JP5099951B2 - 副作用が減少されたヘモグロビン組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、1999年11月12日に出願された米国予備出願第60/165,289号を基礎にする。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、新規ヘモグロビン組成物、詳細には新規組換え変異体ヘモグロビン組成物に関し、これは、種々の治療適用における細胞外ヘモグロビン組成物の投与にともなう、1)心臓障害の生成、2)胃腸管不快、3)機能亢進効果、および4)内毒素過敏症をなくすか、または実質的に低減する。記載される適用は、種々の治療処置において、血液代替物、容量増加剤および/または酸素キャリアとしての使用を含む。
【0003】
(発明の背景)
ヘモグロビン(Hb)は、血液の酸素運搬タンパク質であって、ヘムとして知られる補欠分子基を保持する4つの会合したポリペプチドから構成される。約92%の成人ヒトヘモグロビンは、非共有結合により会合して、一般にヘモグロビンA0として知られる(WO93/09143)α2β2を形成する、2つのαグロビンサブユニット(α1、α2)および2つのβグロビンサブユニット(β1、β2)で構成されている。しかし、成人ヘモグロビンはまた、δグロビンサブユニットを含み得る。このδグロビンサブユニットは、βグロビンを置換し、そしてαグロビンとα2δ2として対合し、ヘモグロビンA2を形成する。成人ヘモグロビンのグロビンサブユニットに加え、多くのヘモグロビンサブユニットが、胚おび胎児発生の間にのみ天然で発現され、これらは、γグロビン、ζグロビン、およびεグロビンを含む。胚または胎児ヘモグロビンを形成するため、ζグロビンがαグロビンを置換し得、そしてεおよびγグロビンがβグロビンを置換し得る(例えば、α2ε2、α2γ2、ζ2ε2、およびζ2γ2を形成する)。胚ヘモグロビンは、胎児の発生に生物学的利点を与える、なぜなら、それは、一般に、成人ヘモグロビンに対してより高い酸素親和性を有し、そしてそれ故、母体血流からの胎児酸素摂取を容易にするからである。ヘモグロビンの構造は周知であり、そしてBunn&Forget、編、Hemoglobin:Molecular、Genetic and Clinical Aspects(W.B.Saunders Co.,Philadelphia,PA:1986)およびPhllipsおよびRichards、Atlas of Molecular Structure in Biology(Clarendon Press:1981)中のFermi&Perutz「Hemoglobin and Myoglobin」に記載されている。
【0004】
天然に存在するグロビンおよび天然に存在しないグロビン変異体を含む、種々の組換えヘモグロビンの発現が達成されている。このような方法は、例えば、米国特許第5,028,588号に記載のような組換え細胞における個々のグロビンの発現、および米国特許第5,545,727号に記載のような同一細胞におけるαおよびβグロビンの同時発現を含む。さらに、2つのαグロビンが遺伝子融合により短いポリペプチドリンカーで連結され、そしてその後2つのβグロビンとカップルされて偽テトラマーヘモグロビン分子を生成する2αグロビン発現が、米国特許第5,545,727号およびLookerら、Nature 356:258−260(1992)に記載されている。その他の改変組換えヘモグロビンが、例えば、米国特許第5,844,090号に開示されている。
【0005】
細胞外ヘモグロビンの溶液は、多くの治療的使用を有することが示されている。米国特許第5,658,879号および第5,659,638号は、化学的療法または放射線療法の効果を増大するために癌患者へのストロマのない精製された野生型ヘモグロビンの投与を記載する。米国特許第5,614,490号は、卒中および虚血を処置するために組織の灌流を増加するため、および血液量減少、心臓性、および敗血症ショックを処置するための、ストロマのないジアスピリン架橋ヘモグロビンの使用を記載する。米国特許第5,428,007号は、やけど被害者を処置するために組織酸素負荷を増加するための改変された酸素親和性をもつ組換え変異体ヘモグロビンの使用を記載する。米国特許第5,631,219号は、無月経、血液減少、および悪液質を処置するため、および血液新生を刺激するために改変された酸素親和性をもつ組換え変異体ヘモグロビンの使用を教示する。そして、WO98/17289は、哺乳動物における頭部損傷を処置するためのストロマのないジアスピリン架橋ヘモグロビンの使用を記載する。鎌状血球を処置するための架橋オキシヘモグロビンの使用が、Walderら、J.Mol.Bio.、141巻、195〜216(1980)により記載されている。一酸化窒素は、神経伝達、炎症、血小板凝集、および胃腸管および血管平滑筋トーンの調節を含むインビボの多くの重要なプロセスの制御において、化学的メッセンジャーとして作用する。一酸化窒素の生物学的作用は、種々の組織特異的応答を生じる生化学的カスケードを開始する、可溶性グアニルイルシクラーゼへの結合およびその活性化により媒介される(Feldmanら、Chem.Eng.News 12月:26−38(1993))。
【0006】
一酸化窒素の機能を解明することは、一酸化窒素生成酵素である一酸化窒素シンターゼの阻害に多いに依存した。細胞フリーのヘモグロビンの効果についての多くの結論は、一酸化窒素シンターゼインヒビターおよび/または一酸化窒素ドナーを含む実験を基に行われた。デオキシヘモグロビンへの一酸化窒素の急速高親和性結合は周知であるが、一酸化窒素とオキシヘモグロビンとの間の酸化反応の重要性は、広く認識されているものではない。この反応では、一酸化窒素分子はヘムに結合せず、オキシヘモグロビン複合体の結合酸素と直接反応し、メトヘモグロビンおよび硝酸塩を形成する(Doyleら、J.Inorg.Biochem.14:351−358(1981))。この化学は、溶液における一酸化窒素のフリーのスーパーオキシドとの急速反応に類似している(Huieら、Free Rad.Res.Comms.18:195−199(1993))。ヘム鉄および一酸化窒素の両方は、結合した酸素原子により酸化されるようになり、そして一酸化窒素による酸素の置換が観察されないほど急速に起こる(Eichら、後述)。
【0007】
一酸化窒素は、連続的原理で生成および消費されるので、インビボで一酸化窒素の自然の代謝回転がある。細胞フリーのヘモグロビンが投与されるとき、一酸化窒素産生と消費との間のバランスは、ヘモグロビンとの反応により改変される。ヘモグロビンによる一酸化窒素除去の最も関連するパラメーターは、一酸化窒素との反応速度であって、ヘモグロビンのアロステリック(R/T)平衡の位置ではない。この酸化反応は不可逆的であり、そしてデオキシヘモグロビンへの一酸化窒素結合は、生理学的時間スケールに対し効果的に不可逆的である。なぜなら、ニトロシルヘモグロビンの解離の半減期は5〜6時間であるからである(Mooreら、J.Biol.Chem.251:2788−2794(1976))。
【0008】
一酸化窒素分子がオキシヘモグロビンまたはデオキシヘモグロビンと反応するとき、それらは、シグナル分子のプールから除去される。一旦十分な一酸化窒素分子が除去されると、特定の逆の条件が創出されると考えられる。例えば、ヘモグロビンは、特定の細胞外ヘモグロビン溶液の投与の後にしばしば観察される、血管弛緩の防止を引き起こし、かつ潜在的に高血圧に至る一酸化窒素を結合し得る。さらに、硝酸塩およびメトヘモグロビンを生成してオキシヘモグロビンを酸化する一酸化窒素の能力はまた、一酸化窒素のフリーの濃度を低下させ、そして高血圧を導き得る。
【0009】
一酸化窒素はまた、特定の炎症応答を媒介するために必要である。例えば、内皮細胞によって産生される一酸化窒素は、血小板凝集を阻害する。結果として、一酸化窒素が細胞フリーのヘモグロビンにより結合されるにつれ、血小板凝集が増加し得る。血小板が凝集するにつれ、それらは、トロンボキサンA2およびセロチニンのような潜在的血管収縮性化合物を放出する。これらの化合物は、ヘモグロビン除去により引き起こされる低下した一酸化窒素レベルと相乗的に作用し得、有意な血管収縮を生じる。血小板凝集を阻害することに加え、一酸化窒素はまた、細胞壁への好中球付着を阻害し、それは次に細胞壁損傷に至り得る。
【0010】
試験被験体に細胞外野生型ヒトヘモグロビンの溶液を投与する際、いくつかの所望されない副作用が出願人により観察された。以下に詳細に記載されるように、感受性試験動物における出願人の実験結果は、治療用量で投与される野生型成人ヒトヘモグロビン分子を含むような細胞外ヘモグロビン組成物が心臓組織において心筋壊死の形成を生じることを示す。特定の理論に拘束されないが、出願人は、これらの細胞外ヘモグロビン分子による一酸化窒素(NO)除去と、処置動物における心筋壊死の発生との間の直接相関があると考える。出願人は、試験動物への一酸化窒素シンターゼ(NOS)阻害薬物の投与が、細胞外ヘモグロビン組成物の投与で観察される心臓損傷に類似の心臓損傷を生成することを見出した。
【0011】
さらに、従前に記載のヘモグロビンの使用とともに、いくつかのその他の所望されない副作用が他者によって観察されている。温和な高血圧が、特定の細胞外ヘモグロビン溶液の投与の後に、しばしば観察されている。高血圧が、一酸化窒素に対するデオキシヘモグロビンの既知の高親和性に一部基づいて、血管系の壁における一酸化窒素の枯渇に起因することが、多数によって観察されている(Schultzら、J.Lab.Clin.Med.122:301−308(1993);Thompsonら、J.Appl.Physiol.77:2348−2354(1994);Rooneyら、Anesthesiology 79:60−72(1993))。ヘモグロビンの内皮細胞または間質スペース中への遊出は、一酸化窒素の有意な消費を引き起こし得る(Gouldら、World J.Surg.20:1200−1207(1996))。Eichら、Biochemistry 35:6976−6983(1996)に報告されているように、最近の研究はまた、一酸化窒素のオキシヘモグロビンの結合酸素との酸化反応が、鉄原子への単純結合よりインビボで重要であり得ることを示唆している。Eichらは、結合酸素に隣接するアミノ酸の置換により誘導される立体障害が一酸化窒素で誘導される酸化の速度を顕著に低減し得ることを示した。
【0012】
一時的である温和〜中程度の胃腸管影響が、細胞外ヘモグロビン組成物の投与で一般に観察される別の副作用である(Tsuchidaら、イントロダクション、Artificial Red Cells:Materials、Performances and Clinical Study as Blood Substitutes.Liely、New Your、NY、1−20頁(1995)、およびVieleら、Anesthesiology、86:848−58(1997))。これらの影響は、(中上腹部不快感、腹部の痛みおよび/または消化不良)を含む上部胃腸管不快感、および/または(下腹部の痛み、ガスで腹が張ることおよび/または下痢を含む)下腹部胃腸管不快感を含む。代表的には、これらの胃腸管の事象は、注入後1〜3時間で生じ、1〜数時間続き、そして経時的に盛衰する。一酸化窒素は、胃腸管収縮性を調節する平滑筋組織の適正な機能の重要なモデュレーターであることが知られている。従って、観察された胃腸管への影響は、一酸化窒素とのヘモグロビン反応性により引き起こされる胃腸管運動性障害に一部起因し得ると考えられる(Conklinら、J.Pharmacol.Exp.273:762−67(1995)、およびConoverら、Life Sci.59:1861−69(1995))。
【0013】
さらに、内毒素過敏性もまた、細胞外ヘモグロビン溶液および低用量のリポ多糖を同時投与される動物で観察された。これらの動物は、通常、同時投与から48時間以内に敗血症ショックで死亡する。
【0014】
従って、これらの適用で用いられる細胞外ヘモグロビンで処理された哺乳動物における心臓損傷生成、およびこのような使用にともなう機能亢進影響または胃不快感をなくすかまたは実質的に低減する方法に対する必要性が存在する。従って、なお有効な酸素運搬作用剤として機能しながら、心臓損傷およびその他の副作用症状の発生をなくすか、または実質的に低減するヘモグロビン組成物に対する必要性が存在する。
【0015】
治療的使用のための精製細胞外ヘモグロビンを貯蔵することで遭遇した1つの問題は、経時的なヘモグロビン凝集と沈殿物の形成である。n−アセチルシステイン、ジヒドロリポ酸、またはアスコルビン酸のような抗酸化剤の添加が沈殿形成を防ぐことが知られている。しかし、ヘモグロビン凝集体形成を防ぐ化学品フリーの方法は、ヘモグロビン溶液の規制認可を単純にするために好適である。
【0016】
(発明の要旨)
本発明は、治療薬剤として投与されるとき、心臓損傷を低減するか(低減された損傷)、またはなくす(損傷フリー)ヘモグロビンに関する。好ましくは、これらのヘモグロビンは、組換えにより生産された変異体ヘモグロビンであり、これは化学的に架橋され得る。従って、1つの局面では、本発明は、適切な薬学的キャリア中の、低減されて心臓損傷または心臓損傷を引き起こさない組換えヘモグロビンを含む、薬学的組成物に関する。
【0017】
本発明はまた、治療薬剤として投与されるとき、中程度に低減された(低減された胃腸管影響)または多いに低減された有害な胃腸管影響(低胃腸管影響)のヘモグロビンに関する。好ましくは、これらのヘモグロビンは、組換えにより生産された変異体ヘモグロビンであり、これは化学的に架橋され得る。従って、別の局面では、本発明は、適切な薬学的キャリア中の、中程度または多いに低減された胃腸管影響を生じる組換えヘモグロビンを含む、薬学的組成物に関する。
【0018】
本発明はまた、治療薬剤として投与されるとき、中程度に低減された(低減された機能亢進影響)または多いに低減された機能亢進影響(低機能亢進影響)のヘモグロビンに関する。好ましくは、これらのヘモグロビンは、組換えにより生産された変異体ヘモグロビンであり、これは化学的に架橋され得る。従って、別の局面では、本発明は、適切な薬学的キャリア中の、中程度または多いに低減された機能亢進影響を生じる組換えヘモグロビンを含む、薬学的組成物に関する。
【0019】
本発明はまた、治療薬剤として投与されるとき、低減された内毒素過敏性影響(低減された内毒素影響)を引き起こすヘモグロビンに関するる。好ましくは、これらのヘモグロビンは、組換えにより生産された変異体ヘモグロビンであり、これは化学的に架橋され得る。従って、別の局面では、本発明は、適切な薬学的キャリア中の、低減された内毒素影響を生じる組換えヘモグロビンを含む、薬学的組成物に関する。
【0020】
本発明はまた、低減されるか、または低〜ゼロの程度のいずれかで、上記の生物学的特徴任意の組み合わせまたは順列を含むヘモグロビンに関する。従って、別の局面では、本発明は、適切な薬学的キャリア中の、上記の影響の組み合わせを生じる組換えヘモグロビンを含む、薬学的組成物に関する。
【0021】
本発明はまた、酸素運搬全血置換体として、生理学的に受容可能な溶液中の上記のヘモグロビンの任意の使用に関する。
【0022】
本発明はまた、血液量減少を処置するため、および出血性ショックまたは心臓性ショックを患う哺乳動物を蘇生する上記ヘモグロビンのいずれかの使用に関する。
【0023】
本発明の別の局面は、虚血または卒中を処置するため、および損傷または火傷のような物理的損傷を受けた組織の酸素負荷を増大するための上記ヘモグロビンのいずれかの使用である。
【0024】
本発明の別の局面は、無月経を処置するため、または血液新生を刺激するための上記ヘモグロビンのいずれかの使用である。
【0025】
本発明の別の局面は、哺乳動物における心臓損傷を処置するための上記ヘモグロビンのいずれかの使用である。
【0026】
本発明の別の局面は、放射線照射または化学療法を受ける患者に、その療法の腫瘍低減効果を増大するための、上記ヘモグロビンのいずれかの癌治療増大量の投与に関する。
【0027】
本発明のなお別の局面は、特に血管閉塞危機を経験する患者のような鎌状赤血球貧血患者を処置するための上記ヘモグロビンのいずれかの使用に関する。
【0028】
上記のような新規生物学的性質をもつヘモグロビン組成物に加えて、本発明はまた、低減された一酸化窒素との反応性速度を示す新規組換え変異体ヘモグロビンに関する。詳細には、本発明は、組換え変異体ヘモグロビンに関し、これは、αサブユニット中に以下に相当する変異(単数または複数)を含む:B10(Leu→Tyr);B10(Leu→Trp)+E11(Val→Phe)+G8(Leu→Ala);B10(Leu→Trp)+E7(His→Gln)+E11(Val→Met)+G8(Leu→Val);B10(Leu→Trp)+E7(His→Gln)+E11(Val→Phe)+G8(Leu→Val);B10(Leu→Trp)+E7(His→Gln)+E11(Val→Leu)+G8(Leu→Val);B10(Leu→Phe)+E7(His→Gln)+E11(Val→Met)+G8(Leu→Phe);B10(Leu→Phe)+E7(His→Gln)+E11(Val→Met)+G8(Leu→Met);B10(Leu→Phe)+E7(His→Gln)+E11(Val→Met)+G8(Leu→Ile);またはB9(Ala→Phe)。本発明はまた、βサブユニット中に以下に相当する変異(単数または複数)を含む:B9(Ala→Leu)+E11(Val→Met)+G8(Leu→Trp);B9(Ala→Leu)+E11(Val→Leu)+G8(Leu→Trp);B9(Ala→Leu)+E11(Val→Leu);B9(Ala→Phe)+E11(Val→Leu);B9(Ala→Trp)+E11(Val→Leu);B9(Ala→Phe);B9(Ala→Trp);B9(Ala→Leu);B9(Ala→Met);E11(Val→Met);B10(Leu→Phe)+B14(Leu→Phe);B9(Ala→Leu)+G8(Leu→Trp);B9(Ala→Trp)+G8(Leu→Phe);B9(Ala→phe)+G8(Leu→Trp);B9(Ala→Trp)+G8(Leu→Trp);B10(Leu→Ala)+E7(His→Phe)+G8(Leu→Trp);またはE11(Val→Trp)+G8(Leu→Trp)。さらに、本発明はまた、αおよびβサブユニットの両方において先行する変異の任意の組み合わせを含む組換えヘモグロビン変異体に関する。
【0029】
さらに、本発明はまた、延長された期間の間脱酸素化形態で溶液中に貯蔵されるとき、低減した凝集体形成を示し、そして鎌状血球変異β6Glu→Valを含まない組換え変異体ヘモグロビンに関する。好ましくは、このようなヘモグロビンは、βサブユニット中の87のスレオニンで疎水性またはバルキーアミノ酸への変異を含み、そしてネイティブアミノ酸β6Gluを含む。より好ましくは、このようなヘモグロビンは、β87Thr→Asp、Glu、Arg、Lys、His、Tyr、Gln、またはTrpからなる群から選択される変異を含む。なおより好ましくは、このようなヘモグロビンは、β87Thr→Asp、Gln、Glu、Arg、Lys、またはHisからなる群から選択される変異を含む。最も好ましくは、このようなヘモグロビンは、変異β87Thr→Glnを含む。
【0030】
(好適な実施形態の説明)
種々の用語が、本明細書において、本発明のこの局面を記載することで用いられる。その他であることが規定されなければ、本明細書で用いられるすべての技術的および科学的用語は、当業者により従前に理解されるのと同じ意味を有している。
【0031】
「親和性」は、ヘモグロビンへのリガンドの平衡結合をいい、そして熱動力学的平衡定数Keqにより説明される。Keqは、リガンド会合速度定数とヘモグロビン−リガンド解離速度定数の比に等しく、そしてそれ故、会合速度定数、解離速度定数またはその両方における変化は、リガンド親和性の変化に至り得る。ヘモグロビン分子が協動性を示すとき、親和性はまた、R/T平衡およびヘモグロビン分子の個々のサブユニットのKeq間の差異により影響される。
【0032】
本明細書で用いる用語「αグロビン」は、ネイティブなヒトαグロビンと少なくとも約75%の配列同一性をもつ。しかし、より少ない配列同一性のポリペプチドは、ネイティブなヒトαグロビンとなお実質的に相同であり得ると考えられ、そしてそれ故、それが、偶然から予期され得るより大きい配列同一性を有し、そしてまたネイティブなヒトαグロビンの特徴的な高次構造を有し、かつ類似の生物学的活性を有する場合、αグロビンであり得る。同様に、「βグロビン」は、ネイティブなヒトβグロビンと少なくとも約75%の配列同一性を有する。しかし、より少ない配列同一性のポリペプチドは、ネイティブなヒトβグロビンとなお実質的に相同であり得ると考えられ、そしてそれ故、それが、偶然から予期され得るより大きい配列同一性を有し、そしてまたネイティブなヒトβグロビンの特徴的な高次構造を有し、かつ類似の生物学的活性を有する場合、βグロビンであり得る。さらに、「δグロビン」は、ネイティブなヒトδグロビンと少なくとも約75%の配列同一性を有する。しかし、より少ない配列同一性のポリペプチドは、ネイティブなヒトδグロビンとなお実質的に相同であり得ると考えられ、そしてそれ故、それが、偶然から予期され得るより大きい配列同一性を有し、そしてまたネイティブなヒトδグロビンの特徴的な高次構造を有し、かつ類似の生物学的活性を有する場合、δグロビンであり得る。等しく、「εグロビン」は、ネイティブなヒトεグロビンと少なくとも約75%の配列同一性を有する。しかし、より少ない配列同一性のポリペプチドは、ネイティブなヒトεグロビンとなお実質的に相同であり得ると考えられ、そしてそれ故、それが、偶然から予期され得るより大きい配列同一性を有し、そしてまたネイティブなヒトεグロビンの特徴的な高次構造を有し、かつ類似の生物学的活性を有する場合、εグロビンであり得る。同様に、「γグロビン」は、ネイティブなヒトγグロビンと少なくとも約75%の配列同一性を有する。しかし、より少ない配列同一性のポリペプチドは、ネイティブなヒトγグロビンとなお実質的に相同であり得ると考えられ、そしてそれ故、それが、偶然から予期され得るより大きい配列同一性を有し、そしてまたネイティブなヒトγグロビンの特徴的な高次構造を有し、かつ類似の生物学的活性を有する場合、γグロビンであり得る。さらに、「ζグロビン」は、ネイティブなヒトζグロビンと少なくとも約75%の配列同一性を有する。しかし、より少ない配列同一性のポリペプチドは、ネイティブなヒトζグロビンとなお実質的に相同であり得ると考えられ、そしてそれ故、それが、偶然から予期され得るより大きい配列同一性を有し、そしてまたネイティブなヒトζグロビンの特徴的な高次構造を有し、かつ類似の生物学的活性を有する場合、ζグロビンであり得る。
【0033】
「改変された親和性」は、不安定リガンドの組換えリガンドの、同じ測定条件下で同不安定リガンドについて、天然に存在するヒトヘモグロビンの親和性とは、少なくとも10%異なる組換えヘモグロビンの親和性を意味する。
【0034】
「癌療法」は、本発明の目的には、患者における腫瘍細胞を殺傷するために設計される任意の処置と規定される。癌療法は、放射線照射および化学的療法を含む。
【0035】
「血球減少状態」または「血球減少症」は、任意の循環性血液細胞型の数、容積、機能性、または分布の臨床的に有意な減少と規定される。血球減少症は、少なくとも、貧血、血小板減少症、好中球減少症、および白血球減少症を包含することが意図される。
【0036】
「低減された凝集体形成」は、約10%の初期メトヘモグロビン含量の約10g/dlデオキシヘモグロビン溶液において、少なくとも3ヶ月の25℃の貯蔵で、総ヘモグロビンのグラムあたり2ミリグラムより多くない沈殿物の形成として規定される。
【0037】
「デオキシヘモグロビン」または「非リガンドヘモグロビン」は、αグロビン、βグロビン、および/または任意の機能的ヘム補欠分子基に外因性リガンドが結合していない任意のヘモグロビンを意味する。「リガンドヘモグロビン」は、ヘム基に外因性リガンドが結合しているヘモグロビンを意味する。一般的な好適リガンドは、制限されないで、酸素、一酸化炭素、一酸化窒素などを含む。
【0038】
「遠位のヘムポケット(distal heme pocket)」は、遊離の鉄配位部位を含むヘムの平面上のヘムポケットの部分を意味し、ここで外因性リガンド分子は、可逆的に鉄原子と結合し得、そしてこれはヒスチジンE7およびバリンH11のような残基を含む。同様に、「近位のヘムポケット(proximal heme pocket)」は、ヘムの平面下これらの残基により記載され、そして近位のヒスチジンのような残基を位置F8に含む。
【0039】
「胚性ヘモグロビン」は、天然では主に胚発生中にのみ発現される少なくとも1つのサブユニットを有するヘモグロビンを意味する。例えば、γグロビン、ζグロビン、またはεグロビンである。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「病巣心臓損傷」とは、検査されたアカゲザルの心臓切片(通常、約1.0cm×1.5cm×4〜6μm)における多くの個々の損傷範囲を言う。検査された切片毎に3以下の心臓損傷が存在する場合、この心臓損傷は、病巣として記載される。
【0041】
本発明の目的に関して、「頭部外傷」は、頭部(脳を含む)への任意の外傷として定義される。これは頭部へ適用される物理的力のような任意の外部力に起因する。頭部外相の例は、事故による脳挫傷および脳創傷である。頭部外傷は、通常、頭蓋内圧を亢進し、そして大脳の灌流圧の減少を引き起こす。
【0042】
本発明の目的に関して、「造血」は、前駆体細胞からの血球の形成および発生ならびにこれらの血球細胞の前駆体細胞の形成プロセスについての一般的な用語である。血球としては、赤血球、網状赤血球、単球、好中球、巨核球、好酸球、好塩基球、B細胞、マクロファージ、顆粒球、肥満細胞、血小板、および白血球が挙げられるが、これらに限定されない。前駆体細胞としては、バースト(burst)形成単位−赤血球(BFU−E)、コロニー形成単位−赤血球(CFU−E)、コロニー形成単位−巨核球(CFU−Meg)、コロニー形成単位−顆粒球−マクロファージ(CFU−GM)、コロニー形成単位−マクロファージ(CFU−M)、コロニー形成単位−顆粒球(CFU−G)、コロニー形成単位−顆粒球、赤血球、マクロファージ、巨核球(CFU−GEMM)、コロニー形成単位−単核球(CFU−M)、コロニー形成単位−好酸球(CFU−Eo)、コロニー形成単位−脾臓(CFU−S)、コロニー形成単位−好塩基球(CFU−B)、多能性幹細胞、全能性幹細胞、骨髄性幹細胞、およびリンパ系幹細胞が挙げられるがこれらに限定されない。添付された特許請求の範囲の目的に関して「赤血球新生」は、赤血球の形成をもたらす造血経路の一部として定義される。添付された特許請求の範囲の目的に関して「血小板新生」は、血小板の形成をもたらす造血経路の一部として定義される。添付された特許請求の範囲の目的に関して「白血球新生」は、白血球の形成を生じる造血経路の一部として定義される。血液循環の他の細胞の形成プロセスは同様に定義され、そして接尾語「poiesis」または「poetic」の使用により区別される。造血は、一定量毎の細胞の総数の増加によって示される前駆体細胞の増加により測定され得る。例えば、血液循環において、増加は、細胞の総数、個々の細胞の大きさ、または具体的には赤血球について個々の細胞のヘモグロビン含有量の増加を意味し得る。例えば、赤血球について、この増加は、ベースラインレベル(処置前に測定された目的の細胞型の大きさまたは濃度)を少なくとも6%超える、より好ましくはベースラインレベルより10%大きい、なおより好ましくはベースラインレベルより20%大きい、最も好ましくはインビボで必要な通常のレベルまでの増加である。
【0043】
「ヘムポケット(heme pocket)」は、ポケットが、周囲の残基により表される各グロビンサブユニットのヘム補欠分子族の周りに形成したことを意味し、約6Åのヘム部分中の残基を含むことを意味する。
【0044】
本願において使用される場合、「ヘモグロビン」は、一般的に、いくつかの遺伝的かつ化学的改変(例えば、αまたはβサブユニットの点変異、2以上のαまたはβサブユニットの一本鎖ポリペプチド(すなわち、ジ−α(di−α)またはジ−ジα(di−di α)ヘモグロビン)への融合、および分子内または分子間の化学的架橋)のいくつかを含み得るα2β2野生型ヘモグロビンに基いた分子をいう。これはまた、αサブユニットおよび/またはβサブユニットが、δグロビンサブユニット、εグロビンサブユニット、γグロビンサブユニット、および/またはζグロビンサブユニットで置換された分子をいう。
【0045】
