以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る歩行者衝突検知装置を備える歩行者保護システムの構成概略図である。なお、図1(a)は、本実施形態に係る歩行者保護システムが搭載された車両100の側面図であり、図1(b)は、この車両100の上面図である。また、本実施形態では、車両100としてフロントエンジンタイプの車両を想定しており、エンジンルーム上にはエンジンフード130が開閉自在に設けられている。
この図1に示すように、本実施形態に係る歩行者保護システムは、車両100の前端部(フロントバンパ110)の車幅方向に沿って左側、中央、右側の各々に設置された3つの加速度センサ10L、10C、10Rと、車両100の前輪120に設置された車速センサ20と、ECU(Electronic Control Unit)30と、車両100のエンジンフード130の後端部を持ち上げるためのアクチュエータであるパワーユニット80とから構成されている。
フロントバンパ110の内部には、バンパビーム140と、歩行者との衝突時における歩行者脚部保護用のセーフティプレート150とが設けられており、加速度センサ10L、10C、10Rは、セーフティプレート150の下部に設置されている。一般的に、フロントバンパ110は樹脂製であるが、セーフティプレート150は衝突時に変形して衝突エネルギーを吸収しやすいような形状(例えば図1(a)に示すような「くの字」型)に成形された鉄板が用いられる。つまり、加速度センサ10L、10C、10Rは、フロントバンパ110と歩行者とが衝突し、その衝撃によりセーフティプレート150が変形した場合に各々の設置位置において発生する加速度変化を検出し、当該加速度変化に応じた信号をECU30に出力する。
車速センサ20は、前輪120の回転速度を車速として検出し、当該車速に応じた信号をECU30に出力する。
ECU30は、加速度センサ10L、10C、10Rの出力信号と、車速センサ20の出力信号とを入力とし、これらの出力信号に基づいて、車両100が歩行者と衝突したか否かを判定し、衝突したと判定した場合に、パワーユニット80を制御してエンジンフード130を持ち上げる。また、車速センサ30は、本実施例においては車両100の前輪120の回転速度を車速として検出しているが、後輪または変速機等により車速を検出するものも含む。
図2は、上記のECU30の回路ブロック図である。この図2に示すように、ECU30は、第1のA/Dコンバータ31L、第2のA/Dコンバータ31C、第3のA/Dコンバータ31R、第1のLPF(Low Pass Filter)32L、第2のLPF32C、第3のLPF32R、第1の積分回路33L、第2の積分回路33C、第3の積分回路33R、第1の遅延回路34L、第2の遅延回路34C、第3の遅延回路34R、第1の衝突判定閾値選択回路35L、第2の衝突判定閾値選択回路35C、第3の衝突判定閾値選択回路35R、第1の比較回路36L、第2の比較回路36C、第3の比較回路36R、第1のセーフィング回路37L、第2のセーフィング回路37C、第3のセーフィング回路37R、第1のAND回路38L、第2のAND回路38C、第3のAND回路38R、衝突判定回路39及びエンジンフード制御装置40から構成されている。
第1のA/Dコンバータ31Lは、加速度センサ10Lの出力信号を入力とし、当該出力信号をデジタル信号に変換して第1のLPF32Lに出力する。第2のA/Dコンバータ31Cは、加速度センサ10Cの出力信号を入力とし、当該出力信号をデジタル信号に変換して第2のLPF32Cに出力する。第3のA/Dコンバータ31Rは、加速度センサ10Rの出力信号を入力とし、当該出力信号をデジタル信号に変換して第3のLPF32Rに出力する。
第1のLPF32Lは、第1のA/Dコンバータ31Lから出力されるデジタル信号を入力とし、当該デジタル信号に含まれる所定の周波数以上の周波数成分を除去し、当該除去した後のデジタル信号を第1の積分回路33L、第1の衝突判定閾値選択回路35L、第2の衝突判定閾値選択回路35C及び第3の衝突判定閾値選択回路35Rに出力する。第2のLPF32Cは、第2のA/Dコンバータ31Cから出力されるデジタル信号を入力とし、当該デジタル信号に含まれる所定の周波数以上の周波数成分を除去し、当該除去した後のデジタル信号を第2の積分回路33C、第1の衝突判定閾値選択回路35L、第2の衝突判定閾値選択回路35C及び第3の衝突判定閾値選択回路35Rに出力する。第3のLPF32Rは、第3のA/Dコンバータ31Rから出力されるデジタル信号を入力とし、当該デジタル信号に含まれる所定の周波数以上の周波数成分を除去し、当該除去した後のデジタル信号を第3の積分回路33R、第1の衝突判定閾値選択回路35L、第2の衝突判定閾値選択回路35C及び第3の衝突判定閾値選択回路35Rに出力する。
上述したように、加速度センサ10L、10C、10Rが設置されているセーフティプレート150は、衝突時に変形して衝突エネルギーを吸収しやすいような形状に成形された鉄板が用いられているため、車両走行時において振動しやすい構造となっている。よって、加速度センサ10L、10C、10Rの出力信号には車両走行時の振動に起因する高周波のノイズが重畳するため、歩行者との衝突による加速度変化に起因する信号成分と上記ノイズ成分とを分離する必要がある。すなわち、上記の第1のLPF32L、第2のLPF32C、第3のLPF32Rのカットオフ周波数は、車両走行時の振動に起因する高周波ノイズ成分を除去可能な値に設定されている。なお、このノイズ成分は、車両100の車体構造によって変化するため、各LPF32L、32C、32Rのカットオフ周波数は車体構造に応じて適宜設定すれば良い。また、全てのLPF32L、32C、32Rのカットオフ周波数を同一にする必要はなく、個別に設定しても良い。
