A.実施形態:
図1は、スパークプラグの一例の断面図である。図中には、スパークプラグ100の中心軸CLが示されている。図示された断面は、中心軸CLを含む断面である。以下、中心軸CLと平行な方向を「軸線方向」とも呼ぶ。中心軸CLを中心とする円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、中心軸CLを中心とする円の円周方向を「周方向」とも呼ぶ。中心軸CLに平行な方向のうち、図1における下方向を先端方向Dfと呼び、上方向を後端方向Dfrとも呼ぶ。先端方向Dfは、後述する端子金具40から電極20、30に向かう方向である。また、図1における先端方向Df側をスパークプラグ100の先端側と呼び、図1における後端方向Dfr側をスパークプラグ100の後端側と呼ぶ。
スパークプラグ100は、絶縁体10(「絶縁碍子10」とも呼ぶ)と、中心電極20と、接地電極30と、端子金具40と、主体金具50と、導電性の第1シール部60と、抵抗体70と、導電性の第2シール部80と、先端側パッキン8と、タルク9と、第1後端側パッキン6と、第2後端側パッキン7と、を備えている。
絶縁体10は、中心軸CLに沿って延びて絶縁体10を貫通する貫通孔12(以下「軸孔12」とも呼ぶ)を有する略円筒状の部材である。絶縁体10は、アルミナを焼成して形成されている(他の絶縁材料も採用可能である)。絶縁体10は、先端側から後端方向Dfrに向かって順番に並ぶ、脚部13と、第1縮外径部15と、先端側胴部17と、鍔部19と、第2縮外径部11と、後端側胴部18と、を有している。第1縮外径部15の外径は、後端側から先端側に向かって、徐々に小さくなる。絶縁体10の第1縮外径部15の近傍(図1の例では、先端側胴部17)には、後端側から先端側に向かって内径が徐々に小さくなる縮内径部16が形成されている。第2縮外径部11の外径は、先端側から後端側に向かって、徐々に小さくなる。
絶縁体10の軸孔12の先端側には、中心軸CLに沿って延びる棒状の中心電極20が挿入されている。中心電極20は、軸部27と、中心軸CLを中心として中心軸CLに沿って延びる略円柱状のチップ部28と、を備えている。軸部27は、先端側から後端方向Dfrに向かって順番に並ぶ、脚部25と、鍔部24と、頭部23と、を有している。脚部25の先端(すなわち、軸部27の先端)には、チップ部28が接合されている(例えば、レーザ溶接)。チップ部28の少なくとも一部は、絶縁体10の先端側で、軸孔12の外に露出している。鍔部24の先端方向Df側の面は、絶縁体10の縮内径部16によって、支持されている。また、軸部27は、外層21と芯部22とを有している。外層21は、芯部22よりも耐酸化性に優れる材料、すなわち、内燃機関の燃焼室内で燃焼ガスに曝された場合の消耗が少ない材料(例えば、純ニッケル、ニッケルとクロムとを含む合金、等)で形成されている。芯部22は、外層21よりも熱伝導率が高い材料(例えば、純銅、銅合金、等)で形成されている。芯部22の後端部は、外層21から露出し、中心電極20の後端部を形成する。芯部22の他の部分は、外層21によって被覆されている。ただし、芯部22の全体が、外層21によって覆われていても良い。また、チップ部28は、軸部27よりも放電に対する耐久性に優れる材料(例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の貴金属、タングステン(W)、それらの金属から選択された少なくとも1種を含む合金)を用いて形成されている。
絶縁体10の軸孔12の後端側には、端子金具40の一部が挿入されている。端子金具40は、導電性材料(例えば、低炭素鋼等の金属)を用いて形成されている。
絶縁体10の軸孔12内において、端子金具40と中心電極20との間には、電気的なノイズを抑制するための略円柱形状の抵抗体70が配置されている。抵抗体70は、例えば、導電性材料(例えば、炭素粒子)と、セラミック粒子(例えば、ZrO2)と、ガラス粒子(例えば、SiO2−B2O3−Li2O−BaO系のガラス粒子)と、を含む材料を用いて形成されている。抵抗体70と中心電極20との間には、導電性の第1シール部60が配置され、抵抗体70と端子金具40との間には、導電性の第2シール部80が配置されている。シール部60、80は、例えば、抵抗体70の材料に含まれるものと同じガラス粒子と、金属粒子(例えば、Cu)と、を含む材料を用いて、形成されている。中心電極20と端子金具40とは、抵抗体70とシール部60、80とを介して、電気的に接続されている。
主体金具50は、中心軸CLに沿って延びて主体金具50を貫通する貫通孔59を有する略円筒状の部材である。図中には、主体金具50のうちの後述する工具係合部51を含む部分の拡大図が示されている。主体金具50は、低炭素鋼材を用いて形成されている(他の導電性材料(例えば、金属材料)も採用可能である)。主体金具50には、後述するメッキ処理が施されている。このメッキ処理によって、主体金具50の少なくとも外周面は、耐食性を向上するためのニッケルメッキ層90で被覆される。ニッケルメッキ層90は、最も含有率(重量%)の高い金属成分がニッケルであるメッキ層である。すなわち、ニッケルメッキ層90は、純ニッケル、または、ニッケル合金を含むメッキ層である。主体金具50の貫通孔59には、絶縁体10が挿入されている。主体金具50は、絶縁体10の外周に固定されている。主体金具50の先端側では、絶縁体10の先端(本実施形態では、脚部13の先端側の部分)が、貫通孔59の外に露出している。主体金具50の後端側では、絶縁体10の後端(本実施形態では、後端側胴部18の後端側の部分)が、貫通孔59の外に露出している。
