以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
まず、図1〜図3に示す第一実施形態について説明する。図1は、本実施形態の後突用エアバッグ装置を採用した車両後部の側面概略図、図2はその車両後部の背面図、図3はバックドアを除いた車両後部の背面図である。
図1に示すように、本実施形態は、車両後端部にバックドア1を備えた車両Vを前提としており、このバックドア1にエアバッグ装置2を設置している。このバックドア1の前方に、車室Cと荷室Tの床面を構成するフロアパネル3を車両前方側に延設し、このフロアパネル3上面にスライドレール4を介して後部座席5を設置している。
フロアパネル3の下方には、車両前後方向に延びるリアサイドフレーム6を配設し、このリアサイドフレーム6の後端部には、加速度センサによって構成される後突センサ7を設置している。
前述の後部座席5は、スライドレール4上に設置したシートクッション51と、シートクッション51後端にリクライニング機構付きのヒンジ部52を介して立設したシートバック53と、シートバック53上端に固定したヘッドレスト54とからなる。
なお、シートベルトは図示しないが、ピラー式シートベルトであり、シートベルトの巻き取り位置をリアピラーの中間部に設定している。
後部座席5は、前述のスライドレール4によって車両前後方向にスライド可能に設置しており、図1に示した状態が最後部にスライドさせた状態である。なお、実線で示したシートバック53の位置が通常時であり、一点鎖線で示したシートバック53の位置が最大リクライニング時である。
この図1から分かるように、この車両Vにおいては、車室Cをできるだけ確保するため、後部座席5を後方に配置させており、これによりシートバック53とバックドア1の間が近接し、後部座席5を最後部に位置させてシートバック53をリクライニングすると、殆どシートバック53とバックドア1の間の空間がなくなるように設定している。
ここで「近接する」とは、後部座席5のヒンジ部52が、後突時に壊れ、シートバック53が略水平状態と成ったと仮定した場合に、シートバック53の上端部(ヘッドレスト54を含む)がバックドア1に干渉するように設置されている位置関係をいう。
前述のエアバッグ装置2は、バックドア1の上部に形成したバックウィンド11の上端部の周縁に設置しており(図2参照)、後突時に展開膨張するエアバッグクッション21と、エアバッグクッション21に高圧ガスを供給するインフレータ22と、インフレータ22とエアバッグクッション21を連結するガス供給管23と,で構成している。
前述のインフレータ22は、バックドア1の上端部に、長手方向を車幅方向に向けて配設している。
また、前述のガス供給管23も、バックドア1の上端部のインフレータ22の下側で、インフレータ22からの高圧ガスをエアバッグクッション21に均等に供給するよう、車幅方向に延びるように配設している。
さらに、前述のエアバッグクッション21は、非展開膨張時には、上下方向に蛇腹状に折り畳んだ状態でバックドア1の上端部に車幅方向に延びるように配設しており(図示せず)、展開膨張時には、図2に示すように、バックウィンド11を車室側から覆うように、上方から展開膨張するように配設している。
また、本実施形態では、エアバッグクッション21の展開膨張を補助するため、テンショナ装置8を設けている。すなわち、バックウィンド11の車幅方向両側端部の周縁に、長手方向を上下方向に向けて設置した二つのシリンダー81,81を設け、この二つのシリンダー81,81で、エアバッグクッション21の側端部に連結したワイヤ82を、バックドア1の両側端部に設けた滑車部83,83(ピンやロッドなどでも良い)を介して、上下方向に引っ張ることにより、エアバッグクッション21の下端部21aに車幅方向の張力を与えるように構成している。
なお、このテンショナ装置8の張力発生構造は、シートベルト装置で用いられるプリテンショナ装置と同様であり、具体的な説明は省略する。
図1、図2は、エアバッグクッション21が展開膨張した状態を示している。
図1に示すように、エアバッグクッション21は、後部座席5のシートバック53の後方で、バックウィンド11の車室側側面に沿って、下方側に向かって展開膨張する。
また、図2に示すように、このエアバッグクッション21は、車両後方視でバックウィンド11の枠よりも大きく展開して、バックウィンド11を車室側から完全に覆うように略四角形状に展開膨張する。
