この発明に係るシステム(保守用車両の進路情報取得システム、ナビゲーションシステム、設定進路外への進出防止システム及び位置検出システム)について好適な実施の形態を添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1及び図2は、この実施形態に係るシステム100(図3参照)が適用される駅構内10、60及び駅中間62の模式平面図である。
駅構内10、60は、新幹線等の車両(列車)の停車駅であり、駅中間62は、駅構内10と駅構内60との間をいう。なお、図1及び図2において、駅構内10は、A駅の構内であり、駅構内60は、B駅の構内である。
駅構内10、60及び駅中間62には、上り方向(図1及び図2の右側から左側への方向)に前記列車が走行する線路12と、下り方向(図1及び図2の左側から右側への方向)に前記列車が走行する線路14とが所定間隔離間して平行に配置されている。なお、線路12、14等は、理解の便宜のため、1本の線で描いている。
また、駅構内10、60には、線路12、14に対して線路16〜22が平行に配置されている。線路16、18は、前記上り方向の本線(上り本線)としての線路12に対する支線(上り1番線、上り2番線)であり、一方で、線路20、22は、前記下り方向の本線(下り本線)としての線路14に対する支線(下り1番線、下り2番線)である。
また、線路16、18は、線路12から複数の分岐線(線路)24〜30を介して分岐し、一方で、線路20、22は、線路14から複数の分岐線(線路)32、34を介して分岐している。駅構内10、60には、線路12と線路14とを連結するための分岐線(線路)36、38が配置され、さらに、線路18、22と保守基地42、46との間に線路40、44がそれぞれ配置されている。さらにまた、それぞれの線路12〜22、40、44及び分岐線24〜34における他の線路及び他の分岐線との接続ポイント(分岐点)には、分岐器48がそれぞれ配設されている。
そして、各線路12〜22、40、44及び分岐線24〜34は、2本のレール152を所定間隔離間して平行に配置することにより構成されている。この場合、各レール152には所定長毎に継目が存在し、この継目にプラスチック等の電気絶縁物(絶縁物)50が挿入されている。この絶縁物50は、電気絶縁材料で構成される連結板154をボルト156によりレール152に固定することで、前記継目内に固定される。
なお、図1及び図2では、絶縁物50を誇張して図示している。また、各線路12〜22、40、44及び各分岐線24〜34には、2本のレール152(図3参照)に少なくとも1つの絶縁物50がそれぞれ挿入されている。また、各レール152における2つの絶縁物50の間の軌道部分は、信号電流(前記列車の制限速度等を示す信号)を流すための図示しない軌道回路の一部として構成されており、該列車は、前記信号電流の示す前記制限速度で走行するように制御される。
駅構内10、60及び駅中間62の保守管理を担当する保守区事務所104(図3及び図4参照)の保守基地42、46は、駅構内10、60及び駅中間62の保守作業を行う保守用車両52〜58を所有している。
これらの保守用車両52〜58は、ディーゼル機関等のエンジン170(図3参照)の駆動作用下に移動可能な車両であり、前記列車が走行する日中は、当該列車との衝突を回避する目的で、駅構内10内の保守基地42、46に収容されて、該列車が走行しない夜間等の時間帯には、保守基地42、46又は線路40、44を出発して、駅構内10、駅中間62及び/又は駅構内60中を移動しながら所定の保守作業を行う。
前記保守作業とは、例えば、各線路12〜22、40、44及び各分岐線24〜34を構成するレール又は枕木の点検及び交換や、各線路12〜22、40、44及び各分岐線24〜34が配置される図示しない道床を構成するバラストの突き固め作業や、架線の点検及び張替え作業等の各種作業をいう。なお、前述したように、各レール152(図3参照)における2つの絶縁物50の間の軌道部分は、前記軌道回路の一部として構成されているが、保守用車両52〜58は、前記保守作業のために、一定箇所に長時間停車したり、あるいは、前記上り方向に前記列車が走行する線路12、16、18や前記下り方向に前記列車が走行する線路14、20、22において、これらの方向とは逆方向に進行する場合もあるので、前記軌道回路の保護等の観点から該軌道回路から電気的に絶縁されている。
図3〜図7は、この実施形態に係るシステム100の概略ブロック図である。
このシステム100は、前記列車の運行等を管理するPTC(Programmed Traffic System)102と、車載装置(車両制御装置)106と、保守区事務所104内の駅PRC(進路設定装置)114と無線120を介して通信可能なハンディターミナル(進路情報出力装置)108と、モニタ132及びスピーカ134(ナビゲーション装置)と、ブレーキ装置136と、速度センサ(速度検出手段)142とを有する。
PTC102は、線路12、14の路線に沿って設けられた保守区事務所104を含む複数の保守区事務所をデジタル回線110で接続することにより、前記列車の運行管理、前記列車の乗客に対する旅客案内、信号機及び分岐器48の遠隔操作等に関わる各種情報を各保守区事務所で互いに共有するシステムである。そして、保守区事務所104内には、デジタル回線110に接続された保守区端末112及び駅PRC114が配置されている。
保守区端末112は、夜間等の時間帯に前記保守作業を行う保守用車両52〜58のダイヤグラムと、駅構内10、60又は駅中間62での保守用車両52〜58の移動経路(進路)の計画表(進路計画表)とを作成する。
なお、前記ダイヤグラムは、保守基地42、46又は線路40、44を出発した保守用車両52〜58が駅構内10、60及び/又は駅中間62(図1及び図2参照)を移動しながら保守作業を行い、該保守作業の完了後に再び保守基地42、46又は線路40、44に戻るまでの運行予定を示す図表である。
また、前記進路計画表は、前記保守作業における線路12〜22、40、44及び分岐線24〜34での保守用車両52〜58の移動経路(進路)の順序を示す図表である。この進路計画表では、駅構内10、60及び駅中間62の線路12〜22、40、44及び分岐線24〜34における2つの絶縁物50の間(前記軌道回路を構成するレール152の一部分)を1区間とし、これらの区間に所定の番号(例えば、インデックスA、B、…や、No.1、2、…)を割り振っている。そのため、例えば、前記進路が、保守用車両52が線路40から線路18に向かって走行するための進路であれば、前記進路計画表では、線路40から線路18までの進路が「インデックスA→インデックスB」あるいは「No.1→No.2」のように番号表記されている。なお、この例に示すように、前記区間には、分岐器48を通過して保守用車両52〜58を走行させる区間も含まれる。
図3及び図4に示すように、駅PRC114は、各分岐器48(図1及び図2参照)の開通方向や、絶縁物50近傍に配置された図示しない信号機の信号表示を遠隔操作により自動的に切り替える自動進路制御装置である。すなわち、駅PRC114は、遠隔操作により各分岐器48の開通操作(保守用車両52〜58の進行方向に開通するように分岐器48を操作すること)や、復位操作(前記進行方向に対して開通状態にある分岐器48を元の開通方向に戻すこと)や、移動経路(進路)の取消操作等を行う。この結果、駅PRC114は、前記開通操作により、保守用車両52〜58を現在走行している区間(以下、説明の便宜上、軌道回路ともいう。)から絶縁物50及び/又は分岐器48を越えて他の区間(軌道回路)に進行させるための進路の設定を行い、一方で、前記復位操作又は取消操作により、保守用車両52〜58を現在走行している区間(軌道回路)内でのみ進行させるための進路の解除を行う。
ハンディターミナル108は、保守用車両52〜58の乗員(以下、作業員ともいう。)が所持する携帯型操作端末である。前記作業員は、前記保守作業に先立って、保守区事務所104にて、保守区端末112からハンディターミナル108に前記ダイヤグラム及び前記進路計画表中に記載されている各種データ(配線図データ、進路情報データ及び進路線別データ)をダウンロードする。
なお、前記配線図データとは、駅構内10、60及び駅中間62での各線路12〜22、40、44及び各分岐線24〜34の配置を表わす図1及び図2の図示内容である。また、前記進路情報データとは、前記進路計画表中の保守用車両52〜58の各進路を示すデータである。さらに、前記進路線別データとは、各線路12〜22、40、44及び各分岐線24〜34の線別や、前記各進路の別を示すデータである。
また、ハンディターミナル108は、前記作業員の操作により、アンテナ118から無線120を介して駅PRC114のアンテナ116に、分岐器48の開通操作(進路の設定)、あるいは、分岐器48の復位操作又は進路の取消操作(進路の解除)を要求する。駅PRC114は、無線120からアンテナ116を介して受信した前記要求に基づいて上述の分岐器48の開通操作、復位操作又は進路の取消操作を行い、前記設定又は前記解除の完了とを示す要求応答を、アンテナ116から無線120を介してハンディターミナル108に送信する。