主体金具50は、先端側から後端側に向かって順番に並ぶ、胴部55と、座部54と、変形部58と、工具係合部51と、加締部53と、を有している。座部54は、鍔状の部分である。胴部55は、座部54から中心軸CLに沿って先端方向Dfに向かって延びる略円筒状の部分である。胴部55の外周面には、内燃機関の取付孔にねじ込むためのネジ山52が形成されている。以下、胴部55を、「ネジ部55」とも呼ぶ。座部54とネジ山52との間には、金属板を折り曲げて形成された環状のガスケット5が嵌め込まれている。
主体金具50は、変形部58よりも先端方向Df側に配置された縮内径部56を有している。縮内径部56の内径は、後端側から先端側に向かって、徐々に小さくなる。主体金具50の縮内径部56と、絶縁体10の第1縮外径部15と、の間には、先端側パッキン8が挟まれている。先端側パッキン8は、鉄製でO字形状のリングである(他の材料(例えば、銅等の金属材料)も採用可能である)。
工具係合部51は、スパークプラグ100を締め付けるための工具(例えば、スパークプラグレンチ)と係合するための部分である。本実施形態では、工具係合部51の外観形状は、中心軸CLに沿って延びる略六角柱である。すなわち、中心軸CLに垂直な断面上では、工具係合部51の輪郭の形状が、略六角形である。また、加締部53は、絶縁体10の第2縮外径部11よりも後端側に配置され、主体金具50の後端(すなわち、後端方向Dfr側の端)を形成する。加締部53は、径方向の内側に向かって屈曲されている。加締部53の先端方向Df側では、主体金具50の内周面と絶縁体10の外周面との間に、第1後端側パッキン6とタルク9と第2後端側パッキン7とが、先端方向Dfに向かってこの順番に、配置されている。本実施形態では、これらの後端側パッキン6、7は、鉄製でC字形状のリングである(他の材料も採用可能である)。
スパークプラグ100の製造時には、加締部53が内側に折り曲がるように加締められる。そして、加締部53が先端方向Df側に押圧される。これにより、変形部58が変形し、パッキン6、7とタルク9とを介して、絶縁体10が、主体金具50内で、先端側に向けて押圧される。先端側パッキン8は、第1縮外径部15と縮内径部56との間で押圧され、そして、主体金具50と絶縁体10との間をシールする。以上により、主体金具50が、絶縁体10に、固定される。
接地電極30は、本実施形態では、棒状の電極である。接地電極30の一端は、主体金具50の先端面57(すなわち、先端方向Df側の面57)に接合されている(例えば、抵抗溶接)。接地電極30は、主体金具50の先端面57から先端方向Dfに向かって延び、中心軸CLに向かって曲がって、先端部31に至る。先端部31は、中心電極20の先端方向Df側に配置されている。先端部31の後端方向Dfr側の面39は、中心電極20の先端面29との間で間隙gを形成する。本実施形態では、中心電極20の先端面29は、チップ部28の先端方向Df側の表面29である。
接地電極30は、接地電極30の表面の少なくとも一部を形成する外層35と、外層35内に埋設された芯部36と、を有している。外層35は、耐酸化性に優れる材料(例えば、ニッケルとクロムとを含む合金)を用いて形成されている。芯部36は、外層35よりも熱伝導率が高い材料(例えば、純銅)を用いて形成されている。
図2は、主体金具50の外観を示す概略図である。この概略図は、中心軸CLに垂直な方向を向いて見た概略図である。図中の側面51sは、工具係合部51の六角柱形状の6個の側面のうちの1個の側面を示している。図2は、この側面51sに垂直な方向を向いて見た概略図である。図中の位置Pmは、後述する被膜硬度の測定位置を示している(以下、「測定位置Pm」と呼ぶ)。測定位置Pmは、側面51sの中心に配置されている。側面51sの中心は、側面51s上に質量が均等に分布していると仮定した場合の重心の位置である。また、図中の長さLは、ネジ部55の中心軸CLに平行な方向の長さである。すなわち、長さLは、座部54の先端方向Df側の端541(すなわち、ガスケット5(図1)に接触する面)と主体金具50の先端方向Df側の端57(すなわち、先端面57)との間の中心軸CLに平行な方向の距離である。このような長さLは、スパークプラグ100を内燃機関の取付孔に装着した場合に、主体金具50のうちの座部54に隠れて外から見えなくなる部分(主に、取付孔内または燃焼室内に配置される部分)の長さを示している。
以上説明したスパークプラグ100のうちのニッケルメッキ層90以外の部分は、公知の方法で製造可能である。ニッケルメッキ層90については、以下の通りである。図3は、主体金具50のメッキ処理の手順の例を示すフローチャートである。ステップS300では、ニッケルストライクメッキ処理が行われる。ニッケルストライクメッキ処理は、ニッケルメッキ層と下地金属との密着性を向上するための処理であり、下地金属の表面が洗浄され、そして、下地金属にニッケルがメッキされる。後述する評価試験のための主体金具50のサンプルを製造する際には、ニッケルストライクメッキ処理は、以下の条件下で行われた。なお、括弧内の条件は、サンプルのための条件に代えて採用可能と推定される条件の例を示している。
