まず、本発明の実施の形態の理解を容易にするために、本発明の実施の形態が適用される技術について説明する。
出力装置が受け取る色信号を、使用する色を成分とする色信号に変換する方法の一つとして、上述のように色変換モデルを用いる方法がある。例えば、出力装置が使用する色の成分について複数の組み合わせに対応する色パッチを作成し、その色パッチを出力して測色し、使用する色の成分の組み合わせと測色値との対応関係をモデル化し、そのモデルを用いて色変換を行う。
モデル化された対応関係は、例えば出力装置がL* a* b* 色信号を受け取り、CMYKの4色を使用して画像を出力する場合には、
(L* ,a* ,b* )=F(C,M,Y,K) (数式1)
として記述される。ここでFがモデル化された対応関係を示す関数である。このモデルを用い、L* a* b* 色信号が与えられた場合にCMYKを算出するには、
(C,M,Y,K)=F-1(L* ,a* ,b* ) (数式2)
で示す逆変換モデルを用いることになる。この変換は、3次元の色信号であるL* a* b* から4次元の色信号であるCMYKへの変換となり、数学的には一意に解は得られない。そこで、CMYKのうちの1つ、例えばKについて
K=fk(L* ,a* ,b* ) (数式3)
により先に決めておき、決めたKとL* a* b* から
(C,M,Y)=G-1(L* ,a* ,b* ,K) (数式4)
によりCMYを決定する方法が用いられている。ここで、数式3のfkは、L* a* b* に対してKの与え方を設計する関数である。また関数G-1は関数F-1においてKが決定した場合のCMYを決定する関数である。例えば数式1に示した関数Fという正方向の変換モデルにL* a* b* とKを与え、CMYが収束するように演算を繰り返すことで解を算出すればよい。あるいは上述の特許文献1や特許文献2に記載されている方法を用いてもよい。
数式3と数式4は、出力装置がCMYKを用いて画像を出力する場合の例であるが、例えば、CMYKOG(O=オレンジ、G=グリーン)の6色を用いる場合や、CMYKRGB(R=レッド、G=グリーン、B=ブルー)の7色を用いる場合など、5色以上を用いる場合には、出力装置が受け取る3次元の色信号を、6次元あるいは7次元の色信号に変換することになる。例えば出力装置が受け取る色信号をL* a* b* 色信号とし、CMYKRGBの7色を用いて画像を出力する場合、L* a* b* 色信号からCMYKRGB色信号へ変換することになる。
このような5以上の色を用いる場合の変換方法としては、数式3と数式4を用いた方法を拡張させた方法がある。すなわち、数式5、数式6、数式7により特色成分を決定し、数式8で主要色成分であるCMYを算出する方法である。
R=fR (L* ,a* ,b* ) (数式5)
G=fG (L* ,a* ,b* ) (数式6)
B=fB (L* ,a* ,b* ) (数式7)
(C,M,Y)=F-1(L* ,a* ,b* ,K,R,G,B)(数式8)
このようにして、出力装置が受け取る色信号の色成分の数よりも多くの色を使用する場合についても、使用する色を成分とする色信号が得られることになる。
この変換過程において、数式3、数式5、数式6、数式7で特色成分(KRGB)を算出する際に、最終的に数式8で算出されるCMYKRGBが色域内となるようにKRGBを決定する必要がある。そのために、上述の特許文献3ではKRGBの最大値や最小値の算出を、処理時間がかかる探索処理により求めている。また上述の特許文献4ではCMYの色域を拡張した色域内のCMYKRGBからL* a* b* を求めることにより、色域内となることを保障している。
一般に、出力装置で使用する色材の総量が制限される場合がある。例えば電子写真方式の出力装置では、紙面へトナーが定着しすぎることによる画質の劣化などを防止するために、トナーの総量に制限がある場合が多い。また、液体噴射方式の出力装置でも、にじみや乾燥などの関係からインクの総量に制限がある場合がある。これらの場合は、総量制限値、例えばCMYKの場合はC+M+Y+Kの値が予め設定されている値以下となっているという条件を厳守しなければならない。
また、総量制限に関する課題の他にも、レリーフ感などを抑制するために、色成分のそれぞれに単色制限をかける場合がある。これは、通常では各色成分が0%から100%までの値をとるところ、例えば、C≦80%などの制限をかける場合などがある。
このような制限が設定されている場合、変換により得られた色信号、例えばCMYKRGBが制限を満たす色域内となる必要がある。特許文献4に記載されている方法では、制限を満たしたCMYKRGBからL* a* b* を求めることにより制限を満たす変換が行われる。しかし、CMY3色による再現色域からKRGB付加して色域を拡張しているため、基本のCMYを使用しない例えばKRだけの組み合わせなど、上述の総量制限が厳しくなると本来再現されるはずの色が出力されない場合がある。そのため、制限を満たし、しかも制限を満たす色域を余すことなく使用して色変換を行うことが重要となる。
色域を余すことなく使用することは、例えばCMYにK及びその他の特色を加えた5以上の色を使用するというだけでも問題となる。例えば探索処理で求めると、探索時間は特色の数の二乗で増加し、現実的でない。本発明の実施の形態では、出力装置に制限が課せられている場合、または使用する色が5以上の場合、あるいはその両方の場合において、色域を余すことなく使用する技術を提供するものである。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明の実施の形態の理解を容易にするために、本発明の各実施の形態において具体例として想定する出力装置は、L* a* b* 色空間の色信号を受け取り、CMYK、CMYKR、CMYKRG、CMYKRGBなどの4色から7色(C=シアン、M=マゼンタ、Y=イエロー、K=墨(ブラック)、R=レッド、G=グリーン、B=ブルー)の色材を用いて画像を出力することとする。ここで、使用する色材の色を軸とする色空間を出力色空間とする。なお、入力色空間と出力色空間はこの例に限られるものではなく、入力色空間の次元(N)<出力色空間の次元(M)であれば、いかなる入力色空間、出力色空間であってもよい。例えば、入力色空間は、L* a* b* 色空間の他に、sYCbCr色空間でもXYZ色空間などでもよく、出力色空間は、CMYKRGB色空間の他にもCMYKOG(O=オレンジ)やCMYKOV(V=バイオレット)などの色成分から成る色空間であってもよい。また、出力信号において使用する色のうち、CMYを主要色と呼び、この主要色以外のKRGB(OV)などは、色域拡大や粒状性を向上させるための特色と呼ぶことにする。もちろん出力装置によってはRGBを主要色とし、他の色を特色とするなど、この例に限られるものではない。
図1は、本発明の第一の実施の形態を示す構成図である。図中、11は色域設定部、12は出力色信号制御部、13は色信号対作成部、14は色変換部である。色域設定部11は、M色(ここでは4色から7色)を使用して色を出力する出力装置で、目標色が得られるM個の色成分の値の組み合わせのうち、M個の色成分の値の総和が最小となる組み合わせであって、あらかじめ設定されている制限を満たす組み合わせによって構成される色域を設定する。ここで制限は、例えばM個の色成分の値の総和が、出力装置に課せられた総量制限値以内という制限、あるいは、M個の色成分のそれぞれの値が出力装置に課せられた各色成分毎の単色制限値以内という制限などがある。この色域設定部11で設定される色域は、出力装置で再現される色域のうち、後述するように与えられた制限を満たす最も広い色域である。
出力色信号制御部12は、色域設定部11で設定した色域内の色が得られるM個の色成分の組み合わせを、当該色が得られるM個の色成分の値の総和が最小となる組み合わせと最大となる組み合わせの間であって、予め設定されている制限を満たす範囲内で制御して、M個の色成分を要素とする出力色信号を得る。例えば制限として総量制限値が設定されており、ある色が得られるM個の色成分の値の総和の最大値が総量制限値を超えている場合、その色が得られるM個の色成分の値の総和が最小となる組み合わせと総和が総量制限値となる組み合わせの間で、M個の色成分の組み合わせを制御することになる。この場合、総和が最小となる組み合わせ、あるいは総和が総量制限値となる組み合わせであってもよい。また、ある色が得られるM個の色成分の値の総和の最大値が総量制限値を超えていなければ、総和が最大となる組み合わせであってもよい。もちろん、他の制限が設定されていれば、その設定された制限を満たす範囲内でM色の組み合わせを制御すればよい。
