JP5100306B2 - 溶存酸素低減液剤 - Google Patents

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Description

本発明は、溶存酸素量が低減された液剤に関する。
経口摂取が困難な患者への栄養補給は、通常、糖類、アミノ酸、ビタミン類、電解質、脂肪乳剤、微量金属元素などを含む輸液の経静脈投与により達成される。この輸液に含まれるアミノ酸、ビタミン類などは、酸化しやすい成分である。また、輸液容器の形成材料として周知のポリオレフィン系樹脂は、酸素を透過しやすい材料である。このため、輸液は、その保存時においても、アミノ酸、ビタミン類などの易酸化性成分の酸化が進行するおそれがある。
一方、易酸化性成分を含む輸液を安定して保存するために、特許文献1では、「アミノ酸を含有した水溶液からなる輸液剤が気体透過性を有する医療用一次容器に充填され、該医療用一次容器に充填された輸液剤が脱酸素剤と共に、実質的に酸素を透過しない二次包装容器内に収納されてなることを特徴とする輸液剤の包装体」が提案されている。また、特許文献2には、プラスチックフィルムの少なくとも片面に無機化合物膜が形成され、酸素透過度が1cc/m・24hr・atm以下、透湿度が1g/m・24hr・atm以下、光線透過率が80%以上、および色相b値が5以下の薬品容器用フィルムが提案されている。
さらに、特許文献3には、「少なくとも排出口が形成された可撓壁を有する樹脂容器からなり、上記容器壁はポリビニルアルコールの中間層を境に内層と外層に分かれて多層形成され、上記最内層は、厚みが50乃至800μmの範囲のポリオレフィン層であり、上記外層の透湿量So(g/m24hrs:温度40℃、90%RH)が上記内層の透湿量Si(g/m24hrs:温度40℃、90%RH)の2倍以上になるように、上記外層が設けられていることを特徴とするガスバリア性を有する輸液容器」を、乾燥剤を共存させて包装体で包装したものが記載されている。この輸液容器によれば、外層の水蒸気が速やかに外部に放出される。このため、オートクレーブ滅菌処理後に、外部の乾燥剤によって外層とこれに隣接するポリビニルアルコール層との水蒸気を低減でき、その結果、ポリビニルアルコール層のガスバリア性を24時間以内にほぼ完全に回復できる。また、輸液容器内部から最内層を透過してポリビニルアルコール層に達した水蒸気は、外層を通って、速やかにポリビニルアルコール層から外部へと抜けるため、ポリビニルアルコール層のガスバリア性の低下を生じさせない(段落[0007])。
特開昭63−275346号公報 特開平11−285520号公報 特開平10−80464号公報
しかるに、特許文献1に記載の輸液剤の包装体のように、一次容器が酸素透過性を有している場合には、二次容器の開封後に一次容器が放置されることで、一次容器内の輸液剤の酸化劣化を防止できなくなる。しかも、例えば、一次容器内に他の薬剤を混注する場合に、誤って、細菌の混入が生じたときには、一次容器の外部からの酸素の透過により、細菌の増殖が加速されるおそれがある。
特許文献2に記載の薬品容器用フィルムは、酸素バリア性に優れたフィルムである。このため、ヘッドスペースに酸素が含まれている状態や、内容物の溶存酸素量が多い状態で薬品容器が密封されることで、かえって、内容物の酸化劣化や好気性細菌の増殖などを防止できなくなる。なお、容器の密封前に薬液の溶存酸素を低減させる処理や、ヘッドスペースを窒素などの不活性ガスで置換する処理は、手間がかかり、コストの上昇などを招く不具合がある。さらに、上記の薬品容器用フィルムは柔軟性が十分ではないため、例えば、薬品容器の搬送時における衝撃などで、フィルムにピンホールが生じるおそれがある。
特許文献3に記載の輸液容器によれば、上述のとおり、外部の乾燥剤によって、ポリビニルアルコール層の水蒸気を低減させ、そのガスバリア性を維持できる。しかしながら、オートクレーブ滅菌処理後に輸液容器内に残存している酸素については、全く考慮されておらず、輸液容器内に残存する酸素に起因する内容物の酸化劣化、好気性細菌の増殖などを防止することができない。
本発明の目的は、溶存酸素量が低減され、酸化による変質が生じにくく、かつ経時安定性に優れた液剤を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の溶存酸素低減液剤は、
蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理後12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が200cm/m・24h・atm以上であり、かつ酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が100cm/m・24h・atm以下であるプラスチックからなる薬液容器に収容、密封されており、
前記蒸気滅菌処理または前記熱水滅菌処理が施されており、
溶存酸素濃度が、前記蒸気滅菌処理または前記熱水滅菌処理後、前記プラスチックの酸素透過度が定常状態に達したときに、2ppm以下である、ことを特徴としている。
上記溶存酸素低減液剤において、液剤を収容、密封するための薬液容器は、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理を施してから12時間以内において、酸素透過度(温度25℃、湿度60%RH)が200cm/m・24h・atm以上の高い値を示し、かつ、定常状態において、酸素透過度(温度25℃、湿度60%RH)が100cm/m・24h・atm以下の低い値を示すプラスチックで形成されている。このため、液剤が収容、密封された薬液容器に蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理を施してから、上記プラスチックの酸素透過度が定常状態に達するまでの間には、上記プラスチックの高い酸素透過度を利用して、薬液容器の外部から、液剤に溶存されている酸素や薬液容器内に残存している酸素を低減させるための処理を施すことができる。また、上記プラスチックの酸素透過度が定常状態に達した後には、上記プラスチックの酸素透過度が極めて低くなることを利用して、液剤の溶存酸素量の上昇を抑制することができる。さらに、上記溶存酸素低減液剤によれば、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理後に、液剤の溶存酸素量を2ppm以下まで低減させることによって、または、液剤の溶存酸素量を予め2ppm以下まで低減させておくことによって、液剤の溶存酸素量を長期にわたって極めて低い値で維持することができ、液剤の酸化による変質を防止することができる。
本発明の溶存酸素低減液剤は、前記蒸気滅菌処理または前記熱水滅菌処理後に、脱酸素手段を有する環境下で保存されている。
この場合、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理後に、すなわち、上記薬液容器を形成するプラスチックの酸素透過度が高い状態となっているときに、上記液剤の溶存酸素や上記薬液容器内に残存する酸素を、薬液容器の外部から上記脱酸素手段によって除去することができる。さらに、上記薬液容器を、脱酸素手段を有する環境下で保存することにより、薬液容器への酸素の流入を防止しつつ、薬液容器を形成するプラスチックの酸素透過度を定常状態へと移行させることができる。

本発明の溶存酸素低減液剤は、易酸化性液剤であることが好適であり、さらに具体的には、例えば、アミノ酸含有液、ビタミン類含有糖液、および脂溶性ビタミン含有液からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好適である。
本発明の溶存酸素低減液剤においては、前記アミノ酸含有液が、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−リジン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−システイン、L−フェニルアラニン、L−チロジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アラニン、L−プロリン、L−セリン、L−グリシン、L−アスパラギン酸、およびL−グルタミン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸を含有していることが好適である。
本発明の溶存酸素低減液剤においては、前記ビタミン類含有糖液が、糖類と、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、葉酸、ナイアシン、ビオチン、およびパントテン酸類からなる群より選ばれる水溶性ビタミンと、を含有していることが好適である。
本発明の溶存酸素低減液剤においては、前記脂溶性ビタミン含有液が、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、およびビタミンKからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂溶性ビタミンを含有していることが好適である。
本発明の溶存酸素低減液剤によれば、液剤の溶存酸素量を極めて低い値で維持することができる。それゆえ、液剤の酸化による変質を長期にわたって抑制し、経時安定性に優れた液剤を提供することができる。
本発明の溶存酸素低減液剤は、
蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理後12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が200cm/m・24h・atm以上であり、かつ酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が100cm/m・24h・atm以下であるプラスチックからなる薬液容器に収容、密封されていること、
