JP2012207048A - 酸素運搬成分を使用して血流力学的安定性を増強する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸素運搬成分を使用して血流力学的安定性を増強する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、外科手術を受ける正常血液量の被験体の血流力学的安定性を増強するための処置における、組成物の使用に関する。1つの実施形態において、本発明は、外科手術を受ける正常血液量の被験体の血流力学的安定性を増強するための方法であって、a)上記外科手術に伴って、全血より高い酸素親和性を有するヘモグロビンベースの酸素キャリア(HBOC)を含む組成物を上記被験体に投与する工程;およびb)上記患者の血流力学的安定性をモニタリングする工程を包含する方法に関する。このような投与は、外科手術の前、外科手術の間、または外科手術の後に生じても、それらの任意の組み合わせで生じてもよい。
【選択図】なし

Description

(技術分野)
本発明は、ヘモグロビンベースの酸素キャリアを含有する組成物を投与することによって、外科手術を受ける個体の血流力学的安定性を増強するための方法に関する。1つの実施形態において、本発明は、外科手術の間の血流力学的安定性に関連した合併症を回避するための予防措置として酸素の解放を増強するための、減少した協同性および高い酸素親和性を有するポリアルキレンオキシド改変されたヘモグロビンの使用に関する。
(発明の背景)
血液は、組織に栄養分を送達し、組織からの廃棄物を除去するための手段である。血液は、赤血球(red blood cell)(RBCまたは赤血球(erythrocyte))、白血球(WBC)、および血小板が懸濁している血漿からなる。赤血球は、血液中で細胞の約99%を構成し、それらの主な機能は、酸素を組織に輸送し、組織からの二酸化炭素を除去することである。
左心室は、動脈および循環系のより小さい動脈を通して血液をポンピングする。次いで、血液は、毛細管に入り、ここで、酸素の送達、栄養分の交換および細胞の廃棄物の抽出の大半が起きる(例えば、非特許文献1を参照のこと)。その後、血液は、右心房に血液を戻すのに、細静脈および静脈を通って移動する。心臓に戻る血液は、心臓からポンピングされる血液と比較して、酸素量が乏しいが、安静状態である場合、戻ってくる血液はなお、本来の酸素含量の約75%を含んでいる。
RBCの可逆性酸素付加機能(すなわち、酸素の送達)は、タンパク質ヘモグロビンによって行われる。哺乳動物において、ヘモグロビンは、約64,000ダルトンの分子量(MW)を有し、約6%のヘムと94%グロビンとから構成される。そのネイティブの形態において、ヘモグロビンは、2対のサブユニット(すなわち、四量体)を含み、各々が、ヘム基およびグロビンポリペプチド鎖を含む。水溶液中で、ヘモグロビンは、四量体形態(MW 64,000ダルトン)と二量体形態(MW 32,000ダルトン)との間で平衡状態で存在しており;RBCを除いて、その二量体は、腎臓によって早期(約2〜4時間の血漿半減期)に排出される。ヘモグロビンとともに、RBCは、支質(RBC膜)を含み、この支質は、タンパク質、コレステロール、およびリン脂質を含む。
病院および他の設備における血液製剤の需要に起因して、代用血液の開発における広範な研究が指向されている。「代用血液」は、酸素を組織に運搬および供給し得る血液製剤である。ヘモグロビンベースの酸素キャリア(HBOC)は、ヘモグロビンを含む代用血液である。HBOCは、多数の用途を有する。これらの用途としては、外科手順の間およびその後の急性出血により損失される血液の交換、ならびに外傷性損傷後の蘇生手順のための用途が挙げられる。本質的には、HBOCは、これらの目的または保存血液を容易に患者に投与する任意の目的のために使用され得る(例えば、Bonsonらに対する特許文献1およびMorrisに対する特許文献2を参照のこと)。
HBOCの開発は、現在のヒトの血液供給が限られることを踏まえると、特に重要である。この理由のために、ヒトの血液は、通常、医学的に必要である状況においてのみ使用される。これは、通常、ヒトの血液が予防的使用(例えば、「血液ドーピング(blood doping)」(すなわち、血液の酸素運搬能力を増大させることによって血液の性能を増強する目的のために全血を投与すること)に適切でないことを意味する。したがって、予防的適応のための全血およびHBOCの使用は両方とも、広く普及しておらず、そしてほとんどの場合、若干問題のある実施と見なされる。
外科手術前の患者に対するHBOCの投与は、必要な場合、その手順の後期か、または外科手術後に患者に戻され得る患者からの自家血液の取り出し(すなわち、希釈式自己血輸血または「ANH」)との組み合わせにおいて提案されてきた。例えば、特許文献3を参照のこと。このような患者は、本明細書中において、外科手術時に「正常血液量」であると見なされない。しかし、この手順は、外科的手順の不利な初頭効果を回避(例えば、血流力学的安定性)する予防措置に対する必要性を扱わず、外科手術に関連した失血の副次的効果を扱うのみである。
全身麻酔を必要とする外科手術の間に血流力学的安定性を増強することは、2つの基本的な理由から重要である。第1に、失血または他の因子によって引き起こされる血流力学的不安定性は、組織の損傷、および死亡さえもたらし得る。例えば、出血性低血圧およびアナフィラキシーショックは、組織の酸素化の減少をもたらす著しい失血から生じる状態である。このような医学的状態を有する患者に関して、患者の血圧を安定化させること、および患者の循環系によって身体組織に提供される酸素の量を増加させることは、患者の生存のために望ましく、そして多くの場合、患者の生存のために重要である。
第2に、そして最も重要なことには、軽微かつ一時的でさえ、血流力学的不安定性は、手術後の患者の回復に影響し得る。この不安定性は、身体全体の任意の場所で起こり得、そして、しばしば、血圧の低下として通常は記録される「低血圧事象」として発現される。このような事象は、全身麻酔の間(血液の損失がない場合でさえ)の局在化した血流力学特性の変動の結果として起こり得る。これらの事象は、外科手術後の回復に悪影響を及ぼす認知の障害および他の合併症を引き起こし得る。例えば、侵襲的な外科的手順(例えば、人工股関節置換術)を受ける高齢患者は、外科手術の間に患者の血流力学的安定性を増強する任意の予防的処置によって利益を受ける。さらに、このような患者は、多くの場合、ANHに適した候補者ではなく、そしてそれらの患者血流力学的安定性を増強することは、ドナー血液を使用する輸血に対する必要性を減少させると予想される。
血漿増量剤の使用および血流力学的安定性を維持するための容量負荷(volume replacement)が、広く普及している。しかし、これらの非酸素運搬溶液は、付随するANHを伴わない場合でさえ、血液の酸素能力を希釈するだけであり、そしていくつかの場合において、実際に血流力学的不安定性を引き起こし得る。血漿増量剤および容量負荷に加えて、晶質溶液が、血流力学的安定性の維持における使用について提案されている。しかし、これらの溶液の投与は、過剰な水分貯留および浮腫を生じ得、これらもまた、血流力学特性の変動を引き起こし得る。
米国特許第4,001,401号明細書 米国特許第4,061,736号明細書 国際公開第98/37909号パンフレット
A.C.Guyton、「Human Physiology And Mechanisms Of Disease」、第3版、W.B.Saunders Co.,Philadelphia,Pa.、1982年、p.228−229
したがって、血液の固有の酸素運搬能力を消失しない一過性の低血圧事象を生じ得る、血流力学的安定性を増強する方法に対する必要性が、存在する。この目的に従って、本発明は、ヘモグロビンベースの酸素キャリア(例えば、特別に処方されるポリアルキレンオキシド改変されたヘモグロビン)を含有する組成物を投与することによって血流力学的安定性を増強する方法に関する。
(発明の要旨)
本発明は、外科手術を受ける正常血液量の被験体の血流力学的安定性を増強するための処置における、組成物の使用に関する。1つの実施形態において、本発明は、外科手術を受ける正常血液量の被験体の血流力学的安定性を増強するための方法であって、a)上記外科手術に伴って、全血より高い酸素親和性を有するヘモグロビンベースの酸素キャリア(HBOC)を含む組成物を上記被験体に投与する工程;およびb)上記患者の血流力学的安定性をモニタリングする工程を包含する方法に関する。このような投与は、外科手術の前、外科手術の間、または外科手術の後に生じても、それらの任意の組み合わせで生じてもよい。さらに、上記血流力学的安定性は、外科手術の前、外科手術の間、または外科手術の後に測定されても、それらの任意の組み合わせで測定されてもよい。さらに、上記患者の血流力学的安定性のモニタリングは、多くの形態(例えば、患者の血圧のモニタリング)をとり得る。1つの実施形態において、血流力学的安定性は、90mmHgを上回って維持する収縮期血圧によって特徴付けられる。
本発明のHBOCは、多くの形態(例えば、ポリアルキレンオキシド改変された、天然または合成の供給源(組換えの供給源が挙げられる)から得られ得るヘモグロビン)をとり得る。さらに、ヘモグロビンの供給源は、ヒト、または他のヒトではない動物由来であり得る。
