以下、図面を参照して、本発明にかかるカプセル型医療装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる生体組織採取システムの一構成例を模式的に示すブロック図である。この実施の形態1にかかる生体組織採取システム11は、被検体の内部にカプセル型医療装置を導入し、この導入したカプセル型医療装置によって被検体内部の所望部位から生体組織塊を採取するためのシステムである。具体的には、図1に示すように、生体組織採取システム11は、患者等の被検体1の内部に導入されて被検体1内部の生体組織塊を採取するカプセル型医療装置2と、アンテナ3aを介してカプセル型医療装置2から送信された情報を受信する受信部3と、カプセル型医療装置2によって撮像された被検体1の体内画像等を表示する表示部4とを備える。また、生体組織採取システム11は、被検体1内部のカプセル型医療装置2を誘導するための磁界を発生する磁界発生部5と、磁界発生部5に電力を供給する電力供給部6と、磁界発生部5を移動させる移動部7と、各種情報を入力する入力部8と、被検体1の体内画像等の各種情報を記憶する記憶部9と、かかる生体組織採取システム11の各構成部を制御する制御部10とを備える。
カプセル型医療装置2は、被検体1の内部に導入可能な大きさに形成されたカプセル形状の医療装置であり、被検体1の体内部位から生体組織塊を採取する組織塊採取機能を有する。また、カプセル型医療装置2は、カプセル型筐体の内部に撮像機能および無線通信機能を有する。かかるカプセル型医療装置2は、経口摂取等によって被検体1の内部に導入され、蠕動運動等によって被検体1の消化管内部を移動しつつ被検体1の体内画像を順次撮像し、その都度、得られた体内画像を含む画像信号を被検体1の外部(具体的には受信部3のアンテナ3a)に順次無線送信する。また、カプセル型医療装置2は、被検体1内部における所望の体内部位(例えば病理診断等の生体検査によって生体組織が検査される検査対象の体内部位)に到達した際に、この体内部位から生体組織塊を切断し、採取する。その後、カプセル型医療装置2は、採取した生体組織塊をカプセル型筐体内部に保管して被検体1の消化管内部を移動し、最終的に被検体1の外部に自然排出される。なお、かかるカプセル型医療装置2によって採取された生体組織塊は、カプセル型筐体内部から取り出され、病理診断等の生体検査のサンプルとして用いられる。
受信部3は、被検体1の体表面に配置された複数のアンテナ3aと接続され、これら複数のアンテナ3aを介してカプセル型医療装置2からの無線信号を受信し、この受信した無線信号に含まれる画像信号を取得する。詳細には、受信部3は、複数のアンテナ3aを介して順次受信した無線信号の受信電界強度を比較し、これら複数のアンテナ3aの中から最も受信電界強度の高いアンテナを選択する。受信部3は、このように選択したアンテナを介してカプセル型医療装置2から受信した無線信号に対して復調処理等を行って、この無線信号に含まれる画像信号を抽出する。受信部3は、この抽出した画像信号を制御部10に送信する。なお、かかる受信部3によって抽出(復調)された画像信号は、上述したカプセル型内視鏡2が被検体1内部において撮像した体内画像を含む。
複数のアンテナ3aは、被検体1の内部に導入されたカプセル型医療装置2からの無線信号を捕捉するためのものであり、カプセル型医療装置2を体内に導入する被検体1の体表面上に分散配置される。かかるアンテナ3aのうちの少なくとも1つのアンテナは、被検体1の内部(例えば食道、胃、小腸、大腸等の消化管内部)に位置するカプセル型医療装置2からの無線信号を捕捉し、捕捉した無線信号を受信部3に送信する。
表示部4は、CRTディスプレイまたは液晶ディスプレイ等の各種ディスプレイを用いて実現され、制御部10によって表示指示された各種情報を表示する。具体的には、表示部4は、カプセル型医療装置2が撮像した被検体1の体内画像群、入力部8によって入力された被検体1の患者情報および検査情報、被検体1の内部におけるカプセル型医療装置2の現在位置情報等を表示する。
磁界発生部5は、複数の電磁石を用いて実現され、ベッド12に載置された被検体1内部のカプセル型医療装置2に印加する磁界を発生させる。具体的には、図2に示すように、磁界発生部5は、テーブル5fの平面上に配置される複数の電磁石5a〜5eを有する。複数の電磁石5a〜5eは、電力供給部6から供給される電力によって磁界を発生させるコイル状の電磁石である。電磁石5aは、残りの電磁石5b〜5eによって囲まれる態様でテーブル5fの略中心部に配置される。電磁石5b,5cは、この電磁石5aについて互いに対称な位置に配置され、電磁石5d,5eは、この電磁石5aについて互いに対称な位置であって電磁石5aを中心に電磁石5b,5cを90度回転させた位置に配置される。かかる電磁石5a〜5eは、コイル状の電磁石5aの中心軸近傍の3次元空間13内に回転磁界および勾配磁界を形成する。
なお、電磁石5a〜5eは同一面上(すなわちテーブル5fの面上)に配置されているので、かかるテーブル5f上の電磁石5a〜5eは、3次元空間13内に回転磁界を発生させつつ、この3次元空間13内に位置する磁石(例えば後述するカプセル型医療装置2内の磁石24)を電磁石5a側に引き寄せる力(磁気引力)または電磁石5aから引き離す力(磁気斥力)を増減させている。かかる磁気引力または磁気斥力は、電磁石5a〜5eが形成した勾配磁界による磁気力であり、上述したカプセル型医療装置2を被検体1の体内部位に押し付ける力になる。
電力供給部6は、被検体1内部のカプセル型医療装置2に対して印加する磁界(回転磁界および勾配磁界)を形成するための電力を磁界発生部5に供給する。具体的には、電力供給部6は、制御部10の制御に基づいて、磁界発生部5の電磁石5a〜5eに交流電流を供給し、これによって、磁界発生部5に回転磁界および勾配磁界を形成させる。すなわち、上述した磁界発生部5による回転磁界および勾配磁界は、かかる電力供給部6から供給される交流電流(電力供給部6からの通電量)によって制御される。
移動部7は、被検体1内部のカプセル型医療装置2に回転磁界および勾配磁界が印加されるように被検体1に対して相対的に磁界発生部5を移動するためのものである。具体的には、被検体1を載置するベッド12の載置面に対して略平行なXY平面が設定され、移動部7は、制御部10の制御に基づいて、このXY平面内の座標位置に磁界発生部5を移動する。この場合、移動部7は、上述した3次元空間13(図2参照)内に被検体1内部のカプセル型医療装置2が位置するように磁界発生部5を移動する。
入力部8は、キーボードおよびマウス等の入力デバイスを用いて実現され、医師または看護師等のユーザによる入力操作に応じて、制御部10に各種情報を入力する。かかる入力部8が制御部10に入力する各種情報は、例えば、制御部10に対して指示する指示情報、被検体の患者情報、被検体の検査情報等である。なお、被検体の患者情報は、被検体を特定する情報であり、例えば、被検体の患者名、患者ID、生年月日、性別、年齢等である。また、被検体の検査情報は、被検体内部に導入したカプセル型医療装置2によって体内部位から採取した生体組織塊を用いて実施される生体検査を特定する情報であり、例えば、検査ID、検査日等である。
記憶部9は、RAM、EEPROM、フラッシュメモリ、またはハードディスク等の書き換え可能に情報を保存する各種記憶メディアを用いて実現される。記憶部9は、制御部10が記憶指示した各種情報を記憶し、記憶した各種情報の中から制御部10が読み出し指示した情報を制御部10に送出する。かかる記憶部9は、制御部10の制御に基づいて、例えば、被検体1の体内画像群と、被検体1の患者情報および検査情報と、被検体1内部におけるカプセル型医療装置2の現在位置情報とを記憶する。
制御部10は、生体組織採取システム11の各構成部(カプセル型医療装置2、受信部3、表示部4、磁界発生部5、電力供給部6、移動部7、入力部8、および記憶部9)を制御し、且つ、かかる各構成部間における信号の入出力を制御する。具体的には、制御部10は、入力部8によって入力された指示情報に基づいて、上述した受信部3、表示部4、移動部7、および記憶部9の各動作を制御し、磁界発生部5に対する電力供給部6の通電量を制御する。かかる制御部10は、この電力供給部6の通電量の制御を通して磁界発生部5の磁界方向および磁界強度を制御する。制御部10は、かかる磁界発生部5の制御によって被検体1内部のカプセル型医療装置2の磁気誘導を制御する。
また、制御部10は、被検体1の体内画像を生成する画像処理部10aと、被検体1内部におけるカプセル型医療装置2の位置を算出する位置算出部10bとを有する。画像処理部10aは、カプセル型医療装置2からの無線信号から復調された画像信号を受信部3から取得し、この取得した画像信号に対して所定の画像処理を行って、この画像信号に対応する画像情報すなわち被検体1の体内画像を生成(再構築)する。かかる画像処理部10aによって生成された体内画像群は、上述したように、表示部4に表示され、記憶部9に記憶される。
位置算出部10bは、受信部3が複数のアンテナ3aを介してカプセル型医療装置2からの無線信号を順次受信した際の各アンテナの受信電界強度(例えば複数のアンテナ3aのうちの上位3つの受信電界強度)を受信部3から取得し、この取得した受信電界強度と複数のアンテナ3a内の各アンテナの位置情報とをもとに、三角法等に基づいて被検体1内部におけるカプセル型医療装置2の現在位置を算出する。制御部10は、かかる位置算出部10bによって算出された現在位置情報と、この現在位置に存在するカプセル型医療装置2が撮像した被検体1の体内画像とを対応付ける。かかる制御部10によって対応付けられた被検体1の体内画像およびカプセル型医療装置2の現在位置情報は、表示部4に表示され、記憶部9に記憶される。
つぎに、上述したカプセル型医療装置2の構成について詳細に説明する。図3は、本発明の実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2の一構成例を示す模式図である。図4は、図3に示すカプセル型医療装置2のA−A線断面模式図である。図5は、図3に示すカプセル型医療装置2の外装カバーをスライドして切断部を露出させた状態を示す模式図である。図3〜5に示すように、この実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2は、筒状筐体20aとドーム形状筐体20bとによって形成されるカプセル型筐体20と、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断する切断部20cと、切断部20cを覆う外装カバー20dとを備える。また、カプセル型医療装置2は、被写体を照明する照明部21aと、被写体の光学像を結像する光学系21bと、被写体の画像を撮像する撮像部21cと、撮像部21cによって撮像された画像を含む画像信号を生成する信号処理部22と、この画像信号を外部に無線送信する送信部23とを備える。さらに、カプセル型医療装置2は、外部の回転磁界に追従してカプセル型筐体20を回転駆動させる磁石24と、外部磁界を検知する磁気センサ25と、カプセル型筐体20に対して相対的に外装カバー20dをスライドさせる駆動部26と、生体組織塊を保管する保管部27と、かかるカプセル型医療装置2の各構成部を制御する制御部28と、電池等によって実現される電源部29とを備える。
カプセル型筐体20は、被検体1の内部に導入可能な大きさに形成されたカプセル型の筐体であり、一端がドーム形状をなす筒状筐体20aの他端(開口端)をドーム形状筐体20bによって塞いで形成される。ドーム形状筐体20bは、所定の波長帯域の光(例えば可視光)に対して透明な光学ドームである。一方、筒状筐体20aは略不透明な筐体であり、筒状筐体20aの一部分には開口部20eが形成される。この開口部20eの縁部には切断部20cが配置され、この開口部20eに連通する筒状筐体20aの内部空間には保管部27が設けられる。また、筒状筐体20aの外壁部には、この切断部20cおよび開口部20eを覆う態様でスライド式の外装カバー20dが配置される。かかる筒状筐体20aとドーム形状筐体20bとによって形成されるカプセル型筐体20の内部において、照明部21a、光学系21b、および撮像部21cは、ドーム形状筐体20b側に配置され、信号処理部22、送信部23、磁石24、磁気センサ25、駆動部26、制御部28、および電源部29は、筒状筐体20a側に配置される。
切断部20cは、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断し、採取する切断採取手段として機能する。具体的には、切断部20cは、例えばV字形状に形成された刃を有する刃物であり、カプセル型筐体20の周方向(以下、単に周方向という場合がある)に刃を向ける態様で筒状筐体20aの開口部20eの縁部に固定配置される。かかる切断部20cは、後述する磁石24の作用によってカプセル型筐体20(詳細には筒状筐体20a)とともにカプセル型筐体20の周方向に回転し、この結果、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断し、採取する。かかる切断部20cによって切断採取された生体組織塊は、開口部20eからカプセル型筐体20の内部に取り込まれる。
外装カバー20dは、切断部20cによって被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する時以外に切断部20cを覆うための部材である。具体的には、外装カバー20dは、カプセル型筐体20の外壁面に沿って中心軸CLの方向(すなわちカプセル型筐体20の長手方向)にスライド可能な環状部材であり、軸を介して駆動部26と接続される。なお、この中心軸CLは、図3,5に示すように、カプセル型筐体20の長手方向の中心軸である。駆動部26は、制御部28の制御に基づいて中心軸CLの方向に外装カバー20dを往復移動させて、被検体1の体内部位に切断部20cを露出した状態と切断部20cを覆った状態とを切り替える。外装カバー20dは、切断部20cによって被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する時以外に切断部20cを覆い、これによって、切断部20cと被検体1の体内部位との意図しない接触を防止する。また、かかる外装カバー20dは、切断部20cとともに筒状筐体20aの開口部20eを覆う蓋部としても機能し、開口部20eを覆うことによって、カプセル型筐体20の内部から開口部20eを通って外部に生体組織塊が零れる事態を防止できる。