色信号対作成部13は、出力色信号制御部12で求めた出力色信号と、その出力色信号に対応する色を表す入力色空間における入力色信号との対を作成する。この入力色信号と出力色信号の対は、色域設定部11で設定した色域内部及び外郭にまんべんなく配置した色をもとに作成するとよい。上述のように入力色信号の色成分の数N<出力色信号の色成分の数Mであることから、入力色信号から出力色信号は一意に決まらないが、出力色信号に対応する入力色信号は一意に決まり、対が作成される。
色変換部14は、色信号対作成部13で作成した出力色信号と入力色信号との複数の対をもとに、入力色空間の処理対象色信号から出力色空間の処理結果色信号への色変換を行う。例えば出力色信号と入力色信号との複数の対に基づいて色変換モデルを作成し、その色変換モデルを用いて処理対象色信号から処理結果色信号への変換を行えばよい。あるいは、出力色信号と入力色信号との複数の対を変換表として用い、補間演算と組み合わせて処理対象色信号から処理結果色信号への変換を行ってもよい。もちろん他の変換方法を採用してもよい。
なお、色変換部14を設けずに、色信号対作成部13で作成した出力色信号と入力色信号との複数の対を出力する構成や、その出力色信号と入力色信号との複数の対をもとに色変換モデルを作成して出力する構成であってもよい。この場合、出力色信号と入力色信号との対あるいはその対から作成した色変換モデルなどを用いて色変換を行う色変換部14を別の装置として構成してもよい。
上述の本発明の第一の実施の形態の構成について、さらに説明する。本発明の第一の実施の形態における基本的な考え方は、出力装置に課せられた制限を満たす最大の色域をまず求めておいて、その色域内で制限を満たして1対1に対応する出力色信号と入力色信号を求め、色変換を行うものである。そのために、色域設計部11では、設定されている制限を満たす最大の色域を求めることになる。
出力装置によって再現される色の範囲を色域と呼んでいるが、色域内のある色に着目し、その色(目標色)をM色の色材で再現する場合、M色の色材量の組み合わせは複数存在する。図2は、注目色を再現するM色の組み合わせの一例の説明図である。ここではCMYKの4色を用いるものとし、簡単のためにUCR(Under Color Removal)を用いてCMYの各色をKに置き換える場合の例を示している。図2(A)ではUCR率が0%の場合を、図2(B)は50%の場合を、図2(C)は100%の場合を、それぞれ示している。ここでは3つの場合しか示していないが、UCR率を制御することにより、様々なCMYKの組み合わせが作成される。ここで、4色の値の総和を考えると、図2(A)に示したKを最小とした場合に総和が最も大きくなり、図2(C)に示したKを最大とした場合に総和が最も小さくなる。
図3は、出力装置がCMYKを用いる場合のL* a* b* 色空間における色域の一例の説明図である。例えば、出力装置がCMYKの色を用いる場合、出力装置から出力される色の範囲をL* a* b* 色空間で示すと、図3において太線で示すようになる。図2に示したように、ある目標色を出力装置に再現させるのに、Kの値をどの程度にするかは色再現の設計によるものであり、最大限にKを使用してもよいし、Kの使用を最小限に抑えてもよい。例えばKを最大限に使用した場合の色域外郭の変化を図3(A)に示し、Kを最小限に抑えた場合の色域外郭の変化を図3(B)に示している。例えば図3(A)においてK=50と記載した色域外郭は、CMYのいずれかが0%であって、Kは50%までしか加えられない色を示している。すなわち、Kを最大限に使用するとしても、これよりL* が大きい色についてはKは50%より少ない量しか使用できない。逆に、例えば図3(B)においてK=50と記載した色域外郭はCMYのいずれかが100%であって、最低でもKを50%まで加えないと色が再現されないことを示している。すなわち、Kを最小限に抑えるにしても、これよりL* が小さい色についてはさらにKを増やす必要がある。
図3(A)と図3(B)に示した色域外郭(太線)の形状を参照してわかるように、制限が設けられていない状態では、Kを最大限に使用しても、Kを最小限に抑えたとしても、再現される色の範囲は変わらない。従って、色域の内部においては、最大限にKを使用した場合のCMYKの組み合わせからKを最小限に抑えた場合のCMYKの組み合わせの範囲内で、CMYKの組み合わせを変更してよいことを示している。そして、この色域の外郭においては、最大限にKを使用した場合のKの値Kmaxと、最小限にKを抑えた場合のKの値Kminとは、Kmax=Kminの関係にある。
図2、図3では制限を設けない場合について説明したが、出力装置が使用する色成分の値に、例えば総量制限が課せられている場合について説明する。図4は、出力装置に総量制限が課せられている場合のL* a* b* 色空間における色域の一例の説明図である。図4でも、例えば出力装置がCMYKの色を用いるものとして、出力装置から出力される色の範囲をL* a* b* 色空間で示している。図4(A)はKを最大限に使用した場合の色域外郭の変化を示し、図4(B)はKを最小限に抑えた場合の色域外郭の変化を示している。図2でも説明したように、Kを最大限に使用する場合には、Kを最小限に抑えた場合に比べてCMYKの総和は小さくなる。そのため、図4(A)と図4(B)を比較して分かるように、Kを最大限に使用する場合の方が、Kを最小限に抑えた場合よりもL* 値が小さい色についても色域内に含まれることになる。Kを最大と最小の間に設定する場合の色域外郭は、図4(A)と図4(B)に示す色域外郭の間に存在し、Kを最大限に使用する場合に、色域は最も広くなる。
このように、出力装置に総量制限が課せられている場合には、Kを最大限に使用すると最大の広がりを持つ色域が確保されることが分かる。従って、Kを最大限に使用し、CMYKの総和が最小となるCMYKの組み合わせであって、そのCMYKの組み合わせが総量制限を満たすCMYKの組み合わせを求めてゆけば、総量制限を満たす最も広い色域が確保されることになる。このような見地から、色域設定部11では、CMYKの値の総和が最小となる組み合わせであって、総量制限を満たす組み合わせを求めて、その組み合わせにより構成される色域を設定する。
上述の説明では、出力装置に課せられている制限として総量制限の場合を示した。制限は総量制限に限られるものではなく、種々の制限が課せられる場合があり、そのような場合にも対応している。図5は、出力装置に単色制限が課せられている場合のL* a* b* 色空間における色域の一例の説明図である。例えば出力装置がCMYKの色を用いるものとして、それぞれの色成分が80%以内という単色制限が課せられた場合の色域をL* a* b* 色空間で示している。ここではL* の高明度側から見た色域を示している。
このような単色制限が出力装置に課せられている場合でも、それぞれの色成分が単色制限を満たす範囲内で、目標色を再現するCMYKの組み合わせのうち総和が最小となる組み合わせを求めてゆけば、単色制限を満たす最も広い色域が確保されることになる。もちろん、単色制限と総量制限の両方が課せられる場合や、その他の制限が課せられている場合についても、目標色を再現するCMYKの組み合わせのうち総和が最小となる組み合わせであって、制限を満たす組み合わせを求めてゆけば、制限を満たす最も広い色域が確保されることになる。
このようにして制限を満たす最も広い色域を確保してしまえば、その色域内のそれぞれ色について1または複数のCMYKの組み合わせが存在していることが保障されていることになる。出力色信号制御部12では、その存在する1または複数のCMYKの組み合わせの中から1つの組み合わせを選択する。図6は、出力色信号制御部における色成分の組み合わせ制御の一例の説明図である。例えば上述の総量制限が課せられている場合、総和が最小となるCMYKの組み合わせから、総和が最大又は総量制限値となるCMYKの組み合わせまでの間でCMYKの組み合わせが存在することになる。この範囲内でCMYKの値の組み合わせを制御すればよい。例えば図6(A)に示す例は、総和が最小となるCMYKの組み合わせを示しており、この組み合わせを選択してもよい。また図6(C)に示す例は、総和が総量制限値となるCMYKの組み合わせを示しており、この組み合わせを選択してもよい。あるいは図6(B)に示す例のように、総量が最小と総量制限値との中間のCMYKの組み合わせを選択してもよい。