<ニッケルストライクメッキ処理の条件>
・メッキ液の組成
塩化ニッケル : 300±50g/L(150〜600g/L)
35%塩酸 : 100±10mL/L(50〜300mL/L)
溶媒 : 脱イオン水
・処理温度(メッキ浴温度) : 摂氏30±5度(摂氏25〜40度)
・陰極電流密度 : 0.3A/dm2(0.2〜0.4A/dm2)
・処理時間(メッキ時間) : 15分(5〜20分)
なお、ニッケルストライクメッキ処理の条件としては、上記条件に限らず、他の種々の条件を採用可能と推定される。
次のステップS310では、電解ニッケルメッキ処理が行われる。電解ニッケルメッキ処理の方法としては、例えば、静止メッキやバレルメッキを採用可能である。後述する評価試験のための主体金具50のサンプルの製造では、回転バレルを用いて電解ニッケルメッキ処理が行われた。また、評価試験のための主体金具50のサンプルを製造する際には、電解ニッケルメッキ処理は、以下の条件下で行われた。括弧内の条件は、サンプルのための条件に代えて採用可能と推定される条件の例を示している。
<電解ニッケルメッキ処理の条件>
・メッキ液の組成
硫酸ニッケル : 250±20g/L(100〜400g/L)
塩化ニッケル : 50±10g/L(20〜60g/L)
ホウ酸 : 40±10g/L(20〜60g/L)
溶媒 : 脱イオン水
・メッキ浴pH : 4.0±0.5(2.0〜4.8)
・処理温度(メッキ浴温度) : 摂氏55±5度(摂氏25〜60度)
・陰極電流密度 : 1〜5A/dm2(0.02〜5.0A/dm2)
・処理時間(メッキ時間) : 1〜250分(1〜600分)
なお、電解ニッケルメッキ処理の条件としては、上記条件に限らず、他の種々の条件を採用可能と推定される。
以上のメッキ処理によって、主体金具50の表面に、ニッケルメッキ層90が形成される。
B.第1評価試験:
主体金具50のサンプルを用いてニッケルメッキ層90の耐食性とピンホール点数とを評価する試験を行った。第1評価試験では、ニッケルメッキ層90の厚さとニッケルメッキ層90の結晶粒の平均断面積との少なくとも一方が互いに異なる50種類のサンプルが評価された。以下の表1は、評価試験の結果を示している。
表1は、電解ニッケルメッキ処理の電流密度およびメッキ時間(処理時間)と、メッキ膜厚(すなわち、ニッケルメッキ層90(メッキ膜90とも呼ぶ)の厚さ)と、ニッケルメッキ層の結晶粒の平均断面積と、耐食性の評価結果と、ピンホール点数の評価結果と、の対応関係を示している。
メッキ膜厚は、工具係合部51の側面の中心位置(例えば、図2の測定位置Pm)でのメッキ膜90の厚さであり、蛍光X線式膜厚計を用いて測定された厚さである。メッキ膜90の厚さは、メッキ時間を調整することによって、調整可能である。一般的に、電解ニッケルメッキ処理のメッキ時間を長くすることによって、メッキ膜90を厚くできる。表1に示すように、評価されたメッキ膜90の厚さは、1、5、7、10、13、20、25、30、40、50(μm)であった。
図4は、結晶粒の平均断面積の説明図である。図中の概略図Iaは、ニッケルメッキ層90の断面を示す概略図である。この概略図Iaは、集束イオンビーム(FIB)加工装置によって作成されたニッケルメッキ層90の薄片を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することによって得られる画像の概略を示している(TEM画像Iaと呼ぶ)。TEM画像Iaは、例えば、白黒の濃淡画像である。図中の特に濃い領域A1は、結晶粒を示している。結晶粒は、ニッケルメッキ層90に含まれる成分の結晶粒であり、例えば、ニッケルの結晶粒である。なお、TEMの加速電圧としては、200kVが採用された。また、ニッケルメッキ層90の薄片としては、ニッケルメッキ層90の外表面と直交する方向に沿ってニッケルメッキ層90を切断することによって得られる薄片が用いられた。TEM画像Iaは、ニッケルメッキ層90の外表面と直交する断面を示している。
図中の処理済画像Ibは、TEM画像Iaを処理して得られる画像であり、結晶粒を表す領域が塗りつぶされた画像である。処理済画像Ibは、以下の手順で作成された。TEM画像Ia中の結晶粒の輪郭を薄紙に透写し、スキャナで薄紙をスキャンすることによって輪郭を表す画像データを生成し、生成された画像データを画像処理ソフト(マイクロソフト社製のペイント)によって処理することによって、輪郭の内部を塗りつぶした。
処理済画像Ib中の塗りつぶされた領域の面積は、結晶粒の断面積に相当する。本評価試験では、解析ソフト(アメリカ国立衛生研究所製のImageJ)を用いて、塗りつぶされた領域の面積(すなわち、結晶粒の断面積)を算出した。結晶粒の平均断面積は、無作為に選ばれた50個の結晶粒の断面積の平均値である。なお、結晶粒の平均断面積は、電解ニッケルメッキ処理の電流密度を調整することによって、調整可能である。一般的に、電流密度を大きくすることによって、結晶粒の平均断面積を大きくできる。表1に示すように、評価された平均断面積は、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04(μm2)であった。本評価試験では、5個の平均断面積と上記の10個の厚さとを組み合わせて得られる50種類のサンプルが、製造され、そして、評価された。