第1の積分回路33Lは、第1のLPF32Lから出力されるデジタル信号を入力とし、当該デジタル信号(つまり加速度センサ10Lにて検出した加速度変化を表す信号)を所定時間区間で1次積分し、当該1次積分の結果である積分値を第1の遅延回路34Lに出力する。この第1の積分回路33Lが算出する積分値は、加速度センサ10Lの設置位置における速度変化を示すものであるので、以下ではこの積分値を、第1の速度変化VLと称す。
第2の積分回路33Cは、第2のLPF32Cから出力されるデジタル信号を入力とし、当該デジタル信号(つまり加速度センサ10Cにて検出した加速度変化を表す信号)を所定時間区間で1次積分し、当該1次積分の結果である積分値を第2の遅延回路34Cに出力する。この第2の積分回路33Cが算出する積分値は、加速度センサ10Cの設置位置における速度変化を示すものであるので、以下ではこの積分値を、第2の速度変化VCと称す。
第3の積分回路33Rは、第3のLPF32Rから出力されるデジタル信号を入力とし、当該デジタル信号(つまり加速度センサ10Rにて検出した加速度変化を表す信号)を所定時間区間で1次積分し、当該1次積分の結果である積分値を第3の遅延回路34Rに出力する。この第3の積分回路33Rが算出する積分値は、加速度センサ10Rの設置位置における速度変化を示すものであるので、以下ではこの積分値を、第3の速度変化VRと称す。
第1の遅延回路34Lは、第1の積分回路33Lから入力される積分値(第1の速度変化VL)の遅延処理を行い、当該遅延処理後の第1の速度変化VLを第1の比較回路36Lの非反転入力端子に出力する。なお、この第1の遅延回路34Lにおける遅延時間は、後述する第1の衝突判定閾値選択回路35Lによって第1の衝突判定閾値VL_THが選択されて第1の比較回路36Lの反転入力端子に出力されるまでの時間を考慮して設定されている。
第2の遅延回路34Cは、第2の積分回路33Cから入力される積分値(第2の速度変化VC)の遅延処理を行い、当該遅延処理後の第2の速度変化VCを第2の比較回路36Cの非反転入力端子に出力する。なお、この第2の遅延回路34Cにおける遅延時間は、後述する第2の衝突判定閾値選択回路35Cによって第2の衝突判定閾値VC_THが選択されて第2の比較回路36Cの反転入力端子に出力されるまでの時間を考慮して設定されている。
第3の遅延回路34Rは、第3の積分回路33Rから入力される積分値(第3の速度変化VR)の遅延処理を行い、当該遅延処理後の第3の速度変化VRを第3の比較回路36Rの非反転入力端子に出力する。なお、この第3の遅延回路34Rにおける遅延時間は、後述する第3の衝突判定閾値選択回路35Rによって第3の衝突判定閾値VR_THが選択されて第3の比較回路36Rの反転入力端子に出力されるまでの時間を考慮して設定されている。
第1の衝突判定閾値選択回路35Lは、加速度センサ10Lに対応して設けられており、自己に対応する加速度センサ10Lの出力信号の積分値と、他の加速度センサ10C、10Rの出力信号の積分値との関連性を基に判別される加速度センサの出力変化要因に応じて、自己に対応する加速度センサ10Lに関する衝突判定閾値を選択するものである。具体的には、第1の衝突判定閾値選択回路35Lは、第1のLPF32Lから出力されるデジタル信号と、第2のLPF32Cから出力されるデジタル信号と、第3のLPF32Rから出力されるデジタル信号と、車速センサ20の出力信号とを入力とし、これらの信号に基づいて、自己に対応する加速度センサ10Lに関する第1の衝突判定閾値VL_THを選択し、この選択値を第1の比較回路36Lの反転入力端子に出力する。
以下、この第1の衝突判定閾値選択回路35Lの詳細な回路構成について説明する。
図3は、第1の衝突判定閾値選択回路35Lの回路ブロック図である。この図3に示すように、第1の衝突判定閾値選択回路35Lは、主積分回路50、第1の副積分回路51、第2の副積分回路52、主閾値設定回路53、第1の副閾値設定回路54、第2の副閾値設定回路55、主比較回路56、第1の副比較回路57、第2の副比較回路58、OR回路59、AND回路60、判定閾値設定回路61及び選択回路62から構成されている。なお、上記の構成要素の内、主比較回路56、第1の副比較回路57、第2の副比較回路58、OR回路59及びAND回路60は、出力変化要因判別回路を構成するものである。
主積分回路50は、第1のLPF32Lから出力されるデジタル信号を入力とし、当該デジタル信号(つまり自己の対応する加速度センサ10Lにて検出した加速度変化を表す信号)を所定時間区間で1次積分し、当該1次積分の結果である積分値を主比較回路56に出力する。以下では、この積分値を主速度変化VMと称す。第1の副積分回路51は、第2のLPF32Cから出力されるデジタル信号を入力とし、当該デジタル信号(つまり他の加速度センサ10Cにて検出した加速度変化を表す信号)を所定時間区間で1次積分し、当該1次積分の結果である積分値を第1の副比較回路57の非反転入力端子に出力する。以下では、この積分値を第1の副速度変化VS1と称す。第2の副積分回路52は、第3のLPF32Rから出力されるデジタル信号を入力とし、当該デジタル信号(つまり他の加速度センサ10Rにて検出した加速度変化を表す信号)を所定時間区間で1次積分し、当該1次積分の結果である積分値を第2の副比較回路58の非反転入力端子に出力する。以下では、この積分値を第2の副速度変化VS2と称す。
これら主積分回路50、第1の副積分回路51及び第2の副積分回路52における積分時間区間は、第1の積分回路33L、第2の積分回路33C及び第3の積分回路33Rと同一でも良いし、異なるように設定しても良い。例えば、同一に設定した場合、主速度変化VMは第1の速度変化VLと等しく、第1の副速度変化VS1は第2の速度変化VCと等しく、第2の副速度変化VS2は第3の速度変化VRと等しくなる。