本発明の目的に関して、状況によって記載されない限り、「天然に存在するヒトヘモグロビン」、「ネイティブなヘモグロビン」、「野生型ヘモグロビン」または「通常のヘモグロビン」は、ヒトヘモグロビンA0を言う。ヒトヘモグロビンA0のαグロビンおよびβグロビンアミノ酸配列は、米国特許第5,028,588号の表1に示される。グロビンサブユニットのらせん状セグメントを文字により同定することが、慣用的あることを示す。例えば、α鎖またはβ鎖の近位のヒスチジンはF8(ヘリックスFの8残基)と名づけられる。非らせん状セグメントは、文字対で同定され、これらが結合するらせん状セグメントを示す。例えば、非らせん状セグメントBCは、ヘリックスBおよびヘリックスCを結合する。らせんの記号およびαグロビンおよびβグロビンに対応するアミノ酸は、米国特許第5,028,588号の表4に示される。
【0046】
本発明の目的に関して、「血液量減少」は、身体中を循環している体液(血液または血漿)の容量の異常な減少として定義される。この状態は、「出血」、すなわち血管からの血液の排出に起因し得る。
【0047】
本発明の目的に関して、「虚血」は、身体の一部における血液の欠乏として定義され、通常、血管の機能的狭窄または実際の閉塞により引き起こされる。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「損傷のない」ヘモグロビンは、実施例10に記載の条件下でアカゲザル(Macaca mulatta)に対して2000mg/kgの用量での投与の際に、95%の試験被験体で心臓損傷を引き起こさないヘモグロビンとして定義される。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「低胃腸効果」ヘモグロビンは、ヒト血清アルブミン1500mg/kgの投与と比較した場合に、実施例11に記載の条件下で意識のあるSprague Dawleyラットに1500mg/kgの用量での投与の際に、10%未満の胃排出の減少を引き起こすヘモグロビンとして定義される。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「低昇圧効果」ヘモグロビンは、実施例12に記載の条件下でSprague Dawleyラットに2000mg/kgの用量での投与の際に、10mmHg未満の平均動脈圧増加を引き起こすヘモグロビンとして定義される。
【0051】
「メトヘモグロビン」または「酸化ヘモグロビン」は、任意のヘモグロビン中で鉄が酸化されて3価鉄の状態になったことを意味する。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「軽症の心臓損傷」は、約50個の心筋細胞幅に対して6個の、心筋細胞の心筋壊死の範囲として定義される。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「最小の心臓損傷」は、5個の心筋細胞幅を超えない心筋壊死の範囲として定義される。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「多病巣性心臓損傷」は、検査されたアカゲザル心臓の切片(通常、約1.0cm×1.5cm×4〜6μm)における個々の損傷範囲の数をいう。3以上の心臓損傷が検査した切片毎に存在する場合、この心臓損傷は多病巣性として記載される。
【0055】
「変異体ヘモグロビン」は、単量体であろうと多量体であろうとα様グロビンタンパク質および/またはβ様グロビンタンパク質を含むヘモグロビンを意味し、これらのアミノ酸配列は、任意の特定の種(例えば、ヒト、ウシまたはブタ)の野生型ヘモグロビン由来の少なくとも1つの変異を有する。変異体ヘモグロビンはまた、遺伝的に融合した二量体ポリペプチド(例えば、ジ−α(α−gly−α)ポリペプチド)を含むヘモグロビンを含む。ヘモグロビン分子へのこのような変更は、米国特許第5,844,089号に完全に記載される。さらに、用語「ヘモグロビン様タンパク質」は、変異を有するグロビンサブユニットまたは遺伝的に融合したグロビンサブユニットを含むヘモグロビンを示すために使用される。「グロビン様」ポリペプチド、タンパク質、またはサブユニットは、同様に変異または遺伝的に融合したヘモグロビンのグロビンサブユニットを言う。
【0056】
「変異」は、野生型ヒトヘモグロビンまたはその他の種のヘモグロビンを構成するアミノ酸配列に対する1以上のアミノ酸の置換、欠失または付加のことである。
【0057】
「心筋壊死」は、病巣分布から多病巣性分布を有する中程度の筋原線維壊死(細胞死)およびいくつかの部位で単核の炎症性浸潤(白血球またはマクロファージとして)を伴う中程度の筋原線維壊死の少なくとも最小として定義される。
【0058】
「酸化」は、ヘモグロビンテトラマーを構成する任意のまたはすべてのサブユニットのヘム鉄の2価鉄形態(Fe+2)から3価鉄(Fe+3)形態への酸化状態の増加を意味する。自動酸化は、酸素の存在下で自然に起こる緩慢な酸化である。しかし、酸化は、他の外因性の酸化剤(最も顕著には、一酸化窒素および過酸化水素)の存在により顕著に加速され得る。
【0059】
「オキシヘモグロビン」は、酸素分子が、核サブユニットの機能的酸素結合部位に結合するヘモグロビンを意味する。
【0060】
「組換えヘモグロビン」は、ヘモグロビンがネイティブであろうと変異体であろうと、α様グロビンタンパク質および/またはβ様グロビンタンパク質を含むヘモグロビンを意味し、これらの少なくとも1つは、ヘモグロビン遺伝子および/またはヘモグロビンタンパク質が天然に見出される細胞以外の細胞における組換えDNA分子により保有されるグロビン遺伝子の発現により得られる。言い換えると、ヘモグロビン遺伝子は、それが発現される宿主に対して非相同性である。例えば、ヒト赤血球以外の任意の細胞における任意のヒトヘモグロビン遺伝子の発現は、組換えヘモグロビンであると考えられる。また、例えば、天然に存在しないすべてのヘモグロビンが組換えヘモグロビンである。
【0061】
本発明の目的に関して、「灌流」は、器官または組織の血管を通る体液の流れとして定義される。
【0062】
本発明の目的に関して、「物理的組織損傷」は、力(極端な温度変化、または腐食性化学物質の適用)が適用されたことに起因する身体組織への外傷として定義される。物理的組織損傷の例として、創傷、打撲傷、熱傷、および凍傷が上げられる。
【0063】
「R状態のヘモグロビン」は、ヘモグロビンの高い親和性状態であり、そして外因性リガンドがヘム補欠分子族に結合する場合のヘモグロビンの主な形態である。代表的には、リガンドは酸素である。従って、この状態は、「oxy」または「R」(緩和(relaxed)に対する)状態として公知である。
【0064】
本明細書中で使用される場合、「減少した内毒素効果」ヘモグロビンは、1000mg/kgの用量のヒト血清アルブミンと5mg/kgのリポ多糖の同時投与と比較して48時間における生存の20%未満の減少を引き起こす実施例13に記載の条件下で、1000mg/kgの用量のヒト血清アルブミンと5mg/kgのリポ多糖のマウスへの同時投与に対するヘモグロビンとして定義される。
【0065】
本明細書中で使用される場合、「胃腸効果減少」ヘモグロビンは、ヒト血清アルブミン1500mg/kgの投与と比較した場合に実施例11に記載の条件下で意識のあるSprague Dawleyラットに1500mg/kgの用量での投与際に、10%未満の胃排出の減少を引き起こすヘモグロビンとして定義される。
【0066】
本明細書中で使用される場合、「損傷減少」ヘモグロビンは、実施例10に記載の条件下でアカゲザル(Macaca mulatta)に2000mg/kgの用量での投与の際に、最小の(病巣または多病巣性)心臓損傷しか引き起こさないヘモグロビンとして定義される。任意のアカゲザル試験被験体において軽症の損傷を引き起こすヘモグロビンは、減少した損傷ヘモグロビンであるとは考えない。
【0067】
本明細書中で使用される場合、「昇圧効果減少」ヘモグロビンは、実施例12に記載の条件下でSprague Dawleyラットに2000mg/kgの用量での投与の際に、20mmHg未満の平均動脈圧増加を引き起こすヘモグロビンとして定義される。
【0068】
本発明の目的に関して、「ショック」は、重要な器官の十分な灌流を保持するための循環系の疾患により特徴付けられる深在性の血流力学障害および代謝障害の状態として定義される。十分な心臓拍出量、血圧、および「循環血液量減少性ショック」と言われる組織灌流を保持するための不十分な血量に起因する。急性の出血に起因する循環血液量減少性ショックは、「出血性ショック」と言われる。心筋梗塞、重度の心筋症、または心臓の機械的閉塞もしくは圧縮に起因するショックは、「心臓性ショック」と言われる。
【0069】
本発明の目的に関して、「発作」は、脳内の栄養血管(feeding blood vessel)の狭窄または閉塞により引き起こされる発作症候群として定義される。
【0070】
本発明の目的に関して、「外科的デバイス」は、体液無効容量を含む外科手術の過程で使用される任意の機械的デバイスである。「体液無効容量」は、手術での使用に対して安全性を与える目的で空気を取り除くために体液とともに流されなければならない外科的デバイス中の容量である。例は、カテーテルの使用の間に血液を保持することを企図される血管形成術カテーテル中の管腔である。別の例は、血液オキシジェネーター(blood oxygenator)の交換容量である。「初回刺激」は、体液とともに体液無効容量を流す工程である。
【0071】
「T状態ヘモグロビン」は、低親和性状態のヘモグロビンおよび脱酸素(「deoxy」、または「T」(緊張(tense))状態に対して)された場合のヘモグロビンの主な形態である。
【0072】
本明細書中において、いくつかの組換えヘモグロビンを使用して本発明を例示した。これらのヘモグロビンの一覧表は、任意の変異体および基本的な物理的性質にそって、以下の表に示される。
【0073】
【表1】
Figure 0005099951
(概論)
本発明は、一般的に、哺乳動物へ治療的適用において投与される場合、減少したもしくは非心臓損傷、減少したもしくは低い胃腸効果、減少したもしくは低い昇圧効果、および/または減少した内毒素効果を生じる特定の物理化学特性を示すヘモグロビン、およびこのようなヘモグロビンを含む薬学的組成物に関する。これらのヘモグロビンは、一般的に「副作用減少」ヘモグロビンといわれ得る。このヘモグロビンは、好ましくは、これらの物理化学的特性に有益に影響を及ぼす変異を有する組み換え的に生成されたヘモグロビンである。さらに、本発明のより好ましいヘモグロビンは、生物学的副作用の最も低い発生および激烈を有し、分子内架橋または重合化される。
【0074】
好ましい実施形態において、本発明は、下に記載するようにアカゲザル試験において有意に減少した数の心臓損傷を除去または生じる変異ヘモグロビンを利用する。従って、本発明において好ましい変異ヘモグロビンは、また本明細書中で「減少した損傷変異体」という。最も好ましくは、これらのヘモグロビンは、アカゲザル試験において心臓損傷を生じないことである。本発明において最も好まれるこれらの変異ヘモグロビンは、また「損傷なし変異体」という。
【0075】
別の好ましい実施形態において、本発明は、治療的薬剤として投与される場合、減少した平均動脈血圧増加または減少した昇圧効果を引き起こすヘモグロビンを利用する。従って、本発明のこれらのヘモグロビンは、本明細書中で「減少した昇圧効果」ヘモグロビンという。最も好ましくは、これらのヘモグロビンは、比較できる量のヒト血清アルブミンの投与と比較して測定することで大いに減少する動脈血圧効果を生じる。本発明の最も好ましいこれらの変異ヘモグロビンはまた、「低い昇圧効果」ヘモグロビンという。
【0076】
別の好ましい実施形態において、本発明は、治療的薬剤として投与される場合、減少した有毒胃腸効果(例えば、中上胃部不快、腹痛および/もしくは消化不良を含む上部胃腸不快、ならびに/または下部腹痛、鼓腸および/もしくは下痢を含む下部胃腸不快)ヘモグロビンを利用する。従って、本発明のこれらのヘモグロビンは、本明細書中で「減少した胃腸効果」ヘモグロビンという。最も好ましくは、これらのヘモグロビンは、ラットにおける胃の空き試験によって測定されることで、大いに減少する胃腸副作用を生じる。本発明において最も好ましいこれらの変異ヘモグロビンはまた、「低い胃腸効果」ヘモグロビンという。
【0077】
別の好ましい実施形態において、本発明は、治療的薬剤として投与される場合、減少した内毒性過剰高感受性効果を引き起こすヘモグロビンを利用する。従って、本発明のこれらのヘモグロビンは、本明細書中で「減少した内毒性効果」ヘモグロビンという。
【0078】
より好ましい実施形態において、本発明は、減少または低い程度〜ゼロ程度のいずれかにおいて、上の生物学的特性の組み合わせまたは置換を有するヘモグロビンを利用する。
【0079】
本発明の1つの実施形態において、減少する副作用組み換えヘモグロビンの生理学的に受容可能な溶液は、代用血液として使用され得る。この酸素運搬容量および感染力のある薬剤からの自由のため、このような溶液は、全体の血液灌流の処置に対して重要な補助剤である。さらに、減少した損傷および損傷のない変異ヘモグロビンは、酸素運搬代用血液として投与される場合、他の細胞外ヘモグロビンに引き起こされる損傷生成応答を除去または有意に減少する。代用血液としての一般的使用に加えて、組み換え副作用減少ヘモグロビン溶液はまた、酸素運搬溶液使用され、血液量減少および出血性または循環血液量減少性ショック、および心臓性ショックを処置し得る。
【0080】
細胞外ヘモグロビンの血管系における組織分布は、赤血球のサイズによって限定されないため、本発明のヘモグロビンは、使用され、酸素を赤血球が通り得ない領域へ送達し得る。これらの領域は、赤血球流れに対する障害の下流(例えば、血栓、鎌状赤血球貧血、動脈閉塞、血管形成用バルーン、外科手術器具使用、酸素飢餓に罹患するまたは任意の組織など)に位置付けられる任意の組織領域を含み得る。さらに、組織虚血の全ての型は、本発明の方法を使用して処置され得る。このような組織虚血として、例えば、発作、顕在性発作、一過性脳虚血発作、心筋気絶および冬眠、急性または非定常アンギナ、顕在性アンギナ、梗塞などが挙げられる。やけどなどの物理的損傷からの組織の回復はまた、組み換えグロブリンを用いる前処置によって促進され得る。このグロブリンが、組織の灌流および酸素付加を増加可能にする。
【0081】
鎌状赤血球貧血患者の処置のための本発明のヘモグロビンの使用は、近年の治療の不都合を克服する。血管閉塞発症における鎌状赤血球貧血患者は、現今、希釈および疼痛治療技術と共に赤血球の輸血によって処置される。細胞のないヘモグロビン産物は、さらなる鎌状赤血球化を予防するため酸素を送達する(赤血球がするように)だけでなく、この産物はまた、すでに変形赤血球で閉塞された血管を通り、痛みをより緩和し、そして組織損傷を最小にする。また、鎌状赤血球貧血集団における頻繁な輸血は、赤血球および血小板へ異種免疫、細胞のないヘモグロビンの使用によって防止される有害な効果を生じる。副作用減少ヘモグロビンは、鎌状赤血球患者の処置において野生型一酸化窒素動態を用いる細胞のないヘモグロビン以上に重要な治療的利点を提供する。これは、このヘモグロビンが、より少ない程度のまたは全くなく血管狭窄を顕在化するからである。このことは、血管閉塞発症の処置において明らかに長所であり、そしてまた、血管閉塞発症の突然の開始の危険のある状況にある鎌状赤血球貧血患者の他の処置において長所である。例えば、細胞のないヘモグロビンは、麻酔の危険を最小にするため鎌状赤血球貧血患者の術前の輸血のため包装された赤血球の代わりに使用され得る。細胞のないヘモグロビンはまた、発作の危険を最小にするため周期的に投与され得る。
【0082】
本発明の1つの実施形態において、副作用減少変異ヘモグロビンは、使用され、貧血に罹患する患者において付加酸素運搬容量を提供する、および/または本明細書中に参考として援用されるPCT公開番号WO95/24213号に記載されるように造血を刺激することの両方によって貧血を処置し得る。造血を刺激するために使用される場合、投与速度は、ゆっくりであり得る。これは、ヘモグロビンの用量が、出血を処置するために必要とされる用量よりもずっと小さいからである。従って、本発明の副作用減少ヘモグロビンは、高容積のヘモグロビンの患者への投与を必要とするおよび本発明の低容積のヘモグロビンが投与される状況における適用のために使用され得る。
【0083】
さらに、本発明は、副作用減少ヘモグロビンのいくつかの特殊化された使用を提供する。副作用減少ヘモグロビンは、放射線治療または化学療法と共に添加物として使用され、これらの癌処置の効力を高め得る。副作用減少ヘモグロビン調製物はまた、使用されて、大脳灌流圧を増加しそして頭蓋内圧を減少して哺乳動物における頭部損傷を処置し得る。
【0084】
副作用減少ヘモグロビンは、種々の治療的適用における使用のために処方され得る。本発明の方法の実施に適切な代表的な処方は、Milneら、WO95/14038およびGerberら、米国特許第5,914,391号に記載され、両方とも本明細書中に参考として援用される。投与における複雑化を防止するために、本発明における使用のためのヘモグロビン組成物は、高い純度であるべきである(すなわち、支質および発熱物質のない)。好ましくは、この組成物は、LAL(リムルスアメーバ様細胞分解産物)試験で測定して0.25EU/mLより多くない内毒素レベルを有すべきである。さらに、酸素を効率的に運搬する本発明の副作用減少ヘモグロビン組成物のために、メトヘモグロビン含量が、制御され得る。好ましくは、下に記載される適用において使用される場合、本発明の副作用減少ヘモグロビン組成物は、15%未満、より好ましくは10%未満、そして最も好ましくは5%未満のメトヘモグロビン含量を有する。本発明における使用について、副作用減少ヘモグロビンは、それらを必要とする哺乳動物の処置において使用するため慣習的な薬学的処方物(例えば、注射可能な溶液)において組み込まれ得る。薬学的組成物は、皮下、静脈内、もしくは筋肉内注射、または大容量非経口溶液などによって投与され得る。
【0085】
例えば、非経口治療組成物は、0.1(w/v)%〜90(w/v)%の組み換え副作用減少ヘモグロビンを含む滅菌等張生理食塩水溶液を含有し得る。組換え副作用減少ヘモグロビンの好ましい細胞外ヘモグロビン溶液は、約5%〜約20%の、より好ましくは約5%〜約17%の、より好ましくは約8%〜約14%の、そして最も好ましくは約10%の溶液中のヘモグロビン(w/v%)を含む。ヘモグロビンのパーセントの選択は、選択されたヘモグロビン産物の腫脹特性に依存する。本発明における使用のために処方されたヘモグロビン溶液は通常の腫脹性から高張性であることが好ましい。ヘモグロビンのパーセントは、各適応症について、所望の腫脹圧を得るように調整され得る。出願人は、実施例において使用される約8〜14g/dlの組み換え副作用減少ヘモグロビンの濃度が正確な腫脹圧を提供することを見出した。しかし、約1〜20g/dlのヘモグロビン濃度が、本発明における使用のために適切である。
【0086】
治療剤としての組み換え副作用減少ヘモグロビンの代表的な用量は、約1〜15,000ミリグラムヘモグロビン/kg患者体重であり得る。より通常には、酸素を運ぶ組成物として使用する場合、または代用血液として使用する場合、投与量は、100〜7500mg/kg患者体重、より好ましくは500〜5000mg/kg患者体重、そして最も好ましくは700〜3000mg/kg患者体重の範囲である。従って、ヒト患者のための代表的な用量は、1〜1000グラムであり得る。必要な有効量は多数の個々の用量の投与によって達成され得るので、各投薬量形態の個々の用量に含まれる活性成分の単位含有量はそれ自体で有効量を構成する必要はないことが、理解される。投薬量の選択は、利用される投薬量形態、処置される状態、および当業者の決定に従って達成されるべき特定の目的に依存する。本発明における使用のために、副作用減少ヘモグロビンを、生理学的に受容可能な溶液中に透析するか、または限外濾過によって交換し得る。より好ましくは、本発明のヘモグロビンは、50〜150g/lの濃度で処方される。溶液は、一般に、全血と等張性である生理学的に適合可能な電解質を含み、ヘモグロビンの可逆的な酸素の輸送および送達特性を維持する。生理学的に受容可能な溶液は、例えば、生理学的生理食塩水、生理食塩水−グルコース混合液、リンゲル液、乳酸リンゲル液(lactated Ringer’s solution)、ロッケ−リンゲル液(Locke−Ringer’s solution)、クレブス−リンゲル液(Krebs−Ringer’s solution)、ハートマン平衡生理食塩水(Hartmann’s balanced saline)、ヘパリンリン処理(heparinized)クエン酸ナトリウム−クエン酸−デキストロース溶液、ならびにポリマー性血漿代用物(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、およびエチレンオキシド−プロピレングリコール縮合物)であり得る。本発明に従う各処方物は、不活性な成分(薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤、塩、および他の当該分野で周知の物質を含む)をさらに含有し得、その選択は、利用する剤形、処置される状態、当業者の決定に従って達成されるべき特定の目的、ならびにそのような添加物の特性に依存する。例えば、組換えの変異型ヘモグロビンに加えて、生理学的に受容可能な溶液はまた、0〜200mMの1つ以上の生理学的緩衝液、0〜200mMの1つ以上の糖質、0〜200mMの1つ以上のアルコールまたはポリアルコール、0〜200mMの1つ以上の生理学的に受容可能な塩、および0〜1%の1つ以上の界面活性剤、0〜20mMの還元剤を含み、そしてpHは6.7〜7.9である。より好ましくは、生理学的に受容可能な生理食塩水は、組換え副作用減少ヘモグロビンに加えて、0〜50mMのグルコン酸ナトリウム、0〜50mMの1つ以上の糖質(例えば、グルコース、マンニトール、ソルビトールまたは他の当該分野で公知の糖質)、0〜300mMの1つ以上の塩素塩、および必要に応じて0〜0.5%の界面活性剤(例えば、TweenTM[ポリソルベート80])、および/または0〜20mMのN−アセチルシステインを含む。なおより好ましくは、生理学的に受容可能な溶液は、組換えの副作用減少ヘモグロビンに加えて、0〜50mMのグルコン酸ナトリウム、0〜200mMの塩化ナトリウム、0〜25mMの塩化カリウム、および必要に応じて、0〜0.5%の界面活性剤(例えば、TweenTM[ポリソルベート80])、および/または0〜20mMのN−アセチルシステイン(pH6.9〜7.8)を含む。最も好ましくは、生理学的に受容可能な溶液は、組換えの副作用減少ヘモグロビンに加えて、24mMのグルコン酸ナトリウム、115mMの塩化ナトリウム、4mMの塩化カリウム、および必要に応じて、0.025%のTweenTM80、および/または9mMのN−アセチルシステイン(pH7.0)を含む。この最も好ましい生理学的に受容可能な溶液を、本明細書において「処方緩衝液」という。他の成分(例えば、還元剤、抗酸化剤、抗細菌剤、腫脹圧剤(oncotic pressure agent)(例えば、アルブミンまたはポリエチレングリコール)、および他の生理学的に受容可能な塩および糖)も、必要な場合には添加され得る。精製した組換え副作用減少ヘモグロビンの代替的な適切な処方物は、150mM NaCl、5mM リン酸ナトリウム(pH 7.4)の溶液中である。
組換え副作用減少ヘモグロビンの投与は、ヘモグロビンの使用目的に応じて、数秒間から数時間の時間で行ない得る。例えば、重篤な出血の処置のための酸素キャリアとして使用する場合、投与の通常の時間経過は、できるだけ迅速である。酸素治療剤としてのヘモグロビン溶液の代表的な注入速度は、約100ml/時間〜約3000ml/時間、好ましくは約1ml/kg/時間〜約300ml/kg/時間、最も好ましくは約1ml/kg/時間〜約25ml/kg/時間であり得る。
【0087】
(減少した心臓損傷および損傷を有さないヘモグロビン)
本発明の治療的適用における使用のための候補を、投与の間の心筋壊死の発生についてスクリーニングする。好ましくは、予備的なスクリーニングを、ウサギまたはブタのようなより感度の低い試験動物において行なう。しかし、ヒトに対する投与をより忠実に模倣するためには、感度の高い霊長類モデルであるアカゲザルを使用する。霊長類において、細胞外ヘモグロビン注入後に観察された心筋損傷は、主に左心室および/または隔壁において生じる細胞質の膨張および筋繊維の空胞化によって特徴付けられる、最少限から中程度の心筋の変性として、代表的に記載される。損傷は通常、分布において、局所性または多巣性である。しばしば、変性は、顆粒状のエオシン好性の変形した細胞質と相同性を示す、凝固性の筋繊維壊死の病巣と関連する。筋細胞の核の拡大化(巨核(karyomegaly))および最小限から穏和な程度の間質繊維症(interstitial fibrosis)もまた、変性性損傷と頻繁に関係する。
【0088】
解剖学的病理学を用いる心臓損傷の特徴を定量化するために、特に2つのパラメーターである発生率および重篤度を得る。発生率は、損傷形成の任意の証拠を示す心臓の数を、試験した心臓の数で割り算をしたものである(例えば、2/4)。重篤度は、0〜4の上昇するスケールにおける、評価する病理学者によって等級分けされた、損傷の強度および範囲の尺度である。程度1の損傷は最少であると考慮され、程度2の損傷は穏和であると考慮され、程度3の損傷は中程度であり、程度4の損傷は重篤である。所定のグループの組織標本において、全体的な平均重篤度スコアもまた、各罹患した心臓についての重篤度の程度を合計し、そして、その合計を、そのグループにおいて評価された心臓の総数で割り算することによって計算される。
【0089】
アカゲザルにおける野生型ヘモグロビンの約100mg/kgの効果のないレベルを越えると、用量応答関係が観察される(100%の発生率を用いて、700mg/kgで達成される)。慣用的なスクリーニングにおいて評価された最も高用量レベル(2000mg/kg)において、発生率および全体としての重篤度は、約700mg/kgで観察されたものと匹敵する。このことは、700mg/kgでの最大応答を示唆する(すなわち、最初の有効用量よりも実質的に高用量において、損傷の重篤度の増加は観察されない)。
【0090】
損傷の重篤度を定量的に試験するために、2000mg/kgの候補ヘモグロビンの注入後にアカゲザルにおいて形態計測研究を行ない得る。5匹以上の動物に対して、20mL/kg/の10%ヘモグロビン溶液を1.0mL/kg/分の速度で静脈内に注入する。動物を注入の7日後に屠殺して、心臓組織を回収して、固定し、切開し、そして形態計測分析によって試験する[Lilja、1992]。
【0091】
出願人は、表2に示すように、特定のヘモグロビンを大用量(2000mg/kg)でアカゲザルに投与した場合、顕著により少ない心臓損傷を生じることを、見出した。これらの減少した損傷のヘモグロビンは、代表的には、非常に低い一酸化窒素速度論(<5μM-1-1)を有するヘモグロビンである。さらに、中程度の一酸化窒素速度論(<15μM-1-1)を有し、そして重合されるヘモグロビンは、穏和な心臓損傷を生じる。従って、低い一酸化窒素速度論(<10μM-1-1)を有する、重合されるヘモグロビン変異体は、本発明における使用のための減少した損傷のヘモグロビンである。出願人はまた、非常に低い一酸化窒素速度論(<5μM-1-1)を有する、重合されるヘモグロビンが、損傷を有しないヘモグロビンとなることを見出した。特定の理論に拘束されることは全くないが、これらのヘモグロビンが周囲の組織への広範な血管外遊出を防ぐのに十分なほど大きく、そして血管外遊出する数個の分子が心筋繊維に対して比較的無毒であるという効果をもたらすのに十分に低い一酸化窒素速度論を有するということを提唱する。
【0092】
さらに、化学的架橋剤の変化、またはヘモグロビンの他の化学的修飾もまた、心臓損傷の発生を有害にもたらし得る。しかし、出願人は全体として、低い一酸化窒素速度論のヘモグロビンの重合化が、治療的組成物における使用のための、損傷を有さないヘモグロビンを産生する生産的な方法であることを見出した。出願人は、ヘモグロビンの一酸化窒素反応性を変化させる遺伝的方法を使用したが、他の方法(例えば、化学的修飾)も、同じ目的を達成するために使用され得ることが意図される。
【0093】
(減圧効果ヘモグロビンおよび低圧効果ヘモグロビン)