耐食性の評価試験としては、JIS H8502で規定された中性塩水噴霧試験を行った。図5は、噴霧試験の概略図である。図5(A)は、鉛直方向Dv(ここでは、上方向Dv)に垂直な方向(すなわち、水平な方向)を向いて見た主体金具50の配置を示している。図5(B)は、中心軸CLに平行な方向を向いて見た中性塩水の噴霧方向Dxを示している。図5(A)に示すように、主体金具50が鉛直方向Dvに対して傾斜した状態で、噴霧試験が行われた。図中の角度Angは、鉛直方向Dvに対する中心軸CLの傾斜角度である。本評価試験では、角度Angは、20±5度の範囲内に設定された。図中の第1辺51pは、工具係合部51の六角柱形状の6個の側面のうち2個の側面が接続される辺である。第2辺51qは、第1辺51pとは反対側の辺である。図5(A)の主体金具50の配置は、2本の辺51p、51qと中心軸CLとを含む平面内で第1辺51pが第2辺51q側に向かって移動するように、中心軸CLを傾斜させることによって実現されている。第1辺51pは、第2辺51qよりも高い位置に配置されている。図注の噴霧方向Dxが示すように、中性塩水は、中心軸CLと垂直に、第1辺51pに向かって、噴霧された。側面51psは、第1辺51pに接続された2個の側面のうちの1つである。
この試験では、96時間の塩水噴霧の後に、主体金具50のサンプルを水で洗浄し、そして、乾燥させた。そして、試験後の主体金具50のサンプルの表面積に対する赤錆の面積の割合を測定した。具体的には、試験後のサンプルの側面51psの写真を撮影し、その写真中の側面51psのうちの赤錆の発生している部分の面積Saと、写真中の側面51psの全体の面積Sbとを測定し、その比Sa/Sbを赤錆面積割合として算出した。表1の耐食性の評価結果は、赤錆面積割合に基づいて決定されている。A評価は、赤錆面積割合がゼロ%であることを示し、B評価は、赤錆面積割合がゼロ%より大きく5%未満であることを示し、C評価は、赤錆面積割合が5%以上10%未満であることを示し、D評価は、赤錆面積割合が10%以上20%未満であることを示し、E評価は、赤錆面積割合が20%以上であることを示している。
ピンホール点数の評価試験としては、JIS H8617に基づくフェロキシル試験を行った。具体的には、試験液をしみこませたろ紙を工具係合部51の1個の側面(例えば、図2の側面51s)に張り付け、5分後に剥がしたろ紙上に現れた鉄錯イオンの青色斑点に応じて、ピンホール点数を特定した。表1のA評価は、ピンホール点数が3以下であることを示し、B評価は、ピンホール点数が3より大きく5未満であることを示し、C評価は、ピンホール点数が5以上10未満であることを示し、D評価は、ピンホール点数が10以上20未満であることを示し、E評価は、ピンホール点数が20以上であることを示している。
表1に示すように、結晶粒の平均断面積が小さい場合には、平均断面積が大きい場合よりも、耐食性とピンホール点数との評価結果が良い傾向があった。具体的には、平均断面積が0.04μm2である場合には、メッキ膜90の厚さに依らず、耐食性とピンホール点数との評価結果がC評価以下であったが、平均断面積が0.005、0.01、0.02、0.03(μm2)のいずれかである場合には、A評価の耐食性とA評価のピンホール点数とを実現可能であった。この理由は、結晶粒の平均断面積が小さい場合には、平均断面積が大きい場合よりも、メッキ膜90内の粒界の凹凸が小さいので、局所的に薄い部分がメッキ膜90に生じることが抑制されるからだと推定される。
なお、比較的良好な耐食性とピンホール点数、具体的には、A評価の耐食性とA評価のピンホール点数とを実現可能な結晶粒の平均断面積は、0.005、0.01、0.02、0.03(μm2)であった。これらの値から任意に選択された値を、平均断面積の好ましい範囲(下限以上、上限以下)の下限として採用してもよい。例えば、平均断面積としては、0.005μm2以上の値を採用してもよい。また、これらの値のうち、下限以上の任意の値を上限として採用してもよい。例えば、平均断面積としては、0.03μm2以下の値を採用してもよい。
また、表1に示すように、メッキ膜90が厚いほど、ピンホール点数の評価結果が良好であった。この理由は、メッキ膜90が厚いほど、メッキ膜90に生じ得るピンホールが主体金具50の下地金属に到達する可能性を低減でき、また、メッキ膜90が厚いほど、下地金属上のピンホールの大きさ(すなわち、下地金属の表面のうちピンホール内に露出する部分の大きさ)を小さくできるからである。また、メッキ膜90が厚いほど、耐食性の評価結果が良好であった。この理由は、メッキ膜90が厚いほど、下地金属の表面のうちピンホール内に露出する部分の大きさを小さくできるので、塩水が主体金具50の下地金属に接触する可能性を低減できるからである。同じ理由により、ピンホール点数が同じ場合であっても、メッキ膜90が厚いほど、耐食性を向上できる。