本発明の別の実施形態において、上記HBOCは、全血の酸素親和性の2倍より大きい酸素親和性を有し、上記HBOCとしては、4〜15の間のP50を有するHBOCが挙げられ得る。
別の局面において、本発明は、外科手術を受ける正常血液量の被験体の血流力学的安定性を増強するための医薬の製造におけるヘモグロビンベースの酸素キャリア(HBOC)の使用を包含し、上記HBOCは、全血より大きい酸素親和性を有する。このような使用は、外科手術に関連した血流力学的不安定性を回避するための予防措置としての酸素の解放(oxygen offloading)の増強をさらに含み得る。上記HBOCの特徴および上記医薬の投与は、例えば、上に記載される通りである。
本発明の他の局面は、本明細書全体を通じて記載される。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
外科手術を受ける正常血液量の被験体の血流力学的安定性を増強するための方法であって、以下:
a)該外科手術に伴って、全血より高い酸素親和性を有するヘモグロビンベースの酸素キャリア(HBOC)を含む組成物を該被験体に投与する工程;および
b)該患者の血流力学的安定性をモニタリングする工程
を包含する、方法。
(項目2)
前記組成物は、外科手術の前に投与される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記組成物は、外科手術の間に投与される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記組成物は、外科手術の後に投与される、項目1に記載の方法。
(項目5)
工程b)は、外科手術の前に実施される、項目1に記載の方法。
(項目6)
工程b)は、外科手術の間に実施される、項目1に記載の方法。
(項目7)
工程b)は、外科手術の後に実施される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記HBOCは、ポリアルキレンオキシド改変された天然のヘモグロビンをさらに含有する、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記HBOCは、ポリアルキレンオキシド改変された合成のヘモグロビンをさらに含有する、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記HBOCは、組換えヘモグロビンをさらに含有する、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記HBOCは、ヒトヘモグロビンをさらに含有する、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記HBOCは、ヒトではない動物から得たヒトヘモグロビンをさらに含有する、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記HBOCは、全血の酸素親和性の2倍より大きい酸素親和性を有する、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記HBOCは、4と15との間のP50を有する、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記HBOCは、マレイミジル活性型ポリエチレングリコールの共有結合によって改変されたヘモグロビンをさらに含有する、項目1に記載の方法。
(項目16)
工程b)は、前記被験体の血圧をモニタリングする工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目17)
血流力学的な安定化は、90mmHgを上回る収縮期血圧を維持する前記被験体によって特徴付けられる、項目16に記載の方法。
(項目18)
外科手術を受ける正常血液量の被験体の血流力学的安定性を増強するための医薬の製造におけるヘモグロビンベースの酸素キャリア(HBOC)の使用であって、該HBOCは、全血より大きい酸素親和性を有する、使用。
(項目19)
外科手術に関連した血流力学的不安定性を回避するための予防措置としての酸素の解放の増強をさらに含む、項目18に記載の使用。
図1は、MalPEG−Hbおよび支質非含有ヘモグロビン(SFH)のFPLCクロマトグラムを示す。 図2は、MalPEG−Hb、SFHおよび全血についての酸素平衡曲線を示す。 図3は、種々の試験溶液の投与後における、ラットの生存率を示す。 図4は、MalPEG−Hbまたは乳酸リンゲル液を受容する患者の尿量を示す。 図5は、麻酔前にMalPEG−Hbを受容する患者のバイタルサインを示す。 図6は、MalPEG−Hbまたはプラセボを受容し、外科手術の間に低血圧事象を示す患者の%を示す。
(発明の詳細な説明)
本発明は、ヘモグロビンベースの酸素キャリアを含有する組成物を投与することによって、外科手術を受ける個体の血流力学的安定性を増強するための方法に関する。1つの実施形態において、本発明は、外科手術の間の血流力学的安定性に関連した合併症を回避するための予防措置として酸素の解放を増強するための、減少した協同性および高い酸素親和性を有するポリアルキレンオキシド改変されたヘモグロビンの使用に関する。
後述の開示に記載される本発明の理解を深めるために、多くの用語が下記で定義されている。
(定義)
用語「ヘモグロビン」は、一般的に、酸素を運ぶ赤血球内に含まれるタンパク質をいう。各ヘモグロビン分子は、4つのサブユニットを有し(2つのα鎖および2つのβ鎖)、四量体構造で配列している。各サブユニットはまた、1つのヘム基を含み、ヘム基は、酸素と結合するイオン含有中心である。このように、各ヘモグロビン分子は、4つの酸素分子と結合し得る。
用語「改変ヘモグロビン」は、化学反応(例えば、分子内架橋および分子間架橋、遺伝子操作、重合、および/または他の化学基(例えば、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレングリコール、または他の付加物(例えば、タンパク質、ペプチド、炭水化物、合成ポリマーなど)との結合によって変化したヘモグロビンを含むが、それらに制限されない。つまり、ヘモグロビンは、その構造または機能的特徴のいずれかが、そのネイティブな状態から変化され得る場合、「改変される」。本明細書中で使用される場合、用語「ヘモグロビン」それ自体は、ネイティブなヘモグロビン、未改変ヘモグロビン、および改変ヘモグロビンのいずれもいう。
用語「表面改変ヘモグロビン」は、化学基(例えば、デキストラン、またはポリアルキレンオキシド)が結合した(最も一般的には、共有結合)、上述のヘモグロビンをいうために使用され得る。用語「表面改変酸化型ヘモグロビン」は、それが表面改変される場合、「R」状態であるヘモグロビンをいう。
用語「支質非含有ヘモグロビン」は、全ての赤血球のメンバーが除去されたヘモグロビンをいう。
用語「メトヘモグロビン」は、第二鉄状態で鉄を含む酸化型ヘモグロビンをいい、酸素キャリアとして機能できない。
用語「MalPEG−Hb」は、マレイミジル活性型PEGが結合体化されたヘモグロビンをいう。さらに、このようなMalPEGは、次の式によって説明され得る:
Hb−(S−Y−R−CH−CH−[O−CH−CH−O−CH 式I
ここで、Hbは、四量体のヘモグロビンであり、Sは、表面チオール基であり、Yは、HbとMal−PEGとの間のスクシンイミド共有結合であり、Rは、非存在であるか、アルキル、アミド、カルバミン酸塩またはフェニル基(生材料の供給源および化学合成の方法に依存して)であり、[O−CH−CHは、PEGポリマーの骨格を形成するオキシエチレン単位であり、ここで、nは、ポリマーの長さ(例えば、分子量=5000)を定義し、そしてO−CHは、末端メトキシ基である。
用語「血漿増量剤(expander)」は、血漿容量を増加させるために被験体に与えられ得る任意の溶液をいう。
用語「酸素運搬能力」または単に用語「酸素能力」は、酸素を運搬するための代用血液の能力をいうが、それが酸素を送達する効率と必ずしも相関しない。ヘモグロビン含有代用血液の酸素運搬能力は、一般的に、ヘモグロビ濃度から算出される。なぜなら、1グラムのヘモグロビンが1.34mlの酸素と結合することが知られているからである。このように、ヘモグロビン濃度(g/dl)に1.34を掛けると、酸素能力(ml/dl)が算出される。ヘモグロビン濃度は、任意の公知の方法(例えば、β−ヘモグロビンフォトメーター(HemoCue,Inc.,Angelholm,Sweden))によって測定され得る。同様に、酸素能力は、例えば、燃料電池装置(例えば、Lex−O−Con;Lexington Instruments、Waltham、Massachusetts)を用いて、ヘモグロビンまたは血液のサンプルから放出される酸素の量によって測定される得る。
用語「酸素親和性」は、酸素キャリア(例えば、ヘモグロビン)が分子酸素と結合するアビディティーをいう。この特徴は、酸素分圧(X軸)と、ヘモグロビン分子の酸素飽和の程度(Y軸)に関連する酸素平衡曲線によって定義される。この曲線の位置は、酸素キャリアが、酸素で半分飽和され、そして酸素親和性に逆相関するP50値、酸素分圧によって示される。ここでP50が低ければ、酸素親和性は高くなる。全血(および全血の組成物(例えば、赤血球およびヘモグロビン))、および任意の酸素キャリアの酸素親和性は、当業者の公知の種々の方法によって測定され得る(例えば、Winslowら、J.Biol.Chem.252(7):231−37(1977)を参照のこと)。酸素親和性はまた、市販のHEMOXTM Analyzer(TCS Scientific