図6(D)には総和が最大となるCMYKの組み合わせを示しており、この例では総量制限値を超えているものとしている。このような場合には、総和が最小から総量制限値までの間でCMYKの組み合わせを制御すればよい。また、総和が最大の場合でも総量制限値を超えない場合には、総和が最小から最大までの間でCMYKの組み合わせを制御すればよい。もちろん、例えば単色制限や他の制限が課せられている場合には、その制限の範囲内でCMYKの組み合わせを制御することになる。
なお、出力色信号制御部12で求めるCMYKの組み合わせに対応する色域内の色は、色域設定部11で用いた目標色のうちの色域内の色を使用してもよいし、別に設定した色についてCMYKの組み合わせを求めてもよい。このCMYKの組み合わせは、色域設定部11で設定した色域内部及び外郭にまんべんなく配置した色をもとに作成するとよい。
また、上述のようにCMYKの組み合わせをある範囲内で制御する方法は、Kをどのように使用するかを示す設計方針に従えばよい。例えば、Kを最大限に使用する設計方針であれば、CMYKの総和が最小となるCMYKの組み合わせとすればよい。また、Kを最小限に抑える設計方針であれば、CMYKの総和が最大又は総量制限などの制限値となるCMYKの組み合わせとすればよい。このほかにも、例えば明度が高くなるに従ってKの割合を少なくする設計方針、彩度が高くなるに従ってKの割合を少なくする設計方針など、種々の設計方針が考えられる。色域が設定されているので、色域の内部及び外郭の色であれば、CMYKの総和が最小となる組み合わせから、総和が最大または制限値となるCMYKの組み合わせまでの範囲で様々な設計方針に従ってCMYKの組み合わせを制御すればよい。
出力色信号制御部12で制御されたCMYKの組み合わせが得られたら、色信号対作成部13において、得られたCMYKの組み合わせを出力色信号とし、その出力色信号に対応する入力色空間における入力色信号を求めて、出力色信号と入力色信号との対を作成する。例えば入力色空間がL* a* b* 色空間であれば、出力色信号から入力色信号への変換は、例えば上述の数式1として示したモデルを用いて行えばよく、この例では4次元から3次元への変換であるので一意に決まることになる。図7は、色信号対作成部13で得られる出力色信号と入力色信号の対の一例の説明図である。例えば出力色信号(C0,M0,Y0,K0)と、その出力色信号を変換することにより得られる入力色信号(L0,a0,b0)とを対応付ければよい。このような出力色信号と入力色信号との対を、出力色信号制御部12で求めた出力色信号について生成する。
色変換部14では、色信号対作成部13で得られた出力色信号(ここではCMYK)と入力色信号(ここではL* a* b* )との複数の対を用いて、入力色空間(L* a* b* 色空間)の処理対象色信号から出力色空間(CMYK色空間)の処理結果色信号への色変換を行う。例えば図7に示した出力色信号と入力色信号との対を変換表として用い、補間演算と組み合わせて処理対象色信号から処理結果色信号への変換を行えばよい。あるいは、例えば出力色信号と入力色信号との複数の対に基づいて色変換モデルを作成し、その色変換モデルを用いて処理対象色信号から処理結果色信号への変換を行えばよい。この場合の構成例を以下に示す。
図8は、色変換部14の一例を示す構成図である。図中、21は拘束色成分算出部、22は残色成分算出部である。拘束色成分算出部21は、色信号対作成部13で作成した出力色信号と入力色信号との複数の対をもとに、入力色空間の処理対象色信号から、出力色空間の処理結果色信号のうちのM−N個の色成分を算出する。このM−N個の色成分は、出力装置が出力する画像の粒状性を向上させる色成分、または、出力装置が再現する色域を拡大するための色成分など、特色成分であるとよい。
例えば上述の例のように入力色空間がL* a* b* 、出力色空間がCMYKである場合、M=4、N=3であり、M−N=1個の色成分を算出する。この場合、例えばKを算出すればよい。Kの算出には、出力色信号CMYKと入力色信号L* a* b* の対からL* a* b* とKを抜き出して上述の数式3のfkとしてモデル化し、与えられた処理対象色信号L* a* b* からKを求めればよい。K以外に特色を使用する場合、それぞれの特色について、その特色とL* a* b* とからモデルを作成し、当該特色の色成分を求めればよい。例えば出力色空間がCMYKRである場合には、fkによりKを求めるとともに、出力色信号のRと入力色信号のL* a* b* とから関数frをモデル化し、与えられた処理対象色信号L* a* b* からRを求めればよい。例えば出力色空間がCMYKRGBの場合には、M=7、N=3であり、M−N=4であって、K、R、G、Bの4色を処理対象色信号L* a* b* からそれぞれ求めればよい。
残色成分算出部22は、処理対象色信号と、拘束色成分算出部21で算出した処理結果色信号のM−N個の色成分から、処理結果色信号の残りのN個の色成分を算出する。
例えば上述の例のように入力色空間がL* a* b* 、出力色空間がCMYKであり、拘束色成分算出部21で処理結果色信号のうちのKを求めた場合には、この残色成分算出部22では処理対象色信号L* a* b* と処理結果色信号のKとから、処理結果色信号のうちのCMYの各色成分を算出する。この場合の算出方法は、上述の数式4を用いて算出すればよい。数式4における関数G-1は、出力装置から予め得られているモデルを用いて作成すればよい。例えば出力装置で出力した色パッチとその測色値から作成されたモデルを利用すればよい。
なお、数式3の関数fkや、数式4の関数G-1のもととなるモデルFは、例えば、特許文献1または特許文献2に記載されている方法や、ニューラルネットワークなどを用いればよい。
このような色変換部14の構成では、拘束色成分算出部21によって出力装置のモデルFを逆に用いて算出する際の未知数の数を、与える既知数の数より小さくしている。出力装置がCMYKの色材を使用する場合は、拘束色成分算出部21で処理対象色信号L* a* b* から処理結果色信号のうちのKを算出することによって、未知数がCMYの3つに、既知数がL* a* b* Kの4つになる。従って、残色成分算出部22では4つの既知成分から3つの未知成分を算出することになり、未知成分が一意に算出される。出力装置がCMYKRGBの7色を使用する場合にも、上述のように拘束色成分算出部21で処理対象色信号L* a* b* から処理結果色信号のうちのK、R、G、Bをそれぞれ算出することで、未知数が3つ、既知数が7つになり、残色成分算出部22では7つの既知成分から3つの未知成分を算出すればよい。
上述のように拘束色成分算出部21ではKやRGBなどの特色を拘束色成分として求めている。このようにCMYなどの基本色に優先して特色の色成分を求めると、特色の色成分が精度よく求まることになる。さらに、精度のよい色変換モデルFを用いることで、入力色信号と、入力色信号を再現するための特色が与えられた場合に、CMYなどの基本色の色成分も精度よく算出されることになる。
図9は、本発明の第二の実施の形態を示す構成図である。図中、31は色域設定部、32は出力色信号制御部、33は色信号対作成部、34は色変換部である。色域設定部31は、3色の基本色と墨を含む2以上の特色のM色(ここでは5色から7色)を使用して色を出力する出力装置で、目標色が得られるM個の色成分の値の組み合わせのうち、特色の値が最大となる組み合わせによって構成される色域を設定する。さらに第一の実施の形態で説明した、予め設定されている各種の制限、例えばM色の色成分の値の総和が総量制限値以内という制限、あるいは各色成分の値が満たすべき単色制限などの制限を満たすように、色域を設定してもよい。この色域設定部31で設定される色域は、出力装置で再現される色域のうち、特色を用いる場合の最も広い色域である。
出力色信号制御部32は、色域設定部31で設定した色域内の色が得られるM個の色成分の組み合わせを制御して、M個の色成分を要素とする出力色信号を得る。制御は、色域内の色が得られるM個の色成分の値の総和が最小となる組み合わせと最大となる組み合わせの間で行う。予め設定されている制限がある場合には、さらに制限を満たす範囲に制限して制御する。
