JP5104620B2 - 吸収型多層膜ndフィルターとその製造装置および吸収型多層膜ndフィルターの製造方法 - Google Patents

吸収型多層膜ndフィルターとその製造装置および吸収型多層膜ndフィルターの製造方法 Download PDF

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Description

本発明はグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターに係り、特に、再現性よく安定して製造することが可能な吸収型多層膜NDフィルターとその製造装置および吸収型多層膜NDフィルターの製造方法に関するものである。
最近、可視域の透過光を減衰させるNDフィルターが多用されるようになってきており、この種のND(Neutral Density Filter)フィルターには、入射光を反射して減衰させる反射型NDフィルターと、入射光を吸収して減衰させる吸収型NDフィルターが知られている。また、反射光が問題となるレンズ光学系にNDフィルターを組み込む場合には一般に吸収型NDフィルターが用いられ、この吸収型NDフィルターには、基板自体に吸収物質を混ぜ(色ガラスNDフィルター)あるいは吸収物質を塗布するタイプと、基板自体に吸収はなくその表面に形成された薄膜に吸収があるタイプとが存在する。また、後者の場合、薄膜表面の反射を防ぐため上記薄膜を多層膜で構成し、透過光を減衰させる機能と共に反射防止の効果を持たせた吸収型多層膜NDフィルターも知られている。
ところで、小型で薄型のデジタルカメラに用いられる上記吸収型多層膜NDフィルターにおいては、組込みスペースが狭いことから基板自体を薄くする必要があり、樹脂フィルムが最適な基板とされている。そして、この種の吸収型多層膜NDフィルターとして、特許文献1にはSiO等の酸化物誘電体膜層とNi等の金属吸収膜層から成る吸収型多層膜NDフィルターが開示されている。
他方、動画を撮影するビデオカメラにおいては入射光量が逐次変化する。このため、ビデオカメラに用いられるNDフィルターには、入射光量に応じて透過光量を可変にできる機能が求められている。そして、このような要望に対応するには、光軸中心から半径方向に亘って徐々にその透過率が低くなるグラデーション濃度分布を有するNDフィルターが必要となり、グラデーション濃度分布を有するNDフィルターを最適な透過光量になる濃度位置まで移動させて使用することにより解決することができる。すなわち、入射光量が高いときにはNDフィルターの濃度の濃い部分(透過率が低い部分)を光軸上に移動させて使用し、入射光量が低いときにはNDフィルターの濃度の薄い部分(透過率が高い部分)を光軸上に移動させて使用することにより解決することができる。そして、ビデオカメラに入射する光量は常に変化しているため、グラデーション濃度分布を有するNDフィルターはその半径方向に亘って常に移動していることになる。
このようなグラデーション濃度分布を有するNDフィルターを製造するには概略二つの方法が知られている。例えば、特許文献2に記載されているように吸収膜成膜時にマスク等の遮蔽手段を用いて膜厚分布を発生させる方法、および、特許文献3に記載されているように吸収膜成膜中の酸素分圧を制御してその消衰係数に分布を発生させる方法である。そして、これ等方法においては、吸収膜の成膜時に、膜厚の分布や消衰係数の分布をつけて吸収膜にグラデーション濃度分布を施すものであった。
しかし、吸収膜の成膜時にマスク等の遮蔽手段を用いる方法は、成膜と同時に膜厚分布を発生させる方法のため複雑なマスクや動作機構が必要となり、かつ、マスク等遮蔽手段の存在により良質な吸収膜が得られ難い問題が存在した。他方、成膜中の酸素分圧を制御して吸収膜の消衰係数に分布を発生させる方法では、フィルム基板から発生するガスの影響を受け易いことから再現性の維持が難しく、かつ、排気ポンプの能力が経時的に低下し易い問題を有していた。
特開2006−178395号公報 特開2005−345747号公報 特開2004−212462号公報
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、再現性よく安定して製造することが可能なグラデーション分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを提供し、かつ、グラデーション分布を有する吸収型多層膜NDフィルターの製造装置とこの装置を用いた吸収型多層膜NDフィルターの製造方法を提供することにある。
そこで、本発明者が鋭意研究を行った結果、金属吸収膜層のスパッタリング成膜中において、酸素を含むイオンビーム(酸化用イオンビーム)を部分的に照射しながら金属吸収膜層の成膜を行った場合、酸化用イオンビームが照射された金属吸収膜層の領域において、照射された酸化用イオンビームの周辺部から中心部に向かって金属吸収膜層における酸化の程度に連続的な差異が生じ、照射された酸化用イオンビームの周辺部から中心部に向かって金属吸収膜層の消衰係数が連続的に減少して金属吸収膜層の透過率に分布が存在することが確認された。更に、フィルム基板の少なくとも片面にスパッタリングによる酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビームの上記部分照射を伴ったスパッタリングによる金属吸収膜層の成膜とを順次繰り返しながら酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層とが交互に積層された吸収型多層膜を形成し、金属吸収膜層の酸化用イオンビームが照射された領域と酸化用イオンビームが照射されない領域との境界部を打ち抜くことにより、グラデーション分布を有する吸収型多層膜NDフィルターが再現性よく安定して製造されることを発見するに至った。本発明はこのような技術的発見により完成されている。
すなわち、請求項1に係る発明は、
フィルム基板の少なくとも片面に酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層が交互に積層されて成る吸収型多層膜を具備し、かつ、この吸収型多層膜がグラデーション濃度分布を有している吸収型多層膜NDフィルターの製造装置を前提とし、
真空ポンプを備えたスパッタリング室と、
スパッタリング室に隣接して設けられ、かつ、複数のシート状フィルム基板が収容されると共に、上記スパッタリング室を大気中に開放することなくスパッタリング室へのシート状フィルム基板の出し入れを可能にする単一若しくは一対のロードロック室と、
上記シート状フィルム基板を保持してロードロック室からスパッタリング室へ搬入させると共に、スパッタリング室内において搬入したシート状フィルム基板の搬送方向を反転可能に搬送し、かつ、スパッタリング室内において成膜処理されたシート状フィルム基板を同一若しくは他のロードロック室へ搬出させる複数のホルダーとを備え
上記スパッタリング室内には、酸化物誘電体膜層を成膜するマグネトロンスパッタリング手段としてのカソードとターゲット若しくはイオンビームスパッタリング手段としてのスパッタリング用イオンビーム発生装置とターゲット、および、金属吸収膜層を成膜するイオンビームスパッタリング手段としてのスパッタリング用イオンビーム発生装置とターゲット並びに酸化用イオンビーム発生装置が、それぞれシート状フィルム基板の搬送方向に沿って設けられており、
スパッタリング室内を搬送されるシート状フィルム基板に対して、上記マグネトロンスパッタリング若しくはイオンビームスパッタリングによる酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビーム発生装置からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングによる金属吸収膜層の成膜を順次行なうと共に、シート状フィルム基板の搬送方向を反転させながら上記酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層の成膜工程を繰り返して、酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層が交互に積層されかつ部分照射された酸化用イオンビームの周辺部から中心部に向かって上記金属吸収膜層の消衰係数が連続的に減少している吸収型多層膜を形成することを特徴とし、
