JP5102083B2 - 回転センサユニット - Google Patents

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Description

この発明は、軸の回転を磁気式エンコーダで検出する回転センサユニットに関する。
この種の回転センサユニットとして、転がり軸受の外輪が嵌合されるハウジングと、転がり軸受に支持される軸と、この軸の回転を検出する磁気式エンコーダとを備えたものが広く利用されている。磁気式エンコーダのエンコーダは、軸心回りの円周方向にS極とN極とが交互に並ぶ磁石とされている。エンコーダは、軸と同心で一体に回転するように配置されている。磁気式エンコーダの磁気検出素子は、上記エンコーダと軸方向に対向するように配置されている。エンコーダと磁気検出素子の軸方向の対向面積は、軸の一側端面よりずっと小さいものであり、それゆえ、検出精度を得るには、エンコーダの回転中心を安定させることが肝要である。
従来、軸の一側端面に穴部を形成し、その穴部の内周にエンコーダを嵌合することにより、エンコーダが軸と同心に位置決めされるようにした回転センサユニットがある。軸は、非磁性材からなり、その穴部に嵌合されたエンコーダから磁気検出素子に向かう磁束が軸に捕捉されないようになっている(特許文献1)。
特許第3086563号公報(段落0005、0012、0014、図1)
しかしながら、前掲の特許文献1の回転センサユニットは、軸にエンコーダを嵌合するための穴あけ作業が必要である。また、特許文献1の回転センサユニットは、軸を非磁性材にしなければならず、素材が限定される点で不便である。
上記の事情に鑑み、この発明は、軸にエンコーダを嵌合するための穴部を形成することなく、エンコーダを軸と同心に位置決めすることにある。
上記の課題を達成するため、この発明は、転がり軸受の外輪が嵌合されるハウジングと、前記転がり軸受に支持される軸と、この軸の回転を検出する磁気式エンコーダとを備え、前記磁気式エンコーダのエンコーダを、軸心回りの円周方向にS極とN極とが交互に並ぶ磁石とし、前記エンコーダを前記軸と同心で一体に回転するように配置し、前記磁気式エンコーダの磁気検出素子を、前記エンコーダと軸方向に対向するように配置した回転センサユニットにおいて、前記エンコーダをラジアル方向に位置決めするホルダを備え、前記転がり軸受の内輪を、その内径面の一端部が前記軸の外径面の一端から突き出るように嵌合し、前記ホルダを前記内径面の一端部に嵌合することにより前記エンコーダを前記軸と同心に位置決めした構成を採用する。
この発明の構成によれば、内輪の内径面の一端部が軸の外径面の一端から突き出るため、その内径面の一端部に、エンコーダを保持するホルダを嵌合し、そのホルダを介してエンコーダをラジアル方向に位置決めすることができる。軸に装着される内輪の内径面は、軸と同心にあると考えてよい。したがって、ホルダを上記嵌合で軸と同心に配置することができる。そのホルダによるエンコーダの保持位置は、上記のホルダ嵌合状態でエンコーダが軸と同心になるように予め設定することが可能であるから、ホルダを内輪の内径面の一端部に嵌合することによりエンコーダを軸と同心に位置決めことができる。
上述のように、この発明は、内輪の内径面の一端部を用いることにより、軸にエンコーダを嵌合するための穴部を形成することなく、エンコーダを軸と同心に位置決めすることができる。
以下、この発明の実施形態を説明する。
第1実施形態に係る回転センサユニットは、前記ホルダを非磁性材とした構成を有する。
エンコーダから磁気検出素子側に出る磁束は、非磁性材のホルダに捕捉されない。したがって、第1実施形態に係る回転センサユニットは、ホルダでエンコーダをラジアル方向に位置決めしても、エンコーダの磁界形成に対する影響を抑えることができる。