ハンディターミナル108は、前記要求や、無線120からアンテナ118を介し受信した前記要求応答を、前記進路の設定又は解除に関わる進路情報として出力する。
前述したように、ハンディターミナル108は、保守用車両52〜58の作業員が携帯するものであり、無線120を介した駅PRC114との通信は、保守区事務所104内のみならず、保守用車両52〜58内でも可能である。
また、ハンディターミナル108は、通信ケーブル122、バッテリ128により駆動するインターフェースボックス(I/F)124及び通信ケーブル126を介して車載装置106と接続されている。そのため、上述の配線図データ、進路情報データ及び進路線別データや前記進路情報は、ハンディターミナル108から通信ケーブル122、I/F124及び通信ケーブル126を介して車載装置106に出力可能である。
速度センサ142は、車輪138、140の回転数に応じた保守用車両52〜58の速度を車速パルスとして車載装置106に出力する。
また、GPSアンテナ148は、図示しないGPS衛星から無線150を介して受信したGPS信号を車載装置106に出力する。
さらに、保守用車両52〜58下方に配置された車上子164は、レール152に沿って所定間隔(例えば、前記路線の起点から1[km]間隔)で配置された地上子160を無線162を介して検知し、その検知信号を車載装置106に出力する。
図5に示すように、車載装置106は、GPS受信部198と、無線通信部(無線通信手段)200と、ナビゲーション制御部202と、距離検出部(位置検出手段)250を備える保守用車両制御部(車両制御手段)204と、車載装置106を駆動するための電源206とを有する。
GPS受信部198は、GPSアンテナ148からの前記GPS信号からPPS信号(Pulse Per Second)信号を生成し、このPPS信号を基準信号として保守用車両制御部204に出力する。なお、前記生成されたPPS信号は、無線通信部200における無線データ通信の同期信号として利用される。
無線通信部200は、アンテナ144から無線146を介して他の保守用車両(他車両)と通信を行う。この場合、無線通信部200は、図9に示すように、例えば、自車両(保守用車両52)からアンテナ144(図3及び図5参照)及び無線146を介し当該自車両の現在位置及び速度を示す自車両情報と進路線別情報とを送信し、一方で、他車両(保守用車両54、56)から無線146及びアンテナ144を介し前記他車両の現在位置及び速度を示す他車両情報と進路線別情報とを受信する。なお、前記自車両の進路線別情報とは、前記自車両が現在進行している進路及び線路を示す進路線別データをいい、前記他車両の進路線別情報とは、前記他車両が現在進行している進路及び線路を示す進路線別データをいう。
図5に示すように、保守用車両制御部204は、保守用車両(自車両)52〜58の移動を制御するものであり、ブレーキ装置136にブレーキ信号を出力する。ブレーキ装置136は、前記ブレーキ信号に基づいて各車輪138、140にブレーキ制動を行って保守用車両52〜58を強制的に停車させる。
また、保守用車両制御部204は、ハンディターミナル108から通信ケーブル122、I/F124及び通信ケーブル126を介し入力された前記配線図データ、前記進路情報データ、前記進路線別データ及び前記進路情報をナビゲーション制御部202に出力し、無線通信部200からの前記他車両の他車両情報及び進路線別情報をナビゲーション制御部202に出力し、GPS受信部198からの前記時刻データをナビゲーション制御部202に出力する。さらに、保守用車両制御部204は、ナビゲーション制御部202からの各種情報を無線通信部200やハンディターミナル108に出力する。
この場合、保守用車両制御部204は、GPS受信部198から入力された前記PPS信号に基づいて無線通信部200における他車両との通信のタイミングを取り(送信の同期を取り)、あるいは、車上子164からの前記検知信号により自車両(保守用車両52〜58)の現在位置の補正を行う。
保守用車両制御部204内の距離検出部250は、図6に示すように、走行距離演算部252と、記憶部254と、現在位置算出部256と、前回位置記憶部258とを有し、所定時間毎(100[ms]毎)に自車両である保守用車両52〜58の現在位置xを検出してナビゲーション制御部202に出力する。
この場合、記憶部254には、車輪138、140の円周rと、車輪138、140のギヤ比Gと、速度センサ142から出力される車輪138、140の1回転当たりの車速パルス数pとが記憶されている。走行距離演算部252は、前回の現在位置の検出(100[ms]前)から現在時刻までに速度センサ142から入力される車速パルス数p´と、記憶部254から読み出した円周r、ギヤ比G及び車速パルス数pとを用いて、前回の検出から前記現在時刻までの100[ms]間の自車両(保守用車両52〜58)の走行距離x´(=G×r×p´/p)を算出する。
前回位置記憶部258には、前回の検出にて算出された現在位置が位置x0として記憶されている。現在位置算出部256は、前回位置記憶部258から読み出した位置x0と、走行距離演算部252からの走行距離x´とを加算して現在時刻における前記自車両(保守用車両52〜58)の現在位置xを算出する。
従って、距離検出部250では、下記の(1)式により現在位置xを算出することになる。
x=x0+x´=x0+G×r×p´/p (1)
また、現在位置算出部256は、走行距離x´を所定時間t(100[ms])で除算することにより前記車速パルスに基づく車速v{=x´/t=G×r×p´/(p×t)}を算出する。現在位置算出部256は、2相の車速パルスの位相差を比較することにより、自車両(保守用車両52〜58)の進行方向も算出することが可能である。従って、距離検出部250は、現在位置x及び速度(車速v及び進行方向)を自車両情報としてナビゲーション制御部202に出力する。
なお、距離検出部250では、前記検知信号の示す地上子160の位置(キロ程)を基準位置(前回の位置x0)として前回位置記憶部258に設定し、前記自車両(保守用車両52〜58)が地上子160上を通過した時刻から100[ms]毎に現在位置xの検出を行うことも可能である。
ナビゲーション制御部202は、図5及び図7に示すように、保守用車両制御部204からの前記自車両情報{自車両の現在位置x及び速度(車速vと進行方向)}と、前記(自車両の)進路情報と、無線通信部200から保守用車両制御部204を介して入力された前記他車両情報{他車両の現在位置x及び速度(車速vと進行方向)}及び前記他車両の進路線別情報に基づいて、これらの情報に応じた各種情報を通信ケーブル130を介しタッチパネル式のモニタ132及びスピーカ134に出力する。
ナビゲーション制御部202は、配線図データベース(配線図データ記憶手段)210と、進路情報データベース(進路情報データ記憶手段)212と、進路線別データベース(進路線別データ記憶手段)214と、警報ブレーキデータベース216と、音声データベース(音声データ記憶手段)218と、データ出力部220〜232と、移動範囲検出部(移動可能範囲検出手段)236と、進出判定部(進路判定手段)238と、出力部240とを有する。
前記保守作業に先立って、保守区端末112(図3及び図4参照)からハンディターミナル108にダウンロードされた前記配線図データ、前記進路情報データ及び前記進路線別データは、通信ケーブル122、I/F124及び通信ケーブル126及び保守用車両制御部204を介しナビゲーション制御部202に入力され、該ナビゲーション制御部202内において、前記配線図データは、配線図データベース210と比較され、前記進路情報データは、進路線別データベース214と比較され、前記進路線別データは、進路線別データベース214と比較される。なお、警報ブレーキデータベース216に格納されている第1警報情報及び第2警報情報等の各種警報情報や、音声データベース218に格納されている音声データは、予め格納されている。
データ出力部220は、保守用車両制御部204から前記自車両情報が入力された場合に、この自車両情報中の現在位置xに対応する配線図データ(駅構内10、60又は駅中間62の配線図)を配線図データベース210から読み出し、この配線図データに前記自車両の現在位置xを重畳して移動範囲検出部236及び出力部240に出力する。また、データ出力部220は、保守用車両制御部204から前記他車両情報が入力された場合には、この他車両情報中の現在位置xに対応する配線図データを配線図データベース210から読み出し、この配線図データに前記他車両の現在位置xを重畳して移動範囲検出部236及び出力部240に出力する。
