JP5099800B1 - 姿勢改善ガードル - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の目的の1つは、腹直筋と腹斜筋の緊張を促し、体幹の捻れと骨盤回旋運動を良好に導き、歩行をスムーズにし、歩くことで骨盤の歪みを改善し、さらに、後傾した骨盤を前傾させ正しい位置へ導き、その位置を容易に保持することを可能とするガードルを提供することである。
【解決手段】 骨盤・股関節一体型の構造のガードルに、仙骨中心から腸骨上方に付着する筋群を斜めにサポートして、股関節内旋筋と股関節内転筋を連携させ、かつ腸骨前方にある腸骨筋、大腰筋、外腹斜筋などに作用するように、各部位にかかる着圧に変化を持たせた設計をする。この設計によって、腸骨から股関節を繋ぐ筋群に力が作用し、骨盤と股関節の機能を高め、股関節筋群の柔軟性を引き出し、可動域を広め、進行方向に膝を安定させ、脚を蹴り出したり戻したりし易くし、かつ骨盤の過度の前傾を防ぐことが可能となる。
【選択図】 図1A

Description

本発明は、人体を支える骨盤に付随する筋群に働きかけ骨盤を正しい位置に導くのみでなく、歩行や体幹バランス保持に関わる筋肉に働きかけ歩行運動を軽快に導くような構成を有する姿勢改善ガードルに関する。
姿勢の良さは、人の美しさにとって重要である。美しいプロポーションが崩れる要因は、矢状面、前額面、および水平面の姿勢の崩れである。矢状面の姿勢の崩れとしては、矢状面の姿勢を構築している頸椎・胸椎・腰椎の弯曲バランスが崩れて胸椎後弯角が増大する円背や、上半身の不安定な重みが腰椎に集中し、腰部の弯曲が増大する反り腰、加齢による筋力の低下から上半身の重みを支えられなくなること等から生じる骨盤後弯姿勢などが知られている。前額面の姿勢の崩れとしては、片側にバッグを持ち続ける動作や、仕事やスポーツで片側に体を傾ける動作などの影響により発生する脊柱の右または左への弯曲から生じる側弯等が知られている。また、ゴルフやテニスのような一方向の回転によってパワーを出す動作や、人の介助に見られる片側の支持により身体の捻れを要する動作などは、体幹筋群の緊張度の左右差となって表れ、水平面での背骨や骨盤の歪みに繋がることが知られている。
これらの姿勢の崩れは、骨格の歪みとなり、上半身と下半身のつなぎ目である骨盤に大きな影響を及ぼす。骨盤は、体幹や下肢の筋肉と複雑に結ばれ、下肢を股関節で繋ぎ、人の立位や動きを組み立てている。また、骨盤は体幹の重みを支え体重を下肢に伝える重要な役割を果たしており、骨盤のバランスが整った姿勢を保つことで、座る・立つ・動くという人体の基本となる動作を正しく行うことが可能となる。従って、骨盤を正すことは、健康的で美しいプロポーションと軽やかな動きを手に入れるために重要である。
上記のような崩れた姿勢を改善することを目的として骨盤に働きかける下着が数多く存在する。例えば、特許文献1には、伸縮性を有する生地からなるガードル本体と、該ガードル本体の背面で交差して該ガードル本体に縫付けられた、伸縮性及び弾力性を有する生地からなる1対の背面交差部材とを具備した骨盤矯正ガードルが開示されている。また、特許文献2には、全体に横方向に伸縮性のある布地で形成されたパンツ本体の裏面に、長手方向に伸縮性を発揮する、左右の腰部から内転筋に沿って前面の股下に至るように設けた補強弾性帯Xと、腹部中央を頂点として、背面で大殿筋を持ち上げるように設けた補強弾性帯Yを備えており、補強弾性帯Xと補強弾性帯Yが、股関節の位置で二重に重なり合う構成の骨盤矯正用パンティーガードルが開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載された骨盤矯正ガードルは、ガードル本体の背面で交差してガードル本体に縫付けられた、伸縮性及び弾力性を有する生地からなる1対の背面交差部材の強力な引張り力によって強制的に骨盤の歪みを矯正するものであるので、当該強力な引張り力による圧迫感は避けられない。また、この強力な引張り力によって骨盤に直接的に働きかけているため、ガードルの装着をやめると、日常生活における上記のような姿勢の歪みを引き起こす動作によって再び骨盤の歪みが起こる可能性が高いという問題がある。また、特許文献2に記載された骨盤矯正用パンティーガードルは、補強弾性帯Xが関節に負担をかけずに関節周辺の筋肉を鍛え、骨盤と股関節を矯正し、長内転筋を鍛える効果を発揮し、補強弾性帯Yが骨盤と股関節の矯正と腹部を整えるとしている(特許文献2の明細書段落番号[0007]、[0008])が、長手方向に伸縮性を発揮する補強弾性帯Xと補強弾性帯Yのみでは、複数の筋群が付随する骨盤を効果的に矯正するためには不十分である。さらに、従来からある骨盤矯正下着は、静的な立位姿勢時で効果を示すアイテムであって、骨盤の周囲の圧迫力が強く、歩行時での骨盤回旋や足運びの円滑性が損なわれるリスクがあり、骨盤と歩行時のスムーズな運動について考慮を欠く、という問題がある。その結果、歩行時も含めた姿勢改善という効果の面で未だ満足度が低いものであった。
特開2011−99169号公報 特許第4493047号公報
本発明の目的の1つは、腹直筋と腹斜筋の緊張を促し、体幹の捻れと骨盤回旋運動を良好に導き、歩行をスムーズにし、さらに、後傾した骨盤を前傾させ正しい位置へ導き、その位置を容易に保持することを可能とするガードルを提供することである。
本発明の別の目的は、下腹を前方より抑え下腹が出ることを抑制し、また骨盤後弯角の増幅を防ぎ、矢状面での背骨の弯曲形成を良好にし、歩行時の過度な骨盤前傾を制御しながら非対称的に振り出される足運びを軽快に導くことを可能とするガードルを提供することである。
本発明のさらなる別の目的は、ヒップアップや腹引き締め作用によって美しい臀部形状を作りだし、さらに歩行時の股関節内・外旋運動を容易にして歩く姿勢を美しくすることを可能とするガードルを提供することである。
本発明のさらなる別の目的は、歩くことで骨盤の歪みを改善することを可能とするガードルを提供することである。
上記の目的は、以下に記載の姿勢改善ガードルによって達成される。
請求項1に係る発明は、緊締力の大きさと方向が異なる複数の領域を含む本体部分からなり、前記本体部分が身体に装着されたとき骨盤に付随する筋群に前記緊締力が付与される姿勢改善ガードルであって、前記複数の領域は、少なくとも、第1緊締部、第2緊締部、第3緊締部、第4緊締部および第5緊締部を含み、
前記本体部分が身体に装着されたとき、前記第1緊締部は、左右の腸骨稜側方より、それぞれ、腸骨稜の前方を斜め下方の、骨盤の中心にある恥骨結合部に向かい、さらに大腿部の内側を覆い、前記第2緊締部は、腸骨稜外唇に付着する中殿筋の外側から仙骨の側方にある腸骨稜側方を通過し大腿前方を通って大腿内側に至るまでを覆い、前記第3緊締部は、仙骨の上方端から中心に位置する仙骨棘全域を覆い、前記第4緊締部は、腹直筋を、骨盤前方にあってウエストにあたる位置から恥骨結合部まで覆い、および前記第5緊締部は、前記第4緊締部を、恥骨結合部から同幅で分離し、両脚の大腿前方に分岐させ、対称的に大腿外側へ向かい、縫工筋に交わる位置までを覆い、
前記第1緊締部の上部は第1の緊締力F1を有し、前記第1緊締部の下部は第3の緊締力F3を有し、前記第2緊締部の上部は第3の緊締力F3を有し、前記第2緊締部の下部は第5の緊締力F5を有し、前記第3緊締部は第2の緊締力F2を有し、前記第4緊締部は第1の緊締力F1を有し、前記第5緊締部の上部は第2の緊締力F2を有し、および前記第5緊締部の下部は第3の緊締力F3を有し、ここで、前記第1の緊締力、前記第2の緊締力、前記第3の緊締力および前記第5の緊締力が、F1>F2>F3>F5の関係を満たし、並びに
前記第1緊締部は、外腹斜筋の収縮方向に強い伸縮力を持ち、前記第2緊締部は、斜め方向に強い伸縮力を持ち、前記第3緊締部は、斜めクロス方向に強い伸縮力を持ち、前記第4緊締部は、腹直筋の走行に沿う方向に強い伸縮力を持ち、および前記第5緊締部は、斜め方向に強い伸縮力を持つことを特徴とする姿勢改善ガードルに関する。