第2実施形態に係る回転センサユニットは、前記ホルダに、前記エンコーダを保持する保持部と前記内輪の内径面の一端部との間に位置するねじ止め部を設け、このねじ止め部を非磁性材とし、このねじ止め部と前記軸とを非磁性材のねじ部材で締結した構成を有する。
ホルダは、軸に固定することができる。この固定には、ねじ止めを採用することができる。このためのねじ止め部及びねじ部材は、エンコーダを保持する保持部と内輪の内径面の一端部との間に位置することになる。それらを非磁性材とすれば、エンコーダから磁気検出素子側に出る磁束がねじ止め部及びねじ部材に捕捉されない。したがって、第3実施形態に係る回転センサユニットは、ホルダを軸にねじ止めしても、エンコーダの磁界形成に対する影響を抑えることができる。
第3実施形態に係る回転センサユニットは、前記エンコーダを前記軸の一側端面より前記磁気検出素子側に固定した構成を有する。
エンコーダを軸の一側端面より磁気検出素子側に固定すれば、軸を磁性材にしても、エンコーダから磁気検出素子側に出る磁束が軸に捕捉されることを防止することができる。したがって、第3実施形態に係る回転センサユニットは、軸を非磁性材にする必要がなく、磁性材料を用いて軸を形成することができる。
第4実施形態に係る回転センサユニットは、前記ハウジングの一側面に開放する軸受組込み口を閉じる蓋を備え、この蓋の前記軸の一側端面に臨む部分に前記磁気検出素子を配置し、前記蓋を前記外輪に軸方向に押し付けて予圧を与え、前記蓋、前記軸、及び前記外輪を磁性材とし、前記蓋、前記軸の一側端面、及び前記外輪で形成された磁気シールド空間に前記磁気検出素子を配置した構成を有する。
転がり軸受に予圧を与えれば、その転がり軸受の剛性が高まり、軸振れが防止される。軸振れが防止された軸にエンコーダを同心で一体回転させるため、磁気検出素子とエンコーダとの相対的な位置ずれが防止される。さらに、蓋で外輪を押す予圧構造としたため、蓋と軸の一側端面との間の空間は、蓋と外輪とで取り囲まれている。したがって、蓋と軸と外輪とを磁性材で形成すれば、これらで外部磁界の磁束が直入することができない磁気シールド空間を形成することができる。蓋のうち軸の一側端面に臨む部分に磁気検出素子を配置すれば、その磁気シールド空間に磁気検出素子を配置することができる。したがって、第4実施形態に係る回転センサユニットは、専用の磁気シールドカバーやハウジングに頼ることなく磁気検出素子を外部磁界から遮蔽することができ、ひいては回転センサユニットの部品数の抑制や小型化を図ることができる。
第5実施形態に係る回転センサユニットは、前記ホルダを合成樹脂で形成し、前記エンコーダを、前記保持部の内径面に圧入することで保持させ、前記エンコーダの外径面に、前記圧入により前記保持部の内径面に食い込んで該エンコーダを前記ホルダに対して回り止めする凹凸を形成した構成を有する。
前記ホルダに、前記エンコーダを軸方向に嵌めることによりラジアル方向に位置決めする保持部を設ければ、エンコーダを、保持部の内径面に圧入することで保持させることができる。この保持部を非磁性材とするとき、保持部を合成樹脂で形成することができる。合成樹脂製の保持部とすれば、一体射出成形によるホルダの製造が可能な利点がある。その代わり、エンコーダが圧入される保持部は、合成樹脂のクリープにより、時間の経過と共に保持部とエンコーダ間のしめしろが減少する。磁気式エンコーダにおいては、軸とエンコーダの一体回転性が求められるため、上記クリープ対策として、エンコーダを保持部に接着することが考えられる。この接着の代わりに、エンコーダの外径面に、前記圧入により保持部の内径面に食い込んでエンコーダをホルダに対して回り止めする凹凸を形成すれば、エンコーダを圧入するのと同時に、エンコーダの凹凸により回り止めが得られる。したがって、第5実施形態に係る回転センサユニットは、合成樹脂製の保持部にエンコーダを圧入で保持させながら、その圧入を利用してクリープによる回り止めを得ることができるので、接着剤を塗布する場合と比して容易に組み立てることができる。