データ出力部222は、保守用車両制御部204から前記自車両の進路情報(前記要求及び前記要求応答)が入力された場合には、この進路情報に対応する進路情報データ(前記進路情報の示す進路)を進路情報データベース212から読み出して、移動範囲検出部236、データ出力部228、232及び出力部240に出力する。
データ出力部224、230は、前記自車両の進路線別情報を検出する進路線別検出手段を構成する。この場合、データ出力部224は、前記自車両の進路情報に対応する進路線別データ(前記進路情報の示す進路及び線路)を進路線別データベース214から読み出して移動範囲検出部236及びデータ出力部230に出力する。データ出力部230は、データ出力部224からの前記進路線別データとを前記自車両の進路線別情報として、前記自車両情報と共に出力部240に出力する。
また、データ出力部224は、前記他車両の進路線別情報を検出する機能も有しており、前記他車両の進路線別情報が入力された場合には、この進路線別情報に対応する進路線別データを進路線別データベース214から読み出して、移動範囲検出部236に出力する。
データ出力部228は、前記自車両情報中の現在位置xに、データ出力部222からの前記進路情報データを重畳して出力部240に出力する。
データ出力部232は、前記進路情報データに対応する音声データ(前記進路情報の示す前記進路に応じた音声データ)を音声データベース218から読み出して出力部240に出力する。
移動範囲検出部236は、線路12〜22、40、44及び分岐線24〜34における自車両又は他車両(保守用車両52〜58)の現在の移動可能範囲を検出し進出判定部238に通知する。
すなわち、移動範囲検出部236は、データ出力部220から前記自車両の配線図データ及び現在位置xが入力されると共に、データ出力部222から前記自車両の進路情報データが入力されるか、あるいは、データ出力部224から前記自車両の進路線別データが入力された場合には、前記配線図データ及び現在位置xと、前記進路情報データ又は前記進路線別データ中の進路(及び線別)とを比較して、前記自車両の移動可能範囲を検出し、この移動可能範囲を進出判定部238に出力する。
また、移動範囲検出部236は、データ出力部220から前記他車両の配線図データ及び現在位置xが入力されると共に、データ出力部224から前記他車両の進路線別データが入力された場合には、前記配線図データ及び現在位置xと、前記進路情報データ又は前記進路線別データ中の進路(及び線別)とを比較して、前記他車両の移動可能範囲を検出し、この移動可能範囲を進出判定部238に出力する。
なお、前述した移動可能範囲とは、進路が設定され、解除され、あるいは、設定又は解除の要求がハンディターミナル108から駅PRC114に要求されている状態において、自車両又は他車両(保守用車両52〜58)が移動可能な範囲をいう。
進出判定部238は、前記自車両の速度(車速v及び進行方向)と前記移動可能範囲とを対比して、現在位置xが前記移動可能範囲から外れているか、又は現在位置xが前記移動可能範囲内における該移動可能範囲の両端近傍にあると判定した場合に、保守用車両制御部204、モニタ132及びスピーカ134に対して警報を出力することを決定し、この判定結果(決定)に対応する警報情報を警報ブレーキデータベース216から読み出して出力部240に出力すると共に、この警報情報に対応する音声データを音声データベース218から読み出して出力部240に出力する。
また、進出判定部238は、前記自車両の速度及び前記自車両の移動可能範囲や、前記他車両の速度及び前記他車両の移動可能範囲を対比して、前記自車両と前記他車両とが衝突するおそれがあるか、衝突するおそれはないがそのような状態になりつつあると判定した場合に、保守用車両制御部204、モニタ132及びスピーカ134に対して衝突の回避を警告するための警報を出力することを決定し、この判定結果(決定)に対応する警報情報を警報ブレーキデータベース216から読み出して出力部240に出力すると共に、この警報情報に対応する音声データを音声データベース218から読み出して出力部240に出力する。
なお、進出判定部238では、現在位置xが前記移動可能範囲から外れておらず且つ前記移動可能範囲の両端近傍よりも内側にある場合には、前述の警報情報及び前記音声データの出力処理を行わない。また、進出判定部238では、前記自車両と前記他車両との間で衝突する可能性がないと判定した場合にも、前述の警報情報及び前記音声データの出力処理を行わない。
次に、進出判定部238での前記自車両の移動可能範囲からの進出に関わる判定処理について、図8を参照しながら、さらに説明する。ここでは、前記移動可能範囲が2つの絶縁物50の間の軌道部分(軌道回路)であり、自車両(保守用車両52〜58)がこの移動可能範囲から外れて進行する可能性がある場合に、前記移動可能範囲の端部である絶縁物50より距離(危険域接近距離)x1〜x2の区間を第1範囲とし、前記第1範囲よりも絶縁物50側である該絶縁物50から距離(危険位置到達距離)x1までの区間を第2範囲として説明する。
なお、この第1範囲及び第2範囲は、警報ブレーキデータベース216に格納されている前記自車両の速度に応じて設定されている所定の範囲である。
進出判定部238(図7参照)は、警報ブレーキデータベース216から前記自車両の速度に応じた第1範囲及び第2範囲を読み出した状態で、前記自車両の移動可能範囲と前記自車両の速度とを対比して、前記自車両の現在位置xが前記第1範囲内(距離x1〜x2の区間内)にあると判定したときには、アラーム警報を示す第1警報情報を警報ブレーキデータベース216から読み出して出力部240に出力すると共に、この第1警報情報に対応する音声データを音声データベース218から読み出して出力部240に出力する。
また、進出判定部238(図7参照)は、警報ブレーキデータベース216から前記自車両の速度に応じた第1範囲及び第2範囲を読み出した状態で、前記自車両の移動可能範囲と前記自車両の速度とを対比して、前記自車両の現在位置xが前記第2範囲内(絶縁物50〜x1の区間内)にあると判定したときには、非常ブレーキ及びアラーム警報を示す第2警報情報を警報ブレーキデータベース216から読み出して出力部240に出力すると共に、この第2警報情報に対応する音声データを音声データベース218から読み出して出力部240に出力する。
次に、進出判定部238での前記自車両と前記他車両との衝突防止に関わる判定処理について、図9を参照しながら、さらに説明する。ここでは、前記自車両を保守用車両52とし、前記他車両を保守用車両54、56として、前記自車両及び前記他車両が同一の線路272を進行する場合について説明する。
なお、図9では、自車両(保守用車両52)の移動限界位置は、他車両(保守用車両54、56)の位置であり、一方で、前記他車両の移動限界位置は、前記自車両の位置である。すなわち、前記自車両の移動可能範囲は、前記他車両までであり、一方で、前記他車両の移動可能範囲は、前記自車両までである。
そして、警報ブレーキデータベース216(図7参照)には、前記自車両に関わる第1範囲(危険域接近距離x2´)及び第2範囲(危険域到達距離x1´)のデータと、前記他車両に関わる第1範囲(危険域接近距離x2´´)及び第2範囲(危険域到達距離x1´´)のデータが格納されている。
なお、x1´及びx2´は、前記他車両(保守用車両54、56)から前記自車両(保守用車両52)に向かう所定の距離であり、x1´´及びx2´´は、前記自車両から前記他車両に向かう所定の距離であり、これらは、前記自車両の速度や前記他車両の速度に応じて設定される距離である。
進出判定部238(図7参照)は、警報ブレーキデータベース216から前記自車両の速度に応じた第1範囲(x2´)及び第2範囲(x1´)と他車両の速度に応じた第1範囲(x2´´)及び第2範囲(x1´´)とを読み出した状態で、前記自車両と前記他車両との間の距離Dと、x1´、x1´´、x2´及びx2´´との間で、D≦x2´+x2´´及び/又はD≦x1´+x1´´の関係があるか否かを判定する。
この場合、D≦x1´+x1´´であれば、進出判定部238は、前記自車両と前記他車両とが衝突するおそれがあるので前記自車両を停車させることを決定し、警報ブレーキデータベース216から前記自車両の停車に応じた第2警報を読み出すと共に、この第2警報に応じた音声データを音声データベース218より読み出し、前記第2警報及び前記音声データを出力部240に出力する。
また、D≦x2´+x2´´であるがD≦x1´+x1´´に至っていなければ、進出判定部238は、前記自車両が前記他車両に接近しつつあるが衝突するおそれにまでは至っていないと判定し、警報ブレーキデータベース216からアラーム警告を示す第1警報を読み出すと共に、この第1警報に応じた音声データを音声データベース218より読み出し、前記第1警報及び前記音声データを出力部240に出力する。