請求項に係る姿勢改善ガードルによれば、第1緊締部、第2緊締部および第3緊締部を含むので、腹直筋と腹斜筋の緊張を促し、体幹の捻れと骨盤回旋運動を良好に導き、歩行をスムーズにし、さらに、後傾した骨盤を前傾させ正しい位置へ導き、その位置を容易に保持することが可能となる。
請求項1に係る姿勢改善ガードルによれば、第4緊締部および第5緊締部を含むので、下腹を前方より抑え下腹が出ることを抑制し、また骨盤後弯角の増幅を防ぎ、矢状面での背骨の弯曲形成を良好にし、さらに、歩行時の過度な骨盤前傾を制御しながら非対称的に振り出される足運びを軽快に導くことが可能となる。
請求項に係る姿勢改善ガードルによれば、第1緊締部および第4緊締部を含むので、下腹を前方より抑え下腹が出ることを抑制し、骨盤後弯角の増幅を防ぐことに加えて、腹直筋と腹斜筋の緊張を促し、体幹の捻れと骨盤回旋運動を良好に導き、歩行をスムーズにし、歩くことで骨盤の歪みを改善することが可能となる。
図1Aの(a)〜(e)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態1の各緊締部の位置を示す。(a)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態1の正面図であり、(b)は、背面図であり、(c)は、左前方から見た図であり、(d)は、左側面図であり、および(e)は、左後方から見た図である。 図1Bの(a)〜(e)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態1の各緊締部の緊締力の大きさを示す。(a)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態1の正面図であり、(b)は、背面図であり、(c)は、左前方から見た図であり(d)は、左側面図であり、および(e)は、左後方から見た図である。 図1Cの(a)〜(b)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態1の各緊締部の緊締力の方向を示す。(a)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態1の正面図であり、(b)は、背面図である。 図2Aは、本発明の姿勢改善ガードル実施の形態1を身体に装着した時の姿勢改善ガードルの各緊締部と骨との位置関係を示す正面図である。 図2Bは、本発明の姿勢改善ガードル実施の形態1の姿勢改善ガードルを身体に装着した時の姿勢改善ガードルの各緊締部と骨との位置関係を示す左側面図である。 図2Cは、本発明の姿勢改善ガードル実施の形態1の姿勢改善ガードルを身体に装着した時の姿勢改善ガードルの各緊締部と骨との位置関係を示す背面図である。 図3Aは、本発明の姿勢改善ガードル実施の形態1の姿勢改善ガードルを身体に装着した時の姿勢改善ガードルの各緊締部と筋肉との位置関係を示す正面図である。 図3Bは、本発明の姿勢改善ガードル実施の形態1の姿勢改善ガードルを身体に装着した時の姿勢改善ガードルの各緊締部と筋肉との位置関係を示す左側面図である。 図3Cは、本発明の姿勢改善ガードル実施の形態1を身体に装着した時の姿勢改善ガードルの各緊締部と筋肉との位置関係を示す背面図である。 図4の(a)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態2の正面図であり、図4の(b)は、その左側面図であり、図4の(c)は、その背面図である。 図5の(a)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態3の正面図であり、図5の(b)は、その左側面図であり、図5の(c)は、その背面図である。 図6の(a)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態4の正面図であり、図6の(b)は、その左側面図であり、図6の(c)は、その背面図である。 図7の(a)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態5の正面図であり、図7の(b)は、その左側面図であり、図7の(c)は、その背面図である。 図8の(a)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態6の正面図であり、図8の(b)は、その左側面図であり、図8の(c)は、その背面図である。 図9の(a)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態7の正面図であり、図9の(b)は、その左側面図であり、図9の(c)は、その背面図である。 図10の(a)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態8の正面図であり、図10の(b)は、その左側面図であり、図10の(c)は、その背面図である。 図11の(a)は、身体の骨格の正面図であり、図11の(b)は、その左側面図であり、および図11の(c)は、その背面図である。 図12の(a)は、身体の骨格と筋肉の正面図であり、図12の(b)は、その左側面図であり、および図12の(c)は、その背面図である。 図13の(a)は、仙骨角を示す図であり、図13の(b)〜(d)は、仙骨角と骨盤の前傾の関係を示す図である。 図14は、歩行時の左右の脚で非対称な運動を図示したものである。 図15は、ガードルを装着しない場合のシルエットと、本発明の姿勢改善ガードルを装着した場合のシルエットの比較を示す。
本発明の技術的特徴である、緊締力の大きさと方向(伸縮力の大きさと方向)が異なる複数の領域(以下、この各領域を、「緊締部」と称す)は、素材の伸縮力や重ね使いに様々なバリエーションがある。理解を容易にするために、まず、本発明の姿勢改善ガードルの一実施の形態(実施の形態1、図1A〜図3C)に基づいて、各緊締部の位置と機能を具体的に説明する。
本発明の姿勢改善ガードルを身体に装着した時の各緊締部の位置の多少のずれは、許容される。また、各緊締部の素材の伸縮する方向について、本発明の姿勢改善ガードル(G)の履き込み口(UP)を上、裾を下として、水平方向を横方向、垂直方向を縦方向とする(図1B参照)。さらに、各緊締部の素材が交差する(以下、「クロスする」ともいう)構成のガードルの場合、その交差する方向を、「クロス方向」と言い、その交差する方向が水平方向でも垂直方向でもない場合、特に、「斜めクロス方向」と言う。この「斜めクロス方向」との用語は、各緊締部の素材が交差しない構成のガードルにおいても、各緊締部の素材が交差する構成のガードルと同様の方向を指すために使用される。
[実施の形態1]
本発明の実施の形態1は、以下の第1緊締部から第9緊締部を含む姿勢改善ガードルである。
図1Aの(a)〜(e)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態1の各緊締部の位置を示す図である。
図1Bの(a)〜(e)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態1の各緊締部の緊締力の大きさを示す図である。図1Bにおいて、左上方より右下方に延びる線で構成された第1緊締部の上部のハッチングおよび右上方より左下方に延びる線で構成された第1緊締部の上部のハッチング、並びに上方より下方に延びる線で構成された第4緊締部のハッチングは、第1の緊締力F1を意味する。左上方より右下方に延びる線と右上方より左下方に延びる線が交差している第3緊締部のハッチング、並びに左上方より右下方に延びる線と右上方より左下方に延びる線が交差している第5緊締部の上部のハッチングおよび右上方より左下方に延びる線と左上方より右下方に延びる線が交差している第5緊締部の上部のハッチングは、第2の緊締力F2を意味する。左上方より右下方に延びる線で構成された第1緊締部の下部のハッチングおよび右上方より左下方に延びる線で構成された第1緊締部の下部のハッチング、左上方より右下方に延びる線で構成された第2緊締部の上部のハッチングおよび右上方より左下方に延びる線で構成された第2緊締部の上部のハッチング、並びに左上方より右下方に延びる線で構成された第5緊締部の下部のハッチングおよび右上方より左下方に延びる線で構成された第5緊締部の下部のハッチングは、第3の緊締力F3を意味する。上方より下方に延びる線で構成された第6緊締部のハッチング、および上方より下方に延びる線で構成された第7緊締部のハッチングは、第4緊締力F4を意味する。無地領域の、第2緊締部の下部、第8緊締部および第9緊締部の部分は、第5緊締力F5を意味する。