第6実施形態に係る回転センサユニットは、前記凹凸を軸心に関して360度回転対称に形成した構成を有する。
第6実施形態に係る回転センサユニットは、凹凸を軸心に関して360度回転対称に形成したため、エンコーダからラジアル方向に出る磁束分布も同じく360度回転対称に形成することができ、凹凸の形成による検出精度への影響を避けることができる。
第7実施形態に係る回転センサユニットは、前記エンコーダを一体射出成形されたプラスチック磁石とした構成を有する。
第7実施形態に係る回転センサユニットは、前記凹凸をエンコーダの成形と同時に形成されるので、凹凸を後加工で形成する必要がない。
以下、この発明の実施例1に係る回転センサユニット(以下、単に「実施例1」と称する)を図1に基づいて説明する。
図1は、実施例1の全体構成をアキシヤル平面の切断面で示している。
図示のように、実施例1は、転がり軸受1の外輪11が嵌合されるハウジング2と、転がり軸受1に支持される軸3と、この軸3の回転を検出する磁気式エンコーダ4とを備えている。
ハウジング2と軸3との間に、転がり軸受1と共に組み合せ軸受を構成する他の転がり軸受5が組み込まれている。転がり軸受1、5は、それぞれシール付きの玉軸受とされている。
ハウジング2は、外周に取付フランジ21を有しており、回転センサユニットを組み立てた状態で他の機器のハウジングにねじ止めすることが可能になっている。
実施例1は、別途、保護カバーで外力から保護するか、ハウジング2が外力で破壊される心配がない使用条件を前提としている。このため、ハウジング2は、強度よりも軽量化、成形容易性を考慮し、樹脂射出成形により形成されている。なお、ハウジング2は、アルミニウムで形成することもできる。
軸3と、転がり軸受1の外輪11、内輪12及び両輪11、12間に介在する転動体13とは、軟磁性材で形成されている。これらの磁性材としては、鉄系の軟磁性材を用いることができ、軸3等の磁石化を避けるため、常磁性材がよい。
転がり軸受1の各シール14は、外輪11のシール溝に圧入嵌合する取付端から先端に亘ってシールド板部を有している。各シール14のシールド板部は、軟磁性材で形成されている。このため、外部磁界の磁束は、各シール14のシールド板部を通過することができない。各シール14のシールド板部の素材としては、例えば、軟磁性ステンレス鋼板を使用することができる。
ハウジング2の一側面に形成された軸受組込み口は、ハウジング2の一側端に軸方向に押し付ける蓋6で覆われている。蓋6の他側面に、ハウジング2の一側端及び外輪11の一側面に押し付ける外周部61と、軸3の一側端面及び内輪12と対向する領域を前記外周部61より軸方向一方側に凹ました逃げ部62とが形成されている。蓋6は、その外周部61をハウジング2に対してボルト7で締結することで固定される。この固定状態で、蓋6の逃げ部62が軸3の一側端面に軸方向に臨むようになっており、蓋6と軸3の一側面との間に、磁気式エンコーダ4を配置するための空間が確保されている。
蓋6は、上記の使用条件から強度よりも加工性を考慮し、冷間圧延鋼板で形成されている。なお、蓋6は、一般構造用圧延鋼材で形成することもできる。