図7に示すように、出力部240は、通信ケーブル130を介してモニタ132(図3及び図5参照)と接続され、スピーカ134と接続され、さらに、保守用車両制御部204とも接続された出力端子部である。この場合、出力部240は、前記配線図データ、前記自車両情報、前記他車両情報、前記進路情報データ、前記自車両の進路線別情報、前記他車両の進路線別情報、前記第1警報情報及び前記第2警報情報を含む前記警報情報をモニタ132に出力し、一方で、前記音声データをスピーカ134に出力する。また、出力部240は、前記警報情報と前記自車両の進路線別情報及び前記自車両情報とを保守用車両制御部204に出力する。
そのため、保守用車両制御部204は、出力部240からの前記第2警報情報に基づいてブレーキ装置136にブレーキ信号を出力して各車輪138、140に対するブレーキ制動により保守用車両52〜58が停車するように制御する。
モニタ132は、出力部240から通信ケーブル130を介して入力された前記配線図データ、前記自車両情報、前記他車両情報、前記進路情報データ、前記自車両の進路線別情報、前記他車両の進路線別情報、前記警報情報(第1警報情報及び第2警報情報)及び前記時刻データに基づく現在時刻を画面表示する。また、モニタ132は、ハンディターミナル108と同様に、前記作業員の操作により前記進路の設定又は解除の要求を行うことができるタッチパネル式のモニタとなっており、前記設定又は前記解除の要求は、通信ケーブル130、出力部240、保守用車両制御部204、通信ケーブル126、I/F124及び通信ケーブル122を介してハンディターミナル108に出力される。
一方、スピーカ134は、出力部240からの前記音声データを保守用車両52〜58内に音声出力する。
この実施形態に係るシステム100は、以上のように構成されており、次に、その動作(第1〜第3の動作)について、図10〜図33を参照しながら説明する。なお、第1〜第3の動作の説明では、必要に応じて、図1〜図9も参照して説明する。
先ず、第1の動作(ハンディターミナル108による進路情報の取得とモニタ132及びスピーカ134によるナビゲーション)について、図10〜図17を参照しながら説明する。
図10は、保守用車両52〜58及びその作業員(乗員)が行う保守作業の概略フローチャートである。前記保守作業の開始時に、ステップS1において、前記作業員によるハンディターミナル108の操作に起因して前記進路の設定が行われる。次に、ステップS2において、前記進路の設定後に、前記作業員は、前記進路に沿って保守用車両52〜58を走行させる。次に、保守用車両52〜58が前記進路を走行した後に、ステップS3において、前記作業員によるハンディターミナル108の操作に起因して前記進路の解除が行われる。そして、ステップS4において、前記保守作業が完了したか否かの判断が、例えば、前記作業員により行われ、まだ完了していない場合(ステップS4のNo)には、前記保守作業が完了するまで、ステップS1〜S3の工程が繰り返し行われる。
図11は、図10のステップS1〜S3の工程を詳細に説明するためのシーケンス図であり、前記進路の設定及び解除におけるハンディターミナル108と駅PRC114との間の通信シーケンスを示したものである。また、図12〜図17は、前記通信シーケンスの各ステップにおけるモニタ132の画面表示を示す。
ステップS10において、前記作業員の操作によりハンディターミナル108(図3〜図5参照)のアンテナ118から無線120を介して駅PRC114に進路の設定の要求が送信される。この場合、ハンディターミナル108から通信ケーブル122、I/F124、通信ケーブル126を介し前記要求を示す進路情報が車載装置106に出力される。
車載装置106内において、前記進路情報は、保守用車両制御部204を介しナビゲーション制御部202内のデータ出力部222(図7参照)に出力される。データ出力部222は、進路情報データベース212から前記進路情報に対応する進路情報データを読み出して出力部240及び通信ケーブル130を介しモニタ132に出力する。
図12は、ステップS1におけるモニタ132の画面表示を示している。
モニタ132の画面の上半分には、駅構内10(A駅構内)(図1及び図2参照)を示す配線図が表示され、この配線図には、自車両である保守用車両52〜58の現在位置xが五角形の矢印として重畳表示されている。なお、図12を参照すると、保守用車両52〜58が前記画面下側の保守基地(図1及び図2の保守基地42)近傍に位置していることが諒解される。また、前記配線図には、設定の要求がされている進路が太字の矢印にて表示され、さらに、前記自車両の移動可能範囲が太線で表示され、該自車両の移動限界位置(移動可能範囲の先端位置)が三角形にて表示されている。
また、前記画面の下半分には、メニュー項目として、前記進路の設定を行っていないことを示す「進路未設定」、現在の車速を示す「0km/h」、現在時刻、保守用車両52〜58が位置している箇所を示す「基地」、保守用車両52〜58が上り又は下りのいずれかの線路に位置しているのかを示す「上り」、現在位置xを示す「76k721m」、前記移動可能範囲の境界としての絶縁物50(図1〜図3参照)を「移動限界」位置としたときの保守用車両52〜58から前記移動限界までの距離「298m」がそれぞれ表示されている。
なお、前記画面上の各情報は、前述したように、ナビゲーション制御部202から通信ケーブル130を介し出力された情報である。
次に、図11のステップS11において、駅PRC114(図3参照)は、アンテナ116を介し受信した前記要求に基づいて分岐器48(図1及び図2参照)の開通操作を行い、前記開通操作の完了を示す要求応答を、アンテナ116から無線120を介してハンディターミナル108に送信する(ステップS12)。
ハンディターミナル108は、アンテナ118を介し受信した前記要求応答を新たな進路情報として通信ケーブル122、I/F124、通信ケーブル126及び保守用車両制御部204(図5及び図7参照)を介しナビゲーション制御部202のデータ出力部222に出力する。ナビゲーション制御部202内では、前述したステップS10と同様の処理を行って、前記新たな進路情報(進路が設定された旨の進路情報)に対応する各種情報を出力部240を介しモニタ132に出力する。
この結果、図13に示すように、モニタ132の画面には、図12における「進路未設定」の表示が前記進路の設定を通知する「設定完了」の表示に切り替わり、前記配線図に前記設定された進路(太線)が重畳表示される。さらに、所定時間経過後(例えば、3[s]後)に、図14に示すように、前記設定された進路を示す「基地〜上り2番」の表示が行われる。なお、図13及び図14の状態では、前記設定された進路と前記自車両の移動可能範囲とは、同一範囲である。
一方、図11のステップS12の処理において、ナビゲーション制御部202内のデータ出力部222(図7参照)は、前記新たな進路情報に応じた進路情報データをデータ出力部232にも出力し、該データ出力部232は、音声データベース218から前記進路情報データに対応する音声データを読み出して出力部240を介しスピーカ134に出力する。これにより、図13の画面表示と共に、スピーカ134から、例えば、「進路を設定しました」の音声出力が行われる。
ステップS13において、保守用車両52〜58の作業員は、モニタ132の画面表示と、スピーカ134からの音声出力に従って、該保守用車両52〜58を「基地〜上り2番」の進路に沿って走行(進行)させる。前述したように、速度センサ142は、車輪138、140の回転数に基づく車速パルスを車載装置106に出力し、距離検出部250は、所定時間間隔(100[ms]毎)に保守用車両52〜58の現在位置x及び速度(車速v及び進行方向)を検出するので、ナビゲーション制御部202及び通信ケーブル130を介してモニタ132には、図15に示すように、現在位置xが前記時間間隔で表示され(図15では「77k412m」)、該現在位置xを示す前記五角形の矢印は、前記進路(線路)に沿って移動する様子が画面表示される。
なお、図15では、自車両(保守用車両52〜58)が前記進路に沿って出発元の線路(軌道回路)から絶縁物50(図1〜図3参照)を通過して進行先の線路(軌道回路)に進行した場合に、前記自車両が位置している前記進行先の線路(軌道回路)のみを進路として太線表示させている。また、前記自車両が「基地」から出発して、基地境界を示す該基地境界の地上子160を検知した場合には、前記「基地」の表示が前記路線を示す「C」に切り替えられる。
そして、前記進路に沿って保守用車両52〜58が所定距離移動した後に、該保守用車両52〜58は、車載装置106からのブレーキ信号の出力に起因したブレーキ装置136による車輪138、140のブレーキ制動によって停車され、次に、前記作業員は、ハンディターミナル108を操作して前記進路の解除を要求する。この場合、アンテナ118から無線120を介して駅PRC114に進路の解除の要求が送信される(図11のステップS14)。
