JP5103615B2 - 新規タンパク質及びそれを利用したポリグルタミン病等の神経変性疾患の予防・治療薬 - Google Patents
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Description
そこで本発明は、上記従来の状況に鑑み、転写機能障害と神経細胞死との関係を明らかにするとともに、得られる知見からポリグルタミン病等の神経変性疾患における予防・治療薬となり得る新規タンパク質を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(6)の構成からなる。
(1)以下の(a)又は(b)のタンパク質。
(a)配列番号1〜配列番号3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ転写活性化因子YAPに対する優性ネガティブ効果を有するタンパク質。
(2)上記(1)記載のタンパク質をコードする遺伝子。
(3)上記(2)記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
(4)上記(2)記載の遺伝子を含有する組換えベクターを含む形質転換体。
(5)上記(1)記載のタンパク質を含むポリグルタミン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病等の神経変性疾患の予防・治療薬。
(6)上記(1)記載のタンパク質を介する細胞内シグナル伝達を利用したポリグルタミン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病等の神経変性疾患の予防・治療薬。
このYAPの新規アイソフォームは、神経細胞死を抑制するため、ポリグルタミン病等の神経変性疾患の予防・治療薬として利用することができる。
本発明者は、転写機能と神経細胞死との関係を明らかにすべく、初めにRNAポリメラーゼII(PolII)に対する多数のsiRNAを作製した。しかし、類似のアプローチによって基本的な転写機構を解明しようとする最近の研究と同様に、PolIIの抑制は不十分に終わった。そこで我々は、PolIIの有効な阻害剤であるα-アマニチンを利用した。このAMA分子はPolIIを補足できる。
したがって、上記のYAPの新規アイソフォームは、ポリグルタミン病等の神経変性疾患の予防・治療薬として利用可能であり、これにより神経変性疾患に対する新しい治療方法が導かれることとなる。
実質的に同一とは、配列番号1〜配列番号3のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ転写活性化因子YAPに対する優性ネガティブ効果を有するタンパク質をいう。また、配列番号1〜配列番号3で表されるアミノ酸配列と約90%以上、好ましくは約95%以上の相同性を有していることが好ましい。
(神経細胞の一次培養)
E17 Wistarラット胎児胚より分離した大脳皮質組織と、P7 Wistarラット新生児から分離した小脳組織を剃刀で細かくし、5分毎にやさしく振り混ぜながら37℃で20分間、0.25%トリプシン(Gibco)を含むリン酸緩衝液(以下PBS;pH7.5)で処理した。続いて、50%仔ウシ血清(以下FBS)を含むDMEMで反応を止めた後、終濃度100μg/mlとなるようにDNaseI(Boehringer Mannheim)を加え、ブルーチップを用いたピペッティングにより、やさしく組織を分離した。ナイロンメッシュ(FALCON、孔径70mm)を通して細胞を遠心分離し、20mMグルコース、16mM炭酸水素ナトリウム、4mMグルタミン、25μg/mlゲンタマイシン、10%FBSを加えたDMEMで再懸濁した後、ポリリジン(Sigma)をコートした24ウェルプレート(Corning)に各ウェル3×105個となるように培養した。12時間後、グリア細胞の増殖を防ぐため終濃度4Mとなるように培養液中にシトシンアラビノシドを加えた。そして、OPを誘導するため、α-アマニチン(Sigma)を濃度依存性の実験以外では終濃度10又は25μg/mlとなるように培養液に加え、濃度依存性の実験では終濃度が10から250μg/mlとなるように加えた。
細胞を0.4%トリパンブルー溶液(Invitrogen)で5分間処理した。そして、各実験において、各3ディッシュから100倍の拡大率で10〜20箇所の視野をランダムに選択し、その中で少なくとも2000個、青く染まった細胞(死んでいる細胞)と染まっていない細胞(生きている細胞)を数えた。
細胞をPBSで3回洗った後、2.5%グルタルアルデヒド/0.1M PBで固定し、さらに1% OsO4/0.1M PBで2時間固定した。固定された細胞をエタノール勾配を用いて脱水し、エポキシ樹脂に包埋した。そして、その超薄切片をウラニル酢酸とクエン酸鉛で染色し、日立H-7000電子顕微鏡で観察した。