Corporation,New Hope,Pennsylvania)を用いて決定され得る(例えば、VandegriffおよびShrager「Methods in Enzymology」(Everseら、編)232:460(1994)を参照のこと)。
用語「酸素運搬成分」は、体内の循環系に酸素を運搬することができ、そして組織に、その酸素の少なくとも一部分を送達することができる物質を広くいう。好ましい実施形態において、酸素運搬成分は、ネイティブなヘモグロビンまたは改変ヘモグロビンであり、「ヘモグロビンベースの酸素キャリア」または「HBOC」として本明細書中でもいわれている。
用語「血流力学的パラメータ」は、血液の圧力、流れ、および容積の状態を示す測定値を広くいい、血圧、心拍出量、右心房圧、左室拡張終期圧のような直接的な測定値、ならびに頻拍、虚血、徐脈、伝導の問題、体液平衡、体重、ICU時間および腎機能の間接的な測定値が挙げられる。
用語「晶質」は、塩、糖、および緩衝液のような低分子(通常、10Å未満)をいう。膠質と異なり、晶質は、いかなる腫脹活性成分も含まず、そしてその循環空間と間隙性空間との間で非常に素早く平衡化する。
用語「膠質」は、「晶質」とは対照的に、それらの大きさおよび電荷に依存して生物学的膜を越えて平衡化する高分子(通常は、10Åより大きい)をいい、アルブミンおよびゼラチンのようなタンパク質、ならびにペンタスターチおよびヘタスターチのようなスターチが挙げられる。
用語「膠質浸透圧」は、膠質により付与され、膜を越えての体液平衡を平衡化する圧力をいう。
用語「自動酸化に対して安定」は、低い自動酸化率を維持するHBOCの能力をいう。HBOCは、メトヘモグロビン/総ヘモグロビン比が、24℃で10時間後に2%を超えて増加しない場合、24℃で安定であるとみなされる。例えば、自動酸化率が0.2hr−1である場合、そして、最初のメトヘモグロビンの割合が5%である場合、HBOCは、この割合が7%を超えて増加しなかった場合に、室温で10時間安定であるとみなされる。
用語「メトヘモグロビン/総ヘモグロビン比」は、酸化型ヘモグロビン対総ヘモグロビンの比をいう。
用語「混合物」は、個々の特性を失う反応を生じることなく、2つ以上の物質が一緒に入り混ざったものをいう。用語「溶液」は、液体混合物をいう。用語「水溶液」は、いくらかの水を含有し、水と共に1つ以上の他の液体物質も含有し、多成分溶液を形成し得る溶液をいう。用語「約」は、実際の値が一定の範囲内にあることをいう(例えば、示される値の10%以内)。
用語「ポリエチレングリコール」または「PEG」は、一般化学式H(OCHCHOH(ここで、nは、4以上である)の液体または固体ポリマー、およびその改変体(例えば、活性型、置換型、および/または非置換型のPEG)をいう。
用語「灌流」とは、動脈および毛細管を通した組織および器官への流体の流れをいう。
用語「血流力学的安定性」とは、循環の機構において安定に機能すること(すなわち、任意の血流力学的パラメータの所与の時間にわたる安定性)をいう。
用語「低血圧事象」は、限局性または全身性の低血圧(すなわち、血圧の低下)によって特徴付けられるか、またはそれに起因し、低血圧事象は、さらに、90mmHg未満の収縮期血圧またはベースライン値の75%を下回る血圧の減少として定量的に定義される。
本明細書中で使用される他の用語の意味は、当業者により容易に理解されるはずである。
(酸素送達および消費の性質)
本発明の組成物および方法の首尾良い使用は、酸素送達および消費の基礎的な機構の理解を必要としないが、これらの推定機構のいくつかに関する基本的な知見は、以下の議論を理解することを補助し得る。一般的に、毛細管は、組織への酸素の主要な運搬体であると推定されてきた。しかし、休止している組織に関して、現在の発見は、細動脈の酸素放出と毛細管の酸素放出との間にほぼ均等分配(equipartition)が存在することを示す。すなわち、動脈系におけるヘモグロビンは、細動脈網におけるその酸素含有量の約1/3および毛細管における1/3を送達し、残りは静脈系を通じて微小循環を出ると考えられる。
動脈自体は、酸素利用部位である。例えば、動脈壁は、血管抵抗に対する収縮を通して血流を調節するのにエネルギーを必要とする。従って、動脈壁は通常、血液からの酸素の拡散のための重要な部位である。しかし、現在の酸素送達組成物(例えば、HBOC)は、動脈系においてそれらの酸素含有量の多くを放出しすぎ得、それによって、毛細管灌流における自己調節性の還元を誘導する。従って、代用血液の酸素送達の効率は、実際は、高すぎる酸素親和性または低すぎる酸素親和性を有することによって妨げられ得る。
血管壁による酸素消費の速度(すなわち、機械的作業に必要とされる酸素および生化学的合成に必要とされる酸素の組み合わせ)は、血管壁での勾配を測定することによって決定され得る。例えば、Winslowら、「Advance in Blood Substitutes」(1997)、Birkhauser編、Boston、MA、167〜188頁を参照のこと。現在の技術は、種々の血管における正確な酸素の部分圧の測定を可能にする。測定された勾配は、測定領域中の組織による酸素利用の率に直接的に比例する。このような測定は、血管壁が、基底線酸素利用を有し、これは炎症および絞窄における増加と共に増加し、そして弛緩により減少することを示す。
血管壁の勾配は、組織の酸化に反比例する。血管収縮は、酸素勾配(組織代謝)を増加させるが、血管拡張は、その勾配を低下させる。より高い勾配は、より多くの酸素が血管壁によって使用される一方で、より少ない酸素が組織に利用可能であるという事実を示す。同じ現象が微小循環を通じて全体にわたって存在すると考えられる。
(血管収縮と酸素親和性との間の関係)
高い酸素親和性を有するHBOCを開発するための原理は、一部、赤血球注入の代替として無細胞ヘモグロビンを用いた過去の研究に基づく。これらの溶液の生理学的効果のいくつかは、理解が不完全なままである。これらのうち、おそらく最大の論議は、動物および人間において高血圧として現れ得る血管収縮を引き起こす傾向である(Amberson,W.,「Clinical experience with hemoglobin−saline solutions」,Sicence 106:117−117(1947))(Keipert,P.,A.Gonzales,C.Gomez,V.Macdonald,J.Hess,およびR.Winslow,「Acute changes in sysmetic blood pressure and urine output of conscious rats following exchange transfusion with diaspirin−crosslinked hemoglobin solution」,Transfusion 33:701−708(1993))。α鎖間でビス−ジブロモサリチル−フマレートを用いて架橋されたヒトヘモグロビン(ααHb)は、モデル代用赤血球として米軍により開発されたが、肺および全身血管抵抗の重篤な増加が実証された後、米軍によって中止された(Hess,J.,V.Macdonald,A.Murray,V.Coppes,およびC.Gomez,「Pulmonary and systemic hypertention after hemoglobin administration」,Blood 78:356A(1991))。この製品の市販版もまた、第III相臨床試験が実現しなかった後に中止された(Winslow,R.M.「αα−Crosslinked hemoglobin:Was failure predicted by preclinical testing?」,Vox sang 79:1−20(2000))。
無細胞ヘモグロビンにより生じる血管収縮についての最も一般的に前進した説明は、それが、内皮由来弛緩因子、一酸化窒素(NO)に容易に結合することである。実際、最高負荷ラット実験においてより低い高血圧性であるようである、NOに対して減少した親和性を有する組み換えヘモグロビンが生成された(Doherty,D.H.,M.P.Doyle,S.R.Curry,R.J.Vali,T.J.Fattor,J.S.Olson,およびD.D.Lemon,「Rate of reaction with
nitric oxide determines the hypertensive effect of cell−free hemoglobin」,Nature
Biotechnology 16:672−676(1998))(Lemon,D.D.,D.H.Doherty,S.R.Curry,A.J.Mathews,M.P.Doyle,T.J.Fattor,およびJ.S.Olson,「Control
of the nitric oxide−scavenging activity
of hemoglobin」,Art Cells,Blood Subs.,and Immob.Biotech 24:378(1996))。