色信号対作成部33は、出力色信号制御部32で求めた出力色信号と、その出力色信号に対応する色を表す入力色空間における入力色信号との対を作成する。この入力色信号と出力色信号の対は、色域設定部31で設定した色域内部及び外郭にまんべんなく配置した色をもとに作成するとよい。上述のように入力色信号の色成分の数N<出力色信号の色成分の数Mであることから、入力色信号から出力色信号は一意に決まらないが、出力色信号に対応する入力色信号は一意に決まり、対が作成される。
色変換部34は、色信号対作成部33で作成した出力色信号と入力色信号との複数の対をもとに、入力色空間の処理対象色信号から出力色空間の処理結果色信号への色変換を行う。例えば出力色信号と入力色信号との複数の対に基づいて色変換モデルを作成し、その色変換モデルを用いて処理対象色信号から処理結果色信号への変換を行えばよい。この場合の色変換部34の構成は、図8に示した構成を適用すればよい。あるいは、出力色信号と入力色信号との複数の対を変換表として用い、補間演算と組み合わせて処理対象色信号から処理結果色信号への変換を行ってもよい。もちろん他の変換方法を採用してもよい。
なお、色変換部34を設けずに、色信号対作成部33で作成した出力色信号と入力色信号との複数の対を出力する構成や、その出力色信号と入力色信号との複数の対をもとに色変換モデルを作成して出力する構成であってもよい。この場合、出力色信号と入力色信号との対あるいはその対から作成した色変換モデルなどを用いて色変換を行う色変換部34を別の装置として構成してもよい。
上述の本発明の第二の実施の形態の構成について、さらに説明する。本発明の第二の実施の形態では、上述の第一の実施の形態で示した色域の作成方法を、K以外の特色に対しても用い、色域を拡張させる。第一の実施の形態で説明したが、各色成分の総和が最小となる色域を生成することで、最大の色域が得られる。色域設定部31では、特色の色成分の値が最大となる色成分の組み合わせを求めることにより色成分の値の総和を最小とし、これによって最大の色域を求める。
図10は、特色を最大として総和が最小となるM色の組み合わせを求める一例の説明図である。ここではCMYKRの5色を用いるものとし、簡単のためにUCRの手法を用いてCMYの各色をK及びRに置き換える場合の例を示している。ここで、KはCMYで表現される色域の低明度側の色域拡大を行うための特色であり、RはMYで表現される領域の彩度の拡大を行うための特色である。よって、KとRの両方を用いることで、低明度側及び赤の方向について彩度側への色域の拡大が図られることになる。
図10(A)には、ある目標色を表すCMYKRの一例を示している。図10(B)では、CMYを等量ずつ減らしてその分だけKを増やした場合を示している。図10(C)は、図10(B)の組み合わせから、MYを等量ずつ減らしてその分だけRを増やした場合を示している。この例では図10(C)に示したCMYKRの組み合わせの場合が、特色であるK及びRが最大となる組み合わせであり、CMYKRの総和が最小となる。
図11は、本発明の第二の実施の形態における色域設定部31による色域の生成方法の一例の説明図である。色域設定部31では、上述のように最大限のKやRで置き換えたCMYKRの組み合わせを求めて色域を設定する。そのために、まず図11(A)に示すように、Kを最大限に使用するCMYK(R=0)4色色域を生成する。この色域は上述の第一の実施の形態において図3(A)で示した色域である。
次に、C=0の領域に対してR=100とするCMYKR(C=0のときR=100)の5色色域を生成する。図11(A)で示した4色色域のうち、C=0としても再現される色の領域を、図11(B)において斜線を付して示している。この領域の色は、図11(A)の4色色域を求めた際にはR=0としている。このC=0の領域の色を示すCMYKR(C=0,R=0)の組み合わせについて、Rを0から100に変更する。これにより得られるCMYKR(C=0)の組み合わせにより再現される色の領域は、図11(C)において斜線を付した領域となる。
そして、図11(B)に示したR=0から、図11(C)に示したR=100までの間で、Rを変化させてゆく。この状態を図11(D)に示している。例えば図11(C)に示したR=100の立体(図11(E)参照)の外郭からRを減らして行けばよい。あるいは、図11(B)に示したC=0、R=0の色域の外郭からRを増やして行けばよい。このようにして、図11(F)に示すCMYKRの5色色域(KとRを最大限に使用する色域)が生成される。このKとRを最大限に使用する色域は、CMYKRの5色を使用する場合の色成分の総和が最小となる色域である。
上述の説明では第一の実施の形態で説明した各種の制限を考慮していないが、制限が課せられている場合には、得られた色域から制限を満たしていない部分を削除すればよい。例えば色成分の総和に制限(総量制限)が課せられている場合には、KとRを最大限に使用した場合のCMYKRの組み合わせの総和が総量制限値を満たしているか否かを判断し、満たしていないCMYKRの組み合わせを削除して行けばよい。
図12は、KとRを最大限に使用するCMYKRの組み合わせを総量制限により選択する処理の一例の説明図、図13は、CMYKRによる総量制限を満たす最大の色域の一例の説明図である。図12に示す例では、総和が280%以内という制限を付した場合を示している。KとRを最大限に使用するCMYKRの組み合わせのそれぞれについて、総和と、制限を満たすことにより抽出する組み合わせか否かを示している。例えば(C,M,Y,K,R)=(0,80,50,20,10)の場合は総和が160%となるため抽出する対象である。また、(C,M,Y,K,R)=(0,90,80,90,100)の場合は総和が360%となるため抽出せず、色域から削除する対象である。このように、KとRを最大限に使用するCMYKRの組み合わせのうち、総和の制限を満たすCMYKRの組み合わせを抽出すれば、設定されている総和の制限を満たす最大の色域が得られる。得られる色域をL* a* b* 色空間で示すと、例えば図13において斜線を付した色域となる。なお、斜線を付した色域の外側の実線で示した色域が、図11(F)で示した総和の制限を設けない場合の色域である。
他の制限が課せられている場合についても、KとRを最大限に使用するCMYKRの組み合わせのうちから制限を満たすものを抽出することにより、制限を満たす最大の色域が得られる。
このようにしてCMYKRを用いた場合の最大の色域を確保してしまえば、その色域内のそれぞれ色について1または複数のCMYKRの組み合わせが存在していることが保障されていることになる。出力色信号制御部32では、その存在する1または複数のCMYKの組み合わせの中から1つの組み合わせを選択する。
図14は、CMYKRGBを使用した場合の最大の色域の一例の説明図である。図11ではCMYKRの5色で説明を行ったが、例えばCMYKRGBを使用する場合には、RとともにGやBによる色域の拡張を行えばよい。R、G、Bが互いに重なることはなく、従ってCMYKRGBの7色を扱う場合は、CMYKR、CMYKG、CMYKBと分けて考えればよい。Rを用いて色域の拡張を行った手法をそのまま用い、GについてはM=0の領域についてGを0から100まで変化させればよく、BについてはY=0の領域についてBを0から100まで変化させればよい。このようにして得られた色域を図14に示している。図14では、L* a* b* 色空間において、L* の値が大きい側から見た色域の外郭を示している。
もちろん、CMYKRやCMYKRGBに限らず、CMYKRGや他の特色を使用する場合についても、それぞれの特色について上述したRにおける手法を用いて色域を設定して行けばよい。