磁石24は、外部の回転磁界に反応してカプセル型筐体20の周方向の回転力を生成する回転駆動部として機能する。具体的には、磁石24は、永久磁石、電磁石、または磁性体によって実現され、カプセル型筐体20の長手方向の中心軸CLに垂直な方向、すなわちカプセル型筐体20の径方向に着磁する態様で筒状筐体20aの内部に固定配置される。かかる磁石24は、上述した磁界発生部5による勾配磁界に反応して被検体1の体内部位にカプセル型筐体20を押し付けるとともに、上述した磁界発生部5による回転磁界に反応してカプセル型筐体20とともに切断部20cをカプセル型筐体20の周方向に回転させる。この場合、かかる磁石24によって生成されたカプセル型筐体20の周方向の回転力は、カプセル型筐体20とともに周方向に回転する切断部20cによって、体内部位から生体組織塊を切断するための切断力に変換される。
照明部21aは、LED等の発光素子を用いて実現され、ドーム形状筐体20b越しに被写体(具体的には被検体1の臓器内部)を照明する。光学系21bは、集光レンズおよびレンズ枠等を用いて実現され、照明部21aによって照明された被写体からの反射光を集光して、撮像部21cの受光面に被写体の光学像を結像する。撮像部21cは、CCDまたはCMOS等の固体撮像素子を用いて実現され、光学系21bによって結像された被写体の光学像、すなわち被検体1の体内画像を撮像する。信号処理部22は、かかる撮像部21cによって光電変換された信号を取得し、この取得した信号に対して所定の信号処理を行って、被検体1の体内画像を含む画像信号を生成する。
送信部23は、信号処理部22によって生成された画像信号を取得し、この取得した画像信号に対して所定の変調処理等を行って、この画像信号を含む無線信号を生成する。送信部23は、このように生成した無線信号を外部に送信する。かかる送信部23によって送信された無線信号は、上述したように、複数のアンテナ3aを介して受信部3に受信される。
磁気センサ25は、制御部28に基づいて、常時または所定間隔で外部磁界の有無を監視し、上述した磁界発生部5がカプセル型医療装置2に外部磁界(回転磁界または勾配磁界)を印加した際に、この外部磁界を検知する。磁気センサ25は、この外部磁界の検知結果を制御部28に通知する。
制御部28は、上述した照明部21a、撮像部21c、信号処理部22、送信部23、磁気センサ25、および駆動部26を制御する。具体的には、制御部28は、照明部21aによって照明された被写体の画像(すなわち体内画像)が撮像部21によって撮像されるように照明部21aおよび撮像部21cを制御し、撮像部21cによって撮像された被検体1の体内画像を含む画像信号を外部に無線送信するように信号処理部22および送信部23を制御する。また、制御部28は、磁気センサ25から外部磁界を検知した旨の検知信号を取得した場合、駆動部26を制御して外装カバー20dを中心軸CLの方向に移動させ、これによって、被検体1の体内部位に対して切断部20cを露出する。一方、制御部28は、所定の期間以上、磁気センサ25から検知信号を取得しなかった場合、駆動部26を制御して外装カバー20dが切断部20cおよび開口部20eを覆った状態にする。
電源部29は、スイッチ回路およびボタン型の電池等を用いて実現され、スイッチ回路によってオン状態に切り替わった際に、上述した照明部21a、撮像部21c、信号処理部22、送信部23、磁気センサ25、駆動部26、および制御部28に対して電力を供給する。
保管部27は、上述した切断部20cによって切断採取された生体組織塊を保管するためのものであり、図3〜5に示すように、カプセル型筐体20の内部であって筒状筐体20aの開口部20eの近傍に設けられる。この場合、保管部27は、カプセル型医療装置2の内蔵部品(具体的には、撮像部21cおよび制御部28等の電子部品、電池等の電源部29、磁石24等)に対して隔離された態様で筒状筐体20a内部に設けられる。かかる保管部27は、壁部27aと開閉部27bとを用いて実現され、これら壁部27aおよび開閉部27bと筒状筐体20aの一部分とによって囲まれた空間内に生体組織塊を保管する。
開閉部27bは、内開き式のものであり、蓋部27c,27dと、蓋部27c,27dを開閉自在に支持するヒンジ部27e,27fと、閉状態の蓋部27c,27d間の水密を確保するシール部材27gとを用いて実現される。詳細には、蓋部27cは、ヒンジ部27eによって回動自在に支持され、このヒンジ部27eを支点にして保管部27の内側に開閉する。蓋部27dは、ヒンジ部27fによって回動自在に支持され、このヒンジ部27fを支点にして保管部27の内側に開閉する。ヒンジ部27e,27fは、トーションバネ(図示せず)を各々有し、トーションバネの付勢力によって蓋部27c,27dを閉状態(図4参照)に維持する。シール部材27gは、閉状態において蓋部27dに対向する側の蓋部27cの面に設けられ、閉状態の蓋部27c,27dの間隙を水密状態に閉塞する。
なお、かかるヒンジ部27e,27fに用いられるトーションバネは、図4に示すように蓋部27c,27dを閉状態に維持できるとともに、上述した切断部20cによって切断採取された生体組織塊が蓋部27c,27dの上に載った際に、この生体組織塊の重量によって蓋部27c,27dが開状態になる程度に、ばね定数が調整されたものである。
以上のような構成を有するカプセル型医療装置2は、図1に示した生体組織採取システム11において、被検体1の内部に導入され、その後、蠕動運動等によって被検体1の消化管内部を移動しつつ被検体1の体内画像群を撮像し、撮像した被検体1の体内画像群を外部に無線送信する。一方、制御部10は、受信部3から画像信号を順次取得し、画像処理部10aによって生成された被検体1の体内画像と位置算出部10bによって算出されたカプセル型医療装置2の現在位置情報とを表示部4に表示させる。医師または看護師等のユーザは、この表示部4に表示された体内画像および現在位置情報を確認して、被検体1内部のカプセル型医療装置2が検査対象の体内部位に到達したか否かを判断する。
カプセル型医療装置2が検査対象の体内部位に到達した場合、ユーザは、表示部4に表示された体内画像および現在位置情報を参照しつつ、入力部8を用いて磁界発生部5および移動部7を操作する。この場合、移動部7は、カプセル型医療装置2の現在位置に応じて適切な位置に磁界発生部5を移動し、この磁界発生部5は、カプセル型医療装置2の現在位置に回転磁界および勾配磁界を形成する。被検体1内部のカプセル型医療装置2は、かかる回転磁界および勾配磁界の作用によってカプセル型筐体20の周方向に切断部20cを回転させつつ、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する。この生体組織塊は、カプセル型医療装置2の保管部27に保管される。
その後、制御部10は、入力部8によって入力された指示情報に基づいて、磁界発生部5に回転磁界および勾配磁界の発生を停止させる。この結果、被検体1内部のカプセル型医療装置2は、上述した回転磁界および勾配磁界から解放され、その後、蠕動運動等によって消化管内部を移動し、最終的に被検体1の外部に自然排出される。かかるカプセル型医療装置2の保管部27に保管された生体組織塊は、医師または看護師等に回収され、病理診断等の生体検査に用いられる。
つぎに、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する際のカプセル型医療装置2の動作について説明する。図6は、実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2の切断部20cによって体内部位の一部分を捕捉した状態を例示する模式図である。図7は、実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2の切断部20cによって体内部位から生体組織塊を切断採取した状態を例示する模式図である。図8は、実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2の保管部27に生体組織塊を保管した状態を例示する模式図である。
被検体1内部のカプセル型医療装置2が検査対象の体内部位(例えば胃、小腸、大腸等の消化管内の病変部等)に到達した場合、上述した磁界発生部5は、このカプセル型医療装置2に勾配磁界H1および回転磁界H2を印加する。この場合、カプセル型医療装置2において、磁気センサ25は、磁界発生部5による回転磁界H2または勾配磁界H1を検知し、制御部28は、この磁気センサ25によって回転磁界H2または勾配磁界H1が検知されたタイミングで駆動部26に外装カバー20dを移動させ、被検体1の体内部位に切断部20cを露出した状態にする。
このような状態のカプセル型医療装置2は、勾配磁界H1に誘導される磁石24(図3参照)の作用によって、被検体1の体内部位に筒状筐体20aを押し付ける。この場合、切断部20cは、図6に示すように、勾配磁界H1によって筒状筐体20aとともに被検体1の体内部位に押し付けられ、この結果、切断部20cが体内部位に食い込むとともに、この体内部位の一部分が開口部20eから筒状筐体20aの内部に入り込む(状態A1)。
続いて、カプセル型医療装置2は、回転磁界H2に追従する磁石24の作用によって、カプセル型筐体20の周方向に回転する。この場合、切断部20cは、図6に示すように、被検体1の体内部位の一部分を捕捉しつつ、回転磁界H2によって筒状筐体20aとともにカプセル型筐体20の周方向に回転し、この結果、この体内部位の一部分を筒状筐体20aの内部に引き込む(状態A2)。
その後、カプセル型医療装置2は、この回転磁界H2に追従する磁石24の作用によって、カプセル型筐体20の周方向の回転を継続する。この場合、切断部20cは、カプセル型筐体20の周方向の回転による慣性を維持しつつ、上述した磁石24による回転力を切断力に変換し、これによって切断力を高めるとともに、上述したように筒状筐体20aの内部に引き込んだ体内部位の一部分から、図7に示すように生体組織塊15を切断採取する(状態A3)。
さらに、カプセル型医療装置2は、この回転磁界H2に追従する磁石24の作用によって、カプセル型筐体20の周方向の回転を継続する。この場合、切断部20cによって切断採取された生体組織塊15は、図7に示すように、保管部27に向けて落下し、自重等によって蓋部27c,27dを押し開けて保管部27の内部に入り込む(状態A4)。
続いて、蓋部27c,27dは、図8に示すように閉状態になり、この結果、保管部27は、生体組織塊15を外部に零すことなく保管する(状態A5)。その後、かかる保管部27に生体組織塊15を保管した状態のカプセル型医療装置2は、勾配磁界H1および回転磁界H2から解放され、蠕動運動等によって被検体1の外部に自然排出される。この被検体1からカプセル型医療装置2が自然排出された後、保管部27内部の生体組織塊15は、医師または看護師等によって回収され、病理診断等の生体検査に用いられる。
ここで、カプセル型医療装置2は、切断部20cによって被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する際、外部の勾配磁界によって体内部位にカプセル型筐体20を押し付けつつ、外部の回転磁界に追従してカプセル型筐体20の周方向に切断部20cを回転させている。このため、カプセル型医療装置2は、このカプセル型筐体20の周方向に回転する切断部20cの回転慣性を維持しつつ、この外部の回転磁界に追従して回転する磁石24によって生成される周方向の回転力を切断部20cの切断力に変換することができ、これによって、例え小腸または大腸等の狭い空間内であっても、この切断部20cの切断力を十分に高めることができる。このように高められた切断部20cの切断力は、カプセル型筐体から出し入れされる際の直線的なストロークがカプセル型筐体のサイズによって狭い範囲に制限される従来のカプセル型医療装置の鉗子等に比して極めて大きなものになり、被検体1の体内部位から塊状の生体組織(すなわち生体組織塊15)を確実に切断採取するに十分な切断力になる。
かかるカプセル型医療装置2によって採取された生体組織塊15は、生体検査のサンプルとして十分な大きさのものであり、かかる生体組織塊15を用いて病理診断等の生体検査を実施することによって、生体検査の精度を高めることができるとともに、検査対象の体内部位における生体組織の断面状態等の少量の生体組織からは取得が困難な多くの医学的情報を取得できる。
なお、上述したカプセル型医療装置2は、カプセル型筐体20の周方向の回転数が1回転に満たない場合を例示し、この1回転未満のカプセル型筐体20とともに周方向に回転する切断部20cによって、体内部位から生体組織塊15を確実に切断採取するに十分な切断力を得ていたが、さらに、この切断部20cの回転数を増加することによって切断部20cの切断力を一層高めることができる。詳細には、カプセル型医療装置2は、外部の回転磁界に追従してカプセル型筐体20の周方向の回転を1回転以上継続して行うことによって、このカプセル型筐体20の周方向に回転する切断部20cの回転数を1回転以上に増加でき、これによって、生体組織塊を切断採取する際の切断部20cの移動量を、カプセル型筐体20の周方向に沿って無限長(カプセル型筐体20の周方向の外周長以上)に増大させることができる。この結果、カプセル型医療装置2は、カプセル型筐体20の回転数が1回転未満の場合に比して切断部20cの切断力を一層高めることができ、体内部位から生体組織塊15を一層確実に切断採取できる。
以上、説明したように、本発明の実施の形態1では、カプセル型筐体の周方向に刃を向ける態様でカプセル型筐体に切断部を固定配置し、このカプセル型筐体内に配置された回転駆動部がカプセル型筐体の周方向の回転力を生成し、この生成した回転力によってカプセル型筐体とともに切断部をカプセル型筐体の周方向に回転するようにし、この周方向に回転する切断部によって被検体の体内部位から生体組織塊を切断採取するように構成した。このため、この切断部の回転慣性を維持しつつ、カプセル型筐体の周方向の回転力を切断部の切断力に変換することができ、これによって、例えば小腸または大腸等の狭い生体内空間においても、この切断部の切断力を十分に高めることができ、この結果、カプセル型筐体から出し入れされる際の直線的なストロークがカプセル型筐体のサイズによって狭い範囲に制限される従来のカプセル型医療装置の鉗子等に比して極めて大きな切断力を得ることができ、被検体の所望の体内部位から生体検査に必要な大きさの生体組織塊を確実に切断採取できるカプセル型医療装置を実現できる。