しかし、NO結合はヘモグロビンの血管作用性についての唯一の説明ではないかもしれないことを研究が示唆している。特定の大きなヘモグロビン分子(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)で改変されたヘモグロビン分子)は、それらのNO結合率が重篤な高血圧性のααHbと同一であるにもかかわらず、高血圧効果を実質的に有さないことが見出された(Rohlfs,R.J.,E.Bruner,A.Chiu,A.Gonzales,M.L.Gonzales,D.Magde,M.D.Magde,K.D.Vandegriff,およびR.M.Winslow,「Arterial blood pressure responses to cell−free hemoglobin solutions and the reaction with nitric oxide」,J Biol Chem 273:12128−12134(1998))。さらに、PEG−ヘモグロビンが出血前の交換輸血として与えられた場合、出血の影響を防ぐのに並外れて効果的であることが見出された(Winslow,R.M.,A.Gonzales,M.Gonzales,M.Magde,M.McCarthy,R.J.Rohlfs,およびK.D.Vandegriff,「Vascular resistance and the efficacy of red cell substitutes」,J Appl Physiol 85:993−1003(1998))。
この保護効果は、高血圧の欠如と相関し、このことは、血管収縮が多くの今日までに研究されたヘモグロビンベースの産物の効能を消失させることを伴うことを示唆している。これらの観察に基づいて、NO結合の効果の代替として、またはおそらくそれに加えて、血管収縮を説明する仮説が展開された。任意の特定の学説に拘束されることを望まないが、ヘモグロビンの血管作用効果の実質的な要素は、無細胞空間におけるヘモグロビンの拡散に対する弛緩応答であると考えられる。この仮説は、インビトロ毛細管系において試験され、そして低下した拡散係数を有するPEG−ヘモグロビンが、ネイティブの赤血球と非常に類似した様式でOを運搬したことが実証された(McCarthy,M.R.,K.D.Vandegriff,およびR.M.Winslow,「The role of facilitated diffusion in oxygen transport by cell−free hemoglobin:Impication for the design of hemoglobin−based oxygen carriers」,Biophysical Chemistry 92:103−117(2001))。酸素親和性は、血漿空間におけるヘモグロビンによるその促進された拡散において役割を果たすと予想される。なぜならば、ヘモグロビンから血管壁への飽和状態の変化は、ヘモグロビン自体の拡散勾配の決定因子であるからである。
無細胞ヘモグロビンの酸素親和性は、血管緊張(vascular tone)の調節においてさらなる役割を果たし得る。なぜなら、Oの細動脈中の血管壁に対する遊離は、血管収縮を誘発するからである(Lindbom,L.,R.TumaおよびK.Arfors,「Influence of oxygen on perfusion capillary density and capillary red cell velocity in rabbit skeletal muscle」、Microvasc Res 19:197−208(1980))。ハムスター皮下脂肪において、このような血管中のPOは、20〜40トルの範囲にあり、ここで、正常な赤血球酸素平衡曲線は、最も急勾配である(Intaglietta,M.,P.JohnsonおよびR.Winslow,「Microvascular and tissue oxygen distribution」、Cardiovasc Res 32:632−643(1996))。従って、理論的観点から、細動脈調節性血管におけるOの遊離を防止するために、無細胞ヘモグロビンのP50が、赤血球のP50より低い(すなわち、より高いO親和性)ことが重要であり得る。
(酸素の解放)
酸素親和性に加えて、酸素結合特性それ自体(すなわち、協同性およびアロステリック効果)は、HBOCの酸素の解放の性能において重要な役割を果たし得る。ヘモグロビンに結合するポリアルキレンは、グロビン構造の一般的な「締め付け(tightening)」を生じることが、観察されている。これは、ヘモグロビンを取り囲む親水性のシェル(shell)を有する浸透圧効果に起因し、そしてポリアルキレンオキシドを結合するために使用される連結基の性質および位置に依存し得る。最も一般的な通念は、HBOCの設計がネイティブなヘモグロビンの特徴を模倣するはずであるということである。しかし、ヘモグロビンの四次コンフォメーションの摂動が、特に、酸素の解放の状況において利点を有し得ることが、予期せず見出された。
タンパク質の特徴が、そのアロステリック部位においてエフェクター分子(すなわち、リガンド)に結合する結果として変化する場合、そのタンパク質は、「アロステリック」であると見なされる。ヘモグロビンの場合において、上記リガンドは、酸素である。ヘモグロビン四量体の各サブユニットは、1つの酸素分子に結合し得る。各サブユニットはまた、2つのコンフォメーションの緊張(T)または弛緩(R)の2つのうちの1つで存在する。R状態において、上記サブユニットは、T状態より容易に酸素を結合し得る。
ヘモグロビンは、酸素を結合する個々のサブユニットの間で、協調した効果または協同性を示す。1つのサブユニットに対する酸素の結合は、残りの活性部位が増強した酸素親和性を示すようにする、酸素が結合したサブユニットにおけるコンフォメーションの変化を誘導する。したがって、ヘモグロビン分子に結合するそれぞれの逐次的な酸素分子は、ヘモグロビン分子が、4個の結合した酸素分子を伴うR状態または「リガンドと結合した(liganded)」状態を達成するまで、その前の酸素分子より容易に結合する。
逆に、ネイティブなヘモグロビンは、酸素を放出するその効率に関して、協調した効果を示す。第1の分子は、より堅く結合され、そしてより多くのエネルギーを得て、「解放され(offloaded)」、次いで次の分子が、解放されるなどである。したがって、ネイティブなヘモグロビンの協同性を模倣する代用血液の設計についての従来技術は、一旦結合した酸素を放出するその能力に対して不利に影響し得る。
本発明は、ネイティブなヘモグロビンより小さい(ネイティブなヘモグロビンより大きくない)協同性を有するがHBOCが、酸素の解放に関連する用途において、予想外に、より有用であるという知見に関する。したがって、血流力学的安定性の増強において使用するための組成物は、一旦上記組成物がその標的位置に到達した場合に、その酸素を容易に放出できなければならないが、血管収縮効果を回避するために、大きすぎる酸素放出能力を含むべきではない。要約すると、外科的手順に関連した予防的処置のための、血流力学的安定性を必然的に増強する理想的な組成物は、ネイティブなヘモグロビンより小さい協同性を有するが、全血と比較した場合にずっと高い酸素親和性(例えば、半分未満のP50)を有する組成物中に処方される改変ヘモグロビンを含む。
(酸素運搬成分)
好ましい実施形態において、酸素キャリア(すなわち、酸素運搬成分)は、ヘモグロビンベースの酸素キャリア(すなわち、HBOC)である。ヘモグロビンは、ネイティブ(未改変)であり;続いて、化学反応(例えば、分子内架橋または分子間架橋、重合、または化学官能基(例えば、ポリアルキレンオキシド、または他の付加物)の付加)によって改変され得るか;またはヘモグロビンは、組換え操作され得る。ヒトα−グロビン遺伝子およびβ−グロビン遺伝子は、クローン化され、配列決定されている。Liebhaberら、P.N.A.S.77:7054−7058(1980);Marottaら、J.Biol.Chem.353:5040−5053(1977)(β−グロビンcDNA)。さらに、多くの組換え産生され改変されたヘモグロビンは、ここで、部位特異的変異誘発を使用して生成されたが、これらの「変異型」ヘモグロビン変種は、高い酸素親和性を有するとして報告された。例えば、Nagaiら、P.N.A.S.,82:7252−7255(1985)を参照のこと。
本発明の実施において使用されるHBOCは、通常の全血(必然的にヒトでない可能性がある被験体と同じ動物供給源由来)より高い酸素親和性を有し、この酸素親和性は、全血のP50より低いP50として表される。全血は、一般的に、28トルに近いP50を有すると見なされる。1つの実施形態において、本発明のHBOCは、全血のP50の半分未満のP50を有し、このことは、「高酸素親和性」であると見なされる。このような高酸素親和性のHBOCは、4〜15(例えば、10、7など)のP50を有し得る。
