活性エネルギー線重合性組成物等がある。熱硬化性組成物として、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等のプレポリマーの架橋反応やシリケートのゾルゲル反応を利用するものを用いることが可能であるが、反応の制御のし易さの点で、活性エネルギー線重合性組成物が好ましく用いられる。即ち、本発明におけるハードコート層は、活性エネルギー線の照射により硬化された硬化性組成物を主体とする層であることが、好ましいのである。なお、そのような活性エネルギー線の照射により硬化された硬化性組成物を主体とする層には、活性エネルギー線による硬化性組成物の他に、公知の無機或いは有機微粒子、重合開始剤、その他の添加剤が含有せしめられていても何等差支えない。また、そのような硬化性組成物については、更にそれを用いたハードコート層の形成方法については、国際公開WO03/26881号公報に詳述されており、本発明においても同様に採用され得るところである。
更にまた、透明導電層の形成にあっても、公知の各種の方法を採用することが出来、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO)、ZnO等をスパッタ等で基板表面に被着させて、薄膜として層状に形成する方法、ITOゾルを含む溶液を塗布する方法、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸等の導電性高分子を基板表面に形成させる方法等を用いることが出来る。
なお、本発明においては、基板と機能性薄膜の密着性を向上させる目的で、所望により基材の片面又は両面に、酸化法や凹凸化法等により、表面処理を予め施しておくことが出来る。その中で、酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。更に、一層以上の下塗り層を設けることも出来る。下塗り層の素材としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエステル等の共重合体或いはラテックス、低分子量ポリエステル、ゼラチン等の水溶性ポリマー等が挙げられる。また、下塗り層中に、酸化スズ、ITOや酸化亜鉛などの金属酸化物やイオン性の有機化合物を、導電性物質として添加することも可能である。
そして、かくの如くして得られた本発明に従う積層体は、各種の用途に用いられ得るが、特に、画像表示装置の積層体として、有利に使用されることとなる。具体的には、先の特許文献等にも示されている如く、機能性薄膜の特性に応じて、画像表示装置の各種の部品や材料として、光の透過経路上等に配されるのである。ここで、画像表示装置とは、照明装置と表示素子とを組み合わせた表示モジュール、更にはこの表示モジュールを用いたテレビ、パソコンモニター等の少なくとも画像表示機能を有する機器のことを意図している。また、そこにおいて用いられる透過型表示素子の代表例としては、良く知られている液晶パネルを挙げることが出来る。更に、照明装置の照明する側に、透過型表示素子を配することで、画像表示装置を得ることが出来る。
その他、本発明に従う積層体は、耐熱性が高く、軽量で、寸法安定性が高いため、電磁波シールド、電子包装用のキャリアテープ等としても、有利に用いられることとなる。
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
(1)β−ピネン重合体水素添加物の合成
十分に乾燥させたガラス製コック付フラスコについて、その内部を充分に窒素置換した後、これに、脱水したN−ヘキサン:184質量部と、脱水した塩化メチレン:210質量部と、脱水したジエチルエーテル:0.5質量部とを加え、−78℃に冷却した。それらの混合物を−78℃にて撹拌しながら、二塩化エチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度:1.0mol/L):7.2質量部を更に加えた。次いで、フラスコ内を−78℃に保持した状態にて、p−ジクミルクロライドのヘキサン溶液(濃度:0.1mol/L):3.0質量部を添加したところ、赤燈色に変化した。その後、直ちに蒸留精製したβ−ピネン:60質量部を、1時間かけてフラスコ内に添加したところ、次第に濃燈色になり、溶液の粘度が上昇した。β−ピネンの添加終了後、メタノール:30質量部を添加して、反応を終了させた。フラスコ内に、蒸留水:100質量部にクエン酸:5質量部を添加してなる水溶液を添加し、5分撹拌した後、水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、アルミ化合物を除去した。得られた有機層をメタノール/アセトン(50/50vol%)の混合溶媒:5000質量部に再沈せしめた後、十分に乾燥して、β−ピネン重合体(A1):60質量部を得た。得られたβ−ピネン重合体(A1)の重量平均分子量は116,000、数平均分子量は51,000、ガラス転移温度は95℃であった。