このように、エアバッグクッション21が展開膨張することにより、乗員が後方移動しても、バックウィンド11に当接することを防ぐことができ、エアバッグ装置2に衝撃吸収機能と乗員拘束機能を与えることができる。
特に、テンショナ装置8のシリンダー81,81を両側に設けて、エアバッグクッション21の両側端部に張力を与えることで、エアバッグクッション21を、バックドア1のバックウィンド11の両側端部の周縁に固定支持した状態で展開膨張させるため、エアバッグクッション21に確実に乗員拘束機能を与えることができる。
このエアバッグクッション21は、テンショナ装置8のワイヤ82,82で引っ張られても破損しないように、側端部に上下方向に延びる補強部21b,21bを設けている。この補強部21b,21bは、エアバッグクッション21の略四角形に展開する展開形状を維持する働きもあり、エアバッグクッション21の側端部がバックウィンド11の側端部に沿って位置する機能も果たしている。
また、エアバッグクッション21には、後部座席5の各ヘッドレスト54…を避けるように、各ヘッドレスト54…の間に上下方向に延びる複数条の縫合ライン21c…を設けている。この縫合ライン21c…は、それぞれエアバッグクッション21の中間部から下端部まで延びるように設定している。
このように、縫合ライン21cを設定したことにより、高圧ガスが確実に下方に流れ、側方(車幅方向)に流れないため、エアバッグクッション21の下方への展開膨張を確実にすることができる。
また、この縫合ライン21c…を、各ヘッドレスト54…の間に設定して、各ヘッドレスト54…に対応するクッション部分21d…の厚みを厚くしたことにより、高圧ガスが、乗員の頭部(図示せず)がバックウィンド11に近接する部分に積極的に供給されるため、乗員の頭部がエアバッグクッション21に侵入することによる、所謂、底つき現象を防ぐことができ、よりエアバッグ装置2の衝撃吸収機能を高めることができる。
もっとも、このようなエアバッグクッション21の展開膨張は、シートバック53とバックドア1との間にエアバッグクッション21の展開膨張空間が、エアバッグ装置2の作動時に存在しなければ行うことはできない。
そこで、この展開膨張空間を形成するため、本実施形態では、図1及び図3に示すように、シートバック53の後方移動を規制する移動規制部材9を設定している。
この移動規制部材9は、具体的には、図3に示すように、シートバック53後方の車室側壁10を構成するトリム表面から車室内方側(車幅方向中央側)に突出形成した棚部材91,92で構成している。
車室側壁10の左側には平板状の棚部材91を、右側には内部を収納空間とした箱状の棚部材92をそれぞれ設け、シートバック53の後突時の後方移動を規制するように構成している。
各棚部材91,92の車両前後方向の設置位置は、図1に示すように、後部座席5を最後端にスライドして、シートバック53を最大リクライニングした状態(一点鎖線で示した状態)において、シートバック53に近接した後方位置に設定している。
各棚部材91,92の設置位置を、この近接位置に設定することで、シートバック53のこの位置以上の後方移動を規制することが可能となり、後突時に、シートバック53が乗員の荷重を受けて後方移動するような場合でも、シートバック53の後方移動を規制することができ、シートバック53の後方にエアバッグクッション21の展開膨張空間を確保することが可能となる。
各棚部材91,92の車幅方向の突出長さ(突出量)は、図3に示すように、シートバック53内部のシートバックフレーム53aの位置に対応する長さに設定しており、後突時に、シートバック53が後方移動する場合に、シートバックフレーム53aが各棚部材91,92に干渉(接触)するように構成している。
このため、各棚部材91,92は、確実にシートバックフレーム53aを係止することができ、シートバック53の後方移動を抑えることができる。
なお、本実施形態の棚部材91,92は、左右それぞれに設定したが、いずれか一方側のみに棚部材を設けても良いし、また、左右を連結するような部材で棚部材を設けてもよい。
次に、以上のように構成した本実施形態の作用及び効果について詳述する。