図1Cの(a)〜(b)は、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態1の各緊締部の伸縮力の方向を示す。図1Cにおいて、矢印「→←」は、伸縮力の強い方向を示し、矢印の「←→」は、伸縮力の弱い方向を示す。
図2A〜2Cは、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態1を身体に装着した時の各緊締部と骨との位置関係を示し、および図3A〜3Cは、本発明の姿勢改善ガードルの実施の形態1を身体に装着した時の各緊締部と筋肉との位置関係を示す。
<第1緊締部>
外腹斜筋の収縮方向に伸縮力の強い素材を、左右の腸骨稜側方より、それぞれ、腸骨稜の前方を斜め下方の、骨盤の中心にある恥骨結合部に向かい、さらに大腿部の内側を覆う位置に配置する(第1緊締部(1)、図1A〜1C参照)。第1緊締部(1)のうち骨盤を覆う部分には、第1の緊締力F1を有する素材を配置し(この部分を、「上部」という)、第1緊締部(1)の骨盤下部から大腿部近傍の部分には、第3の緊締力F3を有する素材を配置する(この部分を、「下部」という)(図1Aにおいて、第1緊締部(1)中の点線は、上部と下部の境界を示す)。骨盤の側方で腸骨外側に位置する腸骨外唇あたりで第2緊締部(2)と合流した第1緊締部(1)の第1の緊締力F1および第3の緊締力F3を、両腸骨稜側方より骨盤の前方へ導き、腸骨稜の前方斜め下方の、骨盤の中心にある恥骨結合部まで繋ぐ(図2A〜2C、図3A〜3C参照)。
この第1緊締部(1)の配置下には、腸骨の内側縁に付着し、対側の肋骨に付着する外腹斜筋が走行する。この第1緊締部(1)の第1の緊締力F1及び第3の緊締力F3が示す収縮方向は、外腹斜筋の収縮方向に沿う形となり、腹斜筋に力が均等に与えられ、腹斜筋の緊張性を高め、両側の腸骨を骨盤の中心軸に導くことができる。また、左右で均等に引き出された腹斜筋の緊張性は、立脚期から脚を一歩踏み出す際の対側の肋骨を形成する胸郭部をバランスよく前方へ引き出し、上半身と下半身の回旋バランスを良好にする。さらに、歩行時に脚を一歩踏み出す際に進行方向へ骨盤を回旋させる腹斜筋の骨盤回旋作用を向上させ、歩行を円滑にする。
両腸骨から恥骨結合部にかけて斜めに配置した第1緊締部(1)の緊締力が腹斜筋の緊張を促し、水平面上で起こる体幹の捻れと非対称動作となる骨盤回旋運動を良好に導いた結果、歩行に伴う骨盤回旋を、背骨を中心に左右対称に引き起こし、歩行をスムーズに展開させることが可能となる。歩行メカニズムで重要な骨盤回旋がスムーズになれば、骨盤とともに一歩踏み出す歩行メカニズムが良好となり、歩行周期もリズムよく行われ、一歩の振幅を大きくすることが可能となる。この歩行周期の円滑さは、骨盤内の腸骨に付着する左右の腹斜筋の緊張性を均等化し、歩くことで骨盤回旋リズムが改善され、骨盤の歪みの改善に大きく貢献することができる。
<第2緊締部>
斜め方向に伸縮力の強い素材を、腸骨稜外唇に付着する中殿筋の外側から後腸骨棘側方を通過し縫工筋の走行方向に沿う形をとりながら大腿前方を通過し、大腿内側に至るまでを覆う位置に配置する(第2緊締部(2)、図1A〜1C参照)。第2緊締部(2)は、腸骨稜外唇に付着する中殿筋の外側から対側の腸骨稜に面する仙腸関節の側方にある後腸骨棘側方までの幅を有し、同側の大殿筋上方部から股関節周囲筋を補う幅を有したまま大腿前方を通過し、大腿内側に至るまでを覆う。第2緊締部(2)は、第1緊締部(1)と合流させた腸骨稜外唇に付着する中殿筋の外側から開始し、大殿筋の上方部を押さえ、そのままパワーが途切れることなく大殿筋が付着する後上腸骨棘を通過し、仙腸関節をまたぐよう仙骨1、2、3、4、5の棘突起を越える外側部で止める。つまり、第2緊締部(2)は、大殿筋の上方部で腸骨上方端に沿う範囲から、腸骨外側の大転子上方・中央・下方を補う面積で斜め下方に通過させ、腸骨稜の上前腸骨棘から始まり、大腿前方を斜走し、膝内側部に走行する縫工筋の全長のほぼ1/3を上方から押さえるように配置する(図2A〜2Cおよび図3A〜3C参照)。第2緊締部(2)のうち、本発明の姿勢改善ガードル(G)の履き込み口(UP)から、全長の約4分の3の上方部分に、第3の緊締力F3を有する素材を配置し(この部分を、「上部」という)、残りの約4分の1の下方部分に、第5の緊締力F5を有する素材を配置する(この部分を、「下部」という)(図1B参照)。第2緊締部(2)の下部は、大殿筋の最大の筋線維を持つ筋腹で緊張力の最も強い範囲は含まない(図1Aにおいて、第2緊締部(2)中の点線は、上部と下部の境界を示す)。
第2緊締部(2)によって、骨盤後方の上縁から骨盤前方の中心に向かう力が生み出され、これは骨盤を腸骨上縁全体から前方へ押す力となり、骨盤前傾を容易に保持することが可能となる。
<第3緊締部>
斜めクロス方向に強い伸縮力を持つ素材を、仙骨の上方端から骨盤の中心に位置する仙骨棘全域を覆う位置に配置する(第3緊締部(3)、図1A〜1C参照)。第3緊締部(3)は、第2の緊締力F2を有する。好ましくは、第3緊締部(3)は、左右の第2緊締部(2)と骨盤後方で中心にある仙骨全域において交差し、左右の第2緊締部(2)の素材が示すバイアス状の伸張力が交差する配置となり(図1Bおよび1C参照)、仙骨中心から仙腸関節を含む範囲にバイアス状の力が交差した第1の緊締力F1の次に強い緊締力(この緊締力を、以下、「バイアスクロスパワー」という)を与える(図2A〜2Cおよび図3A〜3C参照)。
第3緊締部には、好ましくは左右の第2緊締部(2)と、さらに第3緊締部(3)が仙骨上で交差することで生まれる、バイアスクロスパワーにより、骨盤を構成する両腸骨稜の上外側方向から仙骨中心にかけて強い緊締力が生まれ、後方より仙骨を前方へ押す力が強まる。第3緊締部(3)の配置下には、仙骨から腰椎にかけて走行する脊柱起立筋が走っている。この第3緊締部(3)のバイアスクロスパワーによる緊締力は、同緊締部下に位置する脊柱起立筋の短縮性筋収縮を引き出すよう作用し、脊柱起立筋の伸展に伴う骨盤後傾位を改善し、腰椎前弯角を正常化させ、その直上の胸椎の後弯角増大を制御し、矢状面の弯曲を良好に導く。また、この位置下にある腰部から仙骨に走行する脊柱起立筋の緊張は、腰椎部の前弯を引き出し、骨盤後傾から生じる腰椎後弯を改善し、本来腰椎が成す前弯角に導くことを可能とする。そして、良好な腰椎前弯となったことで、その上方に位置する胸椎・頸椎の弯曲も改善され、頸椎・胸椎・腰椎からなる背骨の弯曲バランスの改善も可能とする。結果、姿勢が改善され、上半身の姿勢改善を実現することが可能となる。
<第1緊締部、第2緊締部および第3緊締部の総合作用>
第3緊締部(3)のバイアスクロスパワーによる緊締力は、骨盤の腸骨稜の上方と仙骨上方を後方から前方方向へ押す力として働く。この第3緊締部(3)を、第2緊締部(2)へ、さらに骨盤前方の第1緊締部(1)へと、骨盤の外側の腸骨稜後方から骨盤前方の恥骨結合部まで繋ぐことにより、仙骨中心から両側の腸骨上方に付着する内腹斜筋、腰方形筋、脊柱起立筋を体幹中心軸方向へ押さえる力が働き、骨盤後弯で緩んだ内腹斜筋、腰方形筋、脊柱起立筋の緊張を引き出すことが可能となり、後傾した骨盤を前傾させる効果が得られる。
上記の仙骨上の第3緊締部(3)のバイアスクロスパワーの第2の緊締力F2と、その両側に配置した第2緊締部(2)の第3の緊締力F3のパワーの総合力は、骨盤の傾きを良好な位置に導き、腰椎前弯を引き出す効果を高める。また、このように左右から対称的に力を配置することによって、骨盤の位置が正され、均等な体重分散が可能となり、下肢が動き易くなるという効果が生まれる。