前記蒸気滅菌処理または前記熱水滅菌処理が施されていること、かつ、
溶存酸素濃度が、前記蒸気滅菌処理または前記熱水滅菌処理後、前記プラスチックの酸素透過度が定常状態に達したときに、2ppm以下であること、を特徴としている。
本発明の溶存酸素低減液剤において、上記薬液容器に収容、密封される液剤としては、各種の液剤が挙げられるが、とりわけ、酸化しやすい薬剤(易酸化性薬剤)を含有する液剤が好適である。上記溶存酸素低減液剤を収容する薬液容器は、外部からの酸素の侵入を高度に抑制可能な容器であるため、易酸化性薬剤であっても、経時的に安定して収容、保存することができる。
易酸化性薬剤は、酸化しやすい成分を含む各種の薬剤である。酸化しやすい成分としては、例えば、アミノ酸、ビタミン類などが挙げられる。
アミノ酸としては、例えば、いわゆる必須アミノ酸と、その他のアミノ酸と、これらアミノ酸の塩、エステルおよびN−アシル体などが挙げられる。具体的には、例えば、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−リジン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−システイン、L−フェニルアラニン、L−チロジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アラニン、L−プロリン、L−セリン、L−グリシン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸などのアミノ酸が挙げられる。これらアミノ酸は、例えば、L−アルギニン塩酸塩、L−システイン塩酸塩、L−グルタミン酸塩酸塩、L−ヒスチジン塩酸塩、L−リジン塩酸塩などの無機酸塩、例えば、L−リジン酢酸塩、L−リジンリンゴ酸塩などの有機酸塩、例えば、L−チロジンメチルエスエル、L−メチオノンメチルエスエル、L−メチオニンエチルエステルなどのエステル体、例えば、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−L−トリプトファン、N−アセチル−L−プロリンなどのN−置換体、例えば、L−チロシル−L−チロジン、L−アラニル−L−チロジン、L−アルギニル−L−チロジン、L−チロシル−L−アルギニンなどのジペプチド類などの形態であってもよい。また、これらアミノ酸は、単独で含まれていてもよく、2種以上が混合して含まれていてもよい。
ビタミン類としては、各種のビタミンが挙げられる。具体的には、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどの脂溶性ビタミンと、例えば、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、葉酸、ナイアシン(ニコチン酸類)、ビオチン(ビタミンH)、パントテン酸類などの水溶性ビタミンとが挙げられる。
ビタミンAとしては、例えば、レチノール、レチナール、レチノイン酸、レチノールのエステル(例えば、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノールなど)が挙げられ、好ましくは、パルミチン酸レチノールが挙げられる。ビタミンDとしては、例えば、ビタミンD、ビタミンD(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD(コレカルシフェロール)、これらの活性型(ヒドロキシ誘導体)が挙げられ、好ましくは、コレカルシフェロールが挙げられる。ビタミンEとしては、例えば、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、これらのエステル(例えば、酢酸エステル、コハク酸エステルなど)が挙げられ、好ましくは、酢酸トコフェロールが挙げられる。ビタミンKとしては、例えば、ビタミンK(フィロキノン;一般名フィトナジオン)、ビタミンK(メナキノン)、ビタミンK(メナジオン)などが挙げられ、好ましくは、フィトナジオンが挙げられる。
ビタミンBとしては、チアミンや、チアミンの誘導体(例えば、塩酸チアミン、プロスルチアミン、オクトチアミンなど)が挙げられ、好ましくは、塩酸チアミンが挙げられる。ビタミンBとしては、例えば、リボフラビン、リン酸リボフラビン(リボフラビンのリン酸エステル)およびそのナトリウム塩、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチドなどが挙げられ、好ましくは、リン酸リボフラビンが挙げられる。ビタミンBとしては、例えば、ピリドキサール、ピリドキシン、ピリドキサミン、塩酸ピリドキシンなどが挙げられ、好ましくは、塩酸ピリドキシンが挙げられる。ビタミンB12としては、例えば、シアノコバラミンなどが挙げられる。ビタミンCとしては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムなどが挙げられ、好ましくは、アスコルビン酸が挙げられる。ナイアシンとしては、例えば、ニコチン酸、ニコチン酸アミドなどが挙げられる。パントテン酸類としては、パントテン酸、そのカルシウム塩、還元体であるパンテノールなどが挙げられ、好ましくは、パンテノールが挙げられる。ビタミンPとしては、例えば、フラボノイド類などが挙げられる。
上記ビタミン類は、単独で含まれていてもよく、2種以上が混合して含まれていてもよい。また、上記水溶性ビタミンは、単独でまたは2種以上を混合して、アミノ酸を含有する液剤や、糖類を含有する液剤に配合されていてもよい。
上記易酸化性薬剤を含有する液剤(易酸化性液剤)の具体例としては、例えば、アミノ酸含有液、ビタミン類などを含む糖液(ビタミン類含有糖液)、脂溶性ビタミン含有液などが挙げられる。
アミノ酸含有液としては、上記例示のアミノ酸を単独でまたは2種以上混合して含有する液剤が挙げられる。また、アミノ酸含有液は、任意の成分として、例えば、電解質、水溶性ビタミンなどを含有していてもよい。
アミノ酸含有液に含有される水溶性ビタミンとしては、例えば、上記例示の水溶性ビタミンが挙げられ、なかでも好ましくは、ニコチン酸アミドおよび葉酸が挙げられる。これら水溶性ビタミンは、アミノ酸含有液中に、単独でまたは2種以上混合して含有される。また、これら水溶性ビタミンは、上記アミノ酸との共存下において、互いに安定して存在する。
アミノ酸含有液に含有される電解質としては、例えば、ナトリウムイオン(Na)、マグネシウムイオン(Mg2+)、カリウムイオン(K)、カルシウムイオン(Ca2+)、塩化物イオン(Cl)、ヨウ化物イオン(I)、リン酸イオン(具体的に、リン酸水素イオン(HPO 2−)またはリン酸二水素イオン(HPO ))、グリセロリン酸イオン(CPO 2−)などのイオンを供給する水溶性塩が挙げられる。これら電解質は、単独でまたは2種以上混合して含有される。また、これら電解質は、上記アミノ酸との共存下において、互いに安定して存在する。
ナトリウムイオン供給源としての水溶性塩には、例えば、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどが挙げられる。マグネシウムイオン供給源としての水溶性塩には、例えば、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウムなどが挙げられ、好ましくは、硫酸マグネシウムが挙げられる。カリウムイオン供給源としての水溶性塩には、例えば、塩化カリウム、ヨウ化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、グリセロリン酸カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウムなどが挙げられ、好ましくは、酢酸カリウムが挙げられる。カルシウムイオン供給源としての水溶性塩には、例えば、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウムなどが挙げられ、好ましくは、塩化カルシウムが挙げられる。
塩化物イオン供給源としての水溶性塩には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどが挙げられ、好ましくは、塩化カルシウムが挙げられる。ヨウ化物イオン供給源としての水溶性塩には、例えば、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウムなどが挙げられる。リン酸イオン供給源としての水溶性塩には、例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸一水素マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムなどが挙げられる。グリセロリン酸イオン供給源としての水溶性塩には、例えば、グリセロリン酸ナトリウム、グリセロリン酸カリウム、グリセロリン酸カルシウムなどが挙げられる。
なお、アミノ酸含有液には、電解質として、カルシウムイオンを含む水溶性塩と、リン酸イオンを含む水溶性塩とを共存させないことが好ましい。カルシウムイオンとリン酸イオンの両方を同時に投与する用途においては、薬液容器として、2以上の収容部を備える複室容器を使用し、カルシウムイオンを含む水溶性塩と、リン酸イオンを含む水溶性塩との少なくともいずれか一方を、アミノ酸含有液が収容されていない収容部に収容させることが好ましい。
アミノ酸含有液には、さらに、例えば、抗酸化剤、pH調整剤などが含まれていてもよい。抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどが挙げられる。pH調整剤としては、例えば、塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸などの酸や、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリが挙げられる。これらpH調整剤の酸およびアルカリは、電解質のイオン供給源である水溶性塩として配合してもよい。
