JP5101833B2 - エンジン点火部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、スパークプラグ、グロープラグなどのエンジン点火部材の製造方法に関する。
自動車用などの内燃機関には、点火のためのエンジン点火部材が用いられる。例えば、ガソリンエンジンの点火には、スパークプラグが用いられる。また、ディーゼルエンジンには、点火補助のためにグロープラグが用いられる。
このうちスパークプラグは、一般に、中心電極の外側に絶縁体が、さらにその外側に主体金具が設けられ、中心電極との間に火花放電ギャップを形成する接地電極がその主体金具に取り付けられた構造を有する。そして、主体金具の外周面に形成された取付ねじ部により、ガスケットを介してエンジンのシリンダヘッドに取り付けて使用される。
また、グロープラグは、一般に、外周面に取付用のネジ部が形成された主体金具の内側に、この主体金具の一方端から発熱部が突出する形態で抵抗発熱ヒータを配置した構造を有する。そして、主体金具のネジ部により、エンジンのシリンダヘッドに取り付けて使用される。
ところで、これらスパークプラグ及びグロープラグの主体金具、ガスケット、ナット等は、一般に、炭素鋼等の鉄系材料で構成し、防食のため、その表面に亜鉛メッキを施すことが多い。亜鉛メッキ層は鉄基材に対しては優れた防食効果を有するが、よく知られている通り、鉄基材上の亜鉛メッキ層は、犠牲腐食により消耗しやすく、また、生じた酸化亜鉛により白く変色して外観も損なわれ易い欠点がある。そこで多くのエンジン点火部材(スパークプラグ、グロープラグ)では、その主体金具やガスケット等に形成した亜鉛メッキ層の表面をさらにクロメート被膜で覆い、亜鉛メッキ層の腐食を防止している。
ところで、エンジン点火部材の主体金具やガスケット等に施されるクロメート被膜としては、従来より、いわゆる黄色クロメート被膜が用いられてきた。この黄色クロメート被膜は、防食性能が良好であるため、例えば缶詰内面被覆等をはじめ、エンジン点火部材以外の分野においても広く使用されてきたものである。
しかしながら、この黄色クロメート被膜には、クロム成分の一部に六価クロムが含まれているため、環境保護の観点から次第に敬遠されている。スパークプラグやグロープラグが使用される自動車業界においては、廃棄されたスパークプラグやグロープラグによる環境への影響を考慮して、六価クロムを含有するクロメート被膜の使用の全廃も検討されている。また、黄色クロメート被膜処理の処理液は、比較的高濃度の六価クロムを含有するものが使用されるため、廃液処理に多大なコストがかかる難点がある。
こうした流れを受けて、特許文献1,2には、実質的に六価クロムを含有しないクロメート被膜、すなわちクロム成分の実質的に全てが三価クロムの形で含有されている被膜(亜鉛メッキ三価クロメート被膜)を有する主体金具を用いたスパークプラグあるいはグロープラグが開示されている。
特開2000−252042号公報 特開2000−249340号公報
ところで、主体金具やガスケットに亜鉛メッキ三価クロメート被膜を形成する処理を繰り返すと、処理液中には、不純物が混入蓄積する。具体的には、亜鉛メッキ層から溶出した亜鉛(Zn)が混入する。また、主体金具やガスケットのうち、亜鉛メッキが十分なされていない部分からは、鋼材に起因する鉄(Fe)が混入する。また、電気メッキの際に用いる黄銅性の導電体や銅製リード線から銅(Cu)が溶出することもある。
しかるに、このような処理液中の不純物の量、具体的には、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、銅(Cu)の量によっては、亜鉛メッキ三価クロメート被膜に、その不純物が移行し、その外観上、シミ、色むら、変色が発生やすくなること、また、耐食性が低下して、白錆が生じやすくなることが判明した。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、亜鉛メッキ三価クロメート被膜を有する鋼材からなる金属部材を備えるエンジン点火部材の製造方法であって、亜鉛メッキ三価クロメート被膜の外観低下、及び、耐食性低下を抑制したエンジン点火部材の製造方法を提供することを目的とする。