Hela細胞をα-アマニチン(Sigma)で6時間処理した後、PBSで洗い、室温において4%パラホルムアルデヒドで15分間固定した。続いて、細胞を、室温において次に示す一次抗体で1時間反応させた:マウス抗CCO1モノクローナル抗体(1:1000希釈;Molecular Probes)、マウス抗EEA1モノクローナル抗体(1:100希釈;Transduction Lab.)、ウサギ抗カルネキシンポリクローナル抗体(1:100希釈;Stressgen)、マウス抗ゴルジ58kモノクローナル抗体(1:100希釈;Sigma)、抗CD63(1:100希釈;Cymbus Biotechnology Ltd.)。そして、Alexa fluor 488(1:1000希釈;Molecular Probes)を二次抗体として室温で30分間反応させることにより免疫染色で検出できるように視覚化した。Hela細胞には、Superfect(Qiagen)を製品マニュアルに従って用い、pEGFP-LC3又はpEGFP-ER(BD Biosciences)を遺伝子導入した。
細胞をPBSで2回洗った後、培養皿の中でTRIZOL試薬(INVITROGEN)処理を行い、製品マニュアルに従って全RNAを抽出した。
Agilent Fluorescent Linear Amplification Kit(Agilent technologies:G2554A)を製品マニュアルに従って用い、RNAの標識、増幅を行った。初めに、T7プロモーター配列を含むオリゴdTプライマーとランダムヘキサマー(40℃、4時間)を用いてMMLV逆転写酵素により2μgの全RNAからT7プロモーターを含んだ2本鎖cDNAを合成した。これらのcDNAを鋳型として、Cy3またはCy5標識したCTPを用い、T7 RNAポリメラーゼによりcRNAを合成した。AMA処理した皮質ニューロン、AMA処理した小脳ニューロン、また低カリウムで処理をした小脳ニューロンのそれぞれから抽出し、合成したcRNAをCy3またはCy5標識した。合成されたcRNAをリチウムクロライドで沈殿させ、エタノールで洗い、ヌクレアーゼのない水で溶解した。cRNAの質を調べるためにOD260、OD280、A552(Cy3に対し)、A650(Cy5に対し)を測定した。そして、cRNAのOD260/OD280と増幅率、色素含有率[pmol/μg RNA]を算出した。我々のサンプルはこれらの基準において高い質を示した(OD260/OD280:2.0< 、増幅率:400< 、Cy3含有:15< [pmol/μg RNA]、Cy5含有:12< [pmol/μg RNA])。
ハイブリダイゼーション方法は、in situハイブリダイゼーションキットプラス(Agilent technologies:5184-3568)を製品マニュアルに従って用いた。初めに、Cy3とCy5標識されたcRNA(各1μg)を混ぜ合わせ、60℃で30分間、フラグメンターションバッファーで処理した。そして、60塩基のマウスcDNAのオリゴヌクレオチドを20,371含むMouse Development Oligo Microarray(Agilent technologies:G4120A)と断片化したcRNAを60℃で17時間反応させた。反応後のマイクロアレイを2回洗浄し、窒素ガス(99.999%)をフィルター付きの空気銃(Nihon mycrolis KK)を用いて吹きかけて乾燥した。
蛍光シグナルはマイクロアレイスキャナーであるCRBIO IIe(Hitachi software engineering Co., Ltd.)で検出した。データは解析ソフトであるDNASIS array(Hitachi software engineering Co., Ltd.)を用いて解析した。コントロールスポットや不自然なシグナルによる強い蛍光を持つスポットはデータから除いた。その後、それぞれのスポットのシグナル強度は全てのシグナル強度を標準化した。標準化したシグナル強度を散布図上でCy3の蛍光をY軸、Cy5の蛍光をX軸にプロットした。Cy5に対するCy3の蛍光の割合を計算し、Cy3/Cy5が2.0以上、0.5以下と突出した遺伝子を表にした。
YAPのRT-PCRクローニングは、RNA LA PCR Kit(AMV)(Takara)により、F:5’-GGAATTCTATGGAGCCCGCGCAA-3’、R:5’-ACGCGTCGACCTATAACCACGTGAG-3’の二つのプライマーを用いて、ラット皮質ニューロンの全RNA1μgから逆転写によって得たcDNAより行った。PCRによる増幅は35サイクル(94℃で30秒、52℃で30秒、72℃で90秒)行った。PCR産物のcDNAをEcoRIとSalIを用いてpBluescriptII SK+に挿入した。塩基配列はM13と合成されたcDNAに含まれる配列を用いたプライマーにより、ABI PRISMTM BigDyeTM Terminator Cycle Sequencing Kit ver.3.1(Applied Biosystems)とABI PRISMTM 310 DNA Sequencer(Applied Biosystems)を用いて決定した。YAPの13nt、25nt、61ntの挿入部位を含むpBluescriptをpBSins13、pBSins25、pBSins61と名付けた。上記のYAPの挿入部位をpCI-neo(Promega)に挿入し、それらをpCIins13、pCIins25、pCIins61と名付けた。