内輪12は、その内径面の一端部が軸3の外径面の一端から突き出るように嵌合されている。これに伴い、内輪12と同幅に形成された外輪11も軸3の外径面の一端から突き出る位置になっている。蓋6の外周部61をハウジング2の一側端にボルト7で押し付けると、転がり軸受1の外輪12の一側面全周が蓋6の外周部61により軸方向他方側に押される。その結果、ハウジング2の肩22、軸3の間座部4a、蓋6で転がり軸受1、5に定位置予圧が与えられる。これにより、転がり軸受1、5の剛性が高まり、軸3の軸振れが防止されている。転がり軸受1は、予圧を与えて使用するものであれば、その構成を特に限定されない。
軸3の他側端面は、ハウジング2の他側面に形成された軸通口から露出しており、外部機器の軸に接続することが可能である。
なお、蓋6の外周部61とハウジング2との間はパッキン8で密封されている。ハウジング2の軸通口と軸3との間は、オイルシール9a、スリンガ9bで密封されている。
磁気式エンコーダ4は、磁気検出素子41と、エンコーダ42と、磁気検出素子41が実装された回路基板43とを有している。磁気式エンコーダ4としては、軸3の回転角、回転位置、回転速度、回転数等を測定するための周知のものを利用することができる。エンコーダ42は、軸3と同心で一体に回転するように配置される。磁気検出素子41の感磁面は、エンコーダ42と軸方向に対向するように配置される。
具体的には、磁気検出素子41として、90°の位相差をもって生じる2相の磁束変化を検出し、演算処理により回転角を求めるものが利用されている。
また、エンコーダ42は、軸心回りの円周方向(以下、単に「円周方向」と称する。)にS極とN極とが交互に並ぶ磁石とされている。エンコーダ42は、全体が磁石からなり、1のS極が半周を占め、1のN極が残り半周を占めるように形成されている。なお、エンコーダ42は、軸3の回転に関する所定の物理量を所望の精度で符号化するものであればよく、例えば、複数のS極とN極を有する多極磁石を採用することもできる。
磁気検出素子41は、回路基板43を蓋6の逃げ部62の底部に固定することにより、蓋6に支持させられている。蓋6の逃げ部62は、回路基板43の板面をラジアル平面で支持するようになっている。磁気検出素子41を軸方向に向けるためである。なお、回路基板43は、蓋6の逃げ部62にねじ止めされ、回路基板43と蓋6との間が絶縁されている。
実施例1は、エンコーダ42をラジアル方向に位置決めするホルダ50を備えている。
ホルダ50は、合成樹脂の一体射出成形で形成することにより、全体が非磁性材とされている。
ホルダ50は、エンコーダ42を軸方向に嵌めることによりラジアル方向に位置決めする保持部51と、保持部51と内輪12の内径面の一端部との間に位置するねじ止め部52とからなる。
保持部51は、エンコーダ42の外周に嵌合する筒状になっており、一側面にエンコーダ42を一側面側に抜け止めする内鍔が形成されている。保持部51は、エンコーダ42の磁極が磁気検出素子41の感磁面に対して開放するように形成されている。このため、磁気検出素子41とエンコーダ42間に保持部51が存在せず、これらの間を所望の軸方向のエアギャップに設定することや、これらの間におけるコンパクト化が可能になっている。保持部51は、他側面にエンコーダ42の入れ口が開放されている。エンコーダ42は、接着により保持部51に回り止めされている。
ねじ止め部52は、保持部51から外径側に突き出た円板状に形成されている。ねじ止め部52の外径は、内輪12の内径面の一端部に嵌合される。ねじ止め部52を前記内径面の一端部に嵌合すると、エンコーダ42が軸3と同心に位置決めされる。このとき、軸3の一側端面にエンコーダ42、ホルダ50が合さる。エンコーダ42の他側面側への位置決めは、軸3の一側端面で行われる。エンコーダ42、ホルダ50は、全体として、上記の嵌合状態で軸3の軸心と同心になる形状中心を有しており、上記の嵌合によりエンコーダ42を軸3と同心に位置決めすることができる。