ところで、亜鉛メッキ三価クロメート処理による亜鉛メッキ三価クロメート被膜を有する鋼材からなる金属部材を備えるエンジン点火部材であって、上記金属部材の上記亜鉛メッキ三価クロメート被膜に含まれる、Feが40mg/m2以下で、かつ、Cuが5mg/m2以下であるエンジン点火部材とするのが好ましい
このエンジン点火部材では、亜鉛メッキ三価クロメート被膜に含まれるFe及びCuの量を低く抑えている。このため、シミ、色むら、変色による外観低下、及び、耐食性低下(白錆発生)を適切に抑制することができる。
なお、エンジン点火部材は、内燃機関等のエンジンを点火に用いる部材であり、具体的には、スパークプラグ、及び、グロープラグが挙げられる。
また、金属部材としては、スパークプラグやグロープラグの主体金具のほか、スパークプラグの主体金具とシリンダヘッドとの間に介在して気密を保持するためのガスケット、プラグキャップ等との通電のために用いられる端子金具、ナットなどが挙げられる。
また、亜鉛メッキ三価クロメート被膜に含まれるFeの量、及びCuの量は、この亜鉛メッキ三価クロメート被膜を溶解させ、この溶液を、例えばICP発光分析法により分析して、Feの量、及びCuの量を特定することにより得られる。
但し、亜鉛メッキ三価クロメート被膜を溶解させるのに、酸を用いる場合には、鋼材からFe等の母材成分が溶出する可能性がある。そこで、金属部材に亜鉛メッキ三価クロメート処理を行うのと同時に、厚い亜鉛メッキを施した銅板あるいは鉄板、亜鉛メッキを施した亜鉛板などに同時に亜鉛メッキ三価クロメート処理を施したサンプルを用意し、このサンプルの亜鉛メッキ三価クロメート被膜を溶解させて、測定すると良い。あるいは、鋼材を溶解しないNaOHなどのアルカリを用いて、金属部材の亜鉛メッキ三価クロメート被膜を溶解させて、測定することもできる。あるいは、厚い亜鉛メッキを施した銅板あるいは亜鉛板に、同時に亜鉛メッキ三価クロメート処理を施したサンプルを用意し、このサンプルの亜鉛メッキ三価クロメート被膜を、NaOH等のアルカリを用いて溶解させて測定することもできる。
そして、その解決手段は、亜鉛メッキ三価クロメート処理による亜鉛メッキ三価クロメート被膜を有する鋼材からなる金属部材を備えるエンジン点火部材の製造方法であって、上記亜鉛メッキ三価クロメート処理に用いる処理液を、この処理液のCu濃度を10ppm以下に管理した状態で、上記金属部材の上記亜鉛メッキ三価クロメート処理を行う処理工程を備えるエンジン点火部材の製造方法である。
本発明のエンジン点火部材の製造方法は、処理液のCu濃度を所定値以下に管理した状態で、金属部材の亜鉛メッキ三価クロメート処理を行う処理工程を備える。このため、多数の金属部材について亜鉛メッキ三価クロメート処理を行った場合でも、いずれの金属部材についても、シミ、色むら、変色による外観低下、及び、耐食性低下(白錆発生)を抑制することができ、このような金属部材を備えるエンジン点火部材を製造することができる。
上述のエンジン点火部材の製造方法であって、前記処理工程は、前記処理液のFe濃度を50ppm以下に管理した状態で、前記金属部材の前記亜鉛メッキ三価クロメート処理を行うエンジン点火部材の製造方法とすると良い。
本発明のエンジン点火部材の製造方法では、さらに処理液のFe濃度をも所定値以下に管理した状態で、金属部材の亜鉛メッキ三価クロメート処理を行う処理工程を備える。このため、多数の金属部材について亜鉛メッキ三価クロメート処理を行った場合でも、いずれの金属部材についても、シミ、色むら、変色による外観低下、及び、耐食性低下(白錆発生)を抑制することができ、このような金属部材を備えるエンジン点火部材を製造することができる。
さらに上述のエンジン点火部材の製造方法であって、前記処理工程は、前記処理液のZn濃度を20000ppm以下に管理した状態で、前記金属部材の前記亜鉛メッキ三価クロメート処理を行うエンジン点火部材の製造方法とするのが好ましい。