また、かかるカプセル型筐体の周方向の回転力を生成する回転駆動部として、カプセル型筐体の径方向に着磁した態様の磁石をカプセル型筐体の内部に配置し、外部の回転磁界に追従して磁石とともにカプセル型筐体を周方向に回転させ、このカプセル型筐体とともに切断部を周方向に回転させるように構成した。このため、かかる切断部を周方向に回転させるための電力源をカプセル型筐体内部に配置する必要がなく、これによって、カプセル型医療装置の小型化を促進できるとともに、カプセル型医療装置の消費電力を低減することができる。
さらに、外部の勾配磁界によって磁石とともにカプセル型筐体を被検体の体内部位に押し付けるようにしているので、カプセル型医療装置の消費電力を増大させることなく、体内部位に切断部を押し付けることができ、この切断部によって体内部位の一部分をカプセル型筐体内部に容易に取り込むことができ、この結果、この取り込んだ体内部位の一部分から切断部によって容易に生体組織塊を切断採取することができる。
(実施の形態1の変形例1)
つぎに、本発明の実施の形態1の変形例1について説明する。上述した実施の形態1では、外部の回転磁界によってカプセル型筐体20の周方向に切断部20cを回転させて体内部位から生体組織塊15を切断採取していたが、この実施の形態1の変形例1では、カプセル型筐体の周方向に回転可能な外装部に切断部を配置し、モータの駆動力(回転力)によって外装部とともに切断部を周方向に回転させて体内部位から生体組織塊を切断採取するようにしている。
図9は、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる生体組織採取システムの一構成例を示すブロック図である。図9に示すように、この変形例1にかかる生体組織採取システム31は、上述した実施の形態1にかかる生体組織採取システム11のカプセル型医療装置2に代えてカプセル型医療装置32を備え、受信部3に代えて送受信部33を備え、制御部10に代えて制御部30を備える。また、生体組織採取システム31は、上述した磁界発生部5、電力供給部6、および移動部7を備えていない。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
カプセル型医療装置32は、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2と同様に被検体1の内部に導入され、その後、蠕動運動等によって被検体1の消化管内部を移動しつつ被検体1の体内画像を順次撮像し、その都度、得られた体内画像を含む画像信号を被検体1の外部(具体的には送受信部33のアンテナ3a)に順次無線送信する。また、カプセル型医療装置32は、被検体1内部における所望の体内部位に到達した際、送受信部33によって無線送信された制御部30からの制御信号を受信し、この受信した制御信号に基づいて動作し、この結果、この体内部位から生体組織塊を切断採取する。かかるカプセル型医療装置32は、採取した生体組織塊をカプセル型筐体内部に保管して被検体1の消化管内部を移動し、最終的に被検体1の外部に自然排出される。なお、かかるカプセル型医療装置32の構成の詳細については、後述する。
送受信部33は、被検体1の体表面に配置された複数のアンテナ3aと接続され、これら複数のアンテナ3aのいずれか一つを介して被検体1内部のカプセル型医療装置32に無線信号を送信する。具体的には、送受信部33は、カプセル型医療装置32を制御するための制御信号を制御部30から取得し、この取得した制御信号に対して所定の変調処理等を行って、この制御信号を含む無線信号を生成する。送受信部33は、この生成した無線信号をアンテナ3aを介して被検体1内部のカプセル型医療装置32に送信する。なお、かかる送受信部33が有する他の機能は、上述した実施の形態1にかかる生体組織採取システム11の受信部3と同様である。
制御部30は、上述した磁界発生部5、電力供給部6、および移動部7を制御する代わりに、被検体1内部のカプセル型医療装置32に対する制御信号を送受信部33に無線送信させ、この制御信号によって被検体1内部のカプセル型医療装置32を制御する。具体的には、制御部30は、被検体1内部のカプセル型医療装置32が所望の体内部位に到達した場合、入力部8によって入力された指示情報に基づいて、この被検体1内部のカプセル型医療装置32に対する制御信号を生成し、この生成した制御信号を送受信部33に送信する。そして、制御部30は、この制御信号を無線送信するように送受信部33を制御する。なお、この制御部30によって生成される制御信号は、被検体1内部のカプセル型医療装置32に生体組織塊の切断採取を指示するためのものである。かかる制御部30が有する他の機能は、上述した磁界発生部5、電力供給部6、および移動部7の制御機能を除き、実施の形態1にかかる生体組織採取システム11の制御部10と同様である。
つぎに、この変形例1にかかるカプセル型医療装置32の構成について詳細に説明する。図10は、本発明の実施の形態1の変形例1にかかるカプセル型医療装置32の一構成例を示す模式図である。図11は、図10に示すカプセル型医療装置32のB−B線断面模式図である。図12は、図10に示すカプセル型医療装置32の外装カバーをスライドして切断部を露出させた状態を示す模式図である。図10〜12に示すように、この変形例1にかかるカプセル型医療装置32は、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2のカプセル型筐体20に代えてカプセル型筐体40を備え、送信部23に代えて送受信部43を備え、保管部27に代えて保管部47を備え、制御部28に代えて制御部48を備える。また、カプセル型医療装置32は、上述した磁石24および磁気センサ25を備えておらず、カプセル型筐体40の周方向に回転自在な外装部40cと、体内部位にカプセル型筐体40を一時固定するための固定部41と、カプセル型筐体40の周方向に外装部40cを回転するためのモータ44と、保管部47の開閉駆動を行うためのモータ45とを備える。なお、この変形例1にかかるカプセル型医療装置32において、切断部20cは、カプセル型筐体40の周方向に刃を向ける態様で外装部40cの端部に固定され、外装カバー20dは、この外装部40cに固定配置された切断部20cを覆う。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
カプセル型筐体40は、被検体1の内部に導入可能な大きさに形成されたカプセル型の筐体であり、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2の筒状筐体20aに代えて筒状筐体40aを備える。かかるカプセル型筐体40は、一端に外装部40cが設けられる筒状筐体40aの他端(開口端)をドーム形状筐体20bによって塞いで形成される。筒状筐体40aは略不透明な筐体であり、筒状筐体40aの一部分には、後述する保管部47に通じる凹部が形成される。かかる筒状筐体40aの凹部は、例えば図11に示す筒状筐体40aの横断面のように、円形のうちの1/4の部分が欠けた態様に形成される。また、筒状筐体40aには、後述する固定部41の針41aを出し入れするための開口部40dが形成される。かかる筒状筐体40aとドーム形状筐体20bとによって形成されるカプセル型筐体40の内部において、照明部21a、光学系21b、および撮像部21cは、ドーム形状筐体20b側に配置され、信号処理部22、送受信部43、駆動部26、固定部41、モータ44,45、制御部48、および電源部29は、筒状筐体40a側に配置される。
外装部40cは、筒状部の一端にドーム形状部が形成された有底構造体であり、筒状筐体40aの一端(ドーム形状筐体20bと反対側の端部)を覆う態様で筒状筐体40aに回転自在に設けられる。この外装部40cの開口端の一部分には、矩形状に切り欠いた部分(切り欠け部40e)が形成され、この切り欠け部40eの縁部に切断部20cが固定配置される。なお、この切断部20cは、上述したように、カプセル型筐体40の周方向すなわち外装部40cの周方向に刃を向ける。かかる外装部40cは、モータ44の駆動力(回転力)によって切断部20cとともにカプセル型筐体40の周方向に回転しつつ、上述した筒状筐体40aの凹部(すなわち保管部47に通じる部分)を開閉する。
また、外装部40cは、図11に示すように、内壁部であって切断部20cの近傍にストッパ46を備える。ストッパ46は、外装部40cの内壁部に一体的に形成され、筒状筐体40aの外壁面上を摺動しつつ、外装部40cとともに周方向に回転する。かかるストッパ46は、切断部20cによって切断採取された生体組織塊が筒状筐体40aと外装部40cとの間隙に入り込む事態を防止する。
モータ44は、カプセル型筐体40の周方向の回転力を生成する回転駆動部として機能する。具体的には、モータ44は、カプセル型筐体40の長手方向の中心軸CLに平行な回転軸44aを有し、この回転軸44aを介して外装部40cと接続される。かかるモータ44は、制御部48の制御に基づいて駆動して、カプセル型筐体40の周方向に外装部40cを回転する。なお、かかるモータ44によって生成された周方向の回転力は、外装部40cとともに周方向に回転する切断部20cによって切断力に変換される。
モータ45は、保管部47の開閉駆動を実現する駆動力を生成する駆動源である。具体的には、モータ45は、例えば中心軸CLに平行な回転軸45aを有し、この回転軸45aを介して保管部47(詳細には、図11に示す開閉部47bの蓋部47c)と接続される。かかるモータ45は、制御部48の制御に基づいて、保管部47の蓋部47cを開閉駆動する。
固定部41は、上述した外装部40cが周方向に回転する際にカプセル型筐体40を体内部位に固定するための機構である。具体的には、固定部41は、被検体1の体内部位に穿刺する針41aと、磁性体によって形成される台座41bと、ソレノイド41cとを備える。針41aは、筒状筐体40aの内部であって開口部40dを介して出し入れ可能な位置に配置される。台座41bには、針41aの基端部(尖形の先端部の他端側)が固定される。ソレノイド41cは、制御部48によって供給された電流をもとに磁界を発生する。台座41bは、かかるソレノイド41cによって形成された磁界に反応して、針41aとともにカプセル型筐体40の径方向に往復移動する。これによって、針41aは、開口部40dを介してカプセル型筐体40から突出し、被検体1の体内部位を突き刺す。この結果、固定部41は、被検体1の体内部位にカプセル型筐体40を一時的に固定できる。一方、針41aは、かかる台座41bの往復移動に伴ってカプセル型筐体40の内部に収容される。この結果、固定部41は、体内部位への針41aの穿刺によるカプセル型筐体40の固定状態を解除する。
送受信部43は、上述したアンテナ3aを介して外部の送受信部33からの無線信号を受信し、この受信した無線信号に対して所定の復調処理等を行って、この無線信号に含まれる制御信号を抽出(復調)する。送受信部43は、この抽出した制御信号を制御部48に送信する。なお、この復調された制御信号は、上述した外部の制御部30によって生成された制御信号であり、カプセル型医療装置32に生体組織塊の切断採取を指示するものである。かかる送受信部43が有する他の機能は、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2の送信部23と同様である。
制御部48は、上述した外部の制御部30からの制御信号を送受信部43から取得し、この取得した制御信号に基づいて、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取するための各種動作を制御する。具体的には、制御部48は、この制御信号に基づいて、駆動部26、固定部41、モータ44の各駆動を制御する。かかる制御部48の制御によって、駆動部26は、中心軸CLの方向に外装カバー20dを移動させて、被検体1の体内部位に外装部40cの端部と切断部20cとを露出し、固定部41は、被検体1の体内部位に針41aを穿刺して体内部位にカプセル型筐体40を固定し、モータ44は、カプセル型筐体40の周方向に外装部40cと切断部20cとを回転する。また、制御部48は、かかるモータ44の制御を開始してから所定時間後にモータ45を制御し、モータ45は、かかる制御部48の制御に基づいて、保管部47の開閉部47bを開閉する。
また、制御部48は、送受信部43から制御信号を取得してから所定の時間が経過後、駆動部26、固定部41、モータ44の各駆動を制御する。かかる制御部48の制御によって、モータ44は、駆動を停止して外装部40cと切断部20cとの回転を停止させ、固定部41は、カプセル型筐体40の内部に針41aを収容して体内部位へのカプセル型筐体40の固定状態を解除し、駆動部26は、中心軸CLの方向に外装カバー20dを移動させて、外装部40cの端部と切断部20cとが外装カバーによって覆われた状態にする。なお、かかる制御部48が有する他の機能は、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2の制御部28と同様である。
保管部47は、上述した切断部20cによって切断採取された生体組織塊を保管するためのものであり、図10〜12に示すように、カプセル型筐体40の凹部に設けられる。この場合、保管部47は、カプセル型医療装置32の内蔵部品(具体的には、撮像部21cおよび制御部48等の電子部品、電池等の電源部29、固定部41等)に対して隔離された態様で筒状筐体40aの内部に設けられる。かかる保管部47は、壁部47aと開閉部47bとを用いて実現され、これら壁部47aおよび開閉部47bと筒状筐体40aの一部分とによって囲まれた空間内に生体組織塊を保管する。
開閉部47bは、内開き式のものであり、上述したモータ45の駆動によって開閉する蓋部47cと、壁部47dと、閉状態の蓋部47cと壁部47dとの間の水密を確保するシール部材27gとを用いて実現される。詳細には、蓋部47cは、モータ45の回転軸45aによって支持され、この回転軸45aを支点にしてモータ45の駆動力によって保管部47の内側に開閉する。壁部47dは、筒状筐体40aに固定され、蓋部47cと共同して保管部47を閉状態にする。なお、シール部材27gは、閉状態において壁部47dに対向する側の蓋部47cの面に設けられ、閉状態の蓋部47cと壁部47dとの間隙を水密状態に閉塞する。
以上のような構成を有するカプセル型医療装置32は、図9に示した生体組織採取システム31において、被検体1の内部に導入され、その後、蠕動運動等によって被検体1の消化管内部を移動し、検査対象の体内部位に到達する。この場合、ユーザは、表示部4に表示された体内画像および現在位置情報を参照しつつ、入力部8を操作して被検体1内部のカプセル型医療装置32に生体組織塊を切断採取するよう指示する。制御部30は、入力部8によって入力された指示情報に基づいてカプセル型医療装置32への制御信号を生成し、送受信部33は、アンテナ3aを介して被検体1内部のカプセル型医療装置32に制御部30からの制御信号を無線送信する。