アミノ酸含有液のpHは、例えば、pH調整剤などを適宜用いて、好ましくは、2.5〜10となるように、より好ましくは、5〜8となるように調整される。
アミノ酸含有液は、糖液と混合して保存された場合に、経時的な安定性が損なわれる。それゆえ、アミノ酸含有液と糖液とを同時に投与する用途においては、例えば、薬液容器として、2以上の収容部を備える複室容器を使用し、アミノ酸含有液と糖液とを分離して収容する。
ビタミン類含有糖液としては、例えば、糖類と、水溶性ビタミンとを含有する液剤が挙げられる。
ビタミン類含有糖液に含有される糖類としては、各種輸液に慣用されているものが挙げられ、特に限定されないが、例えば、ブドウ糖、フルクトース、ガラクトースなどの単糖類、マルトース、ラクトース、スクロースなどの二糖類などが挙げられ、なかでも、好ましくは、ブドウ糖が挙げられる。これら糖類は、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
ビタミン類含有糖液に含有される水溶性ビタミンとしては、上記例示の水溶性ビタミンが挙げられ、これら水溶性ビタミンは、単独でまたは2種以上混合して含有される。これら水溶性ビタミンは、上記糖液との共存下において、互いに安定して存在する。
また、ビタミン類含有糖液は、任意の成分として、電解質などを含有していてもよい。
ビタミン類含有糖液に含有される電解質としては、例えば、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、リン酸イオン、グリセロリン酸イオンなどのイオンを供給する水溶性塩が挙げられる。これら電解質は、単独でまたは2種以上混合して含有される。また、これら電解質は、上記糖液との共存下において、互いに安定して存在する。
ナトリウムイオン供給源としての水溶性塩には、アミノ酸含有液に含有されるものと同じものが挙げられ、好ましくは、塩化ナトリウムおよび乳酸ナトリウムが挙げられる。マグネシウムイオン供給源としての水溶性塩には、アミノ酸含有液に含有されるものと同じものが挙げられる。カリウムイオン供給源としての水溶性塩には、アミノ酸含有液に含有されるものと同じものが挙げられ、好ましくは、塩化カリウム、ヨウ化カリウムおよびリン酸二水素カリウムが挙げられる。カルシウムイオン供給源としての水溶性塩には、アミノ酸含有液に含有されるものと同じものが挙げられる。
塩化物イオン供給源としての水溶性塩には、アミノ酸含有液に含有されるものと同じものが挙げられ、好ましくは、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムが挙げられる。ヨウ化物イオン供給源としての水溶性塩には、アミノ酸含有液に含有されるものと同じものが挙げられ、好ましくは、ヨウ化カリウムが挙げられる。リン酸イオン供給源としての水溶性塩には、アミノ酸含有液に含有されるものと同じものが挙げられ、好ましくは、リン酸二水素カリウムが挙げられる。グリセロリン酸イオン供給源としての水溶性塩には、アミノ酸含有液に含有されるものと同じものが挙げられる。
ビタミン類含有糖液には、さらに、例えば、pH調整剤、糖アルコール、グリセリンなどが含まれていてもよい。
pH調整剤としては、上記したのと同じものが挙げられ、これらpH調整剤の酸およびアルカリは、電解質のイオン供給源である水溶性塩として配合してもよい。
糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、パラチニット、ラクチトール、エリトリトールなどが挙げられる。
ビタミン類含有糖液のpHは、例えば、pH調整剤などを適宜用いて、好ましくは、2〜6となるように、より好ましくは、2.5〜5となるように調整される。
なお、上記の説明では、易酸化性液剤として、ビタミン類含有糖液を例示したが、糖類は、ビタミン類との混合が必須ではなく、例えば、糖類のみを含有する液剤や、糖類と電解質とを含有する液剤として供給することもできる。
また、糖類を含有する液剤(糖液)は、アミノ酸含有液と混合して保存した場合に、経時的な安定性が損なわれる。それゆえ、糖液とアミノ酸含有液とを同時に投与する用途においては、例えば、薬液容器として、2以上の収容部を備える複室容器を使用し、糖液とアミノ酸含有液とを分離して収容する。
脂溶性ビタミン含有液としては、上記例示の脂溶性ビタミンを単独でまたは2種以上混合して含有する液剤が挙げられる。また、この脂溶性ビタミン含有液は、ビタミンBを含有していてもよい。
また、脂溶性ビタミン含有液は、任意の成分として、例えば、脂溶性ビタミンを水性媒体に可溶化するための界面活性剤を含有していてもよい。また、脂溶性ビタミンが、上記界面活性剤とともに、水性媒体に含有される場合には、さらに、必要に応じて、水溶性ビタミンを含有していてもよい。
界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤であるソルビタン脂肪酸エステル(具体的には、ポリソルベート)などが挙げられる。
水溶性ビタミンとしては、例えば、上記したのと同様の水溶性ビタミンが挙げられる。
脂溶性ビタミンは、一般に、アミノ酸含有液中や糖液中での分散性が乏しく、しかも、アミノ酸含有液や糖液と混合して保存された場合に、経時的な安定性が損なわれるおそれがある。それゆえ、脂溶性ビタミンを含むビタミン含有液と、アミノ酸含有液または糖液とを、同時に投与する用途においては、例えば、薬液容器として、2以上の収容部を備える複室容器を使用し、ビタミン含有液と、アミノ酸含有液や糖液とを分離して収容する。
本発明の溶存酸素低減液剤の好適態様としては、3以上の収容部を備える複室容器に、アミノ酸含有液と、ビタミン類含有糖液と、脂溶性ビタミン含有液とを、それぞれ分別して収容する態様が挙げられる。
このような態様において、アミノ酸、糖類、ビタミン類および電解質の含有量は、特に限定されないが、液剤全体において、すなわち、全収容部の薬剤を混合し、実際に経静脈投与などに用いられる状態において、以下の範囲であることが好ましい。なお、以下に示す値のうち、アミノ酸の含有量は、遊離形態のアミノ酸で換算した値である。
アミノ酸
L−ロイシン:0.4〜20.0g/L、好ましくは、0.8〜10.0g/L。
L−イソロイシン:0.2〜14.0g/L、好ましくは、0.4〜7.0g/L。
L−バリン:0.1〜16.0g/L、好ましくは、0.3〜8.0g/L。
L−リジン:0.2〜14.0g/L、好ましくは、0.5〜7.0g/L。
L−トレオニン:0.1〜8.0g/L、好ましくは、0.3〜4.0g/L。
L−トリプトファン:0.04〜3.0g/L、好ましくは、0.08〜1.5g/L。
L−メチオニン:0.1〜8.0g/L、好ましくは、0.2〜4.0g/L。
L−システイン:0.01〜2.0g/L、好ましくは、0.03〜1.0g/L。
L−フェニルアラニン:0.2〜12.0g/L、好ましくは、0.4〜6.0g/L。
L−チロジン:0.01〜2g/L、好ましくは、0.02〜1.0g/L。
L−アルギニン:0.2〜14.0g/L、好ましくは、0.5〜7.0g/L。
L−ヒスチジン:0.1〜8.0g/L、好ましくは、0.3〜4.0g/L。
L−アラニン:0.2〜14.0g/L、好ましくは、0.4〜7.0g/L。
L−プロリン:0.1〜10.0g/L、好ましくは、0.2〜5.0g/L。
L−セリン:0.1〜6.0g/L、好ましくは、0.2〜3.0g/L。
L−グリシン:0.1〜12.0g/L、好ましくは、0.3〜6.0g/、
L−アスパラギン酸:0.01〜4.0g/L、好ましくは、0.03〜2.0g/L。
L−グルタミン酸:0〜6.0g/L、好ましくは、0.1〜3.0g/L。
糖類
ブドウ糖:20〜800g/L、好ましくは、50〜400g/L。
ビタミン類
ビタミンA:400〜6500IU/L、好ましくは、800〜6500IU/L、より好ましくは、約800〜4000IU/L。
ビタミンD:コレカルシフェノールとして、0.5〜10.0μg/L、好ましくは、1.0〜10.0μg/L、より好ましくは、1.0〜6.0μg/L。
ビタミンE:酢酸トコフェノールとして、1.0〜20.0mg/L、好ましくは、2.5〜20.0mg/L、より好ましくは、2.5〜12.0mg/L。
ビタミンK:フィトナジオンとして、0.2〜4.0mg/L、好ましくは、0.5〜4.0mg/L、より好ましくは、0.5〜2.5mg/L。
ビタミンB:塩酸チアミンとして、0.4〜30.0mg/L、好ましくは、0.8〜30.0mg/L、より好ましくは、1.0〜5.0mg/L。
ビタミンB:リボフラビンとして、0.5〜6.0mg/L、好ましくは、1.0〜6.0mg/L、より好ましくは、1.0〜4.0mg/L。
ビタミンB:塩酸ピリドキシンとして、0.5〜8.0mg/L、好ましくは、1.0〜8.0mg/L、より好ましくは、1.0〜5.0mg/L。
ビタミンB12:シアノコバラミンとして、0.5〜50.0μg/L、好ましくは、1.0〜20.0μg/L、より好ましくは、1.0〜10.0μg/L。
ニコチン酸類:ニコチン酸アミドとして、5.0〜80.0mg/L、好ましくは、10.0〜80.0mg/L、より好ましくは、10.0〜50.0mg/L。
パントテン酸類:パントテン酸として、1.5〜35.0mg/L、好ましくは、3.0〜30.0mg/L。
葉酸:50〜800μg/L、好ましくは、100〜800μg/L、より好ましくは、100〜120μg/L。
ビタミンC:アスコルビン酸として、12〜200mg/L、好ましくは、25〜200mg/L、より好ましくは、25〜120mg/L。
ビオチン:5〜120μg/L、好ましくは、15〜120μg/L、より好ましくは、15〜70μg/L。
電解質
ナトリウムイオン:10〜160mEq/L、好ましくは、20〜80mEq/L。