主閾値設定回路53は、車速センサ20の出力信号を入力とし、この車速センサ20にて検出される車速に応じて、主速度変化VMと比較するための主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hi及びロー側閾値VM_TH_Lowを設定し、これらの閾値を主比較回路56に出力する。第1の副閾値設定回路54は、車速センサ20の出力信号を入力とし、この車速センサ20にて検出される車速に応じて、第1の副速度変化VS1と比較するための副回路用閾値VS1_THを設定し、この閾値を第1の副比較回路57の反転入力端子に出力する。第2の副閾値設定回路55は、車速センサ20の出力信号を入力とし、この車速センサ20にて検出される車速に応じて、第2の副速度変化VS2と比較するための副回路用閾値VS2_THを設定し、この閾値を第2の副比較回路58の反転入力端子に出力する。
これら閾値は車速によってその最適値が変化するため、車速センサ20にて検出した車速に応じて適宜変更することが望ましい。具体的には、車速が高くなる程、衝突時の加速度変化は大きくなるため、閾値を高い値に設定する。
主比較回路56は、主速度変化VM、主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hi及びロー側閾値VM_TH_Lowを入力とし、主速度変化VMが主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hiを越えてからロー側閾値VM_TH_Lowに到達する期間にハイレベル信号をAND回路60に出力する一方、それ以外の期間ではローレベル信号をAND回路60に出力する。
第1の副比較回路57は、例えばコンパレータであり、反転入力端子に入力される第1の副速度変化VS1と、非反転入力端子に入力される副回路用閾値VS1_THとを比較し、その比較結果に応じた信号をOR回路59に出力する。具体的には、第1の副速度変化VS1が副回路用閾値VS1_THを越えた場合にハイレベル信号が出力される。第2の副比較回路58は、例えばコンパレータであり、反転入力端子に入力される第2の副速度変化VS2と、非反転入力端子に入力される副回路用閾値VS2_THとを比較し、その比較結果に応じた信号をOR回路59に出力する。具体的には、第2の副速度変化VS2が副回路用閾値VS2_THを越えた場合にハイレベル信号が出力される。
OR回路59は、第1の副比較回路57の出力信号と第2の副比較回路58の出力信号との論理和信号をAND回路60に出力する。AND回路60は、主比較回路56の出力信号とOR回路59の出力信号との論理積信号を選択回路62に出力する。
これら主比較回路56、第1の副比較回路57、第2の副比較回路58、OR回路59及びAND回路60にて構成される出力変化要因判別回路は、主積分回路50にて算出される積分値(主速度変化VM)が主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hiを越えてから主回路用ロー側閾値VM_TH_Lowに到達する期間において、第1の副積分回路51及び第2の副積分回路52にて算出される積分値(第1の副速度変化VS1、第2の副速度変化VS2)がそれぞれ副回路用閾値(VS1_TH、VS2_TH)を越えたか否かを判定することで加速度センサの出力変化要因を判別するものである。
詳細は後述するが、本実施形態における出力変化要因判別回路は、主積分回路50にて算出される主速度変化VMが主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hiを越えてから主回路用ロー側閾値VM_TH_Lowに到達する期間において、第1の副積分回路51及び第2の副積分回路52にて算出される第1の副速度変化VS1、第2の副速度変化VS2がそれぞれ副回路用閾値VS1_TH、VS2_THを越えた場合、加速度センサの出力変化要因は悪路走行時やABS作動時の振動によるものと判別し、この判別結果を表すハイレベル信号をAND回路60から出力する。また、それ以外、つまり主速度変化VMが主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hiを越えてから主回路用ロー側閾値VM_TH_Lowに到達する期間において、第1の副速度変化VS1、第2の副速度変化VS2の少なくとも1つが副回路用閾値を越えなかった場合、加速度センサの出力変化要因は歩行者との衝突によるものと判別し、この判別結果を表すローレベル信号をAND回路60から出力する。
判定閾値設定回路61は、車速センサ20の出力信号を入力とし、この車速センサ20にて検出される車速に応じて、自己に対応する加速度センサ10Lに関する衝突判定閾値を、出力変化要因別に設定する。具体的には、この判定閾値設定回路61は、出力変化要因「悪路走行時やABS作動時の振動」に対応するハイ側衝突判定閾値VL_TH_Hiを設定すると共に、出力変化要因「歩行者との衝突」に対応するロー側衝突判定閾値VL_TH_Lowを設定し、これらの衝突判定閾値を選択回路62に出力する。
選択回路62は、上記のハイ側衝突判定閾値VL_TH_Hi及びロー側衝突判定閾値VL_TH_Lowの内、AND回路60の出力信号(つまり出力変化要因判別回路による出力変化要因の判別結果)に対応する衝突判定閾値を選択し、この選択した衝突判定閾値を第1の衝突判定閾値VL_THとして第1の比較回路36L(図2参照)の反転入力端子に出力する。具体的には、この選択回路62は、AND回路60からハイレベル信号が入力された場合、出力変化要因「悪路走行時やABS作動時の振動」に対応するハイ側衝突判定閾値VL_TH_Hiを選択し、AND回路60からローレベル信号が入力された場合、出力変化要因「歩行者との衝突」に対応するロー側衝突判定閾値VL_TH_Lowを選択する。
以上が加速度センサ10Lに対応する第1の衝突判定閾値選択回路35Lの説明であり、以下では図2に戻って説明を続ける。
