以下、図面を参照して本発明の光学式変位測定装置の実施の形態について説明する。
<第1の実施の形態の光学式変位測定装置の構成例>
図1は、本発明の第1の実施の形態の光学式変位測定装置の一例を示す構成図である。本発明の第1の実施の形態の光学式変位測定装置10Aは、工作機械等の可動部分に取り付けられ直線移動する回折格子11Tと、レーザ光等の可干渉光Laを出射する可干渉光源12を備える。
また、光学式変位測定装置10Aは、干渉した2つの2回回折光Lc1,Lc2を受光して干渉信号を生成する受光部13と、受光部13からの干渉信号に基づき回折格子11Tの移動位置を検出する位置検出部14を備える。
更に、光学式変位測定装置10Aは、可干渉光源12から出射された可干渉光Laを2つの可干渉光La1,La2に分割して回折格子11Tに照射すると共に、回折格子11Tからの2回回折光Lc1,Lc2を干渉させて受光部13に照射する照射受光光学系15を備える。
また、光学式変位測定装置10Aは、回折格子11Tからの2つの1回回折光Lb1,Lb2を反射して再度回折格子11Tに照射する反射光学系16,17を備える。
図2は、本発明の各実施の形態の光学式変位測定装置で用いられる回折格子の一例を示す斜視図である。回折格子11Tは、例えば薄板状の形状を有しており、その表面に狭いスリットや溝等の格子が所定間隔毎に刻まれている。このような回折格子11Tに入射された光は、表面に刻まれたスリット等により回折する。回折により生じる回折光は、格子の間隔と光の波長で定まる方向に発生する。
ここで、本発明の実施の形態を説明するにあたり、格子が形成されている回折格子11Tの面を、格子面11aと呼ぶ。なお、図1に示す光学式変位測定装置10Aでは、回折格子11Tとして透過型の回折格子が用いられており、回折格子11Tが透過型の場合には、可干渉光が入射される面と回折光が発生する面とを共に格子面11aと呼ぶ。
また、回折格子11Tの格子が形成された方向(図2中矢印C1,C2方向)、すなわち、格子の透過率や反射率、溝の深さ等の変化の方向を表す格子ベクトルに対して垂直な方向であって且つ格子面11aに平行な方向を、格子方向と呼ぶ。
格子が形成された方向に垂直な方向であり且つ格子面11aに平行な方向(図2中矢印D1,D2方向)、すなわち、回折格子11Tの格子ベクトルに対して平行な方向を、格子ベクトル方向と呼ぶ。
また、格子面11aに垂直な方向(図2中矢印E1,E2方向)、すなわち、格子方向に垂直な方向であり且つ格子ベクトル方向に垂直な方向を、法線ベクトル方向と呼ぶ。なお、これら回折格子11Tの各方向については、本発明の第1の実施の形態のみならず、他の実施の形態においても同様に呼ぶものとする。
この回折格子11Tは、工作機械等の可動部分に取り付けられ、この可動部分の移動にともなって、図2中矢印D1,D2方向、すなわち、格子ベクトル方向に移動する。
なお、本発明では、回折格子の種類は限定されず、機械的に溝等が形成されたもののみならず、例えば、感光性樹脂に干渉縞を焼き付けて作成したものであっても良い。
図1に示す可干渉光源12は発光部の一例で、レーザ光等の可干渉光を発光する素子である。この可干渉光源12は、例えば、可干渉距離が数百μm程度のレーザ光を発光するマルチモードの半導体レーザ等からなるものを挙げるが、駆動電流に高周波の重畳をかけたシングルモードレーザダイオードや、スーパールミネッセンスダイオード、発光ダイオードであっても良い。
受光部13は、回折格子11Tからの2回回折光Lc1,Lc2を干渉させた干渉光Ldの偏光状態を変換する1/4波長板131と、干渉光Ldを4分割する光分割素子としてのビームスプリッタ132a,132b,132c,132dと、4分割された干渉光Ld1,Ld2,Ld3,Ld4において所定の偏光成分のみを透過させる偏光子133a,133b,133c,133dを備える。
また、受光部13は、ビームスプリッタ132a,132b,132c,132dで4分割された干渉光Ld1,Ld2,Ld3,Ld4において、偏光子133a,133b,133c,133dを透過した所定の偏光成分を受光する受光素子134a,134b,134c,134dを備える。
1/4波長板131は、干渉光Ldを円偏光に変換する。ビームスプリッタ132aは、1/4波長板131を通過した干渉光Ldが入射し、入射した干渉光Ldの一部を反射して干渉光Ld1を発生させると共に、入射した干渉光Ldの残部を透過させる。
ビームスプリッタ132bは、ビームスプリッタ132aの後段に配置され、ビームスプリッタ132aを通過した干渉光Ldが入射し、入射した干渉光Ldの一部を反射して干渉光Ld2を発生させると共に、入射した干渉光Ldの残部を透過させる。
ビームスプリッタ132cは、ビームスプリッタ132bの後段に配置され、ビームスプリッタ132bを通過した干渉光Ldが入射し、入射した干渉光Ldの一部を反射して干渉光Ld3を発生させると共に、入射した干渉光Ldの残部を透過させる。
ビームスプリッタ132dは、ビームスプリッタ132cの後段に配置され、ビームスプリッタ132cを通過した干渉光Ldが入射し、入射した干渉光Ldを全反射して干渉光Ld4を発生させる。
ビームスプリッタ132a,132b,132c,132dの各反射率は、それぞれ1/4,1/3,1/2,1に設定されている。これにより、入射された干渉光Ldをほぼ同一の光量で、干渉光Ld1,Ld2,Ld3,Ld4に4分割することが可能となる。
偏光子133a,133b,133c,133dは、1/4波長板131を通過し、ビームスプリッタ132a,132b,132c,132dで4分割された円偏光同士の合成波である干渉光Ldのそれぞれに、異なる光学軸を持たせる。
すなわち、偏光子133aは、ビームスプリッタ132aで反射した干渉光Ld1について、本例では0°の偏光成分のみを透過させて、受光素子134aに受光させる。偏光子133bは、ビームスプリッタ132bで反射した干渉光Ld2について、本例では45°の偏光成分のみを透過させて、受光素子134bに受光させる。偏光子133cは、ビームスプリッタ132cで反射した干渉光Ld3について、本例では90°の偏光成分のみを透過させて、受光素子134cに受光させる。偏光子133dは、ビームスプリッタ132dで反射した干渉光Ld4について、本例では135°の偏光成分のみを透過させて、受光素子134dに受光させる。
受光素子134a,134b,134c,134dは、それぞれ受光面に対して照射された光を、その光量に応じた電気信号に変換する光電変換素子であり、例えば、フォトディテクタ等からなるものである。これら受光素子134a,134b,134c,134dは、受光面に対して照射される干渉光を受光して、その光量に応じた干渉信号を生成する。
位置検出部14は、受光素子134a及び受光素子134bから出力される電気信号が差動増幅器140aに入力され、差動増幅器140aでは、受光素子134a,134bからの電気信号の差動出力が求められ、干渉信号の直流成分がキャンセルされた差動信号が出力される。
また、受光素子134c及び受光素子134dから出力される電気信号が差動増幅器140bに入力され、差動増幅器140bでは、受光素子134c,134dからの電気信号の差動出力が求められ、干渉信号の直流成分がキャンセルされた差動信号が出力される。
従って、受光素子134aと受光素子134b、及び受光素子134cと受光素子134dのそれぞれで、180°位相が異なる2つの出力の直流成分がキャンセルされた差動信号が信号処理部141に入力される。信号処理部141では、受光素子134a,134b,134c,134dが生成した干渉信号に基づいて位相差が求められ、回折格子11Tの相対移動位置を示す位置信号が出力される。
照射受光光学系15は、可干渉光源12から出射された可干渉光Laを集光する第1の結像素子21を備える。また、照射受光光学系15は、可干渉光源12から出射された可干渉光Laを2つの可干渉光La1,La2に分割すると共に、回折格子11Tからの2つの2回回折光Lc1,Lc2を重ね合わせて干渉させる偏光ビームスプリッタ22を備える。
更に、照射受光光学系15は、偏光ビームスプリッタ22により分割された一方の可干渉光La1を反射すると共に、可干渉光La1により生じる2回回折光Lc1を反射する反射器23を備える。
