JP5095619B2 - 走査プローブ顕微鏡装置 - Google Patents
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Description
図1(a)はカンチレバーとサンプルの距離対相互作用力の一例を示している。カンチレバーには固有のバネ定数と質量から決まる機械的共振周波数があるが、図1(a)のような距離によって値が変化する外力が作用すると、見かけのバネ定数が変化し、共振周波数が変化する。図1(b)は距離対共振周波数の関係の一例である。
この図において、101は試料(サンプル)、102はサンプル台、103はXYZスキャナ、104はサンプル101の特性を計測するためのカンチレバー、105はカンチレバー104の振動を検出する振動検出手段、106は振動検出手段105からの検出信号を受ける、バンドパスフィルタ、振幅安定化及び位相調整を行う検出信号波形処理システム、107は検出信号波形処理システム106に接続されるFM検波器、108はFM検波器107に接続される制御器、109は検出信号波形処理システム106に接続される振動励起手段、110はXY走査画像化システムであり、サンプル101は、制御器108からのZ軸制御信号と、XY走査画像化システム110からのXY走査信号によって、XYZの走査を行うことができる。
なお、試料の撮像装置の位相フィードバック方式としては、詳細に後述するが、下記非特許文献を挙げることができる。
スーパーヘテロダイン方式にPLLを組み合わせることによって発振を安定化させる方式も存在するが、装置が複雑になるためコストがかかり、また、使用者が動作を理解しにくいという欠点がある。
また、従来技術によれば、カンチレバーとサンプルの距離に対する共振周波数の関係(図1の(b)のごときプロット)を取得する場合、図3に示すように、XY走査を停止し、Z軸に強制的に三角波発生器111からの三角波を入力し、それに対して自励発振周波数がどう変化するかをFM検波器107によって検出し、プロットすることになる。
〔1〕試料に機械的振動子を作用させて試料の撮像を行う走査プローブ顕微鏡装置において、第1の制御器と、この第1の制御器に接続される、試料のXYZスキャナ及びXY走査画像化システムと、信号発生器と、この信号発生器に接続される振動励起手段と、この振動励起手段からの出力信号により強制振動する機械的振動子と、この機械的振動子の振動を検出する振動検出手段と、この振動検出手段に接続される位相差検出手段と、この位相差検出手段からの位相差信号を入力するとともに、前記第1の制御器と前記信号発生器に周波数制御信号を出力する第2の制御器とを備え、前記信号発生器から前記機械的振動子の共振周波数付近の周波数の駆動信号を発生させ、それを前記振動励起手段に入力し、前記機械的振動子を強制振動させ、前記位相差検出手段からの位相差を一定の値に維持するように制御することによって、前記試料の撮像を行うことを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載の走査プローブ顕微鏡装置において、前記機械的振動子の共振周波数を計測し、この共振周波数に基づいて前記試料の凹凸像を取得することを特徴とする。
〔5〕上記〔1〕記載の走査プローブ顕微鏡装置において、前記機械的振動子がカンチレバーであることを特徴とする。
図4は本発明の実施例を示す走査プローブ顕微鏡装置(トラッキング他励方式)のシステム構成図である。
この図において、1は試料(サンプル)、2はサンプル台、3はXYZスキャナ、4はサンプル1の撮像を行うためのカンチレバー、5はそのカンチレバー4の振動を検出する振動検出手段、6は振動検出手段5からの検出信号を受ける、位相差検出手段、7は位相差検出手段6からの位相差信号を受ける第2の制御器、8は第2の制御器7に接続される第1の制御器、9は第2の制御器7からの周波数制御信号を受ける信号発生器、10は信号発生器9からの駆動信号を受ける振動励起手段、11は第1の制御器8に接続されるXY走査画像化システムであり、第1の制御器8からのZ軸制御信号はXYZスキャナ3に接続される。また、信号発生器9からの駆動信号は振動励起手段10を介してカンチレバー4を振動させる。信号発生器9からの駆動信号は、参照信号として、位相差検出手段6の入力側に接続される。