比較的良好な耐食性とピンホール点数、具体的には、C評価以上の耐食性とB評価以上のピンホール点数とを実現したメッキ膜90の厚さは、7、10、13、20、25、30、40、50(μm)であった。これらの値から任意に選択された値を、厚さの下限値として採用してもよい。例えば、厚さとしては、7μm以上の値を採用してもよい。また、メッキ膜90が厚いほど、主体金具50の下地金属が露出する可能性が小さい。従って、メッキ膜90の厚さが、上記の8個の値のうちの最大値である50μmよりも大きい場合にも、耐食性とピンホール点数との良好な評価結果を実現できると推定される。従って、厚さとしては、評価された最大値(50μm)よりも大きな種々の値を採用可能と推定される。ただし、上記の8個の値のうち、下限以上の任意の値を上限として採用してもよい。例えば、厚さとしては、50μm以下の値を採用してもよい。
なお、本実施形態のスパークプラグ100は、通常の内燃機関(例えば、ガソリンエンジン)に限らず、ガソリンとエタノール等の2種類以上の燃料成分を利用可能なフレックス燃料車(flexible-fuel vehicle)に適用可能である。スパークプラグ100は、このようなフレックス燃料車の内燃機関の取付孔に装着される。フレックス燃料車の内燃機関の燃焼室内では、酸性の凝縮水が生成され得る。生成された水は、内燃機関の取付孔とスパークプラグ100のネジ部55との間の隙間に入り得る。このような水によってネジ部55が腐食すると、スパークプラグ100が取付孔に固着し得る。しかし、本実施形態のスパークプラグ100では、ニッケルメッキ層90は、ネジ部55の外周面にも形成されている。従って、内燃機関の取付孔にスパークプラグ100が装着された状態で、ネジ部55が腐食する可能性(すなわち、固着の可能性)を低減できる。
C.第2評価試験:
主体金具50のサンプルを用いてニッケルメッキ層90の外観と密着性とを評価する試験を行った。第2評価試験では、ニッケルメッキ層90の結晶粒の平均断面積と、ニッケルメッキ層90の硬度と、ニッケルメッキ層90の厚さと、の少なくとも1つが互いに異なる200種類のサンプルが評価された。以下の表2は、評価試験の結果を示している。
第2評価試験で用いられた主体金具50のサンプルの製造では、図3のステップS310の電解ニッケルメッキ処理で用いられるメッキ浴に、光沢剤が添加されている。光沢剤を添加することによって、ニッケルメッキ層90の表面を平滑化できる。これにより、主体金具50の外観を向上できる。また、ニッケルメッキ層90の硬度が高くなる。光沢剤としては、種々の材料を採用可能である。例えば、スルホン酸塩(例えば、種々のナフタレンスルホン酸ナトリウム)を採用してもよい。本評価試験では、光沢剤として、スルファニルアミド化合物が採用された。表2の「光沢剤添加量」は、単位体積のメッキ液に対する光沢剤の溶液の量(単位は、cc/L)を示している。
表2の「被膜硬度」は、ニッケルメッキ層90のビッカース硬度である。ビッカース硬度は、JIS Z2244に規定された方法に従って、測定された。この硬度は、ニッケルメッキ層90の表面のうちの図2で説明した測定位置Pmに、測定用の圧子を押し込むことによって、測定された。試験荷重は、20kgfであった。被膜硬度は、光沢剤の添加量を調整することによって、調整可能である。一般的に、添加量を多くすることによって、被膜硬度を高くできる。表2に示すように、評価された被膜硬度は、120、140、160、180、200(Hv)であった。
表2の「結晶粒の平均断面積」と「メッキ膜厚」とは、それぞれ、表1で説明したものと同じである。評価された平均断面積は、0.005、0.01、0.02、0.03(μm2)であった。評価されたメッキ膜厚は、1、5、7、10、13、20、25、30、40、50(μm)であった。本評価試験では、4個の平均断面積と10個のメッキ膜厚と上記の5個の被膜硬度とを組み合わせて得られる200種類のサンプルが、製造され、そして、評価された。なお、いずれの種類のサンプルにおいても、表1で説明したピンホール点数は、3以下であった。
外観の評価方法は、以下の通りである。主体金具50のサンプルの工具係合部51の1個の側面(例えば、図2の側面51s。以下「対象側面」と呼ぶ)の写真を撮影する。そして、その写真中の対象側面のうちの光沢を有する部分の面積Scと、写真中の対象側面の全体の面積Sdとを測定し、その比Sc/Sdを、無光沢割合として算出した。A評価は、無光沢割合がゼロ%であることを示し、B評価は、無光沢割合がゼロ%より大きく5%未満であることを示し、C評価は、無光沢割合が5%以上10%未満であることを示し、D評価は、無光沢割合が10%以上20%未満であることを示し、E評価は、無光沢割合が20%以上であることを示している。
密着性の評価結果は、ニッケルメッキ層90の剥離の困難さを示している。本評価試験では、主体金具50のサンプルの加締部53をスパークプラグ100の製造時と同様に加締める場合に加締部53から剥離するニッケルメッキ層90の割合を用いて、密着性を評価した。