請求項2に係る発明は、
フィルム基板の少なくとも片面に酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層が交互に積層されて成る吸収型多層膜を具備し、かつ、この吸収型多層膜がグラデーション濃度分布を有している吸収型多層膜NDフィルターの製造装置を前提とし、
真空ポンプを備えたスパッタリング室と、
スパッタリング室内に設けられ帯状フィルム基板の巻取りと巻出しをする第一ロール並びに第二ロールと、第一ロールと第二ロール間の搬送路中に設けられ帯状フィルム基板が巻き付けられるキャンロールと、キャンロールの外周面に沿ってそれぞれ設けられ酸化物誘電体膜層を成膜するマグネトロンスパッタリング手段としてのカソードとターゲット若しくはイオンビームスパッタリング手段としてのスパッタリング用イオンビーム発生装置とターゲット、および、金属吸収膜層を成膜するイオンビームスパッタリング手段としてのスパッタリング用イオンビーム発生装置とターゲット並びに酸化用イオンビーム発生装置を備え、
第一ロールまたは第二ロールから巻出されてキャンロール外周面に沿って搬送される帯状フィルム基板に対しマグネトロンスパッタリング若しくはイオンビームスパッタリングによる酸化物誘電体膜層の成膜を行いながら第二ロールまたは第一ロールにより必要量の帯状フィルム基板を巻き取った後、第一ロール、第二ロール並びにキャンロールの各回転方向を反転させかつキャンロール外周面に沿って搬送される帯状フィルム基板に対し酸化用イオンビーム発生装置からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングによる金属吸収膜層の成膜を行いながら第一ロールまたは第二ロールにより巻取り、以下、これ等一連の工程を繰り返して酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層が交互に積層されかつ部分照射された酸化用イオンビームの周辺部から中心部に向かって上記金属吸収膜層の消衰係数が連続的に減少している吸収型多層膜を形成することを特徴とし、
また、請求項3に係る発明は、
請求項1または2に記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造装置を前提とし、
搬送されるフィルム基板の幅方向に沿って複数の酸化用イオンビーム発生装置が並んで設けられていることを特徴とする。
次に、請求項4に係る発明は、
請求項1に記載の製造装置を用いてグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを製造する方法を前提とし、
ロードロック室内に収容されたシート状フィルム基板をホルダーにて保持させる第一工程と、
真空排気されたスパッタリング室内にホルダーにて保持されたシート状フィルム基板を搬入させる第二工程と、
スパッタリング室内を搬送される上記シート状フィルム基板に対して、マグネトロンスパッタリング若しくはイオンビームスパッタリングによる酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビーム発生装置からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングによる金属吸収膜層の成膜を順次行う第三工程と、
シート状フィルム基板の搬送方向を反転させながら酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビームの部分照射を伴った金属吸収膜層の成膜を単位とする成膜処理を必要回繰り返してシート状フィルム基板の表面に吸収型多層膜を形成する第四工程と、
表面に吸収型多層膜が形成されたシート状フィルム基板を同一若しくは他のロードロック室へ搬出させ、ロードロック室内においてシート状フィルム基板の表裏を反転させた後、このシート状フィルム基板をホルダーにて保持させてスパッタリング室内に搬入させる第五工程と、
スパッタリング室内において上記第三工程と第四工程を繰り返してシート状フィルム基板の裏面にも吸収型多層膜を形成する第六工程と、
裏面にも吸収型多層膜が形成されたシート状フィルム基板を同一若しくは他のロードロック室へ搬出させ、かつ、表裏面に吸収型多層膜が形成されたシート状フィルム基板をプレス打ち抜き加工してグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを得る第七工程、
を具備することを特徴とし、
請求項5に係る発明は、
請求項2に記載の製造装置を用いてグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを製造する方法を前提とし、
スパッタリング室内の第一ロールまたは第二ロールに帯状フィルム基板をセットする第一工程と、
スパッタリング室を真空排気した後、第一ロールまたは第二ロールにセットされた帯状フィルム基板を巻出しながらキャンロール外周面に沿って搬送させると共に、搬送される帯状フィルム基板に対しマグネトロンスパッタリング若しくはイオンビームスパッタリングによる酸化物誘電体膜層の成膜を行いながら第二ロールまたは第一ロールにより巻取る第二工程と、
第二ロールまたは第一ロールへの帯状フィルム基板の巻取りが終了した後、第一ロール、第二ロール並びにキャンロールの各回転方向を反転させかつキャンロール外周面に沿って搬送される帯状フィルム基板に対し、酸化用イオンビーム発生装置からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングによる金属吸収膜層の成膜を行いながら第一ロールまたは第二ロールにより巻取る第三工程と、
上記酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビームの部分照射を伴った上記金属吸収膜層の成膜を単位とする成膜処理を必要回繰り返して帯状フィルム基板の表面に吸収型多層膜を形成する第四工程と、
表面に吸収型多層膜が形成された帯状フィルム基板を第一ロールまたは第二ロールから取り外しかつ帯状フィルム基板の表裏を反転させながら第一ロールまたは第二ロールに巻付ける第五工程と、
スパッタリング室を真空排気した後、表裏を反転させて第一ロールまたは第二ロールに巻き付けられた帯状フィルム基板に対し上記第二工程〜第四工程を繰り返して帯状フィルム基板の裏面にも吸収型多層膜を形成する第六工程と、
表裏面に吸収型多層膜が形成された帯状フィルム基板をプレス打ち抜き加工してグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを得る第七工程、
を具備することを特徴とする。
また、請求項6に係る発明は、
請求項4または5に記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造方法を前提とし、
シート状フィルム基板または帯状フィルム基板の表裏面にそれぞれ成膜される金属吸収膜層への酸化用イオンビームの照射位置が、シート状フィルム基板または帯状フィルム基板の表面と裏面とで幅方向にずらされていることを特徴とし、
請求項7に係る発明は、
請求項4、5または6に記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造方法を前提とし、
上記金属吸収膜層が、酸化により消衰係数が低下する材料で構成されていることを特徴とし、
請求項8に係る発明は、
請求項7に記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造方法を前提とし、
酸化により消衰係数が低下する材料が、Ni若しくはNi合金であることを特徴とし、