被検体1内部のカプセル型医療装置32は、かかる制御信号に基づいて動作し、この結果、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する。この生体組織塊は、カプセル型医療装置32の保管部47に保管される。その後、被検体1内部のカプセル型医療装置32は、蠕動運動等によって消化管内部を移動し、最終的に被検体1の外部に自然排出される。かかるカプセル型医療装置32の保管部47に保管された生体組織塊は、医師または看護師等に回収され、病理診断等の生体検査に用いられる。
つぎに、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する際のカプセル型医療装置32の動作について説明する。図13は、実施の形態1の変形例1にかかるカプセル型医療装置32の切断部20cによって体内部位の一部分を捕捉した状態を例示する模式図である。図14は、実施の形態1の変形例1にかかるカプセル型医療装置32の切断部20cによって体内部位から生体組織塊を切断採取した状態を例示する模式図である。
被検体1内部のカプセル型医療装置32は、検査対象の体内部位に到達した際に外部の制御部30からの制御信号を取得し、この取得した制御信号に基づいて、この体内部位から生体組織塊を切断採取するための一連の動作を実行する。この場合、カプセル型医療装置32は、駆動部26の駆動力によって外装カバー20dを移動させ、これによって、被検体1の体内部位に外装部40cの端部と切断部20cとを露出した状態にし、さらに、被検体1の体内部位に針41aを穿刺する。このような状態において、カプセル型医療装置32は、被検体1の体内部位に切断部20cを当て付けるとともに、この針41aによって体内部位に筒状筐体40aを固定する(状態B1)。
続いて、カプセル型医療装置32は、被検体1の体内部位に筒状筐体40aを固定した状態を維持しつつ、上述したモータ44による周方向の回転力によってカプセル型筐体40の周方向(図13に示す矢印方向)に外装部40cを回転する。この場合、切断部20cは、図13に示すように、被検体1の体内部位の一部分を捕捉しつつ、この周方向の回転力によって外装部40cとともにカプセル型筐体40の周方向に回転し、この結果、外装部40cの切り欠け部40eの内側に、この体内部位の一部分を引き込む(状態B2)。
その後、カプセル型医療装置32は、かかる外装部40cの回転を継続する。この場合、切断部20cは、カプセル型筐体40の周方向の回転による慣性を維持しつつ、モータ44による周方向の回転力を切断力に変換し、これによって切断力を高めるとともに、上述したように切り欠け部40eの内側に引き込んだ体内部位の一部分から、図14に示すように生体組織塊15を切断採取する(状態B3)。ここで、ストッパ46は、筒状筐体40aの外壁面上を摺動しつつ外装部40cとともに周方向に回転して、筒状筐体40aの外壁面と外装部40cの内壁面との間隙に生体組織が入り込む事態を防止する。かかるストッパ46の作用によって、この生体組織塊15は、筒状筐体40aの外壁面と外装部40cの内壁面との間隙に挟まれることなく、保管部47の開閉部47bに向けて落下する。
つぎに、カプセル型医療装置32は、かかる外装部40cの回転を継続しつつ、上述したモータ45を駆動させる。この場合、保管部47は、このモータ45の駆動力によって、回転軸45aとともに蓋部47cを内側に回転させ、これによって開状態になる。生体組織塊15は、かかる開状態の保管部47の内部に入り込む(状態B4)。このように生体組織塊15を収容した保管部47は、モータ45の駆動力によって、回転軸45aとともに蓋部47cを壁部47dに向けて回転させ、これによって閉状態になる。この結果、保管部47は、生体組織塊15を外部に零すことなく保管する。
その後、かかる保管部47に生体組織塊15を保管した状態のカプセル型医療装置32は、筒状筐体40aの内部に針41aを収容して体内部位に対する固定状態を解除するとともに、外装部40cの回転を停止し、さらに、この外装部40cの端部と切断部20cとを外装カバー20dによって覆う。かかる状態のカプセル型医療装置32は、蠕動運動等によって消化管内を移動し、最終的に被検体1の外部に自然排出される。この被検体1からカプセル型医療装置32が自然排出された後、保管部47内部の生体組織塊15は、医師または看護師等によって回収され、病理診断等の生体検査に用いられる。
ここで、カプセル型医療装置32は、切断部20cによって被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する際、体内部位に針41aを穿刺することによって体内部位にカプセル型筐体40を固定しつつ、モータ44による周方向の回転力によってカプセル型筐体40の周方向に切断部20cを回転させている。このため、カプセル型医療装置32は、このカプセル型筐体40の周方向に回転する切断部20cの回転慣性を維持しつつ、このモータ44による周方向の回転力を切断部20cの切断力に変換することができ、これによって、例えば小腸または大腸等の狭い空間内であっても、この切断部20cの切断力を十分に高めることができる。このように高められた切断部20cの切断力は、カプセル型筐体から出し入れされる際の直線的なストロークがカプセル型筐体のサイズによって狭い範囲に制限される従来のカプセル型医療装置の鉗子等に比して極めて大きなものになり、被検体1の体内部位から塊状の生体組織(すなわち生体組織塊15)を確実に切断採取するに十分な切断力になる。
かかるカプセル型医療装置32によって採取された生体組織塊15は、上述した実施の形態1の場合と同様に生体検査のサンプルとして十分な大きさのものであり、かかる生体組織塊15を用いて病理診断等の生体検査を実施することによって、生体検査の精度を高めることができるとともに、検査対象の体内部位における生体組織の断面状態等の少量の生体組織からは取得が困難な多くの医学的情報を取得できる。
なお、上述したカプセル型医療装置32は、外装部40cの回転数が1回転に満たない場合を例示し、この1回転未満の外装部40cとともに周方向に回転する切断部20cによって、体内部位から生体組織塊15を確実に切断採取するに十分な切断力を得ていたが、さらに、この切断部20cの回転数を増加することによって切断部20cの切断力を一層高めることができる。詳細には、カプセル型医療装置32は、モータ44の回転力(駆動力)によって外装部40cの周方向の回転を1回転以上継続して行うことによって、この外装部40cとともに周方向に回転する切断部20cの回転数を1回転以上に増加でき、これによって、生体組織塊を切断採取する際の切断部20cの移動量を、カプセル型筐体40の周方向に沿って無限長(カプセル型筐体40の周方向の外周長以上)に増大させることができる。この結果、カプセル型医療装置32は、カプセル型筐体40の回転数が1回転未満の場合に比して切断部20cの切断力を一層高めることができ、体内部位から生体組織塊15を一層確実に切断採取できる。
以上、説明したように、本発明の実施の形態1の変形例1では、カプセル型筐体の周方向に刃を向ける態様でカプセル型筐体の外装部に切断部を固定配置し、このカプセル型筐体内に配置された回転駆動部がカプセル型筐体の周方向の回転力を生成し、この生成した回転力によって外装部とともに切断部をカプセル型筐体の周方向に回転するようにし、この周方向に回転する切断部によって被検体の体内部位から生体組織塊を切断採取するようにし、その他を実施の形態1と同様に構成した。このため、上述した実施の形態1の場合とほぼ同様に、この切断部の回転慣性を維持しつつ、この周方向の回転力を切断部の切断力に変換することができ、これによって、例えば小腸または大腸等の狭い生体内空間においても、この切断部の切断力を十分に高めることができ、この結果、上述した実施の形態1と同様の作用効果を享受できるカプセル型医療装置を実現できる。
また、カプセル型筐体から突出させた針を体内部位に突き刺すことによって体内部位にカプセル型筐体を固定するので、外部の勾配磁界を形成する必要がなくなる(すなわち磁界発生部等が必要なくなる)とともに、カプセル型筐体内部に重量の重い磁石を配置しなくてもよく、この結果、カプセル型医療装置の軽量化を促進できるとともに、簡易なシステム構成で体内部位にカプセル型筐体を容易に固定でき、このカプセル型筐体に対する外装部および切断部の相対的な回転動作を容易に実現できる。
(実施の形態1の変形例2)
つぎに、本発明の実施の形態1の変形例2について説明する。上述した実施の形態1では、体内部位から生体組織塊を切断採取する手段として刃物である切断部20cを用いていたが、この実施の形態1の変形例2では、尖形の先端部と基端部とを連通孔によって連通した構造の中空針を用いて体内部位から生体組織塊を切断採取するようにしている。
図15は、本発明の実施の形態1の変形例2にかかるカプセル型医療装置の一構成例を示す模式図である。図16は、カプセル型筐体の長手方向から見たカプセル型医療装置の模式図である。なお、図15には、この変形例2にかかるカプセル型医療装置の内部構成を説明し易くするために一部破断したものを示している。また、図16には、生体組織塊を切断採取するための中空針をカプセル型筐体から突出させた状態のカプセル型医療装置が示されている。
図15,16に示すように、この実施の形態1の変形例2にかかるカプセル型医療装置52は、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2のカプセル型筐体20に代えてカプセル型筐体50を備え、切断部20cに代えて中空針53を備え、保管部27に代えて保管部55を備え、制御部28に代えて制御部58を備える。また、カプセル型医療装置52は、上述した外装カバー20dおよび駆動部26を備えておらず、カプセル型筐体50から中空針53を出し入れするための突没機構54と、中空針53と保管部55とを連通するチューブ56と、中空針53によって切断採取された生体組織塊を保管部55に引き込むための吸引ポンプ57とを備える。なお、この実施の形態1の変形例2にかかる生体組織採取システムは、上述した実施の形態1にかかる生体組織採取システム11(図1参照)のカプセル型医療装置2に代えてカプセル型医療装置52を備える。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
カプセル型筐体50は、被検体1の内部に導入可能な大きさに形成されたカプセル型の筐体であり、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2の筒状筐体20aに代えて筒状筐体50aを備える。かかるカプセル型筐体50は、一端がドーム形状をなす筒状筐体50aの他端(開口端)をドーム形状筐体20bによって塞いで形成される。筒状筐体50aは略不透明な筐体であり、筒状筐体50aの一部分には、中空針53を出し入れ(突没)するための開口部50cが形成される。かかる筒状筐体50aとドーム形状筐体20bとによって形成されるカプセル型筐体50の内部において、照明部21a、光学系21b、および撮像部21cは、ドーム形状筐体20b側に配置され、信号処理部22、送信部23、磁石24、磁気センサ25、中空針53、突没機構54、保管部55、チューブ56、吸引ポンプ57、制御部58、および電源部29は、筒状筐体50a側に配置される。
中空針53は、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断し、採取する切断採取手段として機能する。具体的には、中空針53は、尖形の先端部と根元側の基端部とを連通する連通孔53aを内部に有し、突没機構54の作用によってカプセル型筐体50の開口部50cから出し入れされる。この場合、中空針53は、上述した磁石24の回転力によって回転するカプセル型筐体50の回転方向(図16に示す矢印方向)に対して鋭角θをなすとともに、その先端部の傾斜面53bをカプセル型筐体50の回転方向に向ける態様で突出する。なお、この中空針53の傾斜面53bがカプセル型筐体50の回転方向に向いた状態とは、この傾斜面53bの法線方向とカプセル型筐体50の回転方向とのなす角度が鋭角になる状態である。かかる中空針53は、カプセル型筐体50から突出した状態で筒状筐体50aとともにカプセル型筐体50の周方向に回転することによって、体内部位から生体組織塊を切断し、この切断した生体組織塊を連通孔53a内に取り込むことによって採取する。
突没機構54は、カプセル型筐体50の開口部50cから中空針53を出し入れ(突没)するための機構である。具体的には、突没機構54は、中空針53の基端部を支持する支持部54aと、中空針53を突没する際の駆動力を生成するSMAコイル54bとを備える。SMAコイル54bは、所定の形状記憶特性を有するとともに所定の電気抵抗値を有するコイル状の形状記憶合金によって形成され、一端が筒状筐体50aの内壁に固定され、他端が支持部54aに固定される。かかるSMAコイル54bは、所定の温度未満(例えば被検体内部の温度と同等の温度条件)の環境下において、筒状筐体50aの内部に中空針53を収容するに充分な長さを有する。一方、SMAコイル54bは、所定の温度以上の環境下、例えば被検体内部の温度に比して充分高い温度条件の環境下において、その形状を収縮変化させ、これによって、筒状筐体50aの内壁面に支持部54aを近付ける方向に駆動力を生成する。この場合、SMAコイル54bは、この駆動力によって筒状筐体50aの内壁面に支持部54aを近付けるとともに筒状筐体50aから中空針53を突出させる。その後、SMAコイル54bは、所定の温度未満に変化した場合、その形状を伸長変化させ、これによって、筒状筐体50aの内壁面から支持部54aを離間する方向に駆動力を生成する。この場合、SMAコイル54bは、この駆動力によって筒状筐体50aの内壁面から支持部54aを離間するとともに筒状筐体50aの内部に中空針53を没する(収容する)。
保管部55は、上述した中空針53によって切断採取された生体組織塊を保管するためのものであり、図15に示すように筒状筐体50aの内部に配置される。この場合、保管部55の内部は、カプセル型医療装置52の内蔵部品(具体的には、撮像部21cおよび制御部58等の電子部品、電池等の電源部29、磁石24、突没機構54等)に対して隔離される。保管部55は、所定の連通管を介して吸引ポンプ57と連通し、且つ、チューブ56を介して中空針53と連通する。かかる保管部55は、吸引ポンプ57の吸引力によって中空針53内から引き込まれた生体組織塊を収容し、保管する。