この実施形態によるバックドア1及び後突用エアバッグ装置2を備えた車両Vは、車両後端部にバックドア1を備え、該バックドア1の前方にシートバック53を備えた後部座席5を設置し、該シートバック53をバックドア1に近接配置するとともに、後突時該シートバック53とバックドア1との間にエアバッグクッション21を介在可能な後突用エアバッグ装置2を備えた車両Vであって、前記後部座席5は、シートバック53が、後突荷重を受けた際、乗員の荷重を受けて後方に移動しうるとともに、後突時に該シートバック53の後方移動を規制して、エアバッグ装置2のエアバッグクッション21の展開膨張空間を該シートバック53とバックドア1との間に形成する移動規制部材9を有するものである。
上記構成によれば、後部座席5のシートバック53は、後突荷重を受けた際、乗員の荷重を受けて後方に移動しようとするものの、移動規制部材9が、後突時にシートバック53の後方移動を規制して、エアバッグクッション21の展開膨張空間をシートバック53とバックドア1との間に形成することになる。
このため、後突時に、シートバック53とバックドア1との間にエアバッグクッション21の展開膨張空間を確実に形成することができる。
したがって、バックドア1を備えた車両Vにおける後突用エアバッグ装置2において、後突時に、衝撃によってシートバック53が後方移動するような場合であっても、確実に、乗員の頭部とバックドア1の間にエアバッグクッション21を展開膨張させて、後突用エアバッグ装置2の衝撃吸収機能や乗員拘束機能を得ることができる。
また、この実施形態では、前記移動規制部材9を、シートバック53後方の車室側壁10から車幅方向内方側に突設し、後突時にシートバック53に接触する棚部材91、92で構成したものである。
上記構成によれば、車室側壁10から車幅方向内方側に突設した棚部材91,92が、後突時にシートバック53に接触して、シートバック53の後方移動を規制することになる。
このように、棚部材91,92を車室側壁10から車幅方向内方側に突設して構成することで、シートバック53の後方移動を規制する、移動規制部材9を簡単に構成することができる。特に、後部座席5の側に移動規制部材9を設ける必要がないため、後部座席5を複雑且つ重厚に構成することなく、既存の後部座席5をそのまま使用することができる。
なお、本実施形態では、移動規制部材9を棚部材91,92で構成したしたが、シートバック53の後突時の後方移動を規制するものであれば、例えば、フック形状の部材をシートバック53と車室側壁10との間に設け、シートバック53の後方移動時にシートバック53をフック部材で係止してもよいし、また、シートバック53後方の車室側壁10を車両後方側に向かうにつれて車室内方側にテーパー状に隆起させ、車室側壁自体でシートバック53の後方移動を規制してもよい。さらに、フロアパネル3から上方に隆起してシートバック53の後方に突出する突出部材を設けてもよい。
また、この実施形態では、前記棚部材91,92の車幅方向内方側の突出量を、前記シートバック53のシートバックフレーム53aの位置に対応する長さに設定したものである。
上記構成によれば、棚部材91,92の車幅方向内方側の突出長さを、シートバック53のシートバックフレーム53aの位置に対応する長さに設定したことで、後突時、シートバック53が後方移動する際に、棚部材91,92がシートバック53のシートバックフレーム53aに干渉(当接)する。
これにより、シートバック53の後方移動規制が確実に行われることになり、より確実に、シートバック53とバックドア1との間にエアバッグクッション21の展開膨張空間を形成することができる。
次に、図4〜図8に示す第二実施形態について説明する。図4は、本実施形態の後突用エアバッグ装置2を採用した車両後部の側面概略図、図5はその車両後部の背面図、図6は本実施形態のシステムブロック図、図7は本実施形態の制御フローチャート、図8は本実施形態のタイミングチャートである。なお、第一実施形態と同様の構成要素については、第一実施形態と同様の符号を付して説明を省略する。
この第二実施形態は、実際に後突が開始する以前に後突を予知し、後突を予知した場合には、予めエアバッグクッション21の展開膨張空間を確保するため、シートバック53の後方にエアバッグクッション21を介在させておくものである。