第2の衝突判定閾値選択回路35Cは、加速度センサ10Cに対応して設けられており、自己に対応する加速度センサ10Cの出力信号の積分値と、他の加速度センサ10L、10Rの出力信号の積分値との関連性を基に判別される加速度センサの出力変化要因に応じて、自己に対応する加速度センサ10Cに関する衝突判定閾値を選択するものである。具体的には、第2の衝突判定閾値選択回路35Cは、第1のLPF32Lから出力されるデジタル信号と、第2のLPF32Cから出力されるデジタル信号と、第3のLPF32Rから出力されるデジタル信号と、車速センサ20の出力信号とを入力とし、これらの信号に基づいて、自己に対応する加速度センサ10Cに関する第2の衝突判定閾値VC_THを選択し、この選択値を第2の比較回路36Cの反転入力端子に出力する。
なお、この第2の衝突判定閾値選択回路35Cは、上述した第1の衝突判定閾値選択回路35Lと比較して、自己に対応する加速度センサと他の加速度センサが変わったのみであり、回路構成は同一であるので詳細な説明は省略する。
第3の衝突判定閾値選択回路35Rは、加速度センサ10Rに対応して設けられており、自己に対応する加速度センサ10Rの出力信号の積分値と、他の加速度センサ10L、10Cの出力信号の積分値との関連性を基に判別される加速度センサの出力変化要因に応じて、自己に対応する加速度センサ10Rに関する衝突判定閾値を選択するものである。具体的には、第3の衝突判定閾値選択回路35Rは、第1のLPF32Lから出力されるデジタル信号と、第2のLPF32Cから出力されるデジタル信号と、第3のLPF32Rから出力されるデジタル信号と、車速センサ20の出力信号とを入力とし、これらの信号に基づいて、自己に対応する加速度センサ10Rに関する第3の衝突判定閾値VR_THを選択し、この選択値を第3の比較回路36Rの反転入力端子に出力する。
なお、この第3の衝突判定閾値選択回路35Rは、上述した第1の衝突判定閾値選択回路35Lと比較して、自己に対応する加速度センサと他の加速度センサが変わったのみであり、回路構成は同一であるので詳細な説明は省略する。
第1の比較回路36Lは、例えばコンパレータであり、非反転入力端子に入力される第1の速度変化VLと、反転入力端子に入力される第1の衝突判定閾値VL_THとを比較し、その比較結果に応じた信号を第1のAND回路38Lに出力する。具体的には、この第1の比較回路36Lは、第1の速度変化VLが第1の衝突判定閾値VL_THを越えた場合にハイレベル信号を出力する。
第2の比較回路36Cは、例えばコンパレータであり、非反転入力端子に入力される第2の速度変化VCと、反転入力端子に入力される第2の衝突判定閾値VC_THとを比較し、その比較結果に応じた信号を第2のAND回路38Cに出力する。具体的には、この第2の比較回路36Cは、第2の速度変化VCが第2の衝突判定閾値VC_THを越えた場合にハイレベル信号を出力する。
第3の比較回路36Rは、例えばコンパレータであり、非反転入力端子に入力される第3の速度変化VRと、反転入力端子に入力される第3の衝突判定閾値VR_THとを比較し、その比較結果に応じた信号を第3のAND回路38Rに出力する。具体的には、この第3の比較回路36Rは、第3の速度変化VRが第3の衝突判定閾値VR_THを越えた場合にハイレベル信号を出力する。
第1のセーフィング回路37Lは、加速度センサ10Lに対応して設けられたセーフィング回路である。ここで、セーフィングとは、1つの加速度センサ10Lの出力信号のみで衝突判定を行わず、最も近い位置に設置されている加速度センサ10Cの出力信号に基づく衝突判定結果とのANDを加速度センサ10Lの衝突判定結果とすることである。つまり、第1のセーフィング回路37Lは、加速度センサ10Lに最も近い位置に設置されている加速度センサ10Cの出力信号を基に衝突判定を行い、判定結果に応じた信号を第1のAND回路38Lに出力する。
以下、この第1のセーフィング回路37Lの詳細な回路構成について説明する。
図4は、第1のセーフィング回路37Lの回路ブロック図である。この図4に示すように、第1のセーフィング回路37Lは、積分回路70、第1のコンパレータ71、第2のコンパレータ72及びAND回路73から構成されている。
積分回路70は、第2のLPF32Cの出力信号(つまり加速度センサ10Cにて検出した加速度変化を表す信号)を所定時間区間で1次積分し、当該1次積分の結果である積分値を第1のコンパレータ71の非反転入力端子に出力する。以下では、この積分値をセーフィング速度変化VSFと称す。第1のコンパレータ71は、非反転入力端子に入力されるセーフィング速度変化VSFと、反転入力端子に入力される第1のセーフィング用衝突判定閾値VSF_THとを比較し、その比較結果に応じた信号をAND回路73に出力する。具体的には、この第1のコンパレータ71は、セーフィング速度変化VSFが第1のセーフィング用衝突判定閾値VSF_THを越えた場合にハイレベル信号を出力する。
第2のコンパレータ72は、非反転入力端子に入力される、第2のLPF32Cの出力信号GSFと、反転入力端子に入力される第2のセーフィング用衝突判定閾値GSF_THとを比較し、その比較結果に応じた信号をAND回路73に出力する。具体的には、この第2のコンパレータ72は、信号GSFが第2のセーフィング用衝突判定閾値GSF_THを越えた場合にハイレベル信号を出力する。AND回路73は、第1のコンパレータ71の出力信号と第2のコンパレータ72の出力信号との論理積信号を第1のAND回路38Lに出力する。
なお、上記の第1のセーフィング用衝突判定閾値VSF_TH及び第2のセーフィング用衝突判定閾値GSF_THは、加速度センサ10Cの出力変化が小さい場合でも、第1コンパレータ71と第2のコンパレータ72の出力がハイレベルとなるように設定されている。つまり、第1のセーフィング回路37Lは、わずかな衝撃が車両100に加わった場合でもハイレベル信号を出力するようになっている。