チューブ56は、可撓性を有し、一端が中空針53の基端部に接続され、他端が保管部55に接続される。かかるチューブ56は、中空針53の連通孔53aと保管部55とを連通する。吸引ポンプ57は、保管部55の内部を負圧にすることによって、中空針53内の生体組織塊を保管部55内に吸引する。
制御部58は、磁気センサ25から外部磁界を検知した旨の検知信号を取得した場合、突没機構54を制御してカプセル型筐体50の外部に中空針53を突出させる。具体的には、制御部58は、磁気センサ25から検知信号を取得したタイミングでSMAコイル54bに電流を供給し、これによってSMAコイル54bを収縮変化させてカプセル型筐体50の外部に中空針53を突出させる。また、制御部58は、吸引ポンプ57を制御して、中空針53内の生体組織塊を保管部55内に吸引させる。一方、制御部58は、磁気センサ25から検知信号を取得してから所定の時間が経過後、SMAコイル54bへの電流供給を停止してSMAコイル54bの形状を元の状態に戻し、これによってカプセル型筐体50の内部に中空針53を収容させる。その後、制御部58は、吸引ポンプ57の駆動を停止する。かかる制御部58が有する他の機能は、上述した駆動部26の制御機能を除き、実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2の制御部28と同様である。
以上のような構成を有するカプセル型医療装置52は、この変形例2にかかる生体組織採取システムにおいて、被検体1の内部に導入され、その後、蠕動運動等によって被検体1の消化管内部を移動し、検査対象の体内部位に到達する。この場合、ユーザは、上述した実施の形態1の場合と同様に、表示部4に表示された体内画像および現在位置情報を確認しつつ、入力部8を用いて磁界発生部5および移動部7を操作する。
被検体1内部のカプセル型医療装置52は、上述した磁界発生部5によって回転磁界および勾配磁界が印加されたタイミングでカプセル型筐体50から中空針53を突き出し、この回転磁界および勾配磁界の作用によってカプセル型筐体50の周方向に中空針53を回転させつつ、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する。この生体組織塊は、カプセル型医療装置52の保管部55に保管される。生体組織塊を採取したカプセル型医療装置52は、かかる回転磁界および勾配磁界から解放された後、蠕動運動等によって消化管内部を移動し、最終的に被検体1の外部に自然排出される。かかるカプセル型医療装置52の保管部55に保管された生体組織塊は、医師または看護師等に回収され、病理診断等の生体検査に用いられる。
つぎに、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する際のカプセル型医療装置52の動作について説明する。図17は、実施の形態1の変形例2にかかるカプセル型医療装置52の中空針53によって体内部位の一部分から生体組織塊を切断採取する状態を例示する模式図である。
被検体1内部のカプセル型医療装置52が検査対象の体内部位に到達した場合、上述した磁界発生部5は、このカプセル型医療装置52に回転磁界を印加する。この場合、カプセル型医療装置52において、磁気センサ25は、磁界発生部5による回転磁界を検知し、制御部58は、この磁気センサ25によって回転磁界が検知されたタイミングで突没機構54に中空針53を突出させ、この体内部位に中空針53を突き刺す(状態C1)。
このような状態のカプセル型医療装置52は、図17に示すように、回転磁界H2に追従する磁石24(図15参照)の作用によって、カプセル型筐体50の周方向に回転する。この場合、中空針53は、カプセル型筐体50の周方向の回転による慣性を維持しつつ、上述した磁石24による回転力を切断力に変換し、これによって切断力を高める。かかる中空針53は、この体内部位から生体組織塊15を切断するとともに、連通孔53a内部に生体組織塊15を取り込む(状態C2)。かかる中空針53内の生体組織塊15は、上述した吸引ポンプ57の吸引力によって保管部55内に引き込まれ、これによって、この生体組織塊15の切断採取が達成される。保管部55は、この生体組織塊15を外部に零すことなく保管する。
かかる保管部55に生体組織塊15を保管した状態のカプセル型医療装置52は、回転磁界から解放された際、カプセル型筐体50の内部に中空針53を収容するとともに吸引ポンプの駆動を停止させ、その後、蠕動運動等によって被検体1の外部に自然排出される。この被検体1からカプセル型医療装置52が自然排出された後、保管部55内部の生体組織塊15は、医師または看護師等によって回収され、病理診断等の生体検査に用いられる。
ここで、カプセル型医療装置52は、中空針53によって被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する際、外部の回転磁界に追従してカプセル型筐体50の周方向に中空針53を回転させている。この場合、中空針53の先端部の傾斜面53bは、上述したように、このカプセル型筐体50の回転方向(すなわち周方向)に向いている。このため、カプセル型医療装置52は、このカプセル型筐体50の周方向に回転する中空針53の回転慣性を維持しつつ、この外部の回転磁界に追従して回転する磁石24によって生成される周方向の回転力を中空針53の切断力に変換することができ、これによって、例えば小腸または大腸等の狭い空間内であっても、この中空針53の切断力を十分に高めることができる。このように高められた中空針53の切断力は、カプセル型筐体から出し入れされる際の直線的なストロークがカプセル型筐体のサイズによって狭い範囲に制限される従来のカプセル型医療装置の鉗子等に比して極めて大きなものになり、被検体1の体内部位から塊状の生体組織(すなわち生体組織塊15)を確実に切断採取するに十分な切断力になる。
かかるカプセル型医療装置52によって採取された生体組織塊15は、生体検査のサンプルとして十分な大きさのものであり、かかる生体組織塊15を用いて病理診断等の生体検査を実施することによって、生体検査の精度を高めることができるとともに、検査対象の体内部位における生体組織の断面状態等の少量の生体組織からは取得が困難な多くの医学的情報を取得できる。
なお、上述したカプセル型医療装置52は、カプセル型筐体50の周方向の回転数が1回転に満たない場合を例示し、この1回転未満のカプセル型筐体50とともに周方向に回転する中空針53によって、体内部位から生体組織塊15を確実に切断採取するに十分な切断力を得ていたが、さらに、この中空針53の回転数を増加することによって中空針53の切断力を一層高めることができる。詳細には、カプセル型医療装置52は、外部の回転磁界に追従してカプセル型筐体50の周方向の回転を1回転以上継続して行うことによって、このカプセル型筐体50の周方向に回転する中空針53の回転数を1回転以上に増加でき、これによって、生体組織塊を切断採取する際の中空針53の移動量を、カプセル型筐体50の周方向に沿って無限長(カプセル型筐体50の周方向の外周長以上)に増大させることができる。この結果、カプセル型医療装置52は、カプセル型筐体50の回転数が1回転未満の場合に比して中空針53の切断力を一層高めることができ、体内部位から生体組織塊15を一層確実に切断採取できる。
以上、説明したように、本発明の実施の形態1の変形例2では、カプセル型筐体から中空針を突没させ、突出状態の中空針の長手方向とカプセル型筐体の周方向とが鋭角をなすとともに、この突出状態の中空針のカット面(先端部の傾斜面)がカプセル型筐体の周方向を向くようにし、回転駆動部が生成した周方向の回転力によってカプセル型筐体とともに突出状態の中空針をカプセル型筐体の周方向に回転し、この周方向に回転する中空針によって被検体の体内部位から生体組織塊を切断採取するようにし、その他を実施の形態1と略同様に構成した。このため、上述した実施の形態1の場合と略同様に、この突出状態の中空針の回転慣性を維持しつつ、この周方向の回転力を中空針の切断力に変換することができ、これによって、例えば小腸または大腸等の狭い生体内空間においても、この中空針の切断力を十分に高めることができ、この結果、上述した実施の形態1と同様の作用効果を享受できるカプセル型医療装置を実現できる。
また、この中空針の内部と保管部とをチューブによって連通状態にし、この保管部を吸引ポンプによって負圧にすることによって、この中空針内の生体組織塊を保管部内に吸引するように構成したので、この中空針によって切断採取された生体組織塊を、外部に零すことなく、保管部内に容易に保管することができる。
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1および変形例1では、カプセル型筐体に切断部を固定し、このカプセル型筐体とともに切断部を周方向に回転することによって体内部位から生体組織塊を切断採取していたが、この実施の形態2では、カプセル型筐体の内部において切断部を周方向に回転させ、体内部位からカプセル型筐体の内部に吸引した生体組織塊をこの筐体内部の切断部によって切断採取するようにしている。
図18は、本発明の実施の形態2にかかるカプセル型医療装置の一構成例を示す模式図である。図19は、図18に示すカプセル型医療装置のC−C線断面模式図である。なお、図18には、この実施の形態2にかかるカプセル型医療装置の内部構成を説明し易くするために一部破断したものを示している。
図18,19に示すように、この実施の形態2にかかるカプセル型医療装置62は、上述した実施の形態1の変形例1にかかるカプセル型医療装置32のカプセル型筐体40に代えてカプセル型筐体60を備え、切断部20cに代えて切断部63を備え、外装部40cを回転するモータ44に代えて切断部63を回転するモータ64を備え、保管部47に代えて保管部65を備え、制御部48に代えて制御部68を備える。また、カプセル型医療装置62は、上述した駆動部26と外装部40cと固定部41とモータ45とを備えておらず、電子部品等から保管部65を隔離する隔離部61と、連通管67を介して保管部65と連通する吸引ポンプ66とを備える。なお、この実施の形態2にかかる生体組織採取システムは、上述した実施の形態1の変形例1にかかる生体組織採取システム31(図9参照)のカプセル型医療装置32に代えてカプセル型医療装置62を備える。その他の構成は実施の形態1の変形例1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
カプセル型筐体60は、被検体1の内部に導入可能な大きさに形成されたカプセル型の筐体であり、上述した実施の形態1の変形例1にかかるカプセル型医療装置32の筒状筐体40aに代えて筒状筐体60aを備える。かかるカプセル型筐体60は、一端がドーム形状をなす筒状筐体60aの他端(開口端)をドーム形状筐体20bによって塞いで形成される。筒状筐体60aは略不透明な筐体であり、筒状筐体60aの一部分には、体内部位から生体組織塊を取り込む(吸引する)ための開口部60cが形成される。かかる筒状筐体60aとドーム形状筐体20bとによって形成されるカプセル型筐体60の内部において、照明部21a、光学系21b、および撮像部21cは、ドーム形状筐体20b側に配置され、信号処理部22と、送受信部43と、隔離部61と、切断部63と、モータ64と、連通管67によって接続された保管部65および吸引ポンプ66と、制御部68と、電源部29とは、筒状筐体60a側に配置される。
隔離部61は、カプセル型医療装置62の内蔵部品(具体的には、撮像部21cおよび制御部68等の電子部品、電源部29等)と保管部65とを隔離するための構造体である。隔離部61は、カプセル型筐体60の開口部60cを介して筐体外部と連通する箱型の構造体であり、切断部63と保管部65とを内包する。また、隔離部61の壁には、モータ64の回転軸を挿通するための貫通孔と連通管67を挿通するための貫通孔とが形成される。
切断部63は、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断し、採取する切断採取手段として機能する。具体的には、切断部63は、保管部65の外周に沿って湾曲した形状の刃物であり、カプセル型筐体の周方向に刃を向けた態様で隔離部61の内部、詳細には保管部65の外周面近傍に配置される。かかる切断部63は、隔離部61の貫通孔に挿通されたモータ64の回転軸に固定され、このモータ64の駆動力(周方向の回転力)によってカプセル型筐体60の周方向に回転し、カプセル型筐体60内に吸引された体内部位の一部分から生体組織塊を切断し、採取する。なお、かかる切断部63によって切断採取された生体組織塊は、吸引ポンプ66の吸引力によって保管部65内に吸引される。
モータ64は、カプセル型筐体60の周方向の回転力を生成する回転駆動部として機能する。具体的には、モータ64は、カプセル型筐体60の長手方向の中心軸CLに平行な回転軸を有し、この回転軸を介して隔離部61内の切断部63と接続される。なお、このモータ64の回転軸は、図18に示すように、隔離部61の貫通孔に挿通される。かかるモータ64は、制御部68の制御に基づいて駆動して、カプセル型筐体60の周方向に切断部63を回転する。なお、かかるモータ64によって生成された周方向の回転力は、この切断部63によって切断力に変換される。
保管部65は、上述した切断部63によって切断採取された生体組織塊を保管するためのものであり、図18,19に示すように隔離部61に内包される態様でカプセル型筐体60の内部に配置される。保管部65は、隔離部61の貫通孔に挿通された連通管67を介して吸引ポンプ66と連通し、カプセル型筐体60の開口部60cに対向する位置に形成された開口部65aを介して隔離部61と連通する。かかる保管部65は、切断部63によって切断採取された生体組織塊を吸引ポンプ66の吸引力によって収容し、この収容した生体組織塊を保管する。
吸引ポンプ66は、隔離部61の貫通孔に挿通される連通管67を介して保管部65と接続され、この連通管67によって連通した保管部65の内部を負圧にし、さらには、この保管部65を介して隔離部61の内部を負圧にする。かかる吸引ポンプ66は、カプセル型筐体60の開口部60cから体内部位の一部分を吸引し、これによって、隔離部61の内部に体内部位の一部分を取り込むとともに、この体内部位に対してカプセル型筐体60を固定する。また、吸引ポンプ66は、この隔離部61の内部に取り込まれた体内部位の一部分から切断部63によって切断採取された生体組織塊を保管部65の内部に吸引する。