このエンジン点火部材の製造方法では、さらにZn濃度をも所定値以下に管理した状態で、金属部材の亜鉛メッキ三価クロメート処理を行う処理工程を備える。このため、多数の金属部材について亜鉛メッキ三価クロメート処理を行った場合でも、いずれの金属部材についても、外観低下及び耐食性低下を、さらに、抑制することができ、このような金属部材を備えるエンジン点火部材を製造することができる。
さらに、上述のエンジン点火部材の製造方法であって、前記処理工程は、前記処理液中に含まれる、Fe濃度を30ppm以下に管理した状態で、前記金属部材の前記亜鉛メッキ三価クロメート処理を行うエンジン点火部材の製造方法とするのが好ましい。
このエンジン点火部材の製造方法では、さらにFe濃度を30ppm以下に管理した状態で、金属部材の亜鉛メッキ三価クロメート処理を行う処理工程を備える。このため、多数の金属部材について亜鉛メッキ三価クロメート処理を行った場合でも、いずれの金属部材についても、外観低下及び耐食性低下を、特に抑制した金属部材とすることができ、このような金属部材を備えるエンジン点火部材を製造することができる。
(実施形態1)
本発明の第1の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本実施形態1にかかるスパークプラグ100の縦半断面図である。このスパークプラグ100は、筒状の主体金具1、この主体金具1から自身の先端部2aを先端側(図中下方)に突出させて、この主体金具1内に嵌め込まれた絶縁体2、この絶縁体2の先端部2aから先端部3aを突出させて、絶縁体2の内側に配置された中心電極3、及び、主体金具1に一端(図中、上端)が結合され、他端側が中心電極3と対向するように配置された接地電極4を備えている。この接地電極4と中心電極3との間には火花放電ギャップgが形成されている。なお、この接地電極4として、銅材をNi−Cr−Fe合金(例えばインコネル(商標名))でクラッドしたクラッド材を用いることがある。
絶縁体2は、アルミナ質のセラミック焼結体により構成され、その内部には自身の軸線に沿って中心電極3を嵌め込むための貫通孔2Hを有している。貫通孔2Hの一方の端部側(図中、上方)には端子金具13が挿入・固定される一方、他方の端部側には中心電極3が挿入・固定されている。また、貫通孔6内において、端子金具13と中心電極3との間には、抵抗体15が配置されている。この抵抗体15の両端部分は、導電性ガラスシール層16,17を介して中心電極3あるいは端子金具13に、それぞれ電気的に接続されている。
主体金具1は、炭素鋼等の鋼材からなり、概略、円筒状を有しており、スパークプラグ100のハウジングを構成している。この主体金具1の外周面には、スパークプラグ100を図示しないエンジンブロックに取り付けるためのネジ部1bが形成されている。また、スパークプラグ100を取り付ける際に、スパナやレンチ等の工具を係合させる、六角形状の工具係合部1eを有している。一方、絶縁体2のフランジ状の突出部2eよりも基端側(図中、上方)において、主体金具1の内周面と、絶縁体2の外周面との間に、突出部2eに係合するリング状の線パッキン62が配置され、そのさらに基端側にはタルク等の充填層61を介してリング状のパッキン60が配置されている。そして、絶縁体2を主体金具1内に挿入して先端側(図中、下方)に押し込み、その状態で主体金具1の基端側の開口縁をパッキン60に向けて内側に加締めることにより加締め部1dが形成され、主体金具1が絶縁体2に対して固定されている。
また、主体金具1のネジ部1bの基端部分には、ガスケット30がはめ込まれている。このガスケット30は、炭素鋼等の鋼板を曲げ加工したリング状の部品である。このガスケット30は、ネジ部1bをシリンダヘッド(図示しない)に形成したプラグホールにねじ込んで、スパークプラグ100をシリンダヘッドに固定するにあたり、主体金具1のうちフランジ状のガスシール部1fと、プラグホールの開口周縁部との間に介在して、軸線方向に圧縮されてつぶれるように変形し、プラグホールとネジ部1bとの間の隙間をシールする役割を果たす。
主体金具1は、炭素鋼からなる主体金具本体11と、その外表面全体に、防食のために形成された亜鉛メッキ層(亜鉛系メッキ層)12と、そのさらに外側に形成された亜鉛メッキ三価クロメート被膜13とからなる。