マグネシウムイオン:1〜40mEq/L、好ましくは、2〜20mEq/L。
カリウムイオン:5〜80mEq/L、好ましくは、10〜40mEq/L。
カルシウムイオン:1〜40mEq/L、好ましくは、2〜20mEq/L。
塩化物イオン:10〜160mEq/L、好ましくは、20〜80mEq/L。
ヨウ化物イオン:0〜5mEq/L、好ましくは、0.2〜5mEq/L。
リン酸イオン:1〜40mmol/L、好ましくは、2〜20mmol/L。
なお、本発明においては、脂肪乳剤を、必要に応じて上記液剤に配合し、または、薬液容器中に、上記液剤とともに収容することができる。
脂肪乳剤としては、公知の各種脂肪乳剤が挙げられる。また、これら脂肪乳剤は、単独で含まれていてもよく、2種以上が混合して含まれていてもよい。
脂肪乳剤を形成する油脂としては、脂肪乳剤に慣用されているものが挙げられ、具体的には、例えば、大豆油、綿実油、サフラワー油、トウモロコシ油、ヤシ油、シソ油、エゴマ油などの植物油、例えば、タラ肝油などの魚油などが挙げられる。これら油脂は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、脂肪乳剤を形成する乳化剤としては、脂肪乳剤などの医薬用製剤に慣用されているものが挙げられ、具体的には、例えば、卵黄リン脂質、大豆リン脂質などが挙げられる。これら乳化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記溶存酸素低減液剤を収容、密封するための薬液容器は、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理後12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が200cm/m・24h・atm以上であり、かつ、酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が100cm/m・24h・atm以下であるプラスチックからなるものである。
上記薬液容器は、これに限定されないが、例えば、ヘッドスペースの体積をできるだけ低減させた状態で液剤を収容できるように、液剤の収容量に応じて変形可能な可撓性または柔軟性を有する容器であることが好ましい。
上記薬液容器を形成するプラスチックについての、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理後12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度は、200cm/m・24h・atm以上であって、好ましくは、500cm/m・24h・atm以上であり、より好ましくは、700cm/m・24h・atm以上である。
蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理後12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が上記範囲を下回ると、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後において、液剤の溶存酸素や薬液容器のヘッドスペースに含まれる酸素を薬液容器から除去しにくくなり、液剤の酸化を抑制する効果が低下する。蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後の酸素透過度の上限は、特に限定されないが、一般には、薬液容器の形成に用いられるプラスチックの性質上、1000cm/m・24h・atm程度である。
蒸気滅菌処理の条件は、例えば、処理温度が100〜121℃であり、処理時の雰囲気が水蒸気飽和状態であり、処理時間が10〜60分間であり、処理時の気圧が常圧下、または気圧4000hPa以下の加圧下である。また、熱水滅菌処理の条件は、例えば、処理時の気圧が常圧下または加圧下であり、熱水の温度が100〜120℃であり、処理時間が10〜60分間である。
上記薬液容器を形成するプラスチックについて、酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度は、100cm/m・24h・atm以下であって、好ましくは、70cm/m・24h・atm以下、より好ましくは、30cm/m・24h・atm以下、さらに好ましくは、10cm/m・24h・atm以下である。
酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が上記範囲を上回ると、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理後に、薬液容器の冷却後に、薬液容器内への酸素の透過と、それに伴う液剤の酸化とを抑制できなくなる。酸素透過度が定常状態であるときの酸素透過度の下限は、ゼロであることが好ましいが、一般には、薬液容器の形成に用いられるプラスチックの性質上、5cm/m・24h・atm程度であり、好ましくは、1cm/m・24h・atm程度であり、より好ましくは、0.5cm/m・24h・atm程度である。
プラスチックの酸素透過度の「定常状態」とは、プラスチックに蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理を施した後、一定条件(温度25℃、湿度60%RH)下で測定された酸素透過度の経時的変化が、1時間あたり±5%以内、好ましくは、±3%以内となったときをいう。
プラスチックの酸素透過度は、JIS K 7126−1987「プラスチックフィルム及びシートの気体透過度試験方法」のB法(等圧法)に従い、酸素透過度(OGTR)として測定される。酸素透過度の測定機器としては、例えば、MOCON社製の商品名「OX−TRAN(登録商標)」、LYSSY社製の商品名「OPT−5000」などが挙げられる。
薬液容器を形成するプラスチックの酸素透過度は、プラスチックの種類、厚みなどによって、適宜の値に設定することができる。また、プラスチックが多層構造を有している場合は、層構成、各層の厚みなどによって、酸素透過度を適宜設定できる。
蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理後12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度や、酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が上記範囲を満たすプラスチックとしては、例えば、ポリオール系樹脂が挙げられ、なかでも好ましくは、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。
エチレン−ビニルアルコール共重合体は、例えば、エチレン含有量が10〜45モル%であることが好ましく、25〜35モル%であることがより好ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量が上記範囲を下回ると、例えば、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理後に冷却しても酸素透過度が低下しなくなるおそれや、蒸気滅菌処理や熱水滅菌処理に耐え得る十分な耐水性を確保できなくなるおそれが生じる。一方、エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量が上記範囲を上回ると、酸素透過度が定常状態であるときの酸素透過度が大きくなり、薬液容器内への酸素の透過を抑制できなくなるおそれが生じる。さらに、この場合には、蒸気滅菌処理や熱水滅菌処理によってプラスチックが白化し、容器の透明性が著しく低下するおそれもある。
ポリオール系樹脂には、薬液容器の耐熱性を向上させる目的で、任意に、例えば、ナイロン−6などのポリアミド系樹脂や、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン系酸化防止剤を配合することができる。これらポリアミド系樹脂やリン系酸化防止剤の配合量は、薬液容器に収容される液剤に対して影響を及ぼさない範囲で設定すればよい。
上記薬液容器を形成するプラスチックは、薬液容器としての基本的性質を維持するという観点から、ポリオール系樹脂からなる層を中間層とし、この中間層よりも薬液容器の内側面側に、ポリオレフィン系樹脂からなるシール層(最内層)を備え、上記中間層よりも薬液容器の外側面側に保護層(最外層)を備える、多層構造体であることが望ましい。
シール層(最内層)は、例えば、薬液容器を形成する際にその溶着面をなす層であり、また、薬液容器の内側に配置され、薬液と直接に接触する層である。それゆえ、シール層(最内層)を形成するプラスチックは、例えば、熱シール性(具体的には、例えば、加熱温度、加熱時間、圧力などの熱シール条件、例えば、熱シール部のシール強さおよびその経時安定性など)や、薬液に対する安全性が確立されていることなどが求められる。
シール層(最内層)を形成するためのプラスチックの具体例としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(エチレンホモポリマー)、エチレン・α−オレフィンコポリマー、ポリプロピレン(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・α−オレフィンランダムコポリマー、プロピレン・α−オレフィンブロックコポリマーなどが挙げられる。また、上記エチレン・α−オレフィンコポリマーのα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数3〜6のα−オレフィンが挙げられ、上記プロピレン・α−オレフィンランダムコポリマーおよびプロピレン・α−オレフィンブロックコポリマーのα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、または、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数4〜6のα−オレフィンが挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