図15は、色域内でのCMYKRの組み合わせの範囲の一例の説明図である。例えば制限が課せられていない場合には、色域内のある色を再現するCMYKRの組み合わせは、総和が最小の組み合わせから総和が最大の組み合わせまでの間で選択すればよい。また、制限が課せられている場合も、総和が最小の組み合わせから制限の上限となる組み合わせまでの間で選択すればよい。図15では制限が課せられていない場合を示しており、図15(A)ではKとRを最大限に使用する場合を示している。KとRに着目すると、色域内ではKを使用することになり、C=0で再現される色の領域内ではKとRを使用することになる。図15(B)ではKとRを最小限に使用する場合を示しており、CMYで再現される色の領域についてはKもRも使用せず、Kを使用しなければ再現されない色の領域、及び、少なくともRを使用しなければ再現されない色の領域が存在する。KやRを用いない場合には、その代わりにKであればCMYの使用量が、RであればMYの使用量が、それぞれ増加することになり、図15(B)の場合に総和が最大となる。もちろん、図15(A)に示した総和が最小の場合と図15(B)に示した総和が最大の場合の中間の総和となる組み合わせも存在する。このように、色域設定部31で設定した色域において、CMYKRの組み合わせは1以上存在しており、その範囲内でCMYKRの組み合わせを制御すればよい。
具体例として、CMYKRの総和が最小となる組み合わせの1つを
(C,M,Y,K,R)=(0,0,50,30,30)
とする。総和が最小となる組み合わせでは、CMYのいずれかが0である。このCMYKRの組み合わせについて、UCRの原理を用いて最大総量色域へ制御すると以下のようになる。まず、RをYMで置き換えることにより、
(C,M,Y,K,R)=(0,30,80,30,0)
となる。さらに、KをCMYで置き換えることにより、
(C,M,Y,K,R)=(20,50,100,10,0)
となる。以上のようにして得られた、総和が最小となるCMYKの組み合わせである(C,M,Y,K,R)=(0,0,50,30,30)と、総和が最大となるCMYKの組み合わせである(C,M,Y,K,R)=(20,50,100,10,0)を上下限とする範囲で、CMYKRを制御すればよい。色域内の他の色についても、上述のようにしてCMYKRを制御すればよい。
制御方法としては、総和が最小となる制御方法、総和が最大(制限が課せられている場合には制限を満たす)となる制御方法、グレー軸に近づくにつれてKを増やし、彩度が高いほどKを減らす制御方法など、種々の制御方法を適用すればよい。RGBなどの特色で彩度を高める色域拡大では、彩度が高くなるに従い、特色を増やすように制御するとよい。
どのような制御を行うにしろ、KとRの値は、総和が最小となる場合のKR(KとRが最大)と、総和が最大となる場合のKR(KとRが最小)とを上下限とする範囲内の値のいずれかにならなければ色域内の色は再現されない。もちろん、KとRのどちらを先に決めるかによって、後に決める方は制限される。どちらを優先させるにしても、総和が最小の組み合わせと総和が最大の組み合わせとを上下限とする範囲で特色を制御しなければならない。
図16は、CMYKRを使用する場合のK及びRの制御方法の一例の説明図である。この例では、Rが最小となるように制御する場合の一例を示している。色域設定部31で設定された色域において、Kを使用するがRを使用しない色の領域と、Rを使用する色の領域に、それぞれ斜線を付してある。図16(A)ではKを最大限に使用する場合であり、図16(B)はKを最小限に抑えた場合である。この例ではRを最小とすると決定しているので、その条件の下でKが取り得る範囲でKを制御することになる。
あるいは、Rが最大となるように先に決め、その条件の下でKが取り得る範囲でKを制御したり、逆にKが最大あるいは最小となるように先に決め、その条件の下でRが取り得る範囲でRを制御してもよい。もちろん、K、Rとも、最大や最小に限らず、その間の値となるように一方を制御し、その条件の下で他方を制御してもよいことは言うまでもない。
例えば図15(B)、図16(B)に示すようにRとKを最小限に抑えた場合には、CMYで再現される色についてはKを含めないことにより粒状性よく色再現がなされるが、この色領域ではRの反対色であるCが使用される。そのため、Rの色相において無彩色軸から彩度を増加させて行くと、Cは減少して行きCMYで再現される色の境界を過ぎるとC=0となってRが急激に増加する。そのため、この境界で色の連続性が悪くなる場合がある。そのため、CMYで再現される色領域でも、ある程度はRを使用し、反対色の関係にあるRとCを混在させるように、R、Kを制御するとよい。なお、反対色とは、ある色成分に対して最も色相の差が大きい色成分である。一例を挙げれば、RやOについてはCであり、GについてはMであり、B、Vに対してはYである。
上述の反対色を混在させることについて、さらに説明する。図17は、CMYKRを使用する場合のK、Rの制御による他の色成分への影響の説明図である。図17(A)は、あるCMYで再現される色においてKとRを最大限に用いた場合を示している。この色成分の組み合わせから、逆のUCRを行ってRを最小にする。すなわち、Rを減らした分だけMとYを増加させる。この例の場合、Mが100%となるまでRを減らせるので、図17(A)に示す色成分の組み合わせが、Rが最小の組み合わせとなる。この組み合わせでは、Kは固定される。すなわち、Kを減らすとCMYが増加するが、すでにMが100%となっているため、Kは減らせない。従って、この場合には反対色の関係にあるRとCは混在しない。
これに対して図17(C)に示す組み合わせでは、図17(A)の組み合わせからRを最小とせず、MYが100%とならない程度で抑えている。この場合には、Kを減らす余地があり、例えばKを最小限に抑えた場合、図17(D)に示す色成分の組み合わせが得られる。この場合には、反対色の関係にあるRとCが混在することになる。もちろん、Rを最大限使用した場合も、Kを減らせば反対色の関係にあるRとCが混在することになる。このように、RとKを制御することによって、CMYで再現される色においても反対色の関係にあるRとCを混在させた色成分の組み合わせが作成されることになる。
図18は、CMYKRを使用する場合のK及びRの制御方法の別の例の説明図である。この例では、Rを最小とした場合にCMYで再現される色領域においても、Rを含ませた領域を設けた例を示している。図18においても、Kを使用し、Rを使用しない領域と、少なくともRを使用する領域に、それぞれ異なる斜線を付して示している。また、図18(A)はK最大の場合を、図18(B)はK最小の場合を示している。このように、CMYで再現される色領域においてもRを使用する色領域を設け、この色領域で反対色の関係にあるRとCを混在させて色が連続するようにしている。
反対色の関係にある色成分を混在させる率を示す混在率は、上述の図17でも説明したようにRを決定した後にKをどの程度減らすかによりRの反対色であるCが決定することから、Rの値と明度に影響を与える色成分であるKの値に応じて決定されることになる。または、例えば明度または彩度あるいは明度と彩度に応じて混在率を決定し、その混在率に応じてRとKを決定してもよい。
図19は、Rの残存率の一例の説明図である。例えば反対色の混在率を、Rの値とKの値に応じて決定する場合の一例について説明する。まず、Rについては、例えば図19に示した残存率に応じて決定すると良い。この例においては、Rの残存率を、R、Kとも最大限に使用した場合のKの値に応じて設定している。R、Kとも最大限に使用した場合の色域の状態は図15(A)に示しており、この場合のR,Kは図11で説明した方法により設定されていることから、そのKの値に応じてRの残存率を決定し、Rの値を求めればよい。
図19では、Kの値が0で残存率を1とし、Kの値が0から増加するに従って残存率を減少させて、Kの値がαで残存率が0となるようにした例を示している。この残存率に従い、残存率が1の場合にRを最大とし、残存率の減少に従ってRを減少させ、残存率が0の場合にRを最小とする。例えば残存率が一律に1であれば図15(A)に示したRが最大の状態となり、残存率が一律に0であれば図16(A)に示した状態となる。ここでは例えば図19に示した残存率に従ってRを決定する。これにより、例えば図18(A)に示した状態が得られる。
この状態からKを減少させる。Kを最小限に用いた場合には図18(B)に示した状態となる。Kの減少によりCMYが増加することから、Rと、Rの反対色であるCとが混在する領域が生じることになる。上述のRの残存率とKの減少率から、間接的に、Rとその反対色であるCとが、ある混在率で混在することになる。
ここではRを決めてからKを決めているが、例えば、予め決められた方法によりKを決めてしまっても、Kを最大としなければ、Rを使用していれば反対色のCと混在することになる。例えば、色の明度及び彩度に従ってKを決めてもよい。