図6は、主体金具50の加締めを示す概略図である。図6(A)は、加締める前の主体金具50を示している。図中の第1距離L1は、変形部58の先端方向Df側の端と加締部53の後端方向Dfr側の端との間の、中心軸CLと平行な距離である。図6(B)は、金型210、220によって加締められる主体金具50を示している。座部54は、第1金型210によって支持される。第2金型220は、加締部53を先端方向Dfに向かって押圧する。この結果、図1に示すように、加締部53の後端方向Dfr側の端が、中心軸CLに向かって屈曲し、変形部58が、湾曲する。図6(C)は、加締め後の主体金具50を示している。図中の第2距離L2は、変形部58の先端方向Df側の端と加締部53の後端方向Dfr側の端との間の、中心軸CLと平行な距離である。加締部53が屈曲し、変形部58が変形しているので、加締め前の第1距離L1(図6(A))と比べて、第2距離L2は、短い。本評価試験のサンプルは、この加締めによって、第2距離L2は、第1距離L1よりも2mm以上短くなった。
図6(C)中では、加締部53にハッチングが付されている。本評価試験では、この加締部53の外周面の写真を撮影し、その写真中の加締部53のうちのニッケルメッキ層90が剥離した部分の面積Seと、写真中の加締部53の全体の面積Sfとを測定し、その比Se/Sfを剥離割合として算出した。表2のA評価は、剥離割合がゼロ%であることを示し、B評価は、剥離割合がゼロ%より大きく5%未満であることを示し、C評価は、剥離割合が5%以上10%未満であることを示し、D評価は、剥離割合が10%以上20%未満であることを示し、E評価は、剥離割合が20%以上であることを示している。
表2に示すように、結晶粒の平均断面積が0.005μm2である場合には、外観と密着性のいずれもB評価以下であった。一方、平均断面積が0.01μm2以上である場合には、A評価の外観とA評価の密着性とを実現可能であった。具体的には、A評価の外観とA評価の密着性とを実現可能な結晶粒の平均断面積は、0.01、0.02、0.03(μm2)であった。これら3個の値から任意に選択された値を、平均断面積の好ましい範囲(下限以上、上限以下)の下限として採用してもよい。例えば、平均断面積としては、0.01μm2以上の値を採用してもよい。ただし、平均断面積が0.01μm2未満であってもよい。また、上記3個の値のうち、下限以上の任意の値を上限として採用してもよい。例えば、平均断面積としては、0.03μm2以下の値を採用してもよい。なお、平均断面積が0.005μm2である場合に、平均断面積が0.01μm2以上である場合と比べて、外観と密着性との評価結果が低い理由は、結晶粒が小さいことに起因して粒界の結合が弱くなるからだと推定される。
また、表2に示すように、被膜硬度が高いほど、外観の評価結果が良好であった。この理由は、被膜硬度が高いほど、メッキ膜90の表面に、傷が付き難いからである。また、被膜硬度が低いほど、密着性の評価結果が良好であった。この理由は、被膜硬度が低いほど、加締部53の屈曲に合わせてメッキ膜90が変形し易いので、メッキ膜90が剥離し難いからである。
また、メッキ膜厚が厚いほど、外観の評価結果が良好であった。この理由は、メッキ膜厚が厚いほど、下地金属の表面の細かい凹凸がメッキ膜90の表面に及ぼす影響を小さくできるからだと推定される。また、メッキ膜厚が薄いほど、密着性の評価結果が良好であった。この理由は、メッキ膜厚が薄いほど、加締部53の屈曲に合わせてメッキ膜90が変形し易いので、メッキ膜90が剥離し難いからである。
平均断面積が0.01μm2以上である場合に、比較的良好な外観と密着性、具体的には、A評価の外観とA評価の密着性とを実現した被膜硬度は、140、160、180(Hv)であった。これらの値から任意に選択された値を、被膜硬度の好ましい範囲(下限以上、上限以下)の下限として採用してもよい。例えば、被膜硬度としては、140Hv以上の値を採用してもよい。また、これらの値のうち、下限以上の任意の値を上限として採用してもよい。例えば、被膜硬度としては、180Hv以下の値を採用してもよい。ただし、被膜硬度が140Hv未満であってもよく、また、被膜硬度が180Hvを超えていてもよい。
また、結晶粒の平均断面積が0.01μm2以上である場合に、比較的良好な外観と密着性、具体的には、A評価の外観とA評価の密着性とを実現したメッキ膜厚は、13、20、25(μm)であった。これらの値から任意に選択された値を、厚さの下限値として採用してもよい。例えば、厚さとしては、13μm以上の値を採用してもよい。また、これらの値のうち、下限以上の任意の値を上限として採用してもよい。例えば、厚さとしては、25μm以下の値を採用してもよい。ただし、メッキ膜90の厚さが13μm未満であってもよく、また、厚さが25μmを超えてもよい。
D.第3評価試験:
スパークプラグ100のサンプルを用いて主体金具50の耐久性を評価する試験を行った。第3評価試験では、ネジ部55の呼び径と、被膜硬度と、メッキ膜厚と、の少なくとも1つが互いに異なる42種類のサンプルが評価された。以下の表3は、評価試験の結果を示している。