また同様に、ガスケット30も、炭素鋼板からなるガスケット本体31と、その外表面に形成された亜鉛メッキ層32及び亜鉛メッキ三価クロメート被膜33とを備えている。
ついで、亜鉛メッキ層12,32、及び、亜鉛メッキ三価クロメート被膜13,33の形成工程について説明するが、これら亜鉛メッキ層12,32、及び、亜鉛メッキ三価クロメート被膜13,33は、いずれも同一の手法で形成したものである。従って、以下では、主体金具1における亜鉛メッキ層12、及び、亜鉛メッキ三価クロメート被膜13の形成で代表させて、説明を行う。
主体金具1の亜鉛メッキ層12は、公知の電解バレルメッキ法により形成する。具体的には、図2に示すように、多数の主体金具本体11を、断面多角形(本実施形態では断面六角形。図2(b)参照)のバレル槽BM中に投入し、このバレル槽BMごと、主体金具本体11をメッキ槽PM内の亜鉛メッキ液LZに浸漬する。バレル槽BM内には、樹脂被覆されたリード線L1を通じて負電位とされた導電体CCが、主体金具本体11に接触するように配置されている。これにより、主体金具本体11に負電位が与えられるので、バレル槽BM外に配置した亜鉛板PZに正電位を与えることにより、電解亜鉛メッキが施される。この状態で、バレル槽BMを、その回転軸AX1の周りに回転させると、多数の主体金具本体11は、バレル槽BMの回転に従って、かき混ぜられるように移動しながらメッキされる。かくして、主体金具本体11の外表面には、均一に亜鉛メッキ層12が形成される。
なお、亜鉛メッキ層12の厚さは、3〜15μm程度とする。この厚さが3μm未満では耐食性を十分に確保できなくなるからである。一方、厚さが15μmを超えると、メッキ剥がれが生じやすくなり、メッキ時間も長くなって製造効率が低下し、コストアップとなる点で適切でないからである。
ついで、亜鉛メッキ層12が形成された多数の主体金具本体11を水洗後、図3に示すように、断面多角形(本実施形態では断面六角形。図3(b)参照)のバレル槽BC中に投入し、このバレル槽BCごと、主体金具本体11をクロメート処理槽PC内の亜鉛メッキ三価クロメート処理液LCに浸漬する。この状態で、バレル槽BCを、その回転軸AX2の周りに回転させると、多数の主体金具本体11は、バレル槽BCの回転に従って、かき混ぜられるように移動しながら、亜鉛メッキ三価クロメート処理液により、亜鉛メッキ槽12の表面側の一部が亜鉛メッキ三価クロメート処理される。かくして、主体金具本体11の亜鉛メッキ層12の外表面に、均一に亜鉛メッキ三価クロメート被膜13が形成される。
なお、この亜鉛メッキ三価クロメート被膜13は、その膜厚を0.2〜0.5μmとする。
亜鉛メッキ三価クロメート処理後の主体金具1を、水洗・乾燥する。この主体金具1は、公知の手法により、図1に示すスパークプラグ100として組み付ける。
なお、同様の手法により、ガスケット本体31の外表面に、亜鉛メッキ層32及び亜鉛メッキ三価クロメート層33を形成したガスケット30も、主体金具1のネジ部1bの基端部分に、移動可能に組み付ける。
ところで、主体金具1及びガスケット30を製造した後の亜鉛メッキ三価クロメート処理液LCには、当初には存在していなかった不純物として、亜鉛(Zn),鉄(Fe),銅(Cu)が含まれることがある。
このうち、亜鉛(Zn)は、亜鉛メッキ層12,32を亜鉛メッキ三価クロメート処理したために、亜鉛メッキ層12,32から亜鉛が溶出して、亜鉛メッキ三価クロメート処理液LCに混入すると考えられる。
また、鉄(Fe)の混入は、以下の理由によると考えられる。即ち、主体金具本体11のうち、内側面には電解メッキでは亜鉛メッキ層が形成されにくい。従って、主体金具本体11の内側面は鋼材がむき出しであるか、ごく薄い亜鉛メッキ層12が形成されて入るのみである。この状態で、酸性の亜鉛メッキ三価クロメート処理液LCに浸漬するため、主体金具本体11の内側面から鉄が溶出すると考えられる。