以上が加速度センサ10Lに対応する第1のセーフィング回路37Lの説明であり、以下では図2に戻って説明を続ける。
第2のセーフィング回路37Cは、加速度センサ10Cに対応して設けられたセーフィング回路であり、加速度センサ10Cに最も近い位置に設置されている加速度センサ10R(加速度センサ10Lでも良い)の出力信号を基に衝突判定を行い、判定結果に応じた信号を第2のAND回路38Cに出力する。なお、この第2のセーフィング回路37Cの回路構成は、第1のセーフィング回路37Lと同様であるため詳細な説明を省略する。
第3のセーフィング回路37Rは、加速度センサ10Rに対応して設けられたセーフィング回路であり、加速度センサ10Rに最も近い位置に設置されている加速度センサ10Cの出力信号を基に衝突判定を行い、判定結果に応じた信号を第3のAND回路38Rに出力する。なお、この第3のセーフィング回路37Rの回路構成は、第1のセーフィング回路37Lと同様であるため詳細な説明を省略する。
第1のAND回路38Lは、第1の比較回路36Lの出力信号と第1のセーフィング回路37Lの出力信号との論理積信号を衝突判定回路39に出力する。第2のAND回路38Cは、第2の比較回路36Cの出力信号と第2のセーフィング回路37Cの出力信号との論理積信号を衝突判定回路39に出力する。第3のAND回路38Rは、第3の比較回路36Rの出力信号と第3のセーフィング回路37Rの出力信号との論理積信号を衝突判定回路39に出力する。
衝突判定回路39は、例えばOR回路であり、第1のAND回路38L、第2のAND回路38C、第3のAND回路38Rの出力信号の少なくとも1つがハイレベル信号の場合、つまり、少なくとも1つの加速度センサに対応する積分値(速度変化)が衝突判定閾値を越えた場合に歩行者と衝突したと判定し、当該判定結果を示すハイレベル信号をエンジンフード制御装置40に出力する。
このように、本実施形態では、加速度センサ10L、10C、10R、第1のA/Dコンバータ31L、第2のA/Dコンバータ31C、第3のA/Dコンバータ31R、第1のLPF32L、第2のLPF32C、第3のLPF32R、第1の積分回路33L、第2の積分回路33C、第3の積分回路33R、第1の遅延回路34L、第2の遅延回路34C、第3の遅延回路34R、第1の衝突判定閾値選択回路35L、第2の衝突判定閾値選択回路35C、第3の衝突判定閾値選択回路35R、第1の比較回路36L、第2の比較回路36C、第3の比較回路36R、第1のセーフィング回路37L、第2のセーフィング回路37C、第3のセーフィング回路37R、第1のAND回路38L、第2のAND回路38C、第3のAND回路38R及び衝突判定回路39によって、歩行者衝突検知装置が構成されている。
エンジンフード制御装置40は、衝突判定回路39からハイレベル信号が入力された場合、つまり歩行者と衝突したと判定された場合に、パワーユニット80を制御することによりエンジンフード130を持ち上げる。
以上がECU30の詳細な説明であり、以下、図1に戻って説明を続ける。パワーユニット80は、例えばエアシリンダから構成されており、ECU30(エンジンフード制御装置40)の制御によってシャフト80aが上昇しエンジンフード130を持ち上げる。また、このパワーユニット80にはシャフトロック機構80bが設けられており、エンジンフード130を持ち上げた後、シャフトロック機構80bによってシャフト80aをロックすることにより、エンジンフード130の上昇位置を保持する機能も備えている。なお、エンジンフード130を持ち上げるためのパワーユニット80として、例えば衝突判定時に膨張するエアバッグ等、他のアクチュータを用いても良い。
次に、上記のように構成された本実施形態に係る歩行者保護システムの動作について説明する。なお、以下の説明において、第1のセーフィング回路37L、第2のセーフィング回路37C及び第3のセーフィング回路37Rの動作に関する説明は省略し、これらのセーフィング回路からはハイレベル信号が常時出力されているものとする。
図5は、本実施形態に係る歩行者保護システムの動作を表すフローチャートである。この図5に示すように、ECU30には、加速度センサ10L、10C、10Rから各々の設置位置における加速度変化に応じた出力信号が入力される(ステップS1)。ECU30に入力された加速度センサ10L、10C、10Rの出力信号は、第1のA/Dコンバータ31L、第2のA/Dコンバータ31C、第3のA/Dコンバータ31Rによってデジタル変換処理されると共に、第1のLPF32L、第2のLPF32C、第3のLPF32Rによってフィルタリング処理(車両走行時の振動に起因する高周波ノイズ成分の除去)される(ステップS2)。
上記のようにデジタル変換処理及びフィルタリング処理された加速度センサ10Lの出力信号は、第1の積分回路33L、第1の衝突判定閾値選択回路35L、第2の衝突判定閾値選択回路35C及び第3の衝突判定閾値選択回路35Rに入力され、加速度センサ10Cの出力信号は、第2の積分回路33C、第1の衝突判定閾値選択回路35L、第2の衝突判定閾値選択回路35C及び第3の衝突判定閾値選択回路35Rに入力され、加速度センサ10Rの出力信号は、第3の積分回路33R、第1の衝突判定閾値選択回路35L、第2の衝突判定閾値選択回路35C及び第3の衝突判定閾値選択回路35Rに入力される。
そして、第1の衝突判定閾値選択回路35L、第2の衝突判定閾値選択回路35C及び第3の衝突判定閾値選択回路35Rのそれぞれにおいて、衝突判定閾値の選択が行われる(ステップS3)。以下、このステップS3における衝突判定閾値選択処理の詳細について、図6のフローチャートを参照して説明する。なお、この衝突判定閾値選択処理は、第1の衝突判定閾値選択回路35L、第2の衝突判定閾値選択回路35C及び第3の衝突判定閾値選択回路35Rで共通であるので、以下では第1の衝突判定閾値選択回路35Lにおける衝突判定閾値選択処理を代表的に用いて説明する。