本発明における使用のための候補ヘモグロビンもまた、その血行速度論効果について試験される。出願人は、SDラット(Sprague Dawley rat)の最高量負荷(top−load)研究において、2000mg/kgが候補ヘモグロビンの血行速度論副作用を観察するのに有用であることを見出した。動脈の血圧を、動脈カテーテルを介して測定し、そして心臓の出力を、ラットに候補ヘモグロビンを注入した後の、上行大動脈でのパルスドップラーフロープローブ(pulsed Doppler flow probe)によって測定する。血圧データおよび血流データは、90分間の観察時間にわたる観察の平均である。総血管抵抗を、血圧変化を心臓出力の変化で割り算することによって計算する。
【0094】
図8から見ることができるように、ヘモグロビン分子の重合化およびヘモグロビンの一酸化窒素速度論は、ヘモグロビン組成物の昇圧効果を緩和する。例えば、比較的低い一酸化窒素速度論(<5μM-1-1)を有するSGE3011は、HSAと比較して、16mmHgの平均動脈圧力(MAP)の増加をもたらし、その一方で、グルタルアルデヒドで重合化したSGE3011は、ちょうど4.5mmHgの増加をもたらした。同様に、野生型の一酸化窒素速度論を有するrHb1.1は、中程度の一酸化窒素速度論を有する重合したSGE3653(17mmHg)よりもいくぶん大幅な増加(23±5mmHg)を示し、その結果、モノマーのSGE3011よりも大きな増加を示した。BMA−PEG重合化SGE3959によって示されるように、低い一酸化窒素反応性のヘモグロビンは、減少した昇圧効果のヘモグロビンであり得る。非常に低い一酸化窒素速度論を有するモノマーのまたはダイマー性のヘモグロビン(SGE3011およびSGE2971)もまた、減少した昇圧効果のヘモグロビンであり得る。しかし、出願人は、低い一酸化窒素速度論(<5μM-1-1)および重合化の両方が、低い昇圧効果のヘモグロビンを産生するために好ましいことを見出した。図8から見ることができるように、重合化したSGE3011およびSGE3959のみが、2000mg/kgの用量で、ベースラインを10mmHg未満越えるMAPの増加を生じた。
【0095】
(減少され低い胃腸効果のヘモグロビン)
本出願における使用のための候補ヘモグロビンはまた、胃腸の副作用に対して試験されるべきである。SDラット(Sprague−Dawley rat)における胃の排出度試験は、胃腸管の平滑筋の機能に対する細胞外ヘモグロビン溶液の効果の有効な測定であることが見出されている。この試験において、ラットに、試験ヘモグロビン溶液を投与し、液体食を無理矢理食べさせ、この食物を消化するまでの時間を与え見越し、次いで屠殺する。胃の中に残っていた液体食の量(胃および食物の重さ−胃単独の重さ)を、最初の食物の重さと比較して消化管を通過した食物の割合を評価する。この試験のプロトコールのより詳細な説明は、実施例11に提供される。
【0096】
図7から理解され得るように、ヘモグロビン分子の重合およびヘモグロビン一酸化窒素の動力学の両方は、胃腸の異常運動に対する効果を有する。例えば、SGE3011(これは、比較的低い一酸化窒素反応速度(5μM-1-1未満)を有する)は、HSAに比べてたった58.3%の胃の排出度を有し、一方、二量体SGE2971(同じ一酸化窒素の反応速度を有する)は、64.3%の減少度を示し、そしてグルタルアルデヒド重合化SGE3011は、86.6%の減少度を示した。同様に、rHb1.1(野生型の一酸化窒素の反応速度を有する)は、SGE2821(中間の一酸化窒素動力学を有する)よりはるかに少ない減少度(29.6%)を示し、これは、順番に、SGE3011よりも少ない減少度を示した。しかし、出願人は、低い一酸化窒素動力学(5μM-1-1未満)および/または重合化の両方が、減少されたかまたは低い胃腸効果のヘモグロビンを産生するために好ましいということを見出した。図7から理解され得るように、重合化SGE3011、SGE3959、およびSGE3937のみが、HSAの胃の減少度速度の20%内であった。
【0097】
(低い内毒素効果のヘモグロビン)
出願人らは、細胞外ヘモグロビン組成物(例えば、rHb1.1)の投与が、哺乳動物が内毒素に対して過敏になる原因となり、これが、以下の標準的なリポ多糖の確立されたLD50より十分に低いげっ歯類における高い死亡率を生成することを、観察した。この副作用をスクリーニングする目的で、出願人らは、BALB/cマウスに対する大用量の組み換えヘモグロビン候補組成物(1000mg/kg)およびリポ多糖(5mg/kg)の同時投与が、内毒素過敏性の適切な測定を提供することを見出した。同時投与後、このマウスを、48時間観察し、そして死亡率を測定する。この試験のより完全な説明は、実施例13に提供される。
【0098】
図10に示されるように、低い(15μM-1-1未満)または非常に低い(5μM-1-1未満)一酸化窒素の反応性を有するヘモグロビンは、天然の一酸化窒素との反応性を有するヘモグロビン(例えば、rHb1.1およびSGE3345)に比べて、減少した内毒素効果を示す。さらに、ニ量体化は、試験されたヘモグロビンの内毒素効果を減少させ、そして重合は、低い一酸化窒素反応性の変異体ヘモグロビンの内毒素効果を大いに減少させる。例えば、重合した低い一酸化窒素反応性の変異体SGE3653は、単量または重合した非常に低い一酸化窒素反応性のヘモグロビンSGE3011に類似した内毒素効果を有する。従って、減少した内毒素作用のヘモグロビンの生成は、非常に低い一酸化窒素反応性の変異体(<5μM-1-1)を使用することによるか、または重合化する低一酸化窒素反応性の変異体により達成され得る。
【0099】
(本発明の使用のための好ましい変異体ヘモグロビン)
減少した副作用を示す組み換えヘモグロビン変異体は、好ましくは、一酸化窒素とのその反応性の程度を減少させるヘムポケットの中かまたは周りに1ヶ所以上の変異を有する。さらに、これらのヘモグロビンの副作用をさらに減少させる目的で、1つの実施形態において、これらは好ましくは、重合した変異体ヘモグロビンを形成するために重合化され、65kDと650kDとの間の平均分子量を有する。1つの実施形態において、ヘモグロビンは、好ましくは、重合した変異体ヘモグロビンを形成するために重合化され、130kDと500kDとの間の平均分子量を有し、より好ましくは、190kDと350kDとの間の平均分子量を有する。別の実施形態において、ヘモグロビンは、好ましくは約40〜約60%の誘導体化単量体化ヘモグロビン(65kDと130kD未満との間の平均分子量を有する)、2つ以上のヘモグロビン様タンパク質を含み、130kDと650kDとの間の平均分子量を有するおよび約40〜約60%のオリゴマーヘモグロビンを含む。以下に概説されるように、いくつかのヘムポケット変異体は、低い一酸化窒素動力学から非常に低い一酸化窒素動力学を示すことが発見されている。
【0100】
ヘムは、鉄含有ポルフィリンであり、これは、タンパク質(例えば、ヘモグロビン、ミオグロビン、およびシトクロム)において置換基としての役割を果たす。ヘモグロビンにおいて、ヘムは、グロビンサブユニットにおけるEとFヘリックスとの間の間隙において見られる。ヘム鉄は、「近位」F8ヒスチジンのイミダゾール窒素に共有結合で結合され、一方、遠位E7ヒスチジンおよびE11バリンは、ヘムポケットに対して酸素のアクセス近くに見られる。ヘムポケット残基は、ヘム部分の最近隣の原子から最近隣の原子基底(6Å以内、そして好ましくは、4Å以内)上にある残基を含む(Fermiら(1984)J.Mol.Biol.175:159−174)。αグロビンに関して、ヘムポケット残基は以下を含み:
【0101】
【化31】
Figure 0005099951
そして、βグロビンに関して:
【0102】
【化32】
Figure 0005099951
を含む。
【0103】
第1殻の残基は、ヘム鉄原子および/または結合リガンドとの近接するかまたは直接接触したのでこれらの残基であり、一方、第2殻の残基は、このヘムまたはこの結合リガンドと直接接触していないが、第1殻の残基と直接接触している。用語「ヘムポケット残基」は、第1殻および第2殻の残基を含む。
【0104】
本発明において使用される減少した副作用のヘモグロビンを設計する際に、2つの独立したタンパク質工学の戦略を、使用して、リガンド親和性および反応速度を変更した:(1)それぞれ、このサブユニットの遠位ポケットにおいて新規置換を作製することによる、固有の動力学ならびに一酸化窒素および酸素の親和性の操作、(2)ヘム基から離れたキーポイントでの変異を有するアロステリックなR/Tの平衡の位置調整。ヘモグロビンのアロステリック性の変化は、酸素結合反応速度および親和性に対して特異的であり、そしてR/T平衡は、一酸化窒素除去に対する効果を有さない。遠位ポケットの置換は、立体障害および水素結合を変えることにより一酸化窒素および酸素の侵入速度および退出速度に影響する。
【0105】
従って、本発明の減少された副作用のヘモグロビン中に含めるためのアミノ酸変異を同定するための一般的な戦略は、以下に示される:
a)α、β、またはδグロビンサブユニットの遠位ヘムポケットにおいて1つ以上のアミノ酸置換を引き起こす変異を作製すること;
b)これらの変異を含むDNAフラグメントを適切な発現ベクターに組み込み、次いで、このベクターを適切な宿主細胞に導入すること;
c)この宿主細胞を培養して、可溶性ヘモグロビンを発現させ、続いてこのヘモグロビンを精製すること;
d)一酸化窒素を用いて精製ヘモグロビンのインビトロ反応性を測定すること;
e)適切なα変異を選択して、適切なβ変異またはδ変異と対にすること;
h)必要に応じて、他の変異を選択して、P50または酸素分離速度を調整すること;
i)酸素送達および血流力学データに関してインビボ試験すること;ならびに
j)必要とされる場合、減少された副作用および酸素送達の保持を実証するために試験を実行すること。
【0106】
上記に詳述されたアミノ酸変異を同定するための一般的な戦略は、α、β、またはδグロビンサブユニットにおける変異選択のためのプロセスを示す。しかし、この戦略は、他のグロビンサブユニット、例えば、γグロビン、εグロビン、および/またはζグロビン(これらは、本発明の範囲内である)における変異を同定することにもまた、適用可能である。
【0107】
本明細書中または以下の抗凝集変異体の節に記載される任意の変異は、当該分野で公知である多数の方法によって達成され得る。変異は、所定のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列の変更によって、コドンレベルで作製され得る。タンパク質の任意の所定の位置におけるアミノ酸置換は、特定のアミノ酸に関してコドンを変更することによって達成され得る。この置換は、例えば、(1)Taylorら、Nucl.Acids.Res.(1985)13:8749−8764;Taylorら(1985)Nucl.Acids.Res.13:8764−8785;NakamayeおよびEckstein(1986)Nucl.Acids.Res.14:9679−9698;ならびにDenteら、DNA Cloning、Glover、編、IRL Press(1985)791−802頁の方法に基づくAmershamの技術(Amersham変異誘発キット、Amersham,Inc.,Cleveland,Ohio)、(2)Promegaのキット(Promega Inc.,Madison,Wisconsin)、または(3)Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488;Kunkelら(1987)Meth.Enzymol.154:367;Kunkel、米国特許第4,873,192号の方法に基づくBioradのキット(Biorad Inc.,Richmond,California)を用いた部位指向型変異誘発によって達成され得る。これはまた、変異誘発を達成するために変異オリゴヌクレオチドを用いる部位指向型変異誘発技術または以下の実施例に記載されるような部位指向型変異誘発技術を組込む、他の市販の手段または市販されていない手段によって達成され得る。
【0108】
部位指向型変異誘発はまた、例えば、Zhengbinら、205−207頁、PCR Methods and Applications,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1992);JonesおよびHaward(1990)BioTechniques 8(2)178(1990);JonesおよびHaward、BioTechniques 10:62−66(1991)に記載されるような、または以下の実施例に記載されるようなPCRベースの変異誘発を用いて達成され得る。部位指向型変異誘発はまた、当業者に公知である技術を用いてカセット変異誘発を使用して達成され得る。
【0109】
任意の適切な宿主細胞は、所望の変異を含むプラスミドを用いて当業者に公知の方法または以下の実施例に記載されるような方法によって形質転換され得る。適切な宿主細胞としては、例えば、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、哺乳動物細胞、および昆虫細胞が挙げられる。E.coli細胞は、新規変異体ヘモグロビンを発現するのに特に有用である。好ましくは、複数サブユニットが細菌で発現される場合、米国特許第5,559,907号に記載されるように、サブユニットがポリシストロン的に同じ細胞中で同時発現されることは望ましいが、必要ではない。E.coliにおいて、所望のタンパク質をコードする遺伝子の発現を駆動する単一プロモーターを使用することが、好ましい。
【0110】
一酸化窒素とオキシヘモグロビン形態の変異体との反応は、しばしば、このヘモグロビンテトラマー中の2つのサブユニット型の異なる反応性に起因して、二相性の反応時間経過を生じる。2指数関数へこれらの反応時間経過を適合させることは、野生型サブユニットおよび変異体サブユニットの両方の反応速度を生じる。このプロセスを大多数の変異体構築物に関して反復することによって、各サブユニット型中の多数の変異体は、広い範囲の一酸化窒素反応性に対する速度定数(k’NO,OX)を示すことが同定された。本発明の使用に対して好ましい減少された副作用のヘモグロビンは、従来のヘモグロビンよりも小さい、一酸化窒素とオキシヘモグロビンとの反応に関する速度定数(k’NO,OX)を有するはずである。好ましくは、この速度定数は約20μM-1-1未満であり、より好ましくは15μM-1-1未満であり、より好ましくは10μM-1-1未満であり、そして最も好ましくは5μM-1-1未満である。大多数の変異体を精製およびスクリーニングした後、以下のリストのαおよびβグロビン変異体とδグロビン変異体のその組合わせは、本発明において特に今後の使用に対して、従来のヘモグロビンと比較して十分に減少された一酸化窒素反応性を有する(変異体サブユニットが対応するネイティブなヘモグロビンサブユニットと対にされる際に測定された場合、約20μM-1-1より下)として同定された。太字での変異は、非常に低い一酸化窒素反応性の変異体(αで約3μM-1-1およびβで約3〜6μM-1-1)であるとみなされ、これらは、通常、合わされた場合、非常に低い反応性のヘモグロビン(5μM-1-1未満)を生成する。
【0111】
【化33】
Figure 0005099951
Figure 0005099951
上記の代表的な一酸化窒素変異体のリストは、網羅的であることが意図されない。減少された副作用のヘモグロビンの産生を生じるα、β、δ、ε、γおよび/またはζに対する任意の変異は、本発明の範囲内である。変異を参照するために使用される指定は、最初にへリックス、次いでこのヘリックス内の残基数、続いて野生型アミノ酸および置換アミノ酸を同定する。例えば、E11(Val→Leu)は、Eへリックスの11番目の残基をいい、ここで、野生型バリンは、ロイシンで置換される。特定の理論に束縛されないが、無細胞ヘモグロビン投与後に、グアニリルシクラーゼと鉄オキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンとの間に利用可能な一酸化窒素に関する競合が存在する(必要とされ得る内皮へまたは内皮を介したヘモグロビンの管外遊出)と考えられる。一酸化窒素とのより低い反応速度を有するこれらの組換えヘモグロビンは、一酸化窒素に対してあまり強力でないコンペティターである。結果として、本発明の減少された副作用のヘモグロビンは、これらが一酸化窒素の天然の代謝回転にほとんどまたは全く摂動を産生しないが酸素に結合して酸素を送達し得るままの場合、その本質的な比較的低い反応性に起因して種々の適用に有用である。
【0112】
上記のαグロブリン変異体のいずれもが、任意の上記のβまたはδグロブリン変異体と組み合わせられ得るか、または上記のαグロブリンのいずれもが既知のβまたはδグロブリンと組み合わせられて、そして逆に副作用減少ヘモグロビンの産生の所望の動態を獲得し得る。さらに、βグロブリンについて同定された任意の変異体がδグロブリン、γグロブリンまたはイプシロングロブリンに作成されて、副作用減少ヘモグロビンの産生の所望の動態を獲得し得ると考えられる。同等に、αグロブリンについて同定された任意の変異体がΖグロブリンに作成され、副作用減少ヘモグロビンの産生の所望の動態を獲得し得ると考えられる。出願人らは、また、ジ−αヘモグロビン構築物における上記の変異体を、変異ヘモグロビンの解離を防止するために、αβダイマー(二量体)中に配置することが有利であることを見出した。また、ジ−ジαおよびより大きい、遺伝子融合されたヘモグロビンは、上記の変異体の任意の組み合わせで作成されて、高分子量で低一酸化窒素反応性のヘモグロビンを産生し得る。
【0113】
本出願人らはまた、一酸化窒素除去を減少するために用いたアミノ酸置換が酸素送達に所望されない影響を有する場合、酸素解離のP50および率が、他の戦略上配置されたアミノ酸置換によって「補正(corrected)」され得ることも実証した。無細胞正常ヒトヘモグロビンAOのP50(<10)は、血液組織に対して酸素を効率的に送達し、そして血液代用品として機能するには低すぎる。好ましくは、本発明の副作用減少ヘモグロビンは、20〜50、より好ましくは25〜45の範囲のP50を有する。従って、この肺胞酸素分圧では、副作用減少ヘモグロビンは、肺に酸素を取り込み、そして酸素を身体の離れた組織に効果的に送達し得る。酸素動態および平衡は、アロステリック平衡の位置を変化することにより、またはサブユニットの本質的な結合動態および親和性を変更することにより、操作され得る。遠位ヘムポケット(heme pocket)から離れた変異を用いて、高い親和性の「R」および低親和性の「T」アロステリック状態の相対的安定性を変化し得る。この状態は、ヘモグロビンの酸素親和性を低下または増大させ得る。酸素親和性を増大および減少させることが公知の変異体のリストは、本明細書において参考として援用される、米国特許第5,028,588号に見出され得る。ヘモグロビンアロステリック性は、酸素結合に有意な効果を有するが、一酸化窒素除去には影響を有さない。
【0114】
変異体の以下の組み合わせは、所望の一酸化窒素反応動態を有し、そしてP50を変更する他の変異体を含む:
【0115】
【化34】
Figure 0005099951

【0116】
さらに、以下のような、ハイブリッドジ−α’s(ここでは2つの異なるαヘムポケットが同じジαの遺伝子的に融合されたサブユニット内で組み合わせられている)が、用いられ得る:
【0117】
【化35】
Figure 0005099951

【0118】
上記に列挙した最初の2つのジ−αサブユニットは、αグロビンドメインの間に単一のグリシンリンカーを有する。示されるように、第三および第四のジ−αサブユニットは、それぞれ、αグロブリンドメインの間に2つおよび3つのグリシン残基を含むリンカーを有する。これらのジ−αサブユニットは、種々の変異体βおよび/またはδサブユニットと組み合わせられ、本発明のヘモグロビン組成物を産生し得る。
【0119】
ヘモグロビン変異体のP50を治療剤としての使用に受容可能なレベルまで偏向する変異体に加えて、他のさらなる変異体が所望され得る。例えば、細菌宿主において可溶性ヘモグロビン発現のレベルを増大する変異体(例えば、bD73E、bK82D、およびbK82G)が、単独および組み合わせて、上記のヘモグロビンに追加され得る。発現の考察をさらに通じて、変異体を強化することはWO98/50430に見出され得る。さらに、出願人らは、変異体βK82D(プロビデンス(Providence)変異体)を有するヘモグロビンは血清リパーゼレベルが低いことを発見した。
【0120】
(本発明のヘモグロビンを架橋すること)
哺乳動物のヘモグロビンは、一般に2つのαグロビンサブユニット(α1、α2)および2つのβグロビンサブユニット(β1、β2)からなるテトラマー(4量体)である。α1とα2の間、またはβ1とβ2の間には配列の違いはない。ヘモグロビンのサブユニットは、ファンデルワールス力、水素結合、およびデオキシヘモグロビン(酸素を運ばないヘモグロビン)について、塩架橋によって非共有結合的に会合されている。4量体ヘモグロビンは、α1β1およびα2β2の二量体に解離され、これは腎臓ろ過により血流から排除されことが公知である。改変されていない哺乳動物ヘモグロビン二量体のこの腎臓ろ過は、腎不全および死亡につながり得る。ヘモグロビン二量体は、容易に組織中に浸出し得、そして循環系から失われ得る。ヘモグロビンの血管内保持は、例えば、ジ−αまたはジ−βサブユニットにおけるテトラマーのサブユニットの遺伝子融合(Hoffman,S.JおよびNagai,K,米国特許第5,028,588号、Hoffmanら、米国特許第5,545,727号、ならびにAnderson Dら、米国特許出願第789,179号(1991年11月8日出願))によって教示されるように、あるいは単一のテトラマー内または2つ以上のテトラマーの間のサブユニットの化学的架橋(とりわけ;Bonhard,LおよびKothe,N.米国特許第4,777,244号;Bonhard,KおよびBoysen,U、米国特許第4,336,248号;Bonsen,Pら、米国特許第4,001,401号、同第4,053,590号および同第4,001,200号;Bucci,Eら、米国特許第4,584,130号;Feller,W.,ら、米国特許第4,920,194号;Feola,Mら.,PCT公開PCT/US90/07442;Garlick、R.L.ら、PCT公開PCT/US91/07155;Ilan,Eら、EP公開EP0361719;Iwasaki,Kら;米国特許第4,670,417号および欧州特許EP0206448;Kluger,RおよびWodzinska,J.,PCT公開PCT/CA92/00221および米国特許第5,250,665号;Kothe,Nら、米国特許第3,525,272号;Morris,K.C.ら、米国特許第4,061,736号;Pepper,D.S.およびMcDonald,S.L.,EP公開EP0459788;Scannon,P.J.,米国特許第4,473,496号;Sehgal,L.R.ら、米国特許第4,826,811号;Tye,R.W.米国特許第4,529,719号;Walder,J.A.米国特許第4,598,064号および同第4,600,531号、ならびにIlan,E.欧州特許EP0361719)によって、改善されている。1つの方法では、化学架橋は、脂肪族ジアルデヒドの使用によって達成される。ジアルデヒドは、NH2基との反応によってタンパク質を架橋してシッフ塩基を形成する。詳細には、グルタルアルデヒドは主にアミン(タンパク質上でリジン残基のN末端アミンおよびε−アミンとして利用可能である)を修飾する。ヘモグロビンのX線結晶回析は、N末端ならびにβおよびジ−αサブユニットそしてリジン残基のほとんどが、ヘモグロビン分子の表面に存在し、そして架橋と反応するのに利用可能であることを示す。多数の反応パラメーターが最終産物の特性に影響する。これらのパラメーターは、当業者に公知であり、そして、ヘモグロビン濃度、架橋分子の長さ、反応が行われるpH、反応の温度、反応させておく時間、および架橋に対するヘモグロビンのモル比が挙げられる。これらの形態のいずれにおいても、α1β1およびα2β2のダイマーへのヘモグロビンの解離が防止され、従ってこのタンパク質の血管内保持が増大し、腎毒性が低下する。
【0121】
既に述べたように、本発明で用いた組み換えヘモグロビンは、好ましくは、当該分野で公知の方法によって分子内で架橋されるか、または二量体(ダイマー)を形成する遺伝子的に融合されたグロビンサブユニットまたはより上位のヘモグロビン(例えば、ジ−ジ−αサブユニット)を含み得る。これらのヘモグロビンは、好ましくは、本発明に従って用いられ、血管外滲出の制限、またはヘモグロビン組成物のコロイド浸透圧を減少するのを補助する。出願人らは、非常に低い一酸化窒素動態だけでは、時にはヘモグロビンを産生するのに十分でないことを見出した(これは無傷で、胃腸効果が減弱されているか低く、または昇圧効果が低い)。しばしば、滲出を防ぐためにヘモグロビンの平均分子サイズの増大がまた必要である。2つのジ−αサブユニット(ジ−ジαヘモグロビン)の遺伝子融合を通じたヘモグロビンの二量体化は、本発明において用いられるヘモグロビンの副作用を減少するが、この方法では、通常、心病変、血圧、または胃腸の副作用に関しては副作用の少ないヘモグロビンを産生しない。従って、低い一酸化窒素反応性のヘモグロビンの重合化を用いて、より好ましい副作用の低いヘモグロビンを産生する。さらに、ラットの血圧実験(図8および9を参照のこと)において例証したように、重合化を用いて、好ましい一酸化窒素動態に乏しいヘモグロビンモノマー(単量体)から副作用減少ヘモグロビンを産生し得る。
【0122】
本発明の1つの実施形態において、重合化したヘモグロビンは、130kDと500kDとの間、より好ましくは190kDと350kDとの間の平均分子量を有することが好ましい。図12(グルタルアルデヒド重合化SGE3011)、図13(ビスマレイミドポリエチレングリコール(BM−PEG)重合化SGE3937)、および図14(4M−ペンタエリトリオール重合化SGE3927)は、本発明のこの実施形態のヘモグロビン組成物についての分子量プロフィールを例示する。セプタマー(septamer)形態へトリマー中のほとんどのヘモグロビンを含むこの実施形態の組成物は、副作用減少ヘモグロビンとして機能する。好ましくは、この実施形態のヘモグロビン組成物の1/3未満がヘモグロビンダイマーおよびモノマーを含む。より好ましくは、ヘモグロビンダイマーは、20%未満のヘモグロビン組成物を含み、そしてヘモグロビンモノマーは、5%未満のヘモグロビン組成物を含む。20マーサイズ以上の高分子ヘモグロビンポリマーは、血球の凝集および他の生物学的問題を生じ得る。従って、このヘモグロビン組成物は、好ましくは受容可能な量の20マー以上のヘモグロビン種を含まない。
【0123】
さらに別の実施形態において、重合化ヘモグロビンが、65kDと650kDの間に平均分子量を有することは好ましい。より好ましくはヘモグロビン組成物は、40%と60%の分子量分布を有し、65kDと130kD未満の間の範囲における誘導体化された単量体のヘモグロビンおよび130kDと650kDの間の範囲におけるオリゴマーのヘモグロビンとして残りを有する。図15、BMA−PMG重合化SGE3959、および図16、BMA−PMG重合体化SGE3487は、本発明のこの実施形態のヘモグロビン組成物のための分子量プロファイルを示す。BMA−PEGを有するヘモグロビンの重合体化は、PEG修飾(例えば、PEGで誘導体化されたヘモグロビン)の種々の程度を有する重合体化ヘモグロビンの異質な組成物および分子内PEG交差結合ならびに分子外PEG交差結合に起因する。ヘモグロビン単量体のモルあたりPEG分子のモルの平均比は、一般に2から1と11から1の間である。より好ましくは、約3から約1である。上で記載された実施形態のヘモグロビンに対して、この実施形態の組成物は、三量体形態のための単量体におけるヘモグロビンの大多数を含み、還元型副次的ヘモグロビンとして機能する。好ましくは、この実施形態のヘモグロビン組成物の約80%は、ヘモグロビン二量体およびヘモグロビンモノマーを含む。より好ましくは、ヘモグロビン単量体は、ヘモグロビン組成物の約50%を含み、そしてヘモグロビン二量体は、三量体、およびより高いオーダーのマルチマーを含むヘモグロビンの残りを有するヘモグロビン組成物の約30%を含む。しかし、上の実施形態における記載のような、20マーサイズ、またはより大きい高分子ヘモグロビンポリマーを見出した出願は、血球の凝集および他の生物学的な問題を起こす。従って、ヘモグロビン組成物は、20マー、またはより大きいヘモグロビン種を感知できる量を含まない。
【0124】
