JP5093661B2 - 生体関連物質センシングのための基板及びこれを用いたタンパク、金属イオン等の回収方法もしくは検出方法 - Google Patents
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Description
このように、基板に固定化した機能性DNAは利用価値が高く今後発展が期待される系であるが、これまでDNAライブラリから得られた機能性DNAは、基板に固定化するための接着部位を合成化学的に修飾する必要があり、効率的なデバイス構築において一つの課題となっている。また、ターゲットの疎水性表面基板上への非特異吸着や、認識サイトの立体障害による認識効率の低下などの問題も解決すべき重要な課題となっている。そこで、本申請者は、センサーとなるDNAに直接合成化学的に接着部位を修飾するのではなく、DNAのモノマーである核酸塩基を修飾して二次元基板上に固定化・集積化することで、大量に作製可能で、かつセンサーとなるDNAを簡単に固定化でき、上記の問題も同時に克服できる生体関連物質センシング基板を開発することを目的とした。
すなわち、本発明は、基板上に、アデニン、ウラシル、シトシン、グアニンから選ばれる核酸塩基モノマーの1種あるいは複数種を基板に固定化できるように修飾した核酸塩基モノマーを、自己組織化単分子膜(SAM)として二次元基板表面上に集積化した生体関連物質センシングのための基板である。
また、本発明においては、基板の表面が金であり、修飾分子をチオールとすることができる。
さらに本発明では、修飾分子がスペーサ分子を介して核酸塩基モノマーと結合させることができる。
また、本発明は、核酸塩基モノマーがアデニン、ウラシル、シトシン、グアニンから選ばれる1種もしくは複数種を吸着させた基板を、アデニン、ウラシル、シトシン、グアニンから選ばれる1種もしくは複数種から構成される相補鎖DNAの溶液に浸漬し、相補鎖DNAを表面に集積した生体関連物質センシングのための基板である。
さらに本発明は、相補鎖DNAを表面に集積した生体関連物質センシングのための基板を、アデニン、ウラシル、シトシン、グアニンから選ばれる1種もしくは複数種を部分構造に持ち、さらにタンパクを認識できるDNAアプタマー構造を部分構造として併せ持つであるポリペプチド溶液に浸漬し、相補鎖DNAを表面に集積した生体関連物質センシングのための基板である。
また本発明は、これらの生体関連物質センシングのための基板を用いて、未知のDNA鎖を含む溶液に浸漬し、未知のDNA鎖を含む溶液中から特定のDNA鎖を取り出す操作を繰り返すことによる特定のDNA鎖の回収方法である。
基板表面上に核酸塩基モノマーを自己組織化単分子膜(SAM)として集積化することによって、相補的なDNAを認識すると期待できる。数多くの機能性DNAライブラリの中から、基板表面上に集積化された核酸塩基と相補的なシーケンスと、分子認識を行うシーケンスを併せ持つDNAを抽出するのと同時に基板上に結合することで、ワンステップでのDNAデバイス作製が可能となるばかりでなく、基板に固定化した機能性DNAは、認識サイト周囲の空間確保でき、ターゲットの認識を阻害しにくい環境を提供できる。本手法を用いれば、シーケンスが異なる機能性DNAが得られるたびに合成化学的な修飾を施す必要がなく、あらかじめ4種類の核酸塩基チオール誘導体を用意しておくことで、あらゆるタイプの機能性DNAの固定化が可能となることが期待できる。
本発明について実施例を用いてさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
DNA中で核酸塩基が糖鎖と結合している位置に置換スペーサー(R)を介して基板結合部位(R’)を導入する。図4に基板に固定化・集積化する核酸塩基誘導体の例を示す。
(U-1 (R = xylylene, R’= SAc)の合成)
<スキーム1>
α, α’-ジブロモキシレン(7.89 g, 0.03 mol)をTHF溶液(100 mL)に溶解し、系内を窒素置換した。そこに、アセチルチオ酢酸カリウム(1.14 g, 0.01 mol)を加えて室温下、一晩撹拌した。反応後、溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルムに溶解して不溶物をろ別し、ろ液をゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって精製し、目的物を得た。
収率85%
1H NMR (CDCl3): δ= 2.35(s, 3H, -C(=O)CH 3), 4.10(s, 2H, -CH 2-S), 4.46(s, 2H, -CH 2-Br), 7.26(d, 2H, J = 8.2, Ph), 7.32(d, J = 8.1, Ph).