また、この時点において、第1の衝突判定閾値選択回路35Lにおける主閾値設定回路53は、車速センサ20にて検出される車速に応じて、主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hi及びロー側閾値VM_TH_Lowを設定して主比較回路56に出力し、第1の副閾値設定回路54は、車速センサ20にて検出される車速に応じて、副回路用閾値VS1_THを設定して第1の副比較回路57の反転入力端子に出力し、また、第2の副閾値設定回路55は、車速センサ20にて検出される車速に応じて、副回路用閾値VS2_THを設定して第2の副比較回路58の反転入力端子に出力しているものとする。さらに、判定閾値設定回路61も、車速センサ20にて検出される車速に応じて、加速度センサ10Lに関する、出力変化要因「悪路走行時やABS作動時の振動」に対応するハイ側衝突判定閾値VL_TH_Hiと、出力変化要因「歩行者との衝突」に対応するロー側衝突判定閾値VL_TH_Lowとを設定して選択回路62に出力しているものとする。
図6に示すように、デジタル変換処理及びフィルタリング処理された加速度センサ10L、10C、10Rの出力信号が、第1の衝突判定閾値選択回路35Lにおける主積分回路50、第1の副積分回路51、第2の副積分回路52にそれぞれ入力されると(ステップS20)、主積分回路50は加速度センサ10Lの出力信号の1次積分値である主速度変化VMを算出して主比較回路56に出力する(ステップS21)。また、第1の副積分回路51は、加速度センサ10Cの出力信号の1次積分値である第1の副速度変化VS1を算出して第1の副比較回路57の非反転入力端子に出力する(ステップS22)。また、第2の副積分回路52は、加速度センサ10Rの出力信号の1次積分値である第2の副速度変化VS2を算出して第2の副比較回路58の非反転入力端子に出力する(ステップS23)。
主比較回路56は、制御変数ML=1か否かを判定し(ステップS24)、「No」の場合、主速度変化VMが主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hiより大きいか否かを判定する(ステップS25)。このステップS25において、「Yes」、つまりVM>VM_TH_Hiの場合、主比較回路56は、主速度変化VMが主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hiを越えたことを表すML=1を設定すると共に、ハイレベル信号をAND回路60に出力する(ステップS26)。一方、上記ステップS25において、「No」、つまりVM≦VM_TH_Hiの場合、主比較回路56は、ML=0に設定すると共に、ローレベル信号をAND回路60に出力する(ステップS27)。
また、上記ステップS24において、「Yes」、つまり主速度変化VMが主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hiを越えている場合、主比較回路56は、主速度変化VMが主回路用ロー側閾値VM_TH_Lowより大きいか否かを判定する(ステップS28)。このステップS28において、「Yes」、つまりVM>VM_TH_Lowの場合、主比較回路56は、ハイレベル信号の出力を継続する(ステップS29)。一方、上記ステップS28において、「No」、つまりVM≦VM_TH_Lowの場合、主比較回路56は、ステップS27に移行してML=0に設定すると共に、ローレベル信号をAND回路60に出力する。
上記のような、ステップS24〜S29の処理によって、主速度変化VMが主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hiを越えてからロー側閾値VM_TH_Lowに到達する期間において、主比較回路56からハイレベル信号がAND回路60に出力される一方、それ以外の期間ではローレベル信号がAND回路60に出力されることになる。
そして、第1の副比較回路57によって第1の副速度変化VS1と第1の副回路用閾値VS1_THとが比較されると共に、第2の副比較回路58によって第2の副速度変化VS2と第1の副回路用閾値VS2_THとが比較され(ステップS30)、VS1>VS1_TH、且つVS2>VS2_THの場合(「Yes」)、AND回路60からハイレベル信号が選択回路62に出力され、選択回路62によって出力変化要因「悪路走行時やABS作動時の振動」に対応するハイ側衝突判定閾値VL_TH_Hiが第1の衝突判定閾値VL_THとして選択される(ステップS31)。
一方、上記ステップS31において、「No」の場合、AND回路60からローレベル信号が選択回路62に出力され、選択回路62によって出力変化要因「歩行者との衝突」に対応するロー側衝突判定閾値VL_TH_Lowが第1の衝突判定閾値VL_THとして選択される(ステップS32)。
以上のような動作によって、主速度変化VMが主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hiを越えてからロー側閾値VM_TH_Lowに到達する期間において、第1の副積分回路51及び第2の副積分回路52にて算出される第1の副速度変化VS1、第2の副速度変化VS2がそれぞれ副回路用閾値VS1_TH、VS2_THを越えた場合は、加速度センサの出力変化要因を「悪路走行時やABS作動時の振動」と判別して、ハイ側衝突判定閾値VL_TH_Hiを第1の衝突判定閾値VL_THとして選択する一方、それ以外の場合(第1の副速度変化VS1、第2の副速度変化VS2の少なくとも1つが副回路用閾値を越えなかった場合)は、出力変化要因を「歩行者との衝突」と判別して、ロー側衝突判定閾値VL_TH_Lowを第1の衝突判定閾値VL_THとして選択する。