また、照射受光光学系15は、偏光ビームスプリッタ22により分割された他方の可干渉光La2を反射すると共に、可干渉光La2により生じる2回回折光Lc2を反射する反射器24を備える。更に、照射受光光学系15は、偏光ビームスプリッタ22により重ね合わされた干渉光Ldを集光する第2の結像素子25を備える。
第1の結像素子21は、所定の開口数を有するレンズ等の光学素子からなる。第1の結像素子21には、可干渉光源12から出射された可干渉光Laが入射される。第1の結像素子21としては、可干渉光源12から所定の拡散角で入射された可干渉光Laをコリメートしたビームとして出射するものが理想である。
第1の結像素子21でコリメートされた可干渉光Laのビーム径は、回折格子11Tが回折光を発生させるのに十分な格子数を含む大きさが望ましい。また、そのビーム径は、格子面11a上のゴミや傷の影響を受けないような大きさが望ましい。更に、そのビーム径は、第1の結像素子21の開口数等を変えることにより調整することができ、例えば、数百μm以上とするのが望ましい。
偏光ビームスプリッタ22には、可干渉光源12から出射され、第1の結像素子21でコリメートされた可干渉光Laが入射される。偏光ビームスプリッタ22は、入射された可干渉光Laの一部を反射して可干渉光La1を生成し、入射された可干渉光Laの残部を透過して可干渉光La2を生成する。
また、偏光ビームスプリッタ22には、回折格子11Tからの2回回折光Lc1及び2回回折光Lc2が入射される。偏光ビームスプリッタ22は、2つの2回回折光Lc1,Lc2を重ね合わせて干渉させ、この干渉させた干渉光Ldを各受光素子134a,134b,134c,134dに照射させる。
反射器23は、偏光ビームスプリッタ22を反射した可干渉光La1を反射して、回折格子11Tの格子面11aの所定の位置に照射する。また、反射器24は、偏光ビームスプリッタ22を透過した可干渉光La2を反射して、回折格子11Tの格子面11aの所定の位置に照射する。反射器23及び反射器24は、偏光ビームスプリッタ22で分割された可干渉光La1及び可干渉光La2を、格子面11a上の同一の位置に照射する。
また、反射器23には、1回回折光Lb1が回折格子11Tに照射されることにより生じる2回回折光Lc1が照射される。反射器23は、この2回回折光Lc1を反射して、偏光ビームスプリッタ22に照射する。また、反射器24は、1回回折光Lb2が回折格子11Tに照射されることにより生じる2回回折光Lc2が照射される。反射器24は、この2回回折光Lc2を反射して、偏光ビームスプリッタ22に照射する。反射器23及び反射器24には、格子面11a上の同一の位置から生じる2回回折光Lc1,Lc2が照射される。
第2の結像素子25は、所定の開口数を有するレンズ等の光学素子からなる。第2の結像素子25には、偏光ビームスプリッタ22により2つの2回回折光Lc1,Lc2が重ね合わされた干渉光Ldが入射される。
第2の結像素子25は、この重ね合わされた干渉光Ldを、所定のビーム径で各受光素子134a,134b,134c,134dの受光面に結像させる。その結像点は、必ずしもビーム径が最小となる点とする必要はなく、ビームの像内での光路長の差が最小となる点が受光面上に位置するようにしてもよい。
反射光学系16は、可干渉光La1が回折格子11Tで回折されて生じる1回回折光Lb1を反射して、再度回折格子11Tに照射する反射器26と、反射器26で反射された1回回折光Lb1を平行光として回折格子11Tに照射する第3の結像素子27と、1回回折光Lb1の偏光状態を変換する1/4波長板28を備える。
反射光学系17は、可干渉光La2が回折格子11Tで回折されて生じる1回回折光Lb2を反射して、再度回折格子11Tに照射する反射器29と、反射器29で反射された1回回折光Lb2を平行光として回折格子11Tに照射する第4の結像素子30と、1回回折光Lb2の偏光状態を変換する1/4波長板31を備える。
反射光学系16の反射器26には、1/4波長板28を通過した1回回折光Lb1が照射される。反射器26は、反射される1回回折光Lb1が入射経路と同じ経路を戻るように、1回回折光Lb1を垂直に反射する。反射器26に照射される1回回折光Lb1は、1/4波長板28を通過しており、また、反射器26で反射される1回回折光Lb1は、1/4波長板28を再度通過するため、偏光方向が90°変換された状態で、再度回折格子11Tに照射される。
反射光学系16の第3の結像素子27は、所定の開口数を有するレンズ等の光学素子からなり、回折格子11T側の焦点距離をF1とし、反射器26側の焦点距離をF2として、回折格子11Tが第3の結像素子27の一方の焦点位置付近に配置され、反射器26が第3の結像素子27の他方の焦点位置付近に配置される。ここで、第3の結像素子27の焦点距離は、F1=F2である。
反射光学系17の反射器29には、1/4波長板31を通過した1回回折光Lb2が照射される。反射器29は、反射される1回回折光Lb2が入射経路と同じ経路を戻るように、1回回折光Lb2を垂直に反射する。反射器29に照射される1回回折光Lb2は、1/4波長板31を通過しており、また、反射器29で反射される1回回折光Lb2は、1/4波長板31を再度通過するため、偏光方向が90°変換された状態で、再度回折格子11Tに照射される。
反射光学系17の第4の結像素子30は、所定の開口数を有するレンズ等の光学素子からなり、回折格子11T側の焦点距離をF3とし、反射器29側の焦点距離をF4として、回折格子11Tが第4の結像素子30の一方の焦点位置付近に配置され、反射器29が第4の結像素子30の他方の焦点位置付近に配置される。ここで、第4の結像素子30の焦点距離は、F3=F4であり、かつ、第3の結像素子27の焦点距離と第4の結像素子30の焦点距離が等しく構成される。
このような反射光学系16及び反射光学系17は、可干渉光La1,La2が回折格子11Tで回折されることにより生じる1回回折光Lb1,Lb2を反射して、再度回折格子11Tに照射する。再度回折格子11Tに照射された1回回折光Lb1,Lb2は、回折格子11Tで回折される。
1回回折光Lb1,Lb2が回折格子11Tで回折されることにより生じる2回回折光Lc1,Lc2は、可干渉光La1,La2と同一の光路を戻り、偏光ビームスプリッタ22に照射される。
図3は、本発明の第1の実施の形態の光学式変位測定装置における可干渉光及び回折光の光路を示す説明図で、可干渉光La1,La2、1回回折光Lb1,Lb2、及び2回回折光Lc1,Lc2の光路順を図3に示して、各光の光路について説明する。なお、この図3に示す光路は、模式的なものであり、各光の光軸を限定するものではない。
可干渉光源12から出射された1つの可干渉光Laは、第1の結像素子21を通過してコリメートされ、偏光ビームスプリッタ22によりS偏光とP偏光の2つの可干渉光La1,La2に分割される。
偏光ビームスプリッタ22で反射した一方の可干渉光La1はS偏光の光で、反射器23により反射され、回折格子11Tの格子面11a上の所定の点Pに照射される。そして、この所定の点Pに照射された一方の可干渉光La1が回折され、回折格子11Tを透過した1回回折光Lb1が生じる。この1回回折光Lb1は、この所定の点Pから発生する。
回折格子11Tで発生した1回回折光Lb1は、反射光学系16で第3の結像素子27を通過して集光され、1/4波長板28を通過して反射器26に結像される。反射器26に結像された1回回折光Lb1は、反射器26により反射面に対して垂直に反射され、再び1/4波長板28を通過し、第3の結像素子27でコリメートされ、回折格子11Tの格子面11a上の所定の点Pに照射される。
そして、この所定の点Pに照射された1回回折光Lb1が回折され、回折格子11Tを透過した2回回折光Lc1が生じる。この2回回折光Lc1は、可干渉光La1と同一の光路を戻り、偏光ビームスプリッタ22に入射する。
偏光ビームスプリッタ22を透過した他方の可干渉光La2はP偏光の光で、反射器24により反射され、回折格子11Tの格子面11a上において、一方の可干渉光La1の照射位置と同じ所定の点Pに照射される。そして、この所定の点Pに照射された他方の可干渉光La2が回折され、回折格子11Tを透過した1回回折光Lb2が生じる。この1回回折光Lb2は、この所定の点Pから発生する。