表3の「呼び径」は、ネジ部55の呼び径である。本評価試験では、10mm(M10)と、14mm(M14)とが評価された。表3の「メッキ膜厚」と「被膜硬度」とは、それぞれ、表1、表2で説明したものと同じである。評価されたメッキ膜厚は、1、5、7、10、13、20、25(μm)であった。メッキ膜厚の調整は、表1のサンプルと同様に、メッキ時間を調整することによって行われた。また、評価された被膜硬度は、140、160、180(Hv)であった。これらの被膜硬度は、表2で説明した好ましい範囲内である。被膜硬度の調整は、表2のサンプルと同様に、光沢剤添加量を調整することによって行われた。本評価試験では、2個の呼び径と3個の被膜硬度と7個のメッキ膜厚とを組み合わせて得られる42種類のサンプルが、製造され、そして、評価された。なお、いずれの種類のサンプルにおいても、表1で説明したピンホール点数は、3以下であり、結晶粒の平均断面積は、0.01〜0.03μm2の範囲内であり、ネジ部55の長さL(図2)は、26.5mmであった。
耐久性は、以下の締付試験を用いて、評価された。スパークプラグ100のサンプルのネジ部55に対応する取付孔を有する鉄製の台を準備する。取付孔の内周面に、摩擦を減らすために油を塗布する。この取付孔にスパークプラグ100のサンプルを装着する。そして、ネジ試験機を用いて、スパークプラグ100のサンプルを締め付ける。ここで、締付トルクを68.6N・mまで上昇させる。主体金具50の耐久性が低い場合には、この締付試験によって、主体金具50(特に、座部54からネジ部55の先端までの間の部分)が破断する。主体金具50の耐久性が高い場合には、主体金具50は、この締付試験に耐え得る。
このような締付試験を、各種類毎に10個のサンプルに対して行った。表3の評価結果は、10個のサンプルのうちの破断したサンプルの数(破断数と呼ぶ)の評価結果を示している。A評価は、破断数がゼロであることを示し、B評価は、破断数が1個以上3個以下であることを示し、C評価は、破断数が4個以上5個以下であることを示し、D評価は、破断数が6個以上9個以下であることを示し、E評価は、破断数が10個(すなわち、全て)であることを示している。
表3に示すように、呼び径がM10(10mm)である場合には、呼び径がM14(14mm)である場合よりも、耐久性が良好であった(特に、メッキ膜厚が1〜10μmの範囲内の場合)。このように呼び径が小さい場合に耐久性が良好である理由は、以下のように推定される。呼び径が小さい場合には、呼び径が大きい場合よりも、ネジ山のピッチが小さい。ネジ山のピッチが小さい場合には、メッキ膜90は、ネジ溝を埋めやすい。この結果、メッキ膜90は、主体金具50を補強し易い。以上により、呼び径が小さいほど、耐久性を向上し易いと推定される。例えば、呼び径としては、M10(10mm)以下の値を採用することが好ましい。なお、実用的なスパークプラグ100を製造するためには、ネジ部55の呼び径が小さ過ぎないことが好ましい。例えば、ネジ部55の呼び径としては、M8(8mm)以上の値を採用してもよい。ただし、ネジ部55の呼び径が、このような好ましい範囲外であってもよい。
また、表3に示すように、メッキ膜90が薄い場合よりも厚い場合の方が、耐久性が良好であった。この理由は、メッキ膜90が厚いほど、メッキ膜90による主体金具50の補強が強化されるからである。なお、比較的良好な耐久性、具体的には、A評価の耐久性を実現したメッキ膜厚は、13、20、25(μm)であった。メッキ膜厚がこれら3個の値のいずれかである場合には、ネジ部55の呼び径と被膜硬度とに拘わらず、耐久性がA評価であった。これらの3個の値から任意に選択された値を、厚さの下限値として採用してもよい。例えば、厚さとしては、13μm以上の値を採用してもよい。また、これらの値のうち、下限以上の任意の値を上限として採用してもよい。例えば、厚さとしては、25μm以下の値を採用してもよい。
E.第4評価試験:
スパークプラグ100のサンプルを用いて主体金具50の耐久性を評価する別の試験を行った。第4評価試験では、ネジ部55の長さLと、被膜硬度と、メッキ膜厚と、の少なくとも1つが互いに異なる42種類のサンプルが評価された。以下の表4は、評価試験の結果を示している。
表4の「ネジ部長さ」は、図2の長さLである(以下、「ネジ部長さL」とも呼ぶ)。本評価試験では、19mmと26.5mmとが評価された。表4の「メッキ膜厚」と「被膜硬度」とは、それぞれ、表1、表2で説明したものと同じである。評価されたメッキ膜厚は、1、5、7、10、13、20、25(μm)であった。メッキ膜厚の調整は、表1のサンプルと同様に、メッキ時間を調整することによって行われた。また、評価された被膜硬度は、140、160、180(Hv)であった。これらの被膜硬度は、表2で説明した好ましい範囲内である。被膜硬度の調整は、表2のサンプルと同様に、光沢剤添加量を調整することによって行われた。本評価試験では、2個のネジ部長さLと、3個の被膜硬度と、7個のメッキ膜厚とを組み合わせて得られる42種類のサンプルが、製造され、そして、評価された。なお、いずれの種類のサンプルにおいても、表1で説明したピンホール点数は、3以下であり、結晶粒の平均断面積は、0.01〜0.03μm2の範囲内であり、ネジ部55の呼び径は、M10(10mm)であった。