全ての細胞を培養皿の上で62.5mM トリス-HCL(pH6.8)、2%(w/v)SDS、2.5%(v/v)2-メルカプトエタノール、5%(w/v)グリセリン、0.0025%(w/v)ブロモフェノールブルーで溶解した。細胞溶解液を、1レーンあたり3.3×104個のHela細胞、1.0×105個の初代培養のニューロンとなるように調整し、SDS-PAGEゲルで電気泳動した後、ポリビニリデン・ジフルオライド膜(PVDF:Fine Trap, Nihon Eido)に転写し、それぞれの一次抗体で1時間処理してから30分間ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼの標識された二次抗体で処理し、ECL Western Blotting Detection System(Amersham Bioscinces)で視覚化した。一次抗体、二次抗体の希釈については、ウサギ抗YAPポリクローナル抗体(H-125, Santa Cruz)は1:1000、マウス抗GAPDHモノクローナル抗体(Chemicon)は1:100000、HRP標識した抗マウスIgG(Amersham)は1:5000、HRP標識した抗ウサギIgG(Amersham)は1:3000で使用した。
複製能力の欠如したアデノウイルスベクターはAdenovirus Expression Vector Kit(TAKARA SHUZO CO., LTD.)を製品マニュアルに従って用いた。YAPのcDNA をpBSins13、pBSins25、pBSins61からEcoRI、SalIで切り出した。cDNAの断片の両端をBlunting high kit(Toyobo CO., LTD.)で平滑化した後、それらをpAxCAwtコスミド(Takara)にSwaIを用いて挿入した。精製されたコスミドを、293個の細胞に対しリン酸カルシウム法によりアデノウイルスのDNAと共に導入し、死細胞の培養液をウイルス液として回収した。2、3回増幅を繰り返した後、このベクターのクロナリティ(5×108〜5×109PFU/ml)をエンドヌクレアーゼとPCRを用いて調べた。我々はAxCAins13、AxCAins25、AxCAins61としてアデノウイルスベクターを作製した。これらのベクターをHela細胞と初代培養のニューロンに感染多重度(MOI)100で感染に使用した。また、予備的にタンパク質の発現効率とアデノウイルスの毒性を、EGFPを組み込んだベクターと様々なMOIのモックベクターを初代培養のニューロンに感染させることにより調べた。MOI100で90%以上のニューロンがEGFPを発現していた。非感染ニューロンとモック感染ニューロンでの死細胞の割合の違いはトリパンブルーを用いて調べ、MOIが500以上でも3%程度だった。
初代培養のニューロンより抽出した全RNA10μgをMOPS/ホルムアルデヒドゲルを用いて電気泳動した。分離されたRNAをHybond-N(Pharmacia)に転写し、UV架橋(120,000μJ/cm2)により固定した。61塩基挿入物の全長cDNAをpBSins61から切り出し、ゲルを用いて精製し、[a32P]dCTP(Amersham)とランダムプライマーDNA標識キット(Takara)で標識した。32Pで標識したプローブを60℃でナイロン膜と反応させ、一晩浸透した。反応させた膜は50℃で20分間、1×SSC、0.1% SDSで2回洗浄し、60℃で20分間、0.1x SSC、0.1% SDSで2回洗浄した。そして、膜をX線フィルムに−80℃で適度な時間、感光した。
細胞に、RNAiFect(QIAGEN)を製品マニュアルに従って用い、siRNAオリゴヌクレオチドを導入した。6ウェル中で2.5×104の細胞に24時間後各ウェル0.5μgのsiRNAを感染させた。感染24時間後、終濃度10μg/mlとなるようにAMAを加えた。さらに24時間後に細胞死アッセイを行った。YAPとp73のsiRNAの配列は以前に公開されたものと同じものを用いた。
Claims (4)
- 配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
- 請求項1記載のタンパク質をコードする遺伝子。
- 請求項2記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
- 請求項2記載の遺伝子を含有する組換えベクターを含む形質転換体。
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