すなわち、通常の後突エアバッグ装置2のように、後突時にエアバッグクッション21を展開膨張させるのではなく、予め、後突前にエアバッグクッション21を展開膨張させておくことで、後突時に、シートバック53が後方移動してエアバッククッション21がシートバック53とバックドア1の間に入らなくなるという問題を解消するものである。
図4、図5に示すように、本実施形態のエアバッグ装置2も、バックドア1の上端部に設置し、後突時にバックウィンド11を覆うように展開膨張するエアバッグクッション21と、エアバッグクッション21に高圧ガスを供給するインフレータ22と、インフレータ22とエアバッグクッション21を連結するガス供給管23とで構成している。
もっとも、本実施形態のエアバッグ装置2は、インフレータ22を二つ設定している。後突予知の際に、エアバッグクッション21を予め展開膨張させる第一インフレータ22aと、後突時にエアバッグクッション21を完全に展開膨張させる第二インフレータ22bの二つである。
このように、インフレータ22a,22bを二つ設定することにより、後述の制御によって、シートバック53の後方移動に対して、予めエアバッグクッション21を展開させておくことができる。
また、本実施形態では、テンショナ装置8のシリンダーの数を削減するため、バックドア1のバックウィンド11の下端部周縁に、長手方向を車幅方向に向けて一本のシリンダー84を設置している。
このシリンダー84では、エアバッグクッション21の両側端部に連結された二本のワイヤ82,82を、滑車部83…を介して水平方向に引っ張ることにより、エアバッグクッション21の下端部21aに車幅方向の張力を与えるように構成している。
このように構成した場合でも、エアバッグクッション21の下端部21aに車幅方向の張力を与えることができるため、エアバッグクッション21の展開膨張を補助することができる。
さらに、本実施形態では、図4に示すように後部バンパー61に、車両後方の物体(後方車両等)を検出するレーザーレーダ71を設置している。このレーザーレーダ71を設けることにより、後突予知を行うことが可能となる。
その他の構成要素については、前述の第一実施形態と同様である。
第二実施形態のシステムブロックは、図6に示すように、中央処理装置であるエアバッグ制御部100に、入力手段である車速センサ101、後突センサ7、レーザーレーダ71(車間距離センサ)を接続し、出力手段である第一インフレータ22a、第二インフレータ22b、テンショナ装置(シリンダー)8を接続することで構成している。
また、エアバッグ制御部100の内部には、自車と後方車両Vとの相対速度を演算し算出する相対速度演算部100aと、後突が発生するか否かを予知する後突予知部100bと、これらのデータから実際にエアバッグクッション21を展開させるか否かを判断する展開膨張判断部100cとを有している。
このシステムブロックを前提として、図7に示す制御フローで制御を行う。
まず、S1で、各センサからデータを取り込む。車速センサ101から自車の現在の車速、後突センサ7から後突の有無、レーザーレーダ71から後方車両の有無と現在の車間距離を、今回のデータとして取り込む。
次に、S2で、前回までに後突予知判定があったかを判断する。前回までに後突予知判定がある場合(Yの場合)には、後述のS3〜S8のステップを省略して、S9に移行する。後突予知判定がなかった場合(Nの場合)には、S3に移行する。
S3では、車間距離を微分して自車と後方車両の相対速度を算出して、現在の相対速度としてデータとして取り込む。
次に、S4で車間距離が所定値以下かを判断する。例えば、所定値を10mとして判断し、車間距離が10m以下の場合(Yの場合)には、S5に移行し、10m以下でない場合(Nの場合)には、リターンに移行するように構成することが考えられる。
このように構成した場合には、10m以上車間距離が離れていることから、後突の可能性が低いと判断し、その後、余計な制御を行わないようにすることができる。
次に、S5で車速が所定値以上かを判断する。例えば、所定値をゼロとして判断し、車速がゼロ以上の場合(Yの場合)には、S6に移行し、ゼロ以上でない場合(Nの場合)には、リターンに移行するように構成することが考えられる。
このように構成した場合には、自車の後進時に、後突予知判定によるエアバッグクッション21の展開膨張が行われないことから、後進時に誤ってエアバッグクッション21が展開することがなく、後進時の後方視界の悪化を防止することができる。