種々の架橋剤は、本発明のヘモグロビンの重合化に使用され得る。一般に、本出願者は、任意の生物学的に不活性な親水性架橋剤が、重合化剤として使用に適することを見出した。本出願者によって使用される一つのクロスリンカーは、グルタルアルデヒドである。これは、表面リジン基間のヘモグロビン分子を交差結合する。実施例6は、還元型または低副次的ヘモグロビンの産生のためのグルタルアルデヒド架橋の手順を例証する。他のグルタルアルデヒド架橋のためのプロトコールは、公知である。低一酸化窒素反応性ヘモグロビンのグルタルアルデヒド交差結合は、グルタルアルデヒド重合化SGE3011で例示したように、低副次的ヘモグロビンを産生するが、交差結合の最も好ましい方法ではない。天然のヘモグロビン分子および大部分の変異ヘモグロビンは、グルタルアルデヒド架橋剤が反応できる42の表面リジン基を有する。そして、上記を指摘すると、グルタルアルデヒドはまた、サブユニット間でヘモグロビンに分子内で架橋する。これは、非常に化学的に異質な産生物を生じる傾向にある。公知のグルタルアルデヒド架橋ヘモグロビンはまた、実験室での試験において免疫原性反応を起こし、そしてそれらの免疫原性を減らすために単量体ヘモグロビンおよび非常に大きいヘモグロビンポリマーから精製される。従って、より指向なかつ部位特異的な架橋剤は、本発明のヘモグロビンの産生に好ましい。
【0125】
スルフヒドリル反応性架橋剤は、重合化に好ましいことが証明されている。正常では、2つのヘモグロビンシステイン基だけが、β93残基と反応する。従って、メルカプト交差結合のための2つの部位だけが、天然にヘモグロビン分子に存在する。この表面システインの除去、そしてシステイン残基に別の表面アミノ酸残基を変異することによって、種々の特異的な架橋部位は、ヘモグロビン分子(SGE3937において使用したポルトアレグレ(Porto Alegre)部位(S9C)を含む)に生じ得る。表面システイン変異部位のための示唆、および基準の選択に関する考察は、米国特許番号第5、884、089号(本明細書中に参考として援用される)に見られる。さらに、ジ−αサブユニットにおける非対称性または対称性のシステイン変異は、交差結合し得る。これらのシステイン残基は、互いに酸化的に交差結合し得る。あるいは、いくつかのメルカプト特異的架橋剤は、タンパク質上のシステイン残基に使用のために開発される。ビスマレイミドポリエチレングリコールは、SGE3959(βC93に)、SGE3487(βC93に)、およびSGE3937(βS9Cに)を重合化するための実施例7、21、および22において記載され、出願者によって使用される。さらに、他のメルカプト反応性試薬(例えばビニルスルホン)、およびペンタフルオロベンゼンは、本発明において組換えヘモグロビンの表面システインの交差結合に使用される。
【0126】
本発明のヘモグロビンの重合化のために使用されるリンカーは、種々のサイズがあり得る。単量体の環状化が、同じヘモグロビン上のシステインを有するクロスリンカーの両方のメルカプト反応性基の反応によって、避けられる場合、短いリンカー(例えば、BM(PEG)3)は、有用であり得る。短いリンカーが使用される場合、短いリンカーは、立体的歪みを防止するために交差結合されたヘモグロビン間の距離の測定を必要とする。2つのヘモグロビン間のβS9C部位の結合において、例えば、長さ約14から約17オングストロームのリンカーが使用される。二機能性のクロスリンカーに加えて、多機能性クロスリンカーは、本発明のヘモグロビンの産生に同様に使用され得る。例えば、本出願者は、実施例20に記載されるtetrakis−(3−マレイミドプロピル)ペンタエリスリトール(4つの腕をもった多機能性リンカー薬剤)を使用して、ジαサブユニットにおける非対称性システインにSGE3927を重合化した。この分子を有する交差結合は、一次的三量体重合化ヘモグロビンを生じる。出願者は、おそらく、交差結合における立体干渉を克服するために、三量体産生物を生じるより長い「腕」を有するリンカーの使用を予想する。多機能性/非対称性ジα変異ストラテジーの利点は、より同質のヘモグロビン組成物が得られることである。本出願者は、図14で例証されるように、単一の種の70%を越えて得られる。他のスルホニル反応性基(例えば、ビニルスルホン(例えば、テトラ(ビニルスルホン)PEG、またはグリセロール(PEG−ビニルスルホン)3)を有する多機能性リンカーもまた、使用される。
【0127】
(血液代用物としての還元型副次的ヘモグロビンの投与)
本発明は、任意の適用(酸素運搬が所望される、または赤血球が使用される)のために赤血球の代用物として有用である組成物において還元型副次的ヘモグロビンの使用に提供される。還元型副次的ヘモグロビンはまた、酸素を運搬する治療薬として処方される、ならびに出血、外傷、および外科(血液を失ったおよび液量かまたは酸素運搬能力または両方が代用され得る)の処置に使用される。還元型副次的ヘモグロビンはまた、(患者の血液が除去された、および手術の最後、もしくは回復の間(急性正常血液量血液希釈(acute normovolemic hemodilution)または血液増大(hemoaugmentation))の再融合のために保管される)外科手術の間に除去された血液の代用として使用される。さらに、即時発明の還元型副次的ヘモグロビンは、いくつかの提供された酸素運搬能力を代用する操作によって、血液量を増加するのに使用される。この血液は、手術のまえに前提供されたものである。さらに、即時発明の還元型副次的ヘモグロビンは、薬剤容認性を有し得るため、それらは、酸素を運搬する血液代用物としてではなく、大きいヘモグロビンタンパク質分子の存在による腫張圧力を提供する簡単な容量エキスパンダとして使用される。
【0128】
本発明に従って血液代用物としての還元型副次的ヘモグロビンの使用のための指針として、還元型副次的ヘモグロビンの10%溶液は、所望される全患者血液量に対して1ml/kg/時間の割合で注入される。患者を処置する当業者が、所望される全患者血液量について決定する。外傷の設定における緊急輸血の場合において、正常血液量を維持するように、注入される量は、およその失った血液量である。しかし、手術前の環境において、組換え還元型副次的ヘモグロビン溶液は、クリスタロイド溶液と同様に使用される。組換えヘモグロビン溶液の患者体重のキログラムにつき約1mlと約100mlの間の組換え還元型副次的ヘモグロビン溶液の量は、ボーラス注射として、または連続的な注入として、静脈内または動脈内に投与され、所望の多血状態を誘導する。手術のための準備において心臓ポンプまたは他の機械を準備して使用する場合、組換えヘモグロビン溶液は、全体の血液と同様に使用される。さらに、血液代用組成物は、他のエキソビボの装置(酸素が所望される、例えば、移植のための酸素灌流のような)において使用され得る。
【0129】
(血液量不足症またはショックの処置のための還元型副次的ヘモグロビンの投与)
本発明の一つの実施形態において、本発明の組換えヘモグロビンを含む薬学的な組成物は、同時発生するショックを伴う、または伴わない血液量不足の状態、または出血状態の処置に使用され得る。さらに、これらの組成物は、心臓性のショックの処置に使用され得る。この能力におけるこれらの組成物の有用性は、正常血液状態が、薬学的に有益な量における酸素の運搬と患者の血圧を維持するために十分な腫張圧力の提供の両方を行う溶液で回復し得るという事実に由来する。さらに、本発明の好ましい実施形態において、還元型副次的ヘモグロビンを含むことは、心臓損傷を産生せず、または侵圧性効果を調節する一酸化窒素を誘導する。
【0130】
血液量不足症または血液量不足症のショックの処置のための一般的な処置として、約50−約100mlから10%還元型副次的ヘモグロビンの失った血液量を推定された全量までは、ボーラスとして静脈に注射される。好ましくは、還元型副次的ヘモグロビンは、体重の約100から約7500mg/kgの容量、より好ましくは、体重の約500から約5000mg/kgの容量、最も好ましくは、体重の約700から約3000mg/kgの容量を投与される。還元型副次的ヘモグロビンは、好ましくは、ショック状態の発生から最初の3時間の間に投与される。還元型副次的ヘモグロビン溶液は、最も好ましくは、最初のうちに、または減少した酸素運搬の持続時間を最小化するショック状態の「ゴールデン」時間に注射される。血圧カフ(Cuff)は、安定化するまでルーチンな間隔で測定される。他の心肺のパラメーターはまた、標準的な診断に従って測定される。他の標準的な治療薬は、所望され、または示されるように投与され得る。急性血液量不足症の場合、還元型副次的ヘモグロビン溶液の再投与、または患者の系における還元型副次的ヘモグロビン保持のウィンドウ内にある全血液の輸血は、必要であり得る。
【0131】
心臓性ショックの状態の処置のための指針としては、開業医は、一つ以上の50ml(5000mg)IVボーラスを注射する、および/または所望する効果を達成、ならびに維持するために1ml/kg/分の割合で10%ヘモグロビン溶液(または、当量)の6000ml(300g)までを注入する。還元型副次的ヘモグロビンは、最も好ましくは、減少した灌流の持続時間を最小化するショック状態の発生後できるだけ早く投与される。血圧は、ピーク圧力が得られるまで投与後15分毎に(直接的または非直接的に)測定される。他の心肺のパラメーターは、標準的な診断に従って測定され得る。他の標準的な治療薬は、所望され、または示されるように投与され得る。
【0132】
(発作、虚血、または組織損傷を処置するために、組織灌流を増加するための副作用減少ヘモグロビンの投与)
本発明の別の局面は、組織の灌流に、詳細には、組織灌流を増加するために低用量でのヘモグロビンの治療的使用に関する。灌流は、動脈および毛細管を通じて血液または適切な流体を介して酸素および栄養とともに器官または組織に供給している。流れは、圧力対抵抗の比として表現され得る。適切な酸素および栄養が組織および器官に到達していない場合、灌流を改善するための治療法が使用され得る。本発明は、哺乳動物における灌流を治療的に増加するための方法を提供し、これは、体重1kg当たり約30mg〜約15,000mgの範囲の用量で、副作用減少ヘモグロビンを投与する工程を包含する。好ましくは、副作用減少ヘモグロビンは、体重1kg当たり約100mg〜約7,500mg、より好ましくは、体重1kg当たり約500mg〜約5,000mg、最も好ましくは体重1kg当たり約700mg〜約3,000mgの用量で投与される。
【0133】
本発明の好ましい副作用減少ヘモグロビンを使用する利点は、組織の灌流が、一酸化窒素媒介機能亢進効果も心臓損傷の作製も誘導することなしに、増加され得ることである。組織灌流における増加は、比較的小さなヘモグロビン分子が、赤血球ができない血塊および閉塞をバイパスする能力に部分的に起因する。しかし、出願人は、これらをこれらの作用の理論に限定せず、増加した灌流効果のための他の機構のあり得る存在を意図する。
【0134】
組織灌流を増加するための本発明の使用は、多くの臨床的な意味を有する。最初の適用は、血塊の遠位で脳組織酸素添加を可能にするために、自然にまたは治療的介在によって溶解するまで、発作患者においてである。組織虚血の他の例(特に、心筋虚血の場合)は、本発明によって提供される増加した組織灌流から利益を得る。組織損傷(例えば、やけどおよび損傷)にさらされている患者が、損傷の修復のための利用可能な酸素を増加する、損傷した組織の増加した灌流から大きな利点を得ることができることもまた発見されている。
【0135】
臨界的な注意の設定における適切な灌流を維持するためのヘモグロビンの使用は、体重1kg当たり最小約30mgのヘモグロビンを送達するために、晶質/ヘモグロビン溶液のゆっくりした注入を包含する。投与される用量は、正常な生理学的レベルにおよそ等しい平均動脈血圧を生じるべきである。本明細書中で使用される場合、用語、血圧は、平均動脈血圧を意味する。
【0136】
発作状態における灌流を増加するため、あるいは他の虚血または組織損傷を処置するための患者の処置のためのガイドラインとして、少なくとも200ml(20mg)の10%副作用減少ヘモグロビン(または等価物)は、所望の灌流効果を達成しそして維持するために、1ml/分の速度で静脈内に注入されるべきである。組換えヘモグロビン溶液の投与は、発作の例において、減少した脳の灌流の期間を減少させるための脳血管発作に続く、できるだけ初期に始めるべきである。他の虚血障害を処置する場合、ヘモグロビンの注入は、虚血事象の発症の後にできるだけ迅速に同様に投与されるべきである。心肺パラメーターは、標準的な実施に従ってモニターされ得る。他の標準的な治療は、望ましい場合または示した場合に投与され得る。
【0137】
(鎌状赤血球貧血患者の管理における副作用減少ヘモグロビンの投与)
(鎌状赤血球発症)本発明に従う酸素運搬ヘモグロビン治療として副作用減少ヘモグロビンの使用のためのガイドラインとして、ヘモグロビンの10%溶液は、100〜3,000mlのボーラス投与として静脈内に注射されるべきである。ヘモグロビン溶液は、トップロード(topload)(血液容量を提示することに加えて)として、あるいは容量置換(例えば、血液損失、容量交換または急性標準容量血液希釈)として、のいずれかで投与され得る。鎌状赤血球貧血患者を評価する医師介護者は、鎌状赤血球発症(血管閉塞発症)の患者の提示においてすぐにヘモグロビン溶液とともに治療を開始する。あるいは、ヘモグロビン療法は、急性鎌状赤血球発症の発展についての関連する合理的な見込みを有する別の病気(例えば、感染、熱、低酸素)を被る鎌状赤血球貧血患者の提示において開始される。ヘモグロビンは、組織および重要な器官への酸素送達を向上する治療目的で投与される。望ましい有益な終点は、以下が挙げられる:疼痛の軽減;鎮痛薬物療法のための減少した必要性;短縮された病院収容;肺合併症(例えば、急性胸(chest)症候群)の回避または減少;ならびに主要な末端器官血管閉塞事象(例えば、急性虚血発作)の回避または減少。
【0138】
(急性鎌状赤血球発症に関連する急性虚血発作)本発明に従う酸素運搬ヘモグロビン療法としての副作用減少ヘモグロビンの使用のためのガイドラインとして、ヘモグロビンの10%溶液は、100〜3,000mlのボーラス投与として静脈内に使用されるべきである。ヘモグロビン溶液は、トップロード(血液容量を提示することに加えて)として、あるいは容量置換(例えば、容量交換または急性標準容量血液希釈)として、のいずれかで投与され得る。鎌状赤血球貧血患者を評価する医師介護者は、鎌状赤血球発症(血管閉塞発症)と関連する、鎌状赤血球発症(血管閉塞発症)の患者の提示においてすぐにヘモグロビン溶液とともに治療を開始する。ヘモグロビンは、脳の虚血領域への酸素の送達を向上する治療目的で投与される。所望の有益な終点は、急性虚血発作症状の発現に関連する神経学的後遺症、病的状態および死における有意な減少を含む。
【0139】
(鎌状赤血球貧血患者の予備手術準備)本発明に従う酸素運搬ヘモグロビン療法として副作用減少ヘモグロビンの使用についてのガイドラインとして、ヘモグロビンの10%溶液は、100〜3,000mlのボーラス投与として静脈内に注射されるべきである。ヘモグロビン溶液は、トップロード(血液容量を提示することに加えて)として、あるいは容量置換(例えば、血液損失、容量交換または急性標準容量血液希釈)として、のいずれかで投与され得る。鎌状赤血球貧血患者を評価する医師介護者は、選択的な手術または緊急手術の前に、ヘモグロビン溶液を用いて治療を開始する。ヘモグロビンは、鎌状赤血球発症(血管閉塞発症)の促進の予防のために組織および重要な器官に酸素送達を増強する治療目的で投与される。望ましい有益な終点は、以下が挙げられる:手術後鎌状赤血球発症の予防;鎮痛薬物療法のための減少した必要性;短縮された病院収容;肺合併症(例えば、急性胸症候群)の回避または減少;ならびに主要な末端器官血管閉塞事象(例えば、急性虚血発作)の回避または減少。
【0140】
(虚血の処置、造血の刺激、および悪質液を軽減するための副作用減少ヘモグロビンの投与)
本発明はまた、哺乳動物における造血を刺激する方法に関し、治療的に有効な量の基本的に純粋な副作用ヘモグロビンの投与を包含する。副作用減少ヘモグロビンの薬学的調製物は、造血を刺激するために、;または虚血または血小板減少症のような血球減少を被る哺乳動物を処置するために、単独でまたは他の化合物と組み合わせての、いずれかで有用であり得る。
【0141】
急性血液損失(例えば、月経、外傷または外科的血液損失)は、虚血を生じ得、ここで、血液は、赤血球、ヘモグロビンまたは全容量の不足である(ヘマトクリット<40%、ヘモグロビン<12g/dl、赤血球<4×106μl、または平均細胞容積<80fl;Nathan、D.G.(1982)Cecil Textbook of Medicine、J.B.Wyngaarden、L.H.Smith and J.C.Bennett編、W.B.Saunders Co.、Philadelphia、817〜836頁)。赤血球質量(総赤血球、総数、重量または容積のいずれか)は、酸素を組織に送達する器官として機能する。赤血球質量および赤血球産生の速度は、身体組織における酸素の供給および要求に密接に連結される。赤血球産生は、酸素の低組織調度によって刺激される。虚血状態は、組織のおける減少した酸素レベル(低酸素症)を生じる。腎臓における低酸素症は、腎臓からの赤血球生成促進因子の放出を刺激する腎臓実質組織によって感知される。赤血球生成促進因子は、赤血球質量における変化を生じる低酸素症に応答して産生される赤血球生成促進性の主要な調節ホルモンである。(Erslev、A.J.(1990)Hematology、W.J.Williams、E.Beutler、A.J.ErslevおよびM.A.Lichtman編、McGraw−Hill、Inc.New York389〜407頁)。慢性腎不全において、縁部の赤血球生成促進因子および徴候的な慢性虚血のみを生じる赤血球生成促進因子の不適切な産生が存在する。
【0142】
特定の循環細胞型における他の不足も生じ得る。白血球減少症(多くの異なる白血球集団の任意の1つにおける減少を説明する一般的用語)は、前駆体骨髄細胞株から分化した細胞の置換の速度およびデマージネーション(demargination)のプロセスのデカップリングから生じ得る(Bagby、G.C.(1992)Cecil Textbook of Medicine、J.B.Wyngaarden、L.H.SmithおよびJ.C.Bennett編、W.B.Saunders Co.、Philadelphia、914〜920頁)。好中球減少症(循環する好中球の、1l当たり2×109細胞より少なくなる減少)は、重篤な細菌感染の大きな増加を生じる(Kaplan、M.E.(1992)Cecil Textbook of Medicine、J.B.Wyngaarden、L.H.Smith and J.C.Bennett編、W.B.Saunders Co.、Philadelphia、907〜914頁)。血小板減少症は、循環する血小板レベルの、約100,000/mlより少ないレベルへの減少として規定される。(Shuman、M.(1992)Cecil Textbook of Medicine、J.B.Wyngaarden、L.H.Smith and J.C.Bennett編、W.B.Saunders Co.、Philadelphia、987〜999頁)。低い循環血小板は、骨髄損傷、化学毒性薬剤の利用、化学療法剤または放射線療法剤、重金属中毒、溶血性尿毒症症候群、および特発性血小板減少性紫斑病、白血病、および骨髄繊維症のような免疫障害に起因する骨髄の抑制のような多くのもとにある状態の結果であり得る。これらの血小板減少症は、生命を脅かす制御されない出血を生じ得る(Shuman、M.(1992)Cecil Textbook of Medicine、J.B.Wyngaarden、L.H.Smith and J.C.Bennett編、W.B.Saunders Co.、Philadelphia、987〜999頁)。
【0143】
造血は、骨髄において行われる赤血球産生の過程である。骨髄における幹細胞は、循環する血液において見いだされる種々の細胞型のすべてについての前駆体細胞である。これらの幹細胞は、長期間に基づく、致死照射された動物における造血細胞系統のすべてを再増殖するそれらの能力によって機能的に規定される[Nicola、N.A.(1993)Application of Basic Science to Hematopoiesis and the Treatment of Disease、E.D.ThomasおよびS.K.Carter(編)、Raven Press、NY]。複雑な一連の調節事象によって、幹細胞は、少なくとも赤血球、白血球、リンパ球、血小板(platelet、thrombocyte)、単球、マクロファージ、肥満細胞、好塩基球、好酸球、B−リンパ球およびT−リンパ球を含む多くの細胞型に分化する。数百万のそれぞれの型の新規な血球は、毎日産生され、そして循環する血液に放出されて破壊された血球を置換しそして止血を維持する(Nathan、D.G.(1992)Cecil Textbook of Medicine、J.B.Wyngaarden、L.H.Smith and J.C.Bennett編、W.B.Saunders Co.、Philadelphia、817〜836頁)。
【0144】
本発明のヘモグロビンは、哺乳類における血球減少症の処置に有用である。本発明に従って、副作用の減少したヘモグロビンを低用量投与することで、上記の任意の状態によって引き起こされる血球減少症を緩和する。本発明は、ATZ療法によって引き起こされる血球減少症を無効にし、そしてさらに、AZT療法またはAIDS疾患のいずれかによって引き起こされる、随伴する悪液質を改善するのに特に有用である。
【0145】
個体に提供される、薬学的に治療に効果的な量は、ヘモグロビン0.0001マイクロモルと1ミリモルの間の血液濃度を提供するのに十分である。Feolaら(1992)Surg.Gyn.Obstet.174:379〜386(彼らは患者の体重kg当たり1.7gm以上のヘモグロビンを投与した)と比較すると、本発明の方法は低用量のヘモグロビン、代表的には患者の体重kg当たり1ng〜1gのヘモグロビンで、造血が起こる。用量はおよそ0.001〜1000mgヘモグロビン/kg体重、より好ましくは0.01mg〜100mgヘモグロビン/kg体重、もっとも好ましくは1mg〜10mgヘモグロビン/kg体重で有り得る。それぞれの投薬形態の個々の用量に含まれる、活発な成分の単位容量は、それ自体で効果的な量を構成する必要がないことが認識される。なぜなら必要な効果的な量は、複数のカプセル、錠剤、注射など、またはそれらの組み合わせの投与によって達成し得るからである。
【0146】
ヘモグロビンの投与は、数分から数週間の期間起こり得る;しかし有用な時間進行は、最大の造血効果を得るため、および血球減少症の進行を改善するための数週間の進行による。代表的な投与レジメンは、約1〜10週間、より好ましくは4〜9週間、もっとも好ましくは6〜8週間で有り得る。ヘモグロビンの投薬は、1週間に1〜7回、より好ましくは1週間に2〜5回、もっとも好ましくは1週間に3回の頻度で投与され得る。
【0147】
本発明はまた、追加の造血因子の使用を意図する。これは、精製ヘモグロビンと組み合わせて投与されたとき、治療的な化合物のどちらかを単独で投与するよりも優れた程度まで造血を刺激する。このような追加の造血因子としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、幹細胞因子(SCF)、エリスロポエチン(EPO)およびインターロイキン1〜13(Souza,L.M.、米国特許第4,810,643号;Clark,S.C.およびWong,G.G、米国特許第4,868,119号;Blasdale,J.H.C、欧州特許EP355093;Quesenberry,P.J in Hematology、W.J.Williams、E.Beutler、A.J.ErslevおよびM.A.Lichtman編、1990、MacGraw−Hill,Inc.New York 129〜147頁;Lin、米国特許第4,703,008号;Zsebo,K.Mら、PCT/US/90/05548;Nicola,N.A.(1993) in Applocation of Basic Science to Hematopoiesis and the Treatment of Disease、E.D.ThomasおよびS.K.Carter編、Raven Press、NY;Deeley M.ら、米国特許第5,023,676号)
本発明のヘモグロビンは、同じ投薬処方物において、または個体が最大の治療効果を達成するように、他の造血因子と組み合わせて投与され得る。最適な投薬レジメンは、当業者の臨床医家によって決定され得る。
【0148】
(頭部損傷を治療するための副作用減少ヘモグロビンの投与)
本発明はまた、哺乳類における頭部損傷を治療するための方法(頭部損傷を受けた哺乳類に、効果的な量の副作用減少ヘモグロビン調製物を投与することを含む)を提供する。
【0149】
本発明に従った、頭部損傷の治療のためのヘモグロビンの有用な用量は、頭蓋内圧(ICP)の増加、および/または頭部損傷によってしばしば観察される大脳灌流圧(CPP)の減少、を減少または欠失することにおいて、効果的な用量である。頭蓋内圧の減少および大脳灌流圧の上昇に効果的なヘモグロビンの用量は、約100〜7,500mg/kg体重、より好ましくは約500〜約5,000mg/kg体重、もっとも好ましくは約700〜約3,000mg/kg体重の範囲が挙げられる。
【0150】
頭部損傷に関連するICPの増加および/またはCPPの増加を、本発明の方法によって減少または欠失させるための、ヘモグロビンの効果的な量の投与は、非経口的に実行され得る(例えば、血管内または関節内への注射、注入もしくは動脈内へのカニューレ挿入(適切な臨床的環境において)、外傷の周辺部または手術部の周辺部)。このような効果的な量は、1回の用量、または一連の複数回の低用量で、投与され得る。この1回の用量、またはそれぞれの前述の複数回の低用量は、ゆっくりとした連続的注入として投与され得る。頭部損傷患者における、ICPの増加および/またはCPPの増加を調節するヘモグロビンの投与は、このような1回の用量または複数回の低用量を介し得、これは損傷の起こったあと約1分〜約48時間以内、より好ましくは約1分〜約12時間以内、もっとも好ましくは約1分〜約3時間以内に供給される。ヘモグロビン調製物の効果的な量の最初の投与のあと、少なくとも1回のさらなるヘモグロビン調製物の効果的な量を、本明細書中に記載される最初の用量と同様の様式で投与され得る。
【0151】
(癌治療を増強するための副作用減少ヘモグロビンの投与)
本発明は、癌治療(例えば、放射線治療および/または化学薬剤治療)の効果を増強させる方法を提供する。哺乳類における癌の負荷量を減少する方法もまた、提供される。この方法としては、このような治療(1回または複数回)を必要とする哺乳類に対して、副作用減少ヘモグロビンの効果的な量を癌治療と組み合わせて投与することが挙げられる。志願者が、この指示のメカニズムの任意の特定の治療に対して自分自身を維持しない間、増加した癌への灌流によって通常は低酸素の癌塊への増加した酸素付加は、放射線および化学療法の効果を増加すると考えられる。腫瘍状態において重大な整復が起こる。
【0152】
本発明の目的のために、癌治療は、新形成の成長と戦うために特別に設計された治療を意図することが理解される。この治療は好ましくは放射線または化学療法のどちらか、およびそれらの組み合わせを意図する。ヘモグロビンは好ましくは、放射線治療および/または化学療法の形式と組み合わせて投与される。治療の組み合わせは主に、他の癌治療の前に、または他の癌治療とほぼ同時に、ヘモグロビンを投与することが挙げられる。
【0153】
非経口的な治療組成物は、無菌の等張生理食塩水溶液(副作用減少ヘモグロビン容量の0.1%〜90%重量を含む)を含む。組換えヘモグロビンの好ましい細胞外ヘモグロビン溶液は、約5%〜20%を含む。投与されるヘモグロビンの量は、癌治療を有意に増強する量である。増強の証拠は、観察によって、または局所筋肉/組織/器官の酸素レベルの増加を、このような目的のために設計された装置を使用して分析的に測定することによって、導き得る。
【0154】
一般的な指針として、副作用減少ヘモグロビンは、約100〜約7,500mg/kg体重、より好ましくは約500〜約5,000mg/kg体重、もっとも好ましくは約700〜約3,000mg/kg体重の範囲の量で投与される。
【0155】
(ヘモグロビン凝集形態を阻害する組換え変異ヘモグロビン)
本発明は、ある期間の時間持続する脱酸化した溶液として保存したとき、凝集形態に抵抗力がある、組換え変異ヘモグロビンもまた指向する。上記について、治療適用のための細胞外ヘモグロビン溶液が直面する共通の問題は、凝集の形成および治療組成物の貯蔵寿命を越えた沈殿である。この産物は患者の静脈内に供給されるので、このような凝集は、もし患者に使用する前に取り除かなければ、合併症を引き起こし得る。例えば抗酸化薬および洗剤などの化学添加物はヘモグロビンの凝集形成を阻害し得るが、これらの添加物は、幾人かの患者に対して有害反応もまた引き起こす。従って、ヘモグロビン溶液の貯蔵寿命を越えて、溶液中のヘモグロビン凝集を減少することは望ましい。
