JP5098353B2 - スローアウェイチップおよびこれを用いたスローアウェイ式転削工具 - Google Patents
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ここで、一般にアルミニウム合金等の延性の高い材料の切削加工を行う場合、切りくずの一部が刃先に溶着しやすく、高精度の仕上げ面が得られにくい。そこで、加工面の仕上がりを良くするため、切れ刃のすくい角を大きくしたり、切削速度や送りを高くしたりする方法が検討されている。また、切削加工時におけるびびり振動の発生による仕上げ面粗さの悪化および切れ刃の損傷を防止する観点からも、切削抵抗を減少させることを目的として、切れ刃のすくい角を大きくすることが検討されている。
一方、切削加工時に切れ刃の逃げ面が被削材の加工面に接触すると、加工面の仕上りが悪くなることから、そのような接触を避け平滑な仕上面を得るために、通常、切れ刃の逃げ面は被削材の加工面に対して所定の逃げ角で傾斜するように設計され、特に、仕上げ面の切削を担うさらい刃においては、主切れ刃の逃げ角よりも大きな逃げ角とすることが検討されている。
しかしながら、さらい刃の逃げ角を主切れ刃の逃げ角よりも大きくする等して、さらい刃の刃物角が主切れ刃の刃物角よりも小さく設計されている場合には、さらい刃の刃先強度が主切れ刃よりも乏しくなってしまう。この場合において、切削加工条件は通常主切れ刃を基準として設定されることから、切削に伴って主切れ刃に著しい摩耗やチッピング等の損傷が生じなくても、さらい刃においてそのような損傷が生じてしまうという問題があった。その結果、仕上面粗さに優れた加工面を得ることができず、また、工具寿命が短縮されるという問題があった。さらに、このような問題を防止するため、さらい刃を基準に切削速度や送りを低くする等、切削加工条件を落とすと、仕上面粗さが悪化したり、加工能率が悪くなったりするという問題もあった。
請求項1に記載の発明は、略平板状をなし、この上面にすくい面と、このすくい面に交差する側面に逃げ面と、これらすくい面と逃げ面との交差稜線部に主切れ刃およびさらい刃が形成されたスローアウェイチップであって、これら主切れ刃およびさらい刃が、シャープエッジからなり、
前記さらい刃の先端部からチップ厚み方向と直交する方向に所定幅で設定された前記すくい面の第1領域におけるすくい角が、前記主切れ刃におけるすくい角より小さく、この第1領域に隣接してチップ厚み方向と直交する方向に延在する前記すくい面の第2領域におけるすくい角が、前記第1領域におけるすくい角より大きく形成されるとともに、前記さらい刃における第2領域のすくい面と逃げ面とがなす刃物角が、前記主切れ刃における刃物角よりも小さく、さらい刃における第1領域のすくい面と逃げ面とがなす刃物角が、前記主切れ刃における刃物角よりも大きいことを特徴とする。
ここで、シャープエッジとは、特に処理をせず鋭利な状態を維持した切れ刃をいうが、すくい面および逃げ面を研磨加工する際にチッピング等が発生し、刃先先端部が丸くなってしまったり、面取りがされてしまったりしたものもこれに含まれる。なお、このシャーップエッジにおいては、切れ刃に直交する断面の曲率半径が20μm以下の鋭利な刃先形状、特に、曲率半径5μm以下の非常に鋭利な刃先形状とすることが、切りくずの耐溶着性、切削抵抗の低減化等の点で好ましい。
さらに、第2領域におけるさらい刃の刃物角を主切れ刃における刃物角よりも小さくすることにより切れ刃のシャープさを維持しながら、第1領域におけるさらい刃のすくい角を主切れ刃のすくい角より小さくして第1領域におけるさらい刃の刃物角を主切れ刃の刃物角よりも大きくすることによりさらい刃の刃先強度の向上が図られている。そのため、主切れ刃を基準として切削加工条件を設定した場合であっても、切削に伴ってさらい刃のみに著しい摩耗やチッピング等の損傷が発生するようなことがない。
また、切削に伴ってさらい刃のみが優先的に磨耗したり刃先が欠けたりしてしまうようなことがないことから、切れ刃の交換やチップの取替えの頻度が減少し、切削加工時の作業効率に優れる。
したがって、加工能率が良く、仕上げ面の品位および工具寿命に優れたスローアウェイ式転削工具を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るスローアウェイチップを示す斜視図であり、図2(a)はその上面図、図2(b)はその正面図である。そして、図3は、図2(a)のA−A線断面拡大図であり、図4は、図2(a)のB−B線に断面拡大図である。
また、図5は、本発明のスローアウェイ式転削工具の一実施例に係る正面フライスを示す図であり、(a)はその底面を示す斜視図、(b)はその正面図である。
さらに、切れ味の向上や切削抵抗の低減等の観点からスローアウェイチップ1をアキシャルレーキ角が正の角度をなすように工具本体に取り付ける場合であっても、さらい刃5における逃げ角θ1が主切刃4における逃げ角θ2より大きく設定されることにより、切削加工時にさらい刃5の逃げ面3が被削材の加工面に接触して加工面の仕上りが悪くなることもない。
そして、さらい刃5の第2領域における刃物角は、主切れ刃4における刃物角よりも小さくなるように構成されることから、切れ刃5のシャープさを維持することができ、切削抵抗の低減や仕上面粗さの向上等を図ることができる。
つまり、本実施形態に係るスローアウェイチップ1によれば、さらい刃5のシャープさを維持して、切削抵抗の低減や仕上面粗さの向上等を図りつつ、同時にさらい刃5の刃先強度の向上を図ることができる。
また、その上限は0.5mm、さらに0.3mmとすることが好ましい。この第1領域の所定幅Lが0.5mmより大きいと、さらい刃5の刃先強度が向上する代わりに、シャープさを損なうこととなり、アルミニウム合金等の延性の高い材料の切削加工を行う場合に切りくずの一部が刃先に溶着したり、切削抵抗が高くなってびびり振動が発生し、切れ刃が損傷したり、加工面の仕上がりが悪くなったりするからである。
これに対し、このさらい刃5の第2領域にけるすくい角α2は、切りくずの耐溶着性の向上、切削抵抗の低減化によるびびり振動の抑制等を図るには、できるだけ大きく設定されるのが望ましい。しかし、このすくい角α2が大きくなりすぎると、逃げ角θ1もある程度確保しなければならないことから、さらい刃5の刃先角が小さくなりすぎてしまい、却って切れ刃の欠損等が生じ易くなるおそれが生じる。そこで、このさらい刃5の第2領域にけるすくい角α2は、例えば、5°以上40°以下、好ましくは、15°以上30°以下の範囲で設定されることが、高精度の仕上げ面粗さを実現する点で望ましい。
また、このさらい刃5の逃げ角θ1は、例えば、主切れ刃4における逃げ角θ2より1°〜20°、好ましくは、5°〜10°大きく設定されることが、切削加工時にさらい刃5の逃げ面3が被削材に接触することを回避し、かつ、さらい刃5の第2領域における刃物角を小さくシャープエッジに保ち、仕上げ面粗さの悪化を防止する点で望ましい。
また、前記実施例においては、スローアウェイチップ1を正面フライス10に装着する方法として取付ねじを用いるスクリューオン方式を採用したが、これに代えて、取付穴に嵌挿した偏心ピンや傾動ピンによりクランプする方式、スローアウェイチップの厚さ方向上方より楔でクランプする方式、押さえ駒でクランプする方式等を採用してもよい。
2 すくい面
3 逃げ面
4 主切れ刃
5 さらい刃
L 所定幅
α1 さらい刃の第1領域におけるすくい角
α2 さらい刃の第2領域におけるすくい角
α3 主切れ刃のすくい角
θ1 さらい刃の逃げ角
θ2 主切れ刃の逃げ角
Claims (3)
- 略平板状をなし、この上面にすくい面と、このすくい面に交差する側面に逃げ面と、これらすくい面と逃げ面との交差稜線部に主切れ刃およびさらい刃が形成されたスローアウェイチップであって、
これら主切れ刃およびさらい刃が、シャープエッジからなり、
前記さらい刃の先端部からチップ厚み方向と直交する方向に所定幅で設定された前記すくい面の第1領域におけるすくい角が、前記主切れ刃におけるすくい角より小さく、
この第1領域に隣接してチップ厚み方向と直交する方向に延在する前記すくい面の第2領域におけるすくい角が、前記第1領域におけるすくい角より大きく形成されるとともに、
前記さらい刃における第2領域のすくい面と逃げ面とがなす刃物角が、前記主切れ刃における刃物角よりも小さく、
前記さらい刃における第1領域のすくい面と逃げ面とがなす刃物角が、前記主切れ刃における刃物角よりも大きいことを特徴とするスローアウェイチップ。 - 前記さらい刃における逃げ角が、前記主切刃における逃げ角より大きいことを特徴とする請求項1に記載のスローアウェイチップ。
- 請求項1または2のいずれかに記載のスローアウェイチップを用いるスローアウェイ式転削工具。
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