耐久性の評価方法は、表3の方法と同じである。表4に示すように、ネジ部長さLが26.5mmである場合には、ネジ部長さLが19mmである場合よりも、耐久性が良好であった(特に、メッキ膜厚が1〜10μmの範囲内の場合)。このようにネジ部長さLが長い場合に耐久性が良好である理由は、主体金具50に印加される荷重が、長いネジ部55に分散されるからだと推定される。このように、ネジ部長さLが長いほど、耐久性を向上し易いと推定される。例えば、ネジ部長さLとしては、26.5mm以上の値を採用することが好ましい。なお、実用的なスパークプラグ100を製造するためには、ネジ部長さLが長過ぎないことが好ましい。例えば、ネジ部長さLは、35mm以下であることが好ましく、30mm以下であることが特に好ましい。ネジ部長さLのこのような好ましい範囲は、ネジ部55の呼び径がM10よりも小さい場合にも適用可能と推定される。なお、ネジ部長さLが、このような好ましい範囲外であってもよい。
また、表4に示すように、メッキ膜90が薄い場合よりも厚い場合の方が、耐久性が良好であった。この理由は、表3で説明した通りである。なお、比較的良好な耐久性、具体的には、A評価の耐久性を実現したメッキ膜厚は、13、20、25(μm)であった。メッキ膜厚がこれら3個の値のいずれかである場合には、ネジ部長さLと被膜硬度とに拘わらず、耐久性がA評価であった。これらの3個の値から任意に選択された値を、厚さの下限値として採用してもよい。例えば、厚さとしては、13μm以上の値を採用してもよい。また、これらの値のうち、下限以上の任意の値を上限として採用してもよい。例えば、厚さとしては、25μm以下の値を採用してもよい。
F.変形例:
(1)表1に示す耐食性とピンホール点数とは、結晶粒の平均断面積とメッキ膜厚とから大きな影響を受けると推定される。従って、表1から特定される平均断面積の好ましい範囲とメッキ膜厚の好ましい範囲とは、種々の被膜硬度とネジ部55の種々の呼び径と種々の長さLとに、適用可能と推定される。
(2)表2に示す外観と密着性とは、結晶粒の平均断面積と被膜硬度とメッキ膜厚とから大きな影響を受けると推定される。従って、表2から特定される平均断面積の好ましい範囲と被膜硬度の好ましい範囲とメッキ膜厚の好ましい範囲とは、ネジ部55の種々の呼び径と種々の長さLとに適用可能と推定される。
(3)主体金具50の工具係合部51の外観形状としては、略六角柱に限らず、スパークプラグ100を締め付けるための工具(例えば、プラグレンチ)と係合可能な種々の形状を採用可能である。一般には、工具係合部51の形状としては、中心軸CLに垂直な断面における輪郭の形状が多角形である形状を採用可能である。多角形の複数の辺に対応する工具係合部51の複数の平らな側面によって、工具と工具係合部51との係合を実現可能である。
(4)ニッケルメッキ層90の厚さの測定位置としては、主体金具50の平らな面上の位置を採用することが好ましい。平らな面上では、曲がった面上と比べて、面上の位置の変化に対するニッケルメッキ層90の厚さの変化が小さいので、厚さを適切に測定できる。一般的には、工具係合部51は、工具(例えば、プラグレンチ)と接触するための平らな複数の側面を有している。このような工具係合部51の1個の側面上でニッケルメッキ層90の厚さを測定すれば、厚さを容易に測定できる。また、厚さを適切に測定するためには、測定位置として、1個の側面の中心位置(側面上に質量が均等に分布していると仮定した場合の重心の位置)を採用することが好ましい。
ニッケルメッキ層90に含まれる結晶粒の平均断面積の測定位置としては、厚さの測定位置と同様に、主体金具50の平らな面上の位置を採用することが好ましい。例えば、工具係合部51の1個の側面上の位置(特に、1個の側面の中心位置)を採用することが好ましい。
ニッケルメッキ層90のビッカース硬度の測定位置としても、厚さの測定位置と同様に、主体金具50の平らな面上の位置を採用することが好ましい。例えば、工具係合部51の1個の側面上の位置(特に、1個の側面の中心位置)を採用することが好ましい。
(5)ニッケルメッキ層90は、主体金具50の少なくとも外周を被覆すればよい。すなわち、主体金具50の内周面(すなわち、貫通孔59を形成する面)には、ニッケルメッキ層90が形成されなくてもよい。この場合も、ニッケルメッキ層90は、主体金具50の露出面(すなわち、外周面)を保護できるので、主体金具50(ひいては、スパークプラグ100)の耐久性を向上できる。
(6)メッキ処理の手順としては、図3で説明した手順に代えて他の種々の手順を採用可能である。例えば、ニッケルストライクメッキ処理で用いられるメッキ液の組成としては、上述した組成に代えて他の種々の組成を採用可能である。電解ニッケルメッキ処理で用いられるメッキ液の組成としては、上述した組成に代えて他の種々の組成を採用可能である。例えば、メッキ液への光沢剤の添加を省略してもよい。また、ニッケルストライクメッキ処理を省略してもよい。また、電解ニッケルメッキ処理よりも後に、電解クロメート処理を行ってもよい。また、電解ニッケルメッキ処理よりも後に、防錆油を塗布する処理を行ってもよい。
(7)スパークプラグ100の構成としては、図1で説明した構成に代えて他の種々の構成を採用可能である。例えば、接地電極30のうちの間隙gを形成する部分に、中心電極20のチップ部28と同様のチップ部が配置されてもよい。
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。