【0156】
鎌状赤血球変異ヘモグロビン(β6 Glu→Val)が、脱酸素状態において凝集し、ゲル構造を形成することが公知である。ゲル化の原因である主な相互作用は、β6領域とβ鎖(β85〜88)のE〜F領域における疎水性ポケットの間で起こる。この疎水性ポケットにおける変異は、鎌状赤血球変異との結合体において研究されてきた(Lattupallyら、Biochemistry 36:15992〜98(1997))。その研究において、β Thr → Asp変異およびβ Thr → Trp変異が、鎌状赤血球変異ヘモグロビンにおいて凝集の形成を阻害することが見出された。
【0157】
出願者らは、この表面疎水性ポケットを破壊し得る変異が、非鎌状赤血球化ヘモグロビンにおいてもまた、凝集の形成を減少し得ることを発見した。特に、87位のスレオニンが疎水性アミノ酸、または立体学的にかさばったアミノ酸であるトリプトファンに置換することが、表面疎水性ポケットを破壊し、そして長期間保存した溶液中のヘモグロビンの凝集を減少する。図11に示すように、rHb 1.1およびSGE3011(これらは天然のβサブユニット疎水性ポケットを含む)は、90日間保存したとき、溶液中の凝集したヘモグロビンの増加量を蓄積する。また図11に示されるように、β87 The → Gln変異の存在は、SGE3011分子において凝集形成を阻害する。同じような親水性アミノ酸の置換は、同様に、長期間の貯蔵の間、組換え変異ヘモグロビンを凝集の形成から阻害する。従って、好ましいヘモグロビンは、以下の群から選択される変異を含む:β87 The → Asp、Glu、Arg、Lys、His、Tyr、Gln、またはTrp。より好ましくは、このようなヘモグロビンは、以下の群から選択される変異を含む:β87 The → Asp、Glu、Glu、Arg、Lys、またはHis。もっとも好ましくは、このようなヘモグロビンはβ87 The → Gln変異を含む。β87 Thr → Gln変異の構築、およびヘモグロビン凝集の評価は、以下の実施例3および8に記載される。
【0158】
(実施例1)
(一酸化窒素変異の遺伝的構築)
変異は、クローン化されたヒトα遺伝子およびヒトβ遺伝子の中に、PCRに基づいた変異遺伝子(総説として、Innisら、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(1990)(本明細書において参考として援用される)に記載される)を指向した部位、を介して導入される。一般的に、所望される変異は、Applied Biosystems 392 synthesizerの製造業者の説明書に従って合成される、合成DNAオリゴヌクレオチド中に導入される。続く一般的な遮断除去(deblocking)の方法によって、オリゴヌクレオチドは真空遠心によって乾燥され、所望の緩衝液に再懸濁され、次いで10〜50pモル/μlの滅菌水に希釈される。
【0159】
これらのオリゴヌクレオチドは、クローンされた野生型α遺伝子および野生型β遺伝子(例えば、pSGE728(図1))を運ぶ組換えプラスミドが鋳型DNAとして使用されるPCR反応のプライマーとして使用される。pSGE728の天然物および構築物は、詳細にはWO98/50430(本明細書において参考として援用される)に記載される。
【0160】
これらの変異原性オリゴヌクレオチドプライマーを、変異が導入される部位および生じた目的の変異を有するPCR産物のクローニングを容易にするための隣接の制限エンドヌクレアーゼ認識部位に架かるよう選択した。DNAの増幅を可能にするPCR反応において、第2のオリゴヌクレオチドプライマーもまた必要とされた。このプライマーはまた、グロビン遺伝子変異を含むよう設計され得、あるいはαグロビン遺伝子またはβグロビン遺伝子の隣接領域由来の野生型グロビン遺伝子配列からなり得た。この第2のプライマーもまた、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含むよう選択し、その結果生じたPCR産物を、その後の変異αグロビンまたは変異βグロビンの発現のために、適切に消化されたpSGE728中にクローン化し得た。pSGE728由来のα遺伝子またはβ遺伝子の部分的な制限地図を、図2および図3に示す。
【0161】
この変異原性オリゴヌクレオチドの長さを、変異を受ける部位と(オリゴマーの5’末端と変異を受ける部位との間の位置で変異原性オリゴヌクレオチド中に組み込まれ得る)最も近位の制限部位との間の距離により決定した。変異原性オリゴマーは、代表的には30〜45ヌクレオチド長であり、そして1つかまたは2つのコドンに影響を及ぼす変異を含んだ(しかし、所望される場合は、潜在的にそれ以上の位置を変化し得る)。概して、PCR反応のアニーリング工程にあるプライマーでの潜在的な問題を回避するかまたは最小化するために、変異を受けたDNA配列をオリゴマーの3’末端からできるだけ遠くに置くことが望ましかった。概して、変異を受けたヌクレオチドを、変異原性プライマーの3’末端の5〜10ヌクレオチド上流に置いた。概して、その後のPCR産物の消化を容易にするために、変異原性オリゴヌクレオチドの5’末端の近位に組み込まれたグロビン遺伝子制限部位を、5’末端の5〜12ヌクレオチド下流に置いた。PCRにおいて単独でプライマーとして使用される(すなわち、変異を含まない)オリゴヌクレオチドを、代表的に24〜36ヌクレオチド長にし、これにグロビン遺伝子制限部位(概してこのオリゴヌクレオチドの5’末端の6〜12ヌクレオチド下流に位置する)を含有させた。
【0162】
概して、PCR反応をApplied Biosystems GeneAmp 9600を用いて実行した。PCR反応条件を経験的に決定した:変性は、代表的に95℃で15〜60秒間、アニーリングは、概して45〜60℃の範囲の温度で15〜30秒間(多くの反応では、50〜55℃の範囲でアニーリングを実行した)、および伸長を、72℃で15〜120秒間実行した。
【0163】
いくつかの例では、アニーリング温度を反応課程中で上昇させた:例えば、ある反応では、アニーリング温度45℃での5ラウンド、およびそれに続くアニーリング温度60℃での20ラウンドからなり得た。代表的な反応は、合計25〜30サイクルからなり得た。この反応を、代表的に10mM Tris−HCl(pH8.3)、50mM KCl、1.5mM MgCl2、0.2mM dNTP(Pharmacia)および0.001%ゼラチン中で実行した。オリゴヌクレオチドプライマーを通常0.5〜1.0μMの濃度で加えた。概して、pSGE728のような精製されたプラスミドDNA(反応ごとに約0.1〜10ng)を鋳型として用いた。AmpliTaq(登録商標)DNAポリメラーゼ(Perkin−Elmer)を、代表的に反応ごとに1〜10ユニットで使用し、そして反応容量を20〜100μlの範囲にした。
【0164】
PCR反応の後に、この反応生成物を、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN Inc.Santa Clarita、CA)を用いて精製した。次いでこの精製産物を、適切な酵素を用いて制限エンドヌクレアーゼ消化に供し、同様に切断したpSGE728中へのクローニングに適切なDNAフラグメントを生成した。制限消化を、販売元のプロトコルに従って実行した。
【0165】
消化されたPCRフラグメントを直接クローン化し得たか、またはまずアガローズゲル電気泳動に供し、そしてこのアガローズゲルから精製した。ゲルの組成および電気泳動の条件を、DNAフラグメントの大きさに基づいて選択した。多くのフラグメントは、約60〜250塩基対長であった。これらのフラグメントのゲル電気泳動での分離には、3%のNuSeiveアガロースまたは4%のMetaphorアガロースのようなゲルが最適である(両方ともFMC BioProducts(Rockland、ME)から入手し、そして販売元のプロトコルに従って使用した)。電気泳動の後に、DNAフラグメントを、QIAEX II Gel Extraction Kit(QIAGEN Inc.Santa Clarita、CA)を用い、販売元のプロトコルに従ってアガロースゲル片から精製した。ベクターpSGE728もまた、目的の変異誘発されたPCRフラグメントのクローニングに適切な酵素で消化し、より慣習的な電気泳動の後に同様にゲル精製した。
【0166】
消化されそして精製された、変異誘発されたDNAフラグメントを、T4 DNAリガーゼ(New England BioLabs、Bervely、MA)を用い販売元のプロトコルに従って、消化されそして精製されたpSGE728ベクターと連結し、そして連結産物を用いてE.coliに形質転換した。Promega(Madison、WI)からコンピテント細胞として入手したE.coli株JM109を、しばしばこの目的のために用いたが、他の種々のコンピテント細胞の調製方法(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor、1989))と同様にE.coliの他の株もまた用いた。形質転換体をテトラサイクリン耐性で選択し、その後配列決定して目的の変異を同定し得、そして変異誘発されたクローン化されたPCRセグメントの配列を確認した。プラスミド鋳型を、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いて調製し、AmpliCycleTM Sequencing Kit(Perkin Elmer、Foster City、CA)を用い、販売元のプロトコルに従って配列決定した。いくつかの配列決定を、シーケナーゼ(United States Biochemical、Cleveland、OH)を用いて手動で行ったが、好ましい方法は、AmpliCycleTM Sequencing Kit(Perkin Elmer、Foster City、CA)を用い、販売元のプロトコルに従って配列決定反応を実行し、そしてABI Prism 377 DNA Sequencer(Applied Biosystems Division of Perkin Elmer、Foster City、CA)で分析する自動配列決定である。
【0167】
変異を受けた部位が、pSGE728に唯一の制限部位と十分近接して位置していない場合、時々この手順を改変して使用した。この場合、いわゆる「ヘルパー」DNAフラグメントを用いてクローニング工程を容易にし得た。例えば、α遺伝子について(図2)、このタンパク質のV62の位置に対するコドンは、唯一の制限部位からやや離れている。したがって、図に示されるMaeIII部位は、このプラスミドにとって唯一ではないが、BamHI部位からV62コドンまでのセグメントには唯一である。故に、V62コドンを、α遺伝子のMluIセグメントを通じてMaeIIIに架かるPCRフラグメントで変異させ、このフラグメントを、MaeIII消化の後にゲル精製したpSGE728のBamHI−MaeIIIフラグメントと連結した。この連結産物を、BamHIおよびMluIで消化した(両方ともpSGE728内では1箇所のみのカッターである)。このBamHI−MluIフラグメントをゲル精製し、そしてpSGE728のゲル精製したBamHI−MluIベクターフラグメントと連結した。あるいは、V62変異を、MluIのような唯一の部位に架かるより長いオリゴヌクレオチドに組み込み得た。
【0168】
変異ヘモグロビンの大ライブラリー構築のために(この変異ヘモグロビンにおいて、2から4個のアミノ酸が、実質的に無作為に同時に変異を受けている)、変異原性オリゴヌクレオチドの設計、PCR反応、そしてクローニング工程と、同様の手順を続けた。しかし、時々、特定の変異原性オリゴマーから制限部位を省き、その代わりにクローニングに必要な制限部位を、この特定の変異原性オリゴマーと部分的に重複し、そして有用な制限部位に架かるプライマーを用いたその後のPCR増幅を通じてpSGE728に組み込むことが望ましかった。これらの増幅は、pSGE728およびグロビン配列を有する他の組み換えプラスミドのような野生型グロビン配列の環境的な汚染物質を厳密に排除するよう設計された条件下で実行される必要があった。潜在的にこれらの種の環境的な汚染物質は、この増幅後の型に優先的に詰め込まれる。というのも、これらは、このオリゴマープライマーの全長にアニールし得るが、標的の鋳型であるPCRフラグメントは、このプライマーのより小さな部分でしかアニールし得ないからである。
【0169】
いくつかの例において、2つ以上の変異誘発されたRCRセグメントを共に連結し、4つもの変異誘発された部位を含有するセグメントを作成した後に、適切に消化されたpSGE728ベクター中にクローニングした。適切な大きさの連結産物を同定し、その後アガロースゲル電気泳動により精製した。いくつかの例において、この精製工程を、目的の連結産物を特異的に増幅するプライマーを用いたPCR増幅に先だって行ったか、またはその後に行った。
【0170】
目的の位置での広範囲のアミノ酸置換を生じさせるために、目的の位置で縮重させた変異原性オリゴマーを合成した。所定の位置での「無作為化」のために、2つの縮重オリゴマーを合成した。そのうちの1つは、無作為化するコドンでN(T/A/C)Tの配列を含有し、もう一方は同じ位置で、(A/T)(T/G)(T/G)の配列を含有した。これらの2つのオリゴマーをPCRの前にプールし得たが、より通常は2つの独立したPCR反応をこの組み合わせで使用し、PCR産物をゲル電気泳動後の可視化により、(AlphaImagerTM2000 Documentation&Analysis System(Alpha Innotech Corp.San Leandro、CA)を用いて)大ざっぱに定量した。定量後、それぞれのフラグメントの大ざっぱな等量物を、その後のクローニング工程のためにプールし得た。この「無作為化」により、20個の異なるコドンが16個の異なるアミノ酸置換を生じた。F、I、LおよびSそれぞれに対して2つのコドンがあり;D、R、N、A、T、P、C、V、M、H、WおよびYのそれぞれに対して1つのコドンがあった。アミノ酸E、K、QおよびGは、これらのライブラリーにおける「無作為化」された位置には存在しなかった。
【0171】
pSGE728ベクターとの連結およびE.coliへの形質転換に続いて、多くの(代表的には24〜28個の)独立した形質転換体を拾い上げ、それぞれの形質転換体においてクローン化された、変異誘発されたPCRセグメントを配列決定した。プラスミド鋳型をQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いて調製し、AmpliCycleTM Sequencing Kit(Perkin Elmer、Foster City、CA)を用い、販売元のプロトコルに従って配列決定した。配列決定は、ABI Prism 377 DNA Sequencer(Applied Biosystems Division of Perkin Elmer、Foster City、CA)を用いて実行し、そして分析した。配列を分析し、所定のライブラリー内でのアミノ酸置換の分布ならびにDNA配列決定におけるPCR誘導性のエラーおよび合成オリゴマー誘導性のエラーの頻度を評価した。その後ライブラリー由来のクローンを拾い上げ、後述のように分析した。
【0172】
(実施例2)
(αおよびβ変異体(Di−αおよびDi−di−α)の構築)
αおよびβ変異をpSGE728の誘導体中で結合し得た。代表的にこのような組み合わせは、αおよびβ配列を切り離す適切な制限エンドヌクレアーゼによるpSGE728の変異誘導体の切断工程、pSGE728の変異β誘導体のβ遺伝子を含む制限フラグメントのゲル精製工程、変異α誘導体のα遺伝子を含む制限フラグメントのゲル精製工程、これら2つのフラグメントを共に連結する工程、E.coliに形質転換する工程、およびα変異およびβ変異の両方の存在を確認するために、生じた形質転換体を分析する工程により達成され得た。
【0173】
残基B10、E11、G8およびE7でのαおよびβ変異に関して、このような組み合わせは、テトラサイクリン遺伝子内で切断するBspHIおよびβ遺伝子内(βコード配列の開始点から約28塩基対)で切断するSacIIを用いたpSGE728の変異誘導体の消化により作製された。SacIIおよびBspHI(New England BioLabs、Bervery、MA)を用い、販売元のプロトコルに従っての消化により、2つのDNAフラグメントを生じた(1つは、テトラサイクリン耐性遺伝子の一部およびその近接の全長β遺伝子を含有し、そしてアミノ酸残基B10、E11、G8およびE7に対するコドンを含む長さ937bpのフラグメント、ならびにテトラサイクリン耐性遺伝子の一部および全長のα遺伝子を含有する第2の長さ2318bpのフラグメント)。これらの消化産物を、SeaKem(登録商標)GTG(登録商標)アガロース(FMC BioProducts、Rockland、ME)を用い販売元のプロトコルに従って、(0.6〜1.0)%のアガロースゲルでの電気泳動により、容易に分離し得た。その後、pSGE728のβ変異誘導体由来の937bpフラグメントをアガロースゲルから削り取り、そしてQIAEXII Gel Extraction Kit(QIAGEN Inc.Santa Clarita、CA)を用い、販売元のプロトコルに従って精製した。
【0174】
同様に、α変異を有するpSGE728誘導体からの2318bpフラグメントをまた、ゲルから切り出して、そして精製し得る。これらの2つの精製されたフラグメントを、業者のプロトコルに従い、T4リガーゼ(New England BioLabs Beverly,MA)を用いて共にライゲーションし得、そしてライゲーション産物を使用してE.coliを形質転換した。この目的のために、コンピーテント細胞として、Promega(Madison,WI)から入手したE.coli株JM109を使用し得る。しかしながら、E.coliの他の株、そしてコンピーテント細胞の調製のための他の種々の方法(Sambrookら、前出)もまた使用し得た。テトラサイクリン耐性形質転換体に対する選択は、テトラサイクリン耐性遺伝子の再構成物について選択し、そしてこれは、β遺伝子の再構成物と、SacII部位で、ほとんどいつも結合する。従って、得られた個々の形質転換体を、α遺伝子およびβ遺伝子および総プラスミド構造について、DNA配列の決定によって分析するとき、90%以上が、α変異およびβ変異の両方を有する所望される形質変換体であることが見出される。配列決定分析のために、プラスミド鋳型を、QLAprep Spin Miniprep Kit(QLAGEN)を用いて調製し得、AmpliCycleTMSequencing Kit(Perkin Elmer、Foster City、CA)を用いて、業者のプロトコルに従い、配列決定し得る。配列決定はABI Prism 377 DNA Sequencer(Applied Biosystems Division of Perkin Elimer,foster City,CA)で行い、そして分析した。
【0175】
いくつかの目的のために、αおよびβの両方においてアミノ酸置換を有する組換えヘモグロビンを産生すること、そしてその中で、2つのαサブユニットまたはβサブユニットが一般的に、一つ以上のグリシンまたは他のアミノ酸残基を含むリンカー(例えば、米国特許第5,844,089号に記載される)によって融合されることが所望される。好ましくは、2つのαサブユニットを融合し、「ジ−α(di−alpha)」グロビンを作製する。このような「ジ−α」融合物の構築のために、方法がLookerら、Nature 356:258−260(1992)中で記載されており、そしてこれらの方法は、任意の変異型α遺伝子の、ジ−αバージョン(version)を構築するのに適応され得た。このようなジ−α変異体を、上記に記載したような、目的の任意のβ変異体と容易に結合し得た。
【0176】
いくつかの目的のために、ジ−αおよびβの両方においてアミノ酸置換を有する組換えヘモグロビンを産生すること、そしてその中で、ジ−αサブユニットが一般的に、ペプチドリンカーによって融合され、ゆえに、「ジヘモグロビン」または「ジ−ジ−α」分子が生成されることが所望される。ジ−ヘモグロビンを生成するための、例えば「ジ−ジ−α」融合物または他のグロビン融合物の構築のために、方法が米国特許第5,844,090に記載され(本明細書中で参考文献として援用される)、そしてこれらの方法は、任意の変異型α遺伝子のジ−ジ−αバージョンの構築に適応され得た。このようなジ−ジ−α変異体を、上記に記載のように、目的の任意のβ変異体に容易に結合し得た。
【0177】
(実施例3)
(組換え変異型ヘモグロビンSGE3959、SGE3937およびSGE3487の構築)
上記に記載のような酸化窒素変異型ヘモグロビンに対して、標準分子クローニング技術を用いた。以下はヘモグロビンSGE3959およびSGE3937を得るために、本出願によって使用されたクローニング方法の概要である。代替のクローニング方法は、分子遺伝学分野の当業者によって容易に発明され得た。
【0178】
(3937の構築)
(S9Cをβへクローン化:)
最初の過程で、PCRを用いてPorto Alegre変異(β Ser9Cys)をクローン化した。PCRの鋳型は,SGE3405からの3−グリ−ジ−αプラスミドであった。このプラスミドはβ遺伝子中にプレスビテリアン(Presbyterian)(N108K)変異を含んでおり、それは新しいPorto Alegre構築物中で、野生型(N108)に変化した。センスPCRプライマー(JPR34)を、β遺伝子の5’末端で、設計した。このプライマーはBspEIクローニング部位および新しいCys9コドンを含んでいた(注意:その結果SacIIクローニング部位は崩壊される)。アンチセンスPCRプイライマー(JPR35)はSpeIクローニング部位を、β遺伝子(野生型N108についてコードし、そしてCys93をAlaに変換する)中に含んでいた。結果として生じるPCR産物を、BspEIおよびSpeIで消化し、SGE3405からBspEI/SpeI骨格フラグメントへサブクローニングした。ライゲーション反応液をJM109に形質転換し、そして候補をミニプレップ(miniprep)して、そして配列決定した。正しい候補を発現宿主株へ形質転換し、そしてヌクレオチド配列決定によって確認し、そしてそれをpSGE1830と表した。
【0179】
(S9CをSGE3011へ追加:)
第二の過程では、Porto Alegre変異(βSer9Cys)を、「切り貼り(cut−and−paste)」クローニングによって、酸化窒素変異体SGE3011(L29WH58Q 1−グリ−ジ−α;V67Wβ)に加えた。制限酵素BspEIおよびNcoIを用いて、SGE3011を消化することによって、骨格フラグメントを調製した。BspEIおよびNcoIを用いて、pSGE1830(上記に記載した)を消化することによって、βS9C変異を含む挿入フラグメントを調製した。フラグメントを共にライゲーショし、そして生じたプラスミドをJM109へ形質転換し、そして全ヘモグロビンコード領域のヌクレオチド配列決定によって確認した。最終構築物を発現宿主株へ形質転換し、そしてヌクレオチド配列決定によって確認した。正しい候補を株SGE3744(pSGE1843)と表した。
【0180】
(C93Aを追加:)
次の過程はβC93A変異の追加を含んでいた。この構築は「切り貼り(cut−and−paste)」クローニングを用いて行った。この骨格は、SGE3744(上記に記載)からの、KpnI/EcoRI消化されたプラスミドであった。この挿入物は、βC93A配列を含んでいるSGE3731(最初のProto Alegreクローン)からの約120bpのKpnI/EcoRIフラグメントであった。2つのフラグメントを共にライゲーショし、JM109へ形質転換し、そして結果として生じたクローンを制限消化および配列決定によって確認した。正しいクローンを発現宿主株へ形質転換し、そして全ヘモグロビンコード領域のヌクレオチド配列決定によって確認した。正しい候補をSGE3748(pSGE1847)と表した。
【0181】
(βT87Qを追加:)
βT87Q変異を、PCRを用いてSGE3011バックグランドへ導入した。プライマーは、最初にT87QをrHb1.1バックグランドへ導入するために使用した。センスプライマーはCBG124で、それはβ遺伝子の5’末端に位置する野生型配列である。アンチセンスプライマーはCBG247で、それはT87Q変異を導入し、SacIクローニング部位を含んでいる。PCRの鋳型はSGE3011(pSGE1410)からのプラスミドであった。PCR産物を精製し、そして末端にSacIIおよびSacIを結合した。SacIIおよびSacIで消化することによって、pSGE1410から、骨格フラグメントを調製した。SacII/SacI消化したPCR産物を、SacII/SacI処理したSGE3011骨格へライゲーションし、そしてJM109へ改質転換した。DNA配列決定によって確認した後、正しいプラスミドを発現宿主株へ形質転換した。所望される変異体をヌクレオチド配列決定によって確認し、株番号SGE3959(pSGE3006)と表した。
【0182】
(βK82Dとの結合:)
次は、βT87Q変異をβK82Dを含むプラスミドへ追加する必要があった。新しい変異体を、「切り貼り」クローニングによって、SGE3011 NO変異に加え、βT87Q変異を含むSGE3959(上記を参照のこと)からのBspEI/KpnI骨格を使用して、構築した。挿入フラグメントは、SGE3011からの酸化窒素変異V67Wを有するSGE3010からの、約235bpのBspEI/KpnIフラグメントであり、その新しい変異体へProvidence K82D変異を加えた。挿入フラグメントを骨格フラグメントへ結合した。結果生じたプラスミドを、発現宿主株へ形質転換した。変異体をヌクレオチド配列決定によって確認し、そして株番号SGE3965へ入れた。結果生じたヘモグロビンは、1−グリ−ジ−α−L29WH58Q、β−V67WK82DT87Q(pSGE3012)である。
【0183】
(V67WK82DT87QとS9CC93Aとの結合:)
次の過程はβS9CおよびC93A変異の追加を含んでいた。新しい構築を、「切り貼り」クローニングによって、SGE3965(上記に記載した)からのBglII/SacIβフラグメントを用いて、行った。このフラグメントを、SGE3748(上記に記載した)からのBglII/SacI骨格へサブクローニングした。所望するヘモグロビンは、1−グリ−ジ−α−L29WH58Q;β−S9CV67WK82DT87QC93Aである。ライゲーション溶液をJM109へ形質転換した。候補を、DNA配列決定分析によって確認し、そして正しい候補を、発現宿主株へ形質転換し、そして全ヘモグロビンコード領域のヌクレオチド配列決定によって確認した。該株をSGE3973(pSGE3019)と表した。
【0184】
(D73Kを追加:)
最初に、βD73K変異をK82Dとの組み合わせで、PCRによってSGE3011中のプラスミドへクローン化した。βV67Wを含むSGE3011のプラスミドをPCRでの鋳型として、CBG316(D73KK82D)およびCBG124と共に使用した。産物を精製し、そしてBspEIおよびKpnIで消化した。SGE3011からのプラスミド(ジαL29WH58Q、βV67Wを含む)を、上記のように消化し、精製し、SAP処理し、そして大きなフラグメントをゲル精製した。このフラグメントおよびPCR産物をライゲーションし、そしてライゲーション反応液を、発現宿主細胞に形質転換し、SGE3925(pSGE2044)で表される株の候補を産生した。
【0185】
所望されるβ変異(D73Kを除く)の全てを含むSGE3973(上記)からのプラスミドを、BglIIおよびKpnIで消化し、精製し、SAP処理し、そして大きなフラグメントをゲル精製した。SGE3925(上記)からのプラスミド(αL29WH58Q、βV67WD73KK82Dを含む)を上記のように消化し、小さなフラグメントをゲル精製した。これらのフラグメントをライゲーションし、ライゲーション反応液を発現宿主細胞に形質転換した。形質転換株を増殖し、ミニプレップし、そしてグロビンコード領域を配列決定した。正しい形質転換株をSGE3933と表し、そしてプラスミドをpSGE3052と表した。
【0186】
(製造株への移入:)
pSGE3052をミニプレップし、そしてhemH遺伝子の、1つの外部の染色体コピーを有するE.coliの発現宿主細胞に形質転換した。形質転換株を増殖し、ミニプレップし、そしてグロビンコード領域を配列決定した。正しい形質転換株をSGE3937と表した。
【0187】
(3959の構築)
(βT87Qを追加:)