1-1-2. U-1
ウラシル(0.39 g, 3.5 mmol)を脱水DMF(50mL)に溶解し、系内を窒素置換した。そこに、60%NaH(0.17 g, 0.42mmol)を加え、50度で一時間反応させた。その後、室温まで冷却し、α-ブロモ-α’-アセチルチオキシレン(1.00 g, 3.8 mmol)を加え、室温で5時間反応させた。反応後、溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルムに溶解して、GPCにより精製し、目的物を得た。
収率40%
1H NMR (CDCl3): δ= 2.35(s, 3H, -C(=O)CH 3), 4.10(s, 2H, -CH 2-S), 4.87(s, 2H, -CH 2-N), 5.68(d, 1H, J = 8.0, -CH=), 7.14(d, 1H, J = 7.9, -CH=), 7.22(d, 2H, d = 8.2, Ph), 7.31(d, 2H, J = 8.1, Ph).
(U-1の集積化)
金膜を蒸着したガラス基板をUV/O3クリーナーにてクリーニングし、U-1(0.58 mg, 2x10-6 mmol)のエタノール溶液(1x10-4M, 20 mL)中に浸漬した。その後、エタノールで洗浄し、窒素を噴きつけて乾燥させ基板U-1-Auを得た。X線光電子分光装置(XPS) により、C1s, N1s, S2pに帰属されるスペクトルが観察された。特に2pSに関して、161.7 eV, 163.0 eVに金-チオール(4f)結合特有の結合エネルギーが観察された。そこで、これらのスペクトルの強度の浸漬時間による依存性を調べたところ、およそ36時間でU-1の吸着量が飽和したので、測定には36時間浸漬した基板を用いた。
さらにこの基板について表面赤外フーリエスペクトル(FTIR-RAS)により表面解析を行ったところ、チオールの保護基であるアセチル基に由来するスペクトルが消失し、ウラシル骨格のカルボニル基に由来するスペクトルがxxcm-1に出現していることから、U-1が金表面上に固定化されたことを確認した(図5参照)。
(U-1-AuのDNA認識能)
核酸塩基チオールU-1を集積化した基板U-1-Auを用いて、表面プラズモン共鳴装置(SPR)によって、単一モノマー成分からなる各DNAのPBS buffer溶液(5x10-5 M)を240秒間流し、その後Bufferのみを流して基板への吸脱着を観察した。
(U-1-Auの基板上における交互積層構造の形成)
核酸塩基チオールU-1を集積化した基板U-1-Auを用いて、表面プラズモン共鳴装置(SPR)によって、アデニン成分からなるDNA(pA)のPBS buffer溶液(5x10-5 M)を240秒間流し、その後Bufferのみを流し、さらにウラシル成分からなるDNA(pU)のPBS buffer溶液(5x10-5 M)を240秒間流し、その後Bufferのみを流す操作を繰り返して、基板最表面に吸着した単一成分DNAに対する相補的な単一成分DNA基板の吸脱着を観察した。
(核酸塩基モノマー基板におけるDNAの認識)
(U-1-Au のDNA認識能)
SPRにより、基板上に集積化したウラシルチオール誘導体(U-1-Au)のDNA認識を検討した。用いたDNAは、各々単一の核酸塩基成分から構成されているポリアデニン(pA)、ポリウラシル(pU)、ポリシトシン(pC)、ポリグアニン(pG)の4種類である。図7の横軸の時間はDNA-Buffer溶液が基板を設置したフローセルに到達した時間を0とし、その240秒後にBuffer溶液のみに切り替えた(図中の点線)。
図7に示したように、基板U-1-Auに対して、相補的なpAをサンプル溶液として流したとき、Δθは他の3種類のDNAを流したときよりも非常に大きかった。また、Bufferのみに切り替えた後もpAのΔθはほとんど減少していないことから、基板U-1-Auは、4種類のDNAのうち、選択的にpAを認識し、吸着したことがわかった。また、pUおよびpGについては、流路に流す溶液をBufferのみに切り替えたところ、わずかな脱離が観察された。
(U-1-Auの基板への交互積層構造の形成)