例えば図16(B)に示すR最小、K最小の場合を想定し、CMYで再現される色領域では彩度などに応じた混在率を設定して彩度の増加とともに徐々にRが含まれるように制御し、Kが含まれる色領域ではKの増加に伴って混在率が低くなるように設定するなどが考えられる。このように設定した混在率からR、Kを決定すればよい。あるいは、決定したR、Kを用いてCMYを求めた結果として、RとCの混在率が想定されたものとなるように、R、Kを決定してもよい。
図20は、CMYKRを使用する場合のKの制御方法の具体例の説明図である。この例では、色の明度及び彩度に従ってKを制御する場合の一例を示している。図20において、0≦K制御率≦1の値であり、K制御率=0の場合にはKを最小とすることを示し、K制御率=1の場合にはKを最大とすることを示している。図20(A)に示した例では、彩度が高くなるにつれて、また明度が高くなるにつれて、K制御率が小さくなるように制御する例を示している。また、図20(B)に示した例では、彩度によってK制御率の変化を変えた例を示している。もちろん、K制御率はこの例に限られることはなく、種々の制御を行ってよいことは言うまでもない。
ここで、明度や彩度は、実際の明度や彩度でなくてもよく、例えば擬似明度、擬似彩度を用いてもよい。擬似明度、擬似彩度としては、例えば、図18(B)に示した、CMYにより再現される色領域でもRを用いる場合であって、Kを最小限使用する場合のCMYKRの値を用い、
擬似明度L=(C+M+Y+K+R)/総量制限値、
擬似彩度S=(max(CMY)−min(CMY))/100
で算出すればよい。なお、max(CMY)はC、M、Yのうちの最大値、min(CMY)はC、M、Yのうちの最小値を表している。もちろん、この定義に限らず、種々の方法により擬似明度、擬似彩度を求めてもよい。
図21は、CMYKRを使用する場合のKの制御方法の別の具体例の説明図である。この例では、再現する色のCIELAB色空間における値に従ってKを制御する場合の一例を示している。図21において、0≦K制御率≦1の値であり、K制御率=0の場合にはKを最小とすることを示し、K制御率=1の場合にはKを最大とすることを示している。図21(A)に示した例では、a* 、b* が高くなるにつれて、またL* が高くなるにつれて、K制御率が小さくなるように制御する例を示している。また、図21(B)に示した例では、彩度によってK制御率の変化を変えた例を示している。もちろん、K制御率はこの例に限られることはなく、種々の制御を行ってよいことは言うまでもない。
このようにしてR、Kの値を制御すれば、反対色の関係にあるCとRを混在させて色が連続するように変化することになる。
なお、例えばCMYKR以外の場合についても、上述の制御を適用すればよい。例えばCMYKRGBを使用する場合には図14に示した色域が得られている。上述のようにR、G、Bは独立させて考えればよいので、図14に示した色域について、上述のKとRの場合の手法を用い、KとG、KとBについて制御すればよい。また、図15、図16や図18では出力装置に課せられている制限については考慮していないが、制限が課せられている場合には、図12,図13で説明した制限が課せられている場合の色域を使用し、制御する範囲についても当該制限を満たす範囲として制御すればよい。
出力色信号制御部32で制御された各色成分の組み合わせが得られたら、色信号対作成部33において、得られた各色成分の組み合わせを出力色信号とし、その出力色信号に対応する入力色空間における入力色信号を求めて、出力色信号と入力色信号との対を作成する。例えば出力色信号がCMYKR、入力色信号がL* a* b* 色空間の色信号であれば、CMYKRからL* a* b* への変換を行う。この変換は、例えば上述の数式1についてCMYKRに拡張したモデルを用いて行えばよい。この例では5次元から3次元への変換であるので一意に決まることになる。図22は、色信号対作成部33で得られる出力色信号と入力色信号の対の一例の説明図である。例えば出力色信号(C0,M0,Y0,K0,R0)と、その出力色信号を変換することにより得られる入力色信号(L0,a0,b0)とを対応付ければよい。このような出力色信号と入力色信号との対を、出力色信号制御部32で求めた出力色信号について生成する。
色変換部34では、色信号対作成部33で得られた出力色信号(例えばCMYKR)と入力色信号(例えばL* a* b* )との複数の対を用いて、入力色空間(L* a* b* 色空間)の処理対象色信号から出力色空間(CMYKR色空間)の処理結果色信号への色変換を行う。例えば図22に示した出力色信号と入力色信号との対を変換表として用い、補間演算と組み合わせて処理対象色信号から処理結果色信号への変換を行えばよい。あるいは、例えば出力色信号と入力色信号との複数の対に基づいて色変換モデルを作成し、その色変換モデルを用いて処理対象色信号から処理結果色信号への変換を行えばよい。この場合の色変換部34は、図8に示した構成を用いればよい。その場合、出力色信号がCMYKRであれば、拘束色成分算出部21では、色信号対作成部33で得られた出力色空間と入力色信号との対をもとに入力色信号と出力色信号のうちのKとからモデルを作成し、そのモデルをもとに処理対象色信号L* a* b* からKを算出する。それとともに、入力色信号と出力色信号のうちのRとからモデルを作成し、そのモデルをもとに処理対象色信号L* a* b* からRを算出する。そして残色成分算出部22は、拘束色成分算出部21で算出したKとR及び処理対象色信号L* a* b* とから、残りのCMYを算出すればよい。拘束色成分算出部21で得られたK、Rと、残色成分算出部23で得られたCMYとから処理結果色信号が得られる。
図23は、本発明の第三の実施の形態を示す構成図である。図中、41は色域設定部、42は第1色信号対作成部、43は第2色信号対作成部、44は色変換部、51は拘束色成分算出部、52は残色成分算出部である。この第三の実施の形態では、設定した色域内の色を表すM色の色成分の組み合わせについて総和の上限及び下限となる組み合わせを求め、その上限の組み合わせと下限の組み合わせのそれぞれについて入力色信号との対を作成し、変換対象色信号から変換結果色信号のM−N個の色成分について上下限の値を求めて、その間で制御する例を示している。
色域設定部41は、M色を使用して色を出力する出力装置で目標色が得られるM個の色成分の値の組み合わせのうちM個の色成分の値の総和が最小となる組み合わせによって構成される色域を設定する。出力装置に制限が課せられている場合には、その制限を満たす範囲で色域を設定する。なお、この色域設定部41は、第一の実施の形態における色域設定部11または第二の実施の形態における色域設定部31により構成すればよい。
第1色信号対作成部42は、色域設定部41で設定した色域内の色が得られるM個の色成分の組み合わせのうち、総和が最小となる組み合わせを出力色信号とし、その出力色信号に対応するMより小さいN個の色成分を要素とする入力色空間における入力色信号との対である第1色信号対を作成する。
第2色信号対作成手段43は、色域設定部41で設定した色域内の色が得られるM個の色成分の組み合わせのうち、総和が最大となる組み合わせを出力色信号とし、その出力色信号に対応する入力色空間における入力色信号との対である第2色信号対を作成する。なお、出力装置に制限が課せられている場合には、その制限の範囲内で総和が最大となる組み合わせを出力色信号とする。
色変換部44は、第1色信号対作成部42で作成した第1色信号対及び第2色信号対作成部43で作成した第2色信号対をもとに、入力色空間の処理対象色信号から出力色空間の処理結果色信号への色変換を行う。ここでは拘束色成分算出部51及び残色成分算出部52を含む構成としている。
拘束色成分算出部51は、入力色空間の処理対象色信号から、出力色空間の処理結果色信号のうちのM−N個の色成分を算出する。その際に、第1色信号対作成部42で作成した複数の第1色信号対をもとに、M−N個の色成分を算出して第1拘束色成分とする。また、第2色信号対作成部43で作成した複数の第2色信号対をもとに、M−N個の色成分を算出して第2拘束色成分とする。そして、第1拘束色成分と前記第2拘束色成分及びその間の範囲で、M−N個の色成分の値を制御し、M−N個の色成分を算出する。なお、第1色信号対からM−N個の色成分を算出する構成、及び、第2色信号対からM−N個の色成分を算出する構成は、図8で示した拘束色成分算出部21の構成を用いればよい。