本発明は、ヘモグロビンの供給源によって限定されない。例えば、ヘモグロビンは、動物およびヒトに由来し得る。特定の適用に対する好ましいヘモグロビンの供給源は、ヒト、ウシおよびブタ、ならびに哺乳動物ではない供給源(例えば、環形動物、爬虫類など)である。さらに、ヘモグロビンは、他の方法(化学合成および組換え技術を含む)によって産生され得る。ヘモグロビンは、遊離形態で血液製剤組成物に添加され得るか、または、小胞(例えば、合成粒子、マイクロバルーンまたはリポソーム)中にカプセル化され得る。本発明の好ましい酸素運搬成分は、支質非含有であり、そして内毒素非含有であるべきである。酸素運搬成分の代表的な例は、以下の多くの発行された米国特許に開示され、これらとしては、Hsiaに対する米国特許第4,857,636号;Walderに対する同第4,600,531号;Morrisらに対する同第4,061,736号;Mazurに対する同第3,925,344号;Tyeに対する同第4,529,719号;Scannonに対する同第4,473,496号;Bocciらに対する同第4,584,130号;Klugerらに対する同第5,250,665号;Hoffmanらに対する同第5,028,588号;ならびにSehgalらに対する同第4,826,811号および同第5,194,590号が挙げられる。
前述のヘモグロビンの供給源に加えて、ウマヘモグロビンが、本発明の組成物中の酸素運搬成分として特定の利点を有することが最近見出された。1つの利点は、ウマヘモグロビンが精製され得る市販量のウマ血液が、容易に入手可能であるということである。別の予想外の利点は、ウマヘモグロビンが、本発明の代用血液において、その有用性を増強し得る化学的特性を示すことである。
以前の報告は、ウマヘモグロビンが、ヒトヘモグロビンより早くメトヘモグロビンに自動酸化することを示し、このことは、ウマヘモグロビンが、代用血液成分としてより所望されないものにする。例えば、J.G.McLeanおよびI.M.Lewis,Research in Vet.Sci.,19:259−262(1975)を参照のこと。自動酸化を最小にするために、McLeanおよびLewisは、赤血球溶解の後、還元剤(グルタチオン)を使用した。しかし、本発明の組成物を調製するために使用されるヘモグロビンは、ヘモグロビンの供給源がヒトであるかウマであるかに関わらず、赤血球溶解後の自動酸化を防止するために還元剤の使用を必要としない。
より最近、ウマヘモグロビンが、ヒトヘモグロビンと異なる酸素親和性を有することが報告された。例えば、M.Mellegriniら、Eur.J.Biochem.,268:3313−3320(2001)を参照のこと。このような差異は、ヒトヘモグロビンを模倣する代用血液を調製するためのウマヘモグロビンの選択を思いとどまらせる。しかし、本発明の組成物に組込む場合、ヒトヘモグロビン含有結合体とウマヘモグロビン含有結合体との間の酸素親和性に有意な差異は、観察されない(10%未満)。従って、これらの表面上所望されない特性に反して、本発明の組成物において、ウマヘモグロビンは、ヒトヘモグロビンより優れない場合、等価である。
本発明における使用のために、HBOCは、全血より優れた酸素親和性を有し、同じ条件下で測定された場合、好ましくは全血の2倍であり、あるいは、支質非含有ヘモグロビン(SFH)より酸素親和性が大きい。ほとんどの場合において、これは、代用血液中でのHBOCが、10未満のP50を有し、より好ましくは7未満のP50を有することを意味する。遊離状態において、SFHは、約15トルのP50を有し、その一方で、全血に対するP50は、約28トルである。酸素親和性を増大し、それによってP50を低下することは、酸素の組織への送達を増大し得ることが以前に示唆されたが、SFHのP50より小さなP50が、許容されないことを意味した。Winslowら、「Advances in Blood Substitutes」(1997),Birkhauser編、Boston,MA,第167頁および米国特許第6,054,427号を参照のこと。この示唆は、代用血液としての使用のための改変ヘモグロビンが、より小さな酸素親和性を有するべきであり、全血のP50に近いP50を有するべきであるという広くもたれている確信と矛盾する。従って、多くの研究者は、リン酸ピリドキシルを使用して、SFHのP50を、10から約20〜22へと上げる。なぜなら、ピリドキシル化ヘモグロビンは、SFHと比べた場合、より容易に酸素を遊離するからである。
高い酸素親和性を有するHBOC(すなわち、SFHより小さなP50を有するHBOC)を製造するために多くの異なる科学的アプローチが存在する。例えば、研究は、酸素親和性において役割を果たすアミノ酸残基(例えば、B−93システイン)を同定し、それによって、部位特異的変異誘発が、ここで、酸素親和性を所望のレベルに操作するために容易に実施され得る。例えば、米国特許第5,661,124号を参照のこと。他の多くのアプローチは、米国特許第6,054,427号に議論される。
(ヘモグロビン関連毒性)
ヘモグロビンは、第1鉄形態(Fe2+)から第2鉄形態(Fe3+)(すなわち、メトヘモグロビン形態)に可逆的に変化する場合、自動酸化を示すことが公知である。これが生じる場合、分子酸素は、スーパーオキシドアニオン(O2−)の形態において、オキシヘモグロビンから解離する。これはまた、ヘム−グロビン複合体の不安定化を生じ、結果としてグロビン鎖の変性を生じる。酸素ラジカル形成およびタンパク質変性の両方は、HBOCのインビボ毒性において役割を果たすと考えられる(Vandegriff,K.D.,Blood Substitutes,Physiological Basis of Efficacy,第105頁−第130頁,Winslowら編、Birkhauser,Boston,MA(1995))。
ほとんどのHBOSに関して、酸素親和性とヘモグロビン酸化との間に負の相関が存在し、すなわち、酸素親和性がより高いと、自動酸化の速度がより遅い。しかし、異なるヘモグロビン改変の、酸素親和性および自動酸化速度に対する効果は、いつも予測可能であるわけではない。さらに、酸素親和性と自動酸化速度との間の最適のバランスは、よく理解されてはいない。
1つの実施形態において、本発明の組成物は、室温において自動酸化の非常に低い速度を示すポリアルキレンオキシド−Hb結合体(例えば、ポリエチレングリコール−Hb結合体)を含む。酸化の速度として測定される場合、この値は、可能な限り低く(すなわち、1時間当たり全ヘモグロビンの0.2%)、より好ましくは、室温で少なくとも3時間の間、より好ましくは少なくとも10時間の間、1時間当たり全ヘモグロビンの0.1%である。従って、本発明の例示的なHBOSは、投与および/または室温での保存の間安定である。
(酸素運搬成分の改変)
例示的な実施形態において、上記酸素運搬成分は、ポリアルキレンオキシド(PAO)改変されたヘモグロビンである。適切なPAOとしては、とりわけ、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド((CHCHO))、ポリプロピレンオキシド((CH(CH)CHO))またはポリエチレン/ポリプロピレンオキシドコポリマー((CHCHO)−(CH(CH)CHO)))が挙げられる。本発明の実施に適切な他の直鎖合成ポリマー、分枝鎖合成ポリマーおよび必要に応じて置換された合成ポリマーは、医学分野において周知である。
最も一般的には、ヘモグロビンに結合される化学的官能基は、その薬学的受容性および市販入手性に起因して、ポリエチレングリコール(PEG)である。PEGは、一般化学式H(OCHCHOHのポリマーであり、ここで、nは、一般に、4以上である。PEG処方物は、通常、これらの平均分子量に対応する数を後に付ける。例えば、PEG−200は、200の平均分子量を有し、そして190〜210の分子量範囲を有し得る。PEGは、多くの異なる形態で市販されており、多くの場合、前もって活性化されており、タンパク質に容易に結合体化される。
本発明の例示的な実施形態の重要な局面は、ヘモグロビンが、酸化された状態、すなわち「R」状態である場合に、表面改変が起こることである。これは、ヘモグロビンを結合体化の前に大気と平衡化させる(あるいは、活性酸化が実施され得る)ことによって容易に達成される。酸化されたヘモグロビンへの結合体化を実施することによって、得られたヘモグロビンの酸素親和性は、増大される。このような工程は、一般的に、禁忌としてみなされる。なぜなら、多くの研究者は、結合体化前の脱酸化が、酸素親和性を低下することを記載するからである。例えば、米国特許第5,234,903号を参照のこと。
多くの局面において、表面改変されたヘモグロビンの性能は、ヘモグロビンと改変因子(例えば、PEG)との間の結合に非依存性であるが、リンカーの型(例えば、より剛性の、不飽和脂肪族または芳香族のC〜Cリンカー置換基)は、まさに記載される剛性のリンカーと比較して付着のより変形可能な様式のような異なる連結を有する置換基と比較される場合に、結合体の製造および/または特徴を変化し得ると考えられる。
ヘモグロビン分子に付加されるPEGの数は、そのPEGのサイズに依存して変動し得る。しかし、得られる改変ヘモグロビンの分子サイズは、所望の半減期を達成するために、腎臓によって排除されることを回避するために十分な大きさであるべきである。Blumensteinらは、このサイズは、84,000ダルトンより大きい分子量に達すると決定した(Blumensteinら、「Blood Substitutes and Plasma Expanders」、Alan R.Liss編、New York,New York,205−212頁(1978))。この文献において、この著者は、ヘモグロビンを、種々の分子量のデキストランに結合体化させた。この著者らは、ヘモグロビン(64,000ダルトンの分子量を有する)およびデキストラン(20,000ダルトンの分子量を有する)の結合体化が、「循環からゆっくりと除去され、そしてごくわずかにしか腎臓を通らない」ことを報告したが、84,000ダルトンより分子量を大きくすることは、クリアランス曲線を変化させなかった。従って、Blumensteinらによって決定されるように、HBOCが、少なくとも84,000ダルトンの分子量を有することが好ましい。