回折格子11Tで発生した1回回折光Lb2は、反射光学系17で第4の結像素子30を通過して集光され、1/4波長板31を通過して反射器29に結像される。反射器29に結像された1回回折光Lb2は、反射器29により反射面に対して垂直に反射され、再び1/4波長板31を通過し、第4の結像素子30でコリメートされ、回折格子11Tの格子面11a上の所定の点Pに照射される。
そして、この所定の点Pに照射された1回回折光Lb2が回折され、回折格子11Tを透過した2回回折光Lc2が生じる。この2回回折光Lc2は、可干渉光La2と同一の光路を戻り、偏光ビームスプリッタ22に入射する。
偏光ビームスプリッタ22で反射した一方の可干渉光La1を、回折格子11Tで回折させて生じた2回回折光Lc1は、反射光学系16で1/4波長板28を往復通過することによって偏光方向が90°変換される。これにより、偏光ビームスプリッタ22に入射した2回回折光Lc1はP偏光の光で、偏光ビームスプリッタ22を透過する。
これに対して、偏光ビームスプリッタ22を透過した他方の可干渉光La2を、回折格子11Tで回折させて生じた2回回折光Lc2は、反射光学系17で1/4波長板31を往復通過することによって偏光方向が90°変換される。これにより、偏光ビームスプリッタ22に入射した2回回折光Lc2はS偏光の光で、偏光ビームスプリッタ22で反射する。
従って、偏光ビームスプリッタ22に入射した2つの2回回折光Lc1,Lc2は、偏光ビームスプリッタ22により重ね合わされて干渉する。2つの2回回折光Lc1,Lc2を干渉させた干渉光Ldは、第2の結像素子25を通過して集光され、受光部13に入射する。
受光部13に入射した干渉光Ldは、1/4波長板131を通過して偏光状態が変換され、偏光ビームスプリッタ22で重ね合わされた2つの2回回折光Lc1,Lc2が、互いに逆方向の円偏光に変換される。
1/4波長板131を通過して偏光状態が変換された干渉光Ldは、ビームスプリッタ132aに入射する。ビームスプリッタ132aに入射した干渉光Ldは、ビームスプリッタ132aの反射率に応じて一部は反射し、残部はビームスプリッタ132aを透過してビームスプリッタ132bに入射する。
ビームスプリッタ132bに入射した干渉光Ldは、ビームスプリッタ132bの反射率に応じて一部は反射し、残部はビームスプリッタ132bを透過してビームスプリッタ132cに入射する。ビームスプリッタ132cに入射した干渉光Ldは、ビームスプリッタ132cの反射率に応じて一部は反射し、残部はビームスプリッタ132cを透過してビームスプリッタ132dに入射する。ビームスプリッタ132dに入射した干渉光Ldは全反射する。
ビームスプリッタ132aで反射した干渉光Ld1は、偏光子133aで本例では0°の偏光成分のみが透過して、受光素子134aに結像される。ビームスプリッタ132bで反射した干渉光Ld2は、偏光子133bで本例では45°の偏光成分のみが透過して、受光素子134bに結像される。ビームスプリッタ132cで反射した干渉光Ld3は、偏光子133cで本例では90°の偏光成分のみが透過して、受光素子134cに結像される。ビームスプリッタ132dで反射した干渉光Ld4は、偏光子133dで本例では135°の偏光成分のみが透過して、受光素子134dに結像される。
以上のような構成の光学式変位測定装置10Aでは、可動部分の移動に応じて回折格子11Tが格子ベクトル方向に移動することにより、2つの2回回折光Lc1,Lc2に位相差が生じる。光学式変位測定装置10Aでは、この2つの2回回折光Lc1,Lc2を干渉させて干渉信号を検出し、この干渉信号から2つの2回回折光Lc1,Lc2の位相差を求めて、回折格子11Tの移動位置を検出する。
すなわち、偏光ビームスプリッタ22で重ね合わせる2つの2回回折光Lc1,Lc2の強度をA1、A2、回折格子11Tの格子ベクトル方向への移動量をx、初期位相をδとすると、以下の(1)式のような干渉信号の強度Iが得られる。
I=A1 2+A2 2+2・A1・A2cos(4・K・x+δ)・・・(1)
K=2π/Λ(Λは格子ピッチ)
この干渉信号の強度Iは、回折格子11Tが格子ベクトル方向にΛ/4移動することにより1周期分変化する。δは、重ね合わせる2つの2回回折光Lc1,Lc2の光路長の差に依存する量である。
各偏光子133a,133b,133c,133dを透過した干渉光Ld1、Ld2、Ld3、Ld4の強度は、それぞれ以下の式(2)〜(5)で表される。
B+Acos(4・K・x+δ)・・・ (2)
B+Acos(4・K・x+90°+δ)・・・(3)
B+Acos(4・K・x+180°+δ)・・・(4)
B+Acos(4・K・x+270°+δ)・・・(5)
ここで、
B=1/4(A1 2+A2 2)、
A=1/2・A1・A2
である。
式(2)は、偏光子133aを透過した干渉光Ld1の強度を表し、式(3)は、偏光子133bを透過した干渉光Ld2の強度を表し、式(4)は、偏光子133cを透過した干渉光Ld3の強度を表し、式(5)は、偏光子133dを透過した干渉光Ld4の強度を表す。
各受光素子134a,134b,134c,134dでは、上述の式で表される強度の干渉光を光電変換して干渉信号を生成することとなる。
ここで、式(2)と式(4)とを減算すると、干渉信号の直流成分を除去することができる。また式(3)と式(5)とを減算すると、干渉信号の直流成分を除去することができる。また減算された信号は、互いに位相が90°異なるため、回折格子11Tの移動方向を検知するための信号を得ることができる。
図4及び図5は、回折格子の変位と光路の関係を示す動作説明図である。図4に示すように、回折格子11Tの格子ベクトル方向の一端が法線ベクトル方向の一方向(例えば、図4の矢印X3方向)に移動し、他端が法線ベクトル方向の他方向(例えば、図4の矢印X4方向)に移動して、格子面11aが傾いたとする。この場合、1回回折光Lb1と1回回折光Lb2の回折角が変化する。
図4では、反射光学系16での光路を例に示しており、格子面11aが傾いて1回回折光Lb1と1回回折光Lb2の回折角が変化すると、反射光学系16内を通過する際の各1回回折光Lb1,Lb2の光軸が変化する。例えば、各1回回折光Lb1,Lb2が、図4に破線で示すように、その光路が変化する。なお、反射光学系17でも同様の光路となる。
本発明の第1の実施の形態の光学式変位測定装置10Aでは、可干渉光源12が発光した可干渉光Laを、第1の結像素子21でコリメートして平行光を回折格子11Tの格子面11aに照射している。
また、第3の結像素子27の焦点位置付近に反射器26が配置され、第3の結像素子27が、1回回折光Lb1を反射器26に結像させて常に垂直に照射していると共に、反射器26で反射された1回回折光Lb1をコリメートして、平行光を回折格子11Tに照射している。
更に、図1に示すように、第3の結像素子27の回折格子11T側の焦点距離F1と、第3の結像素子27の反射器26側の焦点距離F2が略等しく構成されている。
同様に、第4の結像素子30の焦点位置付近に反射器29が配置され、第4の結像素子30が、1回回折光Lb2を反射器29に結像させて常に垂直に照射していると共に、反射器29で反射された1回回折光Lb2をコリメートして、平行光を回折格子11Tに照射している。
また、図1に示すように、第4の結像素子30の回折格子11T側の焦点距離F3と、第4の結像素子30の反射器29側の焦点距離F4が略等しく構成されている。
このため、反射器26または反射器29により反射された各1回回折光Lb1,Lb2は、回折格子11Tが傾いて光軸がずれた場合であっても、必ず、入射したときと同じ光路を戻り回折格子11Tの格子面11a上の同一の入射点に入射する。従って、光学式変位測定装置10Aでは、1回回折光Lb1,Lb2により生じる2回回折光Lc1,Lc2が、回折格子11Tが傾いた場合であっても常に同一の光路を通過することとなる。また、光路長の変化もない。
一方、図5に示すように、回折格子11Tが、Z方向に平行にシフトした場合でも、2回回折光Lc1,Lc2は平行光で、可干渉光La1と2回回折光Lc1及び可干渉光La2とLc2が、略平行な光路を保つ。また。光路長の変化もない。
これにより、本発明の第1の実施の形態の光学式変位測定装置10Aでは、2つの2回回折光Lc1,Lc2が互いにずれることなく偏光ビームスプリッタ22で重なり合わされる。そのため、回折格子11Tが、格子ベクトルに平行な方向以外に移動等した場合、例えば、図4に示すように回折格子11Tが傾いたり、図示しないが回折格子11Tにうねり等があった場合であっても、受光素子134a,134b,134c,134dが検出する干渉信号が低下しない。