さらに、S6で相対速度が所定値以上かを判断する。例えば、所定値を30km/hとして判断し、相対速度が30km/h以上の場合(Yの場合)には、S7に移行し、30km/h以上でない場合(Nの場合)には、リターンに移行するように構成することが考えられる。
このように構成した場合は、後突の可能性が低い相対速度の差が少ない場合の第一インフレータ22aの誤作動を防ぐことができる。
こうしてS4〜S6の判断の後、全ての条件を備えた場合には、S7で後突予知と判定する。すなわち、S4〜S6の条件を備えた場合には、極めて後突の可能性が高いため、S7で後突予知と判定する。
そして、S8で第一インフレータ22aを作動して、エアバッグクッション21を展開膨張させる。この場合の展開膨張は、エアバッグクッション21を完全に展開膨張させる必要はなく、単にシートバック53とバックドア1との間に展開膨張空間を確保するためのものであるため、エアバッグクッション21を薄い状態で展開膨張させる。
また、このS8では、テンショナ装置8のシリンダー84も作動するため、エアバッグクッション21を、確実にシートバック53とバックドア1との間に展開させることができる。
次に、S9で後突の衝撃値が所定値以上か判断する。所定値以上と判断した場合(Yの場合)には、S10に移行して第二インフレータ22bを作動させる。一方、所定値以上と判断しない場合(Nの場合)には、リターンに移行する。
このように、後突により衝撃が大きいと判断した場合に、第二インフレータ22bを作動させることにより、展開済みのエアバッグクッション21に、さらに高圧エアを供給してエアバッグクッション21を全て膨張ができるため、実際に後突が生じた場合の乗員拘束機能と衝撃吸収機能を確実に得ることができる。
この制御フローによる本実施形態の後突用エアバッグ装置2の制御を、図8のタイミングチャートでさらに説明する。
まず、前述のS4〜S6の所定条件を備えた場合、(ア)のタイミングで衝突予知判定を行うと、それとほぼ同時の(イ)のタイミングで、第一インフレータ22aを作動し、これと同時にテンショナ装置8を作動する。
この(イ)のタイミングで、第一インフレータ22a、テンショナ装置8を作動することで、シートバック53の後方移動がない段階で、エアバッグクッション21をシートバック53とバックドア1の間に確実に展開しておくことができる。
その後、(ウ)のタイミングで後突が開始し、(エ)のタイミングで第二インフレータ22bを作動する。
この(エ)のタイミングでの第二インフレータ22bの作動が、従来のエアバッグ装置の作動タイミングに一致し、この第二インフレータ22bの作動があることにより、予め展開したエアバッグクッション21に乗員拘束機能と衝撃吸収機能を持たせることができる。
以上のように、第一インフレータ22aやテンショナ装置8を作動させることにより、後突の前段階で、予めシートバック53の後方にエアバッグクッション21を展開させておくことができる。よって、後突時にシートバック53が後方移動したとしても、確実にシートバック53とバックドア1の間にエアバッグクッション21を展開膨張させることができる。
なお、以上の第二実施形態では、後突予知をした際、第一インフレータ22aとテンショナ装置8を同時に作動するように構成したが、後突予知をした際に、テンショナ装置8のみを作動させて、エアバッグクッション21を下方に展開してもよい。
この場合には、エアバッグクッション21が膨らんでいない状態で下方に展開するため、より確実にシートバック53とバックドア1の間にエアバッグクッション21を展開させることができる。
また、以上の第一実施形態と第二実施形態は、共にエアバッグ装置2をバッグドア内部に設けたが、車体側の、例えばリアヘッダーやリアピラーにエアバッグ装置2を設けても良い。
この場合は、エアバッグ装置2等の重量がバックドア1にかからない為、バックドア1の開閉作業を容易に行うことができ、また、開閉補助を行うアシストダンパー(図示せず)の負担も軽減することができる。
次に、以上のように構成した本実施形態の作用及び効果について詳述する。