上記のように、実施例1は、軸3にエンコーダ42を嵌合するための穴部を形成することなく、エンコーダ42を軸3と同心に位置決めすることができる。
なお、ねじ止め部52は、円板状に限定されず、上記位置決めが可能な限り適宜の形状にすることができ、例えば、保持部51から円周方向等配で複数の円弧部を突き出すように設けたり、切欠きや肉抜きを形成したりすることができる。
上記の嵌合状態で、ねじ止め部52をねじ部材53、53で軸3の一側端面にねじ締結すると、ホルダ50が軸3に固定される。この固定状態で、エンコーダ42は、軸3の一側端面より磁気検出素子41側にある。このため、軸3を磁性材にしても、エンコーダ42から磁気検出素子側に出る磁束が軸3に捕捉されることを防止することができる。
なお、軸3の一側端面は、形状単純化のため、ラジアル平面に形成されているが、エンコーダ42の位置決め以外の目的で凹部等を形成することは許される。軸3の一側端面をラジアル平面とすれば、内輪12の内径面の一端部を軸3の外径面の一端から突き出した状態で、軸3、内輪12に凹部を形成することなく、エンコーダ42と前記内径面の一端部との間のラジアル方向空間を最大限に広げることができる。このため、ねじ止め部52、ねじ部材53、53の配置空間を軸3と蓋6との間に最も効率よく得ることができる。
保持部51は、非磁性材とされているため、エンコーダ42から磁気検出素子41側に出る磁束は保持部51に捕捉されない。
また、ねじ部材53、53は、非磁性材とされている。エンコーダ42から磁気検出素子41側に出る磁束は、非磁性材のねじ止め部52及びねじ部材53、53に捕捉されない。
上記のようにエンコーダ42を軸3に固定し、回路基板43が固定された蓋6をハウジング2の一側端にボルト7で押し付けると、磁気検出素子41の第1相用の磁気検出素子と第2相用の磁気検出素子とが90°の位相差をもってエンコーダ42の着磁面と対向した位置関係に固定される。すなわち、軸振れが防止された軸3にエンコーダ42が配置され、ハウジング2に押し付けられる蓋6に磁気検出素子41が配置される。このため、磁気検出素子41とエンコーダ42の相対的な位置ずれが防止される。
回路基板43の配線44は、逃げ部62に穿たれた貫通孔63から外部に取り出されている。この貫通孔63は、充填材で塞がれる。充填材は、回路基板43の絶縁の都合上、磁性材にすることはできない。絶縁性を有する充填材を先に充填した後、磁性粉を混入した充填材を積層することで貫通孔63に磁気シールドを設けることもできる。
上記蓋6の押し付けにより転がり軸受1、5に予圧を与えると、蓋6の外周部61と外輪11の一側面との接触は、全周に亘って維持される。蓋6の逃げ部62と軸3の一側端面との間に形成された空間は、蓋6の外周部61と外輪11とで取り囲まれており、外部磁界の磁束が蓋6の貫通孔63から直入する領域を除き、磁気シールド空間となっている。その磁気シールド空間に、磁気検出素子41が配置されている。このように、実施例1は、予圧付与に必要な蓋6、回転センサユニットに必須の軸3及び外輪11を利用して上記磁気シールド空間を形成したため、専用の磁気シールドカバーやハウジング2に頼ることなく、磁気検出素子41を外部磁界から遮蔽することができる。
なお、転がり軸受1に対して軸方向他方側から接近する外部磁界の磁束は、ラジアル平面に対して軸方向他方側に傾斜角をもって内外輪11、12間の環状空間に入ることができる。内輪12等が非磁性材だと、これらを通過して軸3の一側端面と蓋6との間の空間に直入する可能性が高くなる。外輪幅を大きくすれば、これを防止することはできるが、外輪幅を大きくすると重くなるから好ましくない。内輪12やシール14のシールド板を磁性材とすれば、転がり軸受1に対して軸方向他方側から接近する外部磁界の磁束は、内輪12やシール14のシールド板部でも捕捉される。仮に、シール14と内輪12間の僅かなシールすき間から転がり軸受1の内部空間に入ったとしても、磁性材で形成されたシールすき間が内輪12の肩に臨むため、内輪12に捕捉される。したがって、外部磁界の磁束は、転がり軸受1を抜けて蓋6と軸3の一側端面との間の空間に直入することができず、磁気シールド空間を広く得易い。