また、図5に示すように、回折格子11TがZ方向に平行にシフトした場合でも、受光素子134a,134b,134c,134dが検出する干渉信号が低下しない。従って、第1の実施の形態の光学式変位測定装置10Aでは、移動する可動部分の移動位置を、高分解能かつ高精度に検出することができる。また、光学式変位測定装置10Aでは、工作機械等の可動部分への取り付け位置の自由度が増し、また、この可動部分に振動やぶれ等があっても安定して位置検出できる。
更に、光学式変位測定装置10Aでは、2回回折光Lc1,Lc2を偏光ビームスプリッタ22で重ね合わせた干渉光Ldを、第2の結像素子25を用いて受光面に結像させれば、受光面におけるビームのケラレが生じない。
なお、一列に配置されたビームスプリッタ132a,132b,132c,132dで干渉光Ldを4分割する構成では、第2の結像素子25と各ビームスプリッタとの距離の違いに応じて、各ビームスプリッタから第2の結像素子25の焦点位置までの距離が異なる。
このため、ビームスプリッタ132a,132b,132c,132dで4分割された干渉光Ld1,Ld2,Ld3,Ld4を受光素子134a,134b,134c,134dに結合させる構成では、各受光素子の受光面位置を、各ビームスプリッタから第2の結像素子25の焦点位置までの距離に合わせてずらして配置する。これにより、各受光素子134a,134b,134c,134dの受光面でビームのケラレが生じないようにすることができる。
また、光学式変位測定装置10Aでは、可干渉光La1及び2回回折光Lc1と、可干渉光La2及び2回回折光Lc2との光路長を等しくし、1回回折光Lb1と1回回折光Lb2との光路長を等しくすることにより、波長の変動に起因する測定誤差を生じなくすることができる。
このため、光学式変位測定装置10Aでは、各光路長の調整を行うために、光路長の差を干渉縞の変調率の変化として検出することが可能な可干渉性を有する可干渉光を発光する可干渉光源12を用いても良い。例えば、可干渉距離が数百μm程度の短いマルチモードの半導体レーザを可干渉光源12に用いれば、干渉縞の変調率が最大となるように偏光ビームスプリッタ22の位置を調整することにより、各光路長の差を数10μm以下に抑えることができる。
また、光学式変位測定装置10Aでは、可干渉光の分割及び2回回折光の干渉に偏光ビームスプリッタ22を用いることにより、回折格子11Tの透過率、反射率、回折効率等の影響による直流変動を、検出する干渉信号から除去することができ、移動する可動部分の移動位置を、高分解能かつ高精度に検出することができる。
<第2の実施の形態の光学式変位測定装置の構成例>
図6は、本発明の第2の実施の形態の光学式変位測定装置の一例を示す構成図である。なお、第2の実施の形態の光学式変位測定装置を説明するにあたり、上述した第1の実施の形態の光学式変位測定装置10Aと同一の構成要素については、図面中に同一の符号を付けて、その詳細な説明を省略する。また、第3の実施の形態以降についても、それまでの実施の形態と同一の構成要素については、図面中に同一の符号を付けて、その詳細な説明を省略する。
本発明の第2の実施の形態の光学式変位測定装置10Bは、反射型の回折格子11Rを備えると共に、第1の結像素子21と偏光ビームスプリッタ22との間に第1の非点光学素子51を備え、偏光ビームスプリッタ22と第2の結像素子25との間に第2の非点光学素子52を備える。
第1の非点光学素子51は、第1の結像素子21でコリメートされた可干渉光Laを、断面の一の方向は集光し、他の方向は非集光で透過させて、偏光ビームスプリッタ22で分割された可干渉光La1,La2を、回折格子11Rの格子面11aに結像させる。
第2の非点光学素子52は、格子面11aに結像され、回折格子11Rで回折されて、所定の角度で広がる2つの2回回折光Lc1,Lc2が偏光ビームスプリッタ22で重ねられた干渉光Ldを、断面の一の方向は集光し、他の方向は非集光で透過させてコリメートする。
図7は、非点光学素子の一例を示す斜視図である。第1の非点光学素子51及び第2の非点光学素子52は、例えば、図7(a)に示すようにシリンドリカルレンズである。また、図7(b)に示すフレネルレンズであっても良いし、図7(c)に示すホログラムレンズであっても良い。
図8は、第2の実施の形態の光学式変位測定装置における回折格子面での像形状の一例を示す説明図である。第1の非点光学素子51で可干渉光La1,La2を結像する方向は、図8(a)に示すように、回折格子11Rの格子ベクトルD1、D2方向の軸に対して直交する方向に結像させても良い。また、第1の非点光学素子51を可干渉光Laの光軸を軸にして回転させることで、図8(b)に示すように、回折格子11Rの格子ベクトルD1、D2方向の軸に対して平行に結像させても良いし、図8(c)に示すように、任意の角度を持たせても良い。
次に、本発明の第2の実施の形態の光学式変位測定装置10Bの作用効果について説明する。ここで、回折格子11Rに照射される可干渉光La1,La2において、第1の非点光学素子51で結像されない方向に関しては平行光である。平行光を回折格子11Rに照射した場合の作用効果は、上述した第1の実施の形態の光学式変位測定装置10Aでの説明と同じため、ここでの説明は省略する。
照射受光光学系15では、第1の非点光学素子51の焦点距離を、反射光学系16の第3の結像素子27及び反射光学系17の第4の結像素子30の焦点距離と一致させ、第1の非点光学素子51の焦点位置付近に回折格子11Rが配置される。
回折格子11Rに照射される可干渉光La1,La2において、第1の非点光学素子51で結像する方向のビーム形状は、回折格子11Rの格子面11a上で、楕円の像になる。そして、回折格子11Rで回折されて1回回折光Lb1、Lb2が生じる。
1回回折光Lb1の光路を形成する反射光学系16では、回折格子11Rが第3の結像素子27の一方の焦点位置付近に配置され、反射器26が第3の結像素子27の他方の焦点位置付近に配置される。
1回回折光Lb2の光路を形成する反射光学系17では、回折格子11Rが第4の結像素子30の一方の焦点位置付近に配置され、反射器29が第4の結像素子30の他方の焦点位置付近に配置される。
これにより、回折格子11Rで回折された1回回折光Lb1,Lb2は、第3の結像素子27及び第4の結像素子30によってコリメートされたビームとなり、反射器26、29に入射される。
このとき、反射器26、29の反射面上でのビーム形状は、回折格子11Rの格子面11a上に結像された像に対し、直交した楕円の像となる。反射器26,29によって反射された1回回折光Lb1、Lb2は、再び第3の結像素子27及び第4の結像素子30を通過し、回折格子11Rに結像されて、回折格子11Rによって2回回折光Lc1、Lc2を生じる。このときの回折格子11Rの格子面11a上でのビームの像は、可干渉光La1,La2の照射によるビームの像と略同じになる。
回折格子11Rで回折された2回回折光Lc1、Lc2は、偏光ビームスプリッタ22によって重ね合わされ、干渉する。2つの2回回折光Lc1、Lc2が干渉した干渉光Ldは、第2の非点光学素子52によってコリメートされたビームとなり、第2の結像素子25で集光されて、受光素子134a,134b,134c,134dの受光面上に結像される。
以上のような構成の第2の実施の形態の光学式変位測定装置10Bでも、可動部分の移動に応じて回折格子11Rが格子ベクトル方向に移動することにより、2つの2回回折光Lc1、Lc2に位相差が生じる。光学式変位測定装置10Bでは、2つの2回回折光Lc1、Lc2を干渉させて干渉信号を検出し、この干渉信号から2つの2回回折光Lc1、Lc2の位相差を求めて、回折格子11Rの移動距離を検出する。
本発明の第2の実施の形態の光学式変位測定装置10Bでは、第1の実施の形態の光学式変位測定装置10Aと同様に、回折格子11Rが、格子ベクトルに平行な方向以外に移動等した場合、例えば、回折格子11Rが傾いたり、回折格子11Rにうねり等があった場合であっても、受光素子が検出する干渉信号が低下しない。