この実施形態によるバックドア1を備えた車両Vにおける後突用エアバッグ装置2は、車両後端部にバックドア1を備え、該バックドア1の前方にシートバック53を備えた後部座席5を設置し、該シートバック53をバックドア1に近接配置した車両Vにおける後突用エアバッグ装置2であって、前記後部座席5は、シートバック53が、後突荷重を受けた際、乗員の荷重を受けて後方に移動しうるとともに、後突予知時に、エアバッグ装置2のエアバッグクッション21を、予めシートバック53とバックドア1との間に介在させる第一インフレータ22aと、後突時に、前記エアバッグクッションを膨張させる第二インフレータ22bとを有するものである。
上記構成によれば、後部座席5のシートバック53は、後突荷重を受けた際、乗員の荷重を受けて後方に移動しようとするものの、後突予知時に、第一インフレータ22aが、エアバッグクッション21をシートバック53とバックドア1との間に予め介在させ、後突時に、第二インフレータ22bが、エアバッグ装置2のエアバッグクッション21を膨張することになる。
すなわち、後突時には、第二インフレータ22bで、シートバック53とバックドア1との間にエアバッグクッション21を確実に展開膨張させることができるのである。
したがって、バックドア1を備えた車両Vにおける後突用エアバッグ装置2において、後突時に、衝撃によってシートバック53が後方移動するような場合であっても、確実に、乗員の頭部とバックドア1の間にエアバッグクッション21を展開膨張させて、後突用エアバッグ装置2の衝撃吸収機能や乗員拘束機能を得ることができる。
なお、本実施形態では、2つ別々のインフレータ22a,22bでエアバッグクッション21を展開膨張させるように構成したが、インフレータ自体を一つで構成して二段階で高圧ガスを発生するようなインフレータでエアバッグクッション21を展開膨張させてもよい。
また、エアバッグクッション自体を二つで構成し、後突予知時と後突時に分けて展開膨張させるように構成してもよい。
次に、図9、図10に示す第三実施形態について説明する。図4は、本実施形態のシステムブロック図、図10は本実施形態のタイミングチャートである。なお、具体的な後突用エアバッグ装置2の構造については、第一実施形態や第二実施形態と同様であり、また、前面衝突によりステアリングホイールやインナパネルに設けたエアバッグ装置を作動させる前突用エアバッグ装置、側面衝突により座席のドア側やルーフのサイドレールに設けたエアバッグ装置を作動させる側突用エアバッグ装置の構造については、従来構造と同様であるため、図面を使った説明は省略する。
本実施形態は、前突用エアバッグ装置、側突用エアバッグ装置、さらには、後突用エアバッグ装置2を備えたものを前提としており、これらの展開膨張タイミングをそれぞれ変更することにより、後突時にシートバック53が後方移動する場合の問題を解消しつつも、前突時及び側突時の衝撃吸収機能を確保したものである。
図9に示すように、本実施形態のシステムブロックは、全体のエアバッグ装置の制御を行う中央処理装置であるエアバッグ制御部110に、入力手段である後突センサ6、前突センサ6A、側突センサ6Bを接続し、出力手段である後突インフレータ22、前突インフレータ22A、側突インフレータ22B、後突用テンショナ装置8を接続することで構成している。また、エアバッグ制御部110には、エアバッグクッションをどのようなタイミングで展開膨張させるかを判断する展開膨張判断部110aを有している。
このように構成したエアバッグ装置の作動タイミングを、図10に示す。
まず、後突が(カ)のタイミングで生じ、その後、衝撃が作用した方向の衝撃度(加速度又は速度)が第1値以上となった時、後突用インフレータ22は、T1のタイミングで作動する。このT1のタイミングは、後突開始直後のタイミングであり、殆どタイムラグがなくエアバッグクッション21を展開膨張させるように設定している。
このように、瞬時にエアバッグクッション21が展開膨張するように設定することで、後部座席5のシートバック53が後方移動する前に、エアバッグクッション21をシートバック53とバックドア1の間に展開膨張させることができる。
よって、後突衝撃によってシートバック53が後方移動する場合の問題を解消することができる。
また、前突が(サ)のタイミングで生じ、その後、衝撃が作用した方向の衝撃度(加速度又は速度)が第2値以上となった時、前突用インフレータ22Aが、T2のタイミングで作動する。このT2のタイミングは、前突開始後、衝撃で乗員の頭部が前方に移行して所定の物体(例えば、ステアリングホイール等)に当接しないように、エアバッグクッション(図示せず)が展開膨張するように設定している。