さらに、内輪12と共に転動体13を磁性材で形成すれば、転動体13に捕捉された磁束は、転がり軸受1への予圧により転動体13と内外輪11、12の接触が確保されているため、内外輪11、12に迂回させられる。このように、内輪12と転動体13とを磁性材で形成すれば、外部磁界の磁束は、内輪12等でも捕捉されるので、転がり軸受1を通過して蓋6と軸3の一側端面間に直入し難くなり、磁気シールド空間をより広く得易く、標準的な内輪12等をそのまま使用することもできる。
なお、シール14を省略した場合、又はシール14のシールド板部を磁性材としない場合でも、内輪12及び転動体13を磁性材で形成しておけば、外部磁界の磁束は、ラジアル平面に対して軸方向他方側に傾斜角をもって内外輪11、12間の環状空間に入ったとしても、公転する転動体13や内輪12に捕捉されるため、蓋6と軸3の一側端面との間の空間に直入することができない。内外輪11、12間を軸方向に抜ける外部磁界の磁束は、公転する転動体13間をすり抜けることがあり得るが、そのまま蓋6に入るため、蓋6と軸3の一側端面との間の空間に直入することはない。
ハウジング2を軟磁性材で形成する場合でも、ハウジング2に内外を貫く多数の肉抜き孔を形成して軽量化を図ることができる。どのような配置で肉抜き孔を形成しても、蓋6、軸3及び外輪11で磁気シールド空間が得られるためである。
軸3、蓋6、外輪11、内輪12、及び転動体13を形成する各磁性材は、統一する必要なく、これらの機能上、適宜に異なる物性の磁性材を採用することができる。磁性材としては、例えば、鉄、ケイ素鋼、パーマロイ、センダスト、パーメンジュール、ソフトフェライトの中から採用することができる。
上記のように、実施例1は、ハウジング2に頼らずとも磁気シールド空間を形成することができるため、ハウジング2が磁性材又は非磁性材のいずれであるか、ハウジング2が密閉又は開放部を有する構成であるかを問わずに適用することができる。
特に、ハウジング2を樹脂又はアルミニウムで形成すれば、ハウジング2の軽量化を図ることができる。ここで、アルミニウムは、アルミニウム合金を含む意味である。一般にハウジング2と蓋6とは同じ素材で形成されているが、磁性材は、樹脂やアルミニウムより重い。ハウジング2を樹脂又はアルミニウムで形成しながら、敢えて蓋6を磁性材で形成することにより、上記磁気シールド空間の形成と回転センサユニットの軽量化とを両立させることができる。
ハウジング2を樹脂又はアルミニウムで形成することができるのは、ハウジング2に大きな外力が作用する心配がない場合であり、そのような場合、蓋6を形成する磁性材として、強度に優れた高炭素鋼材を用いる必要はない。したがって、蓋6を形成する前記磁性材として、冷間圧延鋼板又は一般構造用圧延鋼材を用いることができ、これにより、蓋6の加工性を高めることができる。
外輪11の一側面を蓋6で軸方向に押して予圧を与える構成としては、蓋6と外輪11の一側面との間に介在する無端環状のスペーサを介して予圧を与える構成を採用することもできる。蓋6で外輪11の一側面を直接に押す場合、蓋6の他側面と軸3の一側端面とを平行に形成すると、蓋6と軸3の一側面との間で空間を得るのに限界があり、前記磁気シールド空間を十分な広さで形成することが困難である。この場合、蓋6の他側面および軸3の一側面の少なくとも一方に、逃げ部62のような両面間の対向間隔を拡げる凹みを形成し、蓋6と軸3の一側面との間の空間を拡げることができる。一方、蓋6の他側面や軸3の一側端面に凹みを形成する手間を避けたい場合、外輪11の一側面と蓋6との間にスペーサリングを介在させ、そのスペーサリングを磁性材で形成すればよい。蓋6の他側面と軸3の一側面との間をスペーサリングで離し、上記の空間を拡げることができる。このため、蓋6の他側面や軸3の一側端面を単純な平面に形成することができ、加工が簡単になる。