残色成分算出部52は、処理対象色信号と、拘束色成分算出部51で算出した処理結果色信号のM−N個の色成分から、処理結果色信号の残りのN個の色成分を算出する。これにより、算出したN個の色成分と拘束色成分算出部51で変換したM−N個の色成分とにより、処理結果色信号が得られる。なお、この残色成分算出部52は、例えば図8に示した残色成分算出部22により構成するとよい。
例えば出力色空間としてCMYKを用い、入力色空間としてL* a* b* を用いる場合、第1色信号対作成部42では総和が最小となるCMYKの組み合わせとL* a* b* との対が第1色信号対として得られ、また第2色信号対作成部43では総和が最大(制限を満たす範囲内で最大)となるCMYKの組み合わせとL* a* b* との対が第2色信号対として得られている。従って、拘束色成分をKとする場合、第1色信号対を用いることにより最大のKが得られ、第2色信号対を用いることによって最小のKが得られることになる。この最大のKから最小のKの間でKを制御すればよい。例えば明度や彩度に応じてKの割合を制御するなどが考えられる。
また、特色としてK以外の色が含まれている場合には、KまたはK以外の特色のいずれかを先に決め、その決められた条件の下で他方を決める必要がある。そのため、例えばCMYKRを用いる場合、Rについては第1色信号対作成部42及び第2色信号対作成部43で制御しておき、Kについては拘束色成分算出部51で制御するように構成するとよい。例えばRを最大限に使用するものとして、Kを最大に用いる場合の第1色信号対を第1色信号対作成部42で作成するとともに、Kを最小限に抑えた第2色信号対を第2色信号対作成部43で作成し、この第1色信号対及び第2色信号対を用いて得られた最大のKと最小のKの間(最大のKと最小のKを含む)でKを制御すればよい。もちろん、第1色信号対作成部42及び第2色信号対作成部43で第1色信号対及び第2色信号対を作成する際のRの制御方法は、Rを最大限にする場合に限られるものではなく、最小、あるいは予め設計された方法に従って行えばよい。例えば上述の図17、図18で説明した反対色を混在させる設計とし、その設計に従ってRを決めてKを最大に用いる場合の第1色信号対とKを最小限に抑えた第2色信号対を作成し、図20または図21で説明したKの制御方法を用いてKを決めてもよい。
図24は、CMYKRを使用する場合にRを最小限に抑えてKを制御する場合の一例の説明図である。例えばRを最小限に用いる場合には、Kを最大に用いる場合の第1色信号対を第1色信号対作成部42で作成するとともに、Kを最小限に抑えた第2色信号対を第2色信号対作成部43で作成し、この第1色信号対及び第2色信号対を用いて得られた最大のKと最小のKの間(最大のKと最小のKを含む)でKを制御すればよい。Kを最大とする場合の色域の例を図24(A)に、Kを最小とする場合の色域の例を図24(B)に、それぞれ示している。総量制限が課せられている場合は、もちろん図24(A)の場合も図24(B)の場合も、色材の組み合わせは総量制限の範囲内で作成することになる。
図24において、L* a* b* から最小のRを求めるためのモデルを作成した場合、最小のRを用いることから、図24(A)の場合も図24(B)の場合も得られるRは変わらず、どちらもL* a* b* から最小のRを求めるモデルとなる。
一方、Kに関しては、図24(A)に示したKを最大とする場合はL* a* b* から最大のKを求めるモデルを、図24(B)に示したKを最小とする場合にはL* a* b* から最小のKを求めるモデルを作成することになる。この場合、従来CMYKの4色を用いる場合に使用されるKの制御方法を反映させればよい。例えば、図21(A)で説明したKの制御方法を使用すれば良く、K制御率が1ならば図24(A)に示したKを最大限に使用する場合となり、K制御率が0ならば図24(B)に示したKを最小限に使用する場合となる。拘束色成分算出部51にて、図21(A)に示したK制御率でKを制御し、拘束色成分としてKを算出すればよい。制御されたKを用いた色域は、図24(C)に示すようになる。
図25は、本発明の第三の実施の形態においてRを最小限に抑えてKを制御した後にRを制御する場合における拘束色成分算出部の動作の一例の説明図である。上述のようにしてRを最小限に抑えてKを制御することによってKを決めた後に、さらに最小限に抑えていたRについての制御を行ってもよい。前述の図18に示したように色材色の空間で混在制御する場合は色材量で制御し、その状態をL* a* b* において示していたが、図25においてはKを決めた場合のL* a* b* に対して具体的にRの使用量を決定する。図25には、その場合の拘束色成分算出部51における処理の一例を示しており、拘束色成分であるKとRを算出する例である。
S91では、上述のようにしてRを最小限に抑えた条件下で、第1色信号対作成部42で作成されたKを最大に用いる場合の第1色信号対と、第2色信号対作成部43で作成されたKを最小限に抑えた第2色信号対を用い、最大のK以下、最小のK以上の範囲でKを制御し、Kの値を決定する。第1色信号対はL* a* b* から最大のKを求めるモデル(図24(A))を、また、第2色信号対はL* a* b* から最小のKを求めるモデル(図24(B))をそれぞれ用いて第1色信号対作成部42及び第2色信号対作成部43で作成すればよい。また、Kの制御は、例えば図21(A)に示した制御率などを用いてKを算出すればよい。
続いてS92において、S91で決定したKを固定した場合の最大のRを求める。図26は、CMYKRを使用する場合にKを制御した後の最小R及び最大Rの一例の説明図である。上述のようにしてS91でRを最小限に抑えてKを制御すると、色域は図24(C)に示した状態となり、これを図26(A)に再掲している。図26(A)に示すようにRが最小の条件でKを決めた状態で、図26(B)に示すようにRを最大限に使用する組み合わせが原理的に存在する。この原理的に存在するRの最大値とは、言い換えれば、S91で決定したKに応じた最大のRである。
最大のRの求め方としては、例えばこの例ではCMYKRを用いる出力装置の入出力特性のモデルを用い、S91で決定したKを固定して求めればよい。Kが決まっているので、YMのうち小さい方を強制的に0として、その0としたYMのいずれかと、L* a* b* と、Kを、出力装置の入出力特性のモデルに与えることで、CとYMのうち0にしなかった方の値とRが算出される。算出されたRがKを固定した場合の最大のRである。これは、UCRの原理からYMのいずれか小さい方の値までRを増やせることから、YMのうちいずれかを0とすれば最大のRが得られることになる。
また、上述のようにYとMのうちの小さい方を0とするのではなく、Y=0としたL* a* b* KY(=0)からMCRの変換と、M=0としたL* a* b* KM(=0)からYCRの変換を行って、算出されたYMCKRが色域内(YMCKRがすべて0%以上100%以下の範囲内)になる方のRを最大のRとしてもよい。出力装置の特性によってはYとMのどちらを0とすればよいかが分からないことがあり、その場合にはこの方法により対応すればよい。
S93では、最小のR以上最大のR以下の範囲でRを制御し、Rを求める。最小のRは、第一色信号対及び第二色信号対を求める際にRを最小に固定していたので、第一色信号対または第二色信号対のいずれからでも得られ、例えばL* a* b* から最小のRを求めるモデルを使用して、最小のRを求めればよい。また最大のRはS92で得たので、Rを制御する範囲が定まることになる。
図27は、Rの制御率の決定方法の一例の説明図である。最小のR以上最大のR以下の範囲でRを制御を制御する場合、例えば図27に示す制御率により制御すればよい。図27(A)に示したRの制御率の例では、R制御率が0の場合に最小のRを用い、R制御率が1の場合に最大のRを用いることとして、R制御率に応じたRを決定することとしている。この例におけるR制御率は、彩度が小さいほど値を小さくし、また、Rの色相からの距離が大きいほど値を小さくしている。
また、Rを使用する領域は、Rの色相からの距離が遠い色よりも近い色の方が、また、彩度が低い色よりも高い色の方がRを使用すると考えるのが一般的なので、例えば図27(B)に示す彩度−色相平面での色領域でRを制御するとよく、この色領域で例えば図27(A)に示したR制御率に従ってRを制御すればよい。