本発明の特徴は、第1緊締部(1)、第2緊締部(2)および第3緊締部(3)の総合作用によって、円背姿勢の原因として問題視されている骨盤後傾増幅に対して、大殿筋を上方から押さえる力により骨盤を前傾させ、仙骨を上方より押さえるという部分的作用に加えて、仙骨と大殿筋の上方から骨盤前方の恥骨結合に総合的なバイアス力を作用させるという点にある。さらに、本発明は、第1緊締部(1)と第2緊締部(2)が示すバイアス状の緊締力が、股関節内旋方向に作用する中殿筋、大殿筋に作用することを特徴とする。これによって、中殿筋、大殿筋の伸展力を引き出し、骨盤を前方へ導く股関節内旋運動をし易くし、骨盤の内旋運動も起こし易くする効果を奏することが可能となる。一歩踏み出す歩行動作においては、股関節内旋運動とともに、骨盤の回旋運動が必要とされる。この運動を円滑に行うために、本発明は、骨盤後方から股関節の上方・中心・下方を通って、縫工筋のほぼ1/2中央を補う位置までを、強い緊締力のバイアス状の素材で骨盤前方の鼡径靭帯の方向に沿う形で繋ぐ構成(第2緊締部(2)と第1緊締部(1))を特徴とする。本発明のこの構成によって、骨盤回旋運動を円滑にしつつ、股関節を内旋させる力を強め、進行方向に膝を導く作用が引き出され、その結果、膝関節を安定させながら骨盤内旋運動をスムーズにすることが可能となる。
<第4緊締部>
体幹前方にあって垂直方向に最大の長さを持つ腹直筋の下方(ヘソあたり)の、骨盤前方にあってウエストにあたる位置から、最も骨盤腔底の最下方、恥骨結合部が位置する範囲までを覆う位置に、腹直筋の走行に沿う方向に強い伸縮力を持つ素材を配置する(第4緊締部(4)、図1A〜1C参照)。第4緊締部(4)は、第1の緊締力F1を有し、身体の前方にあって胸骨下とその胸骨を挟む両側の肋骨から始まり、恥骨を繋ぐ筋肉である腹直筋の骨盤内にある位置を前方より押さえる位置に配置する(図2A〜2Cおよび図3A〜3C参照)。ここで、腹直筋の走行に沿う方向は、ほぼ縦方向である。
この第4緊締部(4)の有する第1の緊締力F1は、骨盤腔で内臓の重みを支える腹直筋・腹斜筋・腹横筋の緊張を高め、腹を前方より押さえ、これらの筋肉の緊張は下腹のポッコリとなる膨らみを抑制する。また、この第4緊締部(4)の第1の緊締力F1は、骨盤を前方から支える力を発揮し、結果、骨盤後弯角が増幅するのを防ぐ。さらに、この第4緊締部(4)の持つ縦方向に強い伸縮力は、腹直筋が短縮方向へ作用するように導き、腹筋群を緊張させ腹筋力を高め、腹筋と背筋のバランスを良好にし(ほぼ3対7)、立位姿勢に伴う矢状面での弯曲形成を良好にする。このような腹筋の緊張に伴って腹筋と背筋の仕事量のバランスが改善され、姿勢バランスも良好となる。これにより、移動時の体幹バランスがとり易くなり、ひいては、歩くリズムを軽快にすることが可能となる。
<第4緊締部と第1緊締部の総合作用>
第4緊締部(4)と第1緊締部(1)の2つの第1の緊締力F1により、同位置下にある腹直筋と腸腰筋が短縮方向に力を発揮し易くなり、骨盤を前傾に導くことが可能となる。骨盤前方にある恥骨に向かって第4緊締部(4)と第1緊締部(1)の2つの第1の緊締力F1を合流させ、かつ腸骨上方と骨盤底にある恥骨を、バイアス方向に作用する第1緊締部(1)により繋ぐことにより、骨盤内の腹斜筋の短縮性収縮力も引き出すことが可能となる。これによって、骨盤の前傾をさらに導き、骨盤後弯角を改善させる整体効果が得られる。
骨盤前方への傾きを最大に引き出すことは、第4緊締部(4)と第1緊締部(1)に同等の最強の緊縮力を配置することと、第4緊締部(4)の両側に配置した第1緊締部(1)が、最も強い伸縮力を斜め方向に発生する設計によって達成される。この設計によると、バイアス状に配置した第1緊締部(1)の緊締力の強く伸縮する方向と拮抗する方向に走行する腸腰筋に対し、前方から圧力が加わる。その圧力は第1緊締部(1)の配置下の腸腰筋の緊張度を高め、収縮作用効果を良好に導く。この収縮する力が骨盤を前方から支えて安定させ、骨盤後弯角を減少させる。
<第5緊締部>
第4緊締部(4)を、恥骨結合部から同幅でセパレート(以下、「分離」とする)し、両脚の大腿前方に分岐させ、対称的に大腿外側へ配置し、腸骨外側で上前腸骨棘から膝内側に走行する縫工筋に交わる位置までを覆う位置に、斜め方向に強い伸縮力を持つ素材を配置する。第5緊締部のうち第1緊締部と交わる部分(この部分を、「上部」という)は、第2の緊締力F2を有し、第1緊締部と交わらない部分(この部分を、「下部」という)は、第3緊締力F3を有する(第5緊締部(5)、図1A〜1C参照)。この大腿前方の斜め外側方向に配置した第5緊締部(5)の最下位置は、腸骨外側で上前腸骨棘から膝内側に走行する縫工筋のほぼ1/2と交わる位置までとする(図2A〜2Cおよび図3A〜3C参照)。
第5緊締部(5)の大腿外側に配置した第1緊締部と交わる上部の第2の緊締力F2、および下部の第3の緊締力F3によって生まれるバイアス状の伸縮力は、骨盤回旋がスムーズに行なわれるよう働く振り出し筋である腹斜筋と腸腰筋の筋緊張性を良好に引き出せるように作用し、歩行時の非対称性運動となる脚の運動を軽快に導くことが可能となる。また、第5緊締部(5)の最終位置を、大腿内側から大腿前方の中央より外側にあたる位置とすることによって、大腿前方の大腿四頭筋への抵抗量を軽減することが可能となる。さらに、第5緊締部(5)を大腿中央よりやや外側で縫工筋を押さえる位置で止めることによって、歩行に支障をきたすことなく縫工筋の収縮作用に抵抗を与え、その抵抗に反する力を発揮することが可能となる。この縫工筋の収縮力の高まりによって、歩行の際の一歩前に脚を振り出す足運びがより軽快となり、歩行を円滑にすることが可能となる。
<第4緊締部と第5緊締部の総合作用>
第4緊締部(4)の素材は、第1の緊締力F1を有し、縦方向に強い伸縮力を持つ。この伸縮力は腹直筋の短縮性収縮と同一方向に作用する。第4緊締部(4)は、骨盤中央で腹直筋中心にある白線の一部分を覆い、その配置下にある腹直筋と腹横筋の腹圧を高め、骨盤を前方から支え、腰仙部の弯曲を適切な位置へ導き易くし、腰椎への負担を軽減することが可能となる。また、この第4緊締部(4)は、恥骨結合部近傍あたりで第5緊締部(5)に途切れることなく繋がれ、第4緊締部(4)から第5緊締部(5)へかけて配置される逆Y字の第1緊締部と交わる第5緊締部(5)の上部の第2の緊締力F2、および第5緊締部(5)の下部の第3の緊締力F3は、歩行時の過度な骨盤前傾を制御しながら非対称的に振り出される足運びを軽快にし、バランス良く脚の引き上げを実現することを可能とする。
<第6緊締部>
大殿筋下方部からハムストリング筋の上方部を補う幅を有し、腸骨外側で股関節全域を覆い、大腿後面の内側部に位置する半腱様筋と半膜様筋のほぼ1/2上方を覆う位置に、縦方向に強い伸縮力を持つ素材を配置する(第6緊締部(6)、図1A〜1C参照)。第6緊締部(6)は、第4の緊締力F4を有する。第6緊締部(6)には、腸骨稜外側にある大転子上から始まった強い緊締力を、骨盤の最下方にある坐骨から骨盤中心の恥骨結合部を繋ぐ線上を上端とし、ハムストリング筋の付着部から筋腹中央に向かう位置を下端とし、当該上端から当該下端に向かってに斜めに配置する。この配置面積は歩行時に大腿骨を前方へ引き出す筋力に抵抗を与えずしてスムーズに振り出す面積とする(図2A〜2Cおよび図3A〜3C参照)。
脚を一歩前に振り出す時、第6緊締部(6)が有する縦方向に強い伸縮力が、大殿筋下方からハムストリング筋上部の筋伸展力、いわゆる矢状面(縦方向)に伸びようとする力に対して伸び難さの抵抗を与える。この抵抗力は、一歩踏み出す方向への抵抗力となり、大殿筋の拮抗作用をなす腸腰筋の筋出力を引き出し、この筋出力向上が下腹部の緊張へ繋がる。この下腹部への緊張は、腹引締め作用に繋がり、歩きながら腹を引き締めることが可能となる。
また、歩行時に股関節伸展位をとっている軸脚となる後方脚が前方へ一歩踏み出される際の、立脚時のコンセントリック収縮からエキセントリック収縮に変化しつつ力を生む筋収縮に対して、第6緊締部(6)が有する縦方向に強い伸縮力を持つ第4の緊締力F4は、完全立脚時の踵接地期から一歩踏み出し、遊脚期を終え、初期接地を迎える際に作用する筋肉が伸びすぎない抵抗となり、エキセントリック収縮をサポートする。この第6緊締部(6)の縦方向に強い伸縮力は、次に完全立脚期を作る筋肉のコンセントリック収縮と第6緊締部(6)の収縮と同じ方向の収縮力を発揮する。すなわち、股関節伸展運動を引き起こし易くする。
さらに、第6緊締部(6)の股関節伸展位を起こし易くした設計は、股関節伸展位で主働筋として働く大殿筋の緊張を高める。この大殿筋の緊張は、ヒップアップ効果に繋がるので、本発明の姿勢改善ガードルを履いて歩くことで、ヒップは持ち上がり美しい臀部形状を作り出す効果が得られる。また、股関節伸展位をとり易くした第6緊締部(6)の緊締力は、骨盤後傾時に起こる股関節屈曲位を制御し、骨盤の前傾を作り出す効果を示す。その結果、立脚と歩行時の重心をとり易いニュートラルな位置へ骨盤を導き、歩く姿勢を美しく作り上げることが可能となる。
<第7緊締部>
第4緊締部(4)の両側に位置し、恥骨結合の上方で第4緊締部(4)が補わない腹直筋の側方の位置に、縦方向に強い伸縮力を持つ素材を配置する(第7緊締部(7)、図1A〜1C、図2A〜2Cおよび図3A〜3C参照)。第7緊締部(7)は、第4の緊締力F4を有する。
この第7緊締部(7)が有する第4の緊締力F4は、腹直筋中央で前方から腹圧を高め、緊張力を引き出し、斜め走行にある腹斜筋の伸びを引き出す効果を得ることを可能とする。第7緊締部(7)は、最も緊締力が強い第4緊締部と第1緊締部との間に配置され、その緊締力は、第4緊締部と第1緊締部の緊締力より弱い構成とする。この構成により、緊締力を腹斜筋に間欠的に作用させることができ、腹斜筋が伸びるゆとりを持たせることが可能になり、歩幅を作り上げる時、骨盤を締め付け過ぎず、左右で交互になされる歩行時の両下肢運動を骨盤中心からゆったり起こすことを可能とする。
<第8緊締部>
大殿筋の上方端を含まない位置から大殿筋の下方部にかけて、股関節伸展運動時に大殿筋の緊張力が充分に発揮できる位置に、第6緊締部の素材より弱い伸縮力を持つ素材を配置する(第8緊締部(8)、図1A〜1C、図2A〜2Cおよび図3A〜3C参照)。第8緊締部(8)は、大腿後面に配置した第6緊締部(6)の緊締力より弱い第5の緊締力F5を有する。なお、大殿筋の上方端を含まない位置とは、大殿筋の筋腹で大きな膨らみを持つ位置のことを言う。
第8緊締部(8)の緊締力は、ヒップアップ力となる大殿筋の伸びる力、股関節屈曲運動時における緩む伸展性(エキセントリック収縮力)を確保するように作用する。
<第9緊締部>
大腿後面でハムストリング筋の外側部の一部を覆い、大腿外側の腸脛靭帯に沿う位置に、縦方向に第6緊締部の素材より弱い伸縮力を持つ素材を配置する(第9緊締部(9)、図1A〜1C、図2A〜2Cおよび図3A〜3C参照)。第9緊締部(9)は、第5の緊締力F5を有する。第9緊締部(9)の緊締力が示す張力は、大腿部後方にあるハムストリング筋への第6緊締部(6)の圧迫力より小さくする。
この構成によって、筋肉の力を発揮する際に起こる筋腹の膨張を抑制することなくスムーズに膨張させ、力を発揮し易くなる。そして、第9緊締部(9)の縦伸びを軽く抑制する力は、縦方向に伸びようとする伸展力への抵抗を軽減させ、柔軟性を引き出す。さらに、大腿二頭筋の緊張を引き出しつつ腸脛靭帯作用も付加され、骨盤を後方より支えるハムストリング筋の筋腹膨張を許す緊締力効果を奏することが可能である。
<第6緊締部と第9緊締部の総合作用>
第6緊締部(6)を、大腿後方でハムストリング筋のほぼ1/2を占める位置で縦方向に配置した第9緊締部(9)と繋いだことで、筋腹の膨張を許しつつ、ハムストリング筋の膨張性と柔軟性における作用を高め、さらに骨盤を後方から支える力を作用させることが可能となり、より一層骨盤を安定させる効果を発揮することが可能となる。
本発明の姿勢改善ガードルは、実施の形態1のように、第1緊締部から第9緊締部の全てを構成とする姿勢改善ガードルとすることができる。この全ての緊締部を有する姿勢改善ガードルは、本発明の全ての効果を奏するので望ましいが、本発明においては、各緊締部を部分的に組み合わせてもよい。この各緊締部を組み合わせる方法としては、均質な素材と、その上に、1つ以上の複数の素材を組合せることによって、より伸縮力の強い部分を搭載する方法や、伸縮力の弱い素材と、伸縮力の強い素材を複数組合せて縫合する方法、複数の伸縮力の異なる部分、即ち伸縮力の弱い部分と伸縮力の強い部分、を必要な位置に配置し、一体的に編成する方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の姿勢改善ガードルに含まれる各緊締部の緊締力の強さとしては、好ましくは、緊締力の強い順に、第1の緊締力F1、第2の緊締力F2、第3の緊締力F3、第4の緊締力F4、第5の緊締力F5、の5つの強さが存在するが、これらに限定されない。好ましくは、第1の緊締力F1(第1緊締部および第4緊締部)が約300cNから約400cN、第3の緊締力F3(第2緊締部)が約200cNから約300cN、第5の緊締力F5(第8緊締部および第9緊締部)が約100cNから約200cNである。第2の緊締力F2は、適宜、上記の範囲の具体的な第1の緊締力より小さく、上記の範囲の具体的な第3の緊締力より大きい緊締力である。同様に、第4の緊締力F4は、適宜、上記の範囲の具体的な第3の緊締力より小さく、上記の範囲の具体的な第5の緊締力より大きい緊締力である。例えば、第1の緊締力が400cN、第3の緊締力が300cN、第5の緊締力が150cNの場合、例えば、第2の緊締力は350cN、第4の緊締力は200cNである。
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2は、図4に示されるように、少なくとも、第1緊締部(1)、第2緊締部(2)および第3緊締部(3)を含む姿勢改善ガードルである。
この姿勢改善ガードルを装着することによって、腹直筋と腹斜筋の緊張を促し、体幹の捻れと骨盤回旋運動を良好に導き、歩行をスムーズにし、歩くことで骨盤の歪みを改善し、さらに、後傾した骨盤を前傾させ正しい位置へ導き、その位置を容易に保持することが可能となる。
[実施の形態3]
本発明の実施の形態3は、図5に示されるように、少なくとも、第4緊締部(4)および第5緊締部(5)を含む姿勢改善ガードルである。
この姿勢改善ガードルを装着することによって、下腹を前方より抑え下腹が出ることを抑制し、また骨盤後弯角の増幅を防ぎ、矢状面での弯曲形成を良好にし、さらに、歩行時の過度な骨盤前傾を制御しながら非対称的に振り出される足運びを軽快に導くことが可能となる。
[実施の形態4]
本発明の実施の形態4は、図6に示されるように、少なくとも、第4緊締部(4)、第5緊締部(5)および第3緊締部(3)を含む姿勢改善ガードルである。
この姿勢改善ガードルを装着することによって、後傾した骨盤を前傾させ正しい位置へ導き、その位置を容易に保持することに加えて、ヒップアップや腹引き締め作用によって美しい臀部形状を作りだし、さらに歩行時の股関節内・外旋運動を容易にして歩く姿勢を美しくすることを可能とするガードルを提供することである。
[実施の形態5]
本発明の実施の形態5は、図7に示されるように、少なくとも、第3緊締部(3)および第6緊締部(6)を含む姿勢改善ガードルである。
この姿勢改善ガードルを装着することによって、後傾した骨盤を前傾させ正しい位置へ導き、その位置を容易に保持することに加えて、ヒップアップや腹引き締め作用によって美しい臀部形状を作りだし、さらに歩行時の股関節運動を容易にして歩く姿勢を美しくすることが可能となる。
[実施の形態6]
本発明の実施の形態6は、図8に示されるように、少なくとも、第1緊締部(1)および第4緊締部(4)を含む姿勢改善ガードルである。
この姿勢改善ガードルを装着することによって、下腹を前方より抑え下腹が出ることを抑制し、骨盤後弯角の増幅を防ぐことに加えて、腹直筋と腹斜筋の緊張を促し、体幹の捻れと骨盤回旋運動を良好に導き、歩行をスムーズにし、歩くことで骨盤の歪みを改善することが可能となる。
[実施の形態7]
本発明の実施の形態7は、図9に示されるように、少なくとも、第4緊締部(4)、第5緊締部(5)および第7緊締部(7)を含む姿勢改善ガードルである。
この姿勢改善ガードルを装着することによって、下腹を前方より抑え下腹が出ることを抑制し、また骨盤後弯角の増幅を防ぎ、矢状面での弯曲形成を良好にし、さらに、歩行時の過度な骨盤前傾を制御しながら非対称的に振り出される足運びを軽快に導くことに加えて、腹斜筋と股関節内旋筋の伸びを引き出して、歩行時の両方の下肢の運動を骨盤中心からゆったり起こすことが可能となる。
[実施の形態8]
本発明の実施の形態8は、図10に示されるように、少なくとも、第1緊締部(1)、第2緊締部(2)、第3緊締部(3)、第6緊締部(6)および第8緊締部(8)を含む姿勢改善ガードルである。
この姿勢改善ガードルを装着することによって、腹直筋と腹斜筋の緊張を促し、体幹の捻れと骨盤回旋運動を良好に導き、歩行をスムーズにし、歩くことで骨盤の歪みを改善し、さらに、後傾した骨盤を前傾させ正しい位置へ導き、その位置を容易に保持することに加えて、ヒップアップや腹引き締め作用によって美しい臀部形状を作りだし、さらに歩行時の股関節内・外旋運動を容易にして歩く姿勢を美しくすることが可能となる。さらに、ヒップアップ力となる大殿筋の伸びる力と、股関節屈曲運動時における緩む伸展性(エキセントリック収縮力)を確保することが可能となる。
本発明は、上記の実施の形態1〜8に限定されず、各緊締部を組み合わせて、所望の特定の効果を奏する姿勢改善ガードルを作製することが可能である。
本発明の姿勢改善ガードルは、ショート丈ガードル、スタンダード丈ガードル、セミロング丈ガードル、ニーロング丈ガードル、ニーアンダー丈ガードル、アンクル丈ガードル、トランクス丈ガードル等として作製することが可能である。
以上のように、本発明の姿勢改善ガードルは、装着することによって、従来のガードルが有するヒップアップや腹引き締め効果に加えて、静止時において、骨盤を良好な位置に戻す改善効果のみでなく、歩行時において、左右の筋緊張性を良好に引き出し体幹バランスや歩行リズムを良好にする効果を奏する。また、力を作用させる必要のない位置には不要な力を働かせない構成のため、圧迫感をさほど感じずに快適に日常的に着用することができる。毎日着用することによって、さらに姿勢を改善し、良好な筋緊張性を引き出すことができる。さらに、上記のような良好な筋緊張性を日常的に示す効果は、習慣性円背が原因の肩凝り、緊張性頭痛症の緩和にも繋がるため、肩凝り、緊張性頭痛症の改善のためのガードルとして好適に利用され得る。
上記の本発明の姿勢改善ガードルについて理解を容易にするために、以下に、骨格と筋肉、筋肉の収縮様式、骨盤と姿勢や歩行の関係などについて説明する。
図11の(a)は、身体の骨格の正面図であり、図11の(b)は、その左側面図であり、および図11の(c)は、その背面図である。図11において、B1が仙骨、B2が腸骨、B3が尾骨、B4が坐骨、B5が股関節、B6〜B10が腰椎(上から、第1〜第5腰椎)、B11が大腿骨、B12が恥骨、B13が腸骨稜、B14が骨盤、B15が仙腸関節、B16が膝関節、B17が大転子、B18が上前腸骨棘である。骨盤(B14)は、左右の腸骨(B2)と恥骨(B12)と坐骨(B4)が一体化した寛骨と、仙骨(B1)、尾骨(B3)で構成される。仙骨(B1)は骨盤の中心であって、背骨の土台となる。また、寛骨の中央に位置する寛骨臼と大腿骨頭から股関節(B5)が構成される。
図12の(a)は、身体の骨格と筋肉の正面図であり、図12の(b)は、その左側面図であり、および図12の(c)は、その背面図である。図12において、M1が腹直筋、M2が内腹斜筋、M3が外腹斜筋、M4が大腰筋、M5が腸骨筋、M6が鵞足、M7が鼡径靭帯、M8が脊柱起立筋、M9が大殿筋、M10が中殿筋、M11が縫工筋、M12が大腿二頭筋、M13が半腱様筋、M14が半膜様筋である。腹直筋(M1)は、恥骨結合部および恥骨結節上縁から、第5〜第7肋軟骨と剣状突起についており、体幹の前方中心に位置し、背骨を前方から支え、骨盤の傾きに関わる。外腹斜筋(M3)は、第5〜第12肋骨から、白線または腸骨稜についている。内腹斜筋(M2)は、腸骨稜および鼡径靭帯から、白線および第9〜第12肋骨についている。外腹斜筋(M3)も内腹斜筋(M2)も、歩行の際、脚を一歩踏み出す時に進行方向に骨盤を回旋させる骨盤回旋作用において働く。大腰筋(M4)は、第12胸椎〜第5腰椎から、大腿骨の小転子についており、腸骨筋(M5)は、腸骨窩から、小転子についており、小腰筋は、第12胸椎と第1腰椎から腸恥隆起までついている。これらの大腰筋(M4)と腸骨筋(M5)、小腰筋は合わせて、腸腰筋と称され、腹斜筋と共に骨盤回旋がスムーズに行なわれるよう働きつつ脚の振り出しの主働筋である。縫工筋(M11)は、上前腸骨棘(B18)から、鵞足(M6)についており、歩行時の股関節屈曲運動および拮抗的に股関節伸展運動において働く。大殿筋(M9)は、腸骨稜、仙骨、尾骨から、殿筋粗面、腸脛靭帯についており、下半身の形状を形作り、また歩行時の股関節屈曲運動および股関節伸展運動において働く。大腿二頭筋(M12)は、長頭が坐骨結節から、短頭が大腿骨粗面から、腓骨頭についている。半腱様筋(M13)は、坐骨結節から鵞足(M6)についている。半膜様筋(M14)は、坐骨結節から脛骨内顆後面についている。大腿二頭筋(M12)と半腱様筋(M13)、半膜様筋(M14)は合わせて、ハムストリング筋と称され、下肢後面の筋肉を作り、下腿を回旋させ、膝伸展や膝屈曲運動を円滑にするように作用する。脊柱起立筋(M8)は、仙骨の下方部から頸椎についており、背骨を構築し支える。腹直筋(M1)を含む恥骨の上から肋骨の下までの筋肉を、腹筋と称する。腰方形筋は、腸骨稜と腸腰靭帯から第12肋骨に付着しており、腰椎を屈曲する際に作用する。
筋肉の収縮様式には、筋肉が縮むコンセントリック収縮(短縮性筋収縮)という収縮様式と、筋肉が伸びるエキセントリック収縮(伸張性筋収縮)という収縮様式があり、この2つの収縮様式は、拮抗的に働く。本発明の姿勢改善ガードルは、腸腰筋や縫工筋、大殿筋、ハムストリング筋のコンセントリック収縮力、エキセントリック収縮力をスムーズにするように作用する。
図13の(a)は、仙骨角を示す図であり、図13の(b)〜(d)は、仙骨角と骨盤の前傾の関係を示す図である。水平線(H)と第1仙椎上部を通る直線とのなす角が、仙骨角(S)である。骨盤の前傾によって、腰椎の前弯が形成される。良好な姿勢(図13(b))においては、頸椎は前弯、胸椎は後弯、腰椎は前弯しており、頸椎・胸椎・腰椎からなる背骨の弯曲バランス(背骨アーチ)は、S字状をなし、仙骨角(S)は約30度である。背骨の土台となる仙骨が後傾し仙骨角(S)が減少すると(図13(c))、仙骨の直上にある腰椎骨も後方に傾き、胸椎後弯角が増幅し、腰椎前弯角が減少し円背となり、重心が崩れ下半身が不安定な状態となる。また、仙骨が前傾し仙骨角(S)が増加すると(図13(d))、腰椎前弯角が増大し反り腰となり、上半身の不安定な重みが腰椎に集中した状態となる。このように矢状面で姿勢が崩れると、特に腰椎と胸椎の弯曲が後傾位をとり、椎骨上に沿って位置し、背骨の構築と弯曲を成す脊柱起立筋の緊張が緩む。
図14は、歩行時の左右の脚で非対称な運動を図示したものである。図14では、前方脚(振り出し脚)が右で、後方脚(送り脚)が左である。図14の(a)は、歩行時にコンセントリック収縮力を発揮する筋肉の部分(細い矢印(i)〜(iv))であり、図14の(b)は、歩行時にエキセントリック収縮力を発揮する筋肉の部分(破線の矢印(v)〜(viii))であり、図14の(c)は、歩行時の骨盤の回旋方向((ix))、および体幹・上体の回旋方向((x))である。歩行は、常に、1個の骨盤に対し、股関節を介し構築される2つの大腿骨の一側が前方へ振り出され、もう一側が後方にあって軸脚となる。この2本の大腿骨の互いに異なる前方・後方の動きがあり、はじめて一歩の足運びが実現する。股関節を介しての進行方向への振り出し脚と軸脚の安定性に依存して振幅が決定される。その振幅は、左右の二本の脚が、交互に、振り出し脚、軸足となることによって定まり、二本の脚は、互いに前方・後方の非対称な位置関係にある。この前方へ脚が振り出される動き(図14(a)(b)の前方脚の太い矢印)を股関節屈曲運動、体幹の後方で軸脚となる大腿骨の運動(図14(a)(b)の後方脚の太い矢印)を股関節伸展運動という。この股関節屈曲運動で主働筋として働く縫工筋および腸腰筋、並びに股関節伸展運動で主働筋として働く大殿筋およびハムストリング筋が、非対称的に収縮力を発揮し歩行動作を支えている。その非対称な運動においては、縫工筋と腸腰筋は、後方にある脚(図14では、左脚)においてエキセントリック収縮の力を発揮し、前方にある脚(図14では、右脚)においてコンセントリック収縮の力を発揮する。すなわち、これらの収縮において、縫工筋と腸腰筋は、後方にある脚(図14では、左脚)においては短縮した状態からの伸張性筋収縮が求められ(図14(b)(vii)、(viii))、前方にある脚(図14では、右脚)においては伸びた位置からの短縮性筋収縮が求められる(図14(a)(i)、(ii))、という左右の脚で非対称の筋緊張性が求められる。また、大殿筋とハムストリング筋は、逆に、後方にある脚(図14では、左脚)においてコンセントリック収縮の力を発揮し(図14(a)(iii)、(iv))、前方にある脚(図14では、右脚)においてエキセントリック収縮の力を発揮する(図14(b)(v)、(vi))。この時(すなわち、左脚が後方にあり、右脚が前方にある場合)、骨盤は右が前方回旋、左が後方回旋するので、反時計回りに回旋し(図14(c)(ix))、一方、体幹は、左が前方回旋、右が後方回旋するので、時計回りに回旋する(図14(c)(x))。この動作の繰り返しが歩行である。この非対称性の筋収縮の円滑性が損なわれれば、同筋肉の左右の収縮力に差が表れ、歩行リズムが崩れる。歩行リズムの崩れは、骨盤の水平面における骨盤回旋の差にも表れる。この差は、骨盤回旋に関わる腹斜筋の緊張力の差に繋がる。この腹斜筋の緊張力の差は、体幹を支える左右の身体の均等性の差として表れ、姿勢が水平面と前額面で崩れることとなる。
また、この腹斜筋の緊張度の変化は筋収縮の変化と同一の意味を持つことから、骨盤内で腹斜筋の緊張性に左右差が表れれば、水平面での骨盤のずれが生まれ、骨盤の歪みを招く。水平面での骨盤のずれとは、床に対し水平になる面で骨盤が前方回旋、あるいは後方回旋した状態であり(図13(c)、(d)参照)、これによって骨盤とウエスト上部を占める体幹部に捻れが発生する。この捻れは、背骨の弯曲バランスの崩れに繋がり、姿勢が矢状面でも崩れることになる。
姿勢を改善するためには、矢状面の姿勢の崩れである背骨アーチを正すこと、前額面の姿勢の崩れである背骨の左右の歪みを正すこと、および水平面の姿勢の崩れである骨盤や身体の左右の均等性を整えること、の3つが重要である。その中でも、骨盤や身体の左右の均等性が整えば、重心が安定し、背骨アーチも整い、姿勢改善へと繋がる。骨盤には、体幹や下肢の筋肉が複雑に付着しているので、骨盤のずれを正すように、骨盤のみでなく骨盤周りの筋肉に対しても力を働きかけることによって、姿勢を改善し保持することが可能となる。また、身体の左右の均等性は、体幹を支える左右の筋緊張性の差が原因の一つであることから、骨盤とその周りの筋肉のみでなく歩行に必要とされる筋肉に対しても力を働きかけることによって、重心や歩行リズムを改善し、身体の左右の均等性を保持する。
具体的には、骨盤・股関節一体型の構造のガードルに、仙骨中心から腸骨上方に付着する筋群を斜めにサポートして、股関節内旋筋と股関節内転筋を連携させ、かつ腸骨前方にある腸骨筋、大腰筋、外腹斜筋などに作用するように、各部位にかかる着圧に変化を持たせた設計をする。この設計によって、骨盤の過度の前傾を防ぐのみでなく、腸骨から股関節を繋ぐ筋群に力を作用させ、骨盤と股関節の機能を高め、股関節筋群の柔軟性を引き出し、可動域を広め、進行方向に膝を安定させ、脚を振り出したり戻したりし易くすることも可能となる。骨盤周りの筋肉群や歩行時に働く筋肉に力が外部から作用することによって骨盤は引き締められ、骨盤に付随する筋肉の柔軟性が高まり、股関節が動き易くなり円滑な動きが促される。このように骨盤に付随する筋群や歩行時に働く筋肉のバランスが正され、骨盤や体幹筋、下肢筋の左右の筋緊張性が整えば、腰椎仙骨関節への荷重バランスが整い重心も安定し、腰仙骨の傾きが正され背骨のバランスも整い、姿勢改善効果を得ることが可能となる。
このようにして、上記の各緊締部を含む本発明の姿勢改善ガードルが発明された。
第1〜第9の緊締部の素材を縫合して作製した本発明の1つの実施の形態である実施の形態1(図1A〜1C)のガードルを用いて、以下の測定を行い、姿勢改善の効果を評価した。
(実施例1)
1)立位体前屈の測定
前述のように、姿勢の崩れは骨盤の歪みに繋がる。骨盤には、脊柱起立筋や腰方形筋などの体幹筋や、ハムストリング筋や大殿筋などの下肢筋が付着しており、骨盤が歪んでいると、これらの骨盤に付着している筋の伸展力が制限され、前屈がし難くなる。言い換えると、骨盤が整って歪みが改善されると、骨盤に付着するこれらの筋肉の柔軟性と伸展力が高まり、前屈し易くなる。そこで、本発明の姿勢改善ガードルの姿勢改善効果を、立位体前屈の程度を測定することによって評価した。
2)測定方法
台面の位置を0cmとし、そこから上に25cm、下に25cmまで1cmごとの目盛りの物差しをつけた台を用意した。被験者は、両足のかかとをつけ、足先を5cmほど開いて台の上に立ち、両手を伸ばして物差しに触れながらからだを前屈させた。この時、膝を曲げたり、反動をつけたり、片手を余分におろしたりしないように注意した。両指先が達した最下端の位置を物差しの目盛りで読み取った。0cmに達しないときは、0cmまでの距離をマイナスで示した。この測定を、ガードルを装着しない場合(対照例)、本発明の姿勢改善ガードルを装着した場合(実施例)、および姿勢改善効果を有しない一般的な補正ガードルを装着した場合(比較例)に行った。
なお、前屈の慣れによる値の変化を防ぐ為に、ガードルを装着しない場合、本発明の姿勢改善ガードルを装着した場合、姿勢改善効果を有しない一般的な補正ガードルを装着した場合の順で測定を行った。
3)測定結果
以下に各被験者の測定結果を示す(被験者(1)〜(7))。
上記の結果から、全ての被験者において、本発明の姿勢改善ガードルを装着した場合、最も深く前屈することができたことが分かる。これは、本発明の姿勢改善ガードルを装着することによって、骨盤の歪みが改善され、骨盤に付着する脊柱起立筋や腰方形筋などの体幹筋や、ハムストリング筋や大殿筋などの下肢筋の柔軟性と伸展力が高まり、前屈し易くなったことを示している。すなわち、本発明の姿勢改善ガードルを装着することによって、骨盤の後弯が改善され、姿勢の歪みが改善し、姿勢改善効果が得られた。
(実施例2)
1)全身のシルエットの観察
本発明の姿勢改善ガードルによる姿勢改善効果とヒップアップ効果を、側面からの全身のシルエットの観察によって評価した。
2)測定方法
被験者は、前もって定めた立ち位置に、2〜3回足踏みして身体をほぐしてから、自然体で手をストンと下ろした状態で、かつ、顔は上げ下げせず、まっすぐ前を見た状態で直立した。このように直立した被験者の左側面を固定したデジタルカメラで撮影した。この撮影を、ガードルを装着しない場合と、本発明の姿勢改善ガードルを装着した場合に行った。その後、ガードルを装着しない場合のシルエットのデータと、本発明の姿勢改善ガードルを装着した場合のシルエットのデータを重ねて表した。
3)測定結果
図15の(a)〜(h)は、それぞれ、被験者(8)〜(15)の観察結果である。破線がガードルを装着しない場合のシルエットであり、実線が本発明の姿勢改善ガードルを装着した場合のシルエットである。
図15に示した結果から、本発明の姿勢改善ガードルを装着した場合、全ての被験者において、ヒップの位置が上がり、ヒップラインは丸みを帯び整っている。また、全ての被験者において、背骨の弯曲が正され姿勢バランスが良好となっている。これは、本発明の姿勢改善ガードルを装着することによって、大殿筋の緊張が高まりヒップアップされ、また、骨盤が良好な位置に導かれ、姿勢バランスが整えられたことを示している。すなわち、本発明の姿勢改善ガードルを装着することによって、ヒップアップ効果と姿勢改善効果が得られた。
(実施例3)
1)歩幅の測定
姿勢が改善され骨盤と歩行時のスムーズな運動が実現されれば、歩行時の歩幅は大きくなる。そこで、本発明の姿勢改善ガードルによる姿勢改善効果を、歩幅を測定することによって評価した。
2)測定方法
被験者は、予め定めた踏み切り位置から、真っ直ぐ10歩、自然な状態で歩行した。自然歩行時の歩幅を測定するために、3歩目の踵接地から、9歩目の踵接地までの距離を測定し、その測定値から1歩あたりの歩幅を算出した。この測定を、ガードルを装着しない場合(対照例)、および本発明の姿勢改善ガードルを装着した場合(実施例)に行った。
3)測定結果
以下に各被験者の測定結果を示す(被験者(16)〜(21))。
上記の結果から、全ての被験者において、歩幅が大きくなっていることが分かる。これは、本発明の姿勢改善ガードルを装着することによって、腹直筋と腹斜筋の緊張を促し体幹の捻れと骨盤回旋運動を良好に導き、歩行がスムーズとなったことを示している。すなわち、本発明の姿勢改善ガードルを装着することによって、歩行をスムーズにする効果が得られた。
(実施例4)
1)左右体重バランスの測定
前額面で姿勢が崩れていると、左右の脚にかかる体重に差が出る。そこで、本発明の姿勢改善ガードルの姿勢改善効果を、左右の脚にかかる体重の差を測定することによって評価した。
2)測定方法
水平な台の上に、同一機種の体重計2つを左右に並べた。左右の各体重計には、それぞれ、左足、右足を載せる位置を決めておいた。被験者は、左右の体重計上の決められた位置に、それぞれ、左足、右足を載せた。そして、被験者が顔を上げ下げせず真っ直ぐ前に向けて自然に立った状態での体重計の示す値を読み取った。この測定を、ガードルを装着しない場合(対照例)、および本発明の姿勢改善ガードルを装着した場合(実施例)に行った。
3)測定結果
以下に各被験者の測定結果を示す(被験者(22)〜(27))。
上記の結果から、全ての被験者において、左右の体重差が小さくなっていることが分かる。これは、骨盤に付随する筋群や歩行時に働く筋肉のバランスが正され骨盤や体幹筋、下肢筋の左右の筋緊張性が整い、腰椎仙骨関節への荷重バランスが整い重心が安定したことを示している。すなわち、本発明の姿勢改善ガードルを装着することによって、姿勢改善効果が得られた。
(実施例5)
1)胸巾と背巾の測定
頸椎・胸椎・腰椎の弯曲バランスが崩れて胸椎後弯角が増大した円背は、胸椎後弯角が増大し、肩甲骨が左右に離れ外転した状態であり、背巾が広がっている一方、胸巾が狭まっている。そこで、本発明の姿勢改善ガードルによる姿勢改善効果を、背巾および胸巾を測定することによって評価した。
2)測定方法
被験者は、その場で2〜3回足踏みをして身体をほぐし、手をストンと下ろした状態で自然に立ち、顔は上げ下げせず、まっすぐ前を見た。このように直立した被験者の全面腋下間(以下、「胸巾(L1)」と略す)と、背面腋下間(以下、「背巾(L2)」と略す)の2箇所を測定した。この測定を、ガードルを装着しない場合(対照例)、および本発明の姿勢改善ガードルを装着した場合(実施例)に行った。
3)測定結果
以下に各被験者の測定結果を示す(被験者(28)〜(32))。
表4は、本発明の姿勢改善ガードルの装着開始日に行った対照例と実施例の測定結果である。
表5は、表4の測定日から40日間、本発明の姿勢改善ガードルをほぼ毎日装着した場合の実施例の測定結果(「40日目」とする)を、表4の実施例の測定結果(すなわち、本発明の姿勢改善ガードルを装着した初日の測定結果、「1日目」とする)と共に示したものである。
表4の結果から、全ての被験者において、本発明の姿勢改善ガードルを装着した場合、ガードルを装着しない場合より、背巾(L2)は小さくなり、胸巾(L1)は大きくなっていることが分かる。これは、頸椎・胸椎・腰椎の弯曲バランスが整い、円背が改善されたことを示している。すなわち、本発明の姿勢改善ガードルを装着することによって、姿勢改善効果が得られた。
表5の結果から、全ての被験者において、本発明の姿勢改善ガードルを装着し続けた場合、背巾(L2)がより小さくなり、及び/又は、胸巾(L1)はより大きくなっていることが分かる。これは、円背改善効果が大きくなっていることを示している。すなわち、本発明の姿勢改善ガードルを継続的に装着することによって、より大きな姿勢改善効果が得られた。
本発明の姿勢改善ガードルを装着することによって、腹直筋と腹斜筋の緊張を促し、体幹の捻れと骨盤回旋運動を良好に導き、歩行をスムーズにし、さらに、後傾した骨盤を前傾させ正しい位置へ導き、その位置を容易に保持することが可能となる。また、下腹を前方より抑え下腹が出ることを抑制し、骨盤後弯角の増幅を防ぎ、矢状面での弯曲形成を良好にし、歩行時の過度な骨盤前傾を制御しながら非対称的に振り出される足運びを軽快に導くことが可能となる。また、ヒップアップや腹引き締め作用によって美しい臀部形状を作りだし、歩行時の股関節内・外旋運動を容易にして歩く姿勢を美しくすることが可能となる。さらに、歩くことで骨盤の歪みを改善することが可能となる。
1・・・第1緊締部
2・・・第2緊締部
3・・・第3緊締部
4・・・第4緊締部
5・・・第5緊締部
6・・・第6緊締部
7・・・第7緊締部
8・・・第8緊締部
9・・・第9緊締部
B1・・・仙骨
B2・・・腸骨
B3・・・尾骨
B4・・・坐骨
B5・・・股関節
B6・・・第1腰椎
B7・・・第2腰椎
B8・・・第3腰椎
B9・・・第4腰椎
B10・・・第5腰椎
B11・・・大腿骨
B12・・・恥骨
B13・・・腸骨稜
B14・・・骨盤
B15・・・仙腸関節
B16・・・膝関節
B17・・・大転子
B18・・・上前腸骨棘
G・・・姿勢改善ガードル
M1・・・腹直筋
M2・・・内腹斜筋
M3・・・外腹斜筋
M4・・・大腰筋
M5・・・腸骨筋
M6・・・鵞足
M7・・・鼡径靭帯
M8・・・脊柱起立筋
M9・・・大殿筋
M10・・・中殿筋
M11・・・縫工筋
M12・・・大腿二頭筋
M13・・・半腱様筋
M14・・・半膜様筋
H・・・水平線
S・・・仙骨角
UP・・・姿勢改善ガードルの履き込み口

Claims (1)

  1. 緊締力の大きさと方向が異なる複数の領域を含む本体部分からなり、前記本体部分が身体に装着されたとき骨盤に付随する筋群に前記緊締力が付与される姿勢改善ガードルであって、前記複数の領域は、少なくとも、第1緊締部、第2緊締部、第3緊締部、第4緊締部および第5緊締部を含み、
    前記本体部分が身体に装着されたとき、前記第1緊締部は、左右の腸骨稜側方より、それぞれ、腸骨稜の前方を斜め下方の、骨盤の中心にある恥骨結合部に向かい、さらに大腿部の内側を覆い、前記第2緊締部は、腸骨稜外唇に付着する中殿筋の外側から仙骨の側方にある腸骨稜側方を通過し大腿前方を通って大腿内側に至るまでを覆い、前記第3緊締部は、仙骨の上方端から中心に位置する仙骨棘全域を覆い、前記第4緊締部は、腹直筋を、骨盤前方にあってウエストにあたる位置から恥骨結合部まで覆い、および前記第5緊締部は、前記第4緊締部を、恥骨結合部から同幅で分離し、両脚の大腿前方に分岐させ、対称的に大腿外側へ向かい、縫工筋に交わる位置までを覆い、
    前記第1緊締部の上部は第1の緊締力F1を有し、前記第1緊締部の下部は第3の緊締力F3を有し、前記第2緊締部の上部は第3の緊締力F3を有し、前記第2緊締部の下部は第5の緊締力F5を有し、前記第3緊締部は第2の緊締力F2を有し、前記第4緊締部は第1の緊締力F1を有し、前記第5緊締部の上部は第2の緊締力F2を有し、および前記第5緊締部の下部は第3の緊締力F3を有し、ここで、前記第1の緊締力、前記第2の緊締力、前記第3の緊締力および前記第5の緊締力が、F1>F2>F3>F5の関係を満たし、並びに
    前記第1緊締部は、外腹斜筋の収縮方向に強い伸縮力を持ち、前記第2緊締部は、斜め方向に強い伸縮力を持ち、前記第3緊締部は、斜めクロス方向に強い伸縮力を持ち、前記第4緊締部は、腹直筋の走行に沿う方向に強い伸縮力を持ち、および前記第5緊締部は、斜め方向に強い伸縮力を持つことを特徴とする姿勢改善ガードル。
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