その一例として、この発明の実施例2に係る回転センサユニット(以下、単に「実施例2」と称する。)を図2に基づいて説明する。なお、以下では、上記実施例1との相違点を中心に述べ、同一に考えられる構成の説明を省略する。
実施例2のエンコーダ42’は、保持部51の内径面に圧入することで保持させられている。エンコーダ42’の外径面に、前記圧入により保持部51の内径面に食い込んで該エンコーダ42’を保持部51に対して回り止めする凹凸が形成されている。エンコーダ42’の外径面に凹凸を形成すれば、エンコーダ42’を圧入するのと同時に、エンコーダ42’の凹凸により回り止めが得られる。したがって、実施例2は、合成樹脂製の保持部51にエンコーダ42’を圧入で保持させながら、その圧入を利用してクリープによる回り止めを得ることができるので、接着剤を塗布する実施例1と比して容易に組み立てることができる。なお、実施例2の凹凸に係る構成を実施例1に適用することも勿論可能である。
上記凹凸は、ローレット様に形勢されており、軸心に関して360度回転対称に形成されている。実施例2は、凹凸を軸心に関して360度回転対称に形成したため、エンコーダからラジアル方向に出る磁束分布も同じく360度回転対称に形成することができ、凹凸の形成による検出精度への影響を避けることができる。なお、凹凸はローレット様に限定されず、上記回り止め目的や、上記磁界の等分布性等を考慮して、例えば、編目模様のように適宜の形態にすることができる。
エンコーダ42’は、一体射出成形されたプラスチック磁石とされている。実施例2は、前記凹凸をエンコーダ42’の成形と同時に形成されるので、凹凸を後加工で形成する必要がない。なお、プラスチック磁石は、磁石粉をプラスチックのバインダーに練り込んだプラスチックマグネットを所望の形に射出成形される。
また、実施例2は、蓋6’の他側面を単一のラジアル平面に形成することにより、蓋6’の形状加工を容易にしたものである。
蓋6’の他側面と外輪11の一側面との間に、スペーサリング10が介在させられている。スペーサリング10は、無端環状とされ、ハウジング2の内周に嵌合する外周を有している。スペーサリング10の他側面は、外輪11の一側面全周に亘って軸方向に突き当てられ、スペーサリング10の一側面全周に亘って蓋6’の他側面が軸方向に突き当てられる。これにより、軸3の一側端面及び蓋6’の他側面をラジアル平面に形成しながらも、磁気検出素子41等の配置空間が確保されている。
蓋6’のハウジング2への押し付けにより、スペーサリング10が押し込まれ、外輪11がスペーサリング10を介して蓋6’に押されることにより、転がり軸受1、5に定位置予圧が与えられる。この状態で、スペーサリング10は、蓋6’と軸3の一側端面との間の空間を取り囲む。スペーサリング10は、軟磁性材で形成されている。このため、実施例2は、蓋6’の加工を容易にしながらも、上記磁気シールド空間を蓋6’、軸3、スペーサリング10等で形成することができる。スペーサリング10は転がり軸受1等の予圧付与に必要なものである。したがって、実施例2も、専用の磁気シールドカバーやハウジング2に頼ることなく、磁気検出素子41を外部磁界から遮蔽することができる。
実施例1の全体構成を示す断面図 aは実施例2の全体構成を示す断面図、bはaのホルダの分解斜視図
符号の説明