基板上に集積化したウラシルチオール誘導体(U-1-Au)基板上での相補鎖DNAの交互吸着をSPRにより検討した。図9について、横軸はサンプル溶液およびバッファ溶液を流した時間を示しており、縦軸は表面プラズモン共鳴角の変化量を示している。なお、表面プラズモン共鳴角の変化量は基板への物質吸着量に相関している。また、両矢印で示した点線間にDNA溶液をフローした。両矢印で示していない時間はバッファ溶液のみをフローした。
初期の基板表面上ではウラシルが集積化されている状態である。そこに、pAの溶液をフローしたとき、先の結果と同様にΔθは大きく変化し、pAが吸着したことが確認された。しばらくバッファのみをフローした後、pUの溶液をフローすると、先の変化量よりも小さいもののΔθが増加してpUが吸着することがわかった。同様にpA, pU溶液を交互にフローすると、Δθの変化量は小さくなっていくものの、順々に、それぞれの単一成分DNAが吸着されていくことがわかった。
つまり、U-1-Au基板を用いた場合、図10に示すように、pAおよびpUを交互に積層することができ、この基板とそれぞれのDNA溶液を用意し、交互に浸漬すれば、必要に応じてpAもしくはpUを最表面に持たせることができると考えられる。
<スキーム2>
アデニン(0.39 g, 2.9 mmol)を脱水DMF(50mL)に溶解し、系内を窒素置換した。そこに、60%NaH(85 mg, 0.21mmol)を加え、50度で一時間反応させた。その後、室温まで冷却し、α-ブロモ-α’-アセチルチオキシレン(0.50 g, 1.9 mmol)を加え、室温で5時間反応させた。反応後、溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルムに溶解して、GPCにより精製し、目的物を得た。
収率55%
1H NMR (CDCl3): δ= 2.34(s, 3H, -C(=O)CH 3), 4.08(s, 2H, -CH 2-S), 5.34(s, 2H, -CH 2-N), 5.59(bs, 2H, -NH2), 7.22(d, 2H, J = 8.1, Ph), 7.27(d, 2H, J = 7.9, Ph), 7.76(s, 1H,-N-CH=N-), 8.40(s, 1H, -N-CH=N-).
(2-2. A-1の集積化)
金膜を蒸着したガラス基板をUV/O3クリーナーにてクリーニングし、A-1(0.63 mg, 2x10-6 mmol)のエタノール溶液(1x10-4M, 20 mL)中に36時間浸漬した。その後、エタノールで洗浄し、窒素を噴きつけて乾燥させ基板A-1-Auを得た。得られた基板についてX線光電子分光装置(XPS)により、C1s, N1s, S2pに帰属されるスペクトルが観察された。特に2pSに関して、161.9 eV, 163.2 eVに金-チオール(4f)結合特有の結合エネルギーが観察された。
さらにこの基板について表面赤外フーリエスペクトル(FTIR-RAS)により表面解析を行ったところ、チオールの保護基であるアセチル基に由来するスペクトルが消失し、ウラシル骨格のカルボニル基に由来するスペクトルがxxcm-1に出現していることから、A-1が金表面上に固定化されたことを確認した(図5参照)。
(A-1-AuのDNA認識能)
核酸塩基チオールA-1を集積化した基板A-1-Auを用いて、表面プラズモン共鳴装置(SPR)によって、単一モノマー成分からなる各DNAのPBS buffer溶液(5x10-5 M)を240秒間流し、その後Bufferのみを流して基板への吸脱着を観察した。
(A-1-Auの基板上における交互積層構造の形成)
核酸塩基チオールA-1を集積化した基板A-1-Auを用いて、表面プラズモン共鳴装置(SPR)によって、アデニン成分からなるDNA(pU)のPBS buffer溶液(5x10-5 M)を240秒間流し、その後Bufferのみを流し、さらにウラシル成分からなるDNA(pA)のPBS buffer溶液(5x10-5 M)を240秒間流し、その後Bufferのみを流す操作を繰り返して、基板最表面に吸着した単一成分DNAに対する相補的な単一成分DNA基板の吸脱着を観察した。
(核酸塩基モノマー基板におけるDNAの認識)
(A-1-AuのDNA認識能)
U-1-Au の場合と同様に、SPRにより、基板上に集積化したアデニンチオール誘導体(A-1-Au)に対するDNA(pA, pU, pC, pG)の認識を検討した。図8の横軸の時間はDNA-Buffer溶液が基板を設置したフローセルに到達した時間を0とし、その240秒後にBuffer溶液のみに切り替えた(図中の点線)。