このような衝突判定閾値選択処理について、図7〜図9を参照して、より詳細に説明する。図7(a)は、主速度変化VMと主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hi及びロー側閾値VM_TH_Lowとの関係、第1の副速度変化VS1と副回路用閾値VS1_THとの関係、第2の副速度変化VS2と副回路用閾値VS2_THとの関係を表す第1のケースである。図7(b)は、図7(a)に示すような主速度変化VM、第1の副速度変化VS1、第2の副速度変化VS2が生じた場合における、主比較回路56の出力信号、第1の副比較回路57の出力信号、第2の副比較回路58の出力信号、選択回路62の出力信号(第1の衝突判定閾値VL_TH)のタイミングチャートである。なお、図7(b)では、初期状態において、第1の衝突判定閾値VL_THとしてハイ側衝突判定閾値VL_TH_Hiが選択されているものとする。
図7(a)に示すように、第1のケースでは、主速度変化VMが主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hiを越えてからロー側閾値VM_TH_Lowに到達する期間T1−T2において、第1の副速度変化VS1が副回路用閾値VS1_THを越えると共に、第2の副速度変化VS2も副回路用閾値VS2_THを越える場合を想定している。
ここで、車両100が歩行者と衝突した場合、衝突箇所の局所的な塑性変形が支配的となり、衝突箇所から離れた位置には衝突による振動及び弾性たわみが発生する。従って、衝突箇所に最も近い位置に設置されている加速度センサの出力変化(加速度変化)と、衝突箇所から離れた位置に設置されている加速度センサの出力変化には違いが生じる。具体的には、衝突箇所に最も近い位置に設置されている加速度センサの出力変化は大きく、衝突箇所から離れた位置に設置されている加速度センサの出力変化は小さくなる。一方、悪路走行時やABS作動時の振動では、車両前端部が同じように振動するため、3つの加速度センサ10L、10C、10Rの出力変化は同じ特徴を持つことになる。
すなわち、自己に対応する加速度センサ(この場合、加速度センサ10L)の出力信号の積分値(主速度変化VM)と、他の加速度センサ(この場合、加速度センサ10C、10R)の出力信号の積分値(第1の副速度変化VS1、第2の副速度変化VS2)との関連性に基づいて、加速度センサの出力変化要因が「歩行者との衝突」か、「悪路走行時やABS作動時の振動」かを判別することができる。
本実施形態では、主速度変化VMが主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hiを越えてからロー側閾値VM_TH_Lowに到達する期間において、第1の副速度変化VS1及び第2の副速度変化VS2がそれぞれ副回路用閾値VS1_TH、VS2_THを越えた場合は、加速度センサの出力変化要因を「悪路走行時やABS作動時の振動」と判別する一方、第1の副速度変化VS1及び第2の副速度変化VS2の少なくとも1つが副回路用閾値を越えなかった場合は、出力変化要因を「歩行者との衝突」と判別する。
すなわち、図7(a)に示すようなケースでは、加速度センサの出力変化要因を「悪路走行時やABS作動時の振動」と判別することができる。この時、図7(b)に示すように、主比較回路56の出力信号は、期間T1−T2においてハイレベルとなり、第1の副比較回路57の出力信号は、期間T1−T2において副回路用閾値VS1_THを越える区間でハイレベルとなり、同様に、第2の副比較回路58の出力信号は、期間T1−T2において副回路用閾値VS2_THを越える区間でハイレベルとなる。従って、AND回路60からハイレベル信号が出力され、選択回路62によって第1の衝突判定閾値VL_THとしてハイ側衝突判定閾値VL_TH_Hiが選択される。このように、加速度センサの出力変化要因が「悪路走行時やABS作動時の振動」と判別された場合は、歩行者との衝突を誤検知しないように比較的高い値の衝突判定閾値を選択する。
図8(a)は、主速度変化VMが主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hiを越えてからロー側閾値VM_TH_Lowに到達する期間T1−T2において、第1の副速度変化VS1は副回路用閾値VS1_THを越えるが、第2の副速度変化VS2は副回路用閾値VS2_THを越えない場合を想定した第2のケースである。
図8(a)に示すようなケースでは、加速度センサの出力変化要因を「歩行者との衝突」と判別することができる。この時、図8(b)に示すように、主比較回路56の出力信号は、期間T1−T2においてハイレベルとなり、第1の副比較回路57の出力信号は、期間T1−T2において副回路用閾値VS1_THを越える区間でハイレベルとなり、第2の副比較回路58の出力信号は、期間T1−T2においてローレベルとなる。従って、AND回路60からローレベル信号が出力され、選択回路62によって第1の衝突判定閾値VL_THとしてロー側衝突判定閾値VL_TH_Lowが選択される。このように、加速度センサの出力変化要因が「歩行者との衝突」と判別された場合は、歩行者との衝突を確実に検知するように比較的低い値の衝突判定閾値を選択する。
図9(a)は、主速度変化VMが主回路用ハイ側閾値VM_TH_Hiを越えてからロー側閾値VM_TH_Lowに到達する期間T1−T2において、第1の副速度変化VS1は副回路用閾値VS1_THを越えず、第2の副速度変化VS2も副回路用閾値VS2_THを越えない場合を想定した第3のケースである。
