JP5096653B2 - 2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ジヒドロキシベンゼン誘導体およびその製造方法 - Google Patents

2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ジヒドロキシベンゼン誘導体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン誘導体およびその製造方法、特にその水溶性の改善と還元過程を必要としない送達法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン骨格を持つ化合物はミトコンドリアの呼吸鎖においてフラビン蛋白とチトクローム系間の酸化還元系を構成し、酸化的リン酸化を制御することで電子伝達系として機能し、ATP合成において重要な役割をしている。2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノンの6位にポリイソプレニル基を有する化合物はユビキノンあるいはコエンザイムQとも呼ばれる。ユビキノンは6位側鎖のイソプレン単位数(n)を付して同族体を区別される。天然にはnが1〜13の同族体が知られており、哺乳動物ではデカプレニル基を有するユビキノン-10が主要なユビキノンである。6位に10-ヒドロキシデシル基を有するイデベノンは強力な電子伝達能を有する。
【0003】
また、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン化合物は次のような状態や病気に対して有益な作用を発揮する。歯周病、血液循環系病、記憶障害、疲労、異常心鼓動、高血圧、免疫機能障害、C型肝炎など肝臓病、加齢、スポーツにおける人の能力の改善等である。 2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン化合物(酸化型)は体内で一部が還元され2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン化合物(還元型)として存在することが知られており、優れた作用の多くは還元型である2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン化合物の優れた抗酸化作用によると考えられている。さらに、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン化合物(還元型)にはコラーゲンタンパク質の酸化的障害の防護効果、すなわち皺取りと皺予防効果、および美白効果が期待される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
哺乳動物に最も多く存在する2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン化合物はユビキノン-10であり、側鎖に炭素50個からなるデカイソプレニル基を有するため脂溶性が非常に高く水に全く溶けない化合物である。このユビキノン-10の水難溶性は種々の投与方法(経口投与、注射投与、経皮投与など)の障害になっている。実際,ユビキノン-10の経口投与でのバイオアベイラビリティは非常に低く、その原因は溶解速度に起因すると考えられている。したがって,ユビキノン-10の難溶性の問題を克服することは種々の投与方法を可能にし、バイオアベイラビリティの確保において重要な意味を持つ。
【0005】
一方,ユビキノン-10は細胞膜中に広く分布するが、抗酸化作用が強く非常に有用な還元体であるユビキノール-10の細胞膜中存在量はα−トコフェロールに比較して1/10程度であり少ない。2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン化合物(還元型)の抗酸化作用を効率よく発揮させるためには効率的な還元体の供給が望まれる。しかしながら、還元体の供給は体内の還元酵素の能力に依存しているのが現状である。
【0006】
ユビキノン-10の水分散系としてエマルジョン、リポゾーム、ミクロ粒子、ナノ粒子の脂質を用いる処方が開示されている( WO 95/05164,U.S. Pat. No. 4,824,669,U.S. Pat. No. 4636381,U.S. Pat. No. 4,483,873)。高濃度の界面活性剤と脂質とポリエチレングリコールを使用する処方特許WO 86/04503、中鎖脂肪酸モノグリセリドと植物油からなる処方特許JP 63188623、リン脂質との混合物U.S. Pat. No. 4,684,520が挙げられる。
【0007】
これらの特許は、いずれも酸化型の2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン化合物の水分散系を作ることによって難溶性の問題を解決するものであり、還元体である2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン化合物のバイオアベイラビリティの確保のための問題は解決できていない。
本発明の目的は、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン化合物の水難溶性に起因する薬物送達上の問題と、その2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン(還元型)への還元過程による薬物送達上の問題を同時に解決できる2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン化合物の誘導体を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明者等が鋭意検討を行った結果、特定の2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼンカルボン酸エステル誘導体が、優れた水溶性および生体内での2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン化合物(還元型)放出性を発揮し得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明にかかる2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン誘導体は、一般式(I)
【化11】
Figure 0005096653
…(I)
(式中RおよびRはそれぞれ水素原子または窒素置換基を有するカルボン酸残基を意味し、少なくとも一方は窒素置換基を有するカルボン酸残基である。R
【化12】
Figure 0005096653
nは1〜10の整数を意味する。Rは水素原子または水酸基の保護基を意味する。)で表されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明において、窒素置換基を有するカルボン酸残基が、アミノ酸、N−アシルアミノ酸、N−アルキルアミノ酸、N,N−ジアルキルアミノ酸、ピリジンカルボン酸およびそれらのハロゲン化水素酸塩またはアルキルスルフォン酸塩の残基からなる群より選択される少なくとも一種であることが好適である。
本発明において、窒素置換基を有するカルボン酸残基は、窒素原子に対し水素原子ないし、1または2のアルキル基、アシル基が結合したものが好適である。このアルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、1−メチルプロピル基、tert−ブチル基、1−エチルプロピル基、イソアミル基などを例示することが可能であり、特にメチル基、エチル基が好ましい。また、アシル基を有する場合の炭化水素鎖も同様に定義可能である。
【0011】
アミノ基とカルボニル基の間は、好ましくは炭素数1〜7の直鎖、分岐または環状のアルキレン基で結合される。分岐状のアルキレン基とは、例えばイソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、1−エチルプロピルなどのアルキル基から誘導されたアルキレン基を意味する。環状アルキレン基とは、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、あるいはメチルシクロヘキサン環などを構造中に含むアルキレン基を意味する。アルキレン基として特に好ましいのは、メチレン基あるいはエチレン基である。
【0012】
ハロゲン化水素酸塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩などが好ましい。本発明において、ハロゲン化水素酸塩は融点が原体のキノン化合物よりも高くなる場合が多く、製剤化にあたっての取り扱いが容易になる利点がある。また、アルキルスルフォン酸塩としては、メタンスルフォン酸塩などが例示される。
【0013】
前記一般式(I)で表される本発明化合物の製造方法は種々考えられるが、代表的な方法を述べれば以下の通りである。一般式(II)で表される2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノンを還元剤で還元し、一般式(III)で表される2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼンとし、この2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼンと窒素置換基を有するカルボン酸、若しくはその反応性酸誘導体またはこれらのハロゲン化水素酸塩とを常法によりエステル化反応を行うことにより、本発明の目的物質(I)を得ることができる。
ここで用いる還元剤は水素化ホウ素ナトリウム、ハイドロサルファイトナトリウム、トリーn?ブチルフォスフィン、塩化亜鉛、塩化第1スズなどを挙げることができる。
【0014】
本発明にかかる2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼンカルボン酸エステル誘導体の製造方法は、1級または2級アミノ基あるいは側鎖に水酸基、チオール基を有するアミノ酸の各官能基をtert−ブトキシカルボニル基(以下t-BOC基と略記)、ベンジルオキシカルボニル基(以下Z基と略記)、9−フルオレニルメトキシカルボニル基(以下FMOC基と略記)などの適切な保護基で保護して用い、N,N−ジアルキルアミノ酸またはピリジンカルボン酸はハロゲン化水素酸塩を用いてジシクロヘキシルカルボジイミド(以下DCCと略記)、塩酸1−メチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(以下EDCと略記)、N,N−ジサクシニミドオギザレート(以下DSOと略記)などの活性エステル化試薬の存在下に反応を行うことが好ましい結果を与える。この際溶媒としてはピリジンが好ましい。
【0015】
また、反応性酸誘導体を用いる方法では、酸ハロゲナイトとりわけ酸クロリドを用いる方法が好ましい結果を与える。この際溶媒としては無水ベンゼンー無水ピリジン混合物が好ましい。ハロゲン化水素酸塩およびアルキルスルフォン酸塩は常法により遊離のアミノ酸エステルとハロゲン化水素酸またはアルキルスルフォン酸を反応させて製造する。N−アシルアミノ酸エステルを製造した後、常法によりハロゲン化水素酸で脱保護基化することによってハロゲン化水素酸塩を製造することができる。
【0016】
本発明で得られる目的物質(I)は、生体内に広範囲に存在する加水分解酵素で容易に加水分解されて2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン化合物を生成する。すなわち,還元酵素による活性化過程を律速としないで抗酸化性が強い2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン化合物(還元型)のバイオアベイラビリティを確保することが可能である。また、本発明で得られる目的物質(I)は、融点が原体である2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン化合物(酸化型)よりも高く製剤技術上、取り扱いが容易であり、比較的高い水溶性を有する。従って、注射剤、経口投与剤、口腔内投与、水性塗布剤として有用である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜10
下記製造方法A〜Dに示す方法により表1〜3に示す2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン誘導体を製造した。
【0018】
製造方法A
アミノ酸0.1molを蒸留水?ジオキサン(1:1,v/v)100mlに溶解し、トリエチルアミン30mlを加え、ジ−tert−ブチルジカルボネートを徐々に加え30分間室温で撹拌する。減圧下ジオキサンを留去し、炭酸水素ナトリウム水溶液(0.5 M)50mlを加え酢酸エチル100mlで洗う。酢酸エチル層を50mlの炭酸水素ナトリウム水溶液で洗い、水層を合わせて氷冷下でクエン酸水溶液(0.5 M)を加えて酸性(pH3)とし、塩化ナトリウムを飽和させた後、酢酸エチルで抽出する(100ml × 3)。抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水後、減圧下溶媒を留去し、油状残渣をイソプロピルエーテルを加えるか、または冷却して結晶化させて、N−t−BOC−アミノ酸を得る。2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1,4−ベンゾキノン(ユビキノン−10)1.16 mmolをイソプロピルエーテル100 mlに溶解し、水素化ホウ素ナトリウム2.8 mmolをメタノール15mlに懸濁させて加え、溶液の黄色が無色になるまで室温で撹拌する。反応液にアルゴンガスを飽和させた蒸留水100mlを加えイソプロピルエーテル層を洗う、分液後イソプロピルエーテル層を無水硫酸ナトリウムで脱水し減圧下溶媒を留去し2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1,4−ジヒドロキシベンゼン(ユビキノール−10)を得る。2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1,4−ジヒドロキシベンゼンにN−t−BOCアミノ酸2.8mmol、DCC 2.8mmol、無水ピリジン30mlを加え雰囲気をアルゴンガスに置換した後、室温で24時間撹拌する。溶媒を減圧下留去し、残渣に酢酸エチルを加えて可溶性画分を抽出する(100ml × 2回)。抽出液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離溶媒;n−ヘキサン:酢酸エチル,85:15)で分離精製し、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−ベンゼン 1,4−ビスーN−t−BOC−アミノ酸エステルを得る。2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニルベンゼン 1,4−ビスーN−t−BOC−アミノ酸エステルを少量のアセトンに溶解し、塩酸−ジオキサン(3.5N)をエステル結合量の約20倍量の塩酸量に相当する量を加え脱保護基化を行う。反応終了後溶媒を減圧留去し、残渣をアセトンで再結晶して2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニルベンゼン 1,4−ビスアミノ酸エステルの塩酸塩を得る。
【0019】
製造方法B
2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1,4−ベンゾキノン(ユビキノン−10)1.16 mmolをイソプロピルエーテル100 mlに溶解し、水素化ホウ素ナトリウム2.8 mmolをメタノール15mlに懸濁させて加え、溶液の黄色が無色になるまで室温で撹拌する。反応液にアルゴンガスを飽和させた蒸留水100mlを加えイソプロピルエーテル層を洗う。分液後イソプロピルエーテル層を無水硫酸ナトリウムで脱水し減圧下溶媒を留去し2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1,4−ジヒドロキシベンゼン(ユビキノール−10)を得る。2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1,4−ジヒドロキシベンゼンにN−t−BOCアミノ酸1.4mmol、DCC 1.4mmol、無水ピリジン30mlを加え雰囲気をアルゴンガスに置換した後、室温で24時間撹拌する。溶媒を減圧下留去し、残渣に酢酸エチルを加えて可溶性画分を抽出する(100ml × 2回)。抽出液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離溶媒;n−ヘキサン:酢酸エチル,85:15)で分離精製し、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−4−ヒドロキシベンゼン 1−N−t−BOC−アミノ酸エステルと2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1−ヒドロキシベンゼン 4−N−t−BOC−アミノ酸エステルを得る。2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−4−ヒドロキシベンゼン 1−N−t−BOC−アミノ酸エステル、若しくは2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1−ヒドロキシベンゼン 4−N−t−BOC−アミノ酸エステルを少量のアセトンに溶解し、塩酸−ジオキサン(3.5N)をエステル結合量の約20倍量の塩酸量に相当する量加え脱保護基を行う。反応終了後溶媒を減圧留去し、残渣をアセトンで再結晶して2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−4−ヒドロキシベンゼン 1−アミノ酸エステルの塩酸塩、および2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1−ヒドロキシベンゼン4−アミノ酸エステルの塩酸塩を得る。
【0020】
製造方法C
2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1,4−ベンゾキノン(ユビキノン−10)1.16 mmolをイソプロピルエーテル100 mlに溶解し、水素化ホウ素ナトリウム2.8 mmolをメタノール15mlに懸濁させて加え、溶液の黄色が無色になるまで室温で撹拌する。反応液にアルゴンガスを飽和させた蒸留水100mlを加えイソプロピルエーテル層を洗う。分液後イソプロピルエーテル層を無水硫酸ナトリウムで脱水し減圧下溶媒を留去し2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1,4−ジヒドロキシベンゼン(ユビキノール−10)を得る。2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1,4−ジヒドロキシベンゼンに塩酸N,N−ジアルキルアミノ酸2.8mmol、DCC 2.8mmol、無水ピリジン30mlを加え雰囲気をアルゴンガスに置換した後、室温で24時間撹拌する。溶媒を減圧下留去し、残渣を蒸留水に懸濁させ炭酸水素ナトリウムを加えてpH7〜8にした後に酢酸エチルで可溶性画分を抽出する(100ml × 3回)。抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水後、減圧下溶媒を留去し,残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離溶媒;n−ヘキサン:酢酸エチル,85:15)で分離精製し、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニルベンゼン 1,4−ビスーN,N−ジアルキルアミノ酸エステルを得る。2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニルベンゼン 1,4−ビスーN,N−ジアルキルアミノ酸エステルを少量のn−ヘキサンに溶解し2倍モル量の塩酸−ジオキサンを加え溶媒を減圧下留去し、残渣をアセトンで再結晶して2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニルベンゼン 1,4−ビスーN,N−ジアルキルアミノ酸エステルの塩酸塩を得る。
【0021】
製造方法D
2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1,4−ベンゾキノン(ユビキノン−10)1.16 mmolをイソプロピルエーテル100 mlに溶解し、水素化ホウ素ナトリウム2.8 mmolをメタノール15mlに懸濁させて加え、溶液の黄色が無色になるまで室温で撹拌する。反応液にアルゴンガスを飽和させた蒸留水100mlを加えイソプロピルエーテル層を洗う。分液後イソプロピルエーテル層を無水硫酸ナトリウムで脱水し減圧下溶媒を留去し2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1,4−ジヒドロキシベンゼン(ユビキノール−10)を得る。2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1,4−ジヒドロキシベンゼンに塩酸N,N−ジアルキルアミノ酸2.8mmol、DCC 2.8mmol、無水ピリジン30mlを加え雰囲気をアルゴンガスに置換した後、室温で24時間撹拌する。溶媒を減圧下留去し、残渣を蒸留水に懸濁させ炭酸水素ナトリウムを加えてpH7〜8にした後に酢酸エチルで可溶性画分を抽出する(100ml × 3回)。抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水後、減圧下溶媒を留去し,2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−4−ヒドロキシベンゼン 1−N,N−ジアルキルアミノ酸エステルと2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1−ヒドロキシベンゼン 4−N,N−ジアルキルアミノ酸エステルを得る。2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−4−ヒドロキシベンゼン 1−N,N−ジアルキルアミノ酸エステル、若しくは2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1−ヒドロキシベンゼン 4−N,N−ジアルキルアミノ酸エステルを少量のn−ヘキサンに溶解し、2倍モル量の塩酸−ジオキサンを加え、溶媒を減圧下留去し、残渣をアセトンで再結晶して2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−4−ヒドロキシベンゼン 1−N,N−ジアルキルアミノ酸エステルと、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニル−1−ヒドロキシベンゼン 4−N,N−ジアルキルアミノ酸エステルの塩酸塩を得る。
【0022】
以下、本発明にかかる化合物の具体的化学式およびその物性、製造方法について、表1,3に示す。なお、実施例1〜6については、質量分析(m/z,FAB-MS)および核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,δ(ppm,内部標準TMS))を表2に示す。
【0023】
【表1】
Figure 0005096653
【0024】
【表2】
Figure 0005096653
【0025】
【表3】
Figure 0005096653
【0026】
水溶性試験
実験方法
2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニルー1,4−ベンゾキノン(以下ユビキノンー10)、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニルー1,4−ジヒドロキシベンゼン(以下ユビキノール−10)、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニルベンゼン 1,4−ビスーN,N−ジメチルグリシネート塩酸塩(実施例4:以下Uq-bis-DMG)、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニルー1−ヒドロキシベンゼン 4−N,N−ジメチルグリシネート塩酸塩(実施例5:以下Uq-4-DMG)、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デカイソプレニルー4−ヒドロキシベンゼン1−N,N−ジメチルグリシネート塩酸塩(実施例6:以下Uq-1-DMG)のそれぞれ0.10mmolをメスフラスコに取り、蒸留水を加えて5mlとし、25℃、24時間撹拌後、メンブランフィルター(0.5μm)でろ過し、ろ液中の各添加化合物濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。
【0027】
結果
ユビキノンー10、ユビキノールー10はいずれもHPLCの検出限界以下で、溶解度は測定できなかった。Uq-bis-DMG、Uq-4-DMG、Uq-1-DMGは水に溶解し、溶解度を表4に示した。
【0028】
【表4】
Figure 0005096653
【0029】
加水分解性実験
方法
SD系ラット肝臓S9およびSD系ラット肝臓ミクロソームの等張リン酸緩衝液に、Uq-bis-DMG、Uq-4-DMG、Uq-1-DMGを添加し、37℃で反応させ、経時的に反応液中に生成するユビキノールー10をHPLCで測定した。ユビキノールー10は非常に酸化されやすい化合物であるため、生成したユビキノールー10を酸化体ユビキノンー10として測定した。
HPLC条件:カラムはCAPCELL PAK UG120、移動相はエタノールーアセトニトリル(3:7〜5:5,v/v)、流速0.7ml/min、検出は273nmの吸光度でおこなった。
【0030】
結果
ラット肝臓S9およびラット肝臓ミクロソーム溶液中におけるユビキノールー10の生成を図1と2に示した。等張緩衝液のみを用いた場合、実験時間内ではUq-bis-DMG、Uq-4-DMG、Uq-1-DMGのいずれの化合物も有意な加水分解は観察されなかった。一方、ラット肝臓S9およびラット肝臓ミクロソーム溶液中では全ての化合物の加水分解が加速され,経時的にユビキノールー10が生成した。ラット肝臓中の組成によって加水分解は触媒された。この加水分解反応はエステラーゼ阻害剤エゼリンの添加によって強く阻害された(図3参照)。このことからUq-bis-DMG、Uq-4-DMG、Uq-1-DMGの肝臓組成による加水分解はエステラーゼによって触媒されることが明らかになった。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にかかる2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン誘導体によれば、窒素置換基を有するカルボン酸と2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼン化合物のエステル誘導体にすることにより、水溶性を改善し、しかも還元酵素に依存しないで生体内に広範囲に存在するエステラーゼを利用して優れた抗酸化作用を呈する2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼンの放出がなされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-デカイソプレニル-1,4-ジヒドロキシベンゼン誘導体のラット肝臓S 9溶液中でのユビキノールー10への再変換性の説明図である。
【図2】2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-デカイソプレニル-1,4-ジヒドロキシベンゼン誘導体のラット肝臓ミクロソーム溶液中でのユビキノールー10への再変換性の説明図である。
【図3】2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-デカイソプレニル-1,4-ジヒドロキシベンゼン誘導体のラット肝臓ミクロソーム溶液中でのユビキノールー10への再変換性に及ぼすエステラーゼ阻害剤の影響の説明図である。

Claims (2)

  1. 一般式(I)
    Figure 0005096653
    …(I)
    (式中RおよびRはそれぞれ水素原子、またはN−アルキルグリシンないしN,N−ジアルキルグリシンのカルボニル基がエステル結合した残基を意味し,少なくとも一方はN−アルキルグリシンないしN,N−ジアルキルグリシン残基である。R
    Figure 0005096653
    nは1〜10の整数を意味する。Rは水素原子または水酸基の保護基を意味する。)で表される2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼンカルボン酸エステル誘導体。
  2. 一般式(II)
    Figure 0005096653
    …(II)
    (式中R
    Figure 0005096653
    nは1〜10の整数を意味する。Rは水素原子または水酸基の保護基を意味する。)で表される2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノンを還元して得られる一般式(III)
    Figure 0005096653
    …(III)
    (式中R、Rは前記の意味を有する。)で表される2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼンと、1級または2級アミノ基を有するアミノ酸のアミノ基を保護基で保護したアミノ酸とをエステル化反応させることを特徴とする一般式(I)
    Figure 0005096653
    …(I)
    (式中RおよびRはそれぞれ水素原子または1級または2級アミノ基を有するカルボン酸残基を意味し,少なくとも一方は1級または2級アミノ基を有するカルボン酸残基である。R
    Figure 0005096653
    nは1〜10の整数を意味する。Rは水素原子または水酸基の保護基を意味する。)で示される2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ジヒドロキシベンゼンカルボン酸エステル誘導体の製造方法。
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