シール層に用いられるポリオレフィン系樹脂は、上記例示のもののなかでも、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの混合樹脂などが挙げられる。
また、例えば、易剥離性を有する隔壁(易剥離シール部)で区画された複数の収容部を有する袋状の薬液容器(いわゆる複室バッグなど)を作製する場合には、易剥離シール部の形成を容易にするために、シール層をポリエチレンとポリプロピレンとの混合樹脂で形成することが好ましい。
保護層(最外層)は、薬液容器の外側面をなす層である。それゆえ、保護層(最外層)を形成する樹脂としては、例えば、蒸気滅菌処理時または熱水滅菌処理時において、ポリオール系樹脂からなる中間層が直接水分の影響を受けないようにするという観点や、薬液容器の形状、用途などに応じて、所定の強度を保つことができるようにするという観点から、適宜選択すればよい。
また、保護層(最外層)、または上記多層フィルムの中間層より薬液容器外側面側に設けられる層全体については、ポリオール系樹脂からなる中間層が直接水分の影響を受けないように留意しつつ、本発明の作用効果上、ある程度の水蒸気透過性を示すように設定することが求められる。
保護層、または上記多層フィルムの中間層より薬液容器外側面側に設けられる層全体についての水蒸気透過度としては、例えば、温度25℃、湿度90%RHにおいて、好ましくは、1〜50g/m・24hであり、より好ましくは、3〜30g/m・24hであり、さらに好ましくは、3〜10g/m・24hである。なお、水蒸気透過度は、JIS K 7129−1992「プラスチックフィルム及びシートの水蒸気透過度試験方法(機器測定法)」に規定のA法(感湿センサー法)に従って測定される。
保護層(最外層)を形成するための樹脂の具体例としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、上記したのと同じものが挙げられる。また、ポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10のナイロン類などが挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
薬液容器を形成するプラスチックが、多層フィルムである場合において、その具体的態様としては、例えば、上述のとおり、薬液容器の内側面側をなす最内層にポリオレフィン系樹脂からなるシール層を有しており、薬液容器の外側面側をなす最外層に保護層を有しており、かつ、シール層と保護層との間にポリオール系樹脂からなる中間層を有している、少なくとも3層以上の積層構造を有する多層フィルムが挙げられる。
また、多層フィルムは、中間層よりも薬液容器の内側面側(シール層側)に、さらに、低吸水性樹脂からなる低吸水性層を有していることが好ましい。この場合、ポリオール系樹脂からなる中間層が、薬液中の水分による影響を受けにくくすることができる。
低吸水性樹脂としては、例えば、ポリ環状オレフィンなどが挙げられる。
ポリ環状オレフィンは、吸水率が極めて低く、具体的には、0.01%以下であることから、ポリオール系樹脂からなる中間層の水分による影響を少なくするという目的を達成する上で、好適である。なお、吸水率は、JIS K 7209−2000「プラスチック−吸水率の求め方」に規定のB法(沸騰水に浸漬後の吸水率)に従って測定される。
ポリ環状オレフィンの具体例としては、例えば、エチレンとジシクロペンタジエン系化合物との共重合体(またはその水素添加物)、エチレンとノルボルネン系化合物との共重合体(またはその水素添加物)、シクロペンタジエン系化合物の開環重合体(またはその水素添加物)、2種以上のシクロペンタジエン系化合物(またはその水素添加物)からなる開環共重合体などのポリ環状オレフィンが挙げられる。なかでも好ましくは、エチレンとノルボルネン系化合物との共重合体の水素添加物、1種以上のシクロペンタジエン誘導体の開環(共)重合体の水素添加物が挙げられる。また、これらポリ環状オレフィンは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記多層フィルムには、さらに、例えば、薬液容器に柔軟性、透明性、耐衝撃性を付与する目的で、エラストマーを含むエラストマー層を設けることができる。
エラストマーとしては、例えば、ポリエチレン系エラストマー、ポリプロピレン系エラストマーなどのポリオレフィン系エラストマーや、例えば、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、マレイン酸などで変性された変性SEBS、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体(SEB)、スチレン−エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEP)などのスチレン系エラストマーなどが挙げられ、なかでも、好ましくは、ポリエチレン系エラストマーが挙げられる。
薬液容器を形成するプラスチックは、これに限定されないが、例えば、Tダイ法やインフレーション法などの押出成形法によってフィルム状に成形される。こうして得られたフィルムを用いて薬液容器を形成することにより、可撓性および柔軟性に優れた薬液容器を形成することができる。
薬液容器を形成する多層フィルムの好適態様としては、例えば、下記の(I)〜(III)に示す態様が挙げられる。
(I) 薬液容器の内側面(最内層)側Iから外側面(最外層)側Oにかけて、順に、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合樹脂からなるシール層1と、ポリエチレンからなる層2と、ポリ環状オレフィンからなる低吸水性層3と、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層4と、ポリエチレンからなる保護層5とを備え、さらに、低吸水性層3と中間層4との間、および、中間層4と保護層5との間に、それぞれ、接着性樹脂からなる2層の接着層6,7を備える、7層構造の多層フィルム(図1参照)。
(II) 薬液容器の内側面(最内層)側Iから外側面(最外層)側Oにかけて、順に、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合樹脂からなるシール層1と、ポリエチレンからなる層2と、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層4と、ポリエチレンからなる保護層5とを備え、さらに、ポリエチレンからなる層2と中間層4との間、および、中間層4と保護層5との間に、それぞれ、接着性樹脂からなる2層の接着層8,7を備える、6層構造の多層フィルム(図2参照)。
(III) 薬液容器の内側面(最内層)側Iから外側面(最外層)側Oにかけて、順に、ポリエチレンからなる層2と、ポリ環状オレフィンからなる低吸水性層3と、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層4と、ポリエチレンからなる保護層5とを備える、4層構造の多層フィルム(図3参照)。
上記(I)および(II)に示す多層フィルムでは、低吸水性層3と中間層4との接着や、中間層4と保護層5との接着が、各層間に2層の接着層6,7を介在させることにより、達成されている。また、各層間の接着は、接着層を介在させずに、単に、各上記層間に接着剤を塗布する方法によっても達成できる。
上記(III)に示す多層フィルムでは、低吸水性層3と中間層4との接着や、中間層4と保護層5との接着が、各層間に接着剤を塗布することにより、達成されている。また、各層間の接着は、上記(I)および(II)に示す多層フィルムの場合と同様に、接着性樹脂からなる接着層を介在させても達成できる。なお、上記(III)に示す多層フィルムでは、ポリエチレンからなる層2が最内層であって、シール層となっている。
接着層を形成する接着性樹脂としては、例えば、接着性ポリオレフィンが挙げられ、具体的には、例えば、三井化学(株)製の接着性ポリオレフィン(商品名「アドマー(登録商標)」シリーズ)などが挙げられる。
接着剤としては、例えば、ポリウレタン樹脂などが挙げられ、具体的には、例えば、三井化学ポリウレタン(株)製のポリウレタン樹脂(商品名「タケラック(登録商標)」シリーズ、商品名「タケネート(登録商標)」シリーズ)などが挙げられる。
上記多層フィルムにおいて、各層の厚みは特に限定されず、薬液容器全体として、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後の酸素透過度や、定常状態での酸素透過度が、上述の範囲を満たすように設定すればよい。
なお、これに限定されないが、例えば、薬液容器を、後述するバッグタイプの容器として形成する場合には、中間層の厚みを3〜20μmとし、多層フィルム全体の厚さを180〜300μm程度とすることが好ましい。
薬液容器の態様としては、例えば、可撓性および柔軟性に優れた扁平な態様、すなわち、いわゆるバッグタイプのものや、例えば、可撓性を有しつつ、容器自体がその形状を維持し得る強度を備える態様、すなわち、いわゆるボトルタイプのものなどが挙げられる。なかでも好ましくは、バッグタイプの薬液容器が挙げられる。
これら薬液容器の形成方法は、特に限定されず、各種の形成方法を、薬液容器の形態に応じて適宜選択すればよい。
バッグタイプの薬液容器は、例えば、薬液の収容部を1つのみ備える薬液容器であってもよく、弱シール部で区画された複数の収容部を有する、いわゆる複室容器であってもよい。
薬液容器の好適態様としては、例えば、図4および図5に示すバッグタイプの薬液容器が挙げられる。