本発明の1つの実施形態において、HBOCは、「MalPEG」であり、これは、マレイミジル活性型PEGが結合体化したヘモグロビンを表す。このようなMalPEGは、以下の式によってさらに表され得る:
Hb−(S−Y−R−CH−CH−[O−CH−CH−O−CH 式I
ここで、Hbは、四量体のヘモグロビンを表し、Sは、表面チオール基であり、Yは、HbとMal−PEGとの間のスクシンイミド共有結合であり、Rは、非存在であるか、アルキル、アミド、カルバメートまたはフェニル基(原材料の供給源および化学合成の方法に依存する)であり、[O−CH−CHは、PEGポリマーの骨格を形成するオキシエチレン単位であり、ここで、nは、このポリマーの長さを規定し(例えば、MW=5000)、そしてO−CHは、末端メトキシ基である。
(処方物)
本発明のHBOCは、上記HBOCおよび他の任意の賦形剤を、適切な水溶液または「希釈剤」(すなわち、静脈内注射について薬学的に受容可能なもの)と混合することによって処方される。この希釈剤中の酸素キャリアの濃度は、適用に従って変動し得、そして特に、予測される投与後の希釈に基づくが、好ましい実施形態において、増強した酸素送達および治療効果を提供する、本発明の組成物の他の特徴に起因して、通常、6g/dlより高い濃度は必要ではなく、そして0.1〜4g/dlの間であり得る。
適切な希釈剤としてはまた、とりわけ、タンパク質、糖タンパク質、多糖類、および他の膠質が挙げられ得る。これらの実施形態は、いずれの特定の希釈剤にも限定されることは、意図されない。従って、希釈剤は、アルブミンの水性無細胞溶液、他の膠質、または他の非酸素保有成分を包含することが意図される。いくつかの実施形態において、上記水溶液は、少なくとも2.5cPの粘度を有し得る。他の実施形態において、この水溶液の粘度は、2.5cPと4cPとの間である。
本明細書中に記載される組成物の投与は、外科手術の1日前、外科手術の間、または外科手術の1日後程度の長さを含む「外科手術に伴う」任意の時間に生じ得る。
(臨床適用)
本発明は、ヘモグロビンネイティブなより小さい協同性を示し得、全血より低いP50を有する組成物中に処方されるHBOC(例えば、PAO改変されたヘモグロビン結合体)に関する。いくつかの実施形態において、そのP50は、全血のP50の半分未満である。このような組成物は、外科手術を受ける正常血液量の患者において血流力学的安定性を増強するのに有用である。それらは、血漿増量剤、容量向上剤(volume enhancer)などの分野において周知である同じパラメータを使用して投与され得る。血流力学的安定性は、外科手術の前、外科手術の間、または外科手術の後にモニタリングされても、それらの任意の組み合わせでモニタリングされてもよい。したがって、血流力学的安定性の増強は、必然的に、外科的手順それ自体の際の被験体の血流力学特性の測定に限定されず、そして投与後の任意の時間に観察され得る。
本発明の方法の実施から最も利益を受け得る患者集団は、「外科手術を受ける正常血液量の患者」である。したがって、1つの実施形態において、本発明の方法は、希釈式自己血輸血(ANH)処置の間に血液の抽出を受けなかった患者に対する上記組成物の投与に関する。これは、外科的手順に伴って、これらの組成物を受容する個体が、外科手術の間、またはその後に輸血を必要とする可能性が低いという知見に基づく。したがって、本発明の方法は、1つの局面において、ANHの代替的方法である。
別の局面において、本発明の方法はまた、外科手術の間に血圧を上昇させるための血管収縮薬のより少ない投与を必要とする外科手術を受ける正常血液量の患者の、間接的な利益をもたらす。なぜなら、その患者の血圧は、外科手術に伴うHBOCの予防的投与に起因して、外科手術の間に効率的に安定化されるからである。
以下の3つの実施例の類似するバージョンは、開示された米国特許出願第2003/0162693号(2003年8月28日公開)である。これらの実施例の全てに関して、MalPEG−Hbは、モデルHBOCとして使用される。他のHBOCの生成および利用性は、科学文献において周知であるが、ヒト被験体において臨床試験を行なうための能力は、なおも慎重に調節され、そしてHBOCの複数の形態を使用して行なうことは不可能である。従って、本明細書中の教示に基づいて、本発明の範囲が、MalPEG−Hbの使用に限定されず、そして同様の特徴(例えば、ネイティブなヘモグロビンより高い酸素親和性、そして特に、PAO改変されたヘモグロビン)を有するHBOCがまた、使用に適していることは、当業者に十分に理解されるはずである。
(実施例1)
(支質非含有ヘモグロビンの産生)
(工程1:期限切れの赤血球の調達)
期限切れのパック詰めの赤血球を、市販の供給源(例えば、San Diego Blood BankまたはAmerican Red Cross)から調達する。好ましくは、期限切れの材料は、回収時から45日以下で受け取られる。パック詰めのRBC(pRBC)をさらなる処理まで(1〜7日間)4±2℃で保管する。全てのユニットを、ウイルス感染についてスクリーニングし、使用の前に核酸試験に供する。
(工程2:期限切れの血液のプール)
パック詰めの赤血球をクリーン施設の滅菌容器にプールする。パック詰めの赤血球の体積を記載し、そして市販の同時酸素濃度計または他の当業者に認識される方法を使用してヘモグロビン濃度を測定する。
(工程3:白血球枯渇(leukodepletion))
白血球枯渇(すなわち、白血球の除去)を、膜ろ過を用いて実施する。このプロセスの効率をモニタリングするために、開始および最終の白血球数を数える。
(工程4:細胞分離および細胞洗浄)
赤血球を、6倍容量の0.9%塩化ナトリウムで洗浄する。このプロセスは4±2℃で実施する。細胞洗浄物を、アルブミンについての分光光度的分析によって、血漿成分の除去を検証するために分析する。
(工程5:赤血球溶解および細胞細片の除去)
洗浄した赤血球を、6倍容量の水を用いて攪拌しながら少なくとも4時間または一晩、4±2℃で溶解する。溶解物を、冷却した状態で処理してヘモグロビンを精製する。これは、溶解物を0.16μm膜に通す処理によって達成する。精製したヘモグロビンは、加熱滅菌容器(sterile depyrogenetaed vessel)に回収する。この処理における全工程を4±2℃で実施する。
(工程6:ウイルスの除去)
ウイルス除去を、4±2℃にて、限外濾過によって実施する。
(工程7:濃縮および溶媒交換)
溶解物および限外濾過から精製したヘモグロビンを、10lD膜を用いて、乳酸リンゲル液(RL)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.4)中に交換する。次いで、このヘモグロビンを、同じ膜を用いて1.1〜1.5mM(四量体)の最終濃度まで濃縮する。10〜12容量のRLまたはPBSを、溶媒交換に使用する。この処理を4±2℃で実施する。RL中で調製した溶液のpHを、7.0〜7.6に調整する。
(工程8:滅菌濾過)
PBSまたは乳酸リンゲル液(RL)中のヘモグロビンを、0.45または0.2μmの使い捨てフィルタカプセルに通して滅菌濾過し、化学改変反応を実施するまで4±2℃で保管する。
ヘモグロビンを精製する他の方法は、当該分野で周知である。さらに、細胞溶解後の自動酸化を防ぐための還元剤(例えば、グルタチオンまたは別のチオール含有還元剤)の使用は、通常不必要である。
(実施例2)
(支質非含有ヘモグロビンの改変)
(工程1:チオール化)
チオール化を、ヘモグロビンについて10倍モル濃度の過剰なイミノチオラン(iminothiolane)を使用して、4±2℃にて4時間、連続攪拌しながら実施する。
反応条件:
・RL(pH7.0〜7.5)またはPBS(pH7.4)中、1mMヘモグロビン(四量体)
・RL(pH7.0〜7.5)またはPBS(pH7.4)中、10mMイミノチオラン
1:10 SFH:イミノチオランの比率および反応時間を、PEG化チオール基の数を最大にし、かつ異成分の生産を最小にするように最適化した。
(工程2:チオール化したヘモグロビンのPEG化)
チオール化したヘモグロビンを、開始の四量体ヘモグロビン濃度に基づいて20倍モル濃度の過剰なMal−PEG(アルキルリンカーまたはフェニルリンカーを有する)を用いて、PEG化する。ヘモグロビンを、まず、ヘモグロビンを酸化するための雰囲気で平衡化させる。この反応物を、連続攪拌しながら4±2℃で2時間置く。
反応条件:
・RLまたはPBS(pH7.4)中、1mMチオール化ヘモグロビン
・RLまたはPBS(pH7.4)中、20mM Mal−PEG。
(工程3:未反応の試薬の除去)