また、回折格子11Rが、Z方向に平行にシフトした場合でも、受光素子が検出する干渉信号が低下しない。従って、光学式変位測定装置10Bでも、移動する可動部分の移動位置を、高分解能かつ高精度に検出することができる。また、光学式変位測定装置10Bでも、工作機械等の稼動部分への取り付け位置の自由度が増し、また、この可動部分に振動やぶれ等があっても、安定して位置検出ができる。
更に、回折格子11Rの格子面11a上のビーム径を特定方向のみに絞ることができ、例えば、回折格子11Rの測定方向である格子ベクトルD1、D2に対して平行な楕円形状のビームにすることで、回折格子11R上の異物による干渉信号低下の影響を少なくしつつも、回折格子11Rの幅を狭くすることができる。これにより、測定対象として可動部に取り付けられる回折格子のコスト削減や、質量削減が達成できる。
なお、本発明の第2の実施の形態では、反射型の回折格子11Rを適用した光学式変位測定装置10Bに非点光学素子を備える構成としたが、透過型の回折格子11Tを適用した光学式変位測定装置に非点光学素子を備える構成としても良い。
<第3の実施の形態の光学式変位測定装置の構成例>
図9は、本発明の第3の実施の形態の光学式変位測定装置の一例を示す構成図、図10は、第3の実施の形態の光学式変位測定装置の一例を示す模式的な斜視図である。
本発明の第3の実施の形態の光学式変位測定装置10Cは、反射型の回折格子11Rを備え、工作機械等の可動部分の位置検出を行う装置である。また、光学式変位測定装置10Cは、格子面11aに垂直な方向以外の方向から、回折格子11Rに対して可干渉光が照射されるようにする。
ここで、回折格子11Rの格子面11a上の格子ベクトル方向に平行な1つの仮想的な直線を直線nとする。また、直線nを含み法線ベクトルに平行な仮想的な面を、基準面m1とする。また、直線nを含み基準面m1とのなす角がγとなっている仮想的な面を、傾斜面m2とする。また、直線nを含み基準面m1とのなす角がδとなっている仮想的な面を、傾斜面m3とする。また、傾斜面m2と傾斜面m3は、回折格子11Rの格子面11aに対し、同一面側にあるものとする。
図11は、傾斜面m2上に配置された構成要素を傾斜面m2に対して垂直な方向から見た側面図である。図12は、傾斜面m3上に配置された構成要素を傾斜面m3に対して垂直な方向から見た側面図である。図13は、回折格子に入射される可干渉光及び回折格子により回折される回折光を格子ベクトル方向から見た正面図である。
第3の実施の形態の光学式変位測定装置10Cは、傾斜面m2に可干渉光源12と受光部13と照射受光光学系15が配置される。また、光学式変位測定装置10Cは、傾斜面m3に反射光学系16と反射光学系17が配置される。
照射受光光学系15は、第1の結像素子21と、偏光ビームスプリッタ22と、反射器23,24と、第2の結像素子25を備える。照射受光光学系15は、可干渉光源12から出射された可干渉光La、可干渉光Laを偏光ビームスプリッタ22で分割した可干渉光La1,La2の光路、及び回折格子11Rで回折された2回回折光Lc1,Lc2の光路が、傾斜面m2上に形成されるように、各要素が配置される。これにより、可干渉光La1,La2、及び2回回折光Lc1,Lc2は、図13に示すように、格子ベクトル方向から見た入射角及び回折角がγとなっている。
反射光学系16は、反射器26と第3の結像素子27と1/4波長板28を備え、回折格子11Rが第3の結像素子27の一方の焦点位置付近に配置される。また、反射器26が第3の結像素子27の他方の焦点位置付近に配置される。本例では、第3の結像素子27の回折格子11R側の焦点距離F1と、第3の結像素子27の反射器26側の焦点距離F2が略等しく構成される。
反射光学系17は、反射器29と第4の結像素子30と1/4波長板31を備え、回折格子11Rが第4の結像素子30の一方の焦点位置付近に配置される。また、反射器29が第4の結像素子30の他方の焦点位置付近に配置される。本例では、第4の結像素子30の回折格子11R側の焦点距離F3と、第4の結像素子30の反射器29側の焦点距離F4が略等しく構成され、かつ、第3の結像素子27の焦点距離と第4の結像素子30の焦点距離が等しく構成される。
反射光学系16は、回折格子11Rで回折され、反射器26で反射されて往復する1回回折光Lb1の光路が傾斜面m3上に形成されるように、各要素が配置される。反射光学系17は、回折格子11Rで回折され、反射器29で反射されて往復する1回回折光Lb2の光路が傾斜面m3上に形成されるように、各要素が配置される。これにより、1回回折光Lb1,Lb2は、図13に示すように、格子ベクトル方向から見た回折角及び入射角がδとなっている。
受光部13は、1/4波長板131と、ビームスプリッタ132a,132b,132c,132dと、偏光子133a,133b,133c,133dと、受光素子134a,134b,134c,134dを備える。受光部13としてこれら要素を備える構成では、2回回折光Lc1,Lc2が偏光ビームスプリッタ22で重ねられた干渉光Ldの光路が傾斜面m2上に形成されるので、この光路上に、少なくとも、1/4波長板131と、ビームスプリッタ132a,132b,132c,132dが配置される。
次に、第3の実施の形態の光学式変位測定装置10Cの作用効果について説明する。可干渉光源12から出射された可干渉光Laは、第1の結像素子21でコリメートされ、偏光ビームスプリッタ22に入射される。
偏光ビームスプリッタ22は、入射された可干渉光Laを偏光方向の異なる2つの可干渉光La1,La2に分割する。偏光ビームスプリッタ22で反射した可干渉光La1はS偏光の光で、偏光ビームスプリッタ22を透過した可干渉光La2はP偏光の光である。
反射器23は、偏光ビームスプリッタ22で反射した可干渉光La1を反射して、回折格子11Rの格子面11aの所定の位置に照射する。反射器24は、偏光ビームスプリッタ22を透過した可干渉光La2を反射して、回折格子11Rの格子面11aの所定の位置に照射する。
反射器23及び反射器24は、傾斜面m2上における入射角がαとなるように、可干渉光La1及び可干渉光La2を、格子面11a上の所定の位置に照射している。なお、反射器23及び反射器24は、その反射面が、互いが向き合うように配置されている。そのため、可干渉光La1と可干渉光La2とは、格子ベクトル方向の入射方向が、互いに逆方向となっている。
可干渉光La1は、回折格子11Rに照射されることで回折し、1回回折光Lb1が生じる。可干渉光La2は、回折格子11Rに照射されることで回折し、1回回折光Lb2が生じる。
1回回折光Lb1と1回回折光Lb2の回折角は、格子ベクトル方向からみた場合、図13に示すように、δとなっている。すなわち、傾斜面m3に沿って1回回折光Lb1,Lb2が生じる。また、1回回折光Lb1と1回回折光Lb2の傾斜面m3上における回折角は、図12に示すように、βとなっている。なお、1回回折光Lb1と1回回折光Lb2とは、格子ベクトル方向における出射方向が互いに逆方向となっている。
反射光学系16,17は、上述したように2つの1回回折光Lb1,Lb2の格子ベクトル方向から見た回折角がδとなっているため、通過する1回回折光Lb1,Lb2の光路が傾斜面m3上に形成されるように、各要素が配置されている。また、反射光学系16,17の反射器26と反射器29とは、傾斜面m3上における回折角βで回折された1回回折光Lb1,Lb2を垂直に反射可能な角度に配置されている。
1回回折光Lb1は、反射器26が第3の結像素子27の焦点位置に配置されていることで、第3の結像素子27で反射器26に結像される。また、反射器26で反射された1回回折光Lb1は、第3の結像素子27でコリメートされて、回折格子11Rに照射される。
1回回折光Lb2は、反射器29が第4の結像素子30の焦点位置に配置されていることで、第4の結像素子30で反射器29に結像される。また、反射器29で反射された1回回折光Lb2は、第4の結像素子30でコリメートされて、回折格子11Rに照射される。
1回回折光Lb1は、反射器26で反射されることで、1/4波長板28を2回通過して回折格子11Rに照射される。そのため、S偏光の光であった1回回折光Lb1がP偏光の光に変換されて、回折格子11Rに照射される。
また、1回回折光Lb2は、反射器29で反射されることで、1/4波長板31を2回通過して回折格子11Rに照射される。そのため、P偏光の光であった1回回折光Lb2がS偏光の光に変換されて、回折格子11Rに照射される。