次に、ステップS15において、駅PRC114は、アンテナ116を介し受信した前記要求に基づいて分岐器48(図1及び図2参照)の復位操作又は進路の取消操作を行い、前記復位操作又は前記取消操作等の進路の解除の完了を示す要求応答を、アンテナ116から無線120を介してハンディターミナル108に送信する(ステップS16)。
ハンディターミナル108は、アンテナ118を介し受信した前記要求応答を新たな進路情報として通信ケーブル122、I/F124、通信ケーブル126及び保守用車両制御部204を介してナビゲーション制御部202(図5及び図7参照)のデータ出力部222に出力する。ナビゲーション制御部202内では、前述したステップS12と同様の処理を行って、前記新たな進路情報(進路が解除された旨の進路情報)に対応する各種情報を出力部240を介しモニタ132及びスピーカ134に出力する。
この結果、モニタ132の画面には、図15中の「B〜上り2番」の表示が前記進路の解除を通知する「復位完了」(図16参照)の表示に切り替わり、前記配線図に現在の移動可能範囲{絶縁物50(図1〜図3参照)と絶縁物50との間の軌道回路の区間}が重畳表示されると共に、スピーカ134からは、「進路を復位しました」の音声出力が行われる。
さらに、所定時間経過後(例えば、3[s]後)に、図17に示すモニタ132の画面には、前記解除の結果、前記進路が未設定状態であることを示す「進路未設定」の表示が行われる。
なお、上述のステップS10〜S16は、前記保守作業が完了するまで繰り返し行われる。
次に、第2の動作(保守用車両52〜58の設定進路外への進出防止)について、図18を参照しながら説明する。
図18は、一旦進路が設定された自車両(保守用車両52〜58)が設定進路外に進出(割出)することを防止するためのフローチャートであり、この第2の動作は、保守用車両52〜58内での作用である。なお、システム100(図3参照)では、ステップS21〜S27のフローを一定周期(例えば、0.5[s]毎)に行っている。
ステップS20において、保守作業の開始に先立って、保守用車両52〜58(図1〜図3参照)の作業員は、車載装置106を起動させて、自車両(保守用車両52〜58)の現在位置xを確認し、必要に応じて現在位置xの設定を行う。
この場合、車載装置106にはレジューム機能が持たされており、前回の保守作業後に保守基地42、46に収容され、あるいは、線路40、44に戻った保守用車両52〜58の最終の現在位置xは、前回位置記憶部258(図6参照)に前回の現在位置(前回の位置)x0として記憶されている。従って、今回の保守作業のために車載装置106を起動させると、前回の位置x0が現在位置xとして出力される。従って、この現在位置xを保守作業開始時の現在位置とする。
なお、より正確な現在位置xを設定するのであれば、例えば、保守用車両52〜58が保守基地42、46に収容されていれば、車載装置106を起動させた際に、前記作業員の操作により現在位置のキロ程を入力して距離検出部250の前回位置記憶部258に記憶させる。
次いで、保守作業中に、ステップS21において、移動範囲検出部236(図7参照)は、データ出力部220から自車両の現在位置xが重畳された配線図データを取得すると共に、データ出力部224から自車両情報(現在位置x及び速度)に基づく進路線別情報データを取得する。そして、移動範囲検出部236は、現在位置x、前記配線図データ及び前記進路線別情報データに基づいて自車両(保守用車両52〜58)の現在の移動可能範囲、すなわち、移動限界位置(絶縁物50の位置)を算出し、この移動限界位置を進出判定部238に出力する(ステップS22)。
次に、進出判定部238は、警報ブレーキデータベース216より前記自車両の速度に応じた第1範囲(危険域接近距離x2)と第2範囲(危険域到達距離x1)とを取得する(ステップS23)。そして、進出判定部238は、取得した前記第1範囲及び前記第2範囲と前記移動限界位置(前記移動可能範囲)と現在位置xとから、現在位置xから移動限界位置(絶縁物50)までの距離が危険域接近距離x2以下であるか否か(現在位置xが第1範囲又は第2範囲に入っているか否か)を判定し(ステップS24)、x2以下であれば、次に、現在位置xから前記移動限界位置までの距離が危険域到達距離x1以下であるか否か(現在位置xが第2範囲に入っているか否か)を判定する(ステップS25)。
ステップS25において、現在位置xが前記第2範囲に入っていれば(ステップS25のYes)、進出判定部238は、自車両(保守用車両52〜58)が前記移動可能範囲を越えるおそれがあるので該保守用車両52〜58を停車させることを決定し、警報ブレーキデータベース216から前記停車に応じた第2警報情報を読み出すと共に、この第2警報情報に応じた音声データを音声データベース218より読み出し、前記第2警報情報及び前記音声データを出力部240に出力する(ステップS26)。
これにより、モニタ132は、通信ケーブル130を介して前記第2警報情報(保守用車両52〜58の停車)に応じた画面表示を行い、スピーカ134は、前記音声データ(前記停車を示す警告音)を音声出力する。従って、前記作業員は、モニタ132を視ることにより及び/又は前記音声出力を聴くことにより、保守用車両52〜58が絶縁物50を越えるおそれがあるために非常停止するものと理解することができる。
また、出力部240は、前記第2警報情報を保守用車両制御部204に出力し、該保守用車両制御部204は、前記第2警報情報に基づくブレーキ信号をブレーキ装置136に出力する。ブレーキ装置136は、前記ブレーキ信号に基づいて各車輪138、140に対するブレーキ制動を行って、保守用車両52〜58を前記移動可能範囲内で強制的に停車させる。
一方、ステップS25において、現在位置xが前記第1範囲に入っていれば(ステップS25のNo)、進出判定部238(図7参照)は、保守用車両52〜58が絶縁物50に接近しつつあるが前記移動可能範囲を越えるおそれまでには至っていないので、アラーム警告だけ行うことを決定し、警報ブレーキデータベース216から前記アラーム警告に応じた第1警報情報を読み出すと共に、この第1警報情報に応じた音声データを音声データベース218より読み出し、前記第1警報情報及び前記音声データを出力部240に出力する(ステップS27)。
これにより、モニタ132は、通信ケーブル130を介して前記第1警報情報(アラーム警告)に応じた画面表示を行い、スピーカ134は、前記音声データ(前記アラーム警告を示す警告音)を音声出力する。従って、前記作業員は、モニタ132を視ることにより及び/又は前記音声出力を聴くことにより、保守用車両52〜58が絶縁物50に接近しつつあることを理解することができ、ブレーキ操作等を行うことが可能となる。
また、ステップS24において、進出判定部238は、現在位置xが第1範囲及び第2範囲にも入っていないと判定した場合には(ステップS24のNo)、ステップS21〜S23の処理を再度実行する。
上述のステップS21〜S27も、前記保守作業が完了するまで繰り返し行われる。
次に、第3の動作(保守用車両52〜58の位置検出)について、図19及び図20を参照しながら説明する。
図19及び図20は、自車両(図9の保守用車両52)と他車両(図9の保守用車両54、56)との衝突防止のためのフローチャートであり、この第3の動作は、保守用車両52〜56間の無線146による通信を利用して行われる。なお、システム100(図3参照)では、ステップS21〜S27(図18参照)と同様に、ステップS31〜S42のフローを一定周期(例えば、0.5[s]毎)に行っている。また、ステップS30〜42の説明では、自車両(保守用車両52)を中心に説明するが、他車両(保守用車両54、56)でも同様の処理を行っている。
ステップS30では、前述のステップS20(図18参照)と同様に、保守作業の開始に先立って、自車両(保守用車両52)の作業員は、車載装置106(図3及び図5参照)を起動させて、自車両(保守用車両52)の現在位置xを確認し、必要に応じて現在位置xの設定を行う。なお、現在位置xの確認方法及び設定方法についても、ステップS20と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
次いで、保守作業中に、ステップS31において、移動範囲検出部236(図7参照)は、前述のステップS21(図18参照)と同様の処理を行い、自車両の配線図データ及び進路線別情報データを取得する。次に、ステップS32において、移動範囲検出部236は、前述のステップS22と同様の処理を行い、前記配線図データ及び前記進路線別情報データに基づいて前記自車両の現在の移動可能範囲を算出する。
次に、ステップS33において、移動範囲検出部236は、データ出力部220から他車両情報に基づく配線図データを取得すると共に、データ出力部224から他車両(保守用車両54、56)の進路線別情報に基づく進路線別情報データを取得する。なお、前記他車両情報及び前記他車両の進路線別情報は、前記他車両から無線146及びアンテナ144を介し無線通信部200が受信した情報である。