図8に示したように、基板A-1-Auに対して、相補的なpUをサンプル溶液として流したとき、Δθは他の3種類のDNAをフローしたときよりも非常に大きかった。また、Bufferのみに切り替えた後もpUのΔθは減少していないことから、基板A-1-Auは、4種類のDNAのうち、pU > pA > pG > pCの順に吸着し、相補的なDNAが最も吸着することがわかった。また、pAおよびpGについては、系に流す溶液をBufferのみに切り替えたところ、徐々に脱離が観察されたが、pUについてはほとんど脱離がなく、強固に吸着したと考えられる。
(A-1-Auの基板への交互積層構造の形成)
基板上に集積化したアデニンチオール誘導体(A-1-Au)基板上での相補鎖DNAの交互吸着をSPRにより検討した。図11について、上と同じように、横軸はサンプル溶液およびバッファ溶液のフロー時間を示しており、縦軸は表面プラズモン共鳴角の変化量を示している。
初期の基板表面上ではアデニンが集積化されている状態である。そこに、pUの溶液をフローしたとき、先の結果と同様にΔθは大きく変化し、pUが吸着したことが確認された。しばらくバッファのみをフローした後、pAの溶液をフローすると、先の変化量よりも小さいもののΔθが増加してpAが吸着することがわかった。同様にしてpU, pA溶液を交互にフローすると、Δθの変化量は小さくなっていくものの、順々に、それぞれの単一成分DNAが吸着されていくことがわかった。
つまり、U-1-Au基板と同様に、A-1-Au基板を用いた場合でも、図12に示すように、pUおよびpAを交互に積層することができ、この基板とそれぞれのDNA溶液を用意し、交互に浸漬すれば、必要に応じてpUもしくはpAを最表面に持たせることができると考えられる。
Claims (6)
- 基板に固定化できるように修飾した、アデニン、ウラシル、シトシン、グアニンから選ばれる核酸塩基モノマーの一種を自己組織化単分子膜(SAM)として二次元基板表面上に集積化した基板を、該基板表面上に集積された核酸塩基に対して相補的なDNA鎖を持つDNAの溶液に浸漬し、基板に対して相補的なDNAを表面に集積したことを特徴とする生体関連物質センシングのための基板。
- 基板に固定化できるように修飾した、アデニン、ウラシル、シトシン、グアニンから選ばれる核酸塩基モノマーの一種を自己組織化単分子膜(SAM)として二次元基板表面上に集積化した基板を、該基板表面上に集積された核酸塩基に対して相補的なDNA鎖と溶液中のDNAをセンシングするための相補的なDNA鎖とを併せ持つ機能性DNAの溶液に浸漬し、基板に対して該機能性DNAを表面に集積したことを特徴とする生体関連物質センシングのための基板。
- 基板に固定化できるように修飾した、アデニン、ウラシル、シトシン、グアニンから選ばれる核酸塩基モノマーの一種を自己組織化単分子膜(SAM)として二次元基板表面上に集積化した基板を、該基板表面上に集積された核酸塩基に対して相補的なDNA鎖を持つDNAの溶液と、該相補的なDNA鎖に対して相補的なDNA鎖を持つDNAの溶液とに交互に浸漬し、基板に対して相補的なDNA及び該DNAに対して相補的なDNAとを表面に交互に積層したことを特徴とする生体関連物質センシングのための基板。
- 請求項1又は請求項3に記載の生体関連物質センシングのための基板を、さらに該基板表面上に集積されたDNAに対して相補的なDNA鎖と溶液中のDNAをセンシングするための相補的なDNA鎖とを併せ持つ機能性DNAの溶液に浸漬し、該機能性DNAを表面に集積したことを特徴とする生体関連物質センシングのための基板。
- 基板の表面が金であり、修飾分子がチオールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体関連物質センシングのための基板。
- 修飾分子がスペーサ分子を介して核酸塩基モノマーと結合していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体関連物質センシングのための基板。
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