また、請求項9に係る発明は、
吸収型多層膜NDフィルターを前提とし、
請求項6に記載の製造方法により製造され、シート状フィルム基板または帯状フィルム基板と上記基板の表裏面にそれぞれ形成された吸収型多層膜を具備すると共に、各吸収型多層膜における金属吸収膜層への酸化用イオンビームの照射位置が上記基板の表面と裏面とで幅方向にずらされて、上記基板表面に形成された吸収型多層膜と上記基板裏面に形成された吸収型多層膜がそれぞれ異なるグラデーション濃度分布を有していることを特徴とするものである。
請求項1に記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造装置によれば、
スパッタリング室内を搬送されるシート状フィルム基板に対して、上記マグネトロンスパッタリング若しくはイオンビームスパッタリングによる酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビーム発生装置からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングによる金属吸収膜層の成膜を順次行なうと共に、シート状フィルム基板の搬送方向を反転させながら上記酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層の成膜工程を繰り返して、酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層が交互に積層されかつ部分照射された酸化用イオンビームの周辺部から中心部に向かって上記金属吸収膜層の消衰係数が連続的に減少している吸収型多層膜を形成し、
また、請求項2に記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造装置においても、
第一ロールまたは第二ロールから巻出されてキャンロール外周面に沿って搬送される帯状フィルム基板に対しマグネトロンスパッタリング若しくはイオンビームスパッタリングによる酸化物誘電体膜層の成膜を行いながら第二ロールまたは第一ロールにより必要量の帯状フィルム基板を巻き取った後、第一ロール、第二ロール並びにキャンロールの各回転方向を反転させかつキャンロール外周面に沿って搬送される帯状フィルム基板に対し酸化用イオンビーム発生装置からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングによる金属吸収膜層の成膜を行いながら第一ロールまたは第二ロールにより巻取り、以下、これ等一連の工程を繰り返して酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層が交互に積層されかつ部分照射された酸化用イオンビームの周辺部から中心部に向かって上記金属吸収膜層の消衰係数が連続的に減少している吸収型多層膜を形成しているため、グラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを再現性よく製造することが可能となる。
次に、請求項4に記載の発明に吸収型多層膜NDフィルターの製造方法によれば、
ロードロック室内に収容されたシート状フィルム基板をホルダーにて保持させる第一工程と、
真空排気されたスパッタリング室内にホルダーにて保持されたシート状フィルム基板を搬入させる第二工程と、
スパッタリング室内を搬送される上記シート状フィルム基板に対して、マグネトロンスパッタリング若しくはイオンビームスパッタリングによる酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビーム発生装置からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングによる金属吸収膜層の成膜を順次行う第三工程と、
シート状フィルム基板の搬送方向を反転させながら酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビームの部分照射を伴った金属吸収膜層の成膜を単位とする成膜処理を必要回繰り返してシート状フィルム基板の表面に吸収型多層膜を形成する第四工程と、
表面に吸収型多層膜が形成されたシート状フィルム基板を同一若しくは他のロードロック室へ搬出させ、ロードロック室内においてシート状フィルム基板の表裏を反転させた後、このシート状フィルム基板をホルダーにて保持させてスパッタリング室内に搬入させる第五工程と、
スパッタリング室内において上記第三工程と第四工程を繰り返してシート状フィルム基板の裏面にも吸収型多層膜を形成する第六工程と、
裏面にも吸収型多層膜が形成されたシート状フィルム基板を同一若しくは他のロードロック室へ搬出させ、かつ、表裏面に吸収型多層膜が形成されたシート状フィルム基板をプレス打ち抜き加工してグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを得る第七工程、
を具備し、
また、請求項5に記載の発明に吸収型多層膜NDフィルターの製造方法においても、
スパッタリング室内の第一ロールまたは第二ロールに帯状フィルム基板をセットする第一工程と、
スパッタリング室を真空排気した後、第一ロールまたは第二ロールにセットされた帯状フィルム基板を巻出しながらキャンロール外周面に沿って搬送させると共に、搬送される帯状フィルム基板に対しマグネトロンスパッタリング若しくはイオンビームスパッタリングによる酸化物誘電体膜層の成膜を行いながら第二ロールまたは第一ロールにより巻取る第二工程と、
第二ロールまたは第一ロールへの帯状フィルム基板の巻取りが終了した後、第一ロール、第二ロール並びにキャンロールの各回転方向を反転させかつキャンロール外周面に沿って搬送される帯状フィルム基板に対し、酸化用イオンビーム発生装置からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングによる金属吸収膜層の成膜を行いながら第一ロールまたは第二ロールにより巻取る第三工程と、
上記酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビームの部分照射を伴った上記金属吸収膜層の成膜を単位とする成膜処理を必要回繰り返して帯状フィルム基板の表面に吸収型多層膜を形成する第四工程と、
表面に吸収型多層膜が形成された帯状フィルム基板を第一ロールまたは第二ロールから取り外しかつ帯状フィルム基板の表裏を反転させながら第一ロールまたは第二ロールに巻付ける第五工程と、
スパッタリング室を真空排気した後、表裏を反転させて第一ロールまたは第二ロールに巻き付けられた帯状フィルム基板に対し上記第二工程〜第四工程を繰り返して帯状フィルム基板の裏面にも吸収型多層膜を形成する第六工程と、
表裏面に吸収型多層膜が形成された帯状フィルム基板をプレス打ち抜き加工してグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを得る第七工程、
を具備しているため、グラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを再現性よく製造することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
(1)吸収型多層膜NDフィルターの膜構造
まず、波長400〜700nmにおける平均透過率が6.3%である吸収型多層膜NDフィルターの膜構造(表1参照)を設計した。設計された吸収型多層膜NDフィルターの分光透過率を図5に示す。尚、NDフィルターの分光透過特性は自記分光光度計(日本分光社製 V570)を用いて行った。
そして、グラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターは、以下に説明する本発明の製造装置を用いて平均透過率が6.3%の吸収型多層膜NDフィルターを基本として製造されている。
Figure 0005104620
(2)吸収型多層膜NDフィルターを製造する第一の製造装置