ステップS34において、移動範囲検出部236は、前記自車両の配線図データ中の現在位置xと前記他車両の配線図データ中の現在位置xとから前記自車両と前記他車両との距離D(図9の線路272に沿った方向の距離)を算出し、次に、前記他車両の配線図データと前記他車両の進路線別情報データとに基づいて前記他車両の移動可能範囲を算出する(ステップS35)。
次に、進出判定部238は、移動範囲検出部236からの前記自車両の移動可能範囲と前記他車両の移動可能範囲とを比較して、両者が重複しているか否かを判定する(ステップS36)。
ステップS36において、前記各移動可能範囲が重複していると判定すれば(ステップS36のYes)、進出判定部238は、警報ブレーキデータベース216より前記自車両の速度に応じた自車両の第1範囲(危険域接近距離x2´)と自車両の第2範囲(危険域到達距離x1´)とを取得する(ステップS37)。この場合、進出判定部238は、警報ブレーキデータベース216より前記他車両の速度に応じた他車両の第1範囲(危険域接近距離x2´´)と他車両の第2範囲(危険域到達距離x1´´)も取得する(ステップS38)。
次に、ステップS39において、進出判定部238は、自車両と他車両との間の距離D(図9参照)が自車両の危険域接近距離x2´と他車両の危険域接近距離x2´´との和以下であるか否か(D≦x2´+x2´´)を判定し(ステップS39)、D≦x2´+x2´´であれば(ステップS39のYes)、次に、距離Dが自車両の危険域到達距離x1´と他車両の危険域到達距離x1´´との和以下であるか否か(D≦x1´+x1´´)を判定する(ステップS40)。
ステップS40において、D≦x1´+x1´´であれば(ステップS40のYes)、進出判定部238は、前記自車両と前記他車両とが衝突するおそれがあるので前記自車両を停車させることを決定し、前述のステップS26の処理と同様に、警報ブレーキデータベース216から前記停車に応じた第2警報情報を読み出すと共に、この第2警報情報に応じた音声データを音声データベース218より読み出し、前記第2警報情報及び前記音声データを出力部240に出力する(ステップS41)。
これにより、モニタ132は、通信ケーブル130を介して前記第2警報情報(自車両の停車)に応じた画面表示を行い、スピーカ134は、前記音声データ(前記停車を示す警告音)を音声出力する。従って、前記作業員は、モニタ132を視ることにより及び/又は前記音声出力を聴くことにより、前記自車両が前記他車両と衝突するおそれがあるので非常停止するものと理解することができる。
また、出力部240は、前記第2警報情報を保守用車両制御部204に出力し、該保守用車両制御部204は、前記第2警報情報に基づくブレーキ信号をブレーキ装置136に出力する。ブレーキ装置136は、前記ブレーキ信号に基づいて各車輪138、140に対するブレーキ制動を行って、前記自車両を該自車両の移動可能範囲内で強制的に停車させる。
一方、ステップS40において、D>x1´+x1´´であれば(ステップS40のNo)、進出判定部238は、前記自車両が前記他車両に接近しつつあるが衝突するおそれまでには至っていないのでアラーム警告だけ行うことを決定し、前述のステップS27の処理と同様に、警報ブレーキデータベース216から前記アラーム警告に応じた第1警報情報を読み出すと共に、この第1警報情報に応じた音声データを音声データベース218より読み出し、前記第1警報情報及び前記音声データを出力部240に出力する(ステップS42)。
これにより、モニタ132は、通信ケーブル130を介して前記第1警報情報(アラーム警告)に応じた画面表示を行い、スピーカ134は、前記音声データ(前記アラーム警告を示す警告音)を音声出力する。従って、前記作業員は、モニタ132を視て及び/又は前記音声出力を聴いて、前記自車両が前記他車両に接近しつつあることを理解することができ、ブレーキ操作等を行うことが可能となる。
また、ステップS39において、D>x2´+x2´´であれば(ステップS39のNo)、進出判定部238は、前記自車両の移動可能範囲と前記他車両の移動可能範囲とが重複しているが、前記自車両と前記他車両との衝突のおそれはないものと判定して、ステップS31〜S38の処理を再度実行する。
さらに、ステップS36において、前記自車両の移動可能範囲と前記他車両の移動可能範囲とが重複していない場合には(ステップS36のNo)、進出判定部238は、前記自車両と前記他車両との衝突のおそれはないものと判定して、ステップS31〜S35の処理を再度実行する。
上述のステップS31〜S42も、前記保守作業が完了するまで繰り返し行われる。
なお、図19及び図20の処理中に、前記自車両では、ナビゲーション制御部202(図5及び図7参照)から保守用車両制御部204、無線通信部200、アンテナ144及び無線146を介して前記自車両情報及び前記自車両の進路線別情報が前記他車両に送信されるので、前記他車両においても、上述の処理が行われて前記自車両と前記他車両との衝突回避がなされることは勿論である。
次に、システム100(図3参照)において、線路272を進行する自車両(保守用車両52、自車)と他車両(保守用車両56、対象)との間で、どのような条件下であれば、前記第2の動作(設定進路外への進出防止機能)あるいは前記第3の動作(自車両と他車両との間での衝突防止機能)が適用されるのかについて、図21〜図33を参照しながら説明する。
図21及び図22は、線路272における前記自車両及び前記他車両の進行に関する基本パターン(No.1〜No.8)の一覧表であり、図23A〜図26Cは、前記基本パターンのうちNo.1〜No5、No.7及びNo.8の具体的な説明図である。
No.1(図21のNo.1及び図23A)は、線路272を自車両(自車としての保守用車両52)及び他車両(対象としての保守用車両56)が走行しているが、前記自車両の移動可能範囲は軌道回路Aであると共に、前記他車両の移動可能範囲は軌道回路Cであって、前記自車両と前記他車両との間で移動可能範囲の重複がない場合である。このNo.1では、進行方向に関わらず、前記自車両及び前記他車両に対して第2の動作(設定進路外への進出防止機能)が適用される。
なお、図21において、「重複している軌道回路名」欄中の×印は、前記自車両と前記他車両との間で移動可能範囲が重複していないことを示し、一方で、○印は、前記移動可能範囲が重複していることを示している。
No.2(図21のNo.2及び図23B)は、線路272を自車両(保守用車両52)及び他車両(保守用車両56)が走行しているが、前記自車両の移動可能範囲は軌道回路A〜Cであり、一方で、前記他車両の移動可能範囲は軌道回路Cであって、前記自車両と前記他車両との間では、軌道回路Cについて移動可能範囲の重複がある場合である。このNo.2では、前記自車両が前記他車両(前記軌道回路C)に向かって走行する際には、前記自車両に対して前記第3の動作(自車両と他車両との間の衝突防止機能)が適用され、該自車両が前記他車両から離間する方向(図23B中の左方向)に向かって走行する際には、前記自車両に対して前記第2の動作が適用される。また、前記他車両については進行方向に関わらず前記第2の動作が適用される。
No.3(図21のNo.3、図23C及び図24A)は、線路272を自車両(保守用車両52)及び他車両(保守用車両56)が走行しているが、前記自車両の移動可能範囲は軌道回路A〜Bであり、一方で、前記他車両の移動可能範囲は軌道回路B〜Cであって、前記自車両と前記他車両との間では、軌道回路Bについて移動可能範囲の重複がある場合である。このNo.3において、前記自車両及び前記他車両に対する前記第2の動作又は前記第3の動作の適用には、次に説明する図23C及び図24Aの2種類がある。
先ず、図23Cでは、前記自車両と前記他車両とが互いに接近する方向に走行する際には、前記自車両及び前記他車両共に前記第3の動作が適用され、一方で、前記自車両と前記他車両とが互いに離間する方向に走行する際には、前記自車両及び前記他車両共に前記第2の動作が適用される。
また、図24Aでは、前記自車両及び前記他車両共に前記第2の動作が適用される。なお、図24Aでは、前記自車両は、前記軌道回路A〜Bの区間について前記第2の動作が適用され、一方で、前記他車両は、前記軌道回路B〜Cの区間について前記第2の動作が適用される。
No.4(図21のNo.4及び図24B)は、線路272を自車両(保守用車両52)及び他車両(保守用車両56)が走行しているが、前記自車両の移動可能範囲は軌道回路A〜Cであり、一方で、前記他車両の移動可能範囲は軌道回路B〜Cであって、前記自車両と前記他車両との間では、軌道回路B〜Cについて移動可能範囲の重複がある場合である。このNo.4において、前記自車両に対しては、前記他車両と接近する方向に走行する場合に前記第3の動作が適用され、一方で、前記他車両から離間する方向に走行する場合に前記第2の動作が適用される。また、前記他車両に対しては、いずれの方向に走行する場合でも、前記第2の動作が適用される。