βT87Q変異体を、PCRを用いてSGE3011バックグランドへ導入した。初めは、プライマーを用いて、T87QをrHb1.1バックグランドへ導入した。センスプライマーはβ遺伝子の5’末端に位置する野生型配列であるCBG124である。アンチセンスプライマーはCBG274であり、それはT87Q変異を導入し、SacIクローニング部位を含む。PCRの鋳型は、SGE3011からのプラスミド(pSGE1410)であった。PCR産物を精製し、そして末端にSacIIおよびSacIを結合した。骨格フラグメントをpSGE1410から、SacIIおよびSacIで消化することによって、調製した。SacII/SacI消化したPCR産物を、SacII/SacI消化したSGE3011骨格へライゲーションし、そしてJM109へ形質転換した。DNA配列決定分析によって決定した後、正しいプラスミドを、E.coli(hemH遺伝子の2つの外部の染色体コピーおよびスペクチノマイシン耐性を有する染色体遺伝子を有する)の発現宿主株へ形質転換した。形質転換株を増殖し、ミニプレップし、そしてグロビンコード領域を配列決定した。正しい形質転換株はSGE3959(pSGE3006)と表した。
【0188】
(3487の構築)
SGE3487を、SGE3959と同じプラスミド(pSGE3006)から発現させ、そして同じタンパク質配列を有するヘモグロビンの発現を生じさせる。従って、これを、SGE3959について示されたプロトコールに従って構築する。しかし、SGE3487を、SGE3959とは異なる細菌宿主株において発現させる。SGE3487を、hemH遺伝子の1つのみの染色体外コピーを有し、かつスペクチノマイシン耐性を付与する染色体遺伝子を有さないE.coli株において発現させる。異なる抗生物質耐性によって、SGE3487またはSGE3959のいずれかについて選択するための手段が提供される。
【0189】
(実施例4)
(副作用減少ヘモグロビン候補の産生)
多数のヘモグロビン改変体を産生するために、改変体ヘモグロビンをコードする組換えプラスミド(例えば、pSGE728の誘導体)を含むE.coliを、代表的に、振盪フラスコ(通常、約50ml容量)において増殖させた。約0.2%の酵母抽出物を補充した一般に規定された培地を、細胞増殖のために使用し、そしてテトラサイクリン(一般的に、15μg/ml)を添加して、組換えプラスミドの維持について選択した。ヘモグロビン遺伝子の発現を、IPTGの添加(通常、100μMの濃度)によって誘導し、そして誘導時で通常50μg/mlの最終濃度までヘミンを添加した。細胞を、一般的に、28℃で増殖および誘導した。定常期まで増殖された細胞(例えば、代表的には、飽和した一晩の培養物)は、IPTGおよびヘミンを含有する培地中に直接的に接種され得る(一般的に、1/50〜1/1000の希釈範囲にて)か、またはこのような培養物は、IPTGおよびヘミンを含まない培地中に接種され得、対数期(例えば、A600において、0.4〜0.7 OD)まで増殖され得、次いで、ヘミンを伴うIPTGの添加(代表的に、誘導時に培養物に添加される)によって、誘導され得る。培養物は、一般的に、一晩(約14〜20時間)の誘導条件下で増殖されたが、より短い時間(例えば、6時間)もまた使用され得る。この時間の最後に、細胞を遠心分離によってペレット化し、そしてこのペレット化された細胞を、−80℃にて凍結させそして保存したか、または直ぐに処理したかのいずれかに供した。
【0190】
組換えヘモグロビンを、Fast Flow Zn−Chelating Sepharose(Pharmacia)を使用する小規模カラムクロマトグラフィーによって精製した。精製の間、細胞、溶解産物、すべての緩衝液、および溶出したヘモグロビンは、可能な限り、氷上での冷却を維持した。代表的に、50ml培養物のペレットを、氷冷却した1.0mlの25mMのテトラホウ酸ナトリウムで再懸濁し、そして1.7mlのエッペンドルフチューブに移した。細胞を、通常、超音波処理によって溶解したが、リゾチームによる酵素的溶解もまた使用され得る。超音波処理された溶解産物を、遠心分離(一般的に、4℃にて15〜20分間、約14,000×g)、次いで、20μlの20mMの酢酸亜鉛の添加によって清澄化した。上清を、以下のようにして予め平衡化された約150〜200μlのカラムにロードした:
2〜10カラム容量の0.5M NaOH
6〜10カラム容量の0.5M NaCl、20mM Tris−HCl(0℃にてpH8.1)
3〜10カラム容量の20mM酢酸亜鉛
6〜10カラム容量の0.5M NaCl、20mM Tris−HCl(0℃にてpH8.1)。
【0191】
ローディング後、カラムを、少なくとも9カラム容量の0.5M NaCl、20mM Tris−HCl(0℃にてpH8.1)、次いで、少なくとも3カラム容量の0.05M NaCl、20mM Tris−HCl(0℃にてpH8.1)で洗浄し、次いで、30mM EDTAを含む所望の緩衝液(例えば、0.1Mリン酸ナトリウム(pH7.0))約1.0mlで溶出した。ヘモグロビンを、代表的に、約200〜400μlの容量において回収した。これらのサンプルを、種々の試験において使用し得る。すぐに使用しない場合には、サンプルを−80℃で凍結および保存した。より多量の量は、[produce Milne/Plomer patent cite](本明細書中で参考として援用される)において教示された技術を使用して調製され得る。
【0192】
(実施例5)
(副作用減少ヘモグロビンの精製)
すべての分子(モノマーおよびダイマー)を、まず、固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)によって捕捉し、そしてさらに、米国特許第5,840,851号(本明細書中で参考として援用される)に記載のように処理した。次いで、ヘモグロビン溶液を、さらなる精製のために、適切なロード緩衝液中にダイアフィルトレーションした。モノマーヘモグロビンについて、適切なロード緩衝液は、陰イオン交換カラム(Q Sepharose FF、Pharmacia、Uppsala、Sweden)上へのローディングのための20mM Tris(pH9.0)であった。15g/Lでカラム上にロードされたタンパク質を、3カラム容量の12.5mM Tris(pH7.8)で洗浄する。次いで、タンパク質を、2〜3カラム容量の12.3mM Tris(pH7.6)中に溶出するか、またはタンパク質のpIが7.5未満である場合には、タンパク質を、適切なpHのBis−Tris緩衝液中に溶出した。pIを使用して、各タンパク質(モノマーおよびダイマーの両方)について適切な洗浄条件および溶出条件を決定した。いくつかのヘムポケット変異体の表面上の特定の変異が、この値に影響を及ぼすことが見出された。ダイマーヘモグロビンについて、適切なロード緩衝液は、セラミックヒドロキシアパタイト(CHT)カラム(BioRad)上へのローディングのための10mM KPi(pH7.0)か、または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラム(BioRad)上へのローディングのための20mM Tris(pH8.0)であった。タンパク質を、20g/LでCHTカラムにロードし、次いで、このカラムを、8カラム容量の30〜40mM KPi(7.0)で洗浄した。5カラム容量の85〜90mM KPi(pH7.0)を使用して、カラムからタンパク質を溶出した。HICカラムを使用する場合、タンパク質を、15g/Lでロードし、次いで、5カラム容量の1.2M硫酸アンモニウム/20mM Tris(pH8.0)でカラムを洗浄した。タンパク質を、3カラム容量の1M硫酸アンモニウム/20mM Tris(pH8.0)を用いて溶出した。CHTカラムおよびHICカラムの両方についての洗浄工程を発展させて、ジヘモグロビンおよびより大きな分子はカラムに結合させたまま残して、モノマーヘモグロビンを溶出させることを可能にした。いずれかのカラムからのプールを、ダイアフィルトレーションして、陽イオン交換カラムへのローディングのために調製した。陽イオン交換工程は、ジヘモグロビンから残存するモノマーヘモグロビンを洗い流して、ジヘモグロビンプール(これは、サイズに基づいて、98%純粋であった)を生じるように設計した。陽イオン交換カラムは、Super Q 650M(TosoHass)であった。このカラムを、20mM Tris(pH9.0)で平衡化し、そして15g/Lのタンパク質をカラムにロードした。次いで、このカラムを3カラム容量の10〜15mM Tris(pH7.6〜7.8)で洗浄し、タンパク質を、3カラム容量の15〜30mM Tris(pH7.6〜7.8)中において溶出した。または、pHが7.3〜7.6の間であった場合には、Bis−Tris緩衝液を使用した。このポイントからのタンパク質を、米国特許第5,840,851号に記載のように取り扱った。精製後、タンパク質を、重合化するか、または使用のための処方緩衝液中にダイアフィルトレーションするかのいずれかに供した。
【0193】
(実施例6)
(グルタルアルデヒド架橋された副作用減少ヘモグロビンの調製)
以下の条件を使用して、デオキシヘモグロビンSGE3011を重合化した。
【0194】
(材料)
脱気された、水中2%グルタルアルデヒド(Sigma Grade I製、25%グルタルアルデヒドストック)
脱気された、0.05N NaOH中0.92M NaBH4
デオキシSGE3011;約300g、CHTロード緩衝液(10mM KPhos(pH7.0))中50±5g/L。
【0195】
(装置)
反応を、約20Lのタンク、再循環ループ、ポンプ、および付属したダイアフィルトレーションメンブレンを備える、2nd Ultrafiltration(UF−2)システム装置において実施する。
【0196】
【化36】
Figure 0005099951
(方法)
グルタルアルデヒド添加物を、再循環ポンプの入口のすぐ上流位置で、シリンジポンプにマウントされたシリンジを使用して投与する。重合化反応を、注入セットの終了時にヘモグロビンに対して最終的に13.5:1モル濃度過剰のグルタルアルデヒドを達成するために、15または20分間ずらして3回2%グルタルアルデヒドの等量添加を行うことによって開始する。各注入を、2.5分間のタイムスパンにわたって投与する。
【0197】
混合を、再循環ポンプの速度を調節することによって達成する。0の時点で、ポンプを、40Hzに設定する。40Hzの速度を、一連の注入の間、およびその後10分間にわたって維持する。次いで、この速度を、反応がクエンチされる準備が整ったことがモニタリング(以下を参照のこと)によって示されるまで、20Hzに緩徐化させる。
【0198】
0の時点で、反応温度は6〜7℃である。再循環ポンプが、40Hzで反応物を混合している相の間は、温度を15〜17℃まで上昇させる。次いで、ポンプを20Hzに設定する場合に、温度を15〜17℃で維持する。
【0199】
反応のモニタリングは、高速高圧サイズ排除クロマトグラフィー方法を使用する、ポリマー分子量分配(polmer molecular weight distribution)の近実時間分析(near−real−time analysis)を含む。0の時点およびその後の各10分間目に、0.25mLのサンプルをリアクターから得て、そして冷却した改変リンゲル塩類溶液(96mM NaCl、4mM KCl)中において40倍に希釈した。次いで、25μLの希釈サンプルを、Toso−Haas TSK QC−PAK GPC300 SEC−HPLCカラムにおいて泳動する。カラム緩衝液は、50mM NaPhos、300mM NaCl(pH6.6)である。カラムを、30℃にて7.5分間、1.0mL/分で泳動する。
【0200】
クロマトグラフィーのモニタリングによって、所望されるサイズ分配が示された場合に、注入された総グルタルアルデヒドに対して最終的に4倍モル濃度過剰のボロヒドリドを達成するためにNaBH4をボーラス注入することによって(シリンジポンプのシリンジを介して)、反応をクエンチする。再循環ポンプの速度を、注入およびその後10分間にわたって40Hzに上昇させ、次いで、10Hzに低下し戻す。
【0201】
クエンチ後、溶液を、10 TOVの脱酸素化CHTロード緩衝液に対してMillipore 10K PESメンブレンを通してダイアフィルトレーションして、過剰のボロヒドリドおよび低分子量の添加物を除去する。次いで、この溶液を、酸素負荷したCHTロード緩衝液に対して手短にダイアフィルトレーションして、迅速なヘモグロビン酸素負荷をもたらす。
【0202】
所望されるポリマーの精製のために、次いで、ポリマー混合物を、BioRad 80ミクロン粒子サイズI型セラミックヒドロキシアパタイト(CHT)(予め酸素飽和CHTロード緩衝液中で平衡化)の14L BPG300カラム(20cmベッド)上にロードする。次いで、クロマトグラフィーを、低生体負荷(bioburden)条件下で酸素飽和緩衝液を用いて、8℃にて200cm/時間の線形流速で実施する。ローディング後、このカラムを、1カラム容量(CV)のロード緩衝液(10mM KPhos(pH7.0))で洗浄して、非常に高いMWのポリマーを除去する。引き続いて、このカラムを、10CVの洗浄緩衝液(75mM KPhos(pH7.0))で洗浄して、モノマーヘモグロビンを除去する(いくらかのダイマーおよびより高次のMWのオリゴマーもまた、この工程で除去される)。次いで、このカラムを、3CVの200mM KPhos(pH7.8)で溶出して、所望されるポリマーを放出する(CHT溶出緩衝液のpHは、最終処方物についてのpH所要量に依存して、7.0〜7.8で変動した)。次いで、所望されるポリマーのプールを、処方物緩衝液中にダイアフィルトレーションして、溶出塩類を除去し、そして使用のための生成物を調製する。
【0203】
(実施例7)
(ビスマレイミドトリポリエチレングリコール架橋した減少した副作用のヘモグロビンの調製)
以下の条件を使用して、SGE3937をポリマー化した。
【0204】
(材料)
オキシヘモグロビンSGE3937:15mM Tris、150mM NaCl緩衝液(pH7.7)中に40±5g/Lで約400g(ヘモグロビン濃度の分光光度測定に基づく)。
【0205】
BM[PEG]3ストック溶液:適切な量のビスマレイミドトリポリエチレングリコール(BM[PEG]3)を適切な体積のWFIと混合して、必要な試薬(ポリマー化試薬対ヘモグロビンが0:9.1モル比の計算に基づく)よりわずかに過剰な試薬を(所望の濃度で)作製することによって、0.5g/L溶液をClass 100フード中で調製した。次いで、この溶液を、0.2ミクロン膜を通して濾過した。
【0206】
N−エチルマレイミド:40mM N−エチルマレイミド(NEM)の0.5リットル溶液を、497.5gのWFIに2.5gのNEM粉末を添加することによって調製した。この溶液を、0.2ミクロン膜を通して濾過した。
【0207】
(装置)
この反応を、70Lステンレス鋼リアクター中で実施した。このリアクターは、可変速混合攪拌機、温度調節用グリコールジャケット、およびサンプル取り出し用ポート、試薬添加用ポート、および大気(atmospheric)制御用ポートを備える。
【0208】
(方法)
このリアクターを、このプロセス全体を通じて冷室の周囲温度(6〜10℃)に維持した。目標初期濃度(40±5g/L)の適切な体積の酸素化SGE3937を、Ultrafiltrationシステム2(UF−2)から大気条件下のこのリアクターへと移した。一旦このリアクター中のヘモグロビンの体積パラメーターおよび濃度パラメーターを確認すると、この攪拌機を設定して、泡/気泡生成が最小で混合が生じるようにした。一方、このBM[PEG]3ストック溶液を調製し、そして0.8:1のモル比へのポリマー化に必要な体積を、小さい圧力缶に移した。この圧力缶は、ペリスタポンプを通るチュービングを介してこのリアクターに取り付け得る。その後、この圧力缶からリアクターへのBM[PEG]3溶液を、30分間に移すような速度でポンピングすることによって、反応を開始した。
【0209】
この反応を、TosoHaas TSK−G3000SW×1 HPLCサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムを使用してモニターした。最初の添加が完了した後の時間0および15分にて、0.25mLのサンプルをこのリアクターから得、そして1g/L濃度に希釈した。希釈した20μLのサンプルを、その後、Hewlett−Packard HP1090Mクロマトグラフィーワークステーション上で、カラム上を流した。カラム緩衝液は、50mM NaPhos、300mM NaCl、pH6.6であった。カラムは、0.5mL/分で、30℃で25分間流した。
【0210】
最初の反応が進行した一方で、ポリマー化試薬の第2のアリコートを、添加圧力かに添加した。添加した体積は、さらなる0.1×モル当量のBM[PEG]3をこの反応に与える程度(そして最終的に0.9:1モル比のポリマー化試薬:ヘモグロビン)だった。この最初の反応の完了後、リアクター内の体積を(15mM Tris、150mM NaCl、pH7.7を使用して)調整して、10〜15g/Lの間のヘモグロビン濃度を得るようにした。その後、第2のBM[PEG]3添加を、第1の添加速度と同じ添加速度を使用して開始した。さらに10分間の反応時間の後、別のサンプルを引き出し、希釈し、そして上記のようにSEC分析した。
【0211】
第2の添加および反応が進行した間に、添加圧力缶をWFIで十分にリンスした。ヘモグロビンより1,5×モル過剰を得るために、適切な体積の40mM NEMを、この圧力缶に移した。所望のポリマー分子量分布を確認した後、この反応を、リアクターへのNEMの大量瞬時添加によりクエンチした。クエンチした反応混合物のポリマー分布を、上記のようにSECによりモニターした。
【0212】
クエンチングの後、この溶液を酸素条件下でUF−2へと戻した。このポリマー溶液を、Millipore 100K再生セルロース膜を通して酸素化処方緩衝液に対して限外濾過し、過剰なBM[PEG]3およびNEMを除去した。その生成物を、0.2μフィルターを通して濾過して、最終充填用生成物を調製した。
【0213】
(実施例8)
(長期貯蔵されたヘモグロビン組成物におけるヘモグロビン凝集体沈殿形成の評価)
rHB1.1、SGE3011、またはSGE3959を含むヘモグロビン組成物を、3ヶ月間にわたるヘモグロビン凝集体および沈殿の形成について試験した。メトヘモグロビンが凝集体形成に関与したので、処方緩衝液中の3つのヘモグロビンの10g/dl溶液を、10%メトヘモグロビン含量に標準化した。このヘモグロビン溶液を、3ヶ月間25℃で一定温度で貯蔵した。各ヘモグロビン溶液の25mLサンプルを、2週目、4週目、6週目、8週目および12週目に採取した。各サンプルを、112,000gで1時間超遠心分離した。そのペレットを洗浄し、そして10分間再遠心した。ペレット化したタンパク質沈殿を0.1% SDS中で再溶解し、そしてタンパク質吸光度を292nmで読取り、そしてタンパク質濃度を、タンパク質標準曲線との比較によって定量した。この実験の結果を、サンプル中の総ヘモグロビン(THb)1gあたりの沈殿mg(PPT)として図11に示す。この図にて理解され得るように、β T87Q変異を含むSGE3959は、その他は同一であるSGE3011またはrHb1.1よりも、この3ヶ月貯蔵にわたり顕著に少ない沈殿を生成した。
【0214】
(実施例9)
(オキシヘモグロビンと酸化窒素との間の反応の測定)
酸化窒素をNaOHペレットのカラムに通し、そしてこれを使用して眼圧計を徹底的に流した。嫌気性緩衝液(0.1Mリン酸化ナトリウム、pH7.4)をこの眼圧計に注入し、そしてこの酸化窒素で平衡化して、ストック溶液を作製した。このストック溶液の希釈物を、嫌気性緩衝液を含むガラスシリンジ中で作製した。酸化窒素とのオキシヘモグロビンの反応の時間経過を、Applied Photophysicsストップドフローデバイスを使用して、420nmおよび402nmで収集した。温度は20℃であった。データを収集し、そしてApplied Photophysicsにより供給されるソフトウェアプログラム!SX.17MVを使用して分析した。
【0215】
表1は、この本願にて記載される生物学的実験にて使用される種々の変異体ヘモグロビンについての酸化窒素反応性データを提供する。他の変異体ヘモグロビンについてのさらなるデータは、全体が参考として本明細書により援用されるWO/98/50430にて見出され得る。
【0216】
(実施例10)
(アカゲザルへのヘモグロビン組成物の投与後の心臓損傷形成の評価)
滅菌タンパク質溶液として調製した細胞外ヘモグロビン処方物(下記表2を参照のこと)を、投与の約30分前まで2〜8℃で冷蔵貯蔵するかまたは凍結した。
【0217】
少なくとも5匹のアカゲザル(Macaca mulatta)(好ましくは性別を混合した)を、この研究にて試験した各ヘモグロビン組成物について使用した。この研究における使用に選択した動物は、可能な限り年齢および体重を均一にした。これは、概して、約2〜6年齢であり、そしてその初期体重は約3〜6kgの範囲であった。
【0218】
行った各試験について、少なくとも5匹の動物をこの研究用に選択する最低6匹の動物に、この研究への割り当て前に包括的健康スクリーニングを行った。これら動物を(有効な量の)塩酸ケタミンで軽く鎮静させ、そしてスタッフの獣医師による完全な身体検査(腹部触診および外皮系、呼吸系および心血管系の状態の観察を含む)を行った。健康状態の研究前測定もまた、血清化学、血液学および凝固パラメータの標準群の評価、ならびに卵および寄生生物についての糞便サンプルの試験を含んだ。
【0219】
実行した各試験について、少なくとも5匹の動物を、身体検査が完了した後にこの研究に割り当てた。1日目、各動物に、1mL/kg/分の速度での試験ヘモグロビン溶液の単回静脈注射を与えた。これらの動物を、臨床的徴候および臨床的病理指標における変化について評価した。すべての動物を、投与後約4〜8時間に安楽死させた。完全剖検をすべての動物に対して実行し、そして組織を収集し、保存し、処理し、そして試験した。
【0220】
すべての動物に、20mL/kgの用量の試験ヘモグロビン溶液を与えた。投与量を、静脈注入を介して末梢静脈中に投与した。これらの動物を霊長類椅子に一時的に拘束し、そして投与カテーテルを各動物の橈側皮静脈または伏在静脈に挿入し、そして投与シリンジに連結した。このシリンジの内容物を、Harvard注入ポンプまたはその等価物を使用して、制御した速度で排出した。注入速度は1mg/kg/分(全時間約20分)であった。各動物についての絶対用量体積は、投与前日までに得た最も最新の体重測定に基づいた。用量送達の後、カテーテルを取り出し、そして各動物をそのケージに戻した。
【0221】
血清化学および/または血液学の評価用の血清サンプルを、注入開始前、注入終了時、および注入開始から1時間、2時間、4時間、8時間、24時間および48時間に、すべての動物から収集した。凝固パラメーターの評価用血清サンプルを、剖検の日(安楽死直前)に収集した。
【0222】
これらの動物を投与前一晩から注入開始4時間の時点まで絶食させ;これらには、4時間目の血液収集の後に一日の食料すべてを与え;そしてこれを再び、24時間目血液収集および48時間目血液収集の両方について血液収集前に一晩絶食させた。
【0223】
これらの動物を、ケタミンおよびBauthanasia−Dもしくは等価物により誘導した深い麻酔の下で採血によって屠殺した。食糧配給は、屠殺日の前一晩は差し控え、そして概して、少量の果物をこの期間の間に与えた。
【0224】
最後の体重を、すべての屠殺についての剖検で得た。この体重を使用して、器官/体重比を計算した。完全な総剖検を、この研究の間に屠殺したすべての動物に対して、有資格者により行った。この剖検は、死体および筋肉/骨格系、すべての表面および開口部、頭蓋骨および脳の外表面、器官および組織が結合した頸部、ならびに器官および組織が結合した胸腔、腹腔および骨盤腔の試験を含む。
【0225】
屠殺された各動物由来の心臓組織を回収し、そして中性緩衝10%ホルマリン中で保存した。
【0226】
壊死した全ての動物について、組織をパラフィン中に包埋し、区分化し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、そして光学顕微鏡で検査した。スライドを調製し、そして検査した。組織病理学検査の結果は、以下に説明する基準を用いて、表2に示す。
【0227】
解剖病理学を用いた心臓外傷の指標を定量化するために、特に2つのパラメーター(発生率および重症度)を利用した。発生率は、外傷形成の任意の証拠を提示する心臓の数を検査した心臓の数で割ることであった(例えば、2/4)。重症度は外傷強度および外傷限度の測定であり、評価する病理学者が、これを0〜4のスケール順によってランク付けした。1等級の外傷は最少とみなされ、2等級は軽いとみなされ、3等級は中程度であり、そして4等級は重症である。与えられた組織標本群において、全体の平均重症度数をまた、それぞれの影響を受けた心臓についての重症度等級を合計し、そしてその群において評価された心臓の総数で割ることによって時々算出した。
【0228】
【表2】
Figure 0005099951
外傷ヘモグロビンを減少させることを検査したヘモグロビン組成物は、SGE3011およびSGE3011(グルタルアルデヒド−修飾)であった。検査した外傷のないヘモグロビン組成物はSGE3011(グルタルアルデヒド−重合化)およびSGE3937(BM−PEG重合化オキシヘモグロビン)であった。
【0229】
(アカゲザル、ラットおよびブタに対するヘモグロビン組成物の投与後の心臓外傷形成の評価)
細胞外液SGE3487またはDCLHb(登録商標)ヘモグロビン処方物(不妊症タンパク質溶液として調製される)を、投薬の約30分前まで2〜8℃で冷蔵保存、または冷凍保存した。ヒト血清アルブミン(HSA)を、本研究のコントロールとして用い、そしてSGE3487について示したパラメーターによって処理した。
【0230】
この動物モデルにおいて、アカゲザル、ラットおよびブタを試験被験体として用いた。使用のために選択した動物を好ましくは雌雄混合し、そして可能な限り年齢および重さを均等にした。本研究で使用した動物の数および型を表3に示す。
【0231】
この動物は、本研究の設定前に包括的に精密検査を受けた。この動物をケタミンHClで軽く落ち着かせ(実施のため)、そして職員の獣医師が完全な物理的検査を行った(腹部の触診ならびに外皮状態、呼吸状態および心臓血管系状態の観察を含む)。本研究前の健康状態の決定はまた、血清化学、血液学の標準パネルの評価および凝固パラメーター、ならびに卵細胞および寄生虫についての糞便サンプルの検査を含む。
【0232】
各動物は、研究初日における望ましいヘモグロビン組成物またはHSA(表3に示されるような)の一回の静脈内注入を受けた。注入体積をそれぞれの動物の体重に基づいて算出し、そして注入ポンプを用いて約1ml/kg/分の速度で投与した。本研究で各動物に投与した全量を表3に示す。各動物についての実際の容量体積は、投薬する前日に処理した最新の体重測定に基づいた。
【0233】
血清化学および/または血液学を評価するための血液サンプルを、投与開始前、投与終了時、および2日目または14日目における検死の直前の全ての動物から回収した。凝固パラメーターを評価するための血液サンプルを、検死の日(大往生の直前)に回収した。
【0234】
この動物を、ケタミンおよびbauthanasia−Dで誘導した深い麻酔のもと、または本研究の2日目(48時間)もしくは14日目のいずれかに相当した際に、全採血することで終了した。食糧供給を、屠殺する前日に一晩差し控え、そしてこの期間中は一般的に少量の果物を供給した。最終体重を、すべての屠殺についての検死より得た。この体重を用いて、器官/体重の割合を算出した。完全な全体の検死を、本研究の間に屠殺された全ての動物に対して、資格を与えられた職員が行った。この検死は、死体および筋系/骨格系、全ての外面および開口部、頭蓋腔および脳の外面、頚状部に関連する器官および組織、ならびに胸腔、腹腔および骨盤腔に関連する器官および組織の検査を含む。
【0235】
屠殺された各動物由来の心臓組織を回収し、そして中性緩衝10%ホルマリン中で保存した。
【0236】
解剖病理学を用いた心臓外傷の指標を定量化するために、特に2つのパラメーター(発生率および重症度)を利用した。発生率は、外傷形成の任意の証拠を提示する心臓の数を検査した心臓の数で割ることであった(例えば、2/4)。重症度は外傷強度および外傷限度の測定であり、評価する病理学者が、これを0〜4のスケール順によってランク付けした。1等級の外傷は最少とみなされ、2等級は軽いとみなされ、3等級は中程度であり、そして4等級は重症である。与えられた組織標本群において、全体の平均重症度数をまた、それぞれの影響を受けた心臓についての重症度等級を合計し、そしてその群において評価された心臓の総数で割ることによって時々算出した。本研究の結果を表3に示す。