図4を参照して、バッグタイプの薬液容器10は、表面側フィルムと裏面側フィルムとの2枚のプラスチックフィルムを互いに重ね合わせ、各上記プラスチックフィルムの周縁部分を互いに熱シールすることにより形成された周縁強シール部11と、この周縁強シール部11により区画される、液剤を収容するための収容部12と、を備えている。また、周縁強シール部11の一部には、表面側フィルムと裏面側フィルムとの間に狭持され、収容部12と、薬液容器10の外部とを連通する筒状部材13が設けられており、この筒状部材13は、例えば、中空針を刺通可能な弾性体によって密栓されている。
図5を参照して、バッグタイプの薬液容器における複室容器15は、表面側フィルムと裏面側フィルムとの2枚のプラスチックフィルムを互いに重ね合わせ、各上記プラスチックフィルムの周縁部分を互いに強く熱シールすることにより形成された周縁強シール部16と、この周縁強シール部16により区画される、液剤を収容するための収容部と、を備えている。周縁強シール部16のうち、2枚の上記プラスチックフィルムの長手方向と直交する幅方向で互いに間隔を隔てて伸びる一対の側方強シール部17間には、上記幅方向に伸びる弱シール部18が架設されており、上記収容部は、上記弱シール部18により、正面視下方に配置される第1収容部19と、正面視上方に配置される第2収容部20とに区画されている。
また、第2収容部20の内部には、内部に液剤を収容するための正面視略矩形状の小袋21が設けられている。小袋21は、表面側フィルムと裏面側フィルムとの2枚のプラスチックフィルムを互いに重ね合わせ、各上記プラスチックフィルムの周縁部分を弱く熱シールすることにより形成された周縁弱シール部22と、この周縁弱シール部22によって区画される液剤の収容部とを備えており、この収容部は、周縁弱シール部22と、周縁弱シール部22の一対の長辺23間に架設される弱シール部24とにより、2つの小収容部25,26に区画されている。また、この小袋21は、小袋21の表面側フィルムと裏面側フィルムとの両側のフィルムが、複室容器15を形成する表面側フィルムと裏面側フィルムとに、それぞれ固着されている。
第1収容部19と第2収容部20との間に設けられる弱シール部18は、2つの収容部19,20のいずれかを押圧し、上記収容部19,20に収容されている液剤で液圧を負荷することにより開封される。また、弱シール部18の開封と、それに伴う2つの収容部19,20間の開通に連動して、小袋21の周縁弱シール部22が開封される。これにより、第1収容部19と、第2収容部20と、小袋21の2つの小収容部25,26とにそれぞれ分別して収容されている液剤が、互いに混合される。
図4に示す薬液容器を形成する2枚のプラスチックフィルムや、図5に示す複室容器15を形成する2枚のプラスチックフィルムには、上記の薬液容器を形成するためのプラスチックからなるフィルムや多層フィルムが用いられる。
また、図5に示す複室容器15の小袋21を形成する2枚のプラスチックフィルムとしては、これに限定されないが、好ましくは、酸素易透過性プラスチックが挙げられる。小袋21を酸素易透過性プラスチックで形成することにより、小袋21と第2収容部20との間で酸素が容易に透過するため、小袋21内に収容される液剤の溶存酸素を、2つの収容部19,20に収容される液剤と同様にして低減させることができる。
酸素易透過性プラスチックとしては、安全性が確立し、医療用容器の素材として汎用されているポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ環状オレフィンなどが挙げられる。
なお、図5に示す複室容器15のような、一の収容部内に配置された小袋を備える薬液容器自体は周知であり、具体例としては、例えば、国際公開WO2003/092574号パンフレットに記載の医療用複室容器や、特表2005−523772号に記載の医療用複室容器などが挙げられる。
図5に示す複室容器15のように、一の収容部内に配置された小袋を備える薬液容器においては、これに限定されないが、例えば、小袋21内に、脂溶性ビタミン含有液などを収容する態様が好適である。また、小袋が2つの小収容部に区画されている場合には、これに限定されないが、例えば、一方の小収容部25に、脂溶性ビタミン含有液を収容し、他方の収容部26に、微量金属元素含有液を収容する態様が好適である。
上記溶存酸素低減液剤は、上記のとおり、上記薬液容器に収容、密封された後、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理が施されたものであり、さらに、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理後において、上記プラスチックの酸素透過度が定常状態に達したときの溶存酸素濃度が、2ppm以下であることを特徴としている。
蒸気滅菌処理の具体的方法としては、例えば、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)法などが挙げられる。また、熱水滅菌処理の具体的方法としては、例えば、熱水浸漬滅菌法、熱水シャワー滅菌法などが挙げられる。
液剤を収容する薬液容器(薬液収容体)に対し、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理を施すことで、薬液容器が一定時間加熱されることから、薬液容器を形成するプラスチックの酸素透過度を上昇させることができる。具体的には、薬液容器を形成するプラスチックの蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理後12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度を、200cm/m・24h・atm以上に設定することができる。
薬液容器に対する蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理の処理条件は、例えば、薬液容器に収容される液剤の種類、量、薬液容器を形成するプラスチックの材質、厚みなどに合わせて、適宜設定すればよい。
それゆえ、特に限定されないが、例えば、蒸気滅菌処理の処理条件は、上記の条件に設定すればよく、好ましくは、処理温度を100〜121℃、処理時間を10〜60分間、処理時の気圧を2000〜3500hPaの加圧下に設定すればよい。また、熱水滅菌処理の処理条件は、上記の条件に設定すればよい。熱水滅菌処理において、熱水は、薬液容器に対し、噴射または噴霧される。
蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理は、好ましくは、不活性ガス雰囲気下で行われる。この場合、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理中に、薬液容器のヘッドスペースを、不活性ガスによってある程度置換させることができ、薬液容器内の酸素量、すなわち、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理にヘッドスペースから除去すべき酸素量を予め低減させることができる。
不活性ガスは、特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴンなどの、薬剤に対して酸化分解、その他の変質を生じさせにくい(好ましくは、生じさせない)気体であることが好ましい。
液剤を収容する薬液容器(薬液収容体)に対し、上記の蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理を施した後には、薬液容器を形成するプラスチックの酸素透過度が定常状態に達するまでの間、液剤を収容する薬液容器を、脱酸素手段を有する環境下で保存する。これにより、薬液容器を形成するプラスチックの酸素透過度が定常状態に達したときに、液剤の溶存酸素濃度を、2ppm以下となるように調整することができる。
液剤の溶存酸素濃度は、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理後、プラスチックの酸素透過度が定常状態に達した後において、2ppm以下である。
蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理を施した後、薬液容器を形成するプラスチックの酸素透過度が定常状態に達するまでには、通常、7日間、好ましくは、10日間、より好ましくは、14日間の期間を要する。それゆえ、薬液容器に収容された液剤の溶存酸素量や、薬液容器のヘッドスペースにおける酸素含有量を低減させるには、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理後、上記の期間に亘って、脱酸素手段を有する環境下で薬液容器を保存すればよい。
脱酸素手段としては、酸素と反応し、または、酸素を吸着し、密閉環境下での酸素含有量を低下させるための手段であって、具体的には、例えば、脱酸素剤が挙げられる。
脱酸素剤としては、公知の各種の脱酸素剤が挙げられ、具体的には、例えば、水酸化鉄、酸化鉄、炭化鉄などの鉄化合物を有効成分とする脱酸素剤や、低分子フェノールと活性炭を有効成分とする脱酸素剤が挙げられる。市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製の商品名「エージレス(登録商標)」、日本化薬(株)製の商品名「モジュラン」、日本曹達(株)製の「セキュール(登録商標)」、王子化工(株)製の「タモツ(登録商標)」、東亜合成化学工業(株)製の商品名「バイタロン」、(株)ファインテック製の商品名「サンソカット」、東洋製罐(株)製の商品名「オキシガード」などが挙げられる。
脱酸素手段による液剤の溶存酸素の低減処理は、好ましくは、酸素バリア製を有する外装体による密閉環境下で行われる。
酸素バリア製を有する外装体としては、アルミラミネートフィルムなどが挙げられる。