制御部68は、上述した外部の制御部30からの制御信号に基づいて、モータ64および吸引ポンプ66の各駆動を制御する。かかる制御部68の制御によって、モータ64は、カプセル型筐体60の周方向に切断部63を回転し、吸引ポンプ66は、隔離部61の内部に体内部位の一部分を吸引し、さらには、切断部63によって切断採取された生体組織塊を保管部65の内部に吸引する。また、制御部68は、送受信部43から制御信号を取得してから所定の時間が経過後、モータ64および吸引ポンプ66の各駆動を制御する。かかる制御部68の制御によって、モータ64は、駆動を停止して切断部63の回転を停止させ、吸引ポンプは、生体組織塊の吸引を停止する。なお、かかる制御部68が有する他の機能は、上述した固定部41、駆動部26、およびモータ44,45の各制御を除き、実施の形態1の変形例1にかかるカプセル型医療装置32の制御部48と同様である。
以上のような構成を有するカプセル型医療装置62は、この実施の形態2にかかる生体組織採取システムにおいて、被検体1の内部に導入され、その後、蠕動運動等によって被検体1の消化管内部を移動し、検査対象の体内部位に到達する。この場合、ユーザは、上述した実施の形態1の変形例1と同様に、表示部4に表示された体内画像および現在位置情報を参照しつつ、入力部8を操作して被検体1内部のカプセル型医療装置62に生体組織塊を切断採取するよう指示する。
被検体1内部のカプセル型医療装置62は、上述した外部の制御部30からの制御信号に基づいて動作し、この結果、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する。この生体組織塊は、カプセル型医療装置62の保管部65に保管される。その後、被検体1内部のカプセル型医療装置62は、蠕動運動等によって消化管内部を移動し、最終的に被検体1の外部に自然排出される。かかるカプセル型医療装置62の保管部65に保管された生体組織塊は、医師または看護師等に回収され、病理診断等の生体検査に用いられる。
つぎに、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する際のカプセル型医療装置62の動作について説明する。図20は、実施の形態2にかかるカプセル型医療装置62の筐体内部に体内部位の一部分を吸引する状態を例示する模式図である。図21は、実施の形態2にかかるカプセル型医療装置62の切断部63によって体内部位から生体組織塊を切断採取した状態を例示する模式図である。
被検体1内部のカプセル型医療装置62は、検査対象の体内部位に到達した際に外部の制御部30からの制御信号を取得し、この取得した制御信号に基づいて、この体内部位から生体組織塊を切断採取するための一連の動作を実行する。具体的には、カプセル型医療装置62は、図20に示すように、検査対象の体内部位の壁面に筒状胴部60aの開口部60cを対向させ(状態D1)、上述したモータ64による周方向の回転力によって切断部63をカプセル型筐体60の周方向に回転させるとともに、上述した吸引ポンプ66によって保管部65内部および隔離部61内部を負圧にする。カプセル型医療装置62は、かかる吸引ポンプ66の吸引力によって、隔離部61の内部に体内部位の一部分を吸引する(状態D2)。なお、この状態D2において、カプセル型医療装置62は、この吸引ポンプ66の吸引力によって体内部位に固定される。
続いて、カプセル型医療装置62は、隔離部61の内部(すなわちカプセル型筐体60の内部)に体内部位の一部分を吸引した(取り込んだ)状態を維持しつつ、上述したモータ64による周方向の回転力によってカプセル型筐体60の周方向(図21に示す矢印方向)に切断部63を回転する。この場合、切断部63は、カプセル型筐体60の周方向の回転による慣性を維持しつつ、モータ64による周方向の回転力を切断力に変換し、これによって切断力を高めるとともに、上述したように隔離部61の内部に引き込んだ体内部位の一部分から、図21に示すように生体組織塊15を切断採取する(状態D3)。
かかる切断部63によって切断採取された生体組織塊15は、上述した吸引ポンプ66の吸引力によって保管部65の内部に引き込まれる。保管部65は、この生体組織塊15を保管する。この状態において、カプセル型医療装置62の制御部68は、上述した吸引ポンプ66の駆動を停止するとともに、保管部65の開口部65aに切断部63が位置するタイミングでモータ64の駆動を停止する。かかる制御部68の制御によって、切断部63は、保管部65の開口部65aを閉塞し、この閉状態の保管部65は、生体組織塊15を外部に零すことなく保管する(状態D4)。
かかる保管部65に生体組織塊15を保管した状態のカプセル型医療装置62は、体内部位に対する固定状態を解除した後、蠕動運動等によって消化管内を移動し、最終的に被検体1の外部に自然排出される。この被検体1からカプセル型医療装置62が自然排出された後、保管部65内部の生体組織塊15は、医師または看護師等によって回収され、病理診断等の生体検査に用いられる。
ここで、カプセル型医療装置62は、切断部63によって被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する際、吸引ポンプ66の吸引力によってカプセル型筐体60の内部に体内部位の一部分を吸引することによって体内部位にカプセル型筐体60を固定しつつ、モータ64による周方向の回転力によってカプセル型筐体60の周方向に切断部63を回転させている。このため、カプセル型医療装置62は、このカプセル型筐体60の周方向に回転する切断部63の回転慣性を維持しつつ、このモータ64による周方向の回転力を切断部63の切断力に変換できるとともに、この切断部63の回転軌跡内に体内部位の一部分を固定でき、これによって、例えば小腸または大腸等の狭い空間内であっても、この切断部63の切断力を十分に高めることができる。このように高められた切断部63の切断力は、カプセル型筐体から出し入れされる際の直線的なストロークがカプセル型筐体のサイズによって狭い範囲に制限される従来のカプセル型医療装置の鉗子等に比して極めて大きなものになり、被検体1の体内部位から塊状の生体組織(すなわち生体組織塊15)を確実に切断採取するに十分な切断力になる。
かかるカプセル型医療装置62によって採取された生体組織塊15は、上述した実施の形態1の変形例1の場合と同様に生体検査のサンプルとして十分な大きさのものであり、かかる生体組織塊15を用いて病理診断等の生体検査を実施することによって、生体検査の精度を高めることができるとともに、検査対象の体内部位における生体組織の断面状態等の少量の生体組織からは取得が困難な多くの医学的情報を取得できる。
なお、上述したカプセル型医療装置62は、生体組織塊15を切断採取するまでに切断部63の回転数が1回転に満たない場合を例示し、この1回転未満の切断部63によって、体内部位から生体組織塊15を確実に切断採取するに十分な切断力を得ていたが、さらに、この切断部63の回転数を増加することによって切断部63の切断力を一層高めることができる。詳細には、カプセル型医療装置62は、生体組織塊の切断採取前からモータ64を継続して駆動させることによって、切断部63の周方向の回転数を1回転以上に増加でき、これによって、生体組織塊を切断採取する際の切断部63の移動量を、カプセル型筐体60の周方向に沿って無限長(カプセル型筐体60の周方向の外周長以上)に増大させることができる。この結果、カプセル型医療装置62は、上述した1回転未満の場合に比して切断部63の切断力を一層高めることができ、体内部位から生体組織塊15を一層確実に切断採取できる。
以上、説明したように、本発明の実施の形態2では、カプセル型筐体の周方向に刃を向ける態様でカプセル型筐体の内部に切断部を回転自在に配置し、この切断部の回転軌跡内に体内部位の一部分を吸引する吸引ポンプを配置し、回転駆動部が生成した周方向の回転力によってカプセル型筐体の周方向に切断部を回転し、この周方向に回転する切断部によって、この吸引した体内部位の一部分から生体組織塊を切断採取するようにし、その他を実施の形態1の変形例1と略同様に構成した。このため、上述した実施の形態1の変形例1の場合とほぼ同様に、この切断部の回転慣性を維持しつつ、この周方向の回転力を切断部の切断力に変換でき、さらには、吸引ポンプの吸引力によってカプセル型筐体を体内部位に対して固定できるとともに、この体内部位から充分な体積の生体組織塊をカプセル型筐体内部に取り込むことができ、この結果、上述した実施の形態1の変形例1と同様の作用効果を享受できるとともに、より多量の生体組織塊を容易に切断採取できるカプセル型医療装置を実現できる。
また、カプセル型筐体の外部に切断部を露出させることなく、カプセル型筐体の内部に吸引した体内部位の一部分からカプセル型筐体内部の切断部によって生体組織塊を切断採取するので、より安全に被検体の体内部位から生体組織塊を切断採取することができる。
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3について説明する。上述した実施の形態2では、吸引ポンプ66の吸引力によってカプセル型筐体60の内部に体内部位の一部分を取り込んでいたが、この実施の形態3では、カプセル型筐体の周方向に回転するフックによって体内部位の一部分をカプセル型筐体内部に取り込むようにしている。
図22は、本発明の実施の形態3にかかるカプセル型医療装置の一構成例を示す模式図である。図23は、図22に示すカプセル型医療装置のD−D線断面模式図である。なお、図22には、この実施の形態3にかかるカプセル型医療装置の内部構成を説明し易くするために一部破断したものを示している。
図22,23に示すように、この実施の形態3にかかるカプセル型医療装置72は、上述した実施の形態2にかかるカプセル型医療装置62のカプセル型筐体60に代えてカプセル型筐体70を備え、保管部65に代えて保管部73を備え、モータ64に代えてモータ77を備え、制御部68に代えて制御部78を備える。また、カプセル型医療装置72は、上述した実施の形態2にかかるカプセル型医療装置62の吸引ポンプ66の代わりに、カプセル型筐体60の内部に体内部位の一部分を引き込むフック75を備え、切断部63の代わりに、このフック75によって取り込まれた体内部位の一部分から生体組織塊を切断採取する切断部76を備える。かかるフック75および切断部76は、モータ77の回転軸に接続される回転支持部77aによって支持され、この回転支持部77aは、蓋部74をさらに支持する。なお、この実施の形態3にかかる生体組織採取システムは、上述した実施の形態2にかかる生体組織採取システムのカプセル型医療装置62に代えてカプセル型医療装置72を備える。その他の構成は実施の形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
カプセル型筐体70は、被検体1の内部に導入可能な大きさに形成されたカプセル型の筐体であり、上述した実施の形態2にかかるカプセル型医療装置62の筒状筐体60aに代えて筒状筐体70aを備える。かかるカプセル型筐体70は、一端がドーム形状をなす筒状筐体70aの他端(開口端)をドーム形状筐体20bによって塞いで形成される。筒状筐体70aは略不透明な筐体であり、筒状筐体70aの一部分には、体内部位から生体組織塊を取り込む(引き込む)ための開口部70cが形成される。かかる筒状筐体70aとドーム形状筐体20bとによって形成されるカプセル型筐体70の内部において、照明部21a、光学系21b、および撮像部21cは、ドーム形状筐体20b側に配置され、信号処理部22と、送受信部43と、保管部73と、蓋部74と、フック75と、切断部76と、モータ77と、回転支持部77aと、制御部78と、電源部29とは、筒状筐体70a側に配置される。
保管部73は、切断部75によって切断採取された生体組織塊を保管するためのものであり、図22,23に示すように、筒状筐体70aの一部分と壁部73aとによって形成される。この場合、保管部73の内部空間は、カプセル型医療装置72の内蔵部品(具体的には、撮像部21cおよび制御部78等の電子部品、電源部29等)から壁部73aによって隔離される。この保管部73の壁部73aには、モータ77の回転軸を挿通するための貫通孔が形成される。かかる保管部73は、カプセル型筐体70の開口部70cを介して外部に連通し、この開口部70cから取り込まれた生体組織塊を保管する。
蓋部74は、回転支持部77aによって支持され、モータ77の駆動力(周方向の回転力)によってカプセル型筐体70の周方向に回転することによって、カプセル型筐体70の開口部70cを開閉する。具体的には、蓋部74は、図22,23に示すように開口部70cの近傍に位置する場合、この開口部70cを閉じ、この開口部70cの近傍の位置から回転によって変位した場合、この開口部70cを開ける。
フック75は、カプセル型筐体70の内部に被検体1の体内部位の一部分を取り込む(引き込む)ためのものである。具体的には、フック75は、回転支持部77aによって支持され、モータ77の駆動力によってカプセル型筐体70の周方向に回転しつつ、カプセル型筐体70の開口部70cを介して体内部位の一部分をカプセル型筐体70の内部(詳細には保管部73の内部)に引き込む。かかるフック75は、上述した蓋部74に比して回転方向(図23に示す矢印方向)の後方側に配置され、この蓋部74が開状態にした開口部70cを介して体内部位の一部分を保管部73の内部に引き込む。
切断部76は、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断し、採取する切断採取手段として機能する。具体的には、切断部76は、カプセル型筐体の周方向に刃を向けた態様で回転支持部77aによって支持され、モータ77の駆動力によってカプセル型筐体70の周方向に回転することによって、このモータ77の駆動力を切断力に変換する。かかる切断部76は、上述したフック75に比して回転方向(図23に示す矢印方向)の後方側に配置され、このフック75によってカプセル型筐体70の内部に引き込まれた体内部位の一部分から生体組織塊を切断し、採取する。なお、かかる切断部76によって切断採取された生体組織塊は、通常、フック75に引っ掛かった状態で保管部73内に保管される。