PEG化−Hbを、70kD膜を通して処理し、過剰な未反応の試薬またはヘモグロビンを除去する。20−容量の濾過を、未反応の試薬の除去を確実にするために実施し、サイズ排除クロマトグラフィーによってモニタリング(540nmおよび280nm)する。このタンパク質濃度を、4g/dlに希釈する。pHは、1N NaOHを用いて7.3〜0.3に調整する。
(工程4:滅菌濾過)
最終MalPEG−Hb生成物を、0.2μm無菌ディスポーザブルカプセルを用いて無菌濾過し、4±2℃で加熱滅菌容器(sterile depyrogenated vessel)に回収した。
(工程5:MalPEG−Hbの形成)
PEG化したHbを4g/dl RIに希釈し、pHを7.4±0.2に調整した。
(工程6:無菌充填)
最終代用血液組成物を無菌濾過(0.2μm)し、無菌ガラスバイアルに重量で分取し、層流フード内で捲縮シールを備える無菌ゴム栓で封じ、そして、使用まで−80℃で保存した。
(実施例3)
(MalPEG−Hbの生理化学分析)
(生理化学分析の方法論)
MalPEG−Hb代用血液の同質性および分子サイズは、液体クロマトグラフィー(LC)により特徴付けられる。分析用LCを使用して、PEG化ヘモグロビンの同質性および未反応のMal−PEGの除去程度を評価する。540nmでの吸光度を使用して、ヘモグロビンを評価し、ピーク位置により未反応のヘモグロビンからPEG化ヘモグロビンを分離する。280nmでの吸光度を使用して、遊離Mal−PEGからPEG化ヘモグロビンを分離する。この遊離Mal−PEGは、MalPEGの環状構造に起因して紫外(UV)スペクトルで吸収する。
高速走査ダイオードアレイ分光光度計(Milton Roy 2000またはHewlett Packard Model 8453)を使用して、ヘモグロビン濃度およびメトヘモグロビンの割合の分析(多成分性分析による)のために、ソレー帯および可視領域の可視スペクトルを回収する(Vandegriff,K.D.,およびR.E.,Shrager。Evaluation of oxygen equilibrium
binding to hemoglobin by rapid−scanning
spcetrophotometry and singular value decomposition.Meth.Enzymol.232:460−485(1994))。
同時酸素濃度計を使用して、MalPEG−Hb濃度およびメトヘモグロビンの割合を決定する。レオメーターを使用して粘度を決定する。膠質浸透圧計を使用して膠質浸透圧を決定する。酸素結合パラメータを酸素平衡曲線から決定する。
代用血液組成物のための好ましい規格を以下の表1に示す:
Figure 2012207048
(MalPEG−HbにおけるPEG化部位の数)
表面改変について、式Iの数「m」は、ヘモグロビン表面に結合するPEGポリマーの数を規定するパラメータである。
Hb−(S−Y−R−CH−CH−[O−CH−CH−O−CH 式I
この数を決定するために、ジチオピリジン比色定量アッセイ(Ampulski,R.,V.AyersおよびS.Morell.Determination of the
reactive sulfhydryl groups in heme proteins with 4,4’−dipyridinesdisulde.Biocheim.Biophys.Acta 163−169,1969)を使用して、チオール化の前後、次いで、Hbの再度のPEG化の後に、Hb四量体の表面の利用可能なチオール基の数を測定する。ヒトヘモグロビンは、2つの内因性の反応性チオール基をβ93Cys残基に含み、この反応性チオール基は、ジチオピリジン反応によって確認される。1:10 SFH:イミンチオラン(iminothiolane)の比でのSFHのチオール化の後、ジチオピリジン反応による反応性チオール基の数は2チオールから6チオールに増加する。PEG化反応の後、反応性チオール基の数は、1.3に減少する。このことは、MalPEG−Hbに4〜5のPEG化部位が存在することを示す。
(MalPEG−Hb対SFHのサイズ排除クロマトグラフィー分析)
最終MalPEG−Hb生成物の分析のためにFPLCを実施する。未改変のSFHと比較したMalPEG−Hbについての代表的なクロマトグラムを図1に示す。SFHに対する保持時間は約57分である。MalPEG−Hbに対する保持時間は約44分である。
(MalPEG−Hbの物理的性質および化学的性質)
血液および未改変のヒトヘモグロビン(SFH)と比較したMalPEG−Hbの物理的性質を以下の表2に示す。
Figure 2012207048
全血について15g/dlおよびヘモグロビン溶液について約4g/dlで決定した。COP測定およびFPLCにより決定した。
(酸素親和性)
ヘモグロビン−酸素平衡結合曲線を、酵素的酸素消費の間に測定した(Anal.Biochem.256:107−116,1998)。MalPEG−Hbは、高い酸素親和性(P50=5mmHg)および低い協同性(n50=1.0〜1.4)を示す。図2は、支質非含有ヘモグロビン(SFH)溶液とMalPEG−Hb溶液を比較する代表的な曲線を示す。
(粘度)
MalPEG−Hbのこの溶液特性は、ポリエチレングリコール鎖と溶媒の水分子との間の強い相互作用に起因する。このことは、以下の2つの理由から代用血液のための重要な特性であると考えられる:1)より高い粘度が溶媒を介して拡散するPEG−Hb分子とガス状のリガンド分子の両方の拡散定数を減少させ、そして2)より高い粘度が内皮壁に向って流れる溶液のずり応力を増加させ、血管狭窄に対抗するために血管拡張因子の放出を誘発する。表2に示すように、MalPEG−Hb溶液の粘度は2.5cPsである。
(膠質浸透圧(COP))
未改変の分子内架橋ヘモグロビンおよび分子間架橋ヘモグロビンまたはPEG−表面−結合体化ヘモグロビンを含有するヘモグロビン溶液のCOPを測定して、その高分子溶液特性を決定した(Vandegriff,K.D.,R.J.RohlfsおよびR.M.Wislow.Colloid osmotic effects of hemoglobin−based oxygen carriers.Winslow,R.M.,K.D.VandegriffおよびM.Intaglia編、Advances in Blood Substitutes Industrial Opportunities and Medical Challenges.Boston,Birkhauser,207−232頁(1997))。四量体ヘモグロビンは、理想溶液に近い挙動を示すが、PEGと結合体化されたヘモグロビンは、有意により高い膠質浸透活性を有し、非理想的な溶液を示す(Vandegriff,K.D.,M.Mcarthy,R.J.RohlsおよびR.M.Winslow.Colloid osmotic properties of modified hemoglobins:chemically cross−linked versus polyethylene glycol surface−conjugated.Biophys.Chem.69:23−30(1997))。表2に示すように、MalPEG−Hb溶液のCOPは50である。
(安定性)
PEG−ヘモグロビンを含むヘモグロビン溶液の安定性を、自動酸化の速度を試験することによって決定した。室温において、MalPEG−Hbの自動酸化は、10時間で、約5%MetHbから5.5%MetHbに増加した。従って、MalPEG−Hbの自動酸化速度は、0.05%/時間であった。
(実施例4:MalPEG−Hbの安定性)
この研究の目的は、例示的な貯蔵条件および取扱い条件のシミュレーションの間のMalPEG−Hbの安定性を決定することであった。取り扱いの三段階の間の安定性を評価した。段階Iは、製造施設での凍結保存から臨床現場に輸送される間の温度条件への移動を示した(凍結貯蔵研究)。段階IIは、+4℃で24時間にわたるそのMalPEG−Hbの融解およびその後の4℃で5日間にわたる貯蔵を示した(冷蔵研究)。段階IIIは、+4℃まで24時間でのそのMalPEG−Hbの融解およびその後の患者に投与する前に数日間室温でのMalPEG−Hbの貯蔵を示した(室温研究)。
(実験方法)
安定性を、そのMalPEG−Hb試験材料の酸化の速度によって規定した。同時酸素濃度計(IL Co−Oximetry 682、GMI,Inc、Ramsey、Minnesota)を使用して、サンプル中のメトヘモグロビンの割合を測定した。プロトコルに従って、各時点で、二連で測定を行った。
温度計または温度チャートレコーダーによって、温度をモニタリングした。凍結貯蔵研究は、−21.0±3.0℃の温度範囲で行った。冷蔵研究を、+4.0±0.2℃の温度範囲で行った。室温研究を、+21.0±1.0℃の温度範囲で行った。
温度、総ヘモグロビン、および%メトヘモグロビンを、示された時点の各々で記録した。凍結研究および冷蔵研究において、測定を時間0(完全に解凍)、1時間後、および次いで、5日間にわたり24時間ごとで行った。室温研究において、時間0(完全に解凍)およびその後10時間にわたり1時間ごとに測定を行った。
(結果)
MalPEG−Hbは、−20℃での6日間の貯蔵の間に%メトヘモグロビンにおいて変化を示さなかった。同様に、MalPEG−Hbは、+4℃での5日間の貯蔵の間に、%メトヘモグロビンにおいて変化を示さなかった。
(実施例5)
(血流力学的安定性を促すMaI−PEGの使用)