本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターを製造する第一の製造装置は、一般的にロードロック式、インターバック式、連続式等と呼ばれるもので、シート形状に切断された基板(シート状フィルム基板)面にマグネトロンスパッタリング若しくはイオンビームスパッタリングによる成膜を施す装置であり、例えば図1に示すような構造を有している。
すなわち、本発明に係る第一の製造装置は、図示外の真空ポンプを備えたスパッタリング室15と、このスパッタリング室15に隣接して設けられかつ内部に複数のシート状フィルム基板が収容されると共にスパッタリング室15を大気中に開放させることなくスパッタリング室15へのシート状フィルム基板の出し入れを可能にする単一のロードロック室14と、上記シート状フィルム基板を保持してロードロック室14からスパッタリング室15へ搬入させると共にスパッタリング室15内において搬入したシート状フィルム基板16の搬送方向を反転可能に搬送しかつスパッタリング室15内において成膜処理されたシート状フィルム基板16を同一の上記ロードロック室14へ搬出させる複数のホルダー(図示せず)とを備えている。
尚、図1に示した製造装置においては単一のロードロック室14が設けられているが、スパッタリング室15を中央にしてその両側にロードロック室をそれぞれ設ける構造にしてもよい。
また、上記スパッタリング室15内には、金属吸収膜層(例えばNi合金層)を成膜するイオンビームスパッタリング手段としてのスパッタリング用イオンビーム発生装置17とターゲット18並びに酸化用イオンビーム発生装置19がシート状フィルム基板16の搬送方向に沿って設けられ、また、酸化物誘電体膜層(例えばSiO膜層)を成膜するマグネトロンスパッタリング手段としてのターゲット(図示せず)付きマグネトロンスパッタリングカソード(ここではデュアルマグネトロンスパッタリングカソードが図示されている)20がシート状フィルム基板16の搬送方向に沿って設けられている。尚、図1中の破線で示す矢印により、イオンビーム、ターゲット粒子の移動方向をそれぞれ模式的に示している。
そして、図1に示すスパッタリング室15内を図面の右から左方向へ向かって搬送されるシート状フィルム基板16に対し、マグネトロンスパッタリング手段としてのマグネトロンスパッタリングカソード20による酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビーム発生装置19からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリング手段としてのスパッタリング用イオンビーム発生装置17とターゲット18による金属吸収膜層の成膜を順次行い、かつ、シート状フィルム基板16の搬送方向を反転させて成膜初期の位置に戻した後、再度、シート状フィルム基板16の搬送方向を反転させながらマグネトロンスパッタリングカソード20による酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビーム発生装置19からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったスパッタリング用イオンビーム発生装置17とターゲット18による金属吸収膜層の成膜工程を繰り返して、酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層が交互に積層された吸収型多層膜をシート状フィルム基板16の片面(表面)に形成することができる。
尚、表1に示すようにシート状フィルム基板16の表裏両面に吸収型多層膜を形成するには、片面(表面)に吸収型多層膜が形成されたシート状フィルム基板16を同一のロードロック室14若しくは他のロードロック室(図示せず)へ搬出させ、ロードロック室内においてシート状フィルム基板の表裏を反転させた後、このシート状フィルム基板16をホルダーにて保持させてスパッタリング室15内に再度搬入させる。そして、シート状フィルム基板の裏面に対して、上述したマグネトロンスパッタリングカソード20による酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビーム発生装置19からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったスパッタリング用イオンビーム発生装置17とターゲット18による金属吸収膜層の成膜工程を繰り返して酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層が交互に積層された吸収型多層膜を形成すればよい。
(3)吸収型多層膜NDフィルターを製造する第二の製造装置
本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターを製造する第二の製造装置は、一般的にロールコータと呼ばれるもので、ロール状の基板(帯状フィルム基板)面にスパッタリングによる成膜を施す装置であり、例えば、図2に示すような構造を有している。
すなわち、本発明に係る第二の製造装置は、図示外の真空ポンプを備えたスパッタリング室12と、このスパッタリング室12内に設けられ帯状フィルム基板13の巻取りと巻出しをする第一ロール1並びに第二ロール2と、第一ロール1と第二ロール2間の搬送路中に設けられ帯状フィルム基板13が巻き付けられる水冷キャンロール3と、上記第一ロール1と水冷キャンロール3との間並びに第二ロール2と水冷キャンロール3との間に設けられた四つのガイドロール8、9、10、11とを備えており、かつ、第一ロール1と第二ロール2はパウダークラッチにより張力バランスが保たれている。また、水冷キャンロール3の回転により帯状フィルム基板13の搬送方向が決められるようになっており、本明細書においては、帯状フィルム基板13が第一ロール1から第二ロール2側に巻き取られる水冷キャンロール3の回転方向を正転方向、第二ロール2から第一ロール1側に巻き取られる水冷キャンロール3の回転方向を逆転方向と定義している。
また、上記スパッタリング室12内には、金属吸収膜層(例えばNi合金層)を成膜するイオンビームスパッタリング手段としてのスパッタリング用イオンビーム発生装置4とターゲット5並びに酸化用イオンビーム発生装置6が水冷キャンロール3の外周面に沿って設けられ、また、酸化物誘電体膜層(例えばSiO膜層)を成膜するマグネトロンスパッタリング手段としてのターゲット(図示せず)付きマグネトロンスパッタリングカソード(ここでもデュアルマグネトロンスパッタリングカソードが図示されている)7が水冷キャンロール3の外周面に沿って設けられている。尚、図2中の破線で示す矢印により、イオンビーム、ターゲット粒子の移動方向をそれぞれ模式的に示している。
そして、帯状フィルム基板13が第一ロール1から第二ロール2側に巻き取られる正転搬送時に、水冷キャンロール3外周面に沿って搬送される帯状フィルム基板13に対し、マグネトロンスパッタリング手段としてのマグネトロンスパッタリングカソード7による酸化物誘電体膜層(例えばSiO膜層)の成膜を行いながら第二ロール2により必要量(例えば、帯状フィルム基板13の全量)の帯状フィルム基板13を巻き取った後、水冷キャンロール3の回転方向を反転させて帯状フィルム基板13の逆転搬送時に、水冷キャンロール3外周面に沿って搬送される帯状フィルム基板13に対し、酸化用イオンビーム発生装置6からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリング手段としてのスパッタリング用イオンビーム発生装置4とターゲット5による金属吸収膜層(例えばNi合金層)の成膜を行いながら第一ロール1により巻取り、以下、これ等一連の工程を繰り返して酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層が交互に積層された吸収型多層膜を帯状フィルム基板13の片面(表面)に形成することができる。