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器に、シクロヘキサン:70質量部と、上述の如くして得られたβ−ピネン重合体(A1):30質量部を加え撹拌することにより、β−ピネン重合体(A1)を完全に溶解した。次いで、水素添加触媒として5%パラジウム担持アルミナ(N.E.ChemCat製):30質量部を加え、撹拌して十分に分散させた後、耐圧容器内を十分に水素で置換し、室温下、1000rpmで撹拌しながら、100℃、水素圧40kgf/cm2 で、6時間反応させた後、常圧に戻した。反応後の溶液をシクロヘキサン200質量部加えて希釈した後、0.5μmのテフロン(登録商標)フィルターによりろ過して触媒を分離除去した後、メタノール/アセトン(50/50vol%)の混合溶媒:5000質量部に再沈せしめた後、十分に乾燥して、β−ピネン重合体水素添加物(H1):29質量部を得た。得られたβ−ピネン重合体水素添加物(H1)の水素添加率を 1H−NMRから求めたところ、99.9%であり、重量平均分子量は112,000、数平均分子量は50,800、ガラス転移温度は130℃、比重は0.930であった。
その後、かくして得られた高分子量のβ−ピネン重合体水素添加物(H1)の100質量部に対して、紫外線吸収剤である2−(5−メチル−2ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールの0.1質量部と、フェノール系酸化防止剤であるイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)の0.1質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合した後、押出機を用いて溶融混練して、ペレット状のβ−ピネン重合体水素添加物組成物(M1)を得た。
なお、上記した各工程で得られる材料について、また以下の製造工程で得られる材料について、その物性測定は、以下の如くして行った。
−分子量−
数平均分子量及び重量平均分子量は、何れも、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による測定に基づき、ポリスチレン換算値で求められたものである。ここでは、GPC装置として、東ソー株式会社製のHLC−8020(品番)を用い、カラムとして、東ソー株式会社製のTSKgel・GMH−Mの2本とG2000Hの1本とを直列に繋いだものを用いた。
−水素添加率−
1H−NMRスペクトルから、原料樹脂のオレフィン性二重結合プロトン(4〜6ppm)の減少率(%)により、水素添加率{([水素添加されたオレフィン性二重結合の数]/[水素添加前の重合体中のオレフィン性二重結合の数])×100(%)}を求めた。
−ガラス転移温度(Tg)−
充分に乾燥して、溶媒を除去したサンプルを用いて、示差走査熱量測定法(DSC)により、測定した。先ず、サンプルを、窒素100ml/分の気流下、25℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱して、DSCカーブを得る。次に、この得られたDSCカーブを用い、図1に示される如く、その中央接線Bと転移前のベースラインCの交点を通り温度軸に対して平行な平行線Eと、中央接線Bと転移後のベースラインDの交点を通り温度軸に対して平行な平行線Fを引く。本明細書では、この2本の平行線E、Fを2等分する平行線GとDSCカーブの交点における温度Aを、ガラス転移温度(Tg)とした。また、ここでは、測定装置としては、メトラー・トレド株式会社製のDSC30(品番)を用いた。
−全光線透過率−
株式会社村上色彩研究所製のHR−100(品番)を用いて、JIS−K−7361−1に準拠して、測定した。
−吸水率−
プレス成形された、長さ:140mm、幅:60mm、厚さ:0.8mmの板を用い、それを、60℃、90%RHの雰囲気下に10日間置き、その初期重量からの増加した重量の割合を、下式に示される如く、吸水率とした。
吸水率(%)=重量増加分×100/初期重量
−屈折率(nD)−
株式会社アタゴ製のRX−2000(品番)を用いて、JIS−K−7142に準拠して、25℃で測定した。
−比重−
JIS−K−7112:1999のA法に準じて、測定した。
−耐湿性−
80℃、90%RHの条件下で、1000時間の耐久試験を行い、その外観変化を目視で観察した。
(2)シートの作製・表面処理
上記で得られたβ−ピネン重合体水素添加物組成物(M1)(ガラス転移温度:130℃)のペレットに対して、熱風乾燥機を用いて、90℃、4時間の乾燥を行った。その後、そのペレットをスクリュウ径:20mmの二軸押出機とクロムメッキを施した150mm幅のコートハンガーダイスを用いて、260℃で溶融押出した後、その押し出されたシート状のβ−ピネン重合体水素添加物組成物(M1)を3本の冷却ロール(直径:100mm、ロール温度:120℃)に通して冷却し、約100mm幅、厚み:100μmの押出成形フィルム(F1)を得た。かくして得られたフィルム(F1)の吸水率は0.02%と、良好であり、また全光線透過率は92%と、非常に透明であった。更に、耐湿性試験での外観変化は見られず、良好であった。屈折率は1.505であった。
次いで、この得られたフィルム(F1)に対して、照度:5.9mW/cm2 (172nm)、照射量:354mJ/m2 (照射窓からの距離:2.3mm、時間:60秒)の条件で、エキシマ処理を行い、表面処理フィルム(F2)を得た。