上記の溶存酸素低減液剤によれば、薬液容器に収容されている液剤の溶存酸素量や、上記薬液容器のヘッドスペースにおける酸素の含有量を低減することができ、液剤の酸化劣化を抑制できる。それゆえ、上記の溶存酸素低減液剤は、例えば、アミノ酸含有液、ビタミン類含有糖液、脂溶性ビタミン含有液、脂肪乳剤などの易酸化性薬剤を長期に亘って安定させるための液剤として好適である。
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明を説明する。
液剤の調製
製剤例1(アミノ酸含有液の調製)
下記のアミノ酸と、下記の電解質と、下記の抗酸化剤とを、注射用蒸留水に溶解し、コハク酸でpHを6.8に調整後、窒素置換(バブリング)した。さらに、下記の水溶性ビタミンを配合し、無菌ろ過して、アミノ酸含有液を調製した。
上記アミノ酸含有液に含まれる成分は、下記のとおりである。なお、カッコ内の値は、アミノ酸含有液300mL中での含有量を示している。
アミノ酸:L−ロイシン(4.2g)、L−イソロイシン(2.40g)、L−バリン(2.40g)、酢酸L−リジン(4.44g;L−リジンとして、3.15g)、L−トレオニン(1.71g)、L−トリプトファン(0.60g)、L−メチオニン(1.17g)、N−アセチル−L−システイン(0.40g;L−システインとして、0.30g)、L−フェニルアラニン(2.10g)、L−チロジン(0.15g)、L−アルギニン(3.15g)、L−ヒスチジン(1.50g)、L−アラニン(2.40g)、L−プロリン(1.50g)、L−セリン(0.90g)、L−グリシン(1.77g)、L−アスパラギン酸(0.30g)、およびL−グルタミン酸(0.30g)。
電解質:塩化カルシウム(0.37g;Ca2+として、5.03mEq)、硫酸マグネシウム(0.62g;Mg2+として、5.03mEq)、および酢酸カリウム(1.08g;Kとして、11.0mEq)。
水溶性ビタミン:ニコチン酸アミド(20mg)、および葉酸(0.2mg)。
抗酸化剤:亜硫酸水素ナトリウム(15mg)。
製剤例2(糖液の調製)
下記の糖と、下記の電解質とを、注射用蒸留水に溶解し、酢酸でpHを4.0に調整後、窒素置換(窒素バブリング)した。さらに、下記の水溶性ビタミンを配合し、無菌ろ過して、糖液を調製した。
上記糖液に含まれる成分は、下記のとおりである。なお、カッコ内の値は、糖液696mL中での含有量を示している。
糖:ブドウ糖(175g)。
電解質:塩化ナトリウム(2.05g;Naとして、35.0mEq)、乳酸ナトリウム(1.65g;Naとして、14.7mEq)、塩化カリウム(0.746g;Kとして、10.0mEq/L)、ヨウ化カリウム(0.083g;Kとして、0.50mEq)、およびリン酸二水素カリウム(0.821g;Kとして、6.03mEq)。
水溶性ビタミン:塩酸チアミン(1.95mg)、塩酸ピリドキシン(2.45mg)、シアノコバラミン(2.5μg)、およびパンテノール(7.0mg)。
製剤例3(ビタミン含有液の調製)
下記の脂溶性ビタミンと、ポリソルベート80およびポリソルベート20(いずれも、ソルビタン脂肪酸エステル、非イオン性界面活性剤)とを配合し、これを注射用蒸留水に溶解後、さらに、アスコルビン酸およびビオチンを配合し、クエン酸および水酸化ナトリウムでpHを6〜6.5に調整した。次に、リン酸リボフラビンナトリウムを配合し、無菌ろ過して、ビタミン含有液を得た。
上記ビタミン含有液に含まれる成分は、下記のとおりである。なお、カッコ内の値は、ビタミン含有液4mL中での含有量を示している。
脂溶性ビタミン:ビタミンA油(1650IU(ビタミンA単位))、コレカルシフェロール(0.0025mg)、酢酸トコフェロール(5.0mg)、およびフィトナジオン(1.0mg)。
水溶性ビタミン:リン酸リボフラビンナトリウム(2.3mg)、アスコルビン酸(50mg)、ビオチン(0.030mg)。
非イオン界面活性剤:ポリソルベート80(20mg)、ポリソルベート20(4mg)。
製剤例4(微量金属元素含有液の調製)
コロイド化剤(コンドロイチン硫酸ナトリウム)と、塩化鉄(III)六水和物と、水酸化ナトリウムとを、注射用蒸留水に配合し、鉄コロイド溶液を調製した。さらに、この鉄コロイド溶液に、所定量の硫酸銅五水和物、塩化マンガン、および硫酸亜鉛を、それぞれ、注射用蒸留水に溶解した状態で配合し、水酸化ナトリウムでpHを5.5〜6に調整した。これを常法により濾過して、微量金属元素含有液を調製した。
上記微量金属元素含有液に含まれる成分と、微量金属元素含有液4mL中での含有量とは、下記のとおりである。
塩化鉄(III)六水和物:4.730mg
塩化マンガン四水和物:0.09895mg
硫酸亜鉛七水和物:8.625mg
硫酸銅五水和物:0.624mg
薬液容器の形成
薬液容器形成用のプラスチックを構成する各成分は、次のとおりである。
PE−1:エチレン・1−ブテン共重合体、密度0.940g/cm、水蒸気透過度7g/m・24h(25℃、90%RH、20μm)、商品名「ウルトゼックス(登録商標)4020B」、(株)プライムポリマー製。
PE−2:エチレン・1−ブテン共重合体(密度0.920g/cm、商品名「ウルトゼックス(登録商標)2010」、(株)プライムポリマー製)45重量%と、エチレン・1−ブテン共重合体(密度0.885g/cm、商品名「タフマー(登録商標)A0585X」、(株)プライムポリマー製)50重量%と、ポリエチレンホモポリマー(密度0.965g/cm、商品名「ハイゼックス(登録商標)65150B」、(株)プライムポリマー製)5重量%との混合物
EVOH−1:エチレンビニルアルコール、エチレン含有量27モル%、商品名「エバール(登録商標)L101」、(株)クラレ製。
EVOH−2:エチレンビニルアルコール、エチレン含有量44モル%、商品名「エバール(登録商標)E105」、(株)クラレ製。
COP:ノルボルネン系開環重合体水素添加物、吸水率0.01%未満、商品名「ゼオノア(登録商標)1020R」、日本ゼオン(株)製。
PP:ポリプロピレン、密度0.900g/cm、商品名「B355」、(株)プライムポリマー製。
NY:ナイロン−6、商品名「アミラン(登録商標)CM1017」、東レ(株)製。
PE−PP:上記PE(1)85重量%と、ポリプロピレンホモポリマー(密度0.910g/cm、商品名「J103WA」、(株)プライムポリマー製)15重量%との混合物
adherent PE:不飽和カルボン酸変性ポリエチレン、密度0.905g/cm、水蒸気透過度10g/m・24h(25℃、90%RH、20μm)、(株)プライムポリマー製の接着性ポリオレフィン、商品名「アドマー(登録商標)」。
PBT:ポリブチレンテレフタレート、水蒸気透過度23g/m・24h(25℃、90%RH、10μm)、三菱エンジニアプラスチックス(株)製。
実施例1
(1) 小袋の作製
COPからなる中間層(厚さ10μm)と、上記中間層の厚み方向の一方側表面に積層される、PE−1からなる内側層(厚さ20μm)と、上記一方側表面とは反対側の他方側表面に積層される、PE−PPからなる外側層(厚さ20μm)とを備える、総厚み50μmのプラスチックフィルムを、共押出成形により作製した。得られた3層構造のプラスチックフィルムは、略矩形状に切り取った。
次いで、図5を参照して、略矩形状の上記3層構造のプラスチックフィルム2枚を、互いの内側層が向かい合うようにして重ね合わせ、その周縁を熱シールすることにより、周縁弱シール部22を形成し、扁平な可撓性の小袋21を得た。この小袋の周縁弱シール部22のうち、一対の長辺23の長手方向中央部には、一対の長辺23間に架設され、一対の短辺と並行して伸びる弱シール部24を形成し、小袋21内を、2つの小収容部25,26に区画した。
なお、小袋21の周縁弱シール部22の一対の長辺23には、各小収容部25,26とそれぞれ連通する未シール部を1箇所ずつ残存させ、その未シール部を、各小収容部25,26内への液剤の充填口とした。
次に、一方側の小収容部25に、一方側の小収容部25と連なる充填口から、上記製剤例3で調製されたビタミン含有液4mLを充填し、窒素雰囲気下で上記充填口を熱シールした。さらに、他方側の小収容部26に、他方側の小収容部26と連なる充填口から、上記製剤例4で調製された微量金属元素含有液4mLを充填し、窒素雰囲気下で上記充填口を熱シールした。
(2) 薬液容器および薬液収容体の作製
下記表1中のサンプル1に示す層構成を有する7層構造のプラスチックフィルム(図1参照)を、共押出成形により作製した。
次に、図5を参照して、上記7層構造のプラスチックフィルム2枚を、それぞれ略矩形状に切り取り、各プラスチックフィルムの内側層が互いに向かい合うようにして重ね合わせ、その周縁を熱シールして、周縁強シール部16を形成し、さらに、周縁強シール部16のうち、プラスチックフィルムの長手方向に伸びる一対の側方強シール部17の長手方向中央部に、一対の側方強シール部17間に架設される弱シール部18を形成し、周縁強シール部16で区画される収容部を、第1収容部19と第2収容部20とに区画した。
なお、周縁強シール部16の形成前に、第2収容部20の形成領域に上記(1)で得られた小袋21を挿入し、小袋21の一方の長辺23近傍の外側表面と、第2収容部20の弱シール部18近傍の内側表面とを、熱シールにより固定した。
周縁強シール部16には、液剤排出・注入用の筒状部材13を、それぞれ第1収容部19と第2収容部20とに連なるように、1つずつ配置し、第1収容部19と第2収容部20とのそれぞれと連なるように、1箇所ずつ未シール部を残存させ、その未シール部を、第1収容部19および第2収容部20内への液剤の充填口とした。
次に、窒素雰囲気下で、第1収容部19に、上記製剤例1で調製されたアミノ酸含有液300mLを充填し、第2収容部20に、上記製剤例2で調整された糖液696mLを充填した後、上記未シール部を熱シールして、全量1004mLの薬液収容体を得た。なお、ヘッドスペースの容量は約30mLとし、その酸素濃度が10%となるように窒素置換(約50%)した。