このように、反射光学系16,17から、1回回折光Lb1,Lb2が回折格子11Rに照射される。1回回折光Lb1,Lb2の格子ベクトルから見た入射角は、この1回回折光Lb1,Lb2の回折角と同じく、図13に示すようにδとなる。また、傾斜面m3上における入射角は、同様に回折角と同じく、図12に示すようにβとなる。
1回回折光Lb1,Lb2が回折格子11Rに照射されると、2回回折光Lc1,Lc2が生じる。この2回回折光Lc1,Lc2の格子ベクトル方向から見た回折角は、可干渉光La1,La2の入射角と同じく、図13に示すようにγとなる。また、傾斜面m2上の回折角は、同様に可干渉光La1,La2の入射角と同じく、図12に示すようにαとなる。
従って、2回回折光Lc1は、反射器23で反射され、可干渉光La1と同じ光路を戻って偏光ビームスプリッタ22に入射する。また、2回回折光Lc2は、反射器24で反射され、可干渉光La2と同じ光路を戻って偏光ビームスプリッタ22に入射する。
偏光ビームスプリッタ22に入射した2回回折光Lc1はP偏光の光で、偏光ビームスプリッタ22を透過する。また、偏光ビームスプリッタ22に入射した2回回折光Lc2はS偏光の光で、偏光ビームスプリッタ22で反射する。
従って、偏光ビームスプリッタ22に入射した2つの2回回折光Lc1,Lc2は、偏光ビームスプリッタ22により重ね合わされて干渉する。2つの2回回折光Lc1,Lc2を干渉させた干渉光Ldは、第2の結像素子25を通過して集光され、受光部13に入射する。
以上のような構成の光学式変位測定装置10Cでは、可動部分の移動に応じて回折格子11Rが格子ベクトル方向に移動することにより、2つの2回回折光Lc1,Lc2に位相差が生じる。光学式変位測定装置10Cでは、この2つの2回回折光Lc1,Lc2を干渉させて干渉信号を検出し、この干渉信号から2つの2回回折光Lc1,Lc2の位相差を求めて、回折格子11Rの移動位置を検出する。
本発明の第3の実施の形態の光学式変位測定装置10Cでは、基準面m1に対して、所定の傾斜角をもった傾斜面m2上に照射受光光学系15を配置し、傾斜面m3上に反射光学系16,17を配置することにより、可干渉光と回折光とが形成する光路を分離することができ、装置の設計の自由度が増す。また、回折格子11Rの格子面11aからの0次回折光や反射光を、照射受光光学系15や反射光学系16,17に混入させることなく、1回回折光Lb1,Lb2を干渉させることができ、高精度に位置測定をすることができる。
光学式変位測定装置10Cにおいて、0次回折光や反射光を照射受光光学系15や反射光学系16,17に混入させないための条件は、以下の通りである。
角度γと角度δが0では無く且つ角度αと角度βとが等しい場合には、0次回折光が受光素子に照射されない程度に入射点間の距離を離して、可干渉光La1と可干渉光La2とを回折格子11Rに照射しても良い。
また、角度γと角度δが共に0である場合には、角度αと角度βとを等しくすると光路が重なるので、角度αと角度βとを必ず異ならせる。また、この場合、0次回折光が受光素子に照射されない程度に入射点間の距離を離して、可干渉光La1と可干渉光La2とを回折格子11Rに照射する。
一方、角度γと角度δが0では無く且つ0次回折光が受光素子に照射されない程度に入射角αと回折角βとが異なる場合には、可干渉光La1の入射点と可干渉光La2の入射点とを回折格子11Rの格子面11a上で同一の位置にできる。この場合、可干渉光La1と可干渉光La2との入射点を所定距離離した場合に比べて、回折格子11Rの厚みや屈折率のむらによる影響が少なくなる。すなわち、回折格子11Rの厚みや屈折率のむらの影響による1回回折光Lb1と1回回折光Lb2との間、或いは2回回折光Lc1と2回回折光Lc2との間の光路長に差が生じず、より高精度に位置測定をすることができる。
<第4の実施の形態の光学式変位測定装置の構成例>
図14は、第4の実施の形態の光学式変位測定装置の一例を示す模式的な斜視図である。第4の実施の形態の光学式変位測定装置10Dは、透過型の回折格子11Tを備え、格子面11aに垂直な方向以外の方向から、回折格子11Tに対して可干渉光が照射されるようにする。
ここで、回折格子11Tの格子面11a上の格子ベクトル方向に平行な1つの仮想的な直線を直線nとする。また、直線nを含み法線ベクトルに平行な仮想的な面を、基準面m1とする。また、直線nを含み基準面m1とのなす角がγとなっている仮想的な面を、傾斜面m2とする。また、直線nを含み基準面m1とのなす角がδとなっている仮想的な面を、傾斜面m3′とする。傾斜面m3′は、傾斜面m2に対して回折格子11Tの格子面11aを挟んで反対側の面にある。
図15は、傾斜面m2及び傾斜面m3′上に配置された構成要素を傾斜面m2及び傾斜面m3′に対して垂直な方向から見た側面図である。図16は、回折格子に入射される可干渉光及び回折格子により回折される回折光を格子ベクトル方向から見た正面図である。
第4の実施の形態の光学式変位測定装置10Dは、傾斜面m2に可干渉光源12と受光部13と照射受光光学系15が配置される。また、光学式変位測定装置10Dは、傾斜面m3′に反射光学系16と反射光学系17が配置される。
照射受光光学系15は、第1の結像素子21と、偏光ビームスプリッタ22と、反射器23,24と、第2の結像素子25を備える。照射受光光学系15は、可干渉光源12から出射された可干渉光La、可干渉光Laを偏光ビームスプリッタ22で分割した可干渉光La1,La2の光路、及び回折格子11Tで回折された2回回折光Lc1,Lc2の光路が、傾斜面m2上に形成されるように、各要素が配置される。これにより、可干渉光La1,La2、及び2回回折光Lc1,Lc2は、図16に示すように、格子ベクトル方向から見た入射角及び回折角がγとなっている。
反射光学系16は、反射器26と第3の結像素子27と1/4波長板28を備え、回折格子11Tが第3の結像素子27の一方の焦点位置付近に配置される。また、反射器26が第3の結像素子27の他方の焦点位置付近に配置される。本例では、第3の結像素子27の回折格子11T側の焦点距離F1と、第3の結像素子27の反射器26側の焦点距離F2が略等しく構成される。
反射光学系17は、反射器29と第4の結像素子30と1/4波長板31を備え、回折格子11Tが第4の結像素子30の一方の焦点位置付近に配置される。また、反射器29が第4の結像素子30の他方の焦点位置付近に配置される。本例では、第4の結像素子30の回折格子11T側の焦点距離F3と、第4の結像素子30の反射器29側の焦点距離F4が略等しく構成され、かつ、第3の結像素子27の焦点距離と第4の結像素子30の焦点距離が等しく構成される。
反射光学系16は、回折格子11Tで回折され、反射器26で反射されて往復する1回回折光Lb1の光路が傾斜面m3′上に形成されるように、各要素が配置される。反射光学系17は、回折格子11Tで回折され、反射器29で反射されて往復する1回回折光Lb2の光路が傾斜面m3′上に形成されるように、各要素が配置される。これにより、1回回折光Lb1,Lb2は、図16に示すように、格子ベクトル方向から見た回折角及び入射角がδとなっている。
受光部13は、1/4波長板131と、ビームスプリッタ132a,132b,132c,132dと、偏光子133a,133b,133c,133dと、受光素子134a,134b,134c,134dを備える。受光部13としてこれら要素を備える構成では、2回回折光Lc1,Lc2が偏光ビームスプリッタ22で重ねられた干渉光Ldの光路が傾斜面m2上に形成されるので、この光路上に、少なくとも、1/4波長板131と、ビームスプリッタ132a,132b,132c,132dが配置される。
次に、第4の実施の形態の光学式変位測定装置10Dの作用効果について説明する。可干渉光源12から出射された可干渉光Laは、第1の結像素子21でコリメートされ、偏光ビームスプリッタ22に入射される。
偏光ビームスプリッタ22は、入射された可干渉光Laを偏光方向の異なる2つの可干渉光La1,La2に分割する。偏光ビームスプリッタ22で反射した可干渉光La1はS偏光の光で、偏光ビームスプリッタ22を透過した可干渉光La2はP偏光の光である。