モータ77は、カプセル型筐体70の周方向の回転力を生成する回転駆動部として機能する。具体的には、モータ77は、カプセル型筐体70の長手方向の中心軸CLに平行な回転軸を有し、この回転軸を介して保管部73内の回転支持部77aと接続される。なお、このモータ77の回転軸は、図22に示すように、保管部73の壁部73aに形成された貫通孔に挿通される。回転支持部77aは、上述したように蓋部74とフック75と切断部76とを支持し、モータ77の駆動力によってカプセル型筐体70の周方向に回転する。すなわち、モータ77は、この回転支持部77aとともに蓋部74とフック75と切断部76とをカプセル型筐体70の周方向に回転する。
制御部78は、上述した外部の制御部30からの制御信号に基づいて、回転支持部77aとともに蓋部74とフック75と切断部76とをカプセル型筐体70の周方向(図23に示す矢印方向)に回転するようにモータ77の駆動を制御する。かかる制御部78の制御によって、蓋部74は、カプセル型筐体70の開口部70cを開閉し、フック75は、開状態の開口部70cを介して体内部位の一部分を保管部73の内部に引き込み、切断部76は、このフック75によって保管部73の内部に引き込まれた体内部位の一部分から生体組織塊を切断採取する。また、制御部78は、送受信部43から制御信号を取得してから所定の時間が経過後、モータ77の駆動を停止して回転支持部77aの回転、すなわち、蓋部74、フック75、および切断部76の回転を停止する。この場合、制御部78は、蓋部74によって開口部70cを閉じる状態にしてモータ77の駆動を停止する。なお、かかる制御部78が有する他の機能は、上述したモータ64および吸引ポンプ66の各制御を除き、実施の形態2にかかるカプセル型医療装置62の制御部68と同様である。
以上のような構成を有するカプセル型医療装置72は、この実施の形態3にかかる生体組織採取システムにおいて、被検体1の内部に導入され、その後、蠕動運動等によって被検体1の消化管内部を移動し、検査対象の体内部位に到達する。この場合、ユーザは、上述した実施の形態2と同様に、表示部4に表示された体内画像および現在位置情報を参照しつつ、入力部8を操作して被検体1内部のカプセル型医療装置72に生体組織塊を切断採取するよう指示する。
被検体1内部のカプセル型医療装置72は、上述した外部の制御部30からの制御信号に基づいて動作し、この結果、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する。この生体組織塊は、カプセル型医療装置72の保管部73に保管される。その後、被検体1内部のカプセル型医療装置72は、蠕動運動等によって消化管内部を移動し、最終的に被検体1の外部に自然排出される。かかるカプセル型医療装置72の保管部73に保管された生体組織塊は、医師または看護師等に回収され、病理診断等の生体検査に用いられる。
つぎに、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する際のカプセル型医療装置72の動作について説明する。図24は、実施の形態3にかかるカプセル型医療装置72のフック75を体内部位の一部分に引っ掛ける状態を例示する模式図である。図25は、フック25によって保管部73の内部に引き込まれた体内部位の一部分から切断部76によって生体組織塊を切断採取する状態を例示する模式図である。図26は、フック75に引っ掛けられた状態で生体組織塊を保管部73の内部に保管した状態を例示する模式図である。
被検体1内部のカプセル型医療装置72は、検査対象の体内部位に到達した際に外部の制御部30からの制御信号を取得し、この取得した制御信号に基づいて、この体内部位から生体組織塊を切断採取するための一連の動作を実行する。具体的には、カプセル型医療装置72は、図24に示すように、検査対象の体内部位の壁面に筒状胴部70aの開口部70cを対向させ(状態E1)、上述したモータ77による周方向の回転力によって回転支持部77aとともに蓋部74とフック75と切断部76とをカプセル型筐体70の周方向に回転させる。これによって、カプセル型医療装置72は、筒状筐体70aの開口部70cを開状態にし、さらに、この開状態の開口部70c近傍の体内部位にフック75を引っ掛けた状態にする(状態E2)。
続いて、カプセル型医療装置72は、フック75が体内部位の一部分を引っ掛けた状態を維持しつつ、かかる蓋部74、フック75、および切断部76の回転を継続する。この場合、フック75は、図25に示すように、保管部73の内部に体内部位の一部分を引き込み、切断部76は、このフック75によって引き込まれた体内部位の一部分の根元に刃を当てる(状態E3)。この状態E3において、フック75は、切断部76によって切断し易いように、この体内部位の一部分を引っ張りつつ固定する。
さらに、カプセル型医療装置72は、かかる蓋部74、フック75、および切断部76の回転を継続する。この場合、切断部76は、フック75によって保管部73の内部に引き込まれた体内部位の一部分から生体組織塊15を切断採取する。この生体組織塊15は、図25に示すように、フック75に引っ掛けられた状態で保管部73の内部に取り込まれる(状態E4)。
続いて、カプセル型医療装置72は、上述した蓋部74、フック75、および切断部76の回転を継続し、蓋部74が開口部70cの位置に移動した際に、かかる回転を停止する。この場合、蓋部74は、再び開口部70cを閉じて保管部73を閉状態にし、この閉状態の保管部73は、フック75に引っ掛けられた状態の生体組織塊15を保管する(状態E5)。この結果、保管部73は、かかる状態の生体組織塊15を外部に零すことなく保管できる。
その後、かかる保管部73に生体組織塊15を保管した状態のカプセル型医療装置72は、蠕動運動等によって消化管内を移動し、最終的に被検体1の外部に自然排出される。この被検体1からカプセル型医療装置72が自然排出された後、保管部73内部の生体組織塊15は、医師または看護師等によって回収され、病理診断等の生体検査に用いられる。
ここで、カプセル型医療装置72は、切断部76によって被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する際、フック75によってカプセル型筐体70の内部に体内部位の一部分を引き込みつつ、モータ77による周方向の回転力によってカプセル型筐体70の周方向に切断部76を回転させている。このため、カプセル型医療装置72は、このカプセル型筐体70の周方向に回転する切断部76の回転慣性を維持しつつ、このモータ77による周方向の回転力を切断部76の切断力に変換できるとともに、この体内部位の一部分にフック75によって充分にテンションを与えつつ、切断部76の回転軌跡内に体内部位の一部分を固定でき、これによって、例えば小腸または大腸等の狭い空間内であっても、この切断部76の切断力を十分に高めることができる。このように高められた切断部76の切断力は、カプセル型筐体から出し入れされる際の直線的なストロークがカプセル型筐体のサイズによって狭い範囲に制限される従来のカプセル型医療装置の鉗子等に比して極めて大きなものになり、被検体1の体内部位から塊状の生体組織(すなわち生体組織塊15)を確実に切断採取するに十分な切断力になる。
かかるカプセル型医療装置72によって採取された生体組織塊15は、上述した実施の形態2の場合と同様に生体検査のサンプルとして十分な大きさのものであり、かかる生体組織塊15を用いて病理診断等の生体検査を実施することによって、生体検査の精度を高めることができるとともに、検査対象の体内部位における生体組織の断面状態等の少量の生体組織からは取得が困難な多くの医学的情報を取得できる。
なお、上述したカプセル型医療装置72は、生体組織塊15を切断採取するまでに切断部76の回転数が1回転に満たない場合を例示し、この1回転未満の切断部76によって、体内部位から生体組織塊15を確実に切断採取するに十分な切断力を得ていたが、さらに、この切断部76の回転数を増加することによって切断部76の切断力を一層高めることができる。詳細には、カプセル型医療装置72は、フック75によって体内部位の一部分を引き込む前からモータ77を継続して駆動させることによって、切断部76の周方向の回転数を1回転以上に増加でき、これによって、生体組織塊を切断採取する際の切断部76の移動量を、カプセル型筐体70の周方向に沿って無限長(カプセル型筐体70の周方向の外周長以上)に増大させることができる。この結果、カプセル型医療装置72は、上述した1回転未満の場合に比して切断部76の切断力を一層高めることができ、体内部位から生体組織塊15を一層確実に切断採取できる。
以上、説明したように、本発明の実施の形態3では、カプセル型筐体の周方向に刃を向ける態様でカプセル型筐体の内部に切断部を回転自在に配置し、この切断部に先行して周方向に回転しつつ体内部位の一部分をカプセル型筐体内部に引き込むフックを配置し、回転駆動部が生成した周方向の回転力によってフックと切断部とをともにカプセル型筐体の周方向に回転し、この周方向に回転するフックによってカプセル型筐体内部に引き込まれた体内部位を、この周方向に回転する切断部によって切断採取するようにし、その他を実施の形態2と略同様に構成した。このため、上述した実施の形態2の場合とほぼ同様に、この切断部の回転慣性を維持しつつ、この周方向の回転力を切断部の切断力に変換でき、さらには、フックの作用によって体内部位の一部分を引き伸ばしつつ固定できるとともに、この体内部位から充分な体積の生体組織塊をカプセル型筐体内部に取り込むことができる。この結果、上述した実施の形態2と同様の作用効果を享受できるとともに、切断部による生体組織塊の切断採取をより容易に達成できるカプセル型医療装置を実現できる。
(実施の形態4)
つぎに、本発明の実施の形態4について説明する。上述した実施の形態1では、カプセル型筐体20の周方向に刃を向ける態様の切断部20cによって体内部位から生体組織塊を切断採取していたが、この実施の形態4では、カプセル型筐体の長手方向に刃を向ける態様で切断部を配置し、この切断部をカプセル型筐体の周方向に回転することによって体内部位から生体組織塊を切断採取するようにしている。
図27は、本発明の実施の形態4にかかるカプセル型医療装置の一構成例を示す模式図である。図28は、図27に示すカプセル型医療装置の外装部をスライドして切断部を露出させた状態を示す模式図である。なお、図27,28には、この実施の形態4にかかるカプセル型医療装置の内部構成を説明し易くするために一部破断したものを示している。
図27,28に示すように、この実施の形態4にかかるカプセル型医療装置82は、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2のカプセル型筐体20に代えてカプセル型筐体80を備え、切断部20cに代えて切断部81を備え、外装カバー20dに代えて外装部80cを備え、駆動部26に代えて直動機構83を備え、保管部27に代えて保管部84を備え、制御部28に代えて制御部88を備える。また、カプセル型医療装置82は、この保管部84を開閉する蓋部85と、蓋部85を開閉駆動するモータ86とを備える。なお、この実施の形態4にかかる生体組織採取システムは、上述した実施の形態1にかかる生体組織採取システム11(図1参照)のカプセル型医療装置2に代えてカプセル型医療装置82を備える。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
カプセル型筐体80は、被検体1の内部に導入可能な大きさに形成されたカプセル型の筐体であり、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2の筒状筐体20aに代えて筒状筐体80aを備える。かかるカプセル型筐体80は、一端に外装部80cが設けられる筒状筐体80aの他端(開口端)をドーム形状筐体20bによって塞いで形成される。筒状筐体80aは略不透明な筐体であり、筒状筐体80aの一部分には、後述する保管部84が形成される。かかる筒状筐体80aとドーム形状筐体20bとによって形成されるカプセル型筐体80の内部において、照明部21a、光学系21b、および撮像部21cは、ドーム形状筐体20b側に配置され、信号処理部22、送信部23、磁石24、磁気センサ25、直動機構83、蓋部85、モータ86、制御部88、および電源部29は、筒状筐体80a側に配置される。
外装部80cは、筒状部の一端にドーム形状部が形成された有底構造体であり、筒状筐体80aの一端(ドーム形状筐体20bと反対側の端部)を覆う態様で筒状筐体80aに設けられる。この場合、外装部80cは、直動機構83に接続された棒状の支持部80dによって、カプセル型筐体80の長手方向に直動可能に支持される。また、この外装部80cの開口端には、カプセル型筐体80の長手方向に刃を向ける態様で切断部81が固定配置される。かかる外装部80cは、図28に示すように、後述する直動機構83の駆動によって筒状筐体80aから離間する方向(カプセル型筐体80の長手方向の一つ)に直動した場合、カプセル型筐体80との間に開口を形成するとともに外部に切断部81を露出する。一方、かかる外装部80cは、直動機構83の駆動によって筒状筐体80aに近接する方向(カプセル型筐体80の長手方向の一つ)に直動した場合、このカプセル型筐体80との開口を閉じるとともに、筒状筐体80aの内側に切断部81を収容する態様で筒状筐体80aの端部に係合する。
切断部81は、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断し、採取する切断採取手段として機能する。具体的には、切断部81は、例えば環状に形成された刃を有する刃物であり、カプセル型筐体80の長手方向に刃を向ける態様で外装部80cの開口端部に固定配置される。かかる切断部81は、上述したように磁石24によって生成される周方向の回転力によって、外装部80cとともにカプセル型筐体80の周方向に回転し、この結果、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断し、採取する。かかる切断部81によって切断採取された生体組織塊は、保管部84の内部に収容される。
直動機構83は、カプセル型筐体80の長手方向に外装部80cを直動して、カプセル型筐体80(詳細には筒状筐体80a)と外装部80cとを離間または接続するための機構である。直動機構83は、モータ83aとボールネジ83bとを用いて実現され、図27に示すように筒状筐体80aの後部に配置される。ボールネジ83bは、カプセル型筐体80の中心軸CLに平行な態様でモータ83aに回転自在に接続される。また、かかるボールネジ83bには、上述した外装部80cを支持する棒状の支持部80dが接続される。モータ83aは、制御部88の制御に基づいて、かかるボールネジ83bを回転するよう駆動し、これによって、この支持部80dとともに外装部80cをカプセル型筐体80の長手方向に直動する。