(3) 蒸気滅菌処理および溶存酸素低減処理
上記(2)で得られた薬液収容体を滅菌釜に入れて、水蒸気飽和状態の窒素雰囲気(温度110℃、圧力2700hPa)中で30分間加熱することにより、高圧蒸気滅菌処理を施した。上記窒素雰囲気の酸素濃度は、2%以下となるように調節した。
次いで、蒸気滅菌処理が施された薬液収容体を、脱酸素剤(三菱ガス化学(株)製の商品名「エージレス(登録商標)」)とともに外層袋内に収容し、20日間保管した。
上記外装袋は、内側層がポリエチレン、中間層がポリビニルアルコール、外側層が延伸ポリプロピレンからなる、3層構造の多層フィルムからなる袋体であって、温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が、0.1cm/m・24h・atm以下であり、温度25℃、湿度90%RHでの水蒸気透過度が、0.5g/m・24hであるものを用いた。また、上記外装袋は、内部の空間の容積を約300〜500mLとし、窒素置換により、外装袋内の酸素濃度が2%以下となるように調整した。なお、高圧蒸気滅菌処理後、薬液バッグを外装袋内に収容し、密封するまでの時間は、1時間以内とした。
実施例2
下記表1中のサンプル2に示す層構成を有する6層構造のプラスチックフィルム(図2参照)を、共押出成形により作製した。
次いで、上記6層構造のプラスチックフィルム2枚を用いたこと以外は、実施例1の(2)と同様にして、薬液収容体を作製し、実施例1の(3)と同様にして、蒸気滅菌処理および溶存酸素低減処理を施した。
実施例3
下記表1中のサンプル3に示す層構成を有する7層構造のプラスチックフィルム(図1参照)を、共押出成形により作製した。なお、この多層フィルムの保護層5と接着層7とからなる積層体についての水蒸気透過度は、4.1g/m・24h(25℃、90%RH)であった。
次いで、上記7層構造のプラスチックフィルム2枚を用いたこと以外は、実施例1の(1)と同様にして、薬液収容体を作製し、実施例1の(3)と同様にして、蒸気滅菌処理および溶存酸素低減処理を施した。
実施例4
下記表2中のサンプル4に示す層構成を有する7層構造のプラスチックフィルム(図1参照)を、共押出成形により作製した。なお、この多層フィルムの保護層5と接着層7とからなる積層体についての水蒸気透過度は、7.0g/m・24h(25℃、90%RH)であった。
次いで、上記7層構造のプラスチックフィルム2枚を用いたこと以外は、実施例1の(1)と同様にして、薬液収容体を作製した。
また、外層袋として、中間層がエチレン・ビニルアルコール共重合体、内側層および外側層がポリエチレンからなる、3層構造の多層フィルムからなる袋体であって、温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が、0.5cm/m・24h・atmであり、温度25℃、湿度90%RHでの酸素透過度が、3cm/m・24h・atmであるものを用いたこと以外は、実施例1の(3)と同様にして、蒸気滅菌処理および溶存酸素低減処理を施した。
実施例5
下記表2中のサンプル5に示す層構成を有する6層構造のプラスチックフィルム(図2参照)を、共押出成形により作製した。なお、この多層フィルムの保護層5と接着層7とからなる積層体についての水蒸気透過度は、5.1g/m・24h(25℃、90%RH)であった。
次いで、上記6層構造のプラスチックフィルム2枚を用いたこと以外は、実施例1の(1)と同様にして、薬液収容体を作製し、実施例1の(3)と同様にして、蒸気滅菌処理および溶存酸素低減処理を施した。
実施例6
下記表2中のサンプル6に示す層構成を有する7層構造のプラスチックフィルム(図1参照)を、共押出成形により作製した。なお、この多層フィルムの保護層5と接着層7とからなる積層体についての水蒸気透過度は、3.2g/m・24h(25℃、90%RH)であった。
次いで、上記7層構造のプラスチックフィルム2枚を用いたこと以外は、実施例1の(1)と同様にして、薬液収容体を作製し、実施例1の(3)と同様にして、蒸気滅菌処理および溶存酸素低減処理を施した。
比較例1
下記表3中の比較サンプル1に示す層構成を有する7層構造のプラスチックフィルム(図1参照)を、共押出成形により作製した。
次いで、上記7層構造のプラスチックフィルム2枚を用いたこと以外は、実施例1の(1)と同様にして、薬液収容体を作製し、実施例1の(3)と同様にして、蒸気滅菌処理および溶存酸素低減処理を施した。
比較例2
下記表3中の比較サンプル2に示す層構成を有する、接着層を有しない5層構造のプラスチックフィルムを、共押出成形により作製した。
次いで、上記5層構造のプラスチックフィルム2枚を用いたこと以外は、実施例1の(1)と同様にして、薬液収容体を作製し、実施例1の(3)と同様にして、蒸気滅菌処理および溶存酸素低減処理を施した。
溶存酸素低減処理に対する評価試験
高圧蒸気滅菌処理後の薬液収容体の表面を、約40℃の温風で1分間除水させた。さらに、温度25℃、湿度60%RHの環境下に放置し、薬液容器収容体中の液剤の酸素濃度を非破壊酸素濃度計(製品名「Fibox 3」、PreSens社製)で測定した。酸素濃度の測定は、まず、蒸気滅菌処理から6時間経過後に実施し、次いで、蒸気滅菌処理から1日経過する毎に実施した。なお、酸素透過度の測定には、MOCON社製の商品名「OX−TRAN(登録商標)」を使用した。
その結果、実施例および比較例のいずれの薬液収容体についても、外装袋への収容、密封後、約7日を経過することにより、内容液の酸素濃度を2ppm以下に低減させることができた。
上記実施例および比較例で使用した多層フィルムの酸素透過度についての測定結果を、表1〜3に示す。
Figure 0005100306
Figure 0005100306
Figure 0005100306
表1〜3中、「多層フィルムの層構成」欄の記載は、上段が、各層を形成したプラスチックの種類を示しており、下段(カッコ内の数値)が、各層の厚みを示している。また、「水蒸気透過度」の単位は、[g/m・24h]であり、「酸素透過度」の単位は、[cm/m・24h・atm]である。
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。上記発明の属する技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、特許請求の範囲に含まれるものである。
本発明の溶存酸素低減液剤は、例えば、アミノ酸含有液、ビタミン類含有糖液、脂溶性ビタミン含有液、脂肪乳剤などを長期に亘って安定して保存するための液剤として好適である。
図1は、薬液容器を形成するプラスチックの一例を示す概略断面図である。 図2は、薬液容器を形成するプラスチックの一例を示す概略断面図である。 図3は、薬液容器を形成するプラスチックの一例を示す概略断面図である。 図4は、薬液容器の一例を示す正面図である。 図5は、薬液容器の一例を示す正面図である。
符号の説明
10:薬液容器、 15 薬液容器。

Claims (6)

  1. 蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理後12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が200cm/m・24h・atm以上であり、かつ酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が100cm/m・24h・atm以下であるプラスチックからなる薬液容器に収容、密封されており、
    前記蒸気滅菌処理または前記熱水滅菌処理が施されており、
    溶存酸素濃度が、前記蒸気滅菌処理または前記熱水滅菌処理後、前記プラスチックの酸素透過度が定常状態に達したときに、2ppm以下であり、
    前記蒸気滅菌処理または前記熱水滅菌処理後に、脱酸素手段を有する環境下で保存されている、ことを特徴とする、溶存酸素低減液剤。
  2. 易酸化性液剤であることを特徴とする、請求項1に記載の溶存酸素低減液剤。
  3. アミノ酸含有液、ビタミン類含有糖液、および脂溶性ビタミン含有液からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1または2に記載の溶存酸素低減液剤。
  4. 前記アミノ酸含有液が、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−リジン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−システイン、L−フェニルアラニン、L−チロジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アラニン、L−プロリン、L−セリン、L−グリシン、L−アスパラギン酸、およびL−グルタミン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸を含有していることを特徴とする、請求項に記載の溶存酸素低減液剤。
  5. 前記ビタミン類含有糖液が、糖類と、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、葉酸、ナイアシン、ビオチン、およびパントテン酸類からなる群より選ばれる水溶性ビタミンと、を含有していることを特徴とする、請求項に記載の溶存酸素低減液剤。
  6. 前記脂溶性ビタミン含有液が、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、およびビタミンKからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂溶性ビタミンを含有していることを特徴とする、請求項に記載の溶存酸素低減液剤。
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