尚、表1に示すように帯状フィルム基板13の表裏両面に吸収型多層膜を形成するには、片面(表面)に吸収型多層膜が形成された帯状フィルム基板13を第二ロール2から取り外し、かつ、帯状フィルム基板13の表裏を反転させながら第一ロール1に巻き付けた後、再度、帯状フィルム基板13の裏面に対して、上述したマグネトロンスパッタリングカソード7による酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビーム発生装置6からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったスパッタリング用イオンビーム発生装置4とターゲット5による金属吸収膜層の成膜工程を繰り返して酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層が交互に積層された吸収型多層膜を形成すればよい。
(4)グラデーション濃度分布
上述した第一の製造装置並びに第二の製造装置のいずれの装置においても、酸化用イオンビームの部分照射を伴った金属吸収膜層(例えばNi合金層)の成膜中におけるフィルム基板13、16の搬送に伴い、酸化用イオンビームが照射されたライン部分23のみが図3に示すように透明になる。
上記金属吸収膜層の酸化用イオンビームが照射されたライン部分23とその周囲を拡大してみると、図4に示すように透明になったライン部分のエッジ領域は矢印方向に濃度が濃くなるグラデーション濃度分布を有している。これは、酸化用イオンビームの周辺部から中心部に向かって金属吸収膜層における酸化の程度に連続的な差異が生じ、照射された酸化用イオンビームの周辺部から中心部に向かって金属吸収膜層の消衰係数が連続的に減少したことによる。そして、図4において白丸線24で示す円形状の領域はグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターとして利用することができる。
すなわち、第一の製造装置並びに第二の製造装置を用いて表裏両面に吸収型多層膜が形成されたフィルム基板13、16について、上記白丸線24で示す領域をプレス打ち抜き加工することによりグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを得ることができる。
そして、得られた吸収型多層膜NDフィルターについて、照射した酸化用イオンビームの中心位置からの距離に対応した波長550nmにおける透過率測定を行ったところ、図6のグラフ図に示すような結果が得られた。このときの酸化用イオンビームの半径は20mmであるが、酸化用イオンビームの中心位置から20mm〜30mm離れた領域間において透過率が連続的に低下していると共に、酸化用イオンビームが照射されずに酸化されていない部分に移っていることが確認される。
ここで、照射する酸化用イオンビームにおけるビームの広がり形状やフィルム基板と酸化用イオンビーム間の距離を適宜調整することによりグラデーション濃度分布を変えることも可能であるが、酸化用イオンビームのパワー密度を増加させてしまうとフィルム基板が溶けてしまう場合がある。また、搬送されるフィルム基板の幅方向に沿って複数の酸化用イオンビーム発生装置を並べて配置してもよい。フィルム基板の幅方向に沿って酸化用イオンビーム発生装置を複数配置することにより、図7に示すようにグラデーション濃度分布を有する境界部分を一度に多く製造することができる。また、酸化用イオンビームには、DC(直流)イオンビームと、RF(交流)イオンビームがあり、加速電極の形状によりイオンビームを集光若しくは発散させることができ、本発明では平行若しくは集光する加速電極を用いることが好ましい。
次に、第一の製造装置並びに第二の製造装置を用いてフィルム基板の表裏両面に吸収型多層膜を形成する場合、フィルム基板の表裏両面にそれぞれ成膜される金属吸収膜層への酸化用イオンビームの照射位置を一致させることにより、図8に示すようにグラデーション濃度分布が1段階である吸収型多層膜NDフィルターを製造することができ、また、フィルム基板の表裏両面にそれぞれ成膜される金属吸収膜層への酸化用イオンビームの照射位置をフィルム基板の幅方向にずらすことにより、図9に示すように2段階のグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを製造することができる。
(5)吸収型多層膜NDフィルターの製造方法
次に、本発明の製造装置を用いた吸収型多層膜NDフィルターの製造方法について説明する。尚、第二の製造装置(図2参照)を例に挙げて説明するが、図1に示す第一の製造装置を用いても当然のことながら吸収型多層膜NDフィルターを製造することができる。
a)ターゲット
図2に示す第二の製造装置において、金属吸収膜層を成膜するためのターゲットにはNiあるいはNi合金ターゲットが例示され、酸化物誘電体膜層であるSiOを成膜するためのターゲットにはSiターゲットが例示される。
また、酸化物誘電体膜層として上記SiOに代えAlも使用することができ、光学特性の波長依存性を改善するため、TiO、Nb、Ta、HfOやZrOを添加することも可能である。
また、上記金属吸収膜層には、酸化により消衰係数が低下する材料であれば利用することができ、上述したNiあるいはNi合金ターゲット以外にも、Ti、Ta、W、Crから選ばれる1種あるいはこれらの合金ターゲットを使用することができる。
上記金属吸収膜層を成膜するためのターゲット、例えばNi合金ターゲットは、アルゴンガスを導入するイオンビームスパッタリングにより成膜され、一方、酸化物誘電体膜層であるSiOを成膜するためのSiターゲットは、アルゴンガスを導入するデュアルマグネトロンスパッタリングにより成膜され、SiターゲットからSiOを成膜するためにインピーダンスモニターにより酸素導入量を制御して成膜される。
また、イオンビームスパッタリングによる上記金属吸収膜層の成膜には、酸化用イオンビーム発生装置6から酸素含む酸化用イオンビームを部分的に照射しながら金属吸収膜層の成膜を行う。イオンビーム発生装置には酸素を含むガス(例えば、アルゴン50%と酸素50%の混合ガス)を導入し、加速電圧を調節しながら照射する。尚、酸化用イオンビーム発生装置は、図2において符号6の位置に取付ければよい。
ところで、酸化用イオンビームを金属吸収膜層の成膜後ではなく金属吸収膜層の成膜中に照射している理由は、金属吸収膜層の成膜中に酸化用イオンビームを照射すると金属吸収膜層の酸化が進行しやすいからである。すなわち、成膜後の金属吸収膜層に対し酸化用イオンビームを照射すると金属吸収膜層表面に酸化膜が形成されてしまい、これ以上酸化を進行させるためにはより強力な酸化用イオンビームの照射が必要となり、フィルム基板に熱的ダメージを与えてしまう場合があるからである。
また、金属吸収膜層の成膜にイオンビームスパッタリングが適用されている理由は、アルゴンガスの導入量が少ない状態でマグネトロンスパッタリングと同等な成膜速度を得ることができるからである。すなわち、金属吸収膜層の成膜にマグネトロンスパッタリングを採用した場合、マグネトロンスパッタリング法ではアルゴンガスの導入量を多くする必要がある関係上、導入されたアルゴンガスにより酸化用イオンビームの直進性が乱され易くなるからである。他方、イオンビームスパッタリングを採用した場合、イオンビームスパッタリング法ではイオン発生のためのアルゴンガスの導入量で充分のため、酸化用イオンビームの直進性が乱される弊害が少ないからである。
b)フィルム基板
本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターにおいて、フィルム基板の材質については特に限定されることはない。この具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)、ノルボルネンの樹脂材料から選択される樹脂フィルム単体、あるいは、これ等材料から選択された樹脂フィルム単体とこの単体片面または両面を覆うアクリル系有機膜との複合体が挙げられる。特に、ノルボルネンの樹脂材料については、代表的なものとして日本ゼオン社のゼオノア(商品名)やJSR社のアートン(商品名)等が挙げられる。