No.5(図22のNo.5、図25A及び図25B)は、線路272を自車両(保守用車両52)及び他車両(保守用車両56)が走行しているが、前記自車両の移動可能範囲は軌道回路Aであり、一方で、前記他車両の移動可能範囲は軌道回路A〜Cであって、前記自車両と前記他車両との間では、軌道回路Aについて移動可能範囲の重複がある場合である。このNo.5において、前記自車両及び前記他車両に対する前記第2の動作又は前記第3の動作の適用には、次に説明する図25A及び図25Bの2種類がある。
先ず、図25Aでは、前記自車両に対しては、いずれの方向に走行する場合でも前記第2の動作が適用される。また、前記他車両に対しては、前記自車両に接近する方向に走行する際には、前記第3の動作が適用され、一方で、前記自車両から離間する方向に走行する際には、前記第2の動作が適用される。
また、図25Bでは、前記自車両及び前記他車両共に、互いに接近する方向に走行する際には前記第3の動作が適用され、一方で、互いに離間する方向に走行する際には前記第2の動作が適用される。
No.6(図22のNo.6)は、自車両及び他車両について重複する移動可能範囲が軌道回路A、Cである場合である。しかしながら、前記自車両及び前記他車両は、線路272に沿って走行するので、軌道回路Bを飛び越えて軌道回路A、Cを重複した移動可能範囲とすることは実際上あり得ず、従って、このNo.6のパターンは存在しない。
No.7(図22のNo.7、図26A及び図26B)は、線路272を自車両(保守用車両52)及び他車両(保守用車両56)が走行しているが、前記自車両の移動可能範囲は軌道回路A〜Bであり、一方で、前記他車両の移動可能範囲は軌道回路A〜Cであって、前記自車両と前記他車両との間では、軌道回路A〜Bについて移動可能範囲の重複がある場合である。このNo.7において、前記自車両及び前記他車両に対する前記第2の動作又は前記第3の動作の適用には、次に説明する図26A及び図26Bの2種類がある。
先ず、図26Aでは、前記自車両に対しては、いずれの方向に走行する場合でも前記第2の動作が適用される。また、前記他車両に対しては、前記自車両に接近する方向に走行する際には、前記第3の動作が適用され、一方で、前記自車両から離間する方向に走行する際には、前記第2の動作が適用される。
また、図26Bでは、前記自車両及び前記他車両共に、互いに接近する方向に走行する際には前記第3の動作が適用され、一方で、互いに離間する方向に走行する際には前記第2の動作が適用される。
No.8(図22のNo.8、図26C)は、線路272を自車両(保守用車両52)及び他車両(保守用車両56)が走行しているが、前記自車両及び前記他車両の移動可能範囲は共に軌道回路A〜Cであって、従って、前記軌道回路A〜Cについて移動可能範囲の重複がある場合である。このNo.8では、前記自車両及び前記他車両共に、互いに接近する方向に走行する際には前記第3の動作が適用され、一方で、互いに離間する方向に走行する際には前記第2の動作が適用される。
前述したNo.1〜No.8の説明では、自車両(保守用車両52)及び他車両(保守用車両56)共に進路の設定を行った場合を前提として、前記第2の動作又は前記第3の動作の適用について説明した。
次に、軌道回路A〜Cの重複の有無及び進路の設定の有無による前記自車両と前記他車両との間での前記第3の動作の適用の可否について、図27〜図33を参照しながら説明する。なお、図21及び図22の右欄には、No.1〜No.8に対応する図27〜図33のパターン(No.1.0〜No.4.1)が記載されている。また、図27〜図33の「衝突防止」欄の○印は、前記第3の動作を適用することを示し、一方で、×印は、前記第3の動作を適用しない(前記第2の動作を適用する)ことを示している。
図27のNo.1.0〜1.3は、いずれも、線路272における同一の軌道回路Aに自車両(保守用車両52)及び他車両(保守用車両56)が存在している場合を示しており、No.1.0〜1.3では、前記自車両及び前記他車両共に同一の軌道回路Aに存在しているので、前記第3の動作が適用される。
ここで、No.1.0は、前記自車両及び前記他車両共に進路の設定を行っていない場合を示している。また、No.1.1は、前記自車両が進路の設定を行っているが、前記他車両が進路の設定を行っていない場合を示している。さらに、No.1.2は、前記自車両が進路の設定を行っておらず、前記他車両が進路の設定を行っている場合を示している。さらに、No.1.3は、前記自車両及び前記他車両共に進路の設定を行っている場合を示している。
図28のNo.2.0〜2.4及び図29のNo.2.5〜2.8は、いずれも、線路272における軌道回路Aに自車両(保守用車両52)が存在し、他車両(保守用車両56)が軌道回路Aに隣接する軌道回路Bに存在する場合を示している。
ここで、No.2.0は、前記自車両及び前記他車両共に進路の設定を行っていない場合を示しており、この場合には、前記第3の動作が適用されない。また、No.2.1は、前記自車両が軌道回路Aを進路に設定しているが、前記他車両が進路の設定を行っていない場合を示しており、この場合にも、前記第3の動作が適用されない。
No.2.2は、前記自車両が軌道回路A〜Bを進路に設定しているが、前記他車両が進路の設定を行っていない場合を示しており、この場合には、前記第3の動作が適用される。
No.2.3は、前記自車両が進路の設定を行っていないが、前記他車両が軌道回路Bを進路に設定している場合を示しており、この場合には、前記第3の動作が適用されない。
No.2.4は、前記自車両が進路の設定を行っていないが、前記他車両が軌道回路A〜Bを進路に設定している場合を示しており、この場合には、前記第3の動作が適用される。
No.2.5は、前記自車両が軌道回路Aを進路に設定し、前記他車両が軌道回路Bを進路に設定している場合を示しており、この場合には、前記第3の動作が適用されない。
No.2.6は、前記自車両が軌道回路A〜Bを進路に設定し、前記他車両が軌道回路Bを進路に設定していることにより、前記軌道回路Bにおいて前記自車両と前記他車両との間で移動可能範囲の重複が発生している場合を示しており、この場合には、前記第3の動作が適用される。
No.2.7は、前記自車両が軌道回路Aを進路に設定し、前記他車両が軌道回路A〜Bを進路に設定していることにより、前記軌道回路Aにおいて前記自車両と前記他車両との間で移動可能範囲の重複が発生している場合を示しており、この場合には、前記第3の動作が適用される。
No.2.8は、前記自車両及び前記他車両共に軌道回路A〜Bを進路に設定し、この結果、前記軌道回路A〜Bにおいて前記自車両及び前記他車両の移動可能範囲の重複が発生している場合を示しており、この場合にも、前記第3の動作が適用される。
図30のNo.3.0〜図33のNo.3.15は、いずれも、線路272における軌道回路Aに自車両(保守用車両52)が存在し、他車両(保守用車両56)が軌道回路Cに存在する場合を示している。
ここで、No.3.0〜No.3.2では、いずれも、前記第3の動作は適用されない。すなわち、No.3.0は、前記自車両及び前記他車両共に進路の設定を行っていない場合を示しており、No.3.1は、前記自車両のみ軌道回路Aを進路に設定している場合であり、No.3.2は、前記自車両のみ軌道回路A〜Bを進路に設定している場合である。
No.3.3は、前記自車両が軌道回路A〜Cを進路に設定しているが、前記他車両が進路の設定を行っていない場合を示しており、この場合には、前記第3の動作が適用される。
No.3.4及びNo.3.5では、いずれも、前記第3の動作は適用されない。すなわち、No.3.4は、前記他車両のみ軌道回路Cを進路に設定している場合であり、No.3.5は、前記他車両のみ軌道回路B〜Cを進路に設定している場合である。
No.3.6は、前記自車両が進路の設定を行っていないが、前記他車両が軌道回路A〜Cを進路に設定している場合を示しており、この場合には、前記第3の動作が適用される。
No.3.7及びNo.3.8では、いずれも、前記第3の動作は適用されない。すなわち、No.3.7は、前記自車両が軌道回路Aを進路に設定し、前記他車両が軌道回路Cを進路に設定している場合を示しており、No.3.8は、前記自車両が軌道回路Aを進路に設定し、前記他車両が軌道回路B〜Cを進路に設定している場合を示している。
No.3.9は、前記自車両が軌道回路Aを進路に設定し、前記他車両が軌道回路A〜Cを進路に設定し、この結果、前記軌道回路Aにおいて前記自車両及び前記他車両の移動可能範囲の重複が発生している場合を示しており、この場合には、前記第3の動作が適用される。