これにより、前突時におけるエアバッグクッションの衝撃吸収機能を高めることができる。
このとき、前突と後突との間で、各々エアバッグクッションの作動を判定する第1値と第2値について第1値<第2値と設定しておくことにより、後突時のシートバック53が後方移動する場合の問題を解消しつつも、前突時の衝撃吸収機能を確保することができる。
さらに、側突が(タ)のタイミングで生じ、その後、衝撃が作用した方向の衝撃度(加速度又は速度)が第3値以上となった時、側突用インフレータ22Bが、T3のタイミングで作動する。この第3値は、第1値よりは大きいものの、第2値よりは小さく設定されており、側突後、衝撃で乗員の頭部が側方に移行して、所定の物体(例えば、サイドピラー等)に当接しないように設定している。
この場合も、側突時におけるエアバッグクッションの衝撃吸収機能を高めることができる。
以上のように、前突、後突及び側突との間でエアバッグ装置の作動開始を判定する衝撃値を、第1値<第3値<第2値、とすることで、衝突開始からインフレータの作動タイミングまでの時間がΔt1<Δt3<Δt2となる。
次に、以上のように構成した本実施形態の作用及び効果について詳述する。
この実施形態によるバックドア1を備えた車両Vにおける後突用エアバッグ装置2は、車両後端部にバックドア1を備え、該バックドア1の前方にシートバック53を備えた後部座席5を設置し、該シートバック53をバックドア1に近接配置した車両Vであって、後部座席5は、前記シートバック53が、後突荷重を受けた際、乗員の荷重を受けて後方に移動するとともに、後突開始直後に、シートバック53とバックドア1との間にエアバッグクッション21を展開膨張させるエアバッグ装置2とを有するものである。
上記構成によれば、後部座席5のシートバック53は、後突荷重を受けた際、乗員の荷重を受けて後方に移動しようとするものの、後突開始直後に、エアバッグ装置2がシートバック53とバックドア1との間にエアバッグクッション21を展開膨張させることになる。
このため、シートバック53の後方移動よりも速くシートバック53とバックドア1との間にエアバッグクッション21を展開膨張させることになるため、シートバック53とバックドア1との間にエアバッグクッション21を介入させることができる。
したがって、バックドア1を備えた車両Vにおける後突用エアバッグ装置2において、後突時に、衝撃によってシートバック53が後方移動するような場合であっても、確実に、乗員の頭部とバックドア1の間にエアバッグクッション21を展開膨張させて、後突用エアバッグ装置2の衝撃吸収機能や乗員拘束機能を得ることができる。
また、この実施形態では、前記車両Vは、前突用エアバッグ装置(図示せず)を備え、前記後突用エアバッグ装置2は、衝突荷重の作用する方向における衝撃値が第1値以上でエアバッグクッション21の展開膨張を開始させるとともに、前記前突用エアバッグ装置は、衝突荷重の作用する方向における衝撃値が第1値より大きい第2値以上でエアバッグクッション(図示せず)の展開膨張を開始させるものである。
上記構成によれば、後突用エアバッグ装置2は、衝撃値が第1値以上でエアバッグクッション21の展開膨張を開始し、前突用エアバッグ装置は、衝撃値が第1値より大きい第2値以上でエアバッグクッションの展開膨張を開始することになる。
このため、前面衝突の場合よりも後面衝突の場合の方が、低い衝撃値でエアバッグクッション21を展開膨張することになるため、後突の方が、衝突後早い段階でエアバッグクッション21を展開膨張させることができる。
よって、後面衝突の場合に、確実に乗員の頭部とバックドア1の間にエアバッグクッション21を展開膨張させて、後突用エアバッグ装置21の衝撃吸収機能や乗員拘束機能を得ることができる。
なお、本実施形態では、前突、後突及び側突との間でエアバッグ装置の作動開始を判定する衝撃値の値を第1値<第3値<第2値と設定しているが、前突の際の衝撃値の値を小さくして、第1値<第3値=第2値としてもよい。また、側突用エアバッグ装置を備えず、前突用エアバッグ装置と後突用エアバッグ装置を備えるものであってもよい。
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、様々な後突用エアバッグ装置に適用する実施形態を含むものである。