c)吸収型多層膜の成膜
金属吸収膜層を成膜するためのターゲットとしてNi合金ターゲットを用い、酸化物誘電体膜層であるSiOを成膜するためのターゲットとしてSiターゲットを用いた場合における吸収型多層膜の成膜手順を例に挙げて説明する。
1)図2に示す第二の製造装置のスパッタリング室12を1×10−4Pa程度まで排気する。
2)フィルム搬送速度を調整し、例えば1〜5m/min程度で第一ロール1から第二ロール2へ向けて帯状フィルム基板13を正転方向に搬送する。
3)Siターゲットが取付けられたマグネトロンスパッタリングカソード7にアルゴンガスを導入し、マグネトロンスパッタリングを行ってSiOを成膜する。また、インピーダンスモニターにより酸素導入量を制御する。
4)フィルム速度を調節し逆転方向に搬送する。
5)Ni合金ターゲット5が取付けられたスパッタリング用イオンビーム発生装置4にアルゴンガスを導入し、かつ、酸化用イオンビーム発生装置6からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングを行って、部分酸化されたNi合金膜層を成膜する。
6)フィルム速度を調整し正転方向に搬送する。
7)Siターゲットが取付けられたマグネトロンスパッタリングカソード7にアルゴンガスを導入し、マグネトロンスパッタリングを行ってSiOを成膜する。また、インピーダンスモニターにより酸素導入量を制御する。
8)フィルム速度を調整し逆転方向に搬送する。
9)Ni合金ターゲット5が取付けられたスパッタリング用イオンビーム発生装置4にアルゴンガスを導入し、かつ、酸化用イオンビーム発生装置6からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングを行って、部分酸化されたNi合金膜層を成膜する。
10)フィルム速度を調整し正転方向に搬送する。
11)Siターゲットが取付けられたマグネトロンスパッタリングカソード7にアルゴンガスを導入し、マグネトロンスパッタリングを行ってSiOを成膜する。また、インピーダンスモニターにより酸素導入量を制御する。
12)片面(表面)の成膜が完了した帯状フィルム基板13を取り出すと共に、表裏を反転させて第一ロール1にセットし、上記1)〜11)の工程を繰り返して帯状フィルム基板13の裏面にもSiOとNi合金膜層とで構成される吸収型多層膜を形成する。
13)表裏両面に吸収型多層膜が形成された帯状フィルム基板13をスパッタリング室12から取り出す。
表裏両面に吸収型多層膜が形成された帯状フィルム基板13のイオンビーム中心位置からの距離に対応した波長550nmの透過率測定を行ったところ、図6のグラフ図に示すような結果が得られた。図6のグラフ図から、酸化用イオンビームの照射によりNi合金膜層の酸化が進行した部分と酸化されていない部分の境界部分をみると、透過率は約90%から6%程度まで直線的に変化している領域があることが確認される。従って、帯状フィルム基板13のこの部分をプレス打ち抜き加工することにより、グラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを得ることができる。
ここで、照射するイオンビームにおけるビームの広がり形状や帯状フィルム基板13とイオンビーム間の距離を適宜調整することによりグラデーション濃度分布を変えることも可能である。但し、酸化用イオンビームのパワー密度を増加させてしまうとフィルム基板が溶けてしまう場合があるので適宜調整することが必要である。また、搬送される帯状フィルム基板の幅方向に沿って複数の酸化用イオンビーム発生装置を並べて配置してもよい。フィルム基板の幅方向に沿って酸化用イオンビーム発生装置を複数配置することにより、図7に示すようにグラデーション濃度分布を有する境界部分を一度に多く製造することができる。
また、帯状フィルム基板の表裏両面に吸収型多層膜を形成する場合、フィルム基板の表裏両面にそれぞれ成膜される金属吸収膜層へのイオンビームの照射位置を一致させることにより、図8に示すようにグラデーション濃度分布が1段階である吸収型多層膜NDフィルターを製造することができ、また、フィルム基板の表裏両面にそれぞれ成膜される金属吸収膜層へのイオンビームの照射位置をフィルム基板の幅方向にずらすことにより、図9に示すように2段階のグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを製造することができる。
次に、本発明の実施例について具体的に説明する。
まず、波長400〜700nmにおける平均透過率が6.3%である吸収型多層膜NDフィルターの膜構造(表1参照)を設計した。設計された吸収型多層膜NDフィルターの分光透過率を図5に示す。尚、NDフィルターの分光透過特性は自記分光光度計(日本分光社製 V570)を用いて行った。
吸収型多層膜の成膜には図2に示した第二の製造装置であるスパッタリングロールコータ装置を用い、金属吸収膜層を成膜するためのターゲットとしてNi合金ターゲット[住友金属鉱山(株)社製]を用い、酸化物誘電体膜層であるSiOを成膜するためのターゲットとしてSiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]を用いた。また、上記Ni合金ターゲットはアルゴンガスを導入するイオンビームパッタリングにより成膜され、一方、Siターゲットはアルゴンガスを導入するデュアルマグネトロンスパッタリングにより成膜され、SiからSiOを成膜するためにインピーダンスモニター(ボンアルデンヌ社製 プラズマエミッションモニター)により酸素導入量を制御した。
また、酸化用イオンビームには、酸素ガスを導入し、加速電圧500eVで照射した。尚、酸化用イオンビーム発生装置は、図2において符号6の位置に取付けた。
また、帯状フィルム基板13には、厚さ100μmの両面易接着層付PETフィルム(東洋紡社製)を用いた。
そして、以下の手順により吸収型多層膜の成膜を行った。
1)図2に示す第二の製造装置のスパッタリング室11を1×10−4Pa程度まで排気した。
2)フィルム搬送速度を1.50m/minに調整して、第一ロール1から第二ロール2へ向け上記帯状フィルム基板13を正転方向に搬送した。
3)Siターゲットが取付けられたマグネトロンスパッタリングカソード7にアルゴンガスを200sccm導入し、スパッタリング出力10kWにてマグネトロンスパッタリングによるSiOの成膜を行った。また、インピーダンスモニターにより酸素導入量を制御した。
4)フィルム速度を0.94m/minに調節し逆転方向に搬送した。
5)Ni合金ターゲット5が取付けられたスパッタリング用イオンビーム発生装置4にアルゴンガスを30sccm導入し、加速電圧2000eVにてイオンビームスパッタリングによるNi合金膜の成膜を行いながら、酸化用イオンビーム発生装置6に酸素ガスを30sccm導入し、加速電圧500eVにて酸化用イオンビームの部分照射を行って部分酸化されたNi合金膜層を成膜した。
6)フィルム搬送速度を0.43m/minに調整して帯状フィルム基板13を正転方向に搬送した。
7)Siターゲットが取付けられたマグネトロンスパッタリングカソード7にアルゴンガスを200sccm導入し、スパッタリング出力10kWにてマグネトロンスパッタリングによるSiOの成膜を行った。また、インピーダンスモニターにより酸素導入量を制御した。
8)フィルム速度を0.94m/minに調節し逆転方向に搬送した。
9)Ni合金ターゲット5が取付けられたスパッタリング用イオンビーム発生装置4にアルゴンガスを30sccm導入し、加速電圧2000eVにてイオンビームスパッタリングによるNi合金膜の成膜を行いながら、酸化用イオンビーム発生装置6に酸素ガスを30sccm導入し、加速電圧500eVにて酸化用イオンビームの部分照射を行って部分酸化されたNi合金膜層を成膜した。
10)フィルム搬送速度を0.46m/minに調整して帯状フィルム基板13を正転方向に搬送した。