さらに、銅(Cu)の混入は、以下の理由によると考えられる。即ち、主体金具本体11に亜鉛メッキ層12を形成する際、バレル槽BM内に配置した導電体CCには、黄銅(Cu−Zn)を用いているので、この導電体CCから溶出したCuが、亜鉛メッキ層12に混入し、さらに、この亜鉛メッキ層12からCuが亜鉛メッキ三価クロメート処理液LCに溶出したものと考えられる。そのほか、リード線L1からの移行も考えられる。即ち、リード線L1は、樹脂で被覆されているが、この被覆が傷ついた場合、銅線からなるリード線L1からCuが溶出して亜鉛メッキ層12に混入し、さらに、この亜鉛メッキ層12からCuが亜鉛メッキ三価クロメート処理液LCに溶出する場合も考えられる。さらに、接地電極4に起因する要因も考えられる。即ち、接地電極として、銅材をクラッドしたクラッド材を用いている場合、主体金具11と接地電極4との接合(溶接)部分には、Cuを含むすみ肉が形成される。この銅成分が、亜鉛メッキの際に溶出し、亜鉛メッキ層12に混入し、さらに、亜鉛メッキ三価クロメート処理液LCに移行する場合も考えられる。これらの理由により、亜鉛メッキ三価クロメート処理液LCには、Cuも不純物として混入する場合がある。
ところで、これらの不純物(Zn,Fe,Cu)が亜鉛メッキ三価クロメート処理液LCに混入すると、処置された主体金具1やガスケット30の外観や耐食性に影響することが判ってきた。
そこで、亜鉛メッキ三価クロメート処理液LCに含まれる不純物の含有量と、亜鉛メッキ三価クロメート被膜13,33に含まれるクロム(Cr),鉄(Fe),銅(Cu)の含有量、外観、及び耐食性について、調査を行った。具体的には、亜鉛メッキ三価クロメート処理液LCにおけるZn濃度(Znイオン濃度)を0,15000,25000ppmの三段階に、Fe濃度(Feイオン濃度)を0,40,60の三段階に、また、Cu濃度(Cuイオン濃度)を0,5,15の三段階に変化させて、亜鉛メッキ三価クロメート処理を行った19種類のサンプルを製作した。処理条件は、pH2.0,50℃,45sec,Cr濃度12000ppmとした。また、処理後の乾燥条件は、炉温70℃×3minである。その上で、各サンプルについて、亜鉛メッキ三価クロメート被膜13,33に含まれるクロム(Cr),鉄(Fe),銅(Cu)の含有量を測定すると共に、外観の評価、及び耐食性試験を行った。
なお、亜鉛メッキ三価クロメート処理液LCに含まれる不純物の含有量は、ICP発光分析(日本ジャーレルアッシュ社製IRIS ADVANTAGE)によって測定した。
また、亜鉛メッキ三価クロメート被膜13,33に含まれるクロム(Cr),鉄(Fe),銅(Cu)の含有量は、以下のようにして行った。即ち、まず、銅板に厚いZnメッキを施した評価用サンプルを別途用意しておき、この評価用サンプルに主体金具1と同時に亜鉛メッキ三価クロメート処理を行う。この評価用サンプルの形成された亜鉛メッキ三価クロメート被膜を、酸性のHNO3で溶解させ、その溶液を同じくICP発光分析で分析し、各元素の含有量を得る。さらに、溶解させた亜鉛メッキ三価クロメート被膜の面積から、被膜中の金属量(mg/m2)を算出した。
このほか、主体金具11及びガスケット30の亜鉛メッキ三価クロメート被膜13,33を、NaOH溶液で溶解し、この溶液についてICP発光分析を行って、被膜中の金属量を算出しても良い。
また、各サンプルについての外観評価は、亜鉛メッキ三価クロメート被膜におけるシミ・色ムラ・変色部分に占める面積の割合が、5%未満の場合を◎、5%以上10%未満の場合を○、10%以上20%未満の場合を△、20%以上の場合を×として示した。なお、サンプル数は各々3ヶであり、これらの平均値を用いて評価した。
さらに、耐食性評価として、JISH8502に規定されたメッキの耐食性試験方法における「5.中性塩水噴霧試験方法」(SST)を48時間行い、亜鉛メッキ層12,32の腐食に由来する白錆について、評価面に対する白錆の面積の割合が、5%未満の場合を◎、5%以上10%未満の場合を○、10%以上20%未満の場合を△、20%以上の場合を×として示した。なお、サンプル数は、各々3ヶであり、これらの平均値を用いて評価した。
調査結果を表1に示す。
Figure 0005101833