反射器23は、偏光ビームスプリッタ22で反射した可干渉光La1を反射して、回折格子11Tの格子面11aの所定の位置に照射する。反射器24は、偏光ビームスプリッタ22を透過した可干渉光La2を反射して、回折格子11Tの格子面11aの所定の位置に照射する。
反射器23及び反射器24は、傾斜面m2上における入射角が、図15に示すようにαとなるように、可干渉光La1及び可干渉光La2を、格子面11a上の所定の位置に照射している。なお、反射器23及び反射器24は、その反射面が、互いが向き合うように配置されている。そのため、可干渉光La1と可干渉光La2とは、格子ベクトル方向の入射方向が、互いに逆方向となっている。
可干渉光La1は、回折格子11Tに照射されることで回折し、1回回折光Lb1が生じる。可干渉光La2は、回折格子11Tに照射されることで回折し、1回回折光Lb2が生じる。
1回回折光Lb1と1回回折光Lb2の回折角は、格子ベクトル方向からみた場合、図16に示すように、δとなっている。すなわち、傾斜面m3′に沿って1回回折光Lb1,Lb2が生じる。また、1回回折光Lb1と1回回折光Lb2の傾斜面m3′上における回折角は、図15に示すように、βとなっている。なお、1回回折光Lb1と1回回折光Lb2とは、格子ベクトル方向における出射方向が互いに逆方向となっている。
反射光学系16,17は、上述したように2つの1回回折光Lb1,Lb2の格子ベクトル方向から見た回折角がδとなっているため、通過する1回回折光Lb1,Lb2の光路が傾斜面m3上に形成されるように、各要素が配置されている。また、反射光学系16,17の反射器26と反射器29とは、傾斜面m3′上における回折角βで回折された1回回折光Lb1,Lb2を垂直に反射可能な角度に配置されている。
1回回折光Lb1は、反射器26が第3の結像素子27の焦点位置に配置されていることで、第3の結像素子27で反射器26に結像される。また、反射器26で反射された1回回折光Lb1は、第3の結像素子27でコリメートされて、回折格子11Tに照射される。
1回回折光Lb2は、反射器29が第4の結像素子30の焦点位置に配置されていることで、第4の結像素子30で反射器29に結像される。また、反射器29で反射された1回回折光Lb2は、第4の結像素子30でコリメートされて、回折格子11Tに照射される。
1回回折光Lb1は、反射器26で反射されることで、1/4波長板28を2回通過して回折格子11Tに照射される。そのため、S偏光の光であった1回回折光Lb1がP偏光の光に変換されて、回折格子11Tに照射される。
また、1回回折光Lb2は、反射器29で反射されることで、1/4波長板31を2回通過して回折格子11Tに照射される。そのため、P偏光の光であった1回回折光Lb2がS偏光の光に変換されて、回折格子11Tに照射される。
このように、反射光学系16,17から、1回回折光Lb1,Lb2が回折格子11Tに照射される。1回回折光Lb1,Lb2の格子ベクトルから見た入射角は、この1回回折光Lb1,Lb2の回折角と同じく、図16に示すようにδとなる。また、傾斜面m3′上における入射角は、同様に回折角と同じく、図15に示すようにβとなる。
1回回折光Lb1,Lb2が回折格子11Tに照射されると、2回回折光Lc1,Lc2が生じる。この2回回折光Lc1,Lc2の格子ベクトル方向から見た回折角は、可干渉光La1,La2の入射角と同じく、図16に示すようにγとなる。また、傾斜面m2上の回折角は、同様に可干渉光La1,La2の入射角と同じく、図15に示すようにαとなる。
従って、2回回折光Lc1は、反射器23で反射され、可干渉光La1と同じ光路を戻って偏光ビームスプリッタ22に入射する。また、2回回折光Lc2は、反射器24で反射され、可干渉光La2と同じ光路を戻って偏光ビームスプリッタ22に入射する。
偏光ビームスプリッタ22に入射した2回回折光Lc1はP偏光の光で、偏光ビームスプリッタ22を透過する。また、偏光ビームスプリッタ22に入射した2回回折光Lc2はS偏光の光で、偏光ビームスプリッタ22で反射する。
従って、偏光ビームスプリッタ22に入射した2つの2回回折光Lc1,Lc2は、偏光ビームスプリッタ22により重ね合わされて干渉する。2つの2回回折光Lc1,Lc2を干渉させた干渉光Ldは、第2の結像素子25を通過して集光され、受光部13に入射する。
以上のような構成の光学式変位測定装置10Dでは、可動部分の移動に応じて回折格子11Tが格子ベクトル方向に移動することにより、2つの2回回折光Lc1,Lc2に位相差が生じる。光学式変位測定装置10Dでは、この2つの2回回折光Lc1,Lc2を干渉させて干渉信号を検出し、この干渉信号から2つの2回回折光Lc1,Lc2の位相差を求めて、回折格子11Tの移動位置を検出する。
本発明の第4の実施の形態の光学式変位測定装置10Dでは、基準面m1に対して、所定の傾斜角をもった傾斜面m2上に照射受光光学系15を配置し、傾斜面m3′上に反射光学系16,17を配置することにより、可干渉光と回折光とが形成する光路を分離することができ、装置の設計の自由度が増す。また、回折格子11Tの格子面11aからの0次回折光や反射光を、照射受光光学系15や反射光学系16,17に混入させることなく、1回回折光Lb1,Lb2を干渉させることができ、高精度に位置測定をすることができる。
光学式変位測定装置10Dにおいて、0次回折光や反射光を照射受光光学系15や反射光学系16,17に混入させないための条件は、以下の通りである。
角度γと角度δが0では無く且つ角度αと角度βとが等しい場合には、0次回折光が受光素子に照射されない程度に入射点間の距離を離して、可干渉光La1と可干渉光La2とを回折格子11Tに照射しても良い。
また、角度γと角度δが共に0である場合には、角度αと角度βとを等しくしても良いし、角度αと角度βとを異ならせても良い。α=βの場合もα≠βの場合も共に、0次回折光が受光素子に照射されない程度に入射点間の距離を離して、可干渉光La1と可干渉光La2とを回折格子11Tに照射する。
一方、角度γと角度δが0では無く且つ0次回折光が受光素子に照射されない程度に入射角αと回折角βとが異なる場合には、可干渉光La1の入射点と可干渉光La2の入射点とを回折格子11Tの格子面11a上で同一の位置にできる。この場合、可干渉光La1と可干渉光La2との入射点を所定距離離した場合に比べて、回折格子11Tの厚みや屈折率のむらによる影響が少なくなる。すなわち、回折格子11Tの厚みや屈折率のむらの影響による1回回折光Lb1と1回回折光Lb2との間、或いは2回回折光Lc1と2回回折光Lc2との間の光路長に差が生じず、より高精度に位置測定をすることができる。
以下具体的に、回折格子11(T,R)に厚みのむらがあった場合の影響について説明する。上述した(1)式で、δは、重ね合わせる2つの2回回折光Lc1,Lc2の光路長の差に依存する量である。従って、このδが変動すると、回折格子11(T,R)が移動していなくても干渉信号の強度Iが変動し、誤差要因となる。
図17は、回折格子を通過する光の光路長を示す説明図、図18は、厚みにむらがある回折格子を通過する2本の光の光路長の差を示す説明図である。
例えば、図17に示すような、ガラス11gの内部に格子11bが設けられた透過型の回折格子11Tに厚みのむらがある場合について考える。ガラス11gの屈折率をnとし、レーザ光Lxがガラス11gの一方の表面から他方の表面まで通過する距離をLとすると、レーザ光Lxが回折格子11Tを通過したときの光路長はnLとなる。
空気の屈折率はほぼ1であることから、レーザ光Lxが回折格子11Tを通過する際の光路長は、レーザ光Lxが空気中を同距離通過したときと比較して、(n−1)Lだけ長くなる。
従って、回折格子11Tのガラス11gの厚さが変化して、レーザ光Lxがガラス11gの一方の表面から他方の表面まで通過する距離がL+ΔL変化したとすると、光路長は(n−1)ΔLだけ変化することとなる。また、特に2回回折をする場合には、ガラス層を2回通過するため、光路長は倍の2(n−1)ΔLだけ変化することになる。
このことを踏まえ、例えば、図18に示すように、一方のレーザ光Lx1は回折格子11Tの厚みのむらがない位置を透過し、他方のレーザ光Lx2は回折格子1Tの厚みのむらがある位置を透過する2本のレーザ光について考える。