11)Siターゲットが取付けられたマグネトロンスパッタリングカソード7にアルゴンガスを200sccm導入し、スパッタリング出力10kWにてマグネトロンスパッタリングによるSiOの成膜を行った。また、インピーダンスモニターにより酸素導入量を制御した。
12)片面(表面)の成膜が完了した帯状フィルム基板13を取り出すと共に、表裏を反転させて第一ロール1にセットし、上記1)〜11)の工程を繰り返して帯状フィルム基板13の裏面にも吸収型多層膜を形成した。
13)表裏両面に吸収型多層膜が形成された帯状フィルム基板13をスパッタリング室12から取り出した。
そして、表裏両面に吸収型多層膜が形成された帯状フィルム基板13の酸化用イオンビームの中心位置からの距離に対応した波長550nmの透過率測定を行ったところ、図6のグラフ図に示すような結果が得られた。図6のグラフ図から、酸化用イオンビームの照射によりNi合金膜層の酸化が進行した部分と酸化されていない部分の境界部分をみると、透過率は約90%から6%程度まで直線的に変化している領域があることが確認される。従って、帯状フィルム基板13のこの部分をプレス打ち抜き加工することにより、グラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを得ることができる。
ここで、照射する酸化用イオンビームにおけるビームの広がり形状や帯状フィルム基板と酸化用イオンビーム間の距離を適宜調整することによりグラデーション濃度分布を変えることも可能である。但し、酸化用イオンビームのパワー密度を増加させてしまうと、フィルム基板が溶けてしまう場合があるので適宜調整することが必要である。また、搬送される帯状フィルム基板の幅方向に沿って複数の酸化用イオンビーム発生装置を並べて配置してもよい。フィルム基板の幅方向に沿って酸化用イオンビーム発生装置を複数配置することにより、図7に示すようにグラデーション濃度分布を有する境界部分を一度に多く製造することができる。
また、帯状フィルム基板の表裏両面に吸収型多層膜を形成する場合、フィルム基板の表裏両面にそれぞれ成膜される金属吸収膜層への酸化用イオンビームの照射位置を一致させることにより、図8に示すようにグラデーション濃度分布が1段階である吸収型多層膜NDフィルターを製造することができ、また、フィルム基板の表裏両面にそれぞれ成膜される金属吸収膜層への酸化用イオンビームの照射位置をフィルム基板の幅方向にずらすことにより、図9に示すように2段階のグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを製造することができる。
グラデーション濃度分布を有する本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターはデジタルビデオカメラ等に利用される産業上の利用可能性を有している。
グラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターの製造に用いられる本発明に係る第一の製造装置の概略構成説明図。 グラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターの製造に用いられる本発明に係る第二の製造装置の概略構成説明図。 酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングにより成膜された金属吸収膜層表面を示す概略説明図。 図3に示された金属吸収膜層表面の酸化用イオンビームが照射されたライン部分とその周囲の一部を拡大させた部分拡大図。 本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの分光透過率を示すグラフ図。 酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングにより成膜された金属吸収膜層を含む吸収型多層膜における酸化用イオンビーム中心からの距離と透過率との関係を示すグラフ図。 フィルム基板の幅方向に沿って複数の酸化用イオンビーム発生装置が配置された場合における、各酸化用イオンビーム発生装置からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングにより成膜された金属吸収膜層表面を示す概略説明図。 フィルム基板の表裏両面に成膜された各金属吸収膜層へのイオンビームの照射位置が一致された場合に得られる吸収型多層膜における両面透過率の1段階グラデーション濃度分布を示す説明図。 フィルム基板の表裏両面に成膜された各金属吸収膜層へのイオンビームの照射位置がフィルム基板の幅方向にずらされた場合に得られる吸収型多層膜における両面透過率の2段階グラデーション濃度分布を示す説明図。
符号の説明
1 第一ロール
2 第二ロール
3 水冷キャンロール
4 スパッタリング用イオンビーム発生装置
5 ターゲット
6 酸化用イオンビーム発生装置
7 マグネトロンスパッタリングカソード
8 ガイドロール
9 ガイドロール
10 ガイドロール
11 ガイドロール
12 スパッタリング室
13 帯状フィルム基板
14 ロードロック室
15 スパッタリング室
16 シート状フィルム基板
17 スパッタリング用イオンビーム発生装置
18 ターゲット
19 酸化用イオンビーム発生装置
20 マグネトロンスパッタリングカソード
23 酸化用イオンビームが照射されたライン部分
24 白丸線

Claims (9)

  1. フィルム基板の少なくとも片面に酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層が交互に積層されて成る吸収型多層膜を具備し、かつ、この吸収型多層膜がグラデーション濃度分布を有している吸収型多層膜NDフィルターの製造装置において、
    真空ポンプを備えたスパッタリング室と、
    スパッタリング室に隣接して設けられ、かつ、複数のシート状フィルム基板が収容されると共に、上記スパッタリング室を大気中に開放することなくスパッタリング室へのシート状フィルム基板の出し入れを可能にする単一若しくは一対のロードロック室と、
    上記シート状フィルム基板を保持してロードロック室からスパッタリング室へ搬入させると共に、スパッタリング室内において搬入したシート状フィルム基板の搬送方向を反転可能に搬送し、かつ、スパッタリング室内において成膜処理されたシート状フィルム基板を同一若しくは他のロードロック室へ搬出させる複数のホルダーとを備え
    上記スパッタリング室内には、酸化物誘電体膜層を成膜するマグネトロンスパッタリング手段としてのカソードとターゲット若しくはイオンビームスパッタリング手段としてのスパッタリング用イオンビーム発生装置とターゲット、および、金属吸収膜層を成膜するイオンビームスパッタリング手段としてのスパッタリング用イオンビーム発生装置とターゲット並びに酸化用イオンビーム発生装置が、それぞれシート状フィルム基板の搬送方向に沿って設けられており、
    スパッタリング室内を搬送されるシート状フィルム基板に対して、上記マグネトロンスパッタリング若しくはイオンビームスパッタリングによる酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビーム発生装置からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングによる金属吸収膜層の成膜を順次行なうと共に、シート状フィルム基板の搬送方向を反転させながら上記酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層の成膜工程を繰り返して、酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層が交互に積層されかつ部分照射された酸化用イオンビームの周辺部から中心部に向かって上記金属吸収膜層の消衰係数が連続的に減少している吸収型多層膜を形成することを特徴とするグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターの製造装置。