MalPEG−Hbを、上に記載されるように調製した。1000mL乳酸リンゲル液の総容量に平衡化した、MalPEG−Hbの0mL(乳酸リンゲル液単独)、200mL(「A」)、400mL(「B」)または600mL(「C」)の投薬量を、脊髄麻酔誘導の前に、選択性の整形外科手術を受ける患者に投与した。この結果を、図4に示す。
図5は、600mL MaIPEG Hbを受容した患者のバイタルサインを示す。示されるように、血圧の上昇は、ベースラインの測定値と比較して観察されなかった。対照的に、検出可能であるが、わずかな血圧の増大が、200mL MalPEG−Hbまたは400mL MalPEG−Hbを受容した患者において観察された。
低血圧事象をまた、患者においてモニタリングした。その結果を、表3において以下に示す:
Figure 2012207048
示されるように、MalPEG−Hbを受容した患者は、プラセボを受容した患者より少ない低血圧事象を示した。
(実施例6)
(外科手術の間に血流力学的安定性を増強するためのMalPEG−Hbの使用の拡大した臨床研究)
MalPEG−Hbは、先に、健康なボランティアにおける第1相試験において試験されており、有意な有害事象を生じず、そしてまた、支質非含有Hbと比較して減少した血管作用活性を示す非臨床研究と一致した。特に、心血管の疾患を有する高齢患者において低血圧事象として測定される血流力学的不安定性(例えば、心血管事象)は、外科手術を受けるこのような患者に対して問題である。多数の文献は、このような低血圧が、有意な手術後の罹患率を生じ得る、脳、心臓および腎臓における虚血をもたらすという仮説を支持する。これらの有害事象の効果からこのような外科手術患者を保護するためのHbベースの酸素キャリア(HBOC)の開発が、この実験の焦点である。
MalPEG−Hb(250mLまたは500mL)群、および酢酸リンゲル液単独を受容するコントロール群の無作為化二重盲検研究を、6つの異なる病院にてそれぞれ30人の患者の群で実施した。同意患者は、一次的な侵襲的な外科手術(主に、人工股関節置換術)を受けた。投薬は、脊髄麻酔の誘導前に生じた。安全評価は、バイタルサインおよびHolterモニタリング(注入から24時間まで)、ならびに臨床化学、凝固、血液学、および体液平衡を含む。90mmHg未満またはベースライン値の75%未満の収縮期血圧として定量的に定義される低血圧の出現は、効力の一次的なエンドポイントであった。効力の別の基準は、下でより完全に記載される通り、血圧および体液平衡を安定化するための薬理学的介入についての必要性であった。
(研究集団)
この実験において研究した患者の大部分は、変形性関節症を有する患者における選択性の一次的な人工股関節置換術である外科的手順を受けていた。しかし、多くの急性骨折をまた、研究し、そして少数の二次的な置換を研究した。算入および除外の判定基準を、表4に示す。
Figure 2012207048
(無作為化および盲検(blinding))
番号付けした各患者に割り当てられた処置は、コンピューターで作成し、連続して番号付けした無作為化コードの一覧表に従って決定した。処置群を、以下のように指定した:A、250mLのMalPEG−Hb;B、500mLのMalPEG−Hb;(AおよびBは、「試験群」を表す)およびC、酢酸リンゲル液(「プラセボ群」を表す)(各群に対して全投与容量を用い、この投与用量は投与の前に同じ総投与容量に調整された)。MalPEG−Hbが、赤色であり、そしてプラセボが、透明である場合、試みはまた、患者および「事情を知らない(blinded)」職員に、注入される溶液が分からないように行なった(すなわち、この研究を、伝統的な「二重盲検された」様式で行なった)。
(材料)
MalPEG−Hbを、本質的に、いくつかの少数のバリエーションを伴って、実施例1〜実施例3において上に記載したように調製した。投与の約24時間前、MalPEG−Hbのボトルを、冷凍庫(−20℃)から取り出し、そして徐々に解凍するために、室温においた。酢酸リンゲル液を、商業的供給源(Fressenius Kabi AB、Uppsala、Sweden)から入手した。
(投与)
MalPEG−Hbまたはプラセボのいずれかを、確立した静脈ラインを通して、較正した容量測定注入ポンプによって投与した。1000mLの総容量のMalPEG−Hbおよび/または酢酸リンゲル液を、注入の終了後30分以内に行なわれる麻酔が誘導される前に、盲検の目的のために注入した。
試験組成物溶液またはプラセボ溶液の注入は、患者の通常の看護に影響しなかった。試験溶液またはプラセボ溶液のいずれかを受容する患者はまた、その患者の健康のために必要であると判断される任意のさらなる処置を受容した。全ての医学的手順および処置を、その診療所の標準的な看護に従って行なった。研究開始において進行中であった全ての継続的な薬剤の投与、およびこの研究の間に与えられる併用する薬剤を、記録し、そして結果の解釈において考慮した。
(薬物動態の測定および可変性)
MalPEG−Hbの脈管内における存続および脈管内の産物の安定性を、注入前、注入の終了時、注入の6時間後、注入後1日目、2日目および3日目ならびに7〜10日目の、血漿ヘモグロビンレベルおよび血漿メトヘモグロビンレベルから決定した。これらの研究の結果は、異常なものではなく、そして本明細書中で報告しない。
(サンプルの回収および分析)
血液サンプルを、サンプル採取の間の溶血を最小限にする慣用的な方法を使用して、引き抜き、そして血漿からの血液サンプルの分離を保証するように処理した。MalPEG−Hbを含む血液サンプルの血漿部分が、赤色であった場合、サンプルの処理のために、「事情を知っている(unblended)」技術者によって行なわれることが、必要であった。サンプルの分析を、「暗号が破られる(code breaking)」前に行なった。従って、その分析を行なう研究室を、適切に分からないようにした。
(効力の測定値および可変性)
血流力学的安定性を増強するための例示的なHBOCとしてのMalPEG−Hbの有効性を、以下のエンドポイントを使用して研究した:
(A.低血圧のエピソード)
MalPEG−Hb/プラセボの注入後における低血圧のエピソードの数を、収縮期血圧(SBP)<90mmHgまたは注入前と比較して、SBPにおける>25%の降下として定義した。その定義を満たすSBPのそれぞれの登録を、1つの低血圧のエピソードとして計測した。
(B.総水分摂取量および総水分排出量(体液平衡))
測定を、外科手術の当日(注入の開始〜注入開始の24時間後)ならびに手術後1日目、2日目および3日目に行なった。摂取量は、以下を含む:注入した流体(MalPEG−Hb/プラセボ、膠質および晶質)、輸血および流体の経口摂取量。排出量は、以下を含む:尿、および外科手術の間の推定された失血。
静脈内の流体の型および量を、記録した(データ示さず)。晶質注入物および膠質注入物の総量は、3つの群の間で、入院期間全体について統計学的に異ならなかった。しかし、差が、術中の期間において生じた。群Aは、群B(1299±183mL)および群C(1281±144mL)と比較して、有意に少ない晶質(913±106mL)を受容した(P<0.05)。さらに、MalPEG−Hbを投与された膠質の量に含めた場合、群Bは、群A(850±66mL)または群C(666±69mL)と比較して、有意に多い合計の晶質(1389±169mL)を受容した。両方の差(B対CおよびA対B)は、統計学的に有意であった(P<0.05)。残りの研究については、晶質、膠質または合計の静脈内の流体投与に有意な差は、存在しなかった。
(C.心臓の障害)
血流力学的不安定性の測定としての心臓の障害の数および型(頻拍、虚血、徐脈および伝導の問題)は、事情を知らない心臓病専門医によって評価された。心臓のリズムの障害を、継続的なHolterモニタリングおよびECGを使用して記録した。
(D.薬理学的介入)
心臓血管を支援するための薬理学的介入(例えば、血圧の薬物、利尿剤)の数および用量をまた、麻酔の誘導から注入の開始後12時間まで記録した。
(E.輸血)
外科手術の間(麻酔の誘導から外科手術の終了およびその後)に投与された輸血(パックされた赤血球の体積)をまた、記録した。
(F.酸素利用)
手術後に追加した酸素投与の持続期間を、外科手術の当日およびその後数日間記録した。
(結果)
有害事象として発現される低血圧性の不安定性(例えば、低血圧のエピソード、および昇圧剤の投与に対する必要性)を、下の表5に示す。低血圧事象の%について得られた結果をまた、図6に示す。
Figure 2012207048
上記の実施例は、組成物の好ましい実施形態の作製および使用の方法の完全な開示および記載を当業者に与えるために提供されるのであって、本発明者らが、彼らが発明として考えるものの範囲を限定することを意図するのではない。当業者に明らかな、本発明を実施するための上記の態様の改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。本明細書中で引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、各々のこのような刊行物、特許または特許出願が具体的にかつ個々に本明細書中に参考として援用されることが示されるかのように、本明細書中に参考として援用される。

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