−実施例1−
上記の表面処理フィルム(F2)の表面処理面に、下記の帯電防止ハードコート層形成用組成物を塗布した後、80℃で30秒間乾燥し、次いで80W/cmの高圧水銀灯を用いて、12cmの距離から4秒間照射して硬化させることにより、帯電防止ハードコートフィルム(F3)を得た。形成された帯電防止ハードコート層の厚さは、6.0μmであった。
〈帯電防止ハードコート層形成用組成物〉
アクリルモノマー(KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬株式会社製)):180質量部、アクリロイルモルフォリン(株式会社興人製):46質量部、光反応開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製):25質量部、導電性微粒子(ELCOM V2504、ITOゾル、固形分20%、触媒化成工業株式会社製):540質量部、レベリング剤(FZ2207、日本ユニカー株式会社製、10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液):7質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル:101質量部、及び酢酸エチル:101質量部。
かくして得られた帯電防止ハードコートフィルム(F3)について、その表面抵抗は9.2×107 Ω/□、鉛筆硬度は3H、全光線透過率は85%、ヘイズは0.8%であり、良好な帯電防止性とハードコート性能を有し、且つ軽量な透明フィルムであった。
−実施例2−
先に得られた表面処理フィルム(F2)の表面処理面に、高屈折率層形成用硬化性組成物として、「デソライトKZ7987B」(JSR株式会社製)を用いて、これをワイヤーバーコータにて塗工した後、オーブン中、80℃、1分間の条件で乾燥して、塗膜を形成した。次いで、大気中、メタルハライドランプを用いて、0.3J/cm2 の光照射条件で照射することにより、塗膜を紫外線硬化させ、膜厚が0.1μmである高屈折率層を形成した。
その後、低屈折率層形成用硬化性組成物として、「オプスターJN7215」(JSR株式会社製)を用いて、これを、上記で形成された高屈折率層上に、ワイヤーバーコータを用いて塗工し、室温で5分間風乾して、塗膜を形成した。この塗膜を、オーブンを用いて140℃、1分の条件で加熱し、膜厚が0.1μmの低屈折率層を形成し、反射防止フィルム(F4)を得た。かくして得られた反射防止フィルム(F4)について、その全光線透過率は91%、ヘイズは0.8%、反射率は0.8%となり、これによって軽量且つ良好な反射防止性能を有する透明フィルムが得られた。
−実施例3−
先に得たフィルム(F1)を用い、その片面に、DCマグネトロン・スパッタリング法により、透明導電性薄膜層を形成した。即ち、先ず、真空槽を0.13Paまで排気した後に、アルゴンガスを0.4Paまで導入し、次いで、酸化錫を20質量%含有する酸化インジウム−錫ターゲットを用いてスパッタリングを行い、表面抵抗が400Ω/□の透明導電性フィルム(F5)を得た。この得られた透明導電性フィルム(F5)は全光線透過率が90%、ヘイズが0.4%と、良好な透明性を有していた。
以上の結果から、本発明によれば、基板の比重が小さいために、軽量であって、また透明性、耐熱性、耐光性に優れた、機能性薄膜層を有する積層体が得られることが明らかとなった。
実施例におけるガラス転移温度を、DSCカーブから求める方法を示す説明図である。

Claims (7)

  1. 比重が0.85以上、1.0未満であり、且つガラス転移温度が80℃以上である、水素添加せしめられたβ−ピネン重合体であって、([水素添加されたオレフィン性二重結合の数]/[水素添加前の重合体中のオレフィン性二重結合の数])×100の値が、95%以上であるものからなる基板の少なくとも片面に、コーティングによって、0.001〜30μmの厚さの機能性薄膜を少なくとも1層形成したことを特徴とする積層体。
  2. 前記基板が、10〜30000μmの厚みを有していることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
  3. 前記機能性薄膜が、帯電防止層であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層体。
  4. 前記機能性薄膜が、反射防止層であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層体。
  5. 前記機能性薄膜が、ハードコート層であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層体。
  6. 前記機能性薄膜が、透明導電層であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層体。
  7. 請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載の積層体を含むことを特徴とする画像表示装置。
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