保管部84は、上述した切断部81によって切断採取された生体組織塊を保管するためのものであり、図27に示すように、カプセル型筐体80の後部であって筒状筐体80aと外装部80cとの係合部近傍に形成される。この場合、保管部84は、カプセル型医療装置82の内蔵部品(具体的には、撮像部21cおよび制御部88等の電子部品、電池等の電源部29、磁石24等)に対して隔離された態様で形成される。かかる保管部84は、上述した筒状筐体80aと外装部80cとの間に開口が形成された状態であって、且つ蓋部85によって閉塞されていない状態である場合、切断部81によって切断採取された生体組織塊を収容し、保管する。蓋部85は、この保管部84の近傍に収容され、モータ86は、制御部88の制御に基づいて、この蓋部85を出し入れするよう駆動する。蓋部85は、このモータ86の駆動によって保管部84の開口部に突出した場合に保管部84を閉塞する。
制御部88は、磁気センサ25から外部磁界を検知した旨の検知信号を取得した場合、直動機構83のモータ83aを制御して、筒状筐体80aと外装部80cとを離間させる(すなわち筒状筐体80aと外装部80cとの間に開口を形成する)とともに切断部81を露出させる。また、制御部88は、上述した磁石24の回転力によってカプセル型筐体80と外装部80cとが周方向に回転している際に、直動機構83のモータ83aを制御して筒状筐体80aと外装部80cとを接続(係合)させる。この結果、筒状筐体80aおよび外装部80cは、被検体1の体内部位の一部分を内部に挟み込むとともに、切断部81は、この外装部80cとともに周方向に回転しつつ、この挟み込まれた体内部位の一部分から生体組織塊を切断採取する。その後、制御部88は、モータ86を制御して、保管部84の開口部に蓋部85を移動させる。この結果、保管部84は、切断部81によって切断採取された生体組織塊を収容した態様で蓋部85によって閉塞される。なお、かかる制御部88が有する他の機能は、上述した駆動部26の制御機能を除き、実施の形態1にかかるカプセル型医療装置2の制御部28と同様である。
以上のような構成を有するカプセル型医療装置82は、この実施の形態4にかかる生体組織採取システムにおいて、被検体1の内部に導入され、その後、蠕動運動等によって被検体1の消化管内部を移動し、検査対象の体内部位に到達する。この場合、ユーザは、上述した実施の形態1の場合と同様に、表示部4に表示された体内画像および現在位置情報を確認しつつ、入力部8を用いて磁界発生部5および移動部7を操作する。
被検体1内部のカプセル型医療装置82は、上述した磁界発生部5によって回転磁界および勾配磁界が印加されたタイミングで筒状筐体80aと外装部80cとを離間して切断部81を露出し、この回転磁界および勾配磁界の作用によってカプセル型筐体80の周方向に切断部81を回転させつつ、この筒状筐体80aと外装部80cとの間に体内部位の一部分を挟み込み、この挟み込んだ体内部位の一部分から切断部81によって生体組織塊を切断採取する。この生体組織塊は、カプセル型医療装置82の保管部84に保管される。生体組織塊を採取したカプセル型医療装置82は、かかる回転磁界および勾配磁界から解放された後、蠕動運動等によって消化管内部を移動し、最終的に被検体1の外部に自然排出される。かかるカプセル型医療装置82の保管部84に保管された生体組織塊は、医師または看護師等に回収され、病理診断等の生体検査に用いられる。
つぎに、被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する際のカプセル型医療装置82の動作について説明する。図29は、実施の形態4にかかるカプセル型医療装置82の筒状筐体80aと外装部80cとの間に体内部位の一部分を挟み込んだ状態を例示する模式図である。図30は、実施の形態4にかかるカプセル型医療装置82の切断部81によって体内部位の一部分から生体組織塊を切断採取した状態を例示する模式図である。
被検体1内部のカプセル型医療装置82が検査対象の体内部位に到達した場合、上述した磁界発生部5は、このカプセル型医療装置82に勾配磁界および回転磁界を印加する。この場合、カプセル型医療装置82において、磁気センサ25は、磁界発生部5による回転磁界H2または勾配磁界H1を検知し、制御部88は、この磁気センサ25によって回転磁界H2または勾配磁界H1が検知されたタイミングで直動機構83のモータ83aを駆動させ、これによって、筒状筐体80aから外装部80cを離間して筒状筐体80aと外装部80cとの間に開口を形成するとともに、この外装部80c端部の切断部81を露出させる。
このような状態のカプセル型医療装置82は、勾配磁界H1に誘導される磁石24(図27参照)の作用によって体内部位に筒状筐体80aと外装部80cとを押し付けるとともに、回転磁界H2に追従する磁石24の作用によって、カプセル型筐体80の周方向に回転する。これと同時に、カプセル型医療装置82は、直動機構83のモータ83aを駆動させ、これによって、筒状筐体80aに外装部80cを近接させるとともに筒状筐体80aと外装部80cとの間(詳細には、外装部80c端部に固定配置された切断部81と筒状筐体80aとの間)に体内部位の一部分を挟みこむ(状態F1)。
かかる状態F1のカプセル型医療装置82は、回転磁界H2に追従する磁石24の回転力によってカプセル型筐体80の周方向に回転し続ける。この場合、筒状筐体80aおよび外装部80cは、この体内部位の一部分を挟み込みつつ周方向に回転し、切断部81は、かかる外装部80cとともに周方向に回転する。かかる切断部81は、カプセル型筐体80の周方向の回転による慣性を維持しつつ、上述した磁石24による回転力を切断力に変換し、これによって切断力を高める。このように切断力を高めた切断部81は、筒状筐体80aと外装部80cとによって挟み込まれた体内部位の一部分から生体組織塊15を切断採取する。その後、切断部81は、かかる筒状筐体80aと外装部80cとの接続(係合)によって筒状筐体80aの内側に収容される。
かかる切断部81によって切断採取された生体組織塊15は、保管部84内に保管される(状態F2)。なお、この生体組織塊15を収容した保管部84は、図30に示すように、蓋部85によって閉塞される。この結果、保管部84は、この生体組織塊15を外部に零すことなく保管する。
このように保管部84に生体組織塊15を保管した状態のカプセル型医療装置82は、勾配磁界および回転磁界から解放された後、蠕動運動等によって被検体1の外部に自然排出される。この被検体1からカプセル型医療装置82が自然排出された後、保管部84内部の生体組織塊15は、医師または看護師等によって回収され、病理診断等の生体検査に用いられる。
ここで、カプセル型医療装置82は、切断部81によって被検体1の体内部位から生体組織塊を切断採取する際、筒状筐体80aと外装部80cとの間に体内部位の一部分を挟み込みつつ、外部の回転磁界に追従してカプセル型筐体80の周方向に切断部81を回転させている。このため、カプセル型医療装置82は、このカプセル型筐体80の周方向に回転する切断部81の回転慣性を維持しつつ、この外部の回転磁界に追従して回転する磁石24によって生成される周方向の回転力を切断部81の切断力に変換することができるとともに、この体内部位の一部分を取り込みつつ筒状筐体80aと外装部80cとの間に固定でき、これによって、例えば小腸または大腸等の狭い空間内であっても、この切断部81の切断力を十分に高めることができる。このように高められた切断部81の切断力は、カプセル型筐体から出し入れされる際の直線的なストロークがカプセル型筐体のサイズによって狭い範囲に制限される従来のカプセル型医療装置の鉗子等に比して極めて大きなものになり、被検体1の体内部位から塊状の生体組織(すなわち生体組織塊15)を確実に切断採取するに十分な切断力になる。
かかるカプセル型医療装置82によって採取された生体組織塊15は、生体検査のサンプルとして十分な大きさのものであり、かかる生体組織塊15を用いて病理診断等の生体検査を実施することによって、生体検査の精度を高めることができるとともに、検査対象の体内部位における生体組織の断面状態等の少量の生体組織からは取得が困難な多くの医学的情報を取得できる。
なお、上述したカプセル型医療装置82は、カプセル型筐体80とともに周方向に回転する外装部80cの回転数が1回転に満たない場合を例示し、この1回転未満の外装部80cとともに周方向に回転する切断部81によって、体内部位から生体組織塊15を確実に切断採取するに十分な切断力を得ていたが、さらに、この切断部81の回転数を増加することによって切断部81の切断力を一層高めることができる。詳細には、カプセル型医療装置82は、外部の回転磁界に追従して外装部80cの周方向の回転を1回転以上継続して行うことによって、この外装部80cとともに周方向に回転する切断部81の回転数を1回転以上に増加でき、これによって、生体組織塊を切断採取する際の切断部81の移動量を、カプセル型筐体80の周方向に沿って無限長(カプセル型筐体80の周方向の外周長以上)に増大させることができる。この結果、カプセル型医療装置82は、外装部80cの回転数すなわちカプセル型筐体80の回転数が1回転未満の場合に比して切断部81の切断力を一層高めることができ、体内部位から生体組織塊15を一層確実に切断採取できる。
以上、説明したように、本発明の実施の形態4では、カプセル型筐体に対して直動によって離間および係合可能な外装部をカプセル型筐体の端部に配置し、カプセル型筐体の長手方向に刃を向ける態様で外装部の係合端部に切断部を固定配置し、この外装部とカプセル型筐体との間に被検体の体内部位の一部分を挟み込むとともに、この挟み込んだ体内部位の一部分に切断部の刃を押し付けるようにし、さらに、このカプセル型筐体内の回転駆動部が生成した周方向の回転力によって外装部とともに切断部をカプセル型筐体の周方向に回転し、この周方向に回転する切断部によって、この体内部位の一部分から生体組織塊を切断採取するようにし、その他を実施の形態1と略同様に構成した。このため、上述した実施の形態1の場合とほぼ同様に、この切断部の回転慣性を維持しつつ、この周方向の回転力を切断部の切断力に変換でき、さらには、外装部の直動(往復動作)によって外装部とカプセル型筐体との間に充分な体積の生体組織塊を挟み込み且つ固定でき、この結果、上述した実施の形態1と同様の作用効果を享受できるとともに、切断部による生体組織塊の切断採取をより容易に達成できるカプセル型医療装置を実現できる。
なお、上述した実施の形態2では、カプセル型筐体60の内部に体内部位の一部分を引き込む(吸引する)ための開口部60cをカプセル型筐体60の一箇所に形成していたが、これに限らず、かかる開口部60cをカプセル型筐体60の複数箇所に形成してもよい。この場合、カプセル型筐体60の複数箇所に形成された開口部60cの中から体内部位の一部分を引き込む開口部を順次切り替えるようにする。具体的には、図31に示すようにカプセル型筐体60の周方向に沿って複数の開口部60cを形成してもよいし、図32に示すようにカプセル型筐体60の長手方向に沿って複数の開口部60cを形成してもよいし、図33に示すようにカプセル型筐体60の周方向および長手方向に対して傾斜する方向に沿って複数の開口部60cを形成してもよい。いずれの場合であっても、上述した隔離部61は、これら複数の開口部60cに対応して複数箇所に開口部を備えればよく、一方、切断部63は、図31〜33に示すように筒状筐体60aの内周に合わせて湾曲した形状に形成され、カプセル型筐体60の周方向に回転しつつ、これら複数の開口部60cのうちの2つ以上を開状態にせずに一つを順次開状態にすればよい。このように構成することによって、検査対象の体内部位において複数の箇所から生体組織塊を容易に切断採取可能なカプセル型医療装置を実現できる。
また、上述した実施の形態1の変形例1および実施の形態2,3では、モータの駆動力(回転力)によってカプセル型筐体の周方向に切断部を回転させていたが、これに限らず、上述した実施の形態1等に例示されるように外部の回転磁界に追従する磁石の回転力によってカプセル型筐体の周方向に切断部を回転させてもよい。この場合、上述したように外部の制御部30からの制御信号に基づいて、生体組織塊を切断採取するための一連の動作をカプセル型医療装置に実行させてもよいし、実施の形態1等に例示されるように、カプセル型筐体内部に磁気センサを配置し、この磁気センサによる外部磁界の検知信号に基づいて、生体組織塊を切断採取するための一連の動作をカプセル型医療装置に実行させてもよい。
さらに、上述した実施の形態1、変形例2、および実施の形態4では、カプセル型筐体内部に磁気センサを配置し、この磁気センサによる外部磁界の検知信号に基づいて、生体組織塊を切断採取するための一連の動作をカプセル型医療装置に実行させていたが、これに限らず、上述した実施の形態2等に例示されるように、外部の制御部30からの制御信号に基づいて、生体組織塊を切断採取するための一連の動作をカプセル型医療装置に実行させてもよい。
また、上述した実施の形態1の変形例1および実施の形態2,3では、被検体内部のカプセル型医療装置は、外部からの制御信号に基づいて、生体組織塊を切断採取するための一連の動作を開始し、この制御信号を取得してから所定の時間が経過後に、この一連の動作を停止していたが、これに限らず、被検体内部のカプセル型医療装置に動作開始の制御信号を送信し、この動作開始の制御信号に基づいてカプセル型医療装置に一連の動作を開始させ、その後、所望のタイミングで動作停止の制御信号をカプセル型医療装置に送信し、この動作停止の制御信号に基づいてカプセル型医療装置に一連の動作を停止させてもよい。
さらに、上述した実施の形態1では、ばねの弾性力(付勢力)によって保管部の開閉部を開閉していたが、これに限らず、上述した実施の形態1の変形例1に例示されるように、モータの駆動力によって保管部の開閉部を開閉駆動してもよい。また、上述した実施の形態1の変形例1では、モータの駆動力によって保管部の開閉部を開閉駆動していたが、これに限らず、上述した実施の形態1に例示されるように、ばねの弾性力(付勢力)によって保管部の開閉部を開閉してもよい。
上述した実施の形態4では、筒状筐体80aに対して相対的に外装部80cを周方向に回転させずに、筒状筐体80aに離間または近接する方向に外装部80cを直動していたが、これに限らず、筒状筐体80aに対して相対的に外装部80cを周方向に回転させつつ、筒状筐体80aに離間または近接する方向に外装部80cを直動してもよい。この場合、この外装部80cを直動するモータによって周方向の回転力が生成されるため、外部の回転磁界に追従して周方向に回転する磁石をカプセル型筐体内に配置しなくてもよい。