【0237】
【表3】
Figure 0005099951
これらの結果は、検査した全ての用量におけるSGE3487の投与はアカゲザルおよびブタにおける心臓外傷の発生を完全に減弱させ得たことを実証する。ラットにおける外傷の発生を明らかに示すこのデータは非常に疑わしく、そして多数の推定因子の結果であり得る。しかし、アカゲザルにおける外傷の発生を予防するためのSGE3487の能力、ヒトに対する投与を綿密に模倣する感受性霊長類モデルは、ヒトにおける心臓外傷の発生を防止する、または減少するためのその能力の抵抗しがたい証拠を供給する。
【0238】
(実施例11:ラットにおけるヘモグロビン組成物の胃腸運動異常(Dysmotility)効果の評価)
いくつかのヘモグロビン(モノマーおよびポリマーの両方とも)を、同様の量のヒト血清アルブミンの注射に比較して、胃排出に対するそれらの効果について試験した。雄Sprague−Dawleyラット(Charles River,Raleigh,NC)(体重250〜350g)を、実験前少なくとも17時間食料を枯渇させた(水は自由に与えた)。動物を、金網底のケージの中に群飼し、食糞を弱めた。実験直前には水を除去した。全てのラットを、意識のある安静状態下で研究した。
【0239】
栄養食餌は、カゼイン、コーンスターチ、粉末製菓糖および牛ブイヨンを添加した冷水中に分散させたメチルセルロースで構成された(Dropplemanら、1980)。メチルセルロース、およびカゼインを、Sigma(St.Louis,MO)から購入した。適切に分散し、均一になるように、各成分を添加した後、この混合物を徹底的にブレンドした。この食餌を、アリコートに分け、次いで使用前少なくとも24時間冷蔵し、閉じ込められた空気を逃がした。アリコートを、必要とされるまで凍結した。実験前日、食餌アリコートを、冷蔵庫中で一晩解凍した。使用直前、この食餌をおよそ28℃に温め、徹底的に混合した。各動物に、胃内チューブを介して3g(およそ3ml)の食餌を与えた。
【0240】
各ラットに、尾静脈によって試験またはコントロール物品の腹腔内注射を与え、そしてケージに戻した。処置群は、タンパク質ヒト血清アルブミン(10% HSA、コントロール溶液)、および12の異なる組換えヘモグロビン溶液を含み、これらを1500mg/kgの用量で静脈内投与した。各処置群は10〜12匹のラットからなった。試験物品投与の45分後、各ラットに3gの栄養食餌を経口で強制飼養し、再度ケージに戻した。食餌の45分後、ラットをCO2窒息により安楽死させ、そして開腹して胃を曝露した。曝露の際に、幽門および噴門を迅速に結紮し、残余食を胃内に隔離した。胃を摘出し、計重し、内容物を清掃し、そして重量(Wt.)を再度測定した。
【0241】
胃の排出パーセントを以下のように表した:
排出%=[(与えられた食事Wt.−(全胃Wt.−空胃Wt.))/与えられた食事Wt.]×100。
【0242】
結果を以下の表に示す。
【0243】
【表4】
Figure 0005099951
上記結果から理解され得るように、減少した一酸化窒素反応速度および重合は、ヘモグロビン組成物の胃腸効果を個々に改善する。しかしながら、胃排出モデルにおいて測定した場合に減少したまたは低い胃腸効果を示した試験群におけるヘモグロビンは、低い一酸化窒素反応性を有し、かつ重合された(例えば、ヘモグロビンSGE3011(グルタルアルデヒド重合)、SGE3959(BMA−PEG重合)、およびSGE3937(BM−PEG重合))。
【0244】
(実施例12:ラットにおけるヘモグロビン組成物の昇圧効果の評価)
雄Sprague−Dawleyラット(Charles River,250〜350g)を、全実験について使用した。心拍出量測定のためにパルスDoppler血流プローブ(pulsed Doppler flow probe)を、および血圧測定およびヘモグロビン輸液のために留置の動脈カテーテルおよび静脈カテーテルを、動物に慢性的に取り付けた。動物を麻酔し(50mg/kg腹腔内ペントバルビタールナトリウム)、挿管し、そして人工的に通気した(Columbus Instruments,Columbus,OH)。無菌技術を使用して、胸骨切開を行い、上行大動脈においてパルスDoppler血流プローブ(Crystal Biotech)の配置を可能にした。適切な大きさにしたプローブを選択し、確実な非狭窄適合を確実にし、そしてこれをナイロン縫合糸で適した場所で縛った。血流プローブ鉛を、胸壁を通過させ、皮下で肩甲骨領域に向け、そして皮膚下の嚢に入れた。胸部を閉じて排出させた後、ラットを換気装置から取り出し、そして全身および局所的に抗生物質を投与した。少なくとも5日の回復期間後に、ポリエチレンカテーテル(PE10)を、ハロタン麻酔下で、下行大動脈および大静脈に、それぞれ大腿動脈および静脈を介して配置した。カテーテルを、皮下で後頭部に向け、そして皮膚に縫合した保護プラスチック容器にDoppler血流プローブ鉛を入れた。再度、全身および局所的に抗生物質を投与し、そしてさらに2日間、回復期間とした。
【0245】
全ての実験について、動物を意識のある静止状態下で研究した。実験の日に、各ラットを、自由に動き回るのに十分な大きさ(25×15×12.5cm)のPlexiglas実験チャンバー中に置いた。チャンバーに新鮮な空気を継続的に流し、そして新鮮な床敷きでチャンバー床を覆った。カテーテルおよびDoppler血流プローブ鉛をチャンバーの頂部を通して送り込み、そして両カテーテルを開放し、そして滅菌したヘパリン化生理食塩水を流した。動脈カテーテルを、動脈圧測定のために圧変換機に連結し、そして静脈カテーテルをヘモグロビンまたはヒト血清アルブミン(HSA,Baxter Healthcare Corp.)を含有する注射器に連結した。HSAを、それが、一酸化窒素を消費せず、そして直接的に血管収縮を引き起こさないと仮定して、ネガティブコントロールとして使用した。血流プローブ鉛を、改変された高速度モジュール(HVPD,Crystal Biotech,Northborough,MA)に連結した。このモジュールは、偽の別名信号の検出を避けるために、125kHzのパルス繰り返し周波数で自動追跡様式で使用した。動脈圧、心拍数、および心拍出量を、Windaqデータ取得システム(Dataq Instruments,Columbus,OH)および160MHZ Pentium(登録商標)コンピュータ(Compaq)を用いて、50Hzのサンプリング周波数で連続的に記録した。
【0246】
実験環境への順応およびベースラインデータの記録に十分な時間(一般に30〜60分)の後、ヘモグロビンまたはHSAを0.5ml/分の速度で注入し、その後、2g/kgの用量を投与した。予備実験は、rHb1.1のこの用量が最大血管収縮応答を惹起することを示した。動脈圧、心拍数、および心拍出量データを、注入の完了後90分間連続的に採集した。90分データ採集期間の終わりに、フェニレフリン(3μg/kg/分、Sigma,St.Louis,MO)を、適切なカテーテル配置を確証し、そして各動物の血管応答性の質的指標を提供するために6μg/kg/分の速度で2分間注入した。フェニレフリンに対して活発な応答を示さなかった動物は、続く分析に含めなかった(<5%発生)。各動物には、ヘモグロビンまたはHSAを単回用量のみで与えた。
【0247】
カスタム設計ソフトウェアを使用して、生血流力学データを加工した。平均動脈圧、心拍数、および平均心拍出量値を、ヘモグロビン投与前および投与後30分間に5分毎で30秒間隔にわたってデータを平均することによって決定した。その後、30秒平均を、実験の終わりまで10分毎に得た。全てのデータを平均±s.e.として示す。
【0248】
平均動脈圧および心拍数は共に、ベースラインからの変化として表す。ベースライン値を、ヘモグロビンまたはHSA投与前の30分間に採集したデータの平均として計算した。心拍出量は、ベースラインからの%変化として表す。全末梢血管抵抗を、平均動脈圧および心拍出量から計算し、そしてこれもまた、ベースラインからの変化%として表す。いくつかの分子に対する応答の比較を促進するために、投与後10〜90分のデータを各動物について平均し、「累積」応答を得た。ベースラインおよび累積応答データを、一元分散分析およびNewman−Keulsの前後即因果の虚偽(post−hoc)の検定によって分析した。全ての統計学的比較のために、p<0.05を有意であるとみなした。
【0249】
重合ヘムポケット改変体SGE3011(グルタルアルデヒド重合)およびSGE3959(BMA−PEG重合)により惹起された平均動脈圧応答は、rHb1.1により惹起された応答よりも有意に低かった。これらのヘモグロビンに対する応答は、HSA投与後に観察された応答と有意に異ならなかった。1つの他の重合ヘム改変体ポケットSGE3937(BM−PEG重合)もまた、rHb1.1群において得られた応答よりも有意に少ない応答を惹起した。
【0250】
全末梢血管抵抗応答は、ヘムポケット構造の変化により、および重合により、同様に変化した。ヘモグロビン改変体のすべてが、rHb1.1応答よりも有意に少ない全身血管収縮応答を惹起した。しかしながら、SGE3959(BMA−PEG重合)に対する応答のみが、ネガティブコントロール(HSA)を用いて得られた応答を同じであった。他のヘモグロビン改変体に対する応答は、HSA応答よりも有意に大きかった。SGE3959(BMA−PEG重合)に対する応答もまた、SGE3653(グルタルアルデヒド重合)、SGE3937(BM−PEG重合)およびSGE3011を用いて得られた応答とは有意に異なった。これらの結果は、ヘムポケット変異とSGE3959(BMA−PEG重合)改変体に存在する重合および装飾との組み合わせが、2g/kg最高投与(topload)用量に対する全身血流力学応答に対する最大の効果を有すること、およびこれらの変化が、ヘモグロビン誘導全身血管収縮を本質的に除去したことを示す。
【0251】
これらの結果を、以下の表5および表6、ならびに図8および図9に示す。
【0252】
【表5】
Figure 0005099951
【0253】
【表6】
Figure 0005099951
平均分子量を増加させることおよび酸化窒物の反応性を減少させることの両方は、WO98/50430に開示されたデータにおいて示されるように、細胞外ヘモグロビン溶液の昇圧効果を独立して減少させる。上に示したデータにおいて、減少した昇圧効果(ベースラインMAPを超える20mmHg未満の増加)を示すヘモグロビンは、非常に低い一酸化窒素反応速度(約2μM-1-1)または中間の一酸化窒素反応速度(15μM-1-1未満)のいずれか、および増加した分子サイズ(ダイマーまたはポリマーのいずれか)を有する。低い昇圧効果(ベースラインMAPを超える10mmHg未満の増加)を示したヘモグロビンは、非常に低い一酸化窒素反応速度(約2μM-1-1)を有し、そして重合化された。これらの物理学的特性、SGE3937(重合化したBM−PEG)を共有する1つのヘモグロビンは、低い昇圧効果のヘモグロビンではないことに注意することは、興味深い。酸化窒素の反応性および重合化を減少させる変異の組合せは、低い昇温効果のヘモグロビンを産生することを助けるが、他の変異または代替の化学的修飾は、ヘモグロビンの昇圧効果を増加させ得る。
【0254】
(実施例13)
(マウスにおける、ヘモグロビン組成物の内毒素効果の評価)
内毒素(例えば、リポ多糖類またはLPS)は、グラム陰性細菌(例えば、Eschericia coli)に存在する生物学的に活性な分子である。精製したLPSを動物に注入することは、広範の生理学的活性を誘導し、これにより、敗血症性ショックおよび死を最大にさせ得る。内毒素の生物学的効果は、内毒素媒介物の相互作用を介して間接的に生じ、これは、細胞標的と内毒素との続く相互作用により形成される。
【0255】
Jackson Laboratoryから入手した同系交配のBALB/cByJマウスを使用して、内毒素と試験ヘモグロビン組成物との間の相互作用に関して試験した。rHb1.1,3343を含む試験ヘモグロビン、グルタルアルデヒド重合化rHb1.1,3345、2821、3010、2971、2822、3959、BMA−PEG重合化3959、3011、グルタルアルデヒド重合化3653、BM−PEG重合化3937、およびグルタルアルデヒド重合化3011を、尾静脈を介して、静脈内に1g/kgの用量でBALB/cByJマウスに投与した。LPSのストック溶液(Sigma O55−B5)を、リン酸緩衝生理食塩水中で作製した。LPSを、試験ヘモグロビン組成物またはHSAで投与した直後に、5mg/kgの用量を経皮的に投与した。マウスを、48時間までの死亡率について観測した。この結果を、図10に例示する。
【0256】
(実施例14)
(頭部障害の処置)
頭蓋内圧における血液希釈の効果、大脳の灌流圧、および流体要求は、蘇生を種々の副作用を抑えたヘモグロビン溶液と比較することによって、頭部障害をブタモデルにおいて実証し得る。
【0257】
平均動脈圧(MAP)、ヘモグロビン濃度(HP)、頭蓋内圧(ICP)、大脳灌流圧(CPP)、大脳血流(CBF;H2クリアランス)、および全流体要求を測定するために、ブタ(約40kg)を麻酔して、器具使用下に置いた。大脳酸素送達(cO2del)を計算した(CBF動脈酸素容量)。動物は、外部の力から頭部障害を刺激するために、限局的超低温脳障害を受容する。限局的超低温脳障害後に、動物を50torrのMAPまで出血させた。次いで、これらを、4cc/kgのRinger Lactate(n=6)、または10%の各々副作用を抑えた試験ヘモグロビンのいずれかのボーラスを受容するように無作為化した。Ringer Lactateを受容するグループはまた、パッケージングした赤血球細胞の形態で出血させた1時間後に、血液(この血液は、出血の間に動物から回収された血液(「シェッド(shed)血液」)である)を受容する。本発明のヘモグロビン溶液を受容するグループは、ヘモグロビン濃度が上記のように、5g/dl未満に下がった場合にのみ、シェッド血液を受容する。可変性は、超低温脳障害の作製の5分後、出血の開始後1時間以内、蘇生後の間隔で、ベースライン(BL)で測定される。
【0258】
出願人は、本発明のヘモグロビンを受容する各々のグループが、蘇生後により高いCPPおよびより低いICPを有することを予想する。障害の24時間後に出血力学的安定性を維持するのに必要とされる流体の体積は、Ringer Lactateを受容するグループにおいてよりも、本発明のヘモグロビンを受容するグループにおいて顕著により少ない。傷害半球における領域性CBFにおける統計学的に有意な差異は、このグループ間で観測されなかった。本発明のヘモグロビンを受容したグループにおいて、顕著にHbの濃度が低下したにもかかわらず、大脳への酸素の送達は、任意の時間において、Ringer Lactateを受容するグループにおけるものと有意に違わなかった。
【0259】
本発明のヘモグロビンを受容するグループにおいて観測されると予想される、増加したCPP、より低下したICP、およびより低い流体要求は、このようなヘモグロビン調製で血液希釈することにより、動物の頭部障害の早期維持において利点があり得るということを実証した。
【0260】
(実施例15)
(血液量減少の処置)
雄性Sprague−Dawleyラット(350g)を、ウレタンを用いて麻酔した。内在動脈および静脈を、平均動脈圧(MAP)、心拍数(HP)を継続的にモニタリングするため、ならびに血液量減少の発生、血液化学のための血液のサンプリングおよび代謝徴候(ベース欠乏)用に血液を取り出すために配置した。動物を、約10mL(1mL/分の速度)の血液まで出血させ、35〜40mmHgのMAPおよび約12mmol/Lのベース欠乏を生じるように、90分間この状態に維持した。各々のラットを、四つの処置グループ(n=グループあたり6匹の動物)の内1グループで決定し、これを、以下の溶液で置換した100%の体積を用いて蘇生した:
I. rHb 1.1
II. rHb 3011
III.DCLHb
IV. ヒト血清アルブミン(HSA)。
【0261】
全ての溶液を、1.0mL/分の速度で注入した。全てのヘモグロビン溶液を、実施例6および7でのように調製した。
【0262】
以下のヘモグロビン(MAP)は、100mmHg〜45mmHgのベースラインまで減少したが、蘇生後30分と60分後に、MAPにより、降圧(約75mmHg)を維持したHSAラットを除いて全ての処置グループにおいて、約125mmHgまでのベースライン超えて上昇した。
【0263】
出血後に、HRは、375〜390bpmから330〜350bpmのベースラインまで減少した。心拍数は、蘇生の30分および60分後の全体にわたって全ての処置グループにおいて変化したままであったが、全てのグループは、ベースラインレベルを下回ったままであった。
【0264】
出血後に、ベース欠乏は、約2mmol/L〜約12mmol/Lのベースラインまで減少するが、蘇生の60分までに、全処置グループは、約6〜8mmol/Lまで部分的に回復した。
【0265】
要約すると、本発明の10%のヘモグロビン溶液(rHb3010)は、MAPを回復し、そして出血および蘇生のラットモデルにおいて正常値へベース欠乏を再上昇させた。心拍数は、ベースラインレベルまで回復しなかったが、生命を維持するための十分な範囲内を維持した。
【0266】
(実施例16)
(完全血液量不変(isovolemic)交換輸液の研究)
この実施例は、赤血球不在の酸素輸送におけるRL変異体ヘモグロビンの能力を例証する。麻酔したオスのSprague−Dawleyラットをカテーテル挿入により短期間にヘモグロビン注入を行い、血液を止めて血圧を測定し、そして麻酔を維持して酸素摂取を持続して測定するための呼吸計を装着した。血圧パラメータおよび体温を、本実施例を通して持続的にモニターした。定期的に動脈血サンプルおよび静脈血サンプルを、血液ガス、酸素含量、ヘモグロビン濃度、およびヘマトクリット値の測定のために採取した。安定化およびベースライン値の記録の後に、完全血液量不変交換輸液をヘモグロビン変異体(8g/dl)または高張に合わせたヒト血清アルブミン(HSA)で、ヘマトクリットが最初のレベルの約45%から名目上の値の2%未満に下がるまで(約55分)3ml/分/kgで実施した。全てのヘモグロビン溶液を、同じコロイド高張圧になるようHSAで調整した。測定を最高で60分間続け、続いて交換を停止した。ヘモグロビン変異体での交換の最後に、組換えヘモグロビンの循環のレベルは、約7−7.5g/dlであった。HSAを受容した動物において、酸素摂取は、急速に減少し(ヘマトクリットは20%未満の減少)、そして交換の最後まで生存した動物は、いなかった。予期したように、動脈の塩基過剰および静動脈の酸素含量の交換はまた、顕著に減少した。ヘモグロビン濃度が低レベルに落ちる(<3g/dl)などの減少の前に、酸素抽出は、初め増大した。対照的に、ヘモグロビン変異体の交換は、コントロールのレベルに近い、酸素摂取量を維持した。酸素抽出は、循環中の低ヘモグロビン濃度を補うため増大し、そして静動脈の酸素含量を基礎レベルに維持することを可能にした。RLヘモグロビンを受容したすべての動物は、この実施の名目上の最後(交換後60分)まで生存した。これらの結果は、RL変異体が効率的に酸素の輸送および運搬を行うことを例証し、そして基礎代謝状態において、嵌入した酸素運搬を伴わずにNO除去の動態が、有意に変化し得ることを例証した。
【0267】
(実施例17)
(副作用減少ヘモグロビンで処置したラットにおける病巣の脳虚血につづく梗塞の体積の効果)
ヘモグロビンは、一酸化窒素(これは脳虚血の最中の神経毒または神経保護に関連する)を結合することが知られる(Am J Physiol 267:H276〜H284、1994)。ラットの脳虚血障害におけるその影響を、4つの異なる組換えヘモグロビン組成物について評価した。
【0268】
Animal Care Committeeによる承認の後、ラットをイソフルランで麻酔した。生理学的パラメータを制御し、虚血前にラットは以下のものの一つを受容する:
1.コントロール(n=8)−ヘマトクリット処置なし
2.rHb1.1(n=6)−組換えrHb1.1の10%溶液を用いたヘマトクリットの30%への減少(k’NO OX'=58μM-1-1
3.SGE3011(n=7)−NO活性の減少させる組換え単量体ヘモグロビンの10%溶液を用いたヘマトクリットの30%への減少(k’NO OX=2.5μM-1-1
4.グルタルアルデヒドポリマー化rHb1.1(n=8)−グルタルアルデヒド架橋組換えrHb1.1の10%溶液を用いたヘマトクリットの30%への減少(k’NO OX=58μM-1-1
5.ポリマー化SGE3011(n=7)−NO活性の減少させる組換え−ポリマー化ヘモグロビンの10%溶液を用いたヘマトクリットの30%への減少(k’NO OX=2.5μM-1-1
頭蓋骨局部切除術を経て、中大脳動脈を180分間閉塞し、120分の再灌流を許容し、そしてTTC染色により梗塞体積を評価した。梗塞体積(mm3、平均±標準偏差)は、コントロール群では194±31であり、rHb1.1群では193±34であり、そしてGLX−rHb1.1群では175±44であり;そして梗塞体積は、コントロール群およびrHb1.1群よりrHb3011群のほうが少なく(142±28);そしてそして梗塞体積は、コントロール群、rHb1.1群およびGLX−rHb1.1群よりPoly−rHb3011群において有意に少なかった(110±39)。
【0269】
(実施例18)
(放射線治療の増強)
副作用減少ヘモグロビン組成物溶液の放射線治療の効果を増大する能力をラットにおいて例証し得る。副作用減少ヘモグロビン組成物は、約10g/dlのヘモグロビンである。
【0270】
Sprauge−Dawleyラット(体重 約200〜250g)に約1×107の骨原性肉腫細胞を含む溶液を右臀部に0.1ml注入する。腫瘍を体積約1.5cm3まで成長させることを許容する。ラットをいくつかの群に分割する(n=約10動物/群):
I.任意の放射線なしでリンゲル乳酸(Ringer’s lactate)を10ml/kg与えられる
II.単回の4Gyのγ線量とリンゲル乳酸10ml/kg与えられる
III、その他.単回の4Gyのγ線量と各副作用減少ヘモグロビン溶液10ml/kg与えられる
実施の日に、動物をキシラジン(20mg/ml)およびケタミン(100mg/ml)の3:7の混合物を初期用量1.2ml/kg用いて麻酔し、その後に麻酔を維持するため同じ麻酔溶液を0.6ml与える。動物を温パッドに置き、そして動物の体温を38〜39度に維持する。
【0271】
全ての溶液は、尾静脈より投与される。放射線照射は、2時間後に実施される。骨肉腫を放射線照射前、放射線照射の1週間後、2週間後、3週間後、および最終的に4週間後に測定する。1.5cm3より大きな骨肉種は、OxySpot/OxyMap器具によって決定されるように組織表面の酸素圧力が0〜5トールであり、低酸素になっている。出願人は、腫瘍の成長が続くリンゲル液コントロール群に比較して、副作用減少ヘモグロビン溶液を受けた群においては、放射線照射と組み合わせた副作用減少ヘモグロビンの投与4週間後に、非常に減少した肉腫が見られることを予期する。
【0272】
(実施例19)
(化学療法の増強)
副作用減少ヘモグロビン組成物の化学療法の効果を増大させる能力は、ラットにおいて例証され得る。この実施例で用いられる化学療法薬剤は、シクロホスファミド(CTX)である。副作用減少ヘモグロビン組成物は、約10%重量/体積のヘモグロビンである。
【0273】
Sprauge−Dawleyラット(体重 約200〜250g)に約2×106のFsaII繊維肉種細胞を含む溶液を右臀部に0.1ml注入する。腫瘍を体積約1.5cm3まで成長させることを許容する。ラットをいくつかの群に分割する(n=約10動物/群):
I.任意の化学療法剤なしでリンゲル乳酸(Ringer’s lactate)を10ml/kg与えられる
II.100mg/kgのCTXとリンゲル乳酸10ml/kg与えられる
III、その他.100mg/kgのCTXと各副作用減少ヘモグロビン溶液10ml/kg与えられる
実施の日に、動物をキシラジン(20mg/ml)およびケタミン(100mg/ml)の3:7の混合物を初期用量1.2ml/kg用いて麻酔し、その後に麻酔を維持するため同じ麻酔溶液を0.6ml与える。動物を温パッドに置き、そして動物の体温を38〜39度に維持する。ヘモグロビン溶液は、尾静脈より投与され、CTX溶液は、ヘモグロビン溶液を投与した直後に腹腔内注射により投与される。薬剤細胞毒性の十分な発現および潜在的な致死的ダメージの修復のための処置の24時間後にそれらの動物を殺害する。滅菌条件下において腫瘍を切除し、単独の細胞の懸濁液をコロニー形成アッセイのため調製する。一週間後にプレートをクリスタルバイオレッドを用いて染色し、そして50細胞以上のコロニーを計数する。
【0274】
骨髄細胞毒性を以下のように決定する:骨髄細胞を腫瘍切除アッセイに用いたものと同じ動物より摘出し、そしてコロニー形成アッセイを同様にして行う。少なくとも50細胞のコロニーをアキュライト(acculite)コロニー計数器で記録する。
【0275】
出願人は、CTXが繊維肉腫細胞を死なせることが観察されることを予期する。しかし、副作用減少ヘモグロビン組成物を用いた同時処置は、繊維肉腫細胞死の有意な増加および骨髄細胞へのCTXの毒性の増加を生じる。
【0276】
(実施例20)
(テトラキス−(3−マレイミドプロピル)ペンタエリスリトール架橋した、低副作用ヘモグロビンの調製)
4本アーム(4−arm)架橋剤(テトラマレイミド誘導体化ペンタエリスリトール(以下を参照))を、Molecular BioSciences, Inc.(所在地Boulder, Colorado)(カタログ番号19847)から購入した。この架橋実験のために選択されたヘモグロビン(3927)は、ジα鎖(dialpha chain)の158位(Aへリックスにおいて、第2αドメインの16位)に単一の表面システインを含み、βサブユニットの93位のシステインは、任意の副反応を除去するためにアラニンに変異されていた。このヘモグロビンはまた、イニシエーターメチオニン、αサブユニット間のグリシンリンカー、およびβT87Q変異と共に、rHb3011において見出されるヘムポケット変異を含んでいた。
【0277】
【化37】
Figure 0005099951
3927のオキシ形態を、50mM HEPES pH7.5で平衡化したSephadex G25(Pharmacia PD−10)カラムに通し、次いで、約90g/L(540nmにおいてε=0.8372Lg-1cm-1)まで濃縮する。150μLの90g/L rHb3927(0.210μmol)を、氷上で13×100mm試験管に移し、そしてDMSO(0.052μmol)中の7.23μL 5/gLのテトラマレイミドペンタエリスリトールを、一度に震盪しながら添加した。この試験管をシールし、そして一酸化炭素を、反応混合物上に吹き込んだ。反応系を氷上に放置し、そして5μLのアリコートを、種々の時点でHPLCによるサイジングのために採取した。
【0278】
3927出発物質は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により確認されたように、単一の種であった。3時間で、反応は、出発物質のほとんど3分の2を消費した。21時間で、SECは4つのピークを与え、これらは、テトラHb、トリHb、ジHb、およびモノHb(それぞれ、6.4%、63.9%、5.8%および23.9%)に帰属され、これらより高い分子量部分は無かった。22時間において、別のDMSO(0.012μmol)中1.71μL 5g/Lテトラマレイミドペンタエリスリトールを、残される出発物質の量を減らす試みで、反応系に添加した。この反応系を、週末の間氷上に放置した。最終のSECトレース(図13)は、同じ4つのピークを異なる割合で(9.2%テトラHb、74.4%トリHb、10.0%ジHb、およびモノHbわずか6.4%)与えた。
【0279】
4当量の単一表面システインヘモグロビンと、1当量のテトラマレイミドペンタエリスリトールとの反応は、ポリマーヘモグロビンの不連続な分布を生じた。この不連続なポリマーは、おそらく立体障害に起因する、少量の4つのヘモグロビンサイズの種とともに、主に3つのヘモグロビンのサイズであった。非常に少量の出発ヘモグロビンが残っており、そして4つのヘモグロビンより大きなサイズ範囲のものは見られなかった。モノ官能基化ヘモグロビンおよびポリ官能基化多重アームリンカーを利用する、この重合ストラテジーは、マレイミド以外の官能基を用いて、および/またはコアペンタエリスリトールと官能基との間のより長いアームを用いて、ヘモグロビンのトリマーよりもテトラマーを達成するために試みられ得る。
【0280】
(実施例21)
(ビスマレイミドアラニルポリエチレングリコール3700架橋した低副作用ヘモグロビン(SGE3959)の調製)