  2. フィルム基板の少なくとも片面に酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層が交互に積層されて成る吸収型多層膜を具備し、かつ、この吸収型多層膜がグラデーション濃度分布を有している吸収型多層膜NDフィルターの製造装置において、
    真空ポンプを備えたスパッタリング室と、
    スパッタリング室内に設けられ帯状フィルム基板の巻取りと巻出しをする第一ロール並びに第二ロールと、第一ロールと第二ロール間の搬送路中に設けられ帯状フィルム基板が巻き付けられるキャンロールと、キャンロールの外周面に沿ってそれぞれ設けられ酸化物誘電体膜層を成膜するマグネトロンスパッタリング手段としてのカソードとターゲット若しくはイオンビームスパッタリング手段としてのスパッタリング用イオンビーム発生装置とターゲット、および、金属吸収膜層を成膜するイオンビームスパッタリング手段としてのスパッタリング用イオンビーム発生装置とターゲット並びに酸化用イオンビーム発生装置を備え、
    第一ロールまたは第二ロールから巻出されてキャンロール外周面に沿って搬送される帯状フィルム基板に対しマグネトロンスパッタリング若しくはイオンビームスパッタリングによる酸化物誘電体膜層の成膜を行いながら第二ロールまたは第一ロールにより必要量の帯状フィルム基板を巻き取った後、第一ロール、第二ロール並びにキャンロールの各回転方向を反転させかつキャンロール外周面に沿って搬送される帯状フィルム基板に対し酸化用イオンビーム発生装置からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングによる金属吸収膜層の成膜を行いながら第一ロールまたは第二ロールにより巻取り、以下、これ等一連の工程を繰り返して酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層が交互に積層されかつ部分照射された酸化用イオンビームの周辺部から中心部に向かって上記金属吸収膜層の消衰係数が連続的に減少している吸収型多層膜を形成することを特徴とするグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターの製造装置。
  3. 搬送されるフィルム基板の幅方向に沿って複数の酸化用イオンビーム発生装置が並んで設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の吸収型多層膜NDフィルターの製造装置。
  4. 請求項1に記載の製造装置を用いてグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを製造する方法において、
    ロードロック室内に収容されたシート状フィルム基板をホルダーにて保持させる第一工程と、
    真空排気されたスパッタリング室内にホルダーにて保持されたシート状フィルム基板を搬入させる第二工程と、
    スパッタリング室内を搬送される上記シート状フィルム基板に対して、マグネトロンスパッタリング若しくはイオンビームスパッタリングによる酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビーム発生装置からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングによる金属吸収膜層の成膜を順次行う第三工程と、
    シート状フィルム基板の搬送方向を反転させながら酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビームの部分照射を伴った金属吸収膜層の成膜を単位とする成膜処理を必要回繰り返してシート状フィルム基板の表面に吸収型多層膜を形成する第四工程と、
    表面に吸収型多層膜が形成されたシート状フィルム基板を同一若しくは他のロードロック室へ搬出させ、ロードロック室内においてシート状フィルム基板の表裏を反転させた後、このシート状フィルム基板をホルダーにて保持させてスパッタリング室内に搬入させる第五工程と、
    スパッタリング室内において上記第三工程と第四工程を繰り返してシート状フィルム基板の裏面にも吸収型多層膜を形成する第六工程と、
    裏面にも吸収型多層膜が形成されたシート状フィルム基板を同一若しくは他のロードロック室へ搬出させ、かつ、表裏面に吸収型多層膜が形成されたシート状フィルム基板をプレス打ち抜き加工してグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを得る第七工程、
    を具備することを特徴とする吸収型多層膜NDフィルターの製造方法。
  5. 請求項2に記載の製造装置を用いてグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを製造する方法において、
    スパッタリング室内の第一ロールまたは第二ロールに帯状フィルム基板をセットする第一工程と、
    スパッタリング室を真空排気した後、第一ロールまたは第二ロールにセットされた帯状フィルム基板を巻出しながらキャンロール外周面に沿って搬送させると共に、搬送される帯状フィルム基板に対しマグネトロンスパッタリング若しくはイオンビームスパッタリングによる酸化物誘電体膜層の成膜を行いながら第二ロールまたは第一ロールにより巻取る第二工程と、
    第二ロールまたは第一ロールへの帯状フィルム基板の巻取りが終了した後、第一ロール、第二ロール並びにキャンロールの各回転方向を反転させかつキャンロール外周面に沿って搬送される帯状フィルム基板に対し、酸化用イオンビーム発生装置からの酸化用イオンビームの部分照射を伴ったイオンビームスパッタリングによる金属吸収膜層の成膜を行いながら第一ロールまたは第二ロールにより巻取る第三工程と、
    上記酸化物誘電体膜層の成膜と、酸化用イオンビームの部分照射を伴った上記金属吸収膜層の成膜を単位とする成膜処理を必要回繰り返して帯状フィルム基板の表面に吸収型多層膜を形成する第四工程と、
    表面に吸収型多層膜が形成された帯状フィルム基板を第一ロールまたは第二ロールから取り外しかつ帯状フィルム基板の表裏を反転させながら第一ロールまたは第二ロールに巻付ける第五工程と、
    スパッタリング室を真空排気した後、表裏を反転させて第一ロールまたは第二ロールに巻き付けられた帯状フィルム基板に対し上記第二工程〜第四工程を繰り返して帯状フィルム基板の裏面にも吸収型多層膜を形成する第六工程と、
    表裏面に吸収型多層膜が形成された帯状フィルム基板をプレス打ち抜き加工してグラデーション濃度分布を有する吸収型多層膜NDフィルターを得る第七工程、
    を具備することを特徴とする吸収型多層膜NDフィルターの製造方法。
  6. シート状フィルム基板または帯状フィルム基板の表裏面にそれぞれ成膜される金属吸収膜層への酸化用イオンビームの照射位置が、シート状フィルム基板または帯状フィルム基板の表面と裏面とで幅方向にずらされていることを特徴とする請求項4または5に記載の吸収型多層膜NDフィルターの製造方法。
  7. 上記金属吸収膜層が、酸化により消衰係数が低下する材料で構成されていることを特徴とする請求項4、5または6に記載の吸収型多層膜NDフィルターの製造方法。
  8. 酸化により消衰係数が低下する材料が、Ni若しくはNi合金であることを特徴とする請求項7に記載の吸収型多層膜NDフィルターの製造方法。
  9. 請求項6に記載の製造方法により製造され、シート状フィルム基板または帯状フィルム基板と上記基板の表裏面にそれぞれ形成された吸収型多層膜を具備すると共に、各吸収型多層膜における金属吸収膜層への酸化用イオンビームの照射位置が上記基板の表面と裏面とで幅方向にずらされて、上記基板表面に形成された吸収型多層膜と上記基板裏面に形成された吸収型多層膜がそれぞれ異なるグラデーション濃度分布を有していることを特徴とする吸収型多層膜NDフィルター。
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