レーザ光Lx2の厚みのむらを通過する長さを+ΔLとすると、2つのレーザ光Lx1,Lx2の光路長の差は、(n−1)ΔLとなる。従って、上述した(1)式で示したδが{(n−1)ΔL}・2π/λ(λは、レーザ光の波長)だけ変化してしまう。
2回回折をする場合には、δが{2(n−1)ΔL}・2π/λとなり、位置検出の誤差量は(Λ/2λ)(n−1)ΔLとなる。例えば、Λ=0.55μm、λ=0.78μm、n=1.5、ΔL=1μmとすれば、約0.18μmとなる。従って、この誤差は、例えば、ナノメータオーダの位置検出を行う場合には、かなり大きい値となる。
なお、以上透過型の回折格子11Tを例にとって説明したが、反射型の回折格子11Rについてもガラスにより格子がカバーされているものであれば同様に誤差が生じ、また、ガラスにより格子がカバーされていないものであれば凹凸によるレーザ光の通過距離の変化がそのまま光路長の変化となり誤差が生じる。
このように、回折格子11(T,R)に厚みのむらがあった場合には、可干渉光La1と可干渉光La2との入射点を所定距離離していると誤差が生じる。
そのため、この光学式変位測定装置10C,10Dでは、基準面m1に対して所定の傾斜角をもった傾斜面m2上に照射受光光学系15を配置し、傾斜面m3または傾斜面m3′上に反射光学系16,17を配置する。そして、可干渉光La1と可干渉光La2とを回折格子11T,11R上の同一点に入射することにより、回折格子11T,11Rの厚みや屈折率のむらによる誤差をなくすることができ、更に高精度に位置検出をすることができる。
つまり、回折格子11T,11Rの厚みや屈折率のむらによる誤差は、可干渉光La1と可干渉光La2とが異なる位置を通過するために生じるものであり、同一点を通過する場合には生じないので、このように同一点に可干渉光La1と可干渉光La2とを入射すれば高精度に位置検出をすることができる。
また、例えば回折格子11T,11Rがガラス等でカバーされているものであるときは、2つの可干渉光La1,La2を、完全に同一の光路を通過させることは困難であるが、格子面11aのほぼ同じ位置に入射すれば、最も誤差を小さくすることができる。
可干渉光の入射角(及び2回回折光の回折角)α,γ、1回回折光の回折角(及び1回回折光の入射角)β,δの関係は、以下の(6)式、(7)式に示すようになる。
sinα+sinβ=mλ/d ・・・(6)
d:回折格子のピッチ
λ:光の波長
m:回折次数
sinY/sinδ=cosβ/cosα・・・(7)
従って、α=βの場合にはγ=δとなり、α≠βの場合にはγ≠δとなる。
<各実施の形態の光学式変位測定装置の変形例>
以上本発明を適用した第1〜第4の実施の形態の光学式変位測定装置について説明した。各実施の形態の光学式変位測定装置では、格子が所定の間隔で平行に設けられた回折格子11(T,R)を用いているが、本発明では、このような格子が平行に設けられた回折格子を用いなくても良い。
図19は、回折格子の変形例を示す構成図で、例えば、図19に示すように、放射状に格子が設けられた回折格子11Cを用いてもよい。このような放射状に格子が設けられた回折格子11Cを用いることにより、所謂ロータリーエンコーダーとして、回転移動をする工作機械の可動部分等の位置検出を行うことができる。また、本発明では、明暗を記録した振幅型の回折格子、屈折率変化や形状変化を記録した位相型の回折格子を用いても良く、その回折格子のタイプは限られない。
また、各実施の形態の光学式変位測定装置では、回折格子11(T,R)を工作機械等の可動部分に取り付けて、この回折格子11(T,R)が可動部分の移動に応じて移動する場合について説明したが、本発明では、照射受光光学系及び反射光学系と、回折格子11(T,R)とが相対的に移動すれば良い。例えば、本発明では、回折格子が固定されていて、照射受光光学系及び反射光学系が工作機械等の可動部分の移動に応じて移動しても良い。
また、各実施の形態の光学式変位測定装置に用いられているハーフミラーやビームスプリッタ及び結像素子等は、薄膜を用いた素子やレンズ等のみに限られず、例えば、回折光学素子を用いても良い。
図20は、各実施の形態の光学式変位測定装置の変形例を示す構成図である。上述したように、各実施の形態の光学式変位測定装置10A〜10Dでは、2回回折光Lc1,Lc2を偏光ビームスプリッタ22で重ね合わせた干渉光Ldを、第2の結像素子25を用いて受光面に結像させており、受光面におけるビームのケラレが生じない。
これにより、干渉光Ldを光ファイバ等に結合させることができ、受光部を光学式変位測定装置10A〜10Dから切り離すことが可能になる。
図20に示す変形例の光学式変位測定装置10A(1)は、第1の実施の形態の光学式変位測定装置10Aにおいて、受光素子134a,134b,134c,134dを、光ファイバ61で測定装置本体100に接続すると共に、可干渉光源12を、光ファイバ62で測定装置本体100に接続した構成である。
変形例の光学式変位測定装置10A(1)は、可干渉光源12と、受光素子134a,134b,134c,134dと、光学素子71等を有した光モジュール72を備える。光モジュール72は、可干渉光源12から出射された可干渉光Laを、レンズ等の光学素子71で光ファイバ62の端面に結像させて、可干渉光源12と光ファイバ62を光学的に結合する。
また、光モジュール72は、光ファイバ61から出射された干渉光Ld1,Ld2,Ld3,Ld4を、それぞれレンズ等の光学素子71で受光素子134a,134b,134c,134dの受光面に結像させて、受光素子134a,134b,134c,134dと光ファイバ61を光学的に結合する。
なお、一列に配置されたビームスプリッタ132a,132b,132c,132dで干渉光Ldを4分割する構成では、第2の結像素子25と各ビームスプリッタとの距離の違いに応じて、各ビームスプリッタから第2の結像素子25の焦点位置までの距離が異なる。
このため、ビームスプリッタ132a,132b,132c,132dで4分割された干渉光Ld1,Ld2,Ld3,Ld4を光ファイバ61に結合させる構成では、各光ファイバ61の端面位置を、各ビームスプリッタから第2の結像素子25の焦点位置までの距離に合わせてずらして配置する。これにより、各光ファイバ61の端面でビームのケラレが生じないようにすることができる。
変形例の光学式変位測定装置10A(1)では、工作機械等の可動部分に取り付けられる回折格子11Tと、干渉光Ldを得る各種光学要素を備えた測定装置本体100と、光電変換を行う光モジュール72を光ファイバで接続して分離することで、電気信号の処理を行う位置検出部等と光モジュール72を近接して実装することができる。
これにより、電気通信部を短くすることができ、更に高速な位置検出ができる。なお、他の実施の形態の光学式変位測定装置でも、可干渉光源と受光素子の双方、または一方を光ファイバで接続する構成とすることができる。
図21は、各実施の形態の光学式変位測定装置の他の変形例を示す構成図である。他の変形例の光学式変位測定装置10A(2)は、第1の実施の形態の光学式変位測定装置10Aにおいて、色消しレンズで構成された第1の結像素子21aを備えると共に、色消しレンズで構成された第3の結像素子27aと第4の結像素子30aを備える。
色消しレンズは色消し光学素子の一例で、色消しレンズは、例えば、分散の比較的小さいクラウンガラスで構成される凸レンズと、分散の大きいフリントガラスで構成される凹レンズを貼り合わせたものである。
第3の結像素子27aと第4の結像素子30aを色消しレンズで構成すれば、温度変化等による可干渉光源12での波長変動に対する焦点位置の変動を抑えることができる。また、第1の結像素子21aを色消しレンズで構成すれば、温度変化等による可干渉光の波長変動に対する焦点位置の変動を抑えることができる。なお、他の実施の形態の光学式変位測定装置でも、第1の結像素子と第3の結像素子及び第4の結像素子の双方、または一方を色消しレンズで構成することができる。
10A,10B,10C,10D・・・光学式変位測定装置、11T,11R・・・回折格子、12・・・可干渉光源、13・・・受光部、14・・・位置検出部、15・・・照射受光光学系、16,17・・・反射光学系、21・・・第1の結像素子、22・・・偏光ビームスプリッタ、23,24・・・反射器、25・・・第2の結像素子、26,29・・・反射器、27・・・第3の結像素子,30・・・第4の結像素子、29,31・・・1/4波長板