材料:
デオキシSGE3959:40mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.1〜9.2)中の約72kg/L(Hb濃度の分光測光学的決定に基づく)で約0.3kg。
【0281】
BMA−PEG−3700ストック溶液:約103g/L溶液を、BMA−PEG粉末を、適切な容積のWFIと混合し、次いで0.2ミクロンの膜を通して濾過することにより、Class100フードにおいて調製した。調製されたPEG試薬の濃度および容積は、反応容器に添加した後、反応混合物が60g/Lの濃度でHbを含み、Hbに対して5倍モル濃度過剰のBMA−PEGが存在するような濃度および容積であった。
【0282】
N−アセチル−システイン:1M N−アセチル−l−システイン(NAC)の0.5リットル溶液を、81.6gのNAC粉末を脱酸素化した1.2N NaOHに、0.5Lの最終容積まで添加することにより調製した。この溶液を、0.2ミクロンの膜を通して濾過し、そして使用まで脱酸素環境に維持した。
【0283】
デオキシグルコナート電解質溶液:グルコナート電解質溶液の100リットル溶液を、WFI中に0.68kgのNaCl、30gmのKCl、および0.52kgのグルコン酸ナトリウムを溶解させることにより調製した。この溶液を窒素ガスを通気することにより脱酸素化した。
【0284】
デオキシリン酸緩衝液:リン酸緩衝液の5リットル溶液を、WFI中に62gmの一塩基リン酸二水素ナトリウムおよび308gmの二塩基リン酸水素二ナトリウムを溶解させることにより調製した。この溶液を窒素ガスを通気することにより脱酸素化した。
【0285】
装置:
反応を、速度可変混合攪拌機、温度調節用外部加熱パッド、ならびにサンプル引き抜き、試薬添加および雰囲気制御のためのポートを含む、11Lのステンレス鋼反応容器で行った。
【0286】
反応後混合物の限外濾過を、2m2のMillipore Biomax 30ポリエーテルスルホン膜、ローブ型ポンプ、および20リットルレザバを窒素雰囲気下で保持する冷却限外濾過ループで行った。
【0287】
方法:
反応容器を酸素パージし、そして窒素雰囲気下に置いた。標的初期濃度(72±5g/L)の適切な容積の脱酸素化SGE3959を、無酸素条件下でこの反応容器に移した。一旦、反応容器内のヘモグロビンの容積パラメータおよび濃度パラメータが、確認されると、反応容器の温度を、25℃に設定し、そして攪拌機を最少の泡沫/気泡生成を伴って混合が起きるように設定した。同時に、BMA−PEG溶液を調製し、そして重合に必要な容積を低圧缶に移した。圧力缶を、蠕動ポンプを通って延びるチューブを介して反応容器に装着した。BMA−PEG溶液を、缶内の酸素レベルが30ppm未満に低下するまで、窒素ガスでこの溶液を散布することにより脱気した。
【0288】
25℃の反応容器で、BMA−PEG溶液を圧力缶から反応容器へ、必要な容積が5分間で移されるような速度でポンピングすることにより、反応を開始させた。
【0289】
この反応を、Pharmacia Superdex200 HR10/30サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムを使用してモニターした。ゼロ時点およびその後0.5時間ごとに、0.25mLのサンプルを反応容器から取り、そして冷リン酸緩衝化溶液で40倍に希釈した。次いで、希釈されたサンプルの20μLを、Hewlett−Packard HP1090Mクロマトグラフィーワークステーションで、カラムに通した。カラム緩衝液は、50mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.0であった。このカラムを、0.7mL/分で周囲温度で30分間流した。
【0290】
反応が進行する間に、添加(additions)圧力缶をWFIでよくリンスした。適切な容積の1M NACを、この圧力缶に移した。次いで、この缶を上記のように脱酸素化されるまで窒素を散布した。
【0291】
クロマトグラフィーモニタリングが、所望のサイズ分布を示した場合、反応をNACのボーラス添加により、BMA−PEGよりも20倍過剰になるようにクエンチする。NAC添加の直後、反応容器の温度を8℃に設定する。反応混合物をその後0.5時間ごとに、メトヘモグロビンについての分光測光アッセイによりモニターした。メトヘモグロビンレベルが(NACによる還元に起因して)最少になった場合に、反応のクエンチが完了したとみなす。
【0292】
クエンチング後、反応混合物をデオキシ条件下で限外濾過システムに移して約10℃に冷却した。Millipore Biomax 30(30KDa)ポリエーテルスルホン膜を使用して、反応混合物(約80gmHb/リットル濃度)を、デオキシグルコナート電解質溶液を用いて3透容積(diavolume)に対して透析濾過(diafilter)した。次いで、0.67リットルのデオキシリン酸緩衝液を、ヘモグロビン溶液1リットルについて添加し、pHを生理学的範囲(約pH7)にした。グルコナート電解質溶液を用いたさらなる13透容積についての透析濾過により、遊離のBMA−PEG、NAC、元の反応混合物由来のリン酸塩およびホウ酸塩を除去した。ヘモグロビン溶液の濃度を、膜を通る浸透を除くことにより100g/Lに上昇させ、次いでTween−80およびNACを、それぞれ0.075%および9.2mMのレベルまで添加し、処方産物を生じた。
【0293】
最終処方産物を、Superdex200SECによりサイズ分布について分析した。クロマトグラフィーを、414nmの波長における検出で上記のように行った。水平ベースラインが引かれ、そして垂直積分線が全ての谷から落ちるように、HPLC積分パラメータを設定した。得られたクロマトグラム(代表的プロファイルについては図15を参照のこと)を、SEC標準タンパク質(Bio−Radカタログ番号151−1901)のクロマトグラムと比較した。このタンパク質標準を、ポリマー種の正確な分子サイズ分布を測定するために、同一の条件下で波長280nmでの検出を用いて流した。
【0294】
PEG反応が複雑な不均一混合物を生じ、かつSEC法は分子を絶対的な分子量ではなく流体力学半径に基づいて分離するので、注入用SGE3959は、そのSECプロファイル(図15)の形状、およびそのSECピーク下の積分面積により特徴付けられていた。
【0295】
SECプロフィールは、2つの主なピークを有することにより特徴付けられる:1つのピークは、約17分の保持時間(RT)を有し、そして別のピークは、約14分のRTを有する。谷部分からの垂直方向の積分線(vertical integration line)は、約15分の時間に対応する点で、ベースラインと接触する。従って、積分したクロマトグラフィープロフィールは、代表的には、2つの分離されたピーク面積を有する。約14分のRTを有するピークは、見かけの分子量>158kDa(158kDaの分子量を有するγグロブリン標準は、約16分のRTのピークを有する)を有するPEG−ヘモグロビンに対応する。このピーク下の物質の大部分は、<670kDaの見かけの分子量(670kDaの分子量を有するサイログロブリン標準は、約12分のRTのピーク有する)を有するポリマー種であるが、少ない割合がより高い見かけの質量を有する。17分付近のRTを有するピークは、MW>65kDa(モノマーHbは、約21分のRTのピークを有する)を有するPEG−ヘモグロビンに対応する。代表的には、垂直方向の積分線の左側のピーク面積は、総面積の約40〜50%を示すが、線の右側の面積は、総計の他方の50〜60%を占める。質量分析器と同調したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC−MS)は、分子の約半分(その大部分が15分の線の右側のピーク下のある)は、PEG−修飾(decorated)および/または内部架橋モノマーである。この分析により、残留分子は、ダイマー、トリマー、およびより高い次数のマルチマー、PEG修飾の種々の組合せを有する全て、ならびに、分子内PEG架橋および分子間PEG架橋である。種のスペクトルにわたる1モルのヘモグロビンあたりのPEGの平均モル比は3(2〜非常に修飾された種について11までの範囲を有する)である。
【0296】
(実施例22)
(ビスマレイミドアラニルポリエチレングリコール3700の調製)
(架橋は、ヘモグロビン−SGE3487の副作用を減少させた)
材料:
デオキシSGE3487:40mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.1−9.2)中、約78g/L(Hb濃度の分光学的測定に基づく)で、約1kg。
【0297】
BMA−PEG−3700ストック溶液:約111g/Lの溶液を、クラス100フード中で、BMA−PEG粉末と、WFIの適切な容量とを混合し、次いで、0.2ミクロンの膜を通して濾過することにより、調製した。調製したPEG溶液の濃度および容量は、反応装置への添加後、反応混合物が、65g/Lの濃度でヘモグロビンを含み、かつこれらがヘモグロビンよりも5倍過剰のBMA−PEGであるようなものである。
【0298】
N−アセチル化−l−システイン:1M N−アセチル化−l−システイン(NAC)の2リットル溶液を、脱酸素した1.2N NaOHに対して2.0Lの最終容量まで326.4gのNAC粉末を添加することにより調製した。この溶液を、0.2ミクロンの膜を通して濾過し、そして使用まで、脱酸素化環境を維持した。
【0299】
デオキシグルコネート電解質溶液:グルコネート電解質溶液の300リットル溶液を、WFI中に、2.05kgのNaCl、90gのKCl、および1.57kgのグルコン酸ナトリウムを溶解させることにより調製した。この溶液を、窒素ガスを用いて十分にバブリングすることにより、脱酸素させた。
【0300】
デオキシホスフェート緩衝液:ホスフェート緩衝液の5リットル溶液を、WFI中に62gのリン酸2水素ナトリウムおよび308mgのリン酸水素二ナトリウムを溶解させることにより調製した。この溶液を窒素ガスを用いて十分にバブリングすることにより、脱酸素させた。
【0301】
(装置)
反応を、22Lのステンレス鋼の反応装置(可変速度の混合撹拌器、温度調節のための外部加熱パッド、およびサンプル回収、試薬添加、ならびに大気制御のためのポートを備える)中で行った。
【0302】
反応後の混合物の限外濾過を、冷却限外濾過ループ(窒素雰囲気下で、3m2のMillipore PLCHK膜、葉型(lobe−type)ポンプ、および20リットルのレザバを保持する)冷却した中で行った。
【0303】
(方法)
反応装置の酸素をパージし、そして窒素雰囲気下においた。標的化初期濃度(78±6g/L)での脱酸素化SGE3487の適切な容量を、無酸素条件下で反応容器へと移した。一旦、反応装置中のヘモグロビンの容量パラメーターおよび濃度パラメーターを検証すると、反応装置の温度を25℃に設定し、そして混合が、攪拌器を、混合が最小限の泡(foarm/bubble)の生成を生じるように設定した。一方で、BMA−PEG溶液を調製し、そしてポリマー化に必要な容量を、小さな気密缶(puressure can)に移した。気密缶を、蠕動ポンプを介して作動するチューブを通じて反応装置に取り付ける。BMA−PEG溶液を、缶内の酸素レベルが30ppm未満に低下するまで、窒素ガスを溶液に散布することにより脱気した。25℃での反応容器では、反応を、要求される容量を5分間で移すような速度での、気密缶から反応装置へのBMA−PEG溶液のポンピングにより開始した。
【0304】
反応をPharmacia Superdex200 HR10/30サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムを用いてモニタリングした。0時点、その後0.5時間毎に、0.25mlのサンプルを反応容器から得、そして冷リン酸緩衝化生理食塩水中に40倍に希釈した。次いで、20μLの希釈サンプルを、Hewlett−Packard HP1100クロマトグラフィーワークステーションのカラムにかけた。カラム緩衝液は50mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl(pH7.0)であった。カラムを0.7mL/分で、環境温度にて、30分間行った。
【0305】
反応が進行する間、追加の気密缶をWFIを用いて十分にリンスした。適切な容量の1M NACをこの気密缶に移した。次いで、この缶を上記のように脱酸素されるまで窒素を散布した。
【0306】
PEG反応を3.5時間進行させ、その後、この反応を、BMA−PEGよりも20倍モル過剰に達するまでのNACのボーラス添加によりクエンチした。反応混合物を、その後、メトヘモグロビンについての分光学的アッセイにより、0.5時間毎にモニタした。このクエンチング反応を、メトヘモグロビンレベルが、(NACによる還元に起因して)最小化される場合に完了とみなした。
【0307】
クエンチングの後、反応混合物を、脱酸素条件下で限外濾過システムに移し、そして約10℃まで冷却した。Millipore PLCHK(100KDa)再生セルロース膜を用いて、反応混合物を、約50g Hb/リットルの濃度で、デオキシグルコネート電解質溶液を用いて3ダイア容量(diavolume)をダイアフィルトレートした。次いで、0.1リットルのデオキシホスフェート緩衝液を1リットルのヘモグロビン溶液あたり添加して、pHを生理学的範囲(pH7)に動かした。グルコネート電解質溶液を用いる、さらなる10ダイア容量のダイアフィルトレーションは、遊離のBMA−PEG、NAC、ホスフェート、およびホウ酸を、本来の反応溶液から取り除いた。ヘモグロビン溶液の濃度を、膜を通じる透過物を取り除くことにより、100g/lまで上昇させ、次いで、NACを最終濃度9.2mMまで添加し、処方した生成物を得た。
【0308】
処方した生成物(注入のためのSGE3487)を、Superdex200SECによるサイズ分布について分析した。クロマトグラフィーを、414nmの波長での検出を用いて上記のように行った。HPLCの積分パラメータを、水平方向にベースラインを引き、かつ垂直方向の積分線を各谷部分から下降させるように設定した。得られたクロマトグラム(それぞれのプロフィールについて図16を参照のこと)を、SEC標準タンパク質(BioRadカタログ番号151−1901)のクロマトグラムと比較した。タンパク質標準を、同一の条件下で実施し、そして280nmの波長での検出を用いて、ポリマー種の見かけのサイズ分布を測った。
【0309】
PEG反応は、複合体(不均一な混合物)を誘導するので、そしてSEC法は、流体力学的半径に基づき、かつ絶対分子量に基づかないで分子を分離するので、注入のためのSGE3487は、そのSECプロフィール(図16)の形およびそのSECピーク下の積分した面積により特徴付けられている。
【0310】
SECプロフィールは、2つの主なピークを有することにより特徴付けられ得る:1つのピークは、約17分の保持時間(RT)を有し、そして別のピークは、約14分のRTを有する。ほとんどの場合では、第3のピーク(約10.5分のRTを有する)をまた規定した。谷部分からの垂直方向の積分線(vertical integration line)は、ほぼ11分および15分の時間に対応する点で、ベースラインと接触する。従って、積分したクロマトグラフィープロフィールは、代表的には、2つまたは3つの分離されたピーク面積を有する。約10.5分のRTを有するピークは、見かけの分子量>670kDa(670kDaの分子量を有するサイログロブリン標準は、約12分のRTのピークを有する)を有するPEG−修飾ヘモグロビンに対応する。約14分のRTを有するピークは、見かけの分子量>158kDa(γグロブリン標準は、約16分のRTのピークを有する)を有するPEG−ヘモグロビンに対応し、そして約17分のRTを有するピークは、MW>65kDa(モノマーヘモグロビンは、約21分のRTのピークを有する)を有するPEGヘモグロビンに対応する。代表的には、15分の垂直方向の積分線の左側のピーク面積は、総面積の約50%を示すが、線の右側の面積は、総計の他方の半分を占める。質量分析器と同調したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC−MS)は、分子の約半分(その大部分が17分の線の右側のピーク下のある)は、PEG−修飾(decorated)および/または内部架橋モノマーである。この分析により、残留分子は、ダイマー、トリマー、およびより高い次数のマルチマー、PEG修飾の種々の組合せを有する全て、ならびに、分子内PEG架橋および分子間PEG架橋である。種のスペクトルにわたる1モルのヘモグロビンあたりのPEGの平均モル比は3(2〜非常に修飾された種について11までの範囲を有する)である。
【0311】
(実施例23)
(ラット膵臓酵素モデル)
Sprague−Dawley雄性ラット(体重約250〜300g)を、6ml(100mg/kg〜2g/kg)までの用量を最高荷重として、尾静脈を介して種々のヘモグロビン溶液を投与して、血清リパーゼおよび血清アミラーゼのレベルに対するプロビデンス変異(providence mutation)(bk82D)の影響を決定した。ラットに、組換えヘモグロビン1.1、組換えヘモグロビン3345、組換えヘモグロビン3011、または組換えヘモグロビン3010投与した。組換えヘモグロビン1.1および3345は、プロビデンス変異を含む3345以外のタンパク質配列と一致する。同様に、組換えヘモグロビン3011および3010は、プロビデンス変異を含む3010以外のタンパク質配列と一致する。血清サンプルを、注入の前および組換えヘモグロビンの投与の1、2、4、8、および24時間後に、ラットから得た。血清アミラーゼおよび血清リパーゼのレベルを、一般に、当業者に公知の標準的臨床アッセイを用いて決定した。
【0312】
図17(a)および17(b)は、血清リパーゼレベルに対するプロビデンス変異の効果を示す。血清リパーゼレベルは、投与される組換えヘモグロビンがプロビデンス変異を含む場合、24時間の観察時間にわたり低かった。プロビデンス変異は、血清アミラーゼレベルに影響しなかった。
【0313】
従って、記載される本発明は、血清が種々の方法で改変され得ることが明確である。このような変動は、本発明の精神および範囲から逸脱しないと考えられ、そして全てのこのような改変体および等価物の全ては、当業者に明確であるように、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、特定の変異誘発および発現実験に用いたプラスミドpSGE728を示す。
【図2】 図2は、pSGE728中に挿入されたα遺伝子の部分的制限マップを示す。
【図3】 図3は、pSGE728中に挿入されたβ遺伝子の部分的制限マップを示す。
【図4】 図4は、アカゲザルの左心室からの正常筋肉組織を示す顕微鏡写真である。200倍。線状の筋肉繊維のパターンを形成する筋肉細胞の整然としたパッキングに注目のこと。正常筋肉細胞組織にはリンパ球およびマクロファージがないことにも注目のこと。損傷のないその全心臓がこのような正常組織からなるサルは、スコア「0」が与えられる。
【図5】 図5は、アカゲザルの左心室からの筋肉組織中の最小の心臓損傷を示す顕微鏡写真である。200倍。損傷領域は、周囲の正常な線状の筋肉組織と比較して整然としておらず、しかも損傷中の細胞の境界がもはや明瞭ではないことに注目のこと。さらに、ここで、矢印の上に見られる損傷中のリンパ球およびマクロファージの存在に注目のこと。ダメージを受けた細胞、リンパ球,およびマクロファージの存在は、当業者である病理学者に、損傷がサルの寿命の最近の2〜3日内に生じたことを示す。
【図6】 図6は、アカゲザルの左心室からの筋肉組織中の中程度の心臓損傷を示す顕微鏡写真。200倍。損傷領域が、図5中の最小心臓損傷より有意に大きいことに注目のこと。さらに、損傷中のリンパ球およびマクロファージが多く存在することに注目のこと。
【図7】 図7は、Sprague Dawleyラットにおける、いくつかの組換えヘモグロビン組成物、ジアスピリン架橋ヘモグロビン(DCLHb)およびヒト血清アルブミン(HSB)の胃を空にする効果を示す。タンパク質用量は、各ヘモグロビン組成物およびHSAについて1500mg/kgであった。「モノHbs」は、単一−テトラマーヘモグロビン種(分子量約64,000)をいい、「ジHbs」は、遺伝子的に融合されている2つのヘモグロビンテトラマー(分子量約128,000)を示し、そして「ポリHbs」は、化学的に架橋されている2つ以上のヘモグロビンテトラマーを示す。試験されたヘモグロビン組成物の胃を空にする効果は、コントロールHSAの%として表されている。
【図8】 図8は、組換えヘモグロビン組成物およびヒト血清アルブミンに対するSprague Dawleyラットにおける平均動脈圧(MAP)を示す。HSAは、注入容量および膨張コントロールとして投与された。タンパク質用量は組換えヘモグロビンおよびHSAについて2000mg/kgであった。MAPにおける変化は、投与後10〜90分のベースライン(投与前30分に開始する期間の平均動脈圧)からの血圧の平均変化から算出した。
【図9】 図9は、組換えヘモグロビン組成物およびヒト血清アルブミンに対するラットの全末梢耐性応答(TPR)を示す。HSAをコントロールとして投与した。タンパク質用量は組換えヘモグロビンおよびHSAについて2000mg/kgであった。TPRにおける変化は、ベースラインからの変化の%として表されている。TPRにおける変化は、投与後10〜90分のMAPにおける変化を、同じ期間の間の平均心拍出量における変化で除することにより算出した。
【図10】 図10は、表6に提示されるような、5mg/kg精製LPSおよび1000mg/kgの試験ヘモグロビン溶液を注入した同系繁殖体BALB/cByJマウスの48時間生存率を示す。5mg/kg精製LPSおよび1000mg/kgHSAを注入したマウスをコントロールとして用いた。
【図11】 図11は、ヘモグロビン改変体の沈殿物形成の比較を示す。rHB1.1、SGB3011、およびSGE3959を含むヘモグロビン組成物を、3ヶ月の期間に亘るヘモグロビン凝集物および沈殿の形成について試験した。3つすべてのヘモグロビンの溶液は、3ヶ月の間25℃の一定温度で貯蔵し、そして各ヘモグロビン溶液の25mLの試料を2、4、6、8、および12週で採取した。沈殿物の量は、試料中の全ヘモグロビン(gTHb)のグラムあたりの沈殿物ミリグラム(mgPPT)として表される。
【図12】 図12は、グルタルアルデヒド重合化SGE3011のサイズ排除クロマトグラムである。クロマトグラフの直線回帰分析は、グルタルアルデヒド重合化SGE3011に含まれるヘモグロビンの大部分は、3〜12の化学的に架橋したジαβ2ヘモグロビンモノマーを含むことを示唆する。ヘモグロビンの約11.6%はダイマー化ヘモグロビン、そして約1.8%はモノマーである。
【図13】 図13は、BM−PEG重合化SGE3937のサイズ排除クロマトグラムである。クロマトグラフの直線回帰分析は、BM−PEG重合化SGE3937に含まれるヘモグロビンの大部分は、3〜7の化学的に架橋したジαβ2ヘモグロビンモノマー(平均4.7)を含むことを示唆する。ヘモグロビンの約13%はダイマー化ヘモグロビン、そして約1.5%はモノマーである。
【図14】 図14は、4Mペンタエリスリトール重合化SGE3927のサイズ排除クロマトグラムである。クロマトグラフの直線回帰分析は、ポリマーの9.2%はテトラHb、ポリマーの74.4%はトリHb、ポリマーの10.0%はジHb、そしてわずか6.4%がモノマ−Hbであることを示唆する。
【図15】 図15は、BMA−PEG重合化SGE3959のサイズ排除クロマトグラムである。存在する分子種のタンパク質化学的分析は、分子の約半分がモノマーであり、分子の3分の1がダイマーであり、そして残りがトリマーおよびより高い次元のマルチーであることを示唆する。
【図16】 図16は、BMA−PEG重合化SGE3487のサイズ排除クロマトグラムである。存在する分子種のタンパク質化学的分析は、分子の約半分がモノマーであり、分子の3分の1がダイマーであり、そして残りがトリマーおよびより高い次元のマルチーであることを示唆する。
【図17A】図17Aは、血清リパーゼレベルのProvidence変異の影響を示すグラフである。
【図17B】図17Bは、血清リパーゼレベルのProvidence変異の影響を示すグラフである。

Claims (10)

  1. 2つ以上の誘導体化モノマーヘモグロビンユニットからなる重合体化ヘモグロビンであって、該2つ以上の誘導体化モノマーヘモグロビンサブユニットが、以下:
    a)各々がL29W+H58Q変異を有する2つの変異型αグロビンサブユニットと、V67W+K82D変異を有する1つのβグロビンサブユニットの融合物;
    b)一方のαグロビンサブユニットがL29W+H58Q変異を有する2つのαグロビンサブユニットと、V67W変異を有する1つのβグロビンサブユニットの融合物;
    c)一方のαグロビンサブユニットがL29F+H58Q変異を有する2つのαグロビンサブユニットと、V67W変異を有する1つのβグロビンサブユニットの融合物;
    d)一方のαグロビンサブユニットがL29W+H58Q変異を有する2つのαグロビンサブユニットと、S9C+V67W+D73K+K82D+T87Q+C93A変異を有する1つのβグロビンサブユニットの融合物;および
    e)一方のαグロビンサブユニットがL29W+H58Q変異を有する2つのαグロビンサブユニットと、V67W+T87Q変異を有する1つのβグロビンサブユニットの融合物
    からなる変異の群から選択される、重合体化ヘモグロビン。
  2. 前記誘導体化モノマーヘモグロビンユニットが65キロダルトンと130キロダルトンとの間の平均分子量を有し、かつ、前記重合体化ヘモグロビンが130キロダルトンと650キロダルトンとの間の平均分子量を有する、請求項1に記載の重合体化ヘモグロビン。
  3. 前記重合体化ヘモグロビンが、130キロダルトン〜500キロダルトンの範囲にある分子量を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の重合体化ヘモグロビン。
  4. 前記ヘモグロビンが、10μM-1-1未満の一酸化窒素の反応速度を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の重合体化ヘモグロビン。
  5. 酸素を運搬および放出するための薬学的組成物であって、1デシリットルの薬学的に受容可能なキャリアあたり5〜20グラムのヘモグロビンの懸濁液を含み、該ヘモグロビンは、請求項1〜のいずれか1項に記載の重合体化ヘモグロビンである、薬学的組成物。
  6. 前記組成物が、a)赤血球支質を含まず、b)発熱物質を含まず、そしてc)10%未満のメトヘモグロビンを含む、請求項に記載の薬学的組成物。
  7. 前記組成物が、無細胞ヒトヘモグロビンA0のP50よりも高い、ヒト生理学的条件下で測定したP50を有するという点で、該組成物がさらに特徴付けられる、請求項またはに記載の薬学的組成物。
  8. 手術用デバイスをプライミングするための方法であって、該手術用デバイスの流体間隙容積を請求項のいずれか1項に記載の薬学的組成物で満たす工程、を包含する、方法。
  9. 哺乳動物内の生存細胞への酸素の送達を増加させるか、患者の血液の血液希釈をもたらすか、哺乳動物の血液減少を処置するか、哺乳動物における心臓性ショックを処置するか、ショック状態における哺乳動物を蘇生するか、哺乳動物における組織灌流を増大させるか、哺乳動物における造血を刺激するか、哺乳動物における血球減少症を処置するか、哺乳動物における悪液質を処置するか、哺乳動物における頭部損傷を処置するか、または哺乳動物における癌治療を、該治療の前または該治療とほぼ同時に該哺乳動物に投与することによって増強させるための、医薬の製造における請求項のいずれか1項に記載の組成物の使用。
  10. 哺乳動物内の生存細胞への酸素の送達を増加させるか、患者の血液の血液希釈をもたらすか、哺乳動物の血液減少を処置するか、哺乳動物における心臓性ショックを処置するか、ショック状態における哺乳動物を蘇生するか、哺乳動物における組織灌流を増大させるか、哺乳動物における造血を刺激するか、哺乳動物における血球減少症を処置するか、哺乳動物における悪液質を処置するか、哺乳動物における頭部損傷を処置するか、または哺乳動物における癌治療を増強させるための組成物であって、ここで該組成物は、請求項のいずれか1項に記載の組成物を含み、該組成物は、該治療の前または該治療とほぼ同時に該哺乳動物に投与されることを特徴とする、組成物。
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