No.3.10は、前記自車両が軌道回路A〜Bを進路に設定し、前記他車両が軌道回路Cを進路に設定している場合を示しており、この場合には、前記第3の動作は適用されない。
No.3.11〜No.3.15では、いずれも、前記第3の動作が適用される。すなわち、No.3.11は、前記自車両が軌道回路A〜Bを進路に設定し、前記他車両が軌道回路B〜Cを進路に設定し、この結果、前記軌道回路Bにおいて前記自車両及び前記他車両の移動可能範囲の重複が発生している場合を示している。また、No.3.12は、前記自車両が軌道回路A〜Bを進路に設定し、前記他車両が軌道回路A〜Cを進路に設定し、この結果、前記軌道回路A〜Bにおいて前記自車両及び前記他車両の移動可能範囲の重複が発生している場合を示している。さらに、No.3.13は、前記自車両が軌道回路A〜Cを進路に設定し、前記他車両が軌道回路Cを進路に設定し、この結果、前記軌道回路Cにおいて前記自車両及び前記他車両の移動可能範囲の重複が発生している場合を示している。さらにまた、No.3.14は、前記自車両が軌道回路A〜Cを進路に設定し、前記他車両が軌道回路B〜Cを進路に設定し、この結果、前記軌道回路B〜Cにおいて前記自車両及び前記他車両の移動可能範囲の重複が発生している場合を示している。さらにまた、No.3.15は、前記自車両及び前記他車両共に軌道回路A〜Cを進路に設定し、この結果、前記軌道回路A〜Cにおいて前記自車両及び前記他車両の移動可能範囲の重複が発生している場合を示している。
図33のNo.4.0及びNo.4.1は、いずれも、線路272における軌道回路Aと軌道回路Cとの間の軌道回路に分岐器48が設けられ、この分岐器48から線路274が分岐して軌道回路Dが形成され、さらに、自車両(保守用車両52)が軌道回路Aに存在し、一方で、他車両(保守用車両56)が軌道回路Dに存在している場合を示している。
No.4.0は、前記自車両及び前記他車両共に進路を設定していない場合を示しており、この場合には、前記第3の動作は適用されない。
No.4.1は、前記自車両が軌道回路A〜Dを進路に設定し、前記他車両が進路を設定していない場合を示しており、この場合には、前記第3の動作が適用される。
このように、この実施形態に係るシステム100によれば、下記の効果が得られる。
先ず、第1の効果(保守用車両52〜58の進路情報取得システムに関わる効果)として、車載装置106は、ハンディターミナル108から出力された進路情報を利用して、駅構内10、60又は駅中間62の線路12〜22、40、44及び分岐線24〜34における保守用車両52〜58の移動を制御する。すなわち、車載装置106では、例えば、前記進路情報が進路の設定を示す情報であれば、前記進路内で移動するように保守用車両52〜58を制御し、一方で、前記進路情報が前記進路の解除を示す情報であれば、前記進路の設定が行われるまで保守用車両52〜58が移動可能範囲外に移動しないように制御する。この結果、保守作業における保守用車両52〜58の作業員の負荷が大幅に軽減され、該保守作業をより安全且つ効率よく行うことが可能となる。
次に、第2の効果(保守用車両52〜58のナビゲーションシステムに関わる効果)として、ナビゲーション装置を構成するモニタ132及びスピーカ134により前記進路情報及び自車両情報(自車両としての保守用車両52〜58の現在位置x及び速度)が画面表示及び/又は音声出力により保守用車両52〜58の作業員に通知されるので、該作業員は、線路12〜22、40、44及び分岐線24〜34中(進路中)における該保守用車両52〜58の現在位置xと速度(車速v及び進行方向)とを容易に把握することができる。また、ハンディターミナル108から駅PRC114に前記進路の設定又は解除の要求を行うことにより、駅PRCにて前記設定又は前記解除(分岐器48の開通操作又は復位操作及び進路の取消操作)が行われるので、前記保守作業の際の分岐器48の開通操作の忘れ等を防止することが可能となる。さらに、前記進路における安全確認は、前記作業員の目視によるものと、ハンディターミナル108、モニタ132及びスピーカ134によるものとの二重の安全確認となるので、該保守作業での安全性がさらに高まる。
従って、この第2の効果においても、前記保守作業における保守用車両52〜58の作業員の負荷が大幅に軽減され、該保守作業をより安全且つ効率よく行うことが可能となる。
さらに、モニタ132及びスピーカ134を介して他車両情報(他車両の現在位置x及び速度)も前記作業員に通知されるので、該作業員は、自車両に対する前記他車両の現在位置xと速度(車速v及び進行方向)を容易に把握することができる。また、モニタ132は、前記他車両情報に加え、配線図データ、前記自車両情報及び進路情報データも画面上に表示し、スピーカ134は、各種の音声データも音声出力するので、前記保守作業における前記作業員の負荷をさらに軽減することができる。
次に、第3の効果(保守用車両52〜58の設定進路外への進出防止システムに関わる効果)として、保守用車両52〜58が移動可能範囲から外れている場合や、前記移動可能範囲の両端近傍(絶縁物50近傍)にあって該移動可能範囲から外れる可能性のある場合に、モニタ132及びスピーカ134は、所定の警報情報に基づいて画面表示及び/又は音声出力を行い、保守用車両制御部204は、前記警報情報に基づいて保守用車両52〜58の移動の制御を行うので、該保守用車両52〜58の作業員が進路の設定又は解除を忘れて保守用車両52〜58を運転することや、前記進路の設定を行わずに保守用車両52〜58を走行させて分岐器48に該保守用車両52〜58が乗り上げることを防止することが可能となる。
また、ハンディターミナル108により前記進路の設定又は解除を駅PRC114に要求し、車載装置106では、ハンディターミナル108からの進路情報を利用して前記移動可能範囲や前記警報情報を生成し、モニタ132及びスピーカ134では、前記進路情報を画面表示及び/又は音声出力するので、前記進路の設定又は解除に要する時間が短縮され、この結果、前記保守作業における作業遅延が減少する。
従って、この第3の効果でも、前記保守作業における前記作業員の作業負荷や作業遅延を大幅に減少させると共に、該保守作業をより安全且つ効率よく行うことが可能となる。
さらに、ナビゲーション制御部202内の進出判定部238は、現在位置xが移動可能範囲内の第1範囲(危険域接近距離x1〜x2)内にあると判定したときに第1警報情報を出力し、一方で、現在位置xが前記第1範囲よりも絶縁物50側の第2範囲(絶縁物50から危険位置到達距離x1までの範囲)内にあると判定したときに第2警報情報を出力する。また、モニタ132は、前記第1警報情報又は前記第2警報情報を画面表示し、スピーカ134は、各警報情報に応じた音声データを音声出力し、保守用車両制御部204は、前記第2警報情報に基づいて保守用車両52〜58が停止するようにブレーキ装置136に対してブレーキ信号を出力する。
これにより、前記作業員が保守用車両52〜58の進路の設定又は解除を忘れた状態で、該保守用車両52〜58が分岐器48に向かって走行しても、該保守用車両52〜58を分岐器48の手前にて確実に停止させることができる。
次に、第4の効果(保守用車両52〜58の位置検出システムに関わる効果)として、各保守用車両52〜58では、自車両の現在位置xと進路及び線路の種別を示す進路線別情報との2次元位置情報を無線146を介して他車両に送信する。これにより、前記自車両から見て同一距離Dにある複数の他車両から無線146を介して2次元位置情報を受信しても、該2次元位置情報中の進路線別情報より、前記各他車両が互いに異なる線路272、274にあることや、各他車両の進路を容易に把握することができる。
また、前記進路線別情報より自車両と他車両とが同一の線路272、274を移動していることが把握された場合には、前記自車両は、前記他車両の移動に対応してブレーキ動作等を行うことが可能となり、駅構内10、60や駅中間62における前記自車両と前記他車両との衝突を回避することができる。
さらに、前記自車両と前記他車両との間で無線146により進路線別情報及び現在位置xをやり取りするので、従来のように、作業員が携帯電話機を用いて通話することが不要となり、当該作業員の負担を軽減することが可能となる。
このように、この第4の効果では、複数の線路272、274を移動する複数の保守用車両52〜58の位置関係を正確に把握することが可能になると共に、保守作業における保守用車両52〜58の作業員の負荷を大幅に軽減することが可能となる。
また、前記自車両と前記他車両との間では、お互いの進路線別情報及び現在位置xに加え、速度も無線146を介してやり取りされるので、前記自車両は、駅構内10、60又は駅中間62において、前記他車両がどの進行方向に向かってどの程度の車速vで進行しているのかを容易に把握することが可能となり、この結果、前記自車両と前記他車両との衝突を確実に防止することができる。
なお、この発明は、上述した実施形態に限らず、種々の構成を採り得ることは勿論である。