図28は、CMYKRを使用する場合にKを制御した後のRの制御による色領域の一例の説明図である。Kを制御した後にRを最小とした場合を図28(A)に、また、Kを制御した後にRを最大とした場合を図28(B)にそれぞれ示しており、これらはそれぞれ図26(A)、図26(B)を再掲したものである。例えば図27に示したRの制御率などを用いてRを制御した場合の色領域の一例を、図28(C)に示している。図28(C)に示すように、最終的なCMYKRの組み合わせは、L* a* b* に対してKとRが使用されることになる。
図29は、明度に応じたRの制御率の一例の説明図である。図28(C)に示した例では、Kを含む色領域とRを含む色領域が重複する領域が存在し、その領域については、RとCの混在を許していることから部分的にCとRとKが混在する領域が含まれることになる。このようなCとRとKの混在を避け、または、軽減する場合は、図29に示す明度に応じたRの制御率を例えば図27に示したR制御率と併せて使用するとよい。図29に示したR制御率の例では、ある明度L* 以上の明度において、明度が大きくなるに従ってR制御率を大きくし、最大明度においてR制御率が最大となるようにしている。
例えば図27に示したR制御率と図29に示したR制御率の両方を0以上1以下の値とし、2つのR制御率の積を取ることで、R色相からの距離、彩度、明度の3つの要素に応じてRが制御されることになる。
図30は、明度を加味したRの制御による色領域の一例の説明図である。Kを制御した後にRを最小とした場合を図30(A)に、また、Kを制御した後にRを最大とした場合を図30(B)にそれぞれ示しており、これらはそれぞれ図26(A)、図26(B)を再掲したものである。例えば図27に示したRの色相からの距離及び彩度に従ったRの制御率と、図29に示した明度に従ったRの制御率とを用いてRを制御した場合の色領域の一例を、図30(C)に示している。図30(C)に示すように、図28(C)に示した明度に従ったRの制御率を用いない場合の色領域と比べて、低明度の領域でRを使用する領域が減少しており、これによってCとRとKが混在する領域を減少させている。
ここで、図27に示したRの色相からの距離及び彩度に従ったR制御率と図29に示した明度に従ったRの制御率とは、個別に設定してもよいし、あるいは、R色相からの距離、再度、明度の3次元の軸に対し、R制御率が1つ対応するような関数を作成し、この関数を用いてR制御率を求めてもよい。
なお、Rの色相からの距離は、基準となるRの色相を決めなければならない。Rの色相は設計により決めてもよいし、または、出力装置の入出力特性から作成した色変換モデルによりYMの2次色の階調(Y、Mは0%以上100%以下)やRの単色階調(Rは0%以上100%以下)などのL* a* b* 値あるいはa* b* 値を求めてRの色相を求めてもよい。R以外の特色の場合、例えばO(オレンジ)などは基準となる色相をR(レッド)の場合からずらせばよい。また、例えばB(ブルー)やV(バイオレット)ならば、基準となる色相をa* に正方向、b* に負方向に設定すればよいし、G(グリーン)ならば、a* に負方向、b* に正方向に設定すればよい。
彩度に関しては、a* b* の原点からの距離が一般的である(C* と呼ばれる)。図29に示したR制御率は、ある境界となる明度以下ではR制御率を0としているが、境界となる明度についてはあらかじめ設定しておけばよく、例えば設計により決めればよい。例えば、図30に示したようにCRKの混在を軽減するのか、Rを極力使うのか等の設計指針に従えばよい。
上述の説明では、YMのうち小さい方の値を0にすることで最大のRを求めてからRの制御を行うこととして説明した。しかし、必ずしも最大のRを求めてからRの制御を行う必要はない。Kを制御することによりKを決めた後に、R制御率に応じてYMのうち小さい方を減らす率を変えてもよい。すなわち、min(Y、M)をYとMの小さい方を選択することとすれば、min(Y,M)を0以上min(Y,M)未満の範囲で調整すればよい。制御率が1の場合はmin(Y,M)を0にし、制御率が0の場合はYMの値を変更しない。これにより、制御後のRを直接求めてもよい。このようにしても、最大Rと最小Rの間でRを制御することには変わりはない。もちろん、特色がGやBの場合も、GならばCとYの小さい方を、BならばMとCの小さい方を制御することでRの場合の例と同様になる。
以上のようにして、KもRもL* a* b* に対して制御した値が決定されることになる。また、特色と反対色との混在の制御もL* a* b* に合わせて行われることになる。もちろん、R、Kの決定方法はこの例に限られるものではない。なお、上述の説明では特色としてRの場合を例にして主に説明したが、他の特色についてもKと当該特色について制御すればよい。
また、上述の説明では第1色信号対作成部42及び第2色信号対作成部43でRを制御しておき、Kについては拘束色成分算出部51で制御するように構成しているが、逆にKについては第1色信号対作成部42及び第2色信号対作成部43で制御しておき、Rについては拘束色成分算出部51で制御するように構成してもよい。なお、K以外の特色が複数存在する場合、例えばCMYKRGBの場合には、KとR、KとG、KとBについて、第1色信号対作成部42及び第2色信号対作成部43で一方を制御し、他方を拘束色成分算出部51で制御すればよい。
図31は、本発明の各実施の形態で説明した機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。図中、61はプログラム、62はコンピュータ、71は光磁気ディスク、72は光ディスク、73は磁気ディスク、74はメモリ、81はCPU、82は内部メモリ、83は読取部、84はハードディスク、85はインタフェース、86は通信部である。
上述の本発明の各実施の形態で説明した各部の機能の全部または部分的に、コンピュータにより実行可能なプログラム61によって実現してもよい。その場合、そのプログラム61およびそのプログラムが用いるデータなどは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶させておけばよい。記憶媒体とは、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取部83に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気等のエネルギーの変化状態を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取部83にプログラムの記述内容を伝達するものである。例えば、光磁気ディスク71,光ディスク72(CDやDVDなどを含む)、磁気ディスク73,メモリ74(ICカード、メモリカードなどを含む)等である。もちろんこれらの記憶媒体は、可搬型に限られるものではない。
これらの記憶媒体にプログラム61を格納しておき、例えばコンピュータ62の読取部83あるいはインタフェース85にこれらの記憶媒体を装着することによって、コンピュータからプログラム61を読み出し、内部メモリ82またはハードディスク84に記憶し、CPU81によってプログラム61を実行することによって、上述の本発明の各実施の形態で説明した機能が全部又は部分的に実現される。あるいは、通信路を介してプログラム61をコンピュータ62に転送し、コンピュータ62では通信部86でプログラム61を受信して内部メモリ82またはハードディスク84に記憶し、CPU81によってプログラム61を実行することによって実現してもよい。
コンピュータ62には、このほかインタフェース85を介して様々な装置と接続してもよい。例えば情報を表示する表示手段や利用者からの情報を受け付ける受付手段等も接続されていてもよい。また、例えば出力装置としての画像形成装置がインタフェース85を介して接続され、変換結果色信号を使用して画像形成装置で画像を形成するように構成してもよい。なお、各構成が1台のコンピュータにおいて動作する必要はなく、処理段階に応じて別のコンピュータにより処理が実行されてもよい。例えば色信号対を作成する処理と、処理対象色信号の変換を行う処理、あるいはさらに色信号対からモデルを作成する処理などを、別のコンピュータで行ってもよい。