1、5 転がり軸受
2 ハウジング
3 軸
4 磁気式エンコーダ
6、6’ 蓋
7 ボルト
8 パッキン
9a オイルシール
9b スリンガ
10 スペーサリング
11 外輪
12 内輪
13 転動体
14 シール
21 取付フランジ
22 肩
41 磁気検出素子
42、42’ エンコーダ
43 回路基板
50 ホルダ
51 保持部
52 ねじ止め部
53 ねじ部材
61 外周部
62 逃げ部
63 貫通孔

Claims (6)

  1. 転がり軸受の外輪が嵌合されるハウジングと、前記転がり軸受に支持される軸と、この軸の回転を検出する磁気式エンコーダとを備え、前記磁気式エンコーダのエンコーダを、軸心回りの円周方向にS極とN極とが交互に並ぶ磁石とし、前記エンコーダを前記軸と同心で一体に回転するように配置し、前記磁気式エンコーダの磁気検出素子を、前記エンコーダと軸方向に対向するように配置した回転センサユニットにおいて、前記エンコーダをラジアル方向に位置決めするホルダを備え、前記転がり軸受の内輪を、その内径面の一端部が前記軸の外径面の一端から突き出るように嵌合し、前記ホルダを前記内径面の一端部に嵌合することにより前記エンコーダを前記軸と同心に位置決めし
    前記ホルダを非磁性材とし、
    前記ハウジングを非磁性材で形成し、
    前記ハウジングの一側面に開放する軸受組込み口を閉じる蓋を備え、前記蓋を前記外輪、又は前記外輪と当該蓋間に介在する無端環状の磁性材製スペーサリングに軸方向に押し付けて予圧を与え、前記磁気検出素子を、前記蓋のうち前記軸の一側端面に臨む部分に配置し、前記蓋、前記軸、及び前記外輪を磁性材とし、前記蓋、前記軸の一側端面、及び前記外輪で形成された磁気シールド空間に前記磁気検出素子を配置し、
    前記内輪及びこの内輪と前記外輪間に介在する転動体を、磁性材で形成したことを特徴とする回転センサユニット。
  2. 前記ホルダに、前記エンコーダを保持する保持部と前記内輪の内径面の一端部との間に位置するねじ止め部を設け、このねじ止め部と前記軸とを、非磁性材のねじ部材で締結したことを特徴とする請求項に記載の回転センサユニット。
  3. 前記エンコーダを、前記軸の一側端面より前記磁気検出素子側に固定したことを特徴とする請求項又はに記載の回転センサユニット。
  4. 転がり軸受の外輪が嵌合されるハウジングと、前記転がり軸受に支持される軸と、この軸の回転を検出する磁気式エンコーダとを備え、前記磁気式エンコーダのエンコーダを、軸心回りの円周方向にS極とN極とが交互に並ぶ磁石とし、前記エンコーダを前記軸と同心で一体に回転するように配置し、前記磁気式エンコーダの磁気検出素子を、前記エンコーダと軸方向に対向するように配置した回転センサユニットにおいて、前記エンコーダをラジアル方向に位置決めするホルダを備え、前記転がり軸受の内輪を、その内径面の一端部が前記軸の外径面の一端から突き出るように嵌合し、前記ホルダを前記内径面の一端部に嵌合することにより前記エンコーダを前記軸と同心に位置決めし
    前記ホルダを非磁性材とし
    前記ホルダを合成樹脂で形成し、前記エンコーダを、前記ホルダの保持部の内径面に圧入することで保持させ、前記エンコーダの外径面に、前記圧入により前記保持部の内径面に食い込んで該エンコーダを前記ホルダに対して回り止めする凹凸を形成したことを特徴とする回転センサユニット。
  5. 前記凹凸を、軸心に関して360度回転対称に形成したことを特徴とする請求項に記載の回転センサユニット。
  6. 前記エンコーダを一体射出成形されたプラスチック磁石としたことを特徴とする請求項又はに記載の回転センサユニット。
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