図9(a)に示すようなケースでは、加速度センサの出力変化要因を「歩行者との衝突」と判別することができる。この時、図9(b)に示すように、主比較回路56の出力信号は、期間T1−T2においてハイレベルとなり、第1の副比較回路57及び第2の副比較回路58の出力信号は、期間T1−T2においてローレベルとなる。従って、AND回路60からローレベル信号が出力され、選択回路62によって第1の衝突判定閾値VL_THとしてロー側衝突判定閾値VL_TH_Lowが選択される。
以上が図5のステップS3における衝突判定閾値選択処理の説明であり、以下では図5のステップS4以降の処理について説明する。なお、上述した衝突判定閾値選択処理は、第1の衝突判定閾値選択回路35Lだけでなく、第2の衝突判定閾値選択回路35C及び第3の衝突判定閾値選択回路35Rにおいても同様に行われている。
第1の積分回路33Lは、デジタル変換処理及びフィルタリング処理された加速度センサ10Lの出力信号の1次積分値(第1の速度変化VL)を、第1の遅延回路34Lを介して第1の比較回路36Lの非反転入力端子に出力する(ステップS4)。第2の積分回路33Cは、デジタル変換処理及びフィルタリング処理された加速度センサ10Cの出力信号の1次積分値(第2の速度変化VC)を、第2の遅延回路34Cを介して第2の比較回路36Cの非反転入力端子に出力する(ステップS5)。第3の積分回路33Rは、デジタル変換処理及びフィルタリング処理された加速度センサ10Rの出力信号の1次積分値(第3の速度変化VR)を、第3の遅延回路34Rを介して第3の比較回路36Rの非反転入力端子に出力する(ステップS6)。
なお、上記のステップS4〜S6の処理は並列的に行われるものである。
そして、第1の比較回路36Lは、第1の速度変化VLと第1の衝突判定閾値VL_THとを比較し(ステップS7)、VL>VL_THの場合(「Yes」)、歩行者と衝突したことを示すハイレベル信号を、第1のAND回路38Lを介して衝突判定回路39に出力する(ステップS8)。第2の比較回路36Cは、第2の速度変化VCと第2の衝突判定閾値VC_THとを比較し(ステップS9)、VC>VC_THの場合(「Yes」)、歩行者と衝突したことを示すハイレベル信号を、第2のAND回路38Cを介して衝突判定回路39に出力する(ステップS10)。第3の比較回路36Rは、第3の速度変化VRと第3の衝突判定閾値VR_THとを比較し(ステップS11)、VR>VR_THの場合(「Yes」)、歩行者と衝突したことを示すハイレベル信号を、第3のAND回路38Rを介して衝突判定回路39に出力する(ステップS12)。
なお、上記のステップS7〜S12の処理は並列的に行われるものである。
そして、衝突判定回路39は、少なくとも1つのハイレベル信号が入力された場合に、歩行者と衝突したと判定し、当該判定結果を示すハイレベル信号をエンジンフード制御装置40に出力する(ステップS13)。エンジンフード制御装置40は、衝突判定回路39からハイレベル信号が入力された場合、つまり歩行者と衝突したと判定された場合に、パワーユニット80を制御することによりエンジンフード130を持ち上げる(ステップS14)。
なお、ステップS7、S9、S11の全てにおいて、「No」の場合、つまり全ての速度変化が衝突判定閾値以下であった場合、ステップS1に戻り、引き続き歩行者との衝突を監視する。
以上のように、本実施形態に係る歩行者衝突検知装置を備えた歩行者保護システムによれば、車両100の走行状況に拘わらず歩行者との衝突を正確に検知することが可能であると共に、衝突時に確実に歩行者を保護することが可能である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、3つの加速度センサ10L、10C、10Rを車両前端部に設置した場合を例示して説明したが、加速度センサの個数はこれに限定されず、少なくとも加速度センサの出力信号の1次積分値(速度変化)同士の関連性がわかれば良いので、2つ以上の加速度センサを設置すれば良い。また、上記実施形態では、加速度センサ10L、10C、10Rの出力信号の1次積分値(速度変化)を用いた場合を例示して説明したが、2次積分値(変位量)を用いても良い。
(2)上記実施形態では、第1のセーフィング回路37L、第2のセーフィング回路37C、第3のセーフィング回路37Rを設けた場合を例示したが、これらのセーフィング回路は必ずしも設ける必要はない。これらのセーフィング回路を設けない場合は、第1のAND回路38L、第2のAND回路38C、第3のAND回路38Rを削除し、第1の比較回路36L、第2の比較回路36C、第3の比較回路36Rの出力を衝突判定回路39に直結すれば良い。
(3)上記実施形態では、フロントエンジンタイプの車両100を想定して説明したが、例えば、ミッドシップエンジンタイプ、リアエンジンタイプの車両の場合でも、車両前方部に設けたトランク上に開閉自在のフードを設置することが一般的であるため、本発明を適用することができる。
100…車両、110…フロントバンパ、120…前輪、130…エンジンフード、140…バンパビーム、150…セーフティプレート、10L、10C、10R…加速度センサ、20…車速センサ、30…ECU(Electronic Control Unit)、31L…第1のA/Dコンバータ、31C…第2のA/Dコンバータ、31R…第3のA/Dコンバータ、32L…第1のLPF(Low Pass Filter)、32C…第2のLPF、32R…第3のLPF、33L…第1の積分回路、33C…第2の積分回路、33R…第3の積分回路、34L…第1の遅延回路、34C…第2の遅延回路、34R…第3の遅延回路、35L…第1の衝突判定閾値選択回路、35C…第2の衝突判定閾値選択回路、35R…第3の衝突判定閾値選択回路、36L…第1の比較回路、36C…第2の比較回路、36R…第3の比較回路、37L…第1のセーフィング回路、37C…第2のセーフィング回路、37R…第3のセーフィング回路、38L…第1のAND回路、38C…第2のAND回路、38R…第3のAND回路、39…衝突判定回路、40…エンジンフード制御装置、80…パワーユニット