この表1の結果のうち、不純物の濃度と外観判定及び耐食性判定から、以下が言える。即ち、No1とNo2,3の試料と較べると、外観判定が◎から○に変化していることから、Zn濃度が15000ppmにまで増加すると、外観が低下する。さらに、No2,3とNo5,6の試料との比較から、Zn濃度が25000ppmにまで増加すると、外観がさらに低下すると共に、耐食性も低下する。このことは、No8,9とNo11,12の試料の比較からも判る。これから、Zn濃度は、20000ppm以下とする、さらに好ましくは、10000ppm以下とすると良いことが判る。
また、No1,2,3とNo4の試料の比較から、Cu濃度が15ppmとなると、他のZn,Feの濃度に拘わらず、外観及び耐食性が著しく低下し、いずれも×の評価となる。このことは、Cu濃度が15ppmであるNo7,10,13,16,19の試料で、外観及び耐食性がいずれも×の評価となることからも裏付けられる。これから、Cu濃度は、10ppm以下とするのが良いことが判る。
さらに、No2,3とNo8,9の試料、あるいはNo5,6とNo11,12の試料の比較から、Fe濃度が40ppmとなると、耐食性が低下することがわかる。さらに、No2,3,8,9とNo14,15の試料、No5,6,11,12とNo17,18の試料の比較から、Fe濃度が60ppmとなると、外観、耐食性とも著しく低下することがわかる。従って、Fe濃度は、50ppm以下とする、さらに好ましくは、30ppm以下とすると良いことが判る。
また、表1の結果のうち、被膜中の金属量と外観判定及び耐食性判定から、以下が言える。まず、亜鉛メッキ三価クロメート被膜13,33中のCr量は、いずれのサンプルでも、120mg/m2前後の値を維持している。このことから、被膜中のCr量は、Zn,Fe,Cuの不純物濃度にあまり影響されないことがわかる。逆に、Cr量にあまりばらつきが生じていないことから、19種類の試料に形成された被膜13,33は、Cr量から見ると、いずれも同程度の処理がされたものとなっていることが判る。
さらに、No1〜7とNo8〜13とNo14〜19の試料を比較すると、被膜中のFe量が多くなるほど、外観及び耐食性が低下することが判る。従って、被膜中のFe量は、40mg/m2以下とする、さらに好ましくは、15mg/m2以下とすると良いことが判る。
またさらに、No2,5,8,11,14とNo3,6,9,12,15とNo4,7,10,13,16,19の試料を比較すると、被膜中のCu量が多くなるほど、外観及び耐食性が低下し、特に、Cu量が5mg/m2を超えると、著しく外観及び耐食性が低下することが判る。従って、被膜中のCu量は、5mg/m2以下とすると良いことが判る。
さらに、以上の知見に基づき、主体金具1あるいはガスケット30を継続して多数回製造するにあたり、具体的には、継続して多数回、主体金具本体11あるいはガスケット本体31に、亜鉛メッキ層12,32を形成した後に、さらに、亜鉛メッキ三価クロメート被膜13,33を形成するに当たり、以下の手順で亜鉛メッキ三価クロメート処理を行う(図4参照)。
即ち、まずステップS1において、ある処理ロットの金属部材を、具体的には、主体金具本体11あるいはガスケット本体31に、亜鉛メッキ層12,32を形成したものを、バレル槽BCに投入する(図3参照)。ついで、ステップS2において、このバレル槽BCをクロメート処理槽PC内で回転させ、金属部材に亜鉛メッキ三価クロメート被膜13,33を形成する。処理後、バレル槽BCから金属部材(主体金具1,ガスケット30)を取り出し、乾燥させる。処理された主体金具1及びガスケット30は、公知の手法により、スパークプラグ100として組み付ける。
さらにステップS4では、クロメート処理槽PCに貯留している亜鉛メッキ三価クロメート処理液LCの一部を抜き取り、不純物濃度の分析を行う。具体的には、前述したように、ICP発光分析によって、Zn,Fe,Cuの濃度を測定する。
ついで、ステップS5において、測定された処理液LC中のZn濃度、Fe濃度、及びCu濃度に基づき、Zn濃度が20000ppm以下、Fe濃度が50ppm以下、及びCu濃度が10ppm以下であるか否かを判断する。ここで、Yes、つまり、処理液LC中のZn、Fe、及びCuの濃度がいずれもあまり高くない場合には、ステップS6に進み、補充する新たな処理液LCの補充量を算出する。一方、処理液LC中のZn、Fe、及びCuの濃度の少なくともいずれか高い場合には、次回の処理において、金属部材の外観や耐食性が低下する可能性がある。そこで、ステップS7に進み、クロメート処理槽PCに貯留されている処理液LCの一部又は全部を廃棄すると共に、新たな処理液LCの補充する。そこで、廃棄量及び補充量を算出する。
その後、ステップS8で、算出された補充量(ステップS6)、あるいは、廃棄量及び補充量(ステップS7)に従って処理液LCの廃棄及び補充を行い、ステップS1に戻る。即ち、新たな処理ロットの金属部材について、亜鉛メッキ三価クロメート処理を行う。これにより再びステップS1〜S8を繰り返す。
このような手順で処理液LC中の不純物(Zn,Fe,Cu)の濃度管理を行うことで、いずれの処理ロットで製造された金属部材(主体金具1,ガスケット30)においても、外観及び耐食性を良好とすることができる。
(実施形態2)
ついで、本発明の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。図5は、本実施形態2にかかるグロープラグ200の部分破断断面図である。このグロープラグ200は、シーズヒータ220と、その外側に配置された筒状の主体金具210とを備える。シーズヒータ220は、先端が閉じたシーズチューブ221と、その内側に配置された図示しない発熱コイルとを有し、この発熱コイルは、絶縁材料としてのマグネシア粉末(図示しない)と共に封入されている。シーズチューブ221のうち、発熱コイルを収容している本体部221aは、その先端側(図中、下方)が主体金具210から突出している。また、シーズチューブ221のうち、基端側(図中、上方)は、本体部221aよりも径大の大径部221bとされている。
また、シーズチューブ221内には、その基端側(図中、上方)から棒状の通電端子軸230が挿入され、その先端は内部の発熱コイルに溶接等により接続されている。他方、通電端子軸230の後端部分には、雄ねじ部231が形成されている。また、主体金具210は、軸方向に貫通する貫通孔210Hを有する筒状であり、この貫通孔210H内には、シーズチューブ221の先端側を主体金具210の先端210bから所定長突出させた状態で、シーズヒータ220が挿入され固定されている。さらにこの主体金具210の外周面には、グロープラグ200をディーゼルエンジン(エンジンブロック)に取り付けるに際して、トルクレンチ等の工具を係合させるための六角断面形状の工具係合部216が形成されており、その先端側(図中、下方)には取付用の取付ねじ部215が形成されている。
主体金具210の貫通孔210Hは、シーズチューブ221が突出する先端開口端210b側に位置する比較的小径の小径部210Haと、この基端側(図中、上方)に続く大径部210Hbと、主体金具210の基端210aに至る座ぐり部210Hcとからなっている。このうち、小径部210Haにはシーズチューブ221の大径部221bが圧入固定されている。他方、貫通孔210Hの座ぐり部210Hcには、通電端子軸230に挿通されたゴム製のOリング241とリング状の絶縁ブッシュ242(例えばナイロン製のもの)とがはめ込まれている。そして、そのさらに基端側(図中、上方)において、通電端子軸230には、絶縁ブッシュ242の脱落を防止するための押さえリング243が装着されている。この押さえリング243は、加締め加工により縮径されて通電端子軸230に固定されている。また、このグロープラグ200では、押さえリング243との結合力を高めるため、通電端子軸230のうち、押さえリング243の内側に位置する部分は、その表面がローレット加工されたローレット部232とされている。通電端子軸230のうち、ローレット部232より基端側(図中、上方)の雄ねじ部231には、通電用のケーブルの端子をこの通電端子軸230に固定するためのナット250が螺入されている。
本実施形態2のグロープラグ200についても、実施形態1のスパークプラグ100と同様、主体金具210及びナット250について、亜鉛メッキ三価クロメート処理が施されている。即ち、主体金具210は、炭素鋼からなる主体金具本体211と、その外表面全体に、防食のために形成された亜鉛メッキ層(亜鉛系メッキ層)212と、そのさらに外側に形成された亜鉛メッキ三価クロメート被膜213とからなる。
また同様に、ナット250も、炭素鋼からなるナット本体251と、その外表面に形成された亜鉛メッキ層252及び亜鉛メッキ三価クロメート被膜253とを備えている。
これら主体金具210及びナット250についての、亜鉛メッキ及び亜鉛メッキ三価クロメート処理については、実施形態1と同様であるので説明を省略する。また、亜鉛メッキ三価クロメート処理液LCに含まれる不純物(Zn,Fe,Cu)の濃度、及び被膜213,253の金属量(Cr量,Fe量,Cu量)と、外観及び耐食性との関係についても同様である(表1参照)。
さらに、この結果を受けて、主体金具210あるいはナット50を継続して多数回製造するにあたり、具体的には、継続して多数回、主体金具本体211あるいはナット本体251に、亜鉛メッキ層212,252を形成した後に、さらに、亜鉛メッキ三価クロメート被膜213,253を形成するに当たり、図4に示す手順で亜鉛メッキ三価クロメート処理を行うことも同様である。さらに、このような手順で処理液LC中の不純物(Zn,Fe,Cu)の濃度管理を行うことで、いずれの処理ロットで製造された金属部材(主体金具210,ナット50)においても、外観及び耐食性を良好とすることができることも同様である。
以上において、本発明を実施形態1,2に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態1では、主体金具1とガスケット30について、亜鉛メッキ及び亜鉛メッキ三価クロメート処理を施した例を示したが、端子金具13にも、本発明の亜鉛メッキ及び亜鉛メッキ三価クロメート処理を施しても良い。
実施形態1にかかるスパークプラグの縦半断面図である。 スパークプラグの主体金具に亜鉛メッキを施すメッキ工程の説明図である。 スパークプラグの主体金具に亜鉛メッキ三価クロメート処理を行う処理工程の説明図である。 処理工程における処理液管理の流れ示すフローチャートである。 実施形態2にかかるグロープラグの部分破断断面図である。
100 スパークプラグ(エンジン点火部材)
1 (スパークプラグの)主体金具(金属部材)
11 主体金具本体
12 亜鉛メッキ層
13 亜鉛メッキ三価クロメート被膜
2 絶縁体
4 接地電極
g 火花放電ギャップ
13 端子金具
30 ガスケット(金属部材)
31 ガスケット本体
32 亜鉛メッキ層
33 亜鉛メッキ三価クロメート被膜
200 グロープラグ(エンジン点火部材)
210 (グロープラグの)主体金具(金属部材)
211 主体金具本体
212 亜鉛メッキ層
213 亜鉛メッキ三価クロメート被膜
220 シーズヒータ
250 ナット(金属部材)
251 ナット本体
252 亜鉛メッキ層
253 亜鉛メッキ三価クロメート被膜
PM メッキ槽
BM バレル槽
LZ 亜鉛メッキ液
L1 リード線
PC クロメート処理槽
BC バレル槽
LC 亜鉛メッキ三価クロメート処理液(亜鉛メッキ三価クロメート処理に用いる処理液)

Claims (3)

  1. 亜鉛メッキ三価クロメート処理による亜鉛メッキ三価クロメート被膜を有する鋼材からなる金属部材を備えるエンジン点火部材の製造方法であって、
    上記亜鉛メッキ三価クロメート処理に用いる処理液を、この処理液のCu濃度を10ppm以下に管理した状態で、上記金属部材の上記亜鉛メッキ三価クロメート処理を行う処理工程を備える
    エンジン点火部材の製造方法。
  2. 請求項に記載のエンジン点火部材の製造方法であって、
    前記処理工程は、前記処理液のFe濃度を、50ppm以下に管理した状態で、前記金属部材の前記亜鉛メッキ三価クロメート処理を行う
    エンジン点火部材の製造方法。
  3. 請求項に記載のエンジン点火部材の製造方法であって、
    前記処理工程は、前記処理液のZn濃度を、20000ppm以下に管理した状態で、前記金属部材の前記亜鉛メッキ三価クロメート処理を行う
    エンジン点火部材の製造方法。
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