要するに、カンチレバー4の共振周波数に近い周波数を持つ駆動信号を信号発生器9から振動励起手段10に供給し、カンチレバー4を他励振動(強制振動)させる。振動検出手段5によって検出されたカンチレバー4の振動と前記駆動信号との位相差がゼロになるように、即ち前記駆動信号とカンチレバー4の共振周波数が一致するように、(1)前記駆動信号の周波数、または、(2)カンチレバーの共振周波数を(カンチレバー4とサンプル1の距離を調整することによって)制御する。
図5は本発明の第1参考例を示す走査プローブ顕微鏡装置(位相フィードバック方式)のシステム構成図である。
この図に示すように、位相フィードバック方式は、図4における第2の制御器7を不要にした構成であり、位相差信号のみを監視するシステムとしている。すなわち、第1の制御器21には位相差信号のみが入力され、信号発生器22には周波数制御信号は入力されることはなく、独立して信号を発生するようにしている。
また、Z軸の制御の応答を遅くすると、XY走査による相互作用力の変動(つまり位相差信号の変動)の補正が追いつかなくなるので、位相差信号に相互作用力の情報が残るようになり、XY座標の各位置における位相差信号の値をプロットすることによって、相互作用力像を得ることもできる。
次に、位相フィードバック方式によるΔf−Zカーブの取得について説明する。
位相フィードバック方式では、カンチレバーはつねに周波数発生器の周波数で強制振動させられ、カンチレバーの共振周波数の方が周波数発生器の周波数に一致するまでカンチレバーとサンプルの距離が調節される。
また、この方法では、入力が共振周波数で出力が距離と見なすことができるので、従来技術の図1(b)のカーブの極小点より左側のような、僅かな距離変化に対して共振周波数が大きく変動する場合に、精度良く測定することが可能である。
図6は本発明の第2参考例を示す走査プローブ顕微鏡装置(トラッキング他励方式によるアプローチと位相フィードバック方式によるアプローチ)のシステム構成図(その1)である。
このシステムでは、位相差検出手段6からの位相差信号を導入する第1の端子31Aと第2の制御器7からの周波数制御信号を導入する第2の端子31Bとを切り替え可能な第1の切替器31と、第2の制御器7からの周波数制御信号を開閉可能な第2の切替器32とを備え、第1の切替器31の出力側に第1の制御器8を、第2の切替器32の出力側に信号発生器9をそれぞれ接続するようにしたものである。
カンチレバー4やサンプル1の取付など、手作業による準備の段階では、カンチレバー4とサンプル1の間にはミリメートルオーダーの距離がある。一方、走査プローブ顕微鏡の撮像時には、カンチレバー4とサンプル1間の距離はナノメートルオーダーの距離に接近させる必要がある。Z軸のスキャナ(通常は圧電素子)の可動範囲はマイクロメートル程度しかないため、ミリメートルオーダーの可動範囲を持つ粗動機構をZ軸スキャナとは別に設置し、これによってカンチレバー4とサンプル1の距離をZ軸スキャナの可動範囲まで接近させる必要がある。
本発明によれば、振幅が安定した信号発生器の信号によってカンチレバー4に他励振動(強制振動)を誘起するので、カンチレバー4のQ値が低くても振動の振幅を安定させることができる。駆動信号と検出信号の位相差は、駆動信号の周波数とカンチレバー4の共振周波数の差を反映しており、カンチレバー4をサンプル1に対して走査したときに、前記位相差が変化したならば、これはカンチレバー4とサンプル1の間の相互作用力が変化したことを意味する。そこで、カンチレバー4を走査しながら、前記位相差がゼロになるように(1)カンチレバー4とサンプル1の距離を変化させることによって常に共振周波数が駆動周波数に一致する(言い換えるとカンチレバー4とサンプル1の相互作用力が常に一定になる)ように制御し、カンチレバー4とサンプル1の距離を凹凸像として取得する。または、(2)駆動信号の周波数を調整することによってカンチレバー4の共振周波数に一致させるようにフィードバックすることによりカンチレバー4とサンプル1の相互作用力を推定し、それを相互作用力像として取得するか、あるいはもう一重のフィードバックループを構成して相互作用力が一定になるようにカンチレバー4とサンプル1の距離を変化させ、この距離変化を凹凸像として取得する。上記(1)、(2)いずれの場合においても、制御ループの応答速度は必要なS/N比によって決定すればよく、たとえS/N比を重視して応答を遅くしても、従来技術のように共振周波数の検出感度を低下させる要因が存在しない。
この参考例では、位相差信号が導かれる端子41と周波数制御信号が導かれる端子42との間に第1の可変抵抗器43を配置して、その第1の可変抵抗器43上の調整された点に第1の制御器8を摺動子44で接続可能にする。また、周波数制御信号が導かれる端子45と接地E間には第2の可変抵抗器46を配置して、その第2の可変抵抗器46上の調整された点に信号発生器9を摺動子47で接続可能にする。摺動子44と47とは連動するようにする。
なお、ここでは、市販のシリコン製のカンチレバーを使用し、純水中たわみ2次モードを用いて撮像した。撮像前に測定した純水中たわみ2次モードの共振周波数は862kHzである。斥力領域(共振周波数が882kHzの地点)で撮像した。振幅(A)を一定に保ち(0.38nmpp)撮像した。
このように、本発明によれば、微小なpmレベルの試料の凹凸を撮像することができる。
なお、上記実施例では、プローブとしてのカンチレバーについて述べたが、機械的振動子であれば、種々のプローブを用いることができる。
Claims (5)
- 試料に機械的振動子を作用させて試料の撮像を行う走査プローブ顕微鏡装置において、
(a)第1の制御器と、
(b)該第1の制御器に接続される、試料のXYZスキャナ及びXY走査画像化システムと、
(c)信号発生器と、
(d)該信号発生器に接続される振動励起手段と、
(e)該振動励起手段からの出力信号により強制振動する機械的振動子と、
(f)該機械的振動子の振動を検出する振動検出手段と、
(g)該振動検出手段に接続される位相差検出手段と、
(h)該位相差検出手段からの位相差信号を入力するとともに、前記第1の制御器と前記信号発生器に周波数制御信号を出力する第2の制御器と、
(i)前記位相差検出手段からの位相差信号と前記第2の制御器からの周波数制御信号の両方を任意の割合で混合して前記第1の制御器に入力する装置と、
(j)前記周波数制御信号を任意の強度に調整してから前記信号発生器に入力する装置とを備え、
(k)前記信号発生器から前記機械的振動子の共振周波数付近の周波数の駆動信号を発生させ、それを前記振動励起手段に入力し、前記機械的振動子を強制振動させ、前記位相差検出手段からの位相差を一定の値に維持するように制御することによって、前記試料の撮像を行うことを特徴とする走査プローブ顕微鏡装置。 - 請求項1記載の走査プローブ顕微鏡装置において、前記機械的振動子の共振周波数を計測し、該共振周波数に基づいて前記試料と前記機械的振動子との相互作用力像を取得することを特徴とする走査プローブ顕微鏡装置。
- 請求項1記載の走査プローブ顕微鏡装置において、前記機械的振動子の共振周波数を計測し、該共振周波数に基づいて前記試料の凹凸像を取得することを特徴とする走査プローブ顕微鏡装置。
- 請求項1記載の走査プローブ顕微鏡装置において、前記機械的振動子の共振周波数を計測し、該共振周波数に基づいて前記共振周波数と機械的振動子−試料間距離の関係を取得することを特徴とする走査プローブ顕微鏡装置。
- 請求項1記載の走査プローブ顕微鏡装置において、前記機械的振動子がカンチレバーであることを特徴